説明

化粧材の取付部材及び取付方法

【課題】低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有し、化粧材の建物躯体への取り付けを容易にして、1人作業で化粧材を建物躯体へ取り付けることが可能な化粧材の取付部材、及びこの取付部材を用いた化粧材の取付方法を提供する。
【解決手段】建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付けるための部材であって、化粧材に固定される化粧材側部分3aと、建物躯体に固定される躯体側部分3bと、化粧材側部分3a及び躯体側部分3bを連結する連結部分3cとを備え、躯体側部分3aまたは化粧材側部分3bの少なくとも一方に、建物躯体または化粧材へ固定するための固定具挿入用の長孔6が設けられ、長孔6が、固定具の頭部を通すことができる拡張開口部分6aと、固定具の胴部を通すが頭部を通さない縮小開口部分6bとが連結された形状を有する取付部材3を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面格子を始めとする建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付けるための取付部材、及びこの取付部材を用いた化粧材の建物躯体への取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
面格子を始めとする建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付けるための部材として、例えば、図9に示すような取付部材が広く用いられている。
図9は、取付部材103を用いて、面格子である化粧材1を建物躯体2に取り付けたところを、上方から見た図である。この取付部材103は、金属板の両端が互いに反対側に折り曲げられた鉤形の形状を有している。また、取付部材103は、化粧材1の反対側の端(図示せず)にも取り付けられている。
【0003】
この化粧材1を建物躯体2に取り付ける手順としては、まず、取付ネジ104を用いて、取付部材103の化粧材側部分103aを化粧材1に固定する。そして、取付部材103が取り付けられた化粧材1をその取付位置まで持ち上げて、取付部材103の躯体側部分103bを建物躯体2の面部に接触させ、その状態を保持する。この状態で、躯体側部分103bに設けられたネジ孔を介して、タッピンネジである取付ネジ105を建物躯体2へネジ込んで、躯体側部分103bを建物躯体2に固定する。
【0004】
以上のように、化粧材1を建物躯体2に取り付けるためには、一定の数の取付ネジ105を建物躯体102へネジ込んで、化粧材1をその取付位置に保持可能な強度を有するまで、長時間、人の力で化粧材1を取付位置に保持する必要がある。よって、化粧材1を建物躯体2へ取り付けるためには、通常、化粧材1を所定の位置に保持する作業者と、タッピンネジである取付ネジ105をネジ込む作業者の2名で作業を行なう必要がある。従って、作業工数が多くかかり、施工費用も多くかかる問題が生じる。
特に、金属の芯材の外側を樹脂材料で覆った樹脂系化粧材は、アルミ製の化粧材に比べて、高い装飾性を有するが重量は重くなる傾向にあるので、樹脂系化粧材を用いる場合には、作業者が化粧材を長時間、所定の位置に保持することは困難な作業となる。
【0005】
この問題に対処するため、面格子の取り付けを容易にして、1人作業で面格子を建物躯体に取り付けることができるよにするため、例えば、取付部材を、予め建物躯体に固定する第1ブラケットと、予め化粧材に固定する第2ブラケットの2つの部品で構成し、第1ブラケットの位置決め面と第2ブラケットの位置決め面とを当接させながら、両ブラケットを接合して化粧材の取り付けを行なう取付部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−120146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で提案された取付部材では、1つの取付部材において、2つのブラケットを要し、更に、各々のブラケットは非常に複雑な形状を有している。よって、取付部材の重量も重くなり、より大きな設置スペースを要し、更に、取付部材の製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0008】
