説明

化粧板及び化粧板の製造方法

【課題】高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつ化粧板を提供する。
【解決手段】基材の一方の面に、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層を順に有し、該表面保護層が、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする化粧板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつ化粧板、ならびに、前記性状を有する化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、代表的な化粧板として、ポリエステル化粧板、ジアリルフタレート(DAP)化粧板及びメラミン樹脂化粧板が広く用いられている。これらの化粧板は、一般に絵柄層を有する、又は単色に着色されたチタン紙などの強化紙に、それぞれポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂及びメラミン樹脂を含浸させ、基材、例えば木材、MDF(中比重ボード)、パーチクルボード、木質合板、窯業系ボードなどに載置し、含浸によって被覆された樹脂の上にプレス用鏡面版を当て、全体をプレス装置内に入れて加熱型締めし、樹脂を硬化させることによって製造されている。
【0003】
しかしながら、これらのポリエステル化粧板、ジアリルフタレート化粧板及びメラミン樹脂化粧板の製造においては、(1)その製造過程で、それぞれスチレンモノマー、ジアリルフタレートモノマー及びホルムアルデヒドなどの有害物質が発生するという、環境衛生面での問題、さらには(2)その製造過程において、プレス装置を使用し、加熱圧締め、養生などにより樹脂の硬化を行うため、連続的な作業を行うことができず、非能率的であると共に、場所、人手、時間を要するといった問題がある。
【0004】
前記(1)の問題に対処するために、例えば電子線硬化型化粧板の製造方法として、基材の一方の面に基材の膨張を抑制する膨張抑制層を形成し、前記基材の他方の面に強化紙を貼付した後、この強化紙表面にシーラーによるシーラー処理および目止め塗料による目止め処理を施して目止め層を形成し、塗装原板を得る原板製造工程と、この原板製造工程で得られた前記塗装原板の目止め層表面を研磨し、この目止め層上に電子線硬化型クリヤーを塗布した後、不活性ガス雰囲気下で電子線照射を行い、前記電子線硬化型クリヤーを硬化させて塗膜層を形成する塗膜層形成工程とを有する化粧板の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前記(2)の問題に対処するために、例えば化粧板の含浸樹脂の硬化に際して、プレス装置による加熱圧締め、養生などを必要とせず、連続作業により短時間で硬化でき、かつ性能にも優れ、生産性の向上と同時に省力化及び省スペース化を実現し得る化粧板の製造方法として、紙の表面に印刷または着色を施し、その裏面に接着剤を用いて基材を貼り合わせた後、該紙の印刷または着色面上の全面に電子線硬化型樹脂を塗布し、該樹脂を硬化させる前に、更にその上に剥離可能なフィルムを積層し、フィルムの上から電子線を照射して電子線硬化型樹脂を硬化させ、しかる後、フィルムを剥離する化粧板の製造方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−154191号公報
【特許文献2】特開平8−192504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、塗装原板の目止め層上に、電子線硬化型樹脂を直接塗工するため、塗工量が多くなると共に、塗工量のばらつきが大きくなるのを免れないという問題が生じる。したがって、この技術を合板やMDFなどの薄膜基材を用いた薄膜化粧板の製造に適用した場合、電子線硬化型樹脂の硬化収縮による基材の反りや割れが発生しやすく、かつ意匠のコントロールが難しいなどの問題が発生する。さらに、電離放射線の照射により、強化紙が黄変するなどの問題も生じる。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法で化粧板を作製する場合、チタン紙を使用すると染み込みが良過ぎるため、耐汚染性や意匠性が悪化する。また、印刷を施した薄紙を使用すると、電子線硬化型樹脂の浸透が場所によって異なるため、浸透ムラが生じるなどの問題が発生する。
さらに、前記の特許文献1に記載の技術においては、電子線硬化型クリヤーには隠蔽製顔料は含まれておらず、また、特許文献2に記載の技術においても、電子線硬化型樹脂には隠蔽製顔料は含まれていない。
本発明は、このような状況下になされたもので、高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつ化粧板、ならびに、前記性状を有する化粧板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の構成を有する化粧板が、その目的に適合し得ること、そして前記性状を有する化粧板は、特定の工程を施すことにより、効率よく製造し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]基材の一方の面に、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層を順に有し、該表面保護層が、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする化粧板、
