説明

化粧料

【課題】ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum)のサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の抽出物よりもすぐれた皮膚生理活性と当該抽出物には認められなかった皮膚生理活性を備え、しかも皮膚刺激性及び保存安定性が上記抽出物より顕著に改善されたサンショウ由来成分であり、並びに当該成分を配合してなり、すぐれた美肌化効果と高い生体安全性を兼ね備え、しかも品質保持性の良好な化粧料を提供する。
【解決手段】ミカン科サンショウ属の植物であるサンショウの抽出物を酵素で処理して得られる酵素加水分解物を有効成分とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン科サンショウ属のサンショウから得られ、すぐれた皮膚生理活性と改善された生体安全性を有する化粧料配合成分並びにかかる成分を配合してなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な天然物由来の抗老化成分(抗酸化成分、保湿成分など)の研究が行われ、生薬としても知られている山椒の抽出物が老化防止作用を有することが報告されている。ここで、「山椒」とは、ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であるサンショウ(Zanthoxylum piperitum)であり、その種子や果皮等が老化防止作用(抗酸化作用、コラゲナーゼ活性阻害作用、エラスターゼ活性阻害作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用)を有し、サンショウの抽出物を化粧料配合成分として利用可能であることが報告されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2001−354958号
【特許文献2】特開2003−342123号
【特許文献3】特開2003−342184号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、サンショウの抽出物は老化防止作用を有することから化粧料配合剤としての利用が検討されてきたが、サンショウの抽出物は皮膚刺激性が高いことから、化粧料配合原料として見た場合、安全性の点で問題を有していた。さらに、サンショウの抽出物は十分な老化防止効果を発揮するものではないという問題点もあった。さらに、サンショウの抽出物は経時的に着色、澱が発生するという安定性の問題点も有していた。
【0004】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑みて、鋭意研究を行った結果、サンショウの抽出物を酵素により加水分解することで皮膚刺激性を顕著に抑え、かつ、安定性を改善することもでき、かつ、表皮細胞内のセラミド合成酵素(β−グルコセレブロシダーゼ)活性亢進作用が新たに創出され、さらに、抽出物と比較して格段にすぐれた表皮細胞賦活効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であるサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の抽出物を酵素で加水分解処理して得られる酵素加水分解物を有効成分とする化粧料である。
また、本発明に於いて、上記酵素は蛋白質分解酵素であることを特徴とする。
また、本発明に於いて、上記酵素が蛋白質分解酵素及び脂肪分解酵素の組み合わせであることを特徴とする。
また、本発明に於いて、上記酵素加水分解物は、サンショウの種子の抽出物を酵素で加水分解処理して得られたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ミカン科サンショウ属の植物であるサンショウの抽出物を酵素で加水分解処理して得られる酵素加水分解物を有効成分とする化粧料であって、当該酵素加水分解物は、酵素未処理のサンショウの抽出物と比較して皮膚刺激性が顕著に抑制され、かつ、安定性も改善されることから、皮膚に適用した場合に紅斑等の発生の恐れがなく、又保管中の着色や澱の発生も抑制することができ、生体安全性及び保存安定性の高い化粧料を提供することができる。
【0007】
さらに、本発明の有効成分であるサンショウの抽出物の酵素加水分解物は、酵素未処理のサンショウの抽出物にはないセラミド合成酵素活性亢進作用を有し、かつ、表皮細胞賦活効果も当該抽出物と比較して顕著に亢進されることから、当該酵素加水分解物を配合した化粧料は、格段にすぐれた肌のハリ、ツヤの改善、及びシワ、タルミ等の皮膚の老化現象の予防、改善効果を奏する。
なお、本明細書において化粧料なる文言は、所謂化粧料のほかに医薬部外品までも含む広義で用いる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる「サンショウ」とは、ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であるサンショウ(Zanthoxylum piperitum)である。
【0009】
本発明のサンショウの抽出物の酵素加水分解物の調製には、サンショウの種子、種皮、果実、果皮、花、葉、茎、枝、樹皮、花、全草等の適宜の部分、好ましくは種子を必要に応じて必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、浸漬法、向流法、又は超臨界抽出法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることで行うことが可能である。
【0010】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n−ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0011】
それら抽出溶媒のうちでも、得られる抽出物溶液の有効性並びに酵素加水分解処理への移行の容易性及び効率等の観点から、水、水と低級アルコール類(特にエタノール)との混合溶媒、又は水と多価アルコール類(特に1,3−ブチレングリコールもしくはプロピレングリコール)との混合溶媒の使用等が挙げられるが、なかでも水の単独使用が最も好ましい。
【0012】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば、水とエタノールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で100:1〜1:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば100:1〜1:4、水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、100:1〜1:2の範囲とすることが好ましい。
