説明

化粧材

【課題】各種物性面において従来のポリ塩化ビニル樹脂製の化粧材と同等の性能を有しつつ、燃焼時の有害物質発生の問題がなく、床用途の要求物性の一つである耐摩耗性(磨耗B試験 研磨紙S−42)を有する化粧材を提供すること。
【解決手段】オレフィン系熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層とを少なくとも設けてなる化粧材において、前記透明熱可塑性樹脂層がアイオノマー樹脂層とエチレン−メタクリル酸共重合体層の2層の組み合わせであり総厚が350〜400μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の化粧材は住宅の内外装に用いるものであって、特には建築物の内装用の床タイルなどに用いられる耐摩耗性の優れた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
前記用途に用いる化粧材の基材としては、硬度の調整やエンボス加工適性から塩化ビニルシートが用いられていたが、火災時や廃棄後の燃焼時に発生する塩素系ガスの問題があったため、オレフィン系熱可塑性樹脂が用いられるようになってきた。
【0003】
しかしながら、このオレフィン系熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様をグラビア印刷などによって設け、表面側に異なる樹脂系からなる透明熱可塑性樹脂層を設けた場合に、層間強度が十分に発現できず、層間剥離の問題があった。
【0004】
しかし、透明熱可塑性樹脂層にオレフィン系熱可塑性樹脂基材と同系の樹脂を用いると、表面の耐磨耗性(磨耗B試験 研磨紙S−42)が低下するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術における上記の如き問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各種物性面において従来のポリ塩化ビニル樹脂製の化粧材と同等の性能を有しつつ、燃焼時の有害物質発生の問題がなく、床用途の要求物性の一つである耐摩耗性(磨耗B試験 研磨紙S−42)を有する化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわち請求項1記載の発明は、オレフィン系熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層とを少なくとも設けてなる化粧材において、前記透明熱可塑性樹脂層がアイオノマー樹脂層とエチレン−メタクリル酸共重合体層の2層の組み合わせであり総厚が350〜400μmであることを特徴とする化粧材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、透明熱可塑性樹脂層がアイオノマー樹脂層とエチレン−メタクリル酸共重合体層の2層の組み合わせであり総厚が350〜400μmとすることで、層間強度と表面の耐摩耗性の両方に優れた化粧材とすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す。オレフィン系熱可塑性樹脂基材1上に絵柄模様層2、アイオノマー樹脂層3、エチレン−メタクリル酸共重合体層4を積層してなる。
【0009】
本発明におけるオレフィン系熱可塑性樹脂基材1としては、従来公知のオレフィン系樹脂フィルムが使用可能であり、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン(ホモあるいはランダム、共重合)等が使用可能である。層厚としては20〜200μm程度が好適である。
【0010】
本発明における絵柄模様層2としては、絵柄を形成するのはインキであり、顔料およびバインダーは適宜選定すればよい。フィルムとの接着性を考慮し、適宜原材料を選定すればよい。例えば、イソシアネート硬化剤と活性水素を有したバインダーを混合させた塗工液が、接着性の点では優位である。絵柄模様層を施す方法は、従来から行われているグラビア印刷が好適であるが、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などとくに印刷手法は問わない。
【0011】
本発明におけるアイオノマー樹脂層3としては、アイオノマー樹脂は一般に有機及び無機の成分が共有結合とイオン結合によって結合されている樹脂のことである。本発明に特に好ましく使用されるアイオノマー樹脂としては、共重合体の分子間を金属イオンで架橋した樹脂が挙げられ、この場合の共重合体としてはアクリレート系共重合体、例えばエチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。金属イオンとしては、例えばNa、K、Mg、Zn等のイオンが挙げられる。
【0012】
アイオノマー樹脂を得るには、例えば、カルボキシル基を側鎖に有する単量体(たとえばアクリル酸)を共重合させたエチレン系のポリマーにNa、K、Mg、Znなどの水酸化物、アルコレート、低級脂肪酸塩などを加えて酸基を中和する方法が挙げられる。これにより、分子鎖に沿って分布するカルボキシル陰イオンが分子間に存在する金属陽イオンと静電的に結合して一種の架橋を形成し、共重合体の分子間を金属イオンで架橋した構造のアイオノマー樹脂が得られる。
【0013】
本発明に好ましく使用されるアイオノマー樹脂は、上述の共重合体樹脂であるため、その共重合組成によってシートの硬さが任意に選択でき、また金属イオンによる架橋結合は加熱により結合力が弱められ、冷却すると結合力が回復するという塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂と似た性質を有するので、熱ラミネーション及びエンボス加工により製造されていた例えば従来の塩化ビニル製の化粧材の製造ライン等に適用しやすいという利点がある。
【0014】
本発明におけるエチレン−メタクリル酸共重合体層4としては、メタクリル酸の含有率が4〜15重量%の範囲にあるものが好適に使用され、前記アイオノマー樹脂層3などと良く調和し、比較的硬質で、表面光沢、耐汚れ性、耐傷性、耐凹み性などの改善に有効に作用する。メタクリル酸の含有率が15重量%より多いと脆すぎ、硬すぎ、成形しにくいので、耐傷性、滑り性などの改善が不充分となり、メタクリル酸の含有率が4重量%より少ないとその性質が低密度ポリエチレンによく似ているため、床用としての耐傷性、耐凹み性などの改善が不充分となる。
【実施例1】
【0015】
オレフィン系熱可塑性樹脂基材1として厚さ70μmのランダムポリプロピレン樹脂クリアフィルム(リケンテクノス(株)製「リベストTPO」)を用い、この一面に絵柄模様層2としてグラビア印刷により木目柄を印刷した。
一方、アイオノマー樹脂層3として厚さ200μmの「ハイミラン」(三井デュポンポリケミカル(株)製)を用い、エチレン−メタクリル酸共重合体層4として厚さ180μmの「ニュクレル」(三井デュポンケミカル(株)製)を用い、これらを共押出しにて貼り合せ、透明熱可塑性樹脂層とした。
その後、前記オレフィン系熱可塑性樹脂基材1の絵柄模様層2を設けた面と、前記透明熱可塑性樹脂層のアイオノマー樹脂層3側とを、ラミネート温度120℃の条件で連続ラミネーション方式により積層して貼り合わせると同時に、前記エチレン−メタクリル酸共重合体層4側の表面にエンボスロールをラミネート温度と同じ120℃で加圧してエンボスを施し、凹凸模様を付与し、化粧材を作製した。
【0016】
<比較例1>
前記透明熱可塑性樹脂層として厚み380μmの「ハイミラン」(三井デュポンポリケミカル(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧材を得た。
【0017】
<比較例2>
前記透明熱可塑性樹脂層の厚みをアイオノマー樹脂層3を150μm、エチレン−メタクリル酸共重合体層4を150μmとして総厚を300μmとした以外は実施例1と同様にして化粧材を得た。
【0018】
<性能評価>
以上の実施例1、比較例1,2の化粧材を、磨耗B試験(S−42)にて回転数を測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の化粧材は、特には建築物の内装用の床タイルなどに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…オレフィン系熱可塑性樹脂基材
2…絵柄模様層
3…アイオノマー樹脂層
4…エチレン−メタクリル酸共重合体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層と透明熱可塑性樹脂層とを少なくとも設けてなる化粧材において、前記透明熱可塑性樹脂層がアイオノマー樹脂層とエチレン−メタクリル酸共重合体層の2層の組み合わせであり総厚が350〜400μmであることを特徴とする化粧材。





【図1】
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【公開番号】特開2010−82825(P2010−82825A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251362(P2008−251362)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】