説明

化粧料

【課題】
アマモ科アマモ属の植物の抽出物は紫外線吸収性を有することから、安全性の面で課題を有していた現状に鑑みて、紫外線吸収性を示さず生体安全性にすぐれたアマモ科アマモ属に属する植物の抽出物の処理方法を見出し、かつ、当該処理方法により得られ、すぐれた皮膚生理活性を有する処理物を含む化粧料を提供することを目的する。
【解決手段】
本発明は、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理及び発酵処理のうちいずれか1種又は2種以上の処理を施して得られる処理物を配合することを特徴とする化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性が高く、かつ、すぐれた美肌、美白効果を示し、外用医薬部外品、基礎化粧料をはじめ、メイクアップ化粧料、浴用剤、毛髪化粧料等としても有用な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海産顕花植物、例えば、アマモ科アマモ属の植物から得られる抽出物が、高い保湿力とすぐれたチロシナーゼ活性抑制作用、抗酸化作用および紫外線吸収性を併せ持ち、当該抽出物がすぐれた化粧料材料であることが知られていた(特許文献1、非特許文献1)。さらに、海産顕花植物の抽出物が、テストステロン−5α−リダクターゼ阻害作用に基づく養毛・育毛効果を示すことも知られている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特許第2971549号
【特許文献2】特開2006−306816号
【非特許文献1】内藤和文等 FRAGRANCE JOURNAL Vol.27, No.1 p114-118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、海産顕花植物に属する植物(例えば、アマモ科アマモ属植物)から抽出物を製造すると、上記特許文献1に示されているように、その抽出物が紫外線吸収性を示す、すなわち、紫外領域に吸収極大を有する場合がある。このように、紫外領域に吸収極大を有するということは、その抽出物が皮膚を紫外線から守るという利点がある一方で、当該抽出物に含まれる成分が紫外線を吸収して励起し、皮膚に対して光毒性(刺激性)及び/又は光感作性を示す可能性があることを意味し、その意味から海産顕花植物に属する植物から得られる抽出物には皮膚化粧料用途への適用に際して、解決すべき課題があると言える。
さらに、近年、紫外線、ストレス、加齢等の様々な要因によって生じる皮膚の老化やトラブルを、より多面的かつ効果的に予防・改善することができる化粧料が求められ、従来、有用な化粧料材料として知られている海産顕花植物についても、さらなる有効性の創出及び向上が求められている。
【0005】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み、それらの問題点を解消し、改善する方法について鋭意研究、検討を重ねた結果、海産顕花植物に属する植物から得られる抽出物に、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、又は微生物による発酵処理を施すことにより、それらの処理が施されてない抽出物が有していた有効性を保持しながら紫外線吸収性を示さない処理物が得られること、かつ、当該処理により線維芽細胞賦活効果が新たに創出されることを見出し、当該処理物を化粧料配合剤として使用した場合、美肌及び美白効果にすぐれ、かつ、生体安全性にすぐれた化粧料を提供することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、アマモ科 (Zosteraceae)アマモ属 (Zostera sp.) の植物の抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理及び発酵処理のうちいずれか1種又は2種以上の処理を施して得られる処理物を配合した化粧料である。
なお、ここで、化粧料なる文言は、所謂化粧料のほかに医薬部外品をも含む広義で用いる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、海産顕花植物であるアマモ科アマモ属の植物から得られる抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理及び発酵処理のうちいずれか1種又は2種以上の処理を施して得られる処理物を化粧料に配合したことから、紫外線吸収性を示さず、かつ、格段にすぐれた皮膚生理活性(線維芽細胞賦活作用、保湿作用、抗酸化作用、及び美白作用)を有する前記処理物の作用により、すぐれた美肌及び美白効果を奏し、かつ、安全性にすぐれた化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、製造例1のアマモ科アマモ属植物の抽出物に活性炭処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図2】図2は、製造例2のアマモ科アマモ属植物の抽出物に活性炭処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図3】図3は、製造例3のアマモ科アマモ属植物の抽出物に酵母発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図4】図4は、製造例4のアマモ科アマモ属植物の抽出物に酵母発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図5】図5は、製造例5のアマモ科アマモ属植物の抽出物に乳酸菌発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図6】図6は、製造例6のアマモ科アマモ属植物の抽出物に乳酸菌発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、製造例7のアマモ科アマモ属植物の抽出物に納豆菌発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図8】図8は、製造例8のアマモ科アマモ属植物の抽出物にテンペ菌発酵処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図9】図9は、製造例9のアマモ科アマモ属植物の抽出物に非イオン性多孔性樹脂による吸着処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図10】図10は、製造例10のアマモ科アマモ属植物の抽出物に非イオン性多孔性樹脂による吸着処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図11】図11は、製造例11のアマモ科アマモ属植物の抽出物に限外濾過処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図12】図12は、製造例12のアマモ科アマモ属植物の抽出物(比較製造例1)に活性炭処理を施した処理物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【図13】図13は、比較製造例1のアマモ科アマモ属植物の抽出物の紫外線極大吸収波長の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、海産顕花植物であるアマモ科アマモ属の植物から抽出物を調製し、この抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理及び発酵処理のうちいずれか1種又は2種以上の処理を施して得られる処理物を配合した化粧料である。以下、本発明におけるアマモ科アマモ属に属する植物の抽出物の調製法、その抽出物に対する活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理の好ましい具体例について説明する。
【0010】
本発明の調製に用いる海産顕花植物であるアマモ科アマモ属の植物としては、例えばアマモ(Zostera marina)、 コアマモ(Zostera japonica)、オオアマモ(Zostera asiatica)、スゲアマモ(Zostera caespitosa)、タチアマモ(Zostera caulescens)などがあり、本発明に於いては、それらアマモ属植物のうちでも、素材入手の容易性の点からアマモ(全草が好ましい)が最も好ましい。
【0011】
アマモ科アマモ属の植物の抽出物の調製は、抽出対象部位(例えば、全草)を、必要に応じて予め水洗、乾燥し、好ましくはさらに細切又は粉砕した上、浸漬法、向流抽出法など適宜の手段により抽出溶媒と接触させることで行うことが可能である。また、超臨界抽出法を用いることでも調製は可能である。