[2](a)工程:基材の一方の面に、接着剤層を介して、隠蔽インキ層を設けた原紙を、基材と原紙の隠蔽インキ層を設けない側とを対面させて貼付する工程、(b)工程:賦型シートの剥離層上に、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の層を設け、電離放射線硬化型シートを形成する工程、及び(c)工程:(a)工程で得られた基材上の原紙と、(b)工程で得られた電離放射線硬化型シートとを、その電離放射線硬化型樹脂組成物の層と原紙とを対面させてラミネートしたのち、電離放射線を照射して、該電離放射線硬化型樹脂組成物の層を硬化させて原紙上に表面保護層を形成させる工程を順に有する、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、表面保護層及び賦型シートを順に積層してなる化粧板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつ化粧板、並びに、前記性状を有する化粧板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の化粧板の層構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の化粧板の層構成の別の例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の化粧板の製造方法における一例の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の化粧板について説明する。
[化粧板]
本発明の化粧板は、基材の一方の面に、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層を順に有し、該表面保護層が、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とするものである。
【0014】
≪基材≫
本発明の化粧板における基材としては、特に制限はなく、従来各種の化粧板に基材として慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば木材、MDF(中比重ボード)、パーチクルボード、木質合板、窯業系ボードなどを挙げることができる。
これらの基材の厚さは、通常2〜50mm程度であるが、当該化粧板では、厚さが好ましくは2〜30mm、より好ましくは2〜5mmの木質合板やMDFなどの薄厚基材を用いた薄厚化粧板が特に有利である。このような薄厚の化粧板でも、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化収縮による基材の反りや割れなどを防止し得るからである。
【0015】
≪原紙≫
本発明の化粧板において、前記基材の一方の面に接着剤層を介して貼付する原紙としては、隠蔽性を有するとともに、基材の色による化粧板の色ムラを防ぐためのものであれば特に限定はなく、例えば、チタン紙、含浸紙、中性紙等を採用することができる。なお、これらの原紙は着色されていてもよく、また予め印刷絵柄層を設けておくことで、化粧板に意匠性を付与することもできる。この原紙は、平滑処理を施すことが好ましいが、上記印刷絵柄層を設けることにより、該平滑処理と同様な効果が得られる。
ここで、平滑処理としては、例えば原紙の表面を、弾性ロールと金属ロールとからなる組み合わせを少なくとも1つ含む平坦化処理手段によって行うことができる。弾性ロールと金属ロールとからなる平坦化処理手段としては、熱ソフトカレンダーなどが挙げられる。熱ソフトカレンダーは、通常金属ロールを100℃以上に加温して、原紙表面を加圧し、該原紙の表面を平滑にする手法であり、これにより高い表面平滑性や印刷光沢を得ることができる。また、平滑処理後の平滑度は、JIS P8119に規定される「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定され、本発明においては平滑度が100秒以上であることが好ましい。
また、原紙の坪量は、通常23〜200g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2である。
【0016】
≪接着剤層≫
本発明の化粧板において、原紙を基材に貼付するための接着剤層としては、感熱接着剤や加圧接着剤などで構成されるものが挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂が使用される。該接着剤層は、選択した1種又は2種以上の樹脂を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、フローコーター法、ロールコーター法などの手段により塗布、乾燥して形成することができる。
この接着剤層の厚さは、通常1〜200μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは30〜80μmである。
【0017】
≪隠蔽インキ層≫
本発明の化粧板は、色調を安定させて、かつ原紙あるいは基材の隠蔽性を向上させる目的で、原紙上に隠蔽インキ層を有する。隠蔽インキ層は、隠蔽性を発現する層であれば特に制限はないが、好ましくは隠蔽性顔料を含む層である。
隠蔽性顔料としては、例えば酸化チタン、(TiO2:チタニウムホワイト)、亜鉛華(ジンクホワイト)、鉛白(主成分:塩基性炭酸鉛)、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物)、バライト(主成分:硫酸バリウム)、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ(ホワイトカーボン)、アルミペーストなどの無機顔料が挙げられるが、これらの中で隠蔽性、耐光性などの観点から、酸化チタンやアルミペーストが好ましい。この酸化チタンには、ルチル形とアナターゼ形があるが、前者の方が、着色力、隠蔽力が大きく、隠蔽性顔料の中で最も好ましい。該酸化チタンの平均粒径は、通常0.3〜1.0μm程度である。本発明においては、隠蔽性顔料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
