説明

化粧有効成分の標的化/個別送達

使用者の皮膚に複数の皮膚美容成分を標的化/個別送達するためのシステム及び方法が提供される。まず、使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の画像を、画像形成装置によって捕捉する。次に、捕捉された画像データを演算装置によって分析して、所定のトリートメント領域の皮膚の状態を示すその使用者特有の皮膚プロファイルを作製する。このような皮膚プロファイルに基づいて、プリント装置は、所定のトリートメント領域に適用することができる1以上の化粧用送達シートをプリントする。化粧用送達シートの各々は、複数の隔離された個別領域を持つ基体を含み、これらの領域のうちの少なくとも2つに、その使用者特有の皮膚プロファイルに応じた所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月16日に出願された米国仮特許出願第61/097,273号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、1種以上の皮膚美容成分(skin benefit agent)を、このような皮膚美容成分を必要とする使用者の皮膚に、標的化/個別送達(targeted and individualized delivery)するための方法及びシステム、ならびに皮膚美容成分を含みこれを皮膚の1以上の標的領域に送達するための使い捨てシート形態のデバイスに関する。特に、本発明は、使用者特有の皮膚プロファイルに基づいてこのような使用者の顔の皮膚の標的領域に1種以上の皮膚美容成分を送達する方法、ならびに使用者の皮膚の標的領域に貼り付け及びトリートメントする(treat)ための1種以上の化粧用もしくは皮膚科用調製物を組み込んだ化粧用シートマスクに関する。
【背景技術】
【0003】
ビタミン、抗にきび成分、及び保湿成分等のスキンケア成分の送達に有用なものとして、様々な化粧用パッチもしくはデバイスが、市販又は記載されている。顔、首、及び体の他の領域の皮膚に貼り付けるために、例えば不織綿布(non-woven cotton)、伸縮性素材、熱可塑性プラスチック、粘着性ゲル等の様々な素材に様々な化粧用もしくは皮膚科用調製物を浸み込ませたもので構成される化粧用シートを使用することが知られている。化粧用シートは、貼ったときに標的領域に合わせて順応できる柔軟な支持体(support)を含む。またシートは、皮膚美容成分を含み、そのシートを貼った皮膚に皮膚美容成分を送達するためのシステムも含む。しかし現在市場に出ている顔用シートマスクは、有効成分がたっぷり浸み込ませてあり、顔全体にこれらの成分を送達するために顔全体に貼られるものである。あるいは、パッチは目の下などのある領域にのみに貼ってこの部分のみに皮膚美容成分を送達するものである。しかし、これらの品は、消費者により認められているような、望ましくない製品使用上の特徴をもたらす欠点がある。例えばこれまでは、1以上の皮膚美容成分を1以上の特定の領域に標的化送達することは公知の顔全体用マスクでは不可能であり、顔全体を1種類の組成物でトリートメントすることしかできなかった。ほとんどの消費者は、自分の顔の異なる領域に異なる皮膚の悩みを抱えている。例えば多くの消費者は、Tゾーン領域(額、鼻及び顎)は油っぽいが顔の他の部分は乾燥している混合肌を持っている。他の例としては、額、目及び口周りには皺や小皺があり、頬領域が乾燥もしくはかさついた肌になっていて、他の領域にシミがある消費者もいるであろう。各領域は、異なる悩みに対処するために異なるトリートメント製品を必要とする。従来のマスクは、標的領域のみではなく、顔全体の皮膚をトリートメントすることによって、1度に1つの悩みしか対処することができない。
【0004】
したがって、使用者個人特有の皮膚プロファイルに基づいてこのような使用者の異なる皮膚の状態に対処するために、使用者の皮膚の様々な標的領域に複数の皮膚美容成分を送達することができる化粧用シートが、消費者から求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の化粧用シートには、異なる皮膚美容成分がインプリントされた個別の領域が設けられており、このような化粧用シートを皮膚に合わせて貼った場合、シートが所定用量の異なるスキンケア処方物を皮膚に正確に送達して、異なる皮膚状態をトリートメントしたり又は皮膚への異なる効用を提供したりすることができる。より好ましくは、本発明の化粧用シートは、従来の「万能型(one-type-fits-all)」製品のように大量生産されるものではなく、使用者特有の皮膚プロファイルに従って各使用者毎に特別にカスタマイズされるものである。
【0006】
