説明

化粧板、及びこれを使用した化粧方法

【課題】施工時の取り扱いが容易で、未熟練者でも簡単に施工することができ、しかも、下地の形状が現れないために入念な下地処理が不要である化粧板を提供する。
【解決手段】板状の基材1と、基材1の一方の面に塗布された第1の接着剤2と、第1の接着剤2によって基材1の一方の面に接着されたシート状の表面化粧材3と、基材1の他方の面に塗布された第2の接着剤4と、第2の接着剤4を覆う剥離可能な離型材5と、を備え、基材1は、第1の接着剤2を介して一方の面に接着された表面化粧材3の姿勢を保持するとともに、カッターで容易に切断可能であり、離型材5を剥がして前記第2の接着剤4により施工対象物の表面に接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内壁、ドア、家具等の施工対象物の表面を化粧する化粧板、及びこれを使用した化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内壁、ドア、家具等の施工対象物の表面に接着して、表面を化粧する壁紙が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものは、シート状の壁紙片の裏面に接着剤を塗布し、この接着剤を剥離紙で覆ったものである。
【0004】
この壁紙によれば、施工対象物の表面の凹凸やひび割れ部分にパテを埋め込む等の下地処理を施した後、剥離紙を剥がして接着剤を露出させ、壁紙片を接着剤により施工対象物の表面に接着することにより、熟練を要することなく壁紙を張ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−260651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の壁紙は、全体がシート状であって、姿勢が安定しないために施工時の取り扱いが難しいという問題があった。
【0007】
すなわち、施工に際し、例えば、剥離紙をはがして接着剤を露出させると、シート状で姿勢が安定しないために、型崩れしてある部分と他の部分の接着剤が不要にくっついてしまって、剥がせなくなったり、剥がせたとしても皺になったりするおそれがある。
【0008】
また、接着時に皺ができないようにしたり、空気が入らないようにしたり、細心の注意を払って施工しなければならない。さらに、同じくシート状であるために、接着後に施工対象物の表面が壁紙を通して現れてしまうため、接着前に、下地処理を入念に行う必要があるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、基材を板状とすることで、施工時の取り扱いが容易で、未熟練者でも簡単に施工することができ、しかも、施工対象物の表面(下地)の形状が現れないために入念な下地処理が不要である化粧板、及びこれを使用した化粧方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、施工対象物の表面を被覆する化粧板において、板状の基材と、前記基材の一方の面に塗布された第1の接着剤と、前記第1の接着剤によって前記基材の一方の面に接着されたシート状の表面化粧材と、前記基材の他方の面に塗布された第2の接着剤と、前記第2の接着剤を覆う剥離可能な離型材と、を備え、前記基材は、前記第1の接着剤を介して前記一方の面に接着された前記表面化粧材の姿勢を保持するとともに、カッターで容易に切断可能であり、前記離型材を剥がして前記第2の接着剤により前記施工対象物の表面に接着される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る化粧板において、前記基材が中密度繊維板である、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る化粧板において、前記中密度繊維板は、厚さが0.5mm以上2mm以下である、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧板において、前記表面化粧材が木材をシート状にスライスしたものである、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧板において、前記第2の接着剤がトルエンを含まない接着剤である、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、板状の基材と、前記基材の一方の面に第1の接着剤によって接着されたシート状の表面化粧材と、前記基材の他方の面に塗布された第2の接着剤を覆う剥離可能な離型材とを備え、前記基材が前記表面化粧材の姿勢を保持する化粧板を使用した、施工対象物の表面化粧方法において、前記化粧板をカッターで所定の形状に切断する切断工程と、切断後の前記化粧板の前記離型材を剥がして前記第2の接着剤を露出させる剥離工程と、前記第2の接着剤により前記基材を前記施工対象物に接着して前記施工対象物を前記表面化粧材で覆う接着工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る施工対象物の表面化粧方法において、前記基材が、0.5mm以上2mm以下の中密度繊維板である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、基材が板状で、かつカッターで容易に切断可能であるので、施工対象物に合わせて、簡単に所定の形状に切りだすことができ、また、表面化粧材の姿勢を保持することができるので、取り扱いが簡単である。さらに、基材は、板状であるため、施工対象物の表面に接着した際に、シート状である場合と異なり、施工対象物の表面の形状が表れにくい。このため、施工対象物の表面の下地処理を入念に行う必要がない。
【0018】