隠蔽インキ層は通常上記の隠蔽性顔料、及びバインダー樹脂を含む隠蔽インキ層用インキ組成物により形成される。
バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いられる。
隠蔽インキ層用インキ組成物中の隠蔽性顔料の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、通常10〜80質量部程度、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部である。
【0019】
<透気度>
本発明において、隠蔽インキ層を設けた原紙の透気度が、30〜1600(μm/Pa・s)であることが好ましく、より好ましくは30〜1000(μm/Pa・s)であり、さらに好ましくは35〜600(μm/Pa・s)である。ここで、透気度は、JIS P8117:2009に規定されるガーレー法により測定された値である。隠蔽インキ層を設けた原紙の透気度が上記範囲内であると、染み込みムラを防止することができる。
【0020】
≪シーラー層≫
本発明の化粧板は、染み込みムラの抑制や、鉛筆硬度の向上のため、シーラー層を設けることができる
シーラー層は、後述する電離放射線硬化型樹脂組成物の原紙あるいは基材への染み込みを抑制する、すなわち目止め効果に有効なものであれば、有機シーラー、無機シーラー及びそれらの混合物のいずれにより形成してもよい。
有機シーラーとしては、ポリエステルポリオール樹脂、アクリルポリオールとイソシアネートとによるアクリルウレタン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリル樹脂、2液硬化型アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、アミノアルキド樹脂などの樹脂が好ましく挙げられ、これらを一種単独で、又はこれらから選ばれる複数種を用いることができる。
また、無機シーラーとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、カオリナイト及び二酸化チタンなどが好ましく挙げられ、これらを一種単独で、又はこれらから選ばれる複数種を用いることができる。無機シーラーを用いる場合は、バインダー樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール、アクリルウレタン樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂などを用いることができる。
上記したなかでも、本発明においては、シーラー層の効果の点で2液硬化型樹脂が好ましい。
【0021】
シーラー層の厚さは、通常5〜100μm程度であり、好ましくは20〜80μmである。シーラー層の厚さが上記範囲内であれば、シーラー層としての機能が効率的に、かつ十分に得られる。
シーラー層は、原紙、隠蔽インキ層及びシーラー層の順に設けてもよいし、原紙、シーラー層、隠蔽インキ層の順に設けてもよい。シーラー層の優れた目止め効果を得る観点からは、原紙、隠蔽インキ層及びシーラー層の順に設けることが好ましい。
【0022】
≪表面保護層≫
本発明の化粧板は、耐汚染性や耐薬品性を向上させ、かつ隠蔽性、原紙の黄変防止や耐光性の向上を図る観点から、表面保護層を有する。この表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂及び隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある。)の硬化物層である。
【0023】
<電離放射線硬化型樹脂組成物>
電離放射線硬化型樹脂組成物は、電離放射線硬化型樹脂及び隠蔽性顔料を必須の成分として含む組成物であり、電離放射線を照射することにより、硬化する樹脂組成物である。ここで、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0024】
(電離放射線硬化型樹脂)
電離放射線硬化型樹脂としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを主体とし、これに本発明の目的を損なわない範囲で、硬化物性能の調整などの目的で重合性(メタ)アクリレートオリゴマーや、組成物の粘度調整などの目的で単官能性(メタ)アクリレートを適宜併用することができる。
【0025】
〈多官能性(メタ)アクリレートモノマー〉
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
〈重合性(メタ)アクリレートオリゴマー〉
重合性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、分子中に複数のラジカル重合性不飽和基を持つ多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0027】
さらに、重合性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
上述の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、成形性の観点から2官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが特に好ましい。
【0028】
〈単官能性(メタ)アクリレート〉
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
(光重合開始剤)
電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0030】