【0013】
抽出物の調製に際して、そのpHに特に限定はないが、一般には2〜8の範囲とすることが好ましい。かかる意味で、必要であれば前記抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤、又はクエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0014】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば水を抽出溶媒とする場合であれば、抽出温度は一般に4〜90℃、好ましくは20℃〜60℃の範囲が好ましく、また、抽出時間は一般に1〜8時間、好ましくは2〜6時間の範囲が好ましい。
【0015】
次に、ここで得られる抽出物溶液に酵素加水分解処理を施す。ここで、抽出物溶液の調製に水以外の溶媒(水とエタノール、又は水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒)を用いる場合は、抽出物から一旦抽出溶媒を除去し、ここに得られる抽出物を水に再溶解した上で酵素分解処理を行う。
【0016】
加水分解処理に用いる酵素としては、例えば、プロテアーゼ活性及びリパーゼ活性を有することが知られているニューラーゼF3G(天野エンザイム株式会社製品)が挙げられる。また、アクチナーゼ、ペプシン、パパイン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、ブロメラインなどの蛋白質分解酵素、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼなどの澱粉分解酵素、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼなどの繊維素分解酵素、及びリパーゼなどの脂肪分解酵素から選ばれた1種又は2種以上を用いても良く、特にそれら4種の酵素群からそれぞれ選ばれた1種又は2種以上の酵素を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、蛋白質分解酵素及び脂肪分解酵素を組み合わせて用いることが最も好ましい。
【0017】
酵素による加水分解処理は、サンショウの抽出物溶液に上記の酵素の1種又は2種以上を添加し、用いた酵素の至適pH及び至適温度付近の条件下で酵素反応を行ことによって実施される。2種以上の酵素を組み合わせ用いる場合は、用いる酵素の特性に応じて、2種以上の酵素を同時に作用させてもよく、又反応条件を変えもしくは変えずして順次作用させるようにしてもよい。
【0018】
酵素の使用量は、サンショウ抽出物溶液の固形分100重量部に対して、1種の酵素につき0.001〜50重量部の範囲とするのがよく、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。又、酵素処理の時間は、用いる酵素の種類等によっても異なるが、一般には0.5〜24時間の範囲であり、好ましくは1〜6時間の範囲である。なお、以上の酵素処理は、場合によってはその前工程である抽出処理の際それと同時に行ってもよい。
【0019】
上記酵素による処理後、酵素処理液を例えば80℃以上に加熱する方法など適宜の方法を用いて酵素を失活させ、酵素加水分解物溶液を得る。
【0020】
以上のように得られる酵素加水分解物溶液は、一般にはpHを2〜8に調整した上、これをそのまま化粧料に配合するか、もしくは必要ならば減圧濃縮等により所定の濃度に調整した上化粧料に配合される。又場合によっては、スプレードライ法、凍結乾燥法など常法に従って粉末化してもよい。
【0021】
以上のように調製される本発明の酵素加水分解物は、後述の試験例に示す通り、皮膚に対する刺激性が少なく生体安全性にもすぐれ、かつ、格段にすぐれたセラミド合成酵素亢進効果及び表皮細胞賦活効果を有するので、当該加水分解物を配合した化粧料は、肌のハリ、ツヤを改善し、又シワ、たるみの発生を予防、改善することができる。
【0022】
本発明の加水分解物を含む化粧料としては、例えば乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パックなどの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉などのメイクアップ化粧料、洗顔料、ボディシャンプー、石けんなどの清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の化粧料における酵素加水分解物の配合量は、当該酵素加水分解物の固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.002〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%の範囲、又清浄用化粧料の場合は、一般に0.002〜10.0重量%、好ましくは0.02〜7.0重量%の範囲である。
【0024】
本発明の化粧料には、必須成分の酵素加水分解物のほかに、通常化粧料に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明の酵素加水分解物の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分と組み合わせて化粧料に配合することも何ら差し支えない。
【0025】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
また、乳化剤乃至乳化助剤として、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ジュアゼイロ(Rhamnaceae zizyphus joazeiro)抽出物等を配合することもできる。
【0027】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、乳酸菌醗酵米、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、ビャッキュウ抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0028】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;ビャッキュウ抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物等がある。
【0030】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、小豆など)のパウダー等がある。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0032】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、ビャッキュウ抽出物、イネ抽出物等がある。