【0012】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、2−エチルヘキシルグリセライドなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n−ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独でもしくは二種以上混合して用いられる。なかでも化粧料への幅広い適用が可能であるという点から、水、低級アルコール類及び多価アルコール類から選ばれた一種の単独溶媒又は二種以上の混合溶媒の使用が好ましく、なかでも水の単独使用が最も好ましい。
【0013】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエチルアルコールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1〜25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1〜20:1、又水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1〜20:1の範囲とすることが好ましい。
【0014】
本発明の抽出物の調製に際して、抽出液のpHは4〜8の範囲に保持されることが好ましく、かかる意味で、必要ならば上記の抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニンなどのアルカリ性調整剤や、クエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤等を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0015】
抽出温度、時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類、抽出方法等によっても異なるが、例えば浸漬法の場合であれば、抽出温度は、4〜90℃の範囲が好ましく、又抽出時間は0.1〜1週間程度が好適である
【0016】
乾燥アマモ全草と上記抽出媒体との混合比は、重量比で一般に1:1〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:10〜1:100、より好ましくは1:20〜1:50の範囲である。乾燥アマモはかさ比重が小さいことから、アマモの量比が大き過ぎると液との接触が不良になり、素材が有効に利用できない、また、液が素材に吸収されて収量が少量になるといった状態となる可能性がある。
【0017】
以上の抽出条件による抽出処理の後、次に、海産顕花植物であるアマモ科アマモ属の植物からの抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂等を用いた吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を施す。
【0018】
吸着処理に用いる活性炭としては、松などの木、竹、椰子殻、胡桃殻などの植物質のほか、石炭質、石油質などを原材料としても良い。また、上記活性炭の原材料に水蒸気や二酸化炭素、空気などのガスを使う高温炭化法などの物理的な方法や塩化亜鉛などの化学薬品を使って処理した上で加熱し、多孔質にしたものや、化学的な方法による活性化処理を施して得られるものなどを利用しても良い。いずれの活性炭を使用しても、紫外線吸収作用が消失し、かつ、線維芽細胞賦活効果が創出され、さらに、保湿効果、抗酸化効果、美白作効果が保持されるが、効果の強さの点から、松などの木、竹、椰子殻、胡桃殻などの植物質を原材料にしたものを物理的な方法で活性化した活性炭が好ましい。また、活性炭の形状としては顆粒状〜微粉末まで様々の粒子径のものがあるが、吸着能力から微粉末が望ましい。
【0019】
吸着処理のための活性炭の添加量は、抽出物の固形分に対して0.01〜10.0重量部、望ましくは0.1〜5.0重量部、さらに望ましくは0.5〜2重量部であり、これよりも少ないと紫外線吸収性が充分に消失せず、また、これよりも多いと有効性を示す成分まで除去してしまう可能性がある。
【0020】
活性炭の混合、撹拌処理の時間は1分〜8時間、望ましくは10分〜3時間、より望ましくは30分〜2時間であり、これよりも短いと紫外線吸収性が充分に消失せず、また、これよりも長くても吸着はある程度以上には進行せず無駄であるだけでなく、有効性を示す成分まで除去してしまう可能性がある。
【0021】
上記抽出物に対して活性炭処理を施す場合、粉末状又は粒状の活性炭を抽出物に添加、撹拌した後、当該活性炭を除去する方法、抽出物を活性炭カラムに流して処理する方法、あるいは活性炭を含む濾紙やカートリッジフィルターに抽出物を通す方法などが通常用いられるが、吸着効率の観点から、抽出物に活性炭を添加して、撹拌する処理が最も好ましい。活性炭の原料としては、おが屑、松や竹の木材チップ、木炭、ヤシ殻などの植物性素材の他、草炭や泥炭などの石炭類、あるいは石油などが挙げられるが、万が一の抽出液への溶出成分を考慮すると、植物性素材の活性炭が好ましい。さらに、吸着性能を考慮すると、粉末活性炭が好ましく、その粒子径は100メッシュの篩通過(0.15mm)以下が好ましい。しかし、あまり細かすぎると、製品からの除去が困難であることから、孔径0.45μmあるいは0.2μmのメンブランフィルターで捕捉できる0.5μm(0.0005mm)以上が好ましい。
【0022】
また、吸着剤として、非イオン性多孔性樹脂を使用することも可能である。非イオン性多孔性樹脂としては、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸エステル重合体などの樹脂を用いるが、比表面積が一般に100〜2000m/g、好ましくは300〜1000m/g、細孔容積が一般に0.1〜3.0mL/g、好ましくは0.5〜1.5mL/gの範囲にある多孔性樹脂が用いられる。かかる非イオン性多孔性樹脂としては、例えば、スチレン/ジビニルベンゼン系のダイヤイオンHP10、同20、同21、セパビーズSP800、同SP850、同SP700、同SP207(以上、三菱化学(株))、アンバーライトXAD4、同16、デュオライトS874、同877(ローム・アンド・ハース社)、メタクリル酸エステル系のダイヤイオンHP1MG、同2MG(三菱化学(株))、アンバーライトXAD7(ローム・アンド・ハース社)などが挙げられる。
【0023】
非イオン性多孔性樹脂による吸着処理の条件としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。例えばバッチ式であれば、抽出物の固形分1重量部に対して0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の非イオン性多孔性樹脂を加えて、4℃〜80℃、好ましくは20℃〜40℃で吸着させることができる。これよりも少ないと紫外線吸収性が充分に消失せず、また、これよりも多いと有効性を示す成分まで除去してしまう可能性がある。
【0024】
また、吸着処理時間としては、10分〜24時間、好ましくは30分〜3時間処理を行う。連続式の場合は、抽出物の固形分1重量部に対して50〜500重量部の非イオン性多孔性樹脂をカラムなどに充填し、30分〜3時間かけてエキスの溶液を通道させることで吸着処理を行うことができる。これよりも短いと紫外線吸収性が充分に消失せず、また、これよりも長くても吸着はある程度以上には進行せず無駄であるだけでなく、有効性を示す成分まで除去してしまう可能性がある。
【0025】
また、限外濾過処理を行う場合は、限外濾過装置に限外濾過膜を設置して濾過処理を行うが、濾過膜の濾過分子サイズについてはMWCO(分画分子量)5,000〜MWCO100,000が望ましく、それ以上のサイズであれば紫外線吸収性が充分に消失せず、また、これよりも小さいサイズであれば、有効性を示す成分まで除去してしまう可能性がある。濾過処理時間は、処理しようとする液量、液の流量、濾過膜の性能等によって異なるが、濾過処理前の液がなくなり、処理液のタンクに採集された時点を終点とする。
【0026】
上記吸着処理、又は限外濾過処理を施して得られる処理物は、一般にはpHを4〜8に調整した上、これをそのまま化粧料に配合するか、もしくは必要ならば減圧濃縮等により所定の濃度に調整した上化粧料に配合する。又場合によっては、スプレードライ法、凍結乾燥法など常法に従って粉末化してもよい。
【0027】
また、上記吸着処理(活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理)、又は限外濾過処理の単独処理でも、十分に、抽出液の紫外線吸収性を消失させ、かつ、線維芽細胞賦活効果を創出させることはできるが、必要に応じて、吸着処理及び限外濾過処理を組み合わせても良い。
【0028】
次に、アマモ科アマモ属に属する植物の抽出物に対して、発酵処理を行う場合の好ましい具体例について説明する。発酵処理に用いる菌としては、酵母、乳酸菌、納豆菌、又はテンペ菌等が挙げられ、それらの菌のいずれを用いた場合であっても、紫外線吸収性が消失し、かつ、線維芽細胞賦活効果が創出され、さらに、保湿効果、抗酸化効果、及び美白効果が保持されるが、効果の強さの点で酵母または乳酸菌がより好ましい。