従って、1つの態様において本発明は、複数の皮膚美容成分を使用者の皮膚に標的化/個別送達するためのシステムに関する。このようなシステムは、少なくとも(a)使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の画像を捕捉するための画像形成装置、(b)画像形成装置から捕捉された画像を表すデータを受け取り、このようなデータを分析し、使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の状態を示す皮膚プロファイルを作製するための、画像形成装置に通信接続された(communicatively connected)分析装置、及び(c)1以上の化粧用送達シートをプリントするための、分析装置に通信接続されたプリント装置を含み、この化粧用送達シートは使用者の皮膚の所定のトリートメント領域に合うように配置及び構成されていること、化粧用送達シートの各々が複数の隔離された個別領域を持つ基体(substrate)を含むこと、ならびにこれらの隔離された個別領域のうちの少なくとも2つに、分析装置により作製された皮膚プロファイルに従って、所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされていることを特徴とする。
【0007】
他の態様において、本発明は、使用者の皮膚の所定のトリートメント領域に合うように配置及び構成された化粧用送達シートに関する。このような化粧用送達シートは、複数の隔離された個別領域を持つ基体を少なくとも含み、これらの隔離された個別領域のうち少なくとも2つに、所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされていることを特徴とする。
【0008】
更なる態様において、本発明は、皮膚美容成分を含む組成物が充填されたカートリッジを含むプリンタに関する。必ずしもというわけではないが、好ましくは、このようなプリンタは、非加熱式(heatless)プリントプロセスによって皮膚美容成分を基体上にプリントするように構築される。
【0009】
更に他の態様において、本発明は、複数の皮膚美容成分を使用者の皮膚に標的化/個別送達するための方法であって、少なくとも(a)使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の画像を捕捉する工程、(b)捕捉された画像データを分析する工程、(c)使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の状態を示す皮膚プロファイルを作製する工程、ならびに(d)作製された皮膚プロファイルに基づいて1以上の化粧用送達シートをプリントする工程を含み、この化粧用送達シートは使用者の皮膚の所定のトリートメント領域に合うように配置及び構成されていること、化粧用送達シートの各々が複数の隔離された個別領域を持つ基体を含むこと、ならびにこれらの隔離された個別領域のうちの少なくとも2つに、所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされていることを特徴とする、上記方法に関する。
【0010】
本発明の他の態様及び目的は、以下の説明、実施例及び特許請求の範囲よりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に従った、異なる皮膚美容成分を含ませた複数の隔離された個別領域を含む顔用マスクの略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に従った顔用マスクの略図である。
【図3】図1の顔用マスクの1つの隔離された個別領域の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の例示的な実施形態について詳細に言及する。使用者特有の皮膚プロファイルに基づいて、複数の皮膚美容成分をその使用者の皮膚に標的化/個別送達するために、コンピュータ化もしくはコンピュータ支援システムが使用されることを理解されたい。本発明のシステムによって作製される化粧用送達製品は、オンデマンドで及び使用者の皮膚プロファイルに従い、複数の標的セクションもしくは領域に、複数の皮膚美容成分を正確な用量及び位置を制御しながら送達することができる。
【0013】
好ましくは、このようなシステムは、使用者の皮膚の所望のトリートメント領域の画像を捕捉するための画像形成装置を少なくとも含む。このような所望のトリートメント皮膚領域は、例えば顔全体であっても、顔の一部、首、腿等であってもよい。必ずしもと言うわけではないが、本発明の特に好適な実施形態において、所望のトリートメント領域は、使用者の顔全体である。画像形成装置は、好ましくは十分且つ一定の(consistent)可視光線もしくは不可視光線(赤外線や近赤外線等)を送達する光源と協同して所望のトリートメント領域の画像を捕捉することができる、デジタルカメラである。画像形成装置は、所望のトリートメント領域を同定するために手動もしくは自動モードのいずれかに設定することができる。
【0014】