【0033】
生理活性成分としては、例えば美白成分として、t−シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4−メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオール)、4−HPB(ロドデノール、4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ブタノール))、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)、胎盤抽出液、ニコチン酸及びその誘導体、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀類)、白芥子抽出物、白芥子加水分解抽出物、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子発酵物、シャクヤク抽出物、党参抽出物、ハトムギ発酵物、ローヤルゼリー発酵物、酒粕発酵物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海草の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体等が、又皮膚老化防止・美肌化成分として、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナ抽出物、甘草抽出物、ハトムギ抽出物、ニンジン抽出物、アロエ抽出物などの生薬抽出物、米抽出物加水分解物、米糠抽出物加水分解物、米醗酵エキス、ミツイシコンブ抽出物、アナアオサ抽出物、アマモ等の海草の抽出物、ソウハクヒ抽出物、ジュアゼイロ(Rhamnaceae zizyphus joazeiro)抽出物等がある。
【0034】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、L−アスコルビン酸−2−グルコシド(2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)、L−アスコルビン酸−5−グルコシド(5−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L−アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3−O−エチルアスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−O−パルミテートナトリウム等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド)、α−アルブチン(ハイドロキノン−α−D−グルコピラノシド)等が、レゾルシノール誘導体としては、例えば4−n−ブチルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール等が、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5−ジアセトキシ安息香酸、2−アセトキシ−5−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、ビタミンE誘導体としては、例えばビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等が、α−ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α−ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0035】
次に、製造例、実施例(処方例)及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、又%はすべて重量%を意味する。
【0036】
製造例1.サンショウの種子の酵素加水分解物の調製(1)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、ニューラーゼF3G(天野エンザイム株式会社製品)0.6gを添加し、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物溶液420gを得た(固形分濃度0.69%)。
【0037】
製造例2.サンショウの種子の酵素加水分解物の調製(2)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、アクチナーゼ0.3g、及びリパーゼ0.3gを添加し、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物溶液415gを得た(固形分濃度0.68%)。
【0038】
製造例3.サンショウの種子の酵素加水分解物の調製(3)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、パパイン0.3g及びリパーゼ0.3gを添加し、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物418gを得た(固形分濃度0.69%)。
【0039】
製造例4.サンショウ種子の酵素加水分解物の調製(4)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、アクチナーゼ0.3g、及びパパイン0.3gを添加し、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物溶液425gを得た(固形分濃度0.68%)。
【0040】
製造例5.サンショウの種子の酵素加水分解物の調製(5)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、アクチナーゼ0.6gを添加し、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物溶液420gを得た(固形分濃度0.67%)。
【0041】
製造例6.サンショウの種子の酵素加水分解物の調製(6)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、40℃で3時間抽出を行った後ろ過して抽出物溶液を得た。この抽出溶液に対して、ニューラーゼF3G(天野エンザイム株式会社製品)0.6gを添加し、40℃で3時間加水分解酵素処理を行い、次いで、80℃で1時間加熱して酵素を失活させた後ろ過し、褐色透明の酵素加水分解物溶液418gを得た(固形分濃度0.67%)。
【0042】