本発明においては、電離放射線硬化型樹脂として電子線硬化型樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化型樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0031】
<隠蔽性顔料>
本発明で用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物は、得られる化粧板における表面保護層の隠蔽性向上、原紙の黄変防止や耐光性の向上などを図る目的で、隠蔽性顔料を含有することを要する。
隠蔽性顔料としては、例えば酸化チタン、(TiO2:チタニウムホワイト)、亜鉛華(ジンクホワイト)、鉛白(主成分:塩基性炭酸鉛)、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物)、バライト(主成分:硫酸バリウム)、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ(ホワイトカーボン)、アルミペーストなどの無機顔料が挙げられるが、これらの中で隠蔽性、耐光性などの観点から、酸化チタンやアルミペーストが好ましい。この酸化チタンには、ルチル形とアナターゼ形があるが、前者の方が、着色力、隠蔽力が大きく、隠蔽性顔料の中で最も好ましい。該酸化チタンの平均粒径は、通常0.3〜1.0μm程度である。なお、隠蔽性顔料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
電離放射線硬化型樹脂組成物中の隠蔽性顔料の含有量は、該隠蔽性顔料として酸化チタン(TiO2:チタニウムホワイト)を用いる場合、その効果及び塗工適性のバランスの観点から、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、通常10〜80質量部程度、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部である。
また、電離放射線硬化型樹脂組成物は、前述した隠蔽性顔料と共に、必要に応じて隠蔽性のある無機系着色顔料や、カーボンブラックなどを含有することができる。
【0033】
<耐摩耗フィラー及び/又は低艶形成フィラー>
本発明で用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物は、必要に応じ耐摩耗フィラー及び/又は低艶形成フィラーを含有させることができる。
耐摩耗フィラーは、本発明の化粧板に高耐摩耗性を付与するために用いられるフィラーであって、耐摩耗性を有するフィラーであればよく、特に制限はないが、アルミナ粒子が好適である。この耐摩耗フィラーの平均粒径は、通常1〜50μm程度、好ましくは5〜30μm、また、耐摩耗フィラーの含有量は、電離放射線硬化型樹脂組成物の全固形分量に対して、通常2〜70質量%程度、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%である。
【0034】
また、低艶形成フィラーは、本発明の化粧板に低艶調(マット調)を付与するために用いられるフィラーであり、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウムなどの無機物、アクリル樹脂、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)などの有機高分子などからなる粒子が用いられる。これらのうち、取り扱いが容易で、かつ安価なシリカが好適である。
この低艶形成フィラーの平均粒径は、通常0.1〜50μm程度、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。また、低艶形成フィラーの含有量は、電離放射線硬化型樹脂組成物の全固形分量に基づき、通常2〜70質量%程度、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%である。
【0035】
さらに、本発明で用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物には、得られる化粧板の耐擦傷性を向上させるため、必要に応じ耐傷フィラーを含有させることができる。耐傷フィラーとしては、上記効果を奏するものであれば特に制限はないが、本発明では、カオリナイトなどが好適に用いられる。
また、電離放射線硬化型樹脂組成物には、後述の賦型シートとの離型性を向上させるために、シリコーンを含有させることもできる。
さらには、得られる化粧板に耐候性を付与するため、必要に応じて、紫外線吸収剤(UVA)及び/又はヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)を含有させることもできる。
【0036】
<表面保護層の形成>
本発明の化粧板における表面保護層は、前述した電離放射線硬化型樹脂組成物層に、電離放射線、好ましくは電子線を照射して、該樹脂組成物層を硬化することにより、形成することができる。
この表面保護層の形成については、後述する化粧板の製造方法において詳述する。
【0037】
≪賦型シート≫
本発明の化粧板は、表面保護層上に、該保護層表面に所定形状の賦型を施すために用いられる賦型シートを有していてもよい。
この賦型シートとしては、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルシート、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンシートなどのプラスチックシートに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この賦型シートの厚さについては特に制限はないが、通常12〜200μm程度である。
この賦型シートは、剥離層面が所望により、鏡面仕様であってもよいし、マット仕様やエンボスタイプ(木目、抽象柄などの意匠)などの所定の凹凸を形成してなるものであってもよい。
【0038】
≪反り防止機能層≫