【0029】
アマモ抽出物の発酵に用いる酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)(海洋起源のものも含む)、サッカロミセス・アワモリ(Saccharomyces awamori)、サッカロミセス・チェバリエリ(Saccharomyces chevalieri)、サッカロミセス・カールスバージェンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・バヨナス(Saccharomyces
bayonus)等のサッカロミセス属の酵母;トルラスポラ・デルブルエキ(Torulaspora delbruekii)、トルラスポラ・ファーメンタチ(Torulaspora fermentati)、トルラスポラ・ロゼイ(Torulaspora
rosei)等のトルラスポラ属の酵母;ジゴサッカロミセス・ローキシ(Zygosaccharomyces
rouxii)、ジゴサッカロミセス・ソーヤ(Zygosaccharomyces soya)、ジゴサッカロミセス・サケ(Zygosaccharomyces sake)、ジゴサッカロミセス・ミソ(Zygosaccharomyces
miso)、ジゴサッカロミセス・ラクティス(Zygosaccharomyces lactis)等のジゴサッカロミセス属の酵母;カンディダ・ベルサチリス(Candida versatilis)、カンディダ・エチェリシイ(Candida etchellsii)、カンディダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンディダ・サケ(Candida sake)、カンディダ・スコッティ(Candida scottii)等のカンディダ属の酵母等が使用可能であるが、中でも食品に最も広く利用され、発酵力が強いといった点で、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が最も好ましい。
【0030】
アマモ抽出物の発酵に用いる乳酸菌としては、例えば、マリニラクトバシルス・フィコロトレランス(Marinilactobacillus phychrotolerans)のような海洋起原の乳酸菌;ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(L.
brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)等のラクトバチルス(Lactobacillus)属の乳酸菌;カルノバクテリウム・ディバージェンス(Carmobacterium
divergens)、カルノバクテリウム・ピシコーラ(Carmobacterium piscicola)等のカルノバクテリウム(Carmobacterium)属の乳酸菌;ロイコノストック・メセントロイズ(Leuconostoc
mesenteroides)、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)等のロイコノストック(Leuconostoc)属の乳酸菌;ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus
faecalis)、ストレプトコッカス・ビオジェネス(Streptococcus pyogenes)等のストレプトコッカス属の乳酸菌;エンテロコッカス・カゼリフラバス(Enterococcus caseliflavus)、エンテロコッカス・サルフレウス(Enterococcus
sulfreus)等のエンテロコッカス(Enterococcus)属の乳酸菌;ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus
rafinolactis)等のラクトコッカス属の乳酸菌;ヴェイセラ・コンフューザ(Weissella confusa)、ヴェイセラ・カンドュレリ(Weissella kandleri)等のヴェイセラ属の乳酸菌;アトポビウム・ミニュタム(Atopobium minutum)、アトポビウム・パービュラス(Atopobiumparvulus)等のアトポビウム(Atopobium)属の乳酸菌;バゴコッカス・フルビアリス(Vagococcus
fluvialis)、バゴコッカス・サーモニナラ(Vagococcus salmoninarum)等のバゴコッカス(Vagococcus)属の乳酸菌;ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等のペディオコッカス(Pediococcus)属の乳酸菌等が使用可能であるが、それら乳酸菌のうちでも、得られる発酵物の作用効果の観点と取り扱いの容易性の点から、マリニラクトバシルス・フィコロトレランス(Marinilactobacillus phychrotolerans)の使用が最も好ましい。
【0031】
また、バシルス・ナットー(Bacillus natto)、バシルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等の納豆菌やリゾプス・ミクロスポラス オリゴスポラス(Rhizopus microsporus oligosporus)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus
oryzae)等のテンペ菌も同様に利用できる。
【0032】
発酵処理を行う場合に、アマモ科アマモ属に属する植物の抽出物の調製に使用する媒体としては、水、水とエタノール、プロパノールなどの低級アルコール類との混合液、水とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどのグリコール類との混合液、水とソルビトール、グルコースなどの糖類との混合液等を用いることができるが、発酵に用いる菌が最も作用し易いことと、アマモに含まれる成分以外に菌の栄養源となる成分を含まない点で、菌の生育に及ぼす因子が少ない水単独の使用が最も好ましい。
【0033】
発酵処理を行う場合、抽出物に対して殺菌処理を行うが、殺菌方法としては、抽出物を120〜130℃で10〜20分間加熱するオートクレーブ殺菌法や、80〜90℃に60〜120分間保持することを1日1回、2〜3日間繰り返す間断殺菌法といった加熱殺菌法が一般に用いられる。また、メンブランフィルター濾過による除菌処理も可能である。
【0034】
上述のように殺菌処理を行った後、無菌化した液を発酵タンクに入れ、これに微生物を植菌して発酵を行わせる。微生物の接種量は10〜10個/mLが適量である。接種量が上記の範囲より多くなっても発酵の進行時間は殆ど変わらず、一方上記の範囲より少なくなると発酵完了迄に長時間を要することとなって好ましくない。
【0035】
発酵温度は、5〜50℃の範囲であれば発酵が進行し目的の発酵物を得ることができるが、より好ましくは各菌の生育至適温度である25〜40℃の範囲である。発酵日数は、上記の至適温度で発酵を行う場合で一般に1〜10日であり、より好ましくは2〜5日である。発酵日数が1日より短いと発酵が十分に行われず、目的とする紫外線吸収性のない発酵物を得ることが困難となる。一方、発酵日数が10日を越えて長くなり過ぎても、紫外線吸収除去作用の向上が認められないだけでなく、かえって着色や発酵臭が強まるなどの不都合が生じ好ましくない。
【0036】
所定の発酵日数が経過したならば、発酵液を例えば80〜90℃で60〜120分間加熱する方法などを用いて殺菌し、発酵を停止させた後、濾過又は遠心分離などの固液分離手段を用いて不溶物を除去し、目的の発酵液を得る。ここに得られる発酵液は、一般にはpHを4〜8に調整した上、これをそのまま化粧料に配合するか、もしくは必要ならば減圧濃縮等により所定の濃度に調整した上化粧料に配合する。又場合によっては、スプレードライ法、凍結乾燥法など常法に従って粉末化してもよい。なお、発酵処理を施すことにより、既に抽出物は紫外線吸収性が認められない状態になっているが、色調を調整する目的で、発酵液に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理を施しても良い。
【0037】
なお、以上の活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、或いは限外濾過処理を行う前段階としての抽出物の調製時に、或いは当該抽出処理と並行して、酵素による加水分解処理を施すようにしてもよく、また、発酵処理を行う場合には、発酵前又は発酵と並行して酵素による加水分解処理を行っても良い。これによってアマモ科アマモ属に属する植物の成分がより有効に利用できる。
【0038】