従って、本発明の目的は上述の問題を解決して、低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有し、化粧材の建物躯体への取り付けを容易にして、1人作業で化粧材を建物躯体へ取り付けることが可能な化粧材の取付部材、及びこの取付部材を用いた化粧材の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の化粧材の取付部材の第1の実施態様は、建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付けるための部材であって、前記化粧材に固定される化粧材側部分と、前記建物躯体に固定される躯体側部分と、前記化粧材側部分及び前記躯体側部分を連結する連結部分とを備え、前記躯体側部分または前記化粧材側部分の少なくとも一方に、前記建物躯体または前記化粧材へ固定するための固定具挿入用の長孔が設けられ、前記長孔が、前記固定具の頭部を通す大きさの拡張開口部分と、前記固定具の胴部を通すが前記頭部を通さない大きさの縮小開口部分とが連結された形状を有することを特徴とする。
【0010】
ここで、建物躯体に取り付ける「建物外装用化粧材」は、建物躯体に取り付ける建物の外装用の部材であれば、面格子、横ルーバーを始めとするあらゆる外装材が含まれ、面部に隙間のあいていない板状のものも含まれる。また、建物躯体に固定された窓サッシ等に取り付ける場合も、建物躯体に取り付けることに含まれる。
本実施態様の取付部材では、「化粧材側部分」と「躯体側部分」とが「連結部分」で連結された構造を有するが、これらを一体で成形する場合も、2以上の部品を接合部品で接合する場合に含まれる。
【0011】
一体成形の場合には、例えば、金属板の両端を折り曲げて、化粧材側部分と躯体側部分とを設けることが考えられる。この場合、同じ向きに折り曲げてコの字形に形成することもできるし、反対側に折り曲げて鉤形の形状に形成することもできる。また、樹脂やセラミックの一体成形により、同様の形状を有する取付部材を製造することもできる。また、2以上の部品で構成する場合には、例えば、L字形をした部品を組み合わせて、コの字形や鉤形の形状の取付部品を構成することもできる。また、部品どうしがスライドする機構を備えて、化粧材側部分と躯体側部分との間の間隔を変更できるようにすることもできる。
【0012】
取付部材によって化粧材が建物躯体に取り付けられた場合、化粧材と建物躯体との位置関係は、化粧材と建物躯体が所定の間隔(例えば、取付部材の連結部分の長さ)だけ離れた状態で互いに平行に配置される場合もあるし、化粧材が建物躯体に対して斜めに取り付けられる場合もある。また、化粧材が建物躯体よりも外側に配置される場合も、化粧材が建物躯体よりも内側に配置される場合も、化粧材が建物躯体に接する場合も考えられる。
化粧材と建物躯体との位置関係に応じて、化粧材側部分、躯体側部分、及び連結部分の配置が定められ、最適な取付部材の形状が定められる。
これらの取付部材は、1つの化粧材に対して任意の数を取り付けることができる。例えば、化粧材の横方向において、両端、中央部を始めとする任意の位置に取り付けることができ、化粧材の上下方向においても、上下端、中央部を始めとする任意の位置に取り付けることができる。
【0013】
また、「固定具」とは、取付部材を建物躯体または化粧材へ固定するための部品であって、取付ネジ、ボルトナット、ビス、釘を始めとするあらゆるものを用いることができる。
本実施態様では、躯体側部分または化粧材側部分のどちらか一方に、上述の長孔を設けることもできるし、躯体側部分及び化粧材側部分の両方に上述の長孔が設けることもできる。一方にだけ上述の長孔を設ける場合には、他方には、固定具挿入用の丸孔を設けることもできるし、幅が一定の長孔を設けることもできるし、溶接、接着を始めとするその他の方法で化粧材や建物躯体に固定することもできる。
【0014】
