説明

化粧料

【課題】従来の化粧料に比して効率良く皮膚細胞のターンオーバーを惹起させることのできる化粧料を提供する。
【解決手段】本発明に係る化粧料では、完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させることとした。また、前記細胞成長因子は上皮成長因子であり、前記細胞成長ペプチドは、上皮成長因子受容体結合ドメインを備えた11〜15のアミノ酸残基からなるペプチドであることにも特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を構成する細胞のターンオーバーを促進させることのできる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、年齢の増加とともに増えるシミや皺を減少させるべく、様々な化粧料が開発されている。
【0003】
しかしながら、その多くは、皮膚を構成する細胞に欠乏している栄養分を供給して皮膚細胞を活性化させるものであり、細胞の増殖や世代交代を効率的に行えるとは言い難いものであった。
【0004】
そこで近年、皮膚の細胞の増殖や分化を促進する細胞成長因子(GF:growth factor)を含有させた化粧料が提案されている。
【0005】
この細胞成長因子を含有させた化粧料によれば、皮膚細胞の増殖や世代交代を効率的に行うことができ、張りのある若々しい肌に改善することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−284968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の細胞成長因子を含有させた化粧料は、未だ十分な皮膚の改善効果が得られるとは言い難いものであった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、従来の化粧料に比して効率良く皮膚細胞のターンオーバーを惹起させることのできる化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に記載の化粧料では、完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させた。
【0010】
また、請求項2に記載の化粧料では、請求項1に記載の化粧料において、前記細胞成長因子は上皮成長因子であり、前記細胞成長ペプチドは、上皮成長因子受容体結合ドメインを備えた11〜15のアミノ酸残基からなるペプチドであることに特徴を有する。
【0011】
また、請求項3に記載の化粧料では、請求項1又は請求項2に記載の化粧料において、前記細胞成長因子の含有量を0.00001〜10W/W%とし、前記細胞成長ペプチドの含有量を0.00001〜25W/W%としたことに特徴を有する。
【0012】
また、請求項4に記載の化粧料では、請求項1〜3いずれか1項に記載の化粧料において、線維芽細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた8〜12のアミノ酸残基からなるペプチド、肝細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた3〜7のアミノ酸残基からなるペプチド、インスリン様成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14のアミノ酸残基からなるペプチド、トランスフォーミング成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14アミノ酸残基からなるペプチド、チモシンβ4受容体結合ドメインを備えた6〜10アミノ酸残基からなるペプチドから選ばれる少なくともいずれか1つのペプチドを更に含有させたことに特徴を有する。
【0013】
また、請求項5に記載の化粧料では、請求項1〜4いずれか1項に記載の化粧料において、保水機能を有する多糖類を含有させるとともに、水分含量を10〜99.9925W/W%に調製したことに特徴を有する。
【0014】
また、請求項6に記載の化粧料では、請求項5に記載の化粧料において、前記多糖類の含有量を0.001〜25W/W%としたことに特徴を有する。
【0015】
また、請求項7に記載の化粧料では、請求項5又は請求項6に記載の化粧料において、前記多糖類は、プロテオグリカンであることに特徴を有する。
【0016】
また、請求項8に記載の化粧料では、請求項1〜7いずれか1項に記載の化粧料において、リン脂質を含有させたことに特徴を有する。
【0017】
また、請求項9に記載の化粧料では、請求項1〜8いずれか1項に記載の化粧料において、pHを3〜11に調整したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の化粧料では、完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させたため、従来の化粧料に比して効率良く皮膚細胞のターンオーバーを惹起させることのできる化粧料を提供することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の化粧料では、前記細胞成長因子は上皮成長因子であり、前記細胞成長ペプチドは、上皮成長因子受容体結合ドメインを備えた11〜15のアミノ酸残基からなるペプチドであることとしたため、皮膚細胞に対してさらに効果的にターンオーバーを惹起させることができる。