酵素加水分解処理を行う場合、酵素としては糖質分解酵素、又は蛋白分解酵素から選ばれる少なくとも1種以上の酵素を用いるか、或いは糖質分解酵素又は蛋白分解酵素から選ばれる少なくとも1種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0039】
糖質分解酵素としては、例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルカナーゼ、β−キシラナーゼ、デキストラナーゼ、ポリガラクチュロナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンデメトキシラーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼなどを用いることができる。それらの酵素のうちでも、α−アミラーゼ、ペクチナーゼとセルラーゼが特に好ましい。
【0040】
また、蛋白分解酵素としては、例えばアクチナーゼなどのアクチナーゼ類、ペプシンなどのペプシン類、トリプシン、キモトリプシンなどのトリプシン類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類、グリシルグリシンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなどのペプチダーゼ類、ブロメラインなどを用いることができる。
それら酵素のうちでも、アクチナーゼなどのアクチナーゼ類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類が特に好ましい。
【0041】
酵素の使用量は、抽出時においては、乾燥したアマモの重量に対して、合計量で0.01〜5.0重量%の範囲とするのがよく、より好ましくは0.05〜2.0重量%の範囲である。発酵時においては、発酵しようとする液の固形分重量(蒸発残留物量から換算)の0.1〜2.0重量%が好ましい。
【0042】
また、酵素分解処理におけるpH、温度、時間などの処理条件は、用いる酵素の至適pH、至適温度付近で1〜24時間処理を行うようにすることが好ましい。
【0043】
本発明のアマモ科アマモ属に属する植物の活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理物、限界濾過処理物、或いは発酵処理物を配合してなる化粧料としては、例えば乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、洗顔料などの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リキッドファンデーション、メイクアッププレスパウダーなどのメイクアップ化粧料、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス、ヘアートリートメント、コンディショナー、染毛料、整髪料などの頭髪化粧料、洗顔料、ボディシャンプー、石けんなどの清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の化粧料中に於ける処理物の配合量は、固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.001〜3.0重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲、清浄用化粧料の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲、又浴剤の場合は、一般に0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%の範囲である。
【0045】
本発明の化粧料には、上記の必須成分の他に、通常化粧料に用いられる配合成分、例えば油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、色素、香料、抗酸化剤、生理活性成分等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0046】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブスクワランなどの植物由来の油脂類;スクワラン、ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0047】
界面活性剤としては,例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
又、乳化剤乃至乳化助剤として、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ジョアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物等を配合することもできる。
【0048】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、加水分解シルク蛋白質、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、フィトステロール、大豆リン脂質、イソステアリン酸コレステリル、海藻抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体(例えばトリメチルグリシンなど)、ビャッキュウ抽出物、豆乳発酵液、ハス種子発酵液、ハトムギ発酵液、ローヤルゼリー発酵液、米由来抽出物及びその発酵物等が挙げられる。
【0049】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分、ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリグルタミン酸及びその誘導体、グルコシルトレハロースと加水分解水添デンプンを主体とする糖化合物等が挙げられる。
【0050】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、プロポリスエキス、メチルイソチアゾリノン等がある。
【0051】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、6−又は12−ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、小豆など)のパウダー等がある。
【0052】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、ユビデカキノン(ユビキノン)、ルチン、ルチングルコシド、白芥子抽出物、イネ抽出物、ムラサキシキブ抽出物、シラカバ抽出物、ハマメリス抽出物、ウーロン茶抽出物、黒豆加水分解抽出液、ハゴロモグサ抽出液等がある。
【0053】
さらに必要ならば、本発明で用いる発酵物の作用効果及び特長を損なわない範囲で、他の生理活性成分(美白剤、皮膚老化防止・肌荒れ改善剤等)を配合してもよく、かかるものとしては、例えば美白剤であれば、t−シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、胎盤抽出物、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀類)、白芥子抽出物、白芥子加水分解抽出物、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子発酵物、党参抽出物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、ヒカゲノツルニンジン(Codonopsis
pilosula)抽出物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、ジンコウ抽出物、ハマメリス抽出物、イタドリ抽出物、サワヒヨドリ抽出物、甘草抽出物、フキタンポポ抽出物、アルテア抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ユキノシタ抽出物、ナツメ抽出物、シャクヤク抽出物、トウキ抽出物、モモ抽出物、コンブ等の海藻の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体等が、又皮膚老化防止・肌荒れ改善成分であれば、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、セラミドなどの細胞間脂質、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体(d,l−α−トコフェリルリン酸ナトリウムなど)、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、コエンザイムQ−10、α−リポ酸、エルゴチオネイン、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、カミツレエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米糠抽出物加水分解物、米抽出物加水分解物、低アレルゲン米抽出物加水分解物、米醗酵エキス、ミツイシコンブ抽出物、アナアオサ抽出物、海草の抽出物、ソウハクヒエキス、ジョアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物、ブナ抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、イチョウ抽出物、スギナ抽出物、ベニバナ抽出物、オタネニンジン抽出物、セイヨウニワトコ抽出物、ハゴロモグサ抽出物、レンゲ抽出物、マンゴー抽出物、チェリモヤ抽出物、マンゴスチン抽出物、タベブイア・インティギノーサ抽出物、酵母抽出物、卵殻膜抽出タンパク質、デオキシリボ核酸カリウム塩、ハス発酵液、水ナス抽出物、紫蘭根抽出物、ムラサキシキブ抽出物、イネ抽出物、サンゴ草抽出物、花粉荷エキス等が挙げられる。