本実施態様では、例えば、取付部材の躯体側部分に長孔が設けられている場合には、まず、取付部材の化粧材側部分を化粧材に固定し、次に、固定具を建物躯体にネジ込みまたは打ち込んで、固定具の頭部と建物躯体との間に、取付部材の躯体側部分が挿入できるだけの間隔を確保できるようにネジ込みまたは打ち込みを止め、次に、長孔の拡張開口部分が縮小開口部分の下側に位置するようにして、取付部材が取り付けられた化粧材を所定位置まで持ち上げ、次に、固定具の頭部を拡張開口部分に通して固定具を長孔に挿入させ、固定具が長孔に挿入された状態で、固定具の胴部と長孔の縮小開口部分の端部とが当接するまで化粧材を落とし込み、その後、固定具を更にネジ込みまたは打ち込んで、躯体側部分を建物躯体に固定することによって、化粧材を建物躯体へ取り付けることができる。
【0015】
同様に、取付部材の化粧材側部分に長孔が設けられている場合には、まず、化粧材側部分に設けられた長孔の拡張開口部分が縮小開口部分の上側に位置するようにして、取付部材の躯体側部分を建物躯体に固定し、次に、固定具を化粧材にネジ込みまたは打ち込んで、固定具の頭部と化粧材との間に、取付部材の化粧材側部分が挿入できるだけの間隔を確保できるようにネジ込みまたは打ち込みを止め、次に、固定具が取り付けられた化粧材を所定位置まで持ち上げ、次に、固定具の頭部を拡張開口部分に通して固定具を長孔に挿入させ、固定具が長孔に挿入された状態で、固定具の胴部と長孔の縮小開口部分の端部とが当接するまで化粧材を落とし込み、その後、固定具を更にネジ込みまたは打ち込んで、化粧材側部分を化粧材に固定することによって、化粧材を建物躯体へ取り付けることができる。
【0016】
以上のように、本実施態様の取付部材では、固定具の頭部を通すことができる拡張開口部分と、固定具の胴部を通すが頭部を通さない縮小開口部分とを有する長孔を備えることによって、低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有しながら、化粧材の建物躯体への取り付けを容易にして、1人作業で化粧材を建物躯体へ取り付けることを可能にする。
【0017】
本発明の化粧材の取付部材のその他の実施態様は、2個の同形の前記長孔を前記拡張開口部分側どうしまたは前記縮小開口部分側どうしが近接するように配置した長孔の対が、前記躯体側部分または前記化粧材側部分の少なくとも一方に、1組以上設けられていることを特徴とする。
【0018】
ここで、「長孔の対」とは、拡張開口部分側どうしまたは縮小開口部分側どうしが近接するように配置された2個の同形の長孔の組合せを意味する。なお、1組(長孔2個)だけでなく、2組(長孔4個)以上設けることもできる。また、同じ形状の長孔の対を2組以上設けてもよいし、対ごとに異なる形状の長孔の対を2組以上設けてもよい。
【0019】
長孔の対は、2個の同形の長孔を、2つの長孔の中点または中線を中心に点または線対称に配置した組合せであることが好ましい。化粧材を建物躯体に取り付けるには、多くの場合、化粧材の左右両側に取付部材を用いることが考えられるが、2つの同形の長孔が対称に配置された取付部材では、例えば、長孔の長手方向が上下の向きになるように取り付ける場合には、化粧材の左右どちら側に用いても、つまり、180度向きを変えて用いても、長孔の配置が同様になるので、共用の取付部材として用いることができる。
【0020】
同様に、化粧材の上下方向に取付部材を固定する場合も、長孔の配置は同様になるので、上下共用の取付部材として用いることができる。つまり、このような長孔の配置により、1種類の取付部材を、共用部材として化粧材のあらゆる場所に用いることができるので、取付部材の製造効率を向上させることができ、また、現場での部材の取り付け間違いにより生じる取付部材が不足する問題を解消することもできる。
【0021】
本発明の化粧材の取付部材のその他の実施態様は、前記化粧材側部分が前記化粧材に固定され、前記躯体側部分が前記建物躯体に固定されて、前記化粧材が前記建物躯体に取り付けられた状態では、前記躯体側部分が前記化粧材に覆われている位置にあることを特徴とする。
【0022】
本実施形態では、化粧材が建物躯体に取り付けられた状態において、取付部材の躯体側部分が化粧材に覆われている位置にあるので、見栄えがよく意匠的に優れた配置を得ることができる。また、躯体側部分が化粧材に覆われているので、躯体側部分の取付部品を取り外される危険性が減り、防犯性にも優れている。
【0023】
本発明の化粧材の取付部材のその他の実施態様は、前記躯体側部分が前記化粧材に覆われている位置にある状態において、前記化粧材の外側から前記躯体側部分の取付部品の着脱が可能であることを特徴とする。