比較製造例1.サンショウの種子抽出物の調製(1)
ミカン科サンショウ属のサンショウの種子を乾燥、粉砕し、粉砕物60gに精製水600gを混合した後、40℃で4時間抽出を行った後ろ過し、褐色透明のサンショウの種子抽出物溶液425gを得た(固形分濃度0.65%)。
【0043】
実施例1.クリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 5.0
ヘキサラン(注1) 4.0
パラフィン 5.0
グリセリルモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 6.0
ブチルパラベン 0.1
(注1)株式会社テクノーブル製 トリオクタン酸グリセリル
[B成分]
製造例1の酵素加水分解物 5.0
グリセリン 5.0
カルボキシメチルモノステアレート 0.1
モイストン・C (注2) 1.0
精製水 全量が100部となる量
(注2)株式会社テクノーブル製 NMF成分
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合してクリームを得た。
【0044】
実施例2.クリーム
実施例1の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例2の酵素加水分解物を配合する他は、実施例1と同様にしてクリームを得た。
【0045】
実施例3.クリーム
実施例1の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例3の酵素加水分解物を配合する他は、実施例1と同様にしてクリームを得た。
【0046】
実施例4.クリーム
実施例1の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例4の酵素加水分解物を配合する他は、実施例1と同様にしてクリームを得た。
【0047】
実施例5.クリーム
実施例1の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例5の酵素加水分解物を配合する他は、実施例1と同様にしてクリームを得た。
【0048】
実施例6.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例1の酵素加水分解物 5.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0049】
実施例7.乳液
実施例6の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例2の酵素加水分解物を配合する他は、実施例6と同様にして乳液を得た。
【0050】
実施例8.乳液
実施例6の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例3の酵素加水分解物を配合する他は、実施例6と同様にして乳液を得た。
【0051】
実施例9.乳液
実施例6の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例4の酵素加水分解物を配合する他は、実施例6と同様にして乳液を得た。
【0052】
実施例10.乳液
実施例6の[B成分]に於ける製造例1の酵素加水分解物に代えて、製造例5の酵素加水分解物を配合する他は、実施例6と同様にして乳液を得た。
【0053】
実施例11.ローション
[A成分] 部
製造例1の酵素加水分解物 5.0
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
香料 適量
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を混合してローションを得た。
【0054】
実施例12.化粧水
[A成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール
5.0
ブチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例1の酵素加水分解物 5.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料
適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して化粧水を得た。
【0055】
実施例13.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例1の酵素加水分解物 5.0
L−アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0056】
実施例14.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム2.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0057】
実施例15.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム2.0部を用いるほかは実施例5と同様にして乳液を得た。
【0058】
実施例16.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン2.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0059】
実施例17.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えて米糠抽出物加水分解物(株式会社テクノーブル製、商品名「グレイスノウ*雪*HP」、固形分濃度3.5%)5.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0060】
実施例18.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えて白芥子抽出物(株式会社テクノーブル製、商品名「シナブランカ−WH」、固形分濃度1.0%)5.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0061】
実施例19.乳液
実施例13のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてγ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸1.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0062】
実施例20.乳液
実施例5のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてトラネキサム酸2.0部を用いるほかは実施例13と同様にして乳液を得た。
