説明

化粧料

【課題】
本発明の目的は、皮膚について高い保湿効果を有する化粧料を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含み、1%水溶液の動粘度が3mm/s以下である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、
0.2%水溶液の動粘度が5mm/s以上であるヒアルロン酸類と、
を含有する化粧料。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子である特定の修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と高分子のヒアルロン酸類を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、鶏冠、さい帯、皮膚、軟骨、硝子体、関節液などの生体組織中に広く分布するムコ多糖であり、その高い保湿機能により、化粧料の成分として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ヒアルロン酸は高分子の多糖類であるため、一般に、生体内に吸収されにくい。例えば、ヒアルロン酸を皮膚に塗布することにより、皮膚からの水分の蒸散を防ぐことはできるが、皮膚組織へ浸透しにくく、大部分が皮膚の表面に留まるのみである。したがって、洗顔や入浴等により皮膚表面のヒアルロン酸が洗い流されると、皮膚の保湿効果が持続しにくい。
【0004】
そこで、皮膚に浸透しやすいヒアルロン酸として、重量平均分子量70万以上150万以下のヒアルロン酸およびヒアルロン酸オリゴ糖を含有する組成物が記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−57607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された組成物の場合、表皮における角質間隙からの浸透性を高めるために開発されたものではあるが、皮膚の保湿効果は十分なものとは言い難かった。
【0007】
本発明の目的は、皮膚について高い保湿効果を有する化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含み、1%水溶液の動粘度が3mm/s以下である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、
0.2%水溶液の動粘度が5mm/s以上であるヒアルロン酸類と、
を含有する化粧料
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低分子である特定の修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と高分子のヒアルロン酸類を含有せしめることにより、化粧料の保湿効果をさらに高めることができる。そのため、ヒアルロン酸の含有量を増やすことなく、化粧料の保湿効果を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、調製例1で得られた修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を示す図である。 図1(b)は、比較対照として、原料(グリセリン骨格含有基を有さない)のヒアルロン酸(キユーピー株式会社製、平均分子量8000)のH−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る化粧料について詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は質量部を意味する。
【0012】
本実施形態に係る化粧料は、下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含み、1%水溶液の動粘度が3mm/s以下である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、
0.2%水溶液の動粘度が5mm/s以上であるヒアルロン酸類と、
を含有することを特徴とする。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0013】
1.修飾ヒアルロン酸および/またはその塩
1.1.構造
1.1.1.グリセリン骨格含有基
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基(以下、単に「グリセリン骨格含有基」ともいう。)を含む。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0014】
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の1つに一般式(1)におけるRが結合し、グリセリン骨格含有基に含まれる水酸基は二級水酸基であり、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の他の1つがヒアルロン酸および/またはその塩を構成する炭素原子に結合している。
【0015】
一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、n−ヘキサデシル基(パルミチル基)、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−イコシル基が挙げられる。
【0016】
また、一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基が挙げられる。
【0017】
このうち、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6〜20であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜16であることが最も好ましい。この場合、R1で表される基はアルキル基であることが好ましい。
【0018】
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6未満である場合、化粧料の保湿力増強効果が十分でない場合があり、一方、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が20を超える場合、修飾ヒアルロン酸の水溶性が低くなり、化粧料への使用が制限される場合がある。
【0019】
1.1.2.ヒアルロン酸構成単位
本発明において、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの2糖からなる構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
ヒアルロン酸は、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成され、2糖単位が複数個結合したものであり、またこの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。その糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.05以上であることが好ましく、0.1〜0.5であることがより好ましい。ここで、「ヒアルロン酸の1構成単位」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる1構成単位を意味する。
【0022】
また、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数は、H−NMRスペクトル解析によって同定することができる。