【0024】
ここで「躯体側部分の取付部品」には、躯体側部分を建物躯体に固定するための取付部品であって、取付ネジ、ボルトナット、ビス、釘を始めとするあらゆるものを用いることができる。この場合、躯体側部分に上述の長孔が設けられている場合も、設けられていない場合も適用できる。なお、長孔が設けられている場合には、取付部品は上述の固定具と一致する。
具体的な態様としては、例えば、化粧材が面格子であれば、面格子の縦横の柵と躯体側部分とが重ならないように配置することが考えられ、また、化粧材に十分な隙間が取れない場合には、化粧材の躯体側部分の位置に開閉扉または着脱蓋を設けて、開閉扉を開ける、または着脱蓋を取ることによって、躯体側部分にアクセスすることも考えられる。
【0025】
本実施形態により、化粧材の外側からの取付部品の勅脱を実現しながら、同時に、意匠性に優れかつ防犯性に優れた化粧材の建物躯体への取り付けを実現できる。
【0026】
本発明の化粧材の取付部材のその他の実施態様は、前記化粧材が面格子または横ルーバーであることを特徴とする。
【0027】
本発明の化粧材の取付部材を用いることは、面格子や横ルーバーの建物躯体への取り付けにおいて、非常に有効な手段である。比較的重量の重い金属材料と樹脂材料から構成される化粧材であっても、1人作業で取付作業を行なうことができる。
【0028】
本発明の化粧材の取付方法の第1の実施態様は、建物外装用の化粧材を取付部材を用いて建物躯体へ取り付ける方法であって、前記取付部材は、前記化粧材に固定される化粧材側部分と、前記建物躯体に固定される躯体側部分とが連結部分によって連結され、前記躯体側部分に、固定具の頭部を通す大きさの拡張開口部分と、前記固定具の胴部を通すが前記頭部を通さない大きさの縮小開口部分とが連結された形状の長孔が設けられ、前記取付部材の前記化粧材側部分を、前記化粧材に固定する工程1と、前記固定具を前記建物躯体にネジ込みまたは打ち込んで、前記固定具の前記頭部と前記建物躯体との間に、前記取付部材の前記躯体側部分が挿入できるだけの間隔を確保できるようにネジ込みまたは打ち込みを止める工程2と、前記長孔の前記拡張開口部分が前記縮小開口部分の下側に位置するようにして、前記取付部材が取り付けられた前記化粧材を所定位置まで持ち上げる工程3と、前記固定具の前記頭部を前記拡張開口部分に通して、前記固定具を前記長孔に挿入させる工程4と、前記固定具が前記長孔に挿入された状態で、前記固定具の胴部と前記長孔の前記縮小開口部分の端部とが当接するまで前記化粧材を落とし込む工程5と、前記固定具を更にネジ込みまたは打ち込んで、前記躯体側部分を前記建物躯体に固定する工程6と、を含むことを特徴とする。
【0029】
本実施態様では、低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有する取付部材を用いながら、化粧材の建物躯体への取り付けを容易にして、1人作業で化粧材を建物躯体へ取り付けることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の化粧材の取付部材、及びこの取付部材を用いた化粧材の取付方法では、低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有する取付部材を用いながら、化粧材の建物躯体への取り付けを容易にして、1人作業で化粧材を建物躯体へ取り付けることが可能となる。
【0031】
また、長孔の配置によって、1種類の取付部材を、共用部材として化粧材のあらゆる場所に用いることができ、取付部材の製造効率を向上させ、現場での部材の取り付け間違いにより生じる取付部材が不足する問題を解消することができる。
【0032】
更に、化粧材が建物躯体に取り付けられた状態において、取付部材の躯体側部分が化粧材に覆われている位置にあるように配置することによって、意匠的に優れ、かつ防犯性にも優れた化粧材の配置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の換気化粧部材及びその施工方法の実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
(本発明の化粧材の取付部材の説明)