【0020】
また、請求項3に記載の化粧料では、前記細胞成長因子の含有量を0.00001〜10W/W%とし、前記細胞成長ペプチドの含有量を0.00001〜25W/W%としたため、皮膚細胞に対してさらに効果的にターンオーバーを惹起させることができる。
【0021】
また、請求項4に記載の化粧料では、線維芽細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた8〜12のアミノ酸残基からなるペプチド、肝細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた3〜7のアミノ酸残基からなるペプチド、インスリン様成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14のアミノ酸残基からなるペプチド、トランスフォーミング成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14アミノ酸残基からなるペプチド、チモシンβ4受容体結合ドメインを備えた6〜10アミノ酸残基からなるペプチドから選ばれる少なくともいずれか1つのペプチドを更に含有させたため
、皮膚細胞に対してさらに効果的にターンオーバーを惹起させることができる。
【0022】
また、請求項5に記載の化粧料では、保水機能を有する多糖類を含有させるとともに、水分含量を10〜99.9925W/W%に調製したため、化粧料の塗布部位を比較的長時間に亘って湿潤状態に保つことができ、細胞増殖因子や各ペプチドの機能が阻害されることを可及的に防止することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の化粧料では、前記多糖類の含有量を0.001〜25W/W%としたため、化粧料の塗布部位を比較的長時間に亘って湿潤状態を保つことができる。
【0024】
また、請求項7に記載の化粧料では、前記多糖類は、プロテオグリカンであることとしたため、プロテオグリカンが有する高い保持能により、他の成分を抱え込んで安定に保持することができ、さらに効果的に湿潤状態を保つことができる。
【0025】
また、請求項8に記載の化粧料では、リン脂質を含有させたため、細胞増殖因子や各ペプチドをリポソーム化することができ、皮膚細胞に対して細胞増殖因子や各ペプチドを効率よく到達させることができる。
【0026】
また、請求項9に記載の化粧料では、pHを3〜11に調整したため、細胞増殖因子や各ペプチドを安定的に化粧料中で存在させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させた化粧料に関するものである。
【0028】
本発明者は、化粧料に関して長年に亘り研究を重ねたことにより、細胞成長因子と、細胞成長ペプチドとの両者を化粧料に含有させることにより、いずれか一方を含有させた化粧料に比して、極めて効率よく皮膚のターンオーバーを惹起させることが可能であることを見出した。
【0029】
ここで、細胞成長因子は上皮成長因子であり、前記細胞成長ペプチドは、上皮成長因子受容体結合ドメインを備えた11〜15のアミノ酸残基からなるペプチドとするのが好ましい。
【0030】
上皮成長因子(Epidermal Growth Factor; EGF)は、ヒト由来の上皮成長因子であり、ヒトの上皮成長因子受容体に結合することにより、上皮細胞の増殖や遺伝子の複製を助長する働きがある。
【0031】
具体的には、上皮成長因子は完全長タンパク質の状態で、分子量6045Da、53アミノ酸残基で構成されるタンパク質である。本明細書において上皮成長因子は、上皮成長因子のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、付加及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を含む概念である。
【0032】
また、細胞成長ペプチドは上皮成長因子受容体結合ドメインを構成する領域を含む11〜15アミノ酸残基からなる分子量1200〜2300Daのペプチド(以下、「EGFドメインペプチド」という。)を好適に用いることができる。すなわち、細胞成長ペプチドは上皮成長因子受容体に結合し、同受容体を活性化させる能力を有するEGFドメインペプチドとしても良い。
【0033】
そして、これらの細胞成長因子、及び、細胞成長ペプチドを、1:5.5〜1:6.5の重量比にて、それぞれ0.00001〜10W/W%、0.00001〜25W/W%含有させることにより、効率良く皮膚細胞のターンオーバーを惹起させることのできる化粧料とすることができる。
【0034】
特に、本実施形態に係る化粧料では、細胞成長因子と、細胞成長ペプチドとの両者を配合することとしているが、これは、細胞成長ペプチドには反応性が低下した上皮成長因子受容体の反応性を向上させる効果があり、また、細胞成長因子の前記受容体への結合ドメイン部を、同受容体へ誘導し、受容体活性化の効率を向上させることができるためである。従って、細胞成長因子と、細胞成長ペプチドとの両者を配合することにより、細胞成長因子や細胞成長ペプチドのいずれかを単独で配合した場合に比して、新しい細胞の生産性を向上させることができると考えられる。
【0035】