本発明の化粧板においては、基材の表面保護層とは反対面に、反り防止機能層を設けることができる。
反り防止機能層としては、化粧板において、基材の表裏面における温度、湿度などの外部環境条件の違いにより反りを生じるおそれがある基材の場合には、例えば防湿紙を設けることができる。防湿紙としては、例えば合成ゴム系ラテックスとワックス系エマルジョンとを混合した塗工液を塗工した紙、あるいは紙/ポリエチレン樹脂フィルム/紙などの構成を有するポリサンド紙などが好ましく挙げられる。また、ポリオレフィンやポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などの非ハロゲン系熱可塑性樹脂などで構成される防湿樹脂シートも採用しうる。
また、温度などの環境条件の変化により反りが生ずるおそれはないが、水滴の付着による吸水で反りが生ずるおそれがある基材の場合には、防水塗料を用いて形成された塗工層であることが好ましい。ここで、防水塗料としては、例えば、アクリル樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料などを採用することができる。
【0039】
図1は、本発明の化粧板の層構成の一例を示す断面模式図であり、図2は、本発明の化粧板の層構成の別の例を示す断面模式図である。
図1における化粧板10は、基材1上に、接着剤層2、原紙3、隠蔽インキ層4、及び隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層(表面保護層)6を順に有する構成である。
また、図2における化粧板15は、基材1上に、接着剤層2、原紙3、隠蔽インキ層4、シーラー層5、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層(表面保護層)6、及び賦型シート7を有する構成である。
【0040】
このような構成の本発明の化粧板は、高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつなどの好ましい性状を有しており、特に垂直面や水平面使用の建築材用化粧板として好適である。
【0041】
[化粧板の製造方法]
次に、化粧板の製造方法について説明する。
本発明の化粧板の製造方法は、下記の(a)工程、(b)工程及び(c)工程を含み、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、表面保護層及び賦型シートを順に積層してなることを特徴とする化粧板の製造方法である。
【0042】
≪(a)工程≫
本発明の製造方法における(a)工程は、基材の一方の面に、接着剤層を介して、隠蔽インキ層、及び必要に応じてシーラー層を設けた原紙を、基材と原紙の隠蔽インキ層を設けない側とを対面させて貼付する工程である。本(a)工程における基材、原紙、及び接着剤層は、前述した本発明の化粧板の説明において示したとおりである。
【0043】
シーラー層を設ける場合は、例えば隠蔽インキ層用インキ組成物、及びシーラーを塗布した原紙を、通常80〜120℃、0.3〜1MPaの荷重下で熱プレス処理などを行うことにより、基材、接着剤層、原紙A、隠蔽インキ層及びシーラー層を積層することができる。
【0044】
≪(b)工程≫
本発明の製造方法における(b)工程は、賦型シートの剥離層上に、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の層を設け、電離放射線硬化型シートを形成する工程である。当該(b)工程における賦型シート、隠蔽性顔料、及び電離放射線硬化型樹脂組成物は、前述した本発明の化粧板の説明において示したとおりである。
【0045】
(b)工程においては、賦型シートの剥離層面に、前述した電離放射線硬化型樹脂組成物を、グラビア印刷やロールコートなどの公知の塗工手段により塗工し、硬化後の表面保護層の厚さが、通常1〜200μm程度、好ましくは1〜100μm程度、さらに好ましくは10〜80μm程度の電離放射線硬化型樹脂組成物の層を設けることにより、電離放射線硬化型シートを形成する。
【0046】
≪(c)工程≫
本発明の製造方法における(c)工程は、(a)工程で得られた基材上の原紙と、(b)工程で得られた電離放射線硬化型シートとを、その電離放射線硬化型樹脂組成物の層と原紙とを対面させてラミネートしたのち、電離放射線を照射して、該電離放射線硬化型樹脂組成物の層を硬化させて原紙上に表面保護層を形成させる工程である。
【0047】
(電離放射線の照射)
電離放射線としては、通常電子線や紫外線などが用いられるが、本発明においては、電子線を用いることが好ましい。電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚さに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で電離放射線硬化型樹脂組成物の層を硬化させることが好ましい。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜200kGy(1〜20Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0048】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0049】
このようにして、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層を順に有する化粧板が得られる。
【0050】
≪(d)工程≫
本発明の製造方法は、さらに賦型シートを剥離する(d)工程を有することができる。これにより、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、表面保護層、及び賦型シートを順に有する化粧板が得られる。
【0051】
≪(e)工程≫