本発明の取付部材の一実施形態を図1に示す。本実施形態の取付部材3は、図1(a)の側面図に示すように、アルミニウムの板材を折り曲げ加工して形成された鉤型の形状を有している。また、図1(b)は、図1(a)の矢印Cから見た平面図である。また、図2は、取付部材3を用いて、化粧材1を建物躯体2に取り付けた状態を上方から見た図である。
【0034】
取付部材3は、化粧材1に固定される化粧材側部分3aと、建物躯体2に固定される躯体側部分3bと、化粧材側部分3aと躯体側部分3bとを連結する連結部分3cとから構成されている。なお、本実施形態では、固定具として取付ネジを用いている。化粧材側部分3aには、取付ネジ用の円形のネジ孔7が2つ開けられており、取付ネジ4のネジ部(胴部)をネジ孔7に通して化粧材1にネジ込み、化粧材側部分3aを化粧材1に固定する。このネジ孔7は、取付ネジ4のネジ部を通すが、取付ネジ4の頭部は通さない大きさになっている。
【0035】
躯体側部分3bには、取付ネジ用の長孔6が2つ開けられている。この長孔6は、取付ネジ5(固定具)の頭部を通す大きさの拡張開口部6aと、取付ネジ5のネジ部(胴部)は通すが頭部は通さない大きさの縮小開口部6bとが連結された形状を有する。長孔6と、取付ネジ5の頭部及びネジ部との間のクリアランスについては、取付ネジ5をスムーズに挿入、移動させることが可能な範囲で、がたつき等の問題の生じない寸法を定めることが望ましい。例えば、取付ネジ5の頭部の外径が11mmで、ネジ部の外径が6mmの場合、図1(b)の寸法Aを12mm前後に、寸法Bを7.5mm前後に設定するのが望ましいといえる。
本実施形態の取付部材3では、上述の形状を有する2個の長孔6が、拡張開口部6aどうしが近接するような状態で並べられている。また、2つの長孔6は、矩形形状の躯体側部分3bの中央部から等距離に配置されている(図1(b)参照)。同様に、ネジ孔7も、矩形形状の化粧材側部分3aの中央部から等距離に配置されている(図1(b)参照)。つまり、2個の長孔6及び2個のネジ孔7は、各々の中点を中心として点対称に配置されており、また、各々の中線を中心として線対称に配置されているともいえる。
【0036】
次に、取付部材3を用いて化粧材1を建物躯体2に取り付けたところを、図2を用いて説明する。本実施形態における化粧材1は面格子であって、取付部材3が、化粧材1の両端の縦柵に上下2個づつ取り付けられている。取付部材3の取付方向は、ちょうど図1(b)に示すように、2つの長孔6及び2つのネジ孔7が互いに上下に並ぶように取り付けられている。取付部材3の化粧材側部分3aは、取付ネジ4によって化粧材1両端の縦柵に固定され、取付部材3の躯体側部分3bは、取付ネジ5によって建物躯体2に固定されている。
この場合、図1(b)に示すように、長孔6もネジ孔7も取付部材3の取付面の中央部を中心として対称な位置に配置されているので、化粧材1の両端の取付位置において、長孔6及びネジ孔7の配置が同一であり、同一の取付部材3を用いることができる。同様に、化粧材1の縦柵の上下の取付位置において、長孔6及びネジ孔7の配置が同一であり、同一の取付部材3を用いることができる。従って、同一の取付部材3を共用部品として、化粧材1のあらゆる取付位置に適用することができるので、取付部材3の製造効率を向上させることができ、また、現場での部材の取り付け間違いにより生じる取付部材が不足する問題を解消することもできる。
【0037】
化粧材1の左右の取付位置に取り付けられた取付部材3は、躯体側部分3bが化粧材側部分3aよりも内側にくるように配置され、化粧材1が建物躯体2に取り付けられた状態では、躯体側部分3bが化粧材1に覆われる位置に配置されるようになっている。従って、見栄えよく意匠的に優れた配置を得ることができ、また、躯体側部分の取付部品を取り外される危険性が減って、防犯性にも優れている。
更に、躯体側部分3bの長孔6は、化粧材1の縦柵と横柵の間に配置されていて、化粧材1の外側から取付ネジ5の着脱を行なうことができるようになっている。これにより、化粧材の外側からの取付ネジ5の着脱を実現しながら、同時に、意匠性に優れかつ防犯性に優れた化粧材の配置を実現することができる。
【0038】
なお、本発明の化粧材の取付部材は、上述のアルミニウム材から構成されるものだけでなく、ステンレス材、亜鉛メッキ鋼材を始めとするその他のあらゆる金属材料を用いることもできるし、樹脂やセラミックを用いることもできる。