【0054】
上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレートなどのコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシドなどのコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルナトリウム、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルマグネシウムなどのアスコルビン酸エステル塩類、3−O−エチルアスコルビン酸などのO−アルキルアスコルビン酸類、L−アスコルビン酸−2−グルコシド(2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)、L−アスコルビン酸−5−グルコシド(5−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)などのアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基など)、L−アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸テトララウリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、L−アスコルビン酸−2−リン酸−6−O−パルミテートナトリウム等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン−β−D−グルコピラノシド)、α−アルブチン(ハイドロキノン−α−D−グルコピラノシド)等が、レゾルシノール誘導体としては、例えば4−n−ブチルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール等が、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5−ジアセトキシ安息香酸、2−アセトキシ−5−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、ビタミンE誘導体としては、例えばビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等が、α−ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α−ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0055】
次に、製造例、試験例及び処方例(化粧料の実施例)を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下に於いて、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0056】
製造例1(アマモ抽出物の活性炭処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し 細切した。この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比
100:7)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。 これを濾過し、粉末活性炭を濾液重量の2%添加し、10分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の処理物(固形分含量 0.15重量%)約800gを得た。
【0057】
製造例2(アマモ抽出物の活性炭処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し 細切した。この乾燥物50gに水1kgを加え、80℃で2時間加熱抽出した。 これを濾過し、粉末活性炭を濾液重量の1%添加し、40分撹拌した。この液を濾過して微黄色の処理物(固形分含量 0.7重量%)約720gを得た。
【0058】
製造例3(アマモ抽出物の酵母発酵処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し、細切した。この乾燥物50gに水950gを加え、80℃で2時間加熱抽出した。これを濾過し、85℃で1時間加熱殺菌した後、海洋性酵母(Saccharomyces cerevisiae)を10個/mL接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後、培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却した。この液を濾過して黄色の酵母発酵処理物(固形分含量 1.4重量%)約700gを得た。
【0059】
製造例4(アマモ抽出物の酵素処理・酵母発酵・活性炭処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し、細切した。この乾燥物50gに水950gを加え、80℃で2時間加熱抽出した。これを濾過し、85℃で1時間加熱殺菌した後、溶液中の固形分の量に対してセルラーゼ0.5%及びペクチナーゼ0.5%を加え、さらに、海洋性酵母(Saccharomyces cerevisiae)を10個/mL接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後、培養液を加熱殺菌し、室温まで冷却した。この液を濾過し、粉末活性炭を濾液重量の1%添加し、60分撹拌した。活性炭処理液を濾過して淡黄色の酵素処理・酵母発酵・活性炭処理物(固形分含量 1.2重量%)約600gを得た。
【0060】
製造例5(アマモ抽出物の乳酸菌発酵処理物)
酵母に代えて、海洋性乳酸菌(Marinilactobacillus
phychrotolerans)を用いるほかは製造例3と同様にして、黄色の乳酸菌発酵処理物(固形分含量1.3
重量%)約700gを得た。
【0061】
製造例6(アマモ抽出物の乳酸菌発酵処理物)
酵母に代えて、植物性乳酸菌(Lactobacillus plantarum)を用いるほかは製造例3と同様にして、黄色の乳酸菌発酵処理物(固形分含量1.3 重量%)約700gを得た。
【0062】
製造例7(アマモ抽出物の納豆発酵処理物)
酵母に代えて、納豆菌(Bacillus subtilis)を用いるほかは製造例3と同様にして黄色の納豆菌発酵処理物(固形分含量1.4 重量%)約710gを得た。
【0063】
製造例8(アマモ抽出物のテンペ菌発酵処理物)
酵母に代えて、テンペ菌(Rhizopus microsporus
oligosporus)を用いるほかは製造例3と同様にして黄色のテンペ菌発酵処理物(固形分含量1.3
重量%)約700gを得た。
【0064】
製造例9(アマモ抽出物の非イオン性多孔性樹脂処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し 細切した。この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比、100:7)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。これを濾過し、非イオン性多孔性樹脂(三菱化学製 スチレン−ジビニルベンゼン系樹脂 ダイヤイオンHP-20)を濾液重量の3%添加し、60分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の抽出物(固形分含量0.18
重量%)約780gを得た。
【0065】
製造例10(アマモ抽出物の非イオン性多孔性樹脂処理物)
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し 細切した。この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比、100:7)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。これを濾過し、非イオン性多孔性樹脂(三菱化学製 スチレン系弱塩基性樹脂 WA-30)を濾液重量の3%添加し、60分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の処理物(固形分含量0.18