【0023】
すなわち、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸の1構成単位を構成するN−アセチルグルコサミンの−NHC(=O)CH(N−アセチル基)のメチル基(−CH)のプロトンを示すピークの積分値に対する、グリセリン骨格含有基中のRに含まれるメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークの積分値の比を算出することにより、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩における、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を同定することができる。
【0024】
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、グリセリン骨格含有基がヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子の少なくとも1つに結合していることができる。本発明において、「ヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子」とは、ヒアルロン酸を構成するグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンに含まれる炭素原子をいう。例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれるカルボキシル基および水酸基のうち少なくとも1つに後述する化合物1または化合物2を反応させて、グリセリン骨格含有基を導入することにより、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0025】
なお、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基が、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に結合していることは、例えば、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルと、原料であるヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルとの比較において、修飾ヒアルロン酸のグリセリン骨格含有基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークによって確認することができる。
【0026】
また、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基は例えば、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成する4位の炭素原子(C−4)および6位の炭素原子(C−6)、ならびに、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成するグルクロン酸の2位の炭素原子(C−2)、3位の炭素原子(C−3)、および5位の炭素原子(C−5)に結合するカルボニル基から選ばれる少なくとも1つに結合することができる。より具体的には、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は以下の一般式(2)で表される化合物であることができる。
【0027】
【化1】

・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、水酸基または上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水酸基を表す場合を除く。))
【0028】
なお、上記一般式(2)において、2位の炭素原子(C−2)に結合するN−アセチルグルコサミンの窒素原子に結合している水素原子が、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基で置換されていてもよい。
【0029】
また、上記一般式(2)で表される化合物において、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、nは1〜50であることが好ましく、1〜25であることがより好ましい。
【0030】
1.1.3.動粘度
本発明において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにヒアルロン酸類の水溶液の動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社製)を用いて測定することができる。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行い、温度変化のないようにする。
【0031】
ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm/s)を求めることができる。
【0032】
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の1%水溶液の動粘度は、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、3mm/s以下であることが好ましく、0.1〜2mm/sであることがより好ましく、0.5〜1.5mm/sであることがさらに好ましい。
【0033】
1.1.4.平均分子量
本発明において、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、以下の方法にて測定された値である。
【0034】
即ち、約0.05gのヒアルロン酸および/またはその塩(本品)を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液およびこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十五改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度計法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式a)、各濃度における還元粘度を算出する(式b)。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式c)に代入し、平均分子量を算出する(T.C. Laurent, M. Ryan, A.
Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42, 476-485(1960))。
【0035】
(式a)
比粘度 = {試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
【0036】
(式b)
還元粘度(dL/g)= 比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL))
【0037】
(式c)
極限粘度(dL/g)=3.6×10−40.78
M:平均分子量
【0038】