また、上述の実施形態では、化粧材1の左右の取付位置において、取付部材3の躯体側部分3bが化粧材側部分3aよりも内側にくるように配置されているが、躯体側部分3bが化粧材側部分3aよりも外側にくるように配置することもできる。この場合、躯体側部分3bを化粧材1に覆われる位置に配置するのが、意匠、防犯の点においては好ましいといえるが、躯体側部分3bが化粧材1の外側に配置される実施形態も本発明に含まれる。
【0039】
(本発明の化粧材の取付方法の説明)
次に、図3を用いて、本発明の取付部材を用いて建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付ける方法を説明する。本実施形態では、窓サッシ10の両側の躯体2に図1に示す取付部材3を取り付けて、面格子である化粧材1を窓サッシ10を覆う位置に取り付ける。
【0040】
まず、図3(a)に示すように、化粧材1を取り付ける位置に合わせて、建物躯体2の取付部材3の取付位置に、矢印Dに示すような水平墨を打つ。次に、図3(b)に示すように、取付ネジ4を用いて、取付部材3を化粧材1の両端の上下2箇所、計4箇所に取り付ける。更に詳細に述べれば、取付ネジ4のネジ部を、取付部材3の化粧材側部分3aに開けられたネジ孔7に通して、化粧材1の縦柵の所定位置にネジ込んで本締めし、化粧材側部分3aを化粧材1に固定する。
取付部材3の取り付けの向きとしては、2つの長孔6及び2つのネジ孔7が、互いに上下に並ぶようにし、化粧材1の横方向において、取付部材3の躯体側部分3bが化粧材側部分3aよりも内側にくるように取り付ける。取付部材3は、図1(b)に示すように、長孔6及びネジ孔7の対は、各々の中点(または中線)を中心に点(または線)対称な位置に配置されているので、同一の取付部材3を全ての取付位置に用いることができる。
【0041】
次に、図3(c)に示すように、建物筐体2に取付ネジ5のネジ込み位置を定めてマーキングする。ネジ込み位置は、矢印Eに示す両側の取付部材3の取付ネジ間距離、及び矢印Fに示す水平墨からの垂直距離を計測し、矢印Gに示すように、窓サッシ10の両端からの距離が均等になることを確認して、マーキングを行なう。次に、この筐体2にマーキングされたネジ込み位置に、取付ネジ5をネジ込み、取付ネジの頭部と建物躯体2の面部との間に、取付部材3の躯体側部分3bが挿入できるだけの間隔、つまり、躯体側部分3bの厚みよりも若干大きな間隔を確保できるようにして、ネジ込みを止める。
【0042】
次に、図3(d)に示すように、取付部材3が取り付けられた化粧材1を持ち上げて、化粧材1の両側の縦柵の上側に取り付けられた取付部材3の上の長孔6に、建物躯体2にネジ込まれた取付ネジ5を挿入させて化粧材1を落とし込む作業を行なう。これを図4を用いて詳細に説明すると、まず、図4(a)に示すように、取付ネジ5の頭部5aが長孔6の拡張開口部分6aを通過するように化粧材1を押し込み、取付ネジ5を長孔6に挿入させる。次に、図4(b)に示すように、取付ネジ5が長孔6に挿入された状態で、取付ネジ5のネジ部5bと長孔の縮小開口部分6bの上端(矢印H参照)とが当接するまで化粧材1を落とし込む。
【0043】
次に、図4(c)に示すように、取付ネジ6をネジ込んで本締めを行なう。そして、図4(d)に示すように、縦柵上側の取付部材3の下の長孔6に取付ネジ5をネジ込んで本締めを行ない、縦柵上側の取付部材3を建物躯体2に固定する。更に、縦柵下側の取付部材3についても、取付ネジ5をネジ込んで建物躯体2に固定する。
【0044】
以上のようにして、取付ネジ5の頭部5aを通す大きさの拡張開口部分6aと、取付ネジ5のネジ部5bを通すが頭部5aを通さない大きさの縮小開口部分6bとを有する長孔6を備えることによって、低い製造コストで製造可能なシンプルな構造を有しながら、落とし込みによって化粧材1を容易に建物躯体へ取り付けることができる。特に、本実施形態では、化粧材1が比較的重量の重い金属材と樹脂材とを組み合わせたものであったとしても、1人作業で化粧材1を建物躯体へ取り付けることができる。
【0045】
(本発明の化粧材の取付部材のその他の実施形態の説明)
次に、図5から図8を用いて、本発明の化粧材の取付部材のその他の実施形態の説明を行なう。
<図5に示す実施形態>