請求項2の発明によれば、基材が中密度繊維板であるので、例えば、カッターで容易に切断することができ、しかも、木目や板の縦横が指定される場合と異なり、切断時の方向性がないので、任意の方向に同じように切断することができ、所定の形状に正確に切り出すことができる。また、基材が中密度繊維板であるため、例えば、2枚隣接させて接着させた際に、相互の端縁が適度に圧縮されて、境界が目立たなくなる。また、中密度繊維板は、厚さについて高い精度を確保できるので、この点によっても、境界が目立たなくなる。
【0019】
請求項3の発明によれば、中密度繊維板の厚さを、0.5mm以上2mm以下とすることにより、表面化粧材の姿勢を確実に確保することができるとともに、カッターによる切断が容易となる。
【0020】
請求項4の発明によれば、表面化粧材が木材をシート状にスライスしたものであるので、外見は、無垢の木材に見せることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、第2の接着剤がトルエンを含まない接着剤であるので、トルエンを含む接着剤と比較して、環境に対する影響を低減することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、化粧板をカッターによって簡単に所定の形状に切りだすことができ、また、板状の基材により表面化粧材の姿勢を保持することができ、さらに、離型材を剥がすことで、表面化粧材を基材とともに、施工対象物の表面に容易に接着することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、中密度繊維板の厚さを、0.5mm以上2mm以下とすることにより、表面化粧材の姿勢を確実に確保することができるとともに、カッターによる切断が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】化粧板10の一部破断斜視図である。
【図2】(A)は化粧板10の正面図(表面側から見たい図)であり、(B)は化粧板10の側面図(厚さが現れる方向から見た図)であり、(C)は(B)中のP部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同一又は類似の構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0026】
図1,図2を参照して本発明を適用した実施形態1に係る化粧板10について説明する。ここで、図1は、化粧板10の一部破断斜視図である。また、図2(A)は化粧板10の正面図(表面側から見たい図)であり、図2(B)は化粧板10の側面図(厚さが現れる方向から見た図)であり、(C)は(B)中のP部分の拡大図である。
【0027】
これらの図に示すように、化粧板10は、基材1と、第1の接着剤2と、表面化粧材3と、第2の接着剤4と、離型材5と、を備えて構成されており、これらが層状に積層されている。
【0028】
基材1は、薄板状の部材である。基材1は、その表面側(一方の面)に第1の接着剤2を介して接着された表面化粧材3の姿勢を保持することができれば、任意の材質、任意の厚さのものを使用することができるが、重量的には軽い方が好ましいので、薄くかつ十分な強度を有するものが好ましい。このような観点から、基材1としては、中密度繊維板を好適に使用することができる。中密度繊維板は、木材粉を固めたものであり、カッター等の切断具で簡単に切断することができ、かつ無垢の板や、一般的な合板とは異なり、繊維の方向性がないため、例えば、未熟練者であっても高い精度で切断することが可能である。中密度繊維板としては、表面化粧板3の形状を確実に保持することができ、かつ、十分な強度を有することを条件に、できるだけ薄い方が好ましい。基材1としての中密度繊維板は、具体的には、厚さT1が、0.5以上2mm以下であることが好ましく、さらには、0.7mm以上1.5mm以下がさらに好ましい。このような厚さに設定することで、重量を軽減することができ、かつ、表面化粧板3の姿勢を有効に保持することができ、さらに、カッターによる切断が容易となる。基材1としては、例えば、長さHが2400mm、幅Wが300mmに設定することができる。
【0029】
第1の接着剤2は、基材1の表面(一方の面)に表面化粧板3を接着するためのものであり、一般的な接着剤、例えば、エマルジョン系接着剤を使用することができる。
【0030】
表面化粧材3としては、任意のシート状部材を使用することができる。例えば、オレフィンシート、鏡面シート、ビニールクロス、突板、ミラーシート等を使用することができる。表面化粧板3は、その裏面側に、上述の第1の接着材2により、基材1が接着されることにより、その姿勢を保持することが可能となる。表面化粧材3の厚さT3は、例えば、0.15mm程度である。
【0031】
第2の接着剤4は、基材1の裏面(他方の面)に塗布されている。第2の接着剤4は、基材1を、内壁、ドア、家具等の施工対象物の表面に接着するためのものであり、例えば、トルエンを含有しない、アクリル系接着剤を好適に使用することができる。
【0032】
離型材5は、化粧板10の施工に際して、剥離され、これにより、上述の第2の接着剤4を露出させる。離型材5としては、通常は剥離しにくく、かつ、使用者の積極的な剥離動作によっては比較的容易に剥離されるものが好ましく、一般的な、剥離紙を使用することができる。離型材5の厚さT5は、例えば、0.05mmである。
【0033】
ここで、化粧板10の全体の厚さTは、第1の接着剤2及び第2の接着剤4の厚さを考慮に入れない場合には、基材1の厚さTに応じて、0.7〜2.2mmとなる。なお、上述のように、基材1の長さHを2400mm、幅Wを300mmに設定した場合には、化粧板10全体の重量、強度等を考慮して、全体の厚さTが、1.0〜1.2mm程度となるのが好ましい。
【0034】
上述構成の化粧板10は、以下のようにして使用される。すなわち、切断工程、剥離工程、接着工程によって、加工対象物の表面に接着される。
【0035】