1.2.修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(3)で表される化合物(本明細書において「化合物1」ともいう。)と反応させる工程によって得られる。あるいは、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(4)で表される化合物(本明細書において「化合物2」ともいう。)と反応させることによって、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/または塩を調製してもよい。なお、反応性を高めるために、原料のヒアルロン酸および/またはその塩(以下「原料ヒアルロン酸および/またはその塩」という。)をアルキルアンモニウム塩に置換した後に、化合物1または化合物2と反応させることが好ましい。
【0039】
【化2】

・・・(3)
(式中、R1は直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0040】
一般式(3)においてRで表される基としては、上記一般式(1)においてRで表される基として例示したものが挙げられる。
【0041】
【化3】

・・・(4)
(式中、Rは上記一般式(3)におけるRと同義であり、Xはハロゲン原子を示す。)
【0042】
一般式(4)においてXで表されるハロゲン原子としては例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0043】
1.2.1.原料
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造に使用される原料ヒアルロン酸および/またはその塩は、動物等の生体組織(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液など)から抽出されたものでもよく、または、微生物、動物細胞もしくは植物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的または酵素的に合成されたものなどを使用することができる。なお、後述する本発明に用いるヒアルロン酸、およびヒアルロン酸誘導体の原料となるヒアルロン酸についても、同様の原料ヒアルロン酸を用いることができる。
【0044】
修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造に使用される原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は通常、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、400〜10万であることが好ましく、1000〜2万であることがより好ましく、2000〜1万であることがさらに好ましい。
【0045】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩としては、粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的には、ヒアルロン酸および/またはその塩の純度が90%(質量比)以上のものが好ましい。純度が90%未満の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を原料として用いた場合、ヒアルロン酸および/またはその塩と、前記化合物1または化合物2との反応が阻害される場合があるため好ましくない。
【0046】
1.2.2.アルキルアンモニウム塩への変換
原料ヒアルロン酸および/またはその塩をヒアルロン酸のアルキルアンモニウム塩に変換する場合、例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に化合物(以下「化合物3」ともいう。)を反応させることにより、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩を得ることができる。このような化合物3としては、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の炭素原子数2〜18の水酸化第四級アルキルアンモニウムが挙げられる。すなわち、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩は例えば、炭素原子数2〜18の第四級アルキルアンモニウム塩であることが好ましい。第四級アルキルアンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩が挙げられる。
【0047】
1.2.3.アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応
ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応は、有機溶媒中で行うことができる。ここで、反応温度は通常0〜200℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間である。上記反応で使用する有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルミアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0048】
化合物1は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物1の具体例としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアルケニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0049】
また、化合物2は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物2の具体例としては、例えば、メチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、エチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、プロピル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ブチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、オクチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、デシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ドデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、トリデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ミリスチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、パルミチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ステアリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、アリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエー
テルが挙げられる。
【0050】
1.2.4.精製
本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ヒアルロン酸および/またはその塩を化合物1と反応させる工程の後、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程をさらに含むことができる。
【0051】