重量%)約760gを得た。
【0066】
製造例11(アマモ抽出物の限外濾過処理物)
新鮮なアマモの全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し 細切した。この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比、100:7)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出した。これを濾過した後、MWCO
50,000の限外濾過膜を用いて限外濾過処理を行い、淡黄色の処理物(固形分含量0.17重量%) 約720gを得た。
【0067】
製造例12(アマモ抽出物の活性炭処理物)
まず、特許文献1の調製例1に記載された方法によりアマモ抽出物を得た。すなわち、新鮮なアマモ(Zostera marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し細切し、この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比、3:1)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出してアマモ抽出物を得た。次に、得られた抽出物に対して、粉末活性炭を抽出液重量の2%添加し、10分間撹拌した。この液を濾過して淡黄色の処理物(固形分含量0.13重量%)約840gを得た。
【0068】
比較製造例1(アマモ抽出物(特許文献1の調製例1))
新鮮なアマモ(Zostera
marina)の全草をよく洗浄したのち天日で乾燥し細切した。この乾燥物20gを水とエタノールの混液(体積比、3:1)の溶媒1kgを用いて室温条件下で7日間抽出し、得られた液を濾過して淡緑褐色の抽出物(固形分含量0.15
重量%)約900gを得た。
【0069】
処方例1.クリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 5.0
ヘキサラン(注1) 4.0
パラフィン 5.0
グリセリルモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 6.0
ブチルパラベン 0.1
(注1)株式会社テクノーブル製 トリオクタン酸グリセリル

[B成分]
製造例1の処理物 10.0
グリセリン 5.0
カルボキシメチルモノステアレート 0.1
モイストン・C(注2) 1.0
精製水 全量が100部となる量
(注2)株式会社テクノーブル製 NMF成分
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合してクリームを得た。
【0070】
処方例2.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例2の処理物 5.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0071】
処方例3.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例3の処理物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0072】
処方例4.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例4の処理物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0073】
処方例5.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例5の処理物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0074】
処方例6.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例6の発酵物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0075】
処方例7.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例9の処理物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0076】
処方例8.乳液
処方例2のB成分中製造例2の処理物に代えて製造例10の処理物を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0077】
処方例9.ローション
[成分] 部
製造例1の処理物 10.0
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
香料 適量
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を混合してローションを得た。
【0078】
処方例 10.ローション
処方例9の成分中製造例1の処理物に代えて製造例4の処理物を用いるほかは処方例9と同様にしてローションを得た。
【0079】
処方例11.エッセンス
[成分] 部
エタノール 2.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
ヒアルロン酸 0.1
製造例4の処理物 60.0
クエン酸 0.3
クエン酸ナトリウム 0.6
精製水 全量が100部となる量
精製水にヒアルロン酸を溶解させた後、残りの原料を順次加えて攪拌溶解させ、透明のエッセンスを得た。
【0080】
処方例12.エッセンス
処方例11の成分中製造例1の処理物に代えて製造例4の処理物を用いるほかは処方例11と同様にしてエッセンスを得た。
【0081】
処方例13.化粧水
[A成分] 部
オリーブ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
ブチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例1の処理物 10.0
エタノール 5.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
メチルパラベン 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃以上に加温後、A成分にB成分を加えて攪拌し、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えて攪拌混合し、さらに30℃以下まで冷却して化粧水を得た。
【0082】
処方例14.乳液
[A成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
[B成分]
製造例4の処理物 5.0
L−アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
香料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱した後、攪拌混合した。これを50℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0083】
処方例15.乳液
処方例14のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム2.0部を用いるほかは処方例14と同様にして乳液を得た。
【0084】
処方例16.乳液
処方例14のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム2.0部を用いるほかは処方例14と同様にして乳液を得た。
【0085】
処方例17.乳液
処方例14のB成分中、L−アスコルビン酸−2−グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン2.0部を用いるほかは処方例14と同様にして乳液を得た。
【0086】
実施例18.リキッドファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 2.4
モノステアリン酸プロピレングリコール 2.0
セトステアリルアルコール 0.2
液状ラノリン 2.0
流動パラフィン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.5
プロピルパラベン 0.05
[B成分]
製造例2の処理物 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
ベントナイト 0.5
プロピレングリコール 4.0