まず、化粧板10の接着対象となる加工対象物の表面の埃やごみを払拭する。これらが付着していると、第2の接着剤4の接着力が低下するからである。ここで、従来のシート状の壁紙では、壁紙の接着後に、壁紙の表面に、加工対象物の表面の形状が現れてしまうために、接着前に、施工対象物の表面を十分に平滑に仕上げておく必要があった。これに対して、化粧板10は、板状であるため、接着後に、加工対象物の表面の形状が現れるおそれがほとんどない。このため、加工対象物の表面の平滑作業は、入念に行う必要がなく、その分、作業効率が向上する。
【0036】
切断工程:例えば、化粧板10を、カッターを使用して、図2(A)に示す切断線K1,K2,K3等で切断して所定の形状に切り出す。なお、カッターとしては、文具として一般に市販されているカッターで十分である。
【0037】
剥離工程:切断後の化粧板10の離型材5を剥がして第2の接着剤4を露出させる。
【0038】
接着工程:第2の接着剤4により基材1を施工対象物に接着して施工対象物を表面化粧材3で覆う。
【0039】
以上で、施工を終了する。
【0040】
以上説明した化粧板10によれば、
(1)基材1が板状で、かつカッターで容易に切断可能であるので、施工対象物に合わせて、簡単に所定の形状に切りだすことができ、また、表面化粧材3の姿勢を保持することができるので、取り扱いが簡単である。さらに、基材1は、板状であるため、施工対象物の表面に接着した際に、シート状である場合と異なり、施工対象物の表面の形状が現れにくい。このため、施工対象物の表面の下地処理を入念に行う必要がない。
【0041】
(2)基材1が中密度繊維板である場合には、例えば、カッターで容易に切断することができ、しかも、木目や板の縦横が指定される場合と異なり、切断時の方向性がないので、任意の方向に同じように切断することができ、所定の形状に正確に切り出すことができる。また、基材1が中密度繊維板であれば、例えば、2枚隣接させて接着させた際に、相互の端縁が適度に圧縮されて、境界が目立たなくなる。また、中密度繊維板は、表面研磨により、厚さについて高い精度を確保できるので、この点によっても、境界が目立たなくなる。
【0042】
(3)中密度繊維板の厚さを、0.5mm以上2mm以下とすることにより、表面化粧材の姿勢を確実に確保することができるとともに、カッターによる切断が容易となる。
【0043】
(4)表面化粧材3が木材をシート状にスライスしたものであるので、外見は、無垢の木材に見せて、高級感を出すことができる。
【0044】
(5)第2の接着剤がトルエンを含まない接着剤であるので、トルエンを含む接着剤と比較して、環境に対する影響を低減することができる。
【0045】
(6)化粧板3をカッターによって簡単に所定の形状に切りだすことができ、また、板状の基材1により表面化粧材の姿勢を保持することができ、さらに、離型材5を剥がすことで、表面化粧材3を基材1とともに、施工対象物の表面に容易に接着することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基材
2 第1の接着剤
3 表面化粧材
4 第2の接着剤
5 離型材
10 化粧板
H 化粧板の長さ
K1,K2,K3 カッターによる切断線
T 化粧板(全体)の厚さ
T1 基材の厚さ
T3 表面化粧板の厚さ
T5 離型材の厚さ
W 化粧板の幅



【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象物の表面を被覆する化粧板において、
板状の基材と、
前記基材の一方の面に塗布された第1の接着剤と、
前記第1の接着剤によって前記基材の一方の面に接着されたシート状の表面化粧材と、
前記基材の他方の面に塗布された第2の接着剤と、
前記第2の接着剤を覆う剥離可能な離型材と、を備え、
前記基材は、前記第1の接着剤を介して前記一方の面に接着された前記表面化粧材の姿勢を保持するとともに、カッターで容易に切断可能であり、前記離型材を剥がして前記第2の接着剤により前記施工対象物の表面に接着される、
ことを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記基材が中密度繊維板である、
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記中密度繊維板は、厚さが0.5mm以上2mm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の化粧板。
【請求項4】
前記表面化粧材が木材をシート状にスライスしたものである、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項5】
前記第2の接着剤がトルエンを含まない接着剤である、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧板。
【請求項6】
板状の基材と、前記基材の一方の面に第1の接着剤によって接着されたシート状の表面化粧材と、前記基材の他方の面に塗布された第2の接着剤を覆う剥離可能な離型材とを備え、前記基材が前記表面化粧材の姿勢を保持する化粧板を使用した、施工対象物の表面化粧方法において、
前記化粧板をカッターで所定の形状に切断する切断工程と、
切断後の前記化粧板の前記離型材を剥がして前記第2の接着剤を露出させる剥離工程と、
前記第2の接着剤により前記基材を前記施工対象物に接着して前記施工対象物を前記表面化粧材で覆う接着工程と、を有する、
ことを特徴とする施工対象物の表面化粧方法。
【請求項7】
前記基材が、0.5mm以上2mm以下の中密度繊維板である、
ことを特徴とする請求項6に記載の施工対象物の表面化粧方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−22741(P2013−22741A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156370(P2011−156370)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(509350583)株式会社New Act (2)
【Fターム(参考)】