捕捉された画像は、このような画像形成装置によって直接デジタルデータに変換されて、その中に格納されるか、又は画像形成装置に通信接続されたパーソナルコンピュータもしくは他のコンピュータ化分析装置に送られる。分析装置は、画像データを分析し、画像データに基づいて使用者の皮膚の所望のトリートメント領域の状態を示す皮膚プロファイルを作製するように、プログラミングされる。好ましくは、皮膚プロファイルは、あるタイプのトリートメントを必要とするある欠点を有する皮膚の領域を規定する。本明細書で使用される「欠点」という用語は、皮膚の乾燥、かさつき、赤み、油っぽさ、毛穴の開き、くすみ、しみ、皮膚の色むら、にきび跡、皺及び小皺、目の下のクマ、目の下のはれぼったさ、セルライト等の、あらゆるタイプの最適ではない皮膚の状態、あるいはあらゆるタイプの皮膚の異常な状態又は疾患を広く含む。より好ましくは、皮膚プロファイルは、皮膚の欠点の重症度(severity)も規定する。このような皮膚プロファイルは、様々な公知のアルゴリズムを用いて作製することができる。これらのアルゴリズムの例は、「皮膚表面解析システム及び皮膚表面解析方法」と題した日本国特許出願公開第95-231883号、「皮膚組織のマルチスペクトル画像形成及び特徴付けのためのシステムならびに方法(Systems and Methods for the Multispectral Imaging and Characterization of Skin Tissue)」と題した国際特許出願公開第WO98/37811号、ならびに「身体の視覚的にアクセス可能な表面をモニタリングするための装置及び方法(Apparatus and Method for Monitoring Visually Accessible Surfaces of the Body)」と題した米国特許第5016173号により詳細に記載されており、これらの内容全体は、あらゆる目的のために本明細書中に組み込まれるものとする。本発明において皮膚の欠点を診断するために使用することができる市販されている皮膚の画像形成ツールとしては、例えばCanfield Scientific社(ニュージャージー州フェアフィールド)製のVISIA(登録商標)Complexion(顔貌)分析ツール、サーマルカメラシステム(thermal camera system)、レーザードップラー画像形成システム、半透明度測定装置(translucency meter)、メラニン・紅斑測定装置(mexameter)、CKエレクトロニック社(ドイツ国ケルン)製のMexameter(登録商標)MX18、コニカ・ミノルタ・ビジネスソリューションズU.S.A社(ニュージャージー州ラムジー)製のCRシリーズChroma Meters、ならびにアストロンクリニカリミテッド(Astron Clinica Ltd.)(イギリス国ケンブリッジ)製のSIAMETRICS(商標)及びCOSMETRICS(商標)皮膚可視化及び測定システム等が挙げられる。皮膚の欠点の重症度を数値で表す場合、このような数値は、使用者の人種的起源、年齢、居住場所、又はその使用者の皮膚の状態に影響を及ぼし得るあらゆる他の要因に基づいて、標準化することが望ましいであろう。
【0015】
皮膚プロファイルを作製したら、Adobe Photoshop Element 4.0やマイクロソフト社のパワーポイント2003等の周知の写真編集及びイラストレーションソフトウェアプログラムによって処理し、プリント装置に出力する画像を作成する。このプリント装置は、使用者特有の皮膚の状態に基づいてその使用者のためにカスタマイズされた1以上の化粧用送達シートをプリントアウトする。好ましくは、プリント装置は、1以上の皮膚美容成分を含む組成物がそれぞれ充填された複数のカートリッジを含むプリンタである。従来のサーマルインクジェットプリント機構は、インク放出工程の間プリントヘッドで高温環境を作り出し、この熱がある種の皮膚美容成分を分解したり不安定にしたりすることがあるので、本発明のプリントは、非加熱式プリント機構を用いて行うことが好ましい。例えば、圧電変換器によりオンデマンドで圧力を生成し、インクジェットプリントヘッドの内部膜(internal diaphram)の形状を変化させることにより、インクタンクの中に含まれる皮膚美容成分の液滴を押し出して基体上に付着させる、圧力駆動式インクジェットを使用することができる。本発明を実施するのに適したプリント装置としては、例えばエプソンのワークフォースシリーズ(好ましくはEpson Workforce 30)、富士フィルムダイマティックス社製のSpectra圧電式プリンタ、RISO HC5500インクジェットプリンタ等が挙げられる。あるいは、送達しようとする皮膚美容成分が熱的に安定であったり又は熱による分解を比較的受けにくいものである場合、従来のサーマルインクジェットプリンタ又は低温インクジェットプリンタを本発明を実施するために使用することができる。
【0016】
上記非加熱式プリントプロセスを用いることにより、本発明は、複数の皮膚美容成分を、それらの生物学的活性を殆んどもしくは全く損なうことなく、首尾よく送達することができる。まず、非加熱式プリントプロセスは、皮膚美容成分の分解を殆んどもしくは全く起こさない。第2に、互いの生物学的活性を妨げることが知られているある種の皮膚美容成分を別々のカートリッジに入れて、別々の液滴として基体上に付着させることができる。更に重要なことは、このように妨げあう皮膚美容成分の液滴は、十分小さなサイズであって、撒き散らして配列させることができる。その結果、このような皮膚美容成分は、互いに混ぜ合わせる必要無く、同じ領域に同時にトリートメント効果を発揮することができる。
【0017】