トリエタノールアミン 1.1
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
酸化チタン 8.0
タルク 4.0
着色顔料 適量
上記のA成分とB成分をそれぞれ加温した後混合攪拌した。これを再加温し、上記のC成分を添加して型に流し込み、室温になるまで攪拌してリキッドファンデーションを得た。
【0087】

処方例19.クリームファンデーション
[A成分] 部
ステアリン酸 5.0
セタノール 2.0
モノステアリン酸グリセリル 3.0
流動パラフィン 5.0
スクワラン 3.0
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸グリセリル 2.0
プロピルパラベン 0.1
[B成分]
製造例3の処理物 5.0
ソルビトール 3.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
トリエタノールアミン 1.5
メチルパラベン 0.1
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
酸化チタン 8.0
タルク 2.0
カオリン 5.0
ベントナイト 1.0
着色顔料 適量
[D成分]
香料 0.3
C成分を混合し、粉砕機で粉砕した。B成分を混合し、これに粉砕したC成分を加え、コロイドミルで均一分散させた。A成分及び均一分散させたB、C成分をそれぞれ80℃に加温後、B、C成分にA成分を攪拌しながら加え、さらにヒスコトロン(5000rpm)で2分間ホモジナイズを行った。これを50℃まで冷却した後、D成分を加えて攪拌混合し、さらに攪拌しながら30℃以下まで冷却してクリームファンデーションを得た。
【0088】
処方例20.ボディシャンプー
[A成分] 部
N−ラウロイルメチルアラニンナトリウム 25.0
ヤシ油脂肪酸カリウム液(40%) 26.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
メチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例4の処理物 10.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してボディシャンプーを得た。
【0089】
処方例21.石けん
[A成分] 部
硬化ヒマシ油 26.0
ヤシ油 10.0
オリーブ油 4.0
[B成分]
水酸化ナトリウム 6.0
砂糖 10.0
グリセリン 5.0
製造例4の処理物 10.0
精製水 全量が100部となる量
[C成分]
エタノール 20.0
香料 適量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加えてケン化した。これを攪拌しながら50℃まで冷却し、C成分を加えた。これを型に流し込み冷却した後、室温下で数日間乾燥させ、充分に乾燥したものを型から取りだして石けんを得た。
【0090】
処方例22(ヘアーローション)
[成分]

トラガントガム
2.0
グリセリン 1.0
エタノール 20.0
メチルパラベン 0.2
製造例1の処理物 10.0
香料
微量
精製水
全量が100.0部となる量
上記成分を混合撹拌して均一なヘアーセットローションをえた。
【0091】
処方例23(ヘアーローション)
処方例22の成分中製造例1の処理物に代えて製造例4の処理物を用いるほかは処方例22と同様にしてヘアーローションを得た。
【0092】
処方例24(ヘアーローション)
処方例22の成分中製造例1の処理物に代えて製造例9の処理物を用いるほかは処方例22と同様にしてヘアーローションを得た。
【0093】
処方例25(ヘアーローション)
処方例22の成分中製造例1の処理物に代えて製造例11の処理物を用いるほかは処方例22と同様にしてヘアーローションを得た。
【0094】
処方例26(ヘアーローション)
処方例22の成分中製造例1の処理物に代えて製造例12の処理物を用いるほかは処方例22と同様にしてヘアーローションを得た。
【0095】
比較処方例1(ヘアーローション)
処方例22の成分中製造例1の処理物に代えて比較製造例1の抽出物を用いるほかは処方例22と同様にしてヘアーローションを得た。
【0096】
試験例1(紫外線吸収性)
製造例1〜12で得られた処理物、及び比較製造例1の抽出物を、固形分濃度0.04重量%になるように精製水で希釈した溶液について、分光光度計を用いた極大吸収波長の測定を行なった。その結果、比較製造例1の抽出物には、図13に示したように、特許文献1の図1と同様にUV−A及びUV−Bの両波長域の紫外線吸収が認められたが、図1〜12に示すように、本発明の製造例1〜12の処理物又は発酵物には紫外線吸収性は認められなかった。
【0097】
以上のことから、アマモの抽出物に対して活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を行うことにより、アマモの抽出物が有していた紫外線吸特性が消失したことは明らかである。
【0098】
試験例2(安全性試験(ヒトパッチテスト))
[被験物質及び試験用検体の調製]
製造例1〜6,9〜12の処理物、及び比較製造例1の抽出物それぞれ20mLを、各2本ずつ50mL容量のガラス製スクリュー管にとり、一方はそのまま、もう一方にはUV−A及びUV−Bを発生する紫外線ランプで、30分間紫外線を照射した(累積紫外線量:1260 mJ:夏期屋外30分の日照相当)。紫外線照射をしていない被験物質10種と、紫外線照射を行った被験物質10種の皮膚刺激性について、ヒトパッチテストで調査した。
[試験方法]
健常人5名を対象とし、試料 それぞれ0.015mLを予め塗布したフィンチャンバー(EPITE-ST Ltd, フィンランド )及びスカンポールテープ(Alpharma
A/S, ノルウェー)を用い被験者の上背部皮膚に24時間閉塞貼付した。
刺激性の評価は、本邦基準を基にして考えられた須貝の方法(須貝哲郎,皮膚,27,No.4,793-803 (1985))に準じて行った。
[表1]

【0099】
[試験結果]
刺激性についての判定結果を表2に示した。
[表2]

【0100】
表2に示す通り、被験物質20品の内、比較製造例1の紫外線照射を行った被験物質のみが、皮膚刺激性を示した。比較製造例1の被験物質には、図13に示すようにUV吸収チャートにUV吸収ピークが見られたことから、紫外線により、含有成分が励起され刺激物質に変化したものと考えられる。一方、製造例1〜6,9〜12の各被験物質は、紫外線照射の有無にかかわらず、刺激性は認められなかった。さらに、製造例7の納豆発酵処理物、製造例8のテンペ菌発酵処理物についても同様の有効性が示された。
【0101】
以上のことから、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理は安全性向上に非常に有効であると考えられ、これらの処理の有意性が確認された。
【0102】
試験例3(線維芽細胞賦活作用)
ヒト真皮由来線維芽細胞NB1RGB(Lot.070512(6))を、0.5%NCS含有イーグル最少必須培地を入れた96穴マイクロプレートに1×10個/穴播種し、37℃、5.0%COの条件下に1日間プレ培養した後、培地に製造例1〜6,9〜12の処理物、並びに比較製造例1の抽出物を試料溶液として5.0%の濃度(溶液として)となるように添加し、同条件でさらに3日間培養した。次に、培地を除去し、0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンを酸性イソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 450、バイオラッド社製)を用いて波長570−630nmでMTT値を測定した。試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値に対する各試料添加時のMTT値の相対値を求め、線維芽細胞MTT活性率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりにグルコースを100mM添加した場合(陽性対照)についても、同様の試験を行った。
【0103】
試験の結果を表3に示す。
[表3]

【0104】
表3に示す通り、アマモの抽出物(比較製造例1)には線維芽細胞賦活効果が見られなかったが、抽出物に対して、活性炭処理を行った場合(製造例1,2,12)、非イオン性多孔性樹脂処理を行った場合(製造例9,10)、限外濾過処理を行った場合(製造例11)、及び発酵処理を行った場合(製造例3〜6)には、線維芽細胞賦活作用が認められた。さらに、製造例7の納豆菌発酵処理物及び製造例8のテンペ菌発酵処理物についても同様の有効性が示された。これにより、アマモの抽出物(非処理物)では認められなかった線維芽細胞賦活効果が、当該抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を施すことで、新たに創出されたことが確認された。