【0063】
実施例21.リクイドファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 2.4
モノステアリン酸プロピレングリコール 2.0
セトステアリルアルコール 0.2
液状ラノリン 2.0
流動パラフィン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.5
プロピルパラベン 0.05
[B成分] 部
製造例1の酵素加水分解物 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
ベントナイト 0.5
プロピレングリコール 4.0
トリエタノールアミン 1.1
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分] 部
酸化チタン 8.0
タルク 4.0
着色顔料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ加温した後混合攪拌した。これを再加温し、上記のC成分を添加して型に流し込み、室温になるまで攪拌してリクイドファンデーションを得た。
【0064】
実施例22.クリームファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 5.0
セタノール 2.0
モノステアリン酸グリセリル 3.0
流動パラフィン 5.0
スクワラン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸グリセリル 2.0
プロピルパラベン 0.1
[B成分] 部
製造例1の酵素加水分解物 5.0
ソルビトール 3.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
トリエタノールアミン 1.5
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分] 部
酸化チタン 8.0
タルク 2.0
カオリン 5.0
ベントナイト 1.0
着色顔料 適 量
[D成分]
香料 0.3
C成分を混合し、粉砕機で粉砕した。B成分を混合し、これに粉砕したC成分を加え、コロイドミルで均一分散させた。A成分及び均一分散させたB、C成分をそれぞれ80℃に加温後、B、C成分にA成分を攪拌しながら加え、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、D成分を加えて攪拌混合し、さらに攪拌しながら30℃以下まで冷却してクリームファンデーションを得た。
【0065】
実施例23.ボディシャンプー
[A成分] 部
N−ラウロイルメチルアラニンナトリウム 25.0
ヤシ油脂肪酸カリウム液(40%) 26.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
メチルパラベン 0.1
[B成分] 部
製造例1の酵素加水分解物 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してボディシャンプーを得た。
【0066】
試験例1.皮膚刺激性試験(SIRC刺激性評価試験)
製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物、及び比較製造例1のサンショウの種子の抽出物を試料として用い、それらの皮膚刺激性を調べた。
[試験方法]
【0067】
ウサギ眼粘膜細胞SIRCを、10%FBS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに5×10個/穴播種し、37℃、5.0%COの条件下に3日間プレ培養した後、製造例1の酵素加水分解物及び比較製造例1の抽出物に1,3−ブチレングルコール溶液を添加して調製した試料溶液(1,3−ブチレングルコール溶液の濃度が30%となるように添加した)を、それぞれ濃度(溶液として)が2.5%、5.0%、10.0%となるように培地に添加し、同条件でさらに2日間培養した。ここで、培地に添加したときの溶液の濃度とは、製造例1の酵素加水分解物、及び比較製造例1の抽出物の試料溶液としての濃度であり、それぞれの固形分濃度は、製造例1の酵素加水分解物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.017%、溶液濃度が5.0%の場合は0.034%、溶液濃度が10.0%の場合は0.068%となり、又比較製造例1の抽出物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.016%、溶液濃度が5.0%の場合は0.032%、溶液濃度が10.0%の場合は0.064%となる。2日間培養後、培地を除去し、0.0052%のニュートラルレッド含有培地を200μL添加して、37℃に3時間保持した後、細胞に取り込まれたニュートラルレッドを1%酢酸含有エタノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model
680、バイオラッド社製)を用いて波長540nmでニュートラルレッド取り込み量を測定した。また、試料溶液に代えて、コントロールとして、30%1,3−ブチレングリコール溶液を上記各試料濃度と等しい量だけ添加した場合についても上記と同様の操作を行い、これをそれぞれの対照とした。ここで、ニュートラルレッドは、損傷を受けていない細胞により取り込まれる可溶性色素であることから、当該色素の取り込み量により、各試料の細胞に対する刺激性を試験することが可能である。測定結果は、コントロールを100%としたときの各試料溶液の相対値をニュートラルレッドの取込率(%)とした。
【0068】
[結果]
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]

【0069】
表1に示すように、比較製造例1のサンショウの種子の抽出物を試料として用いたときにはニュートラルレッドの取込率が濃度依存的に著しく低下したことから、当該抽出物は皮膚刺激性が高いことが明らかになった。これに対して、本発明に係る製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物では非酵素処理物である上記抽出物と比較して多くの量のニュートラルレッドが取り込まれていることから、サンショウの種子の抽出物に酵素加水分解処理を施すことで、皮膚刺激性が顕著に抑制されることが明らかになった。
【0070】
試験例2.セラミド合成酵素(β-グルコセレブロシダーゼ)活性測定
製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物、及び比較製造例1のサンショウの種子の抽出物を試料として用い、それらのβ-グルコセレブロシダーゼ活性促進効果を調べた。
[試験方法]