このようにプリントされた化粧用送達シートは、シート素材のマスクやパッチ又は同様のシステムにより成分を送達するために、顔又は体の皮膚のあらゆる箇所の所定の領域に使用することができる。化粧用シートの正確なサイズ及び形状は、意図する用途及び製品の特徴によって異なる。化粧用シートは、十分な柔軟性を持ち、サイズ及び形状は、使用者の皮膚の所望のトリートメント領域の形状に合うように調節(adapt)される。必ずしもというわけではないが、本発明の特に好ましい実施形態において、化粧用シートは、顔の特徴に合うように調節された顔用マスクである。種々の形状及びサイズが本発明に従って利用可能であることを理解されたい。このような化粧用シートは、必ずしもというわけではないが、好ましくは水溶性の素材(例えば糖又は多糖類、コラーゲン、及び水溶性膜形成ポリマー等)で形成された柔軟性のある基体を含み得る。基体は、複数の隔離された個別領域を含み、このような領域のうちの少なくとも2つに、使用者の皮膚プロファイルに応じて異なる皮膚状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされる。
【0018】
本発明で使用することができる適切な皮膚美容成分としては、抗皺成分もしくは皮膚の引き締め成分、アンチエージング成分、保湿成分、皮膚の美白成分もしくは脱色成分、抗炎症成分、抗にきび成分、DNA修復成分、皮膚の脂質バリア修復成分、抗セルライト成分、創傷治癒成分、ストレッチ・マーク/傷跡(scar)除去成分、ふっくら(plumping)成分、むだ毛成長遅延成分(hair growth retardation agents)、育毛刺激成分、クマ減少成分又は腫れぼったさを解消する成分(de-puffing agents)、コラーゲン合成もしくは血流促進成分、抗酸化成分、皮脂をコントロールする成分、ならびに毛穴を小さくする成分が挙げられるがこれらに限定されない。抗皺成分の例としては、アセチルヘキサペプチド-8、パルミトイルオリゴペプチド、ジペプチドジアミノブチロイル、ベンジルアミドジアセテート等が挙げられるがこれらに限定されない。皮膚の引き締め成分の例としては、緑藻エキス(algae extract)、プルラン(pullulan)、スイートアーモンドの種のエキス(sweet almond seed extract)、カルボマー、パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルテトラペプチド-7、コルクガシ(Quercus suber)エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。アンチエージング成分の例としては、テプレノン、レスベラトロール三リン酸三ナトリウム、虎杖根(Polygonum cuspidatum root)エキス、ホエイタンパク質等が挙げられるがこれらに限定されない。保湿成分の例としては、ヒアルロン酸、グリセリン、尿素、トレハロース等が挙げられるがこれらに限定されない。皮膚の美白成分又は脱色成分の例としては、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルアミノプロピル、ソウハクヒエキス(mulberry root extract)、オウゴンエキス(Scutellaria baicalensis extract)、ブドウエキス(grape extract)、フェルラ酸(ferulic acid)、ヒノキチオール(hinokitol)等が挙げられるがこれらに限定されない。抗炎症成分の例としては、イワヒバエキス(spike moss extract)、シールホ
イップ(seal whip)エキス、虎杖根エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。抗にきび成分の例としては、サリチル酸、グリコール酸、ラクトビオン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。DNA修復成分の例としては、テトラヒドロキシシクロヘキサン酸アルキル(C1-C8)、ミクロコッカス溶解液、ビフィズス菌発酵エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。皮膚の脂質バリア修復成分の例としては、フィトスフィンゴシン(phytosphingosine)、リノール酸、コレステロール等が挙げられるがこれらに限定されない。抗セルライト成分の例としては、コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)の根のエキス、タイサンボク(Magnolia grandiflora)の樹皮のエキス、ハスの葉エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。創傷治癒成分の例としては、ミモザテヌイフローラ樹皮エキス(Mimosa tenuiflora bark extract)、ダイズタンパク質等が挙げられるがこれらに限定されない。