図1〜4示した実施形態では、化粧材1が建物躯体2の面部の外側に配置され、化粧材1の面部と建物躯体2の面部とが所定の間隔を隔てて平行になるように取り付けられていたが、本発明の取付部材は、この配置に限られるものではない。
図5(a)には、化粧材1の両端の取付部材3、3’の連結部分3c、3c’の長さが異なっており、化粧部材1の面部が、建物躯体2の面部に対して斜めに取り付けられている実施形態を示す。
また、図5(b)には、化粧材1が建物躯体2の面部よりも内側に配置された実施形態を示し、図5(c)には、化粧材1が建物躯体2の面部に接触した位置に配置された実施形態を示す。
【0046】
<図6に示す実施形態>
図6には、長孔6の形状に関するその他の実施形態を示す。図6(a)には、拡張開口部分6aから縮小開口部分6bに向かって、長孔の幅が連続的に減少していく形状を有する長孔6の実施形態を示す。本実施形態では、縮小開口部分6bの端部における内径が、取付ネジの外径とほぼ同一になるように成形することによって、自動調芯機能を持たせることができる。
また、図6(b)には、縮小開口部分6bが、拡張開口部6aと連結する縮小開口部分6b1と、この縮小開口部分6b1と直交する縮小開口部分6b2を有した長孔6の実施形態が示されている。本実施形態では、化粧材1の取付時に横方向の位置調整ができるので、施工時における調整が容易になり、またマーキング時に高い精度を要しないという利点がある。
【0047】
<図7に示す実施形態>
図1〜4に示す実施形態では、1つの取付部材3に1組の長孔6の対が設けられていたが、本発明の取付部材3はこれに限られるものではなく、拡張開口部分側どうしまたは縮小開口部分側どうしが近接するように配置された対であれば、1組だけでなく、2組以上の長孔の対を設けることができる。例えば、図7(a)に示すように、同じ形状の長孔6の対を2組設けることもできるし、図7(b)に示すように、異なる形状の長孔6、6’の対を設けることもできる。また、図7(a)に示すように、化粧材側部分3aと躯体側部分3bの両方に、拡張開口部分と縮小開口部分を有する長孔を設けても良いし、図7(b)に示すように、一方の取付面にだけ拡張開口部分と縮小開口部分を有する長孔を設けてもよい。なお、長孔の対は、2つの長孔の中点または中線を中心に、点または線対称な位置に配置されるのが好ましい。
【0048】
また、図7(c)には、拡張開口部分6aと縮小開口部分6bとを有する長孔6が、同じ向きに並んでいる取付部材3の実施形態を示す。この実施形態では、化粧材1の両端に取り付ける場合、共用部品としては用いることはできないが、上下2箇所の取付ネジ5を同時に長孔6に挿入させることや、上下2箇所の取付ネジ5を同時に長孔6から外すことができるので、化粧材1の取り付け、取り外しの負担を減らすことができる。
【0049】
<図8に示す実施形態>
図8には、化粧材側部分3aと連結部分3c1とを有するL字形材3’と、躯体側部分3bと連結部分3c2とを有するL字形材3’’とを備えた取付部材3を示す。このL字形材3’とL字形材3’’とは、ボルトナット8によって連結され、鉤型の取付部材3が形成されている。
連結部分6c2には、ボルト8’が挿入される長孔9が設けられており、L字形材3’とL字形材3’’とをスライドさせることによって、化粧材側部分6aと躯体側部分6bとの間の距離を変更することができる。従って、化粧材1と建物躯体2との間の距離を調整することができる。
【0050】
上述の実施形態では、固定具として取付ネジを用いているが、これに限られるものではなく、ボルトナット、ビス、釘を始めとするその他のあらゆる固定具を用いることができる。
更に、本発明の化粧材の取付部材及び取付方法は、上述の実施形態には限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の化粧材の取付部材の一実施形態の(a)側面図、及び(b)平面図を示す。
【図2】本発明の取付部材を用いて、化粧材を建物躯体に取り付けた状態を示す図である。
【図3】本発明の取付部材を用いて、化粧材を建物躯体に取り付ける方法を示す図である。
【図4】長孔を用いて化粧材を落とし込んで取付を行なう手順を示した図である。
【図5】本発明の取付部材を用いて、化粧材を建物躯体に取り付けたその他実施形態を示す図である。
【図6】本発明の取付部材の長孔のその他の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の取付部材の長孔の配置のその他の実施形態を示す図である。