【0105】
試験例4(チロシナーゼ活性抑制作用;チロシン−チロシナーゼ反応法)
まず、チロシナーゼ(2200単位)1.0mgを正確に秤量し、リン酸緩衝液(pH6.8)2.0mLに溶解してチロシナーゼ溶液を調製した。
次に、製造例1〜6,9〜12で得られた処理物を10倍に希釈した水溶液0.8mLを正確に秤量し、これに0.05%L−チロシン溶液1.0mL及びリン酸緩衝液(pH6.8)1.0mLを加えて充分に混合した。この液に前記チロシナーゼ溶液0.2mLを加えて充分に混合し、この溶液の波長475nmにおける吸光度をただちに測定したのち、37℃の恒温槽中に入れた。24分経過後、恒温槽からこの溶液を取り出し、再び波長475nmにおける吸光度を測定し、下式からチロシナーゼ活性指数を求めた。また、処理物の代わりに水を用いて同様に操作したものをブランクとした。
チロシナーゼ活性指数=[(T24−T)/(B24−B)]×100(%)
(式中、T24 は試験開始から24分間経過後の処理物が添加された溶液の吸光度、B24は試験開始から24分間経過後の処理物の代わりに水が添加された溶液の吸光度、Tは試験開始直後の処理物が添加された溶液の吸光度、Bは試験開始直後の処理物のかわりに水が添加された溶液の吸光度を示す)。
【0106】
試験例4の結果を表4に示す。
[表4]

【0107】
以上のように、製造例1〜6,9〜12の処理物は、比較製造例1(非処理物)と同様に、格段にすぐれたチロシナーゼ活性抑制効果が認められた。さらに、製造例7の納豆菌発酵処理物及び製造例8のテンペ菌発酵処理物についても同様の有効性が示された。これにより、アマモの抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を行っても、チロシナーゼ活性抑制効果が維持できていることが確認された。
【0108】
試験例5(過酸化脂質生成抑制作用)
まず、0.5Mリノール酸エタノール1.0mL、0.2Mリン酸緩衝液
(pH7.0)10mL及びエタノール9.0mLをそれぞれ正確に秤量し、共栓つき三角フラスコ中で充分に振り混ぜた。この液に正確に秤量した製造例1〜6,9〜12の処理物の5%水溶液5.0mLを加えて充分振り混ぜた。この液の調製直後のものと40℃の恒温槽中で7日間放置したものとについて、それぞれ0.1mLずつを正確に秤量し、これに75%エタノール4.7mL、30%チオシアン酸アンモニウム溶液0.1mLを加えて充分に混合したのち、0.02M塩化第一鉄13.5%塩酸溶液を添加し、正確に3分後の500nmにおける吸光度を測定し、下式から過酸化物価指数を求めた。
また、処理物の代わりに水を用いて同様に操作したものをブランクとした。
過酸化物価指数=[(T−T)/(B−B)]×100(%)
(式中、T7 は試験開始から7日間経過後の処理物が添加された溶液の吸光度、B
は試験開始から7日間経過後の処理物の代わりに水が添加された溶液の吸光度、T は試験開始直後の処理液が添加された溶液の吸光度、Bは試験開始直後の処理物の代わりに水が添加された溶液の吸光度を示す)。
【0109】
試験結果を表5に示す。
[表5]

【0110】
以上のように、製造例1〜6,9〜12の処理物は、比較製造例1(非処理物)と同様に、格段にすぐれた過酸化脂質生成抑制効果が認められた。さらに、製造例7の納豆菌発酵処理物及び製造例8のテンペ菌発酵処理物についても同様の有効性が示された。これにより、アマモの抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を行っても、過酸化脂質生成抑制効果が維持できていることが確認された。
【0111】
試験例6(保湿性試験;試料負荷試験)
被験者(26〜38才の男女5名)の前腕内側部に、試験区を設定し、それぞれの試験区の角層水分量を測定する(塗布前)。次に、それぞれの被験部位(試験区)に、試験液として製造例1〜6,9〜12の処理物、及び比較製造例1の抽出物の水溶液(固形分,0.1%)100μLをそれぞれ負荷(滴下)し、10秒後に軽く拭き取り、直ちに角層水分量を測定する。その後20秒毎に120秒後まで角層水分量の測定を行う(測定機器:SKIN SURFACE HYGROMETER(SKICON-200)I.B.S社製)。120秒後のコンダクタンス値と塗布前のコンダクタンス値を比較し、保湿性能の持続力を評価する。当該処置を同様に3回行い、平均をとる。陽性対照は、化粧品原料の保湿剤として使用されるグリセリンの5%水溶液とした。
【0112】
試験の結果を表6に示す。
[表6]

【0113】
製造例1〜6,9〜12の処理物はいずれも、120秒後のコンダクタンス比は1.6〜1.8程度を示し、対照とした5%グリセリン水溶液、及び保湿効果が公知のアマモ抽出物(比較製造例1)とほぼ同程度の水分保持力を示した。さらに、製造例7の納豆菌発酵処理物及び製造例8のテンペ菌発酵処理物についても同様の有効性が示された。以上の結果から、アマモの抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、或いは発酵処理を施して得られる処理物は、比較製造例1の非処理物であるアマモ抽出物と同程度の高評価の保湿性を有することが確認された。
【0114】
試験例7(頭髪化粧料試用試験(ハーフヘッドモニターテスト))
処方例22(製造例1の活性炭処理物を配合したヘアーローション)、処方例23(製造例4の発酵処理物を配合したヘアーローション)、処方例24(製造例9の非イオン性多孔性樹脂処理物を配合したヘアーローション)、処方例25(製造例11の限外濾過処理物を配合したヘアーローション)、処方例26(製造例12の活性炭処理物を配合したヘアーローション) 、及び比較処方例1(比較製造例1のアマモ抽出物(非処理物)を配合したヘアーローション)について、それぞれ以下に示すハーフヘッドテストを行なった。
【0115】
無作為に抽出した年齢24〜62歳の男女50名を対象とし、10名ずつ3グループで各頭髪用化粧料を、それぞれ片側ずつの頭髪に1日1回、30日間使用した後の頭髪のつややかさ、しっとり感および櫛通りについて以下の判定基準に基づき評価を行なった。
〔つややかさ〕
A:非常につややかになった
B:なんとなくつややかになった
C:変化なし
D:なんとなくつややかさがなくなった
E:明らかにつややかさがなくなった
〔しっとり感〕
A:非常にしっとりして感じがよくなった
B:なんとなくしっとりして感じがよくなった
C:変化なし
D:あまりしっとりした感じがない
E:まったくしっとりした感じがない
〔櫛通り〕
A:非常によくなった
B:なんとなくよくなった
C:変化なし
D:なんとなく悪くなった
E:まったく悪くなった
【0116】
以下にハーフヘッドのテスト結果を示す。
[表7]

【0117】
表7に示すように、ハーフヘッドのモニターテストにおいてアマモ抽出液が示す高評価の頭髪改善効果を、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理、又は発酵処理を行っても維持できている事が明らかになった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマモ科 (Zosteraceae)アマモ属 (Zostera sp.) に属する植物の抽出物に対して、活性炭又は非イオン性多孔性樹脂による吸着処理、限外濾過処理及び発酵処理のうちいずれか1種又は2種以上の処理を施して得られる処理物を配合することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
アマモ科 (Zosteraceae)アマモ属 (Zostera sp.) の植物がアマモ(Zostera marina)である請求項1の化粧料。
【請求項3】
発酵に用いる微生物が、酵母,乳酸菌,納豆菌あるいはテンペ菌から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
酵母としてサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いる請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
乳酸菌として海洋由来のマリニラクトバシルスフィコロトレランス(Marinilactobacillus
phychrotolerans)を用いる請求項3に記載の化粧料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−77035(P2012−77035A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224383(P2010−224383)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000162021)共栄化学工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】