ふっくら成分の例としては、サッカロミセス/キシリヌム(Saccharomyces/xylinum)/紅茶培養物、ハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)の根のエキス、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。むだ毛成長遅延成分の例としては、ウルソール酸、フィトスフィンゴシン、ボスウェリア・セラータ(Boswella serrata)エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。育毛刺激成分の例としては、セルノア属(Serenoa serrulata)フルーツエキス、リコリス(甘草)エキス、アセチルグルコサミン等が挙げられるがこれらに限定されない。クマ減少成分もしくは腫れぼったさを解消する成分の例としては、ヘスペリジンメチルカルコン、ジペプチド-2、パッションフラワー(Passiflora incarnata、トケイソウ)のフラワーエキス、リノール酸、イソリノール酸等が挙げられるがこれらに限定されない。コラーゲン合成もしくは血流促進成分の例としては、アルギニン、ノルウェイ産ケルブ(Ascophyllum nodosum)エキス、紅藻(Asparagopsis armata;アスパラゴプシス・アルマタ)エキス、カフェイン等が挙げられるがこれらに限定されない。抗酸化成分の例としては、ノルジヒドログアイアレチン酸(nordihydroguaiaretic acid)、グレープシードエキス、緑茶葉エキス等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
上記皮膚美容成分は、本発明のプリント装置に適合するインク処方物として調合することができる。このようなインク処方物は、水性溶液又は水中油型エマルジョンであり得る。送達しようとする皮膚美容成分全てが水溶性である場合、インク処方物は水性であることが好ましい。皮膚美容成分の幾つかが油溶性である場合、インク処方物は、好ましくは、連続的な水相中に分散された微粒子化油滴の形態の油相を含む微粒子化エマルジョン(micronized emulsion)である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に従った顔用マスク10の略図である。顔用マスク10は、互いから隔離された複数の個別領域12、14、16、及び18を含む。使用者の具体的な皮膚の状態に基づいて、領域12には、使用者の顔のTゾーン部分の脂っぽさを抑えるために、少なくとも1種の皮脂コントロール成分がインプリントされ、領域14には、使用者の目じり及び口角の皺及び小皺を減らすために少なくとも1種の皺減少成分もしくは皮膚の引き締め成分がインプリントされ、領域16には、少なくとも1種のクマ減少成分もしくは腫れぼったさを解消する成分がインプリントされ、ならびに領域18には、少なくとも1種の抗セルライト成分がインプリントされる。当然のことながら、これらの個別領域自体も、皮膚プロファイル分析に基づいてカスタマイズすることができる。カスタマイズは、サイズ、形状、及び個別領域の数を含む。必ずしもと言うわけではないが、好ましくはマスク10上の異なる領域には、皮膚美容成分が意図される異なる顔の特徴に簡単に位置合わせできるように、異なる色で印をつけるとよい。図2は、本発明の第2の実施形態に従った顔用マスク10の略図である。
【0021】
図3は、図1の領域14の分解図を表す。この領域には、皺減少成分もしくは皮膚の引き締め成分20、アンチエージング成分22、抗酸化成分24、保湿成分26、及びふっくら成分28を含む、5つの異なるタイプの皮膚美容成分がプリントされている。これらの皮膚美容成分は、別々の液滴として基体上に付着しており、互いに混じり合うことなく、それぞれの隙間に点在している。このようにして、このような皮膚美容成分は互いに殆どもしくは全く妨げ合うことなく、使用者の目じりや口角に同時にトリートメントを提供することができる。
【0022】
当業者であれば、本発明において使用するのに適したゲルタイプの化粧用シートは必然的に粘着性があるが、紙もしくは織物でできた化粧用シートは、皮膚に付着しやすくするために支持体の第1表面上に結合した化粧品として許容可能な粘着層の存在が必要であることが分かるであろう。皮膚へのシートの付着は、シートの表面上に結合した粘着性化合物を介して生じるものであってもよいし、又はシートを湿らせることによって皮膚にくっつくようにするゲルもしくは水等の液体として提供されてもよい。使用者は、予め湿らせた皮膚にマスクを貼り付けることもできる。また消費者が、皮膚へのシートの付着を助ける役割を果たすことができる、浸み込ませた処方物を活性化することができる、またはこの両方を行うことができるリキッドアクチベータ(liquid activator)を、シートもしくはシートの特定の領域に導入することができる、ということも考えられる。また化粧用シートに、シートを皮膚に貼る前に取り外す(例えば剥がす)ことが可能な支持シートを設けることもできる。
【0023】