反応液中のナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度は、5〜20%であることが好ましい。ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度が5%未満では、次の沈殿物を得る工程で沈殿ができない恐れがある。20%を超えると、次の沈殿物を得る工程で、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と一緒にナトリウム塩またはカリウム塩が沈殿してしまう恐れがある。
【0052】
また、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液にアルコールを添加して、沈殿物を得る工程をさらに含むことができる。また、アルコールとしては例えば、メタノール、エタノールが挙げられ、エタノールが好ましい。ここで、沈殿物は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩である。すなわち、反応液にアルコールを添加して、沈殿物(修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)を得ることにより、残存する試薬と分離して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0053】
沈殿物を得た後、必要に応じて、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が溶解しにくい溶媒(例えば、含水アルコール)で沈殿物を洗浄してもよい。その後、沈殿物を乾燥することにより、精製された修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0054】
上述の沈殿物を得る工程は複数回繰り返して行ってもよい。
【0055】
また、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の動粘度が低い場合(例えば動粘度が3mm/sである場合)、上述した方法では反応液にアルコールを添加しても沈殿物が得られない場合がある。この場合、本発明に用いる修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液のpHを3以下に調整する工程と、pH3以下の反応液に水溶性有機溶媒を添加して、懸濁液を得る工程と、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程とをさらに含むことができる。これらの工程を行うことにより、動粘度が低い場合であっても、高純度の修飾ヒアルロン酸および/または
その塩を高い回収率にて得ることができる。
【0056】
本発明において、「懸濁液」とは、固体の微粒子が液体中に分散している混合物である。例えば、懸濁液では、液中に固体が分散していて液が濁っている状態であってもよいし、懸濁相と上澄み相とに分離していてもよい。後の工程において修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しやすい点で、懸濁液は懸濁相と上澄み相とに分離していることが好ましい。
【0057】
懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒は、溶液が懸濁液へと変化するのに少なくとも必要な量が添加されればよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。このうち、エタノールが好ましい。
【0058】
水溶性有機溶媒の添加量は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜20質量部である。この場合、水溶性有機溶媒の添加量が修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1質量部に対して1質量部未満であると、懸濁が生じ難くなる。
【0059】
また、懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液はpH3以下であり、好ましくはpH0.5〜2.5、より好ましくはpH1〜2である。水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが3を超えると、水溶性有機溶媒を加えても懸濁が生じにくく、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整しても、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しにくい。また、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが低すぎると、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整する際に多量の塩が生成するため、好ましくない場合がある。
【0060】
修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程において、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる。この場合、懸濁液のpHが3.5〜8の範囲を外れると、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿するのが困難になる。また、より高い回収率を達成できる点で、懸濁液をpH4〜7に調整するのが好ましく、pH4〜6に調整するのがより好ましい。
【0061】
2.ヒアルロン酸類
本発明に用いる「ヒアルロン酸類」とは、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体ならびにそれらの塩を含む概念である。本発明において、「ヒアルロン酸誘導体」とは、ヒアルロン酸に含まれる官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基)が修飾された化合物であり、例えば、カチオン化ヒアルロン酸、アシル化ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸などが挙げられる。ただし、本発明のヒアルロン酸誘導体に本発明で用いるグリセリン骨格を含有する修飾ヒアルロン酸は含まない。また、「ヒアルロン酸の塩またはヒアルロン酸誘導体の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いるヒアルロン酸類の0.2%水溶液の動粘度は、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、5mm/s以上であり、10〜200mm/sであることがより好ましく、50〜150mm/sであることがさらに好ましい。
【0063】
本発明に用いるヒアルロン酸類としては、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、ヒアルロン酸および/またはその塩、またはカチオン化ヒアルロン酸を用いることが好ましく、ヒアルロン酸および/またはその塩を用いることがより好ましい。
【0064】
本発明に用いるヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、10万以上が好ましく、30万〜200万がより好ましく、50万〜150万が更に好ましい。
【0065】
本発明の化粧料に使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は、特に限定するものではなく、市販されている「ヒアロベール(キユーピー株式会社製)」、「HA−QUAT(エンゲルハード社製)」などを用いればよい。