【図8】2つの部品から構成される本発明の取付部材のその他の実施形態を示す図である。
【図9】従来の取付部材を用いて化粧材を建物躯体に取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 化粧材
2 建物躯体
3 取付部材
3a 化粧材側部分
3b 躯体側部分
3c 連結部分
4 取付ネジ
5 取付ネジ(固定具)
6 長孔
6a 拡張開口部分
6b 縮小開口部分
7 ネジ孔
8 ボルトナット
9 長孔
10 窓サッシ
103 取付部材
103a 化粧材側部分
103b 躯体側部分
104 取付ネジ
105 取付ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外装用の化粧材を建物躯体に取り付けるための部材であって、
前記化粧材に固定される化粧材側部分と、
前記建物躯体に固定される躯体側部分と、
前記化粧材側部分及び前記躯体側部分を連結する連結部分とを備え、
前記躯体側部分または前記化粧材側部分の少なくとも一方に、前記建物躯体または前記化粧材へ固定するための固定具挿入用の長孔が設けられ、
前記長孔が、前記固定具の頭部を通す大きさの拡張開口部分と、前記固定具の胴部を通すが前記頭部を通さない大きさの縮小開口部分とが連結された形状を有することを特徴とする化粧材の取付部材。
【請求項2】
2個の同形の前記長孔を前記拡張開口部分側どうしまたは前記縮小開口部分側どうしが近接するように配置した長孔の対が、前記躯体側部分または前記化粧材側部分の少なくとも一方に、1組以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載の化粧材の取付部材。
【請求項3】
前記化粧材側部分が前記化粧材に固定され、前記躯体側部分が前記建物躯体に固定されて、前記化粧材が前記建物躯体に取り付けられた状態において、前記躯体側部分が前記化粧材に覆われている位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧材の取付部材。
【請求項4】
前記躯体側部分が前記化粧材に覆われている位置にある状態において、前記化粧材の外側から前記躯体側部分の取付部品の着脱が可能であることを特徴とする請求項3に記載の化粧材の取付部材。
【請求項5】
前記化粧材が面格子または横ルーバーであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の化粧材の取付部材。
【請求項6】
建物外装用の化粧材を取付部材を用いて建物躯体へ取り付ける方法であって、
前記取付部材は、前記化粧材に固定される化粧材側部分と、前記建物躯体に固定される躯体側部分とが連結部分によって連結され、前記躯体側部分に、固定具の頭部を通す大きさの拡張開口部分と、前記固定具の胴部を通すが前記頭部を通さない大きさの縮小開口部分とが連結された形状の長孔が設けられ、
前記取付部材の前記化粧材側部分を、前記化粧材に固定する工程1と、
前記固定具を前記建物躯体にネジ込みまたは打ち込んで、前記固定具の前記頭部と前記建物躯体との間に、前記取付部材の前記躯体側部分が挿入できるだけの間隔を確保できるようにネジ込みまたは打ち込みを止める工程2と、
前記長孔の前記拡張開口部分が前記縮小開口部分の下側に位置するようにして、前記取付部材が取り付けられた前記化粧材を所定位置まで持ち上げる工程3と、
前記固定具の前記頭部を前記拡張開口部分に通して、前記固定具を前記長孔に挿入させる工程4と、
前記固定具が前記長孔に挿入された状態で、前記固定具の胴部と前記長孔の前記縮小開口部分の端部とが当接するまで前記化粧材を落とし込む工程5と、
前記固定具を更にネジ込みまたは打ち込んで、前記躯体側部分を前記建物躯体に固定する工程6と、
を含むことを特徴とする化粧材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−186858(P2007−186858A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3980(P2006−3980)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】