また、化粧料には、線維芽細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた8〜12のアミノ酸残基からなるペプチド、肝細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた3〜7のアミノ酸残基からなるペプチド、インスリン様成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14のアミノ酸残基からなるペプチド、トランスフォーミング成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14アミノ酸残基からなるペプチド、チモシンβ4受容体結合ドメインを備えた6〜10アミノ酸残基からなるペプチドから選ばれる少なくともいずれか1つのペプチドを更に含有させるようにしても良い。なお、以下の説明において、これらのペプチドを総称して「受容体結合ペプチド」ともいう。
【0036】
線維芽細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた8〜12のアミノ酸残基からなるペプチド(以下、「FGFドメインペプチド」という。)は、繊維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor; FGF)様の機能を呈するペプチドであり、血管新生や上皮細胞の増殖促進を促す。化粧料中に配合するFGFドメインペプチドの量は、0.000001〜25W/W%、より好ましくは0.00001〜10W/W%である。
【0037】
肝細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた3〜7のアミノ酸残基からなるペプチド(以下、「HGFドメインペプチド」という。)は、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor; HGF)様の機能を呈するペプチドであり、肝細胞の増殖因子として働くとともに、ケラチノサイトなど多くの細胞に対して増殖作用をもたらす。化粧料中に配合するHGFドメインペプチドの量は、0.000001〜25W/W%、より好ましくは0.00001〜10W/W%である。
【0038】
インスリン様成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14のアミノ酸残基からなるペプチド(以下、「IGFドメインペプチド」という。)は、インスリン様増殖因子(insulin-like growth factor; IGF)様の機能を呈するペプチドであり、インスリン様の作用を有すると共に、神経細胞の増殖等にも関与する。化粧料中に配合するIGFドメインペプチドの量は、0.000001〜25W/W%、より好ましくは0.00001〜10W/W%である。
【0039】
トランスフォーミング成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14アミノ酸残基からなるペプチド(以下、「TGFドメインペプチド」という。)は、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor; TGF)様の機能を呈するペプチドであり、損傷した細胞の再生や修復に作用すると共に、炎症メディエーター抑制等にも関与する。化粧料中に配合するTGFドメインペプチドの量は、0.000001〜25W/W%、より好ましくは0.00001〜10W/W%である。
【0040】
チモシンβ4受容体結合ドメインを備えた6〜10アミノ酸残基からなるペプチド(以下、「チモシンβ4ドメインペプチド」という。)は、チモシンβ4(thimosin beta 4)様の機能を呈するペプチドであり、線維芽細胞を増殖させる作用があり、ヒアルロン酸とコラーゲンの合成に関与する。化粧料中に配合するチモシンβ4ドメインペプチドの量は、0.000001〜25W/W%、より好ましくは0.00001〜10W/W%である。
【0041】
これらの受容体結合ペプチドは、いずれもそれぞれの完全長タンパク質よりも分子量が小さいため、皮膚細胞への浸透性を高めることができる。
【0042】
また、これらの受容体結合ペプチドの化粧料中における含有量は、0.00001〜10W/W%とすることにより、各受容体結合ペプチドの効果を十分に発揮させることができる。また、10〜25W/W%とすると、各受容体結合ペプチドの更なる効果は期待できないものの、ペプチドによる皮膚の保湿効果をより向上させることができる。
【0043】
ところで、上述してきた細胞成長因子、細胞成長ペプチド、及び受容体結合ペプチド(以下、総称して「細胞成長要素」という。)は、皮膚細胞に作用させるに際して、皮膚を湿潤状態としておくことが望ましい。
【0044】
皮膚が乾燥状態であると、各細胞成長要素が皮膚細胞に到達し難くなり、しかも、細胞成長要素の立体的な安定性が失われて失活してしまう場合がある。
【0045】
そこで化粧料は、保水機能を有する多糖類を含有させるとともに、水分含量を10〜99.9925W/W%に調製するのが好ましい。
【0046】
このような構成とすることにより、皮膚を比較的長時間に亘り湿潤状態とすることができ、各細胞成長要素の機能が阻害されることを可及的に防止することができる。
【0047】
また、化粧料に添加する多糖類の量は、0.001〜25W/W%とすることにより、化粧料を皮膚に塗布した際に、水分の蒸発を適度に抑制することができ、細胞成長要素の機能が阻害されることを更に防止することができる。
【0048】