【0066】
上記カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、特に限定するものではないが、参考文献(国際公開番号:WO2008/133267)に記載の方法で製造することができる。具体的には、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を塩基性含水媒体中でカチオン化剤と反応させる工程によって得ることができる。
【0067】
使用可能なカチオン化剤としては、第四級アンモニウム含有基を含有するカチオン化剤が好ましい。例えば、2,3−エポキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド(グリシジルトリアルキルアンモニウム塩)および3−ハロゲノ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム基を含有するカチオン化剤が挙げられる。かかるカチオン化剤は単独でも、あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、カチオン化剤は、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドもしくはいずれか一方であることが好ましい。
【0068】
3.化粧料
本実施形態に係る化粧料は、前記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、前記ヒアルロン酸類とを含有することを特徴とする。本実施形態に係る化粧料における修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、ヒアルロン酸類の合計含有量は、0.001〜5%が好ましく0.01〜5%がより好ましく、0.05〜1%が更に好ましい。合計含有量が前記範囲よりも低いと、満足な保湿効果が得られないため、使用時の皮膚の乾燥を改善することができない恐れがある。また、合計含有量が前記範囲を超えると、化粧料の粘度が高くなりすぎ皮膚全体に伸ばしにくくなる恐れがある。
【0069】
本実施形態に係る化粧料における、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、ヒアルロン酸類の含有割合は、本発明の化粧料の保湿力増強効果により優れている点で、質量比で5:95〜80:20が好ましく、10:90〜75:25がより好ましく、20:80〜40:60が更に好ましい。
【0070】
本実施形態に係る化粧料は特に限定されないが、例えば、皮膚用化粧料が挙げられる。上記ヒアルロン酸組成物を皮膚用化粧料に使用することにより、皮膚について高い保湿効果を奏するため、皮膚に潤いを長期間付与し、皮膚のかさつき感を改善することができる。本実施形態に係る皮膚用化粧料の態様としては、例えば、洗顔料、洗浄料、化粧水(例えば、美白化粧水)、クリーム(例えば、バニシングクリーム、コールドクリーム)、乳液、美容液、パック(例えば、ゼリー状ピールオフタイプ、ペースト状拭き取りタイプ、粉末状洗い流しタイプ)、クレンジング、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、頬紅、シェービングローション、アフターサンローション、デオドラントローション、ボディローション(ハンドケアローション、フットケアローションを含む)、ボディオイル、石鹸、入浴剤が挙げられる。
【0071】
本実施形態に係る化粧料にはさらに、以下の成分が配合されていてもよい。具体的には、カチオン化多糖類(例えば、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化澱粉、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化デキストラン、カチオン化キトサン、カチオン化ハチミツ等)、アニオン界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等)、陽イオン界面活性剤(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、油分(例えば、シリコーン、シリコーン誘導体、流動パラフィン、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、ホホバ油、馬油等)、保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、セラミド、ラウロイルグルタミン酸ジフィトステリルオクチルドデシル、フィトグリコーゲン、コンドロイチン硫酸、加水分解卵殻膜、トレハロース、グリセリン、アテロコラーゲン、ソルビトール、マルチトール、1,3−ブチレングリコール等)、高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等)、高級アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、バチルアルコール等)、多価アルコール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコール、アルカンジオール等)、増粘剤(例えば、セルロースエーテル、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、パルミチン酸デキストリン等)、両性高分子樹脂化合物(例えば、ベタイン化ジアルキルアミノアルキルアクリレート共重合体等)、カチオン性高分子樹脂化合物(例えば、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド型カチオン性ポリマー等)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、トコフェノール、BHT等)、金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、エチドロン酸塩等)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体等)、紫外線反射剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、タンパク質加水分解物(例えば、ケラチンペプチド、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、コムギペプチド、ミルクペプチド、シルクペプチド、卵白ペプチド等)、アミノ酸(例えば、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、ヒドロキシプロリン、システイン、セリン、L−テアニン等)、天然物エキス(クジンエキス、カジルエキス、テンチカエキス、海草エキス、ユーカリエキス、ローヤルゼリーエキス、ローズマリーエキス、ブナの木エキス等)、その他の機能性成分(コエンザイムQ10、アルブチン、ポリクオタニウム51、エラスチン、白金ナノコロイド、パルミチン酸レチノール、パンテノール、アラントイン、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、トラネキサム酸等)、リン脂質ポリマー、香料、色素が挙げられる。
【0072】
4.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0073】
4.1.修飾ヒアルロン酸の調製(調製例1)
1Lビーカーにヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)5.0gを水500mLに溶解させ、さらに40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を攪拌しながら加えて、pHを7.2に調整した。pH調整後、凍結乾燥させ、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩を10.2g得た。30mLサンプル瓶に得られたヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩1.0g、C12〜13アルキルグリシジルエーテル(反応試薬)(四日市合成株式会社製)2.0g、およびジメチルホルミアミド(DMF)10mLを入れ、攪拌しながら80℃水浴上で8時間反応させた。反応終了後、12.5%塩化ナトリウム水溶液を10mL加え、8%塩酸にてpH1.0に調整した。次いで、エタノール50mLを撹拌しながらゆっくり加え、ヒアルロン酸を沈殿させた。次いで、25%水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、沈殿物をろ過にて回収し、80%エタノール50mLで3回洗浄した。得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させて、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む、修飾率0.05の修飾ヒアルロン酸を0.48g得た。また、調製例1で得られた修飾ヒアルロン酸の1%(W/W)水溶液の動粘度は1.2mm/sであった。
【0074】
4.2.修飾ヒアルロン酸の調製(調製例2)
1Lビーカーにヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)5.0gを水500mLに溶解させ、さらに40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を攪拌しながら加えて、pHを7.2に調整した。pH調整後、凍結乾燥させ、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩を10.2g得た。30mLサンプル瓶に得られたヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩1.0g、C12〜13アルキルグリシジルエーテル(反応試薬)(四日市合成株式会社製)2.0g、およびジメチルスルホキシド(DMSO)10mLを入れ、攪拌しながら70℃水浴上で8時間反応させた。反応終了後、12.5%塩化ナトリウム水溶液を10mL加え、8%塩酸にてpH1.0に調整した。次いで、エタノール50mLを撹拌しながらゆっくり加え、ヒアルロン酸を沈殿させた。次いで、25%水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、沈殿物をろ過にて回収し、80%エタノール50mLで3回洗浄した。得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させて、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む、修飾率0.09の修飾ヒアルロン酸を0.48g得た。また、調製例1で得られた修飾ヒアルロン酸の1%(W/W)水溶液の動粘度は1.2mm/sであった。
【0075】
4.3.カチオン化ヒアルロン酸の調製(調製例3)
1L容ビーカーに、ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー株式会社製、平均分子量200万)20g、5%水酸化ナトリウム20mL、80%含水エタノール180mL、およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA(有効成分約80%、水分約20%))30mLを添加し、撹拌子を用いて撹拌しながら、40℃で1時間反応させた。
次に、デカンテーションにより液を除去して、固形物(カチオン化ヒアルロン酸を含む)を得た。
【0076】
次いで、食塩水400mLを加え、固形物を溶解させた。固形物が完全に溶解したことを確認した後、エタノール600mLを添加して、カチオン化ヒアルロン酸を沈殿させた。デカンテーションにより液を除去した後、80%含水エタノール500mLを添加して15分間撹拌し、さらに、含水エタノールをデカンテーションにより除去して沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物に残存するカチオン化剤(GTA)および食塩を除去した。
【0077】
次いで、遠心分離処理を行うことにより含水エタノールをさらに除去した後、真空乾燥機を用いて、60℃にて減圧で5時間加熱乾燥を行った。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸20.5gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.27であった。また、調製例3で得られたカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液の動粘度は13.3mm/sであった。
【0078】
4.4.化粧料の調製
表1に記す処方にて、ヒアルロン酸を含有する原液化粧料を調製した。
【0079】
【表1】

【0080】
4.5.試験例1(ヒト皮膚の保湿効果持続確認試験)
本試験例においては、本発明のヒアルロン酸組成物をヒトに経皮投与して、保湿効果の持続性の評価を行った。より具体的には、上述の実施例1、2、比較例1〜3および対照を被験者の上腕部に塗布し、60分経過後の皮膚の水分量を、水分量測定器(商品名「SKICON−200」,I.B.S.Co.,LTD製)を用いて測定した。
【0081】
試験液1〜3を被験者(成人6名:男性3名、女性3名)の上腕部に、それぞれ40μLずつ均一に塗布し、塗布部位の皮膚の水分量を水分量測定器にて測定した。水分量の測定は、塗布直前、塗布後45分、60分経過時にそれぞれ行った。その結果を表1に示す。表1に示される数値は、皮膚水分変化量であり、塗布直前の皮膚水分量を0としたときの皮膚水分量の変化量である。また、表1に示される数値は、被験者6名の平均の数値である。
【0082】
表1によれば、グリセリン骨格含有基を含み、1%水溶液の動粘度が3mm/s以下である修飾ヒアルロン酸と、0.2%水溶液の動粘度が5mm/s以上であるヒアルロン酸類とを含有する化粧料は、それぞれを単独で含有する化粧料と比較して、皮膚の水分量を多く保持できることが確認された(実施例1および2)。また、上記修飾ヒアルロン酸と、0.2%水溶液の動粘度が100mm/s以上であるヒアルロン酸類とを含有する化粧料は、皮膚の水分量を多く保持できることが確認され、特に長時間経過時に皮膚の水分量を保持できることが確認された(実施例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含み、1%水溶液の動粘度が3mm/s以下である修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と、
0.2%水溶液の動粘度が5mm/s以上であるヒアルロン酸類と、
を含有する化粧料。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2013−40140(P2013−40140A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178720(P2011−178720)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】