ヒト表皮細胞PHK16‐0bを、96穴マイクロプレートに1×10 個/穴播種した。培地は、MCDB153培地(SIGMA社製)に添加剤エピダーセルHKGS(クラボウ社製)を加えたものを用いた。これを37℃,5.0%COの条件下に3日間プレ培養した後、製造例1の酵素加水分解物、比較製造例1の抽出物を試料として、当該試料が2.5%の濃度(当該濃度は製造例1の酵素加水分解物、及び比較製造例1の抽出物の溶液としての濃度であり、それぞれの固形分濃度は、製造例1の酵素加水分解物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.017%、又比較製造例1の抽出物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.016%となる)となるように培地に添加し、同条件でさらに4日間培養した。次に、培地を除去し、PBS(-)で洗浄した後、PMSF含有1%TritonX−100溶液を添加し、細胞の溶解操作を行ったものを酵素溶液とした。次いで、基質溶液(1mMの4‐Methylumbelliferyl-β-Glucopyranoside)を加え、ボルテックスミキサーで穏やかに攪拌しながら37℃で1時間反応させた。反応停止液(0.2M carbonate bicarbonate buffer(pH10.5))を加えて反応停止させた後、蛍光強度(励起:355nm、放射:460nm:蛍光マイクロプレートリーダー(フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製))を測定した。また、試料溶液に代えてPBS(-)を添加した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られた蛍光強度に対する各試料添加時の蛍光強度の相対値を求め、表皮細胞内のβ-グルコセレブロシダーゼ活性亢進率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として0.0025%のβ-ガラクトセレブロシドを添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0071】
[結果]
結果を表2に示す。
[表2]

【0072】
表2に示すように、製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物に於いては、比較製造例1のサンショウの種子の抽出物が有していなかったβ-グルコセレブロシダーゼ活性促進作用が新たに創出されたことが明らかとなった。なお、陽性対照であるβ-ガラクトセレブロシドを試料として用いた場合もβ-グルコセレブロシダーゼ活性が確認されたことから、本試験系が正常に行われたことも確認された。
【0073】
試験例3.表皮細胞賦活試験
製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物、及び比較実施例1のサンショウの種子の抽出物を試料として用い、それらの表皮細胞賦活作用を調べた。
[試験方法]
ヒト表皮細胞PHK16−0b(Lot.040817(4))を、96穴マイクロプレートに1×10個/穴の濃度となるように播種した。培地としては、MCDB153(SIGMA社製)に増殖促進剤としてエピダーセルHKGS(クラボウ社製)を添加したものを用いた。37℃で2日間プレ培養した後、製造例1の酵素加水分解物、比較製造例1の抽出物を試料として、当該試料が2.5%、5.0%の濃度(当該濃度は製造例1の酵素加水分解物、及び比較製造例1の抽出物の溶液としての濃度であり、それぞれの固形分濃度は、製造例1の酵素加水分解物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.017%、溶液濃度が5.0%の場合は0.034%となり、又比較製造例1の抽出物に於いて溶液濃度が2.5%の場合は0.016%、溶液濃度が5.0%の場合は0.032%となる)となるように培地に添加し、37℃でさらに4日間培養した。次に培地を除去し、PBS(−)を用いて調製した0.03%のMTT溶液を添加して37℃に保持した後、マイクロプレートリーダー(MODEL680、バイオラッド社製)を用い、波長570−630nmでMTT値を測定した。試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値に対する各試料添加時のMTT値の相対値を求め、ヒト表皮細胞MTT活性率(%)とした。なお比較のため、試料溶液の代わりにグルコースを100mM添加した場合(陽性対照)についても、同様の試験を行った。
【0074】
[結果]
結果を表3に示す。
[表3]

【0075】
表3に示すように、製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物は、濃度依存的に、比較製造例1のサンショウの種子の抽出物と比較して格段にすぐれた表紙細胞賦活効果を示すことが明らかになった。なお、陽性対照であるグルコースを試料として用いた場合も表皮細胞賦活を示す結果が確認されたことから、本試験系が正常に行われたことも確認された。
【0076】
また、製造例1のサンショウの種子の酵素加水分解物は、比較製造例1のサンショウの種子の抽出物において経時的に生じる着色、澱が顕著に抑えられることも明らかとなった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科(Rutaceae)サンショウ属(Zanthoxylum)の植物であるサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の抽出物を酵素で加水分解処理して得られる酵素加水分解物を有効成分とする化粧料。
【請求項2】
上記酵素が蛋白質分解酵素であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
上記酵素が蛋白質分解酵素及び脂肪分解酵素の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
上記酵素加水分解物が、サンショウの種子の抽出物を酵素で加水分解処理して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧料。


【公開番号】特開2012−240971(P2012−240971A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113101(P2011−113101)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000162021)共栄化学工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】