このような機能を発揮させることのできる多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、プロテオグリカン等を挙げることができ、中でも、プロテオグリカンが好ましい。
【0049】
プロテオグリカンは、高い水分保持能及び成分保持能があり、細胞成長要素を抱え込み安定に保持することができるため、化粧料中に0.001〜25W/W%配合することで、水分の蒸発を適度に抑制しつつ、細胞成長要素の機能が阻害されることを防止できる。
【0050】
また、化粧料中には、リン脂質を含有させても良い。具体的には、化粧料の液性を水性とするとともに、リン脂質により構成した細胞成長要素を内包するリポソームを化粧料中に含有させても良い。
【0051】
このような構成とすることにより、皮膚細胞へ細胞成長要素をより到達し易くすることができる。
【0052】
またこの際、化粧料のpHを3〜11に調整することにより、リポソームや各細胞成長要素を化粧料中で安定して存在させることができる。
【0053】
以下、本実施形態に係る化粧料の実際の製造例について述べる。
【0054】
ビーカーに0.5gの精製水を加え、細胞成長因子として1mgのEGF、細胞成長ペプチドとして6.5mgのEGFドメインペプチドをそれぞれ添加して、撹拌を行って均一な溶液とした。
【0055】
そして、得られた溶液のpHを6.00に調整した。最後に、精製水で全重量を100gに調整し、得られた溶液を本実施形態に係る化粧料とした。調製した化粧料の水分含量は99.9925W/W%であった。
【0056】
次に、本実施形態に係る化粧料(以下、「本化粧料」という。)と、比較対照化粧料とを用いた各試験について述べる。
【0057】
〔比較対照試験1〕
本試験では、細胞成長因子と細胞成長ペプチド(本試験では、EGFとEGFドメインペプチド)との両者を含有する化粧料(本化粧料)と、細胞成長因子(本試験ではEGF)のみを含有する化粧料(比較対照化粧料1)と、細胞成長ペプチド(本試験ではEGFドメインペプチド)のみを含有する化粧料(比較対照化粧料2)との皮膚に対する改善効果について検討を行った。
【0058】
比較対照化粧料1は、50gの精製水に1mgのEGFを細胞成長因子として添加し、撹拌して均一溶液とし、最後に精製水で100gの均一溶液に調製することで得た。
【0059】
また、比較対照化粧料2は、50gの精製水に6.5mgのEGFドメインペプチドを細胞成長ペプチドとして添加し、撹拌して均一溶液とし、最後に精製水で100gの均一溶液に調製することで得た。
【0060】
また、本試験では、頬に顕著な肌荒れ症状を持つ20〜40代の女性30名を、1グループ10名として、本化粧料を使用するグループと、比較対照化粧料1を使用するグループと、比較対照化粧料2を使用するグループの3グループに分け、1日2回1mlづつを頬に塗布させて、1ヶ月間継続使用させて、その効果を1ヶ月後に判定表に従って評価した。なお、本試験は二重盲検法にて実施するため、被験者には使用する化粧料の内容については知らせなかった。結果を表1に示す。
【表1】

【0061】
表1に示すように、本化粧料は、各比較対照化粧料に比して、肌質を飛躍的に改善する効果が認められた。
【0062】
〔比較対照試験2〕
次に、それぞれ組成を違えた本化粧料同士を比較する試験を行った。具体的には以下の通りの化粧料について調製を行い比較を行った。
化粧料1:ビーカーに0.5gの精製水を加え、1mgのEGF、6.5mgのEGFドメインペプチド、1.5mgのFGFドメインペプチド、1.5mgのHGFドメインペプチド、1.5mgのIGFドメインペプチド、1.5mgのTGFドメインペプチド、1.5mgのチモシンβ4ドメインペプチドをそれぞれ添加し、十分に撹拌を行って均一な溶液とした。次に、得られた溶液を、1gのリン脂質と20gの1,3−ブチレングリコール、及び5gのグリセリンの均一溶液に添加し、これらを均一溶液とした。そして、得られた溶液に50gの精製水を加えて分散させ、リポソーム溶液とした。さらに、0.2gのプロテオグリカンを添加して撹拌し、pHを6.00に調整した。最後に、精製水で100gに調整し化粧料1を得た。調製した化粧料1の水分含量は73.7865W/W%である。
化粧料2:比較対照試験1にて使用した本化粧料に1.5mgのFGFドメインペプチドを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.991W/W%である。
化粧料3:化粧料2に、更に1.5mgのHGFドメインペプチドを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.9895W/W%である。
化粧料4:化粧料3に、更に1.5mgのIGFドメインペプチドを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.988W/W%である。
化粧料5:化粧料4に、更に1.5mgのTGFドメインペプチドを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.9865W/W%である。
化粧料6:化粧料5に、更に1.5mgのチモシンβ4ドメインペプチドを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.985W/W%である。
化粧料7:比較対照試験1にて使用した本化粧料に0.2gのプロテオグリカンを添加して調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は99.7925W/W%である。