化粧用シートは、例えばフェルト、紙、天然繊維、合成繊維、エラスチックブレンド(elastic blend)、又はこれらの混合物等の織布及び不織布を含む、薄く多孔性で柔軟且つ吸収性の任意の素材で形成することができる。非限定的な例としては、コットン、リネン、レーヨン、熱可塑性プラスチック及びセルロース系が挙げられる。シート素材は、糖もしくは多糖類、コラーゲン、及び水溶性膜形成性ポリマー等の水溶性素材であってもよい。またシート素材は、例えばアガロースもしくは水溶性低置換度セルロースエーテール(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース等を含み得る)で構成されるヒドロゲル等のゲルも含み得る。コスト、生産性及び美的感覚の観点から、不織布が特に好ましい。好適な不織布素材の例としては、天然及び合成フェルト、米で作った紙もしくは布、ならびに竹布が挙げられるがこれらに限定されない。必ずしもというわけではないが、本発明の好適な実施形態において、化粧用シートの基体及び皮膚美容成分の両方が完全に水溶性(例えば糖又はコラーゲン等)であり、従って水又はリキッドアクチベータ等をつけると化粧用シートが柔らかくなって皮膚にぴったりとはりつき、その後シート全体が皮膚表面に吸収(absorbed)されて除去する必要がない。本発明の実施に適した市販されている化粧用シートとしては、例えば、Kopykake社(カリフォルニア州トーランス)製の糖ベースのフロスティングシート(Frosting Sheets)、Dr. Suwelack Skin & Health Care AG社(ドイツ国ビラベック)製のMatricol(登録商標)コラーゲンシート、及び3M(商標)透明ポリエチレンメディカルテープ9830(2.6mm)が挙げられる。
【実施例1】
【0024】
カフェインパワーの標的化送達
以下の成分を混合してカフェインパワーを含む水性溶液を調製した。
【表1】

【0025】
カフェインパワーをプリントした領域に印をつけるためにFD&DブルーNo.1色を使用した。上記水性溶液を、Epson Workforce 30インクジェットプリンタの詰替え可能インクカートリッジの中に入れ、Photoshop Element 4.0をインストールしたパーソナルコンピュータにこのプリンタを接続した。Kopykake社(カリフォルニア州トーランス)製の糖ベースのフロスティングシート、Dr. Suwelack Skin & Health Care AG社(ドイツ国ビラベック)製のMatricol(登録商標)コラーゲンシート、及び3M(商標)透明ポリエチレンメディカルテープ9830(2.6mm)を含む、3種類の異なるタイプの基体シートを、Epson Workforce 30インクジェットプリンタの用紙トレイに給紙したところ、インクジェットプリンタによってカフェイン含有水性溶液が基体シート上に首尾よくプリントされた。次に、皮膚美容成分としてカフェインを標的化送達するために、プリントされた基体シートを使用者の皮膚に貼り付けた。
【実施例2】
【0026】
サリチル酸の標的化送達
以下の成分を混合することにより、サリチル酸を含む水性溶液を調製した。
【表2】

【0027】
サリチル酸(SA)をプリントした領域に印をつけるためにFD&DイエローNo.5色を使用した。上記水性溶液を、Epson Workforce 30インクジェットプリンタの詰替え可能インクカートリッジの中に入れ、Photoshop Element 4.0をインストールしたパーソナルコンピュータにこのプリンタを接続した。Kopykake社(カリフォルニア州トーランス)製の糖ベースのフロスティングシート、Dr. Suwelack Skin & Health Care AG社(ドイツ国ビラベック)製のMatricol(登録商標)コラーゲンシート、及び3M(商標)透明ポリエチレンメディカルテープ9830(2.6mm)を含む3種類の異なるタイプの基体シートを、Epson Workforce 30インクジェットプリンタの用紙トレイに給紙したところ、インクジェットプリンタによってSA含有水性溶液が基体シート上に首尾よくプリントされた。次に、皮膚美容成分としてSAを標的化送達するために、プリントされた基体シートを使用者の皮膚に貼り付けた。
【0028】
本発明を好適な実施形態に沿って説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことが可能であることが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の皮膚に複数の皮膚美容成分を標的化/個別送達するためのシステムであって、
使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の画像を捕捉するための画像形成装置、
画像形成装置から捕捉した画像を表すデータを受け取り、このようなデータを分析し、そして使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の状態を示す皮膚プロファイルを作製するための、前記画像形成装置に通信接続された分析装置、ならびに
前記分析装置に通信接続された、1以上の化粧用送達シートをプリントするためのプリント装置であって、前記化粧用送達シートが、使用者の皮膚の所定のトリートメント領域に合うように配置及び構成され、前記化粧用送達シートの各々が、複数の隔離された個別領域を持つ基体を含み、これらの隔離された個別領域のうちの少なくとも2つに、分析装置によって作製された皮膚プロファイルに従って所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされる、上記プリント装置、
を含む、上記システム。
【請求項2】
前記画像形成装置がデジタルカメラである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記分析装置が、捕捉された画像データを処理して皮膚プロファイルを作製するようにプログラミングされたパーソナルコンピュータである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記プリント装置が、皮膚美容成分を含む組成物を充填したカートリッジを備えたプリンタであり、前記プリント装置が、非加熱式プリントプロセスによって化粧用送達シートの基体上に皮膚美容成分を含む組成物をプリントするよう構築されている、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
基体及び皮膚美容成分の両方が水溶性であり、形成された化粧用送達シートが適用後に使用者の皮膚に完全に吸収(absorbed)され得る、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
使用者の皮膚の所定のトリートメント領域に合うように配置及び構成された化粧用送達シートであって、前記化粧用送達シートが、複数の隔離された個別領域を持つ基体を含み、これらの隔離された個別領域のうちの少なくとも2つに、所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされる、上記化粧用送達シート。
【請求項7】
基体及び皮膚美容成分の両方が水溶性であり、形成された化粧用送達シートが適用後に使用者の皮膚に完全に吸収され得る、請求項6記載の化粧用送達シート。
【請求項8】
隔離された個別領域に、(1)抗皺成分もしくは皮膚の引き締め成分、(2)アンチエージング成分、(3)保湿成分、(4)皮膚の美白成分もしくは脱色成分、(5)抗炎症成分、(6)抗にきび成分、(7)DNA修復成分、(8)皮膚の脂質バリア修復成分、(9)抗セルライト成分、(10)創傷治癒成分、(11)ストレッチ・マーク/傷跡(scar)除去成分、(12)ふっくら(plumping)成分、(13)むだ毛成長遅延成分(hair growth retardation agents)、(13)育毛刺激成分、(14)クマ減少成分又は腫れぼったさを解消する成分(de-puffing agents)、(15)コラーゲン合成もしくは血流促進成分、(16)抗酸化成分、(17)皮脂をコントロールする成分、ならびに(18)毛穴を小さくする成分、からなる群より選択される皮膚美容成分がインプリントされている、請求項6記載の化粧用送達シート。
【請求項9】
隔離された個別領域のうち少なくとも1つが2以上の異なる皮膚美容成分を含み、これらの異なる皮膚美容成分が、互いに混ぜ合わされることなく別々の液滴として基体上にインプリントされている、請求項6記載の化粧用送達シート。
【請求項10】
皮膚美容成分を含む組成物が充填されたカートリッジを含むプリンタであって、前記プリンタが、非加熱式プリントプロセスにより基体上に皮膚美容成分をプリントするように構築されている、前記プリンタ。
【請求項11】
圧力駆動式インクジェットを用いることにより非加熱式プリントプロセスが行われる、請求項10記載のプリンタ。
【請求項12】
使用者の皮膚に複数の皮膚美容成分を標的化/個別送達するための方法であって、
使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の画像を捕捉する工程、
捕捉された画像データを分析する工程、
使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の状態を示す皮膚プロファイルを作製する工程、ならびに
作製された皮膚プロファイルに基づいて1以上の化粧用送達シートをプリントする工程であって、前記化粧用送達シートが、使用者の皮膚の所定のトリートメント領域の形状に合うように配置及び構成され、前記化粧用送達シートの各々が、複数の隔離された個別領域を持つ基体を含み、これらの隔離された個別領域のうちの少なくとも2つに、所定のトリートメント領域の異なる皮膚の状態をトリートメントするための異なる皮膚美容成分がインプリントされる、上記工程、
を含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−502908(P2012−502908A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526889(P2011−526889)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/052525
【国際公開番号】WO2010/033309
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】