化粧料8:1mgのEGFと6.5mgのEGFドメインペプチドとを、0.5gの精製水を加え均一溶液とし、その溶液を1gのリン脂質と20gの1,3−ブチレングリコール、及び5gのグリセリンの均一溶液に添加し、混合溶液を得た。そして、得られた混合溶液に精製水を加えて分散させ、100gのリポソーム溶液とした。この化粧料8はリポソームを含有するように調製したものである。調製した化粧料1の水分含量は73.9925W/W%である。
【0063】
これら化粧料1〜8について、頬に顕著な肌荒れ症状を持つ20〜40代の女性80名を、1グループ10名の8グループに分け、1日2回1mlづつを頬に塗布させて、1ヶ月間使用させ、その効果を1ヶ月後に判定表に従って評価した。なお、本試験は二重盲検法にて実施するため、被験者には使用する化粧料の内容については知らせなかった。結果を表2に示す。
【表2】

【0064】
表2に示すように、化粧料1は、その他の化粧料2〜8に比して、肌質を飛躍的に改善する効果が認められた。
【0065】
また、使用継続中に途中経過を確認したところ、化粧料2〜6、8は化粧料1,7と比較して、肌質の改善効果に遅延が見られた。これは保湿効果を生起させる多糖類としてのプロテオグリカンが含まれていないためと考えられた。ただし、化粧料8は、肌質の改善効果において、化粧料2〜6ほどの顕著な遅延は認められなかった。このことは、リン脂質により形成されるリポソームによって皮膚細胞のターンオーバーが効果的に促進されたためであると考えられた。
【0066】
また、比較対照試験1にて使用した本化粧料(表1参照)と、表2に示す化粧料2〜6に着目すると、EGF及びEGFドメインペプチドに加えて、FGFドメインペプチドを添加した化粧料2が、肌質改善に効果的であることが示唆された。なお、表には示していないが、FGFドメインペプチドのみを添加した化粧料を用いた予備試験ではこのような結果が導かれなかったことから、FGFドメインペプチドを単独で用いた場合よりも、FGFドメインペプチドはEGF及びEGFドメインペプチドと共存させることにより、更なる相乗効果が得られることが示唆された。
【0067】
上述してきたように、本実施形態に係る化粧料では、完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させたため、従来の化粧料に比して効率良く皮膚細胞のターンオーバーを惹起させることのできる化粧料を提供することができる。
【0068】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全長タンパク質の形態を有する細胞成長因子と、少なくとも受容体結合ドメインを備えた不完全長タンパク質の形態を有する細胞成長ペプチドとを含有させた化粧料。
【請求項2】
前記細胞成長因子は上皮成長因子であり、前記細胞成長ペプチドは、上皮成長因子受容体結合ドメインを備えた11〜15のアミノ酸残基からなるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記細胞成長因子の含有量を0.00001〜10W/W%とし、前記細胞成長ペプチドの含有量を0.00001〜25W/W%としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
線維芽細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた8〜12のアミノ酸残基からなるペプチド、肝細胞増殖因子受容体結合ドメインを備えた3〜7のアミノ酸残基からなるペプチド、インスリン様成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14のアミノ酸残基からなるペプチド、トランスフォーミング成長因子受容体結合ドメインを備えた10〜14アミノ酸残基からなるペプチド、チモシンβ4受容体結合ドメインを備えた6〜10アミノ酸残基からなるペプチドから選ばれる少なくともいずれか1つのペプチドを更に含有させたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
保水機能を有する多糖類を含有させるとともに、水分含量を10〜99.9925W/W%に調製したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記多糖類の含有量を0.001〜25W/W%としたことを特徴とする請求項5に記載の化粧料。
【請求項7】
前記多糖類は、プロテオグリカンであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の化粧料。
【請求項8】
リン脂質を含有させたことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項9】
pHを3〜11に調整したことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2012−236808(P2012−236808A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108339(P2011−108339)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(502087116)株式会社ツツミプランニング (4)
【Fターム(参考)】