本発明の製造方法は、さらに基材の他方の面に、反り防止機能層を設ける(e)工程を有することができる。該反り防止機能層については、前述した本発明の化粧板の説明において示したとおりである。
【0052】
次に、化粧板の具体的な本発明の製造方法について、添付図面に従って説明する。
図3は、化粧板の本発明の製造方法における一例の製造工程図であり、工程1、工程2及び工程3から構成されている。
工程1は、基材1の一方の面に、接着剤層2を介して、隠蔽インキ層4及び必要に応じてシーラー層5を設けた原紙3を、基材1と原紙3の隠蔽インキ層4を設けない側とを対面させて貼付して化粧板用原板(A)を形成する工程である。なお、化粧板用原板(A)における基材1の他方の面には、必要に応じて反り防止機能層を設けることができる。
【0053】
工程2は、賦型シート7の剥離層上に電離放射線硬化型、好ましくは電子線硬化型樹脂組成物の層を設け、電離放射線硬化型シート(B)を形成する工程である。
【0054】
工程3は、工程1で得られた化粧板用原板(A)と、工程2で得られた電離放射線硬化型シート(B)とを、それぞれ隠蔽インキ層4と、電離放射線硬化型樹脂組成物の層とを対面させてラミネートしたのち、電離放射線、好ましくは電子線を照射して、該電離放射線硬化型樹脂組成物の層を硬化させることで表面保護層6を形成させて、基材1上に、接着剤層2、原紙3、隠蔽インキ層4、表面保護層6及び賦型シート7が順に積層された構成からなる化粧板(C)を形成させ、さらに必要に応じて、該化粧板(C)における賦型シート7を剥離して、基材1上に、接着剤層2、原紙3、隠蔽インキ層、及び表面保護層6が順に積層された構成からなる化粧板(D)を形成する工程である。なお、図3は、電離放射線として電子線を用いた場合を示し、電子線をEBと略記する。
【0055】
このようにして、本発明の方法で形成された化粧板(C)及び(D)は、従来行われている、化粧板用原板の原紙上に、直接電離放射線硬化型樹脂組成物層を設け、電離放射線を照射して、該樹脂組成物層を硬化させて表面保護層を形成させるのではなく、賦型シート上に前記樹脂組成物層を設けたものを化粧板用原板の原紙上にラミネートし、これに電離放射線を照射して、該樹脂組成物層を硬化させて、化粧板用原板の原紙上に保護層を形成させる転写法を採用しているため、該樹脂組成物の塗工量が少なくてすみ、かつ塗工量のばらつきが小さく、しかも該樹脂組成物層の硬化収縮による反りや割れなどを防止し得るので、本発明の製造方法は、特に上記硬化収縮による反りや割れが生じやすい薄厚化粧板の作製に、好適に適用することができる。
また、賦型シートの剥離層面の状態をコントロールすることにより、保護層の表面状態(例えば、鏡面仕様、マット仕様、木目、抽象柄など)を自由に制御することが可能である。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この実施例により、なんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた化粧板の意匠性及び物性は、下記のようにして評価した。
【0057】
<意匠性>
(1)隠蔽性
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、下地の木質基材が隠れるかを目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎;基材が完全に隠れる
○+;基材が若干透けて見えるが、ほとんど目立たない程度である。
○;基材がやや透けて見えるが、目立たない程度である。
○−;基材が透けて見えるのが、わずかに認識出来る。
△−○;基材が透けて見えるが、やや認識出来る。
△;基材が透けて見えるのが、認識出来る。
×−△;基材が透けて見えるのが、はっきりと認識出来る。
×;基材がほぼ完全に透けて見える。
(2)色調安定性
各実施例及び比較例で得られた化粧材について、色調安定性を以下の基準で評価した。
◎;色調のばらつきが全くない。
○;色調に一部ばらつきがあるものの、目立たない程度である。
×−△;場所によっては明らかに色調が異なっていた。
×;色調のばらつきが顕著であった。
(3)染み込みムラ
樹脂の基材への染み込みムラを目視で評価した。
◎;染み込みムラがなく、表面が平滑であった。
○;染み込みムラ起因の凹凸が微かに見えた
○−;染み込みムラ起因の凹凸がやや認識された。
△;染み込みムラ起因の凹凸が認識された。
×;著しい染み込みムラ起因の凹凸が認識された。
【0058】
<物性>
(4)耐傷付き性
スチールウール(ボンスター#0000)を用いて、サンプル表層に300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○;外観にほとんど変化がなかった。
×;外観に傷つきがあり、艶変化があった。
(5)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準拠した「引っかき硬度(鉛筆法)試験」を500g荷重で行い、試験後の外観を下記の基準で評価した。
○+;2Hの硬度で試験を行い、外観変化がほとんどなかった。
○;Hの硬度で試験を行い、外観変化がほとんどなかった。
○−;Hの硬度で試験を行い、塗膜傷もしくは凹みが微かに発生した
△−○;Hの硬度で試験を行い、塗膜傷もしくは凹みが発生したが、目立たない程度である
△;Fの硬度で試験を行い、塗膜傷もしくは凹みが発生した。
(6)耐薬品性
化粧板表面に1%水酸化ナトリウム、1%塩酸水溶液、10%アンモニア水をそれぞれ滴下後、時計皿で覆った。24時間経過後に薬品を水で拭き取り、さらに24時間放置した。放置後の化粧板表面の膨れ、艶変化等の外観を下記の基準で評価した。
○+;外観変化はなかった。
○;外観変化はほとんどなかった。
○−;膨れもしくは艶変化等の外観変化がわずかに生じた。
△−○;膨れもしくは艶変化等の外観変化が生じた。
△;著しい膨れもしくは艶変化等の外観変化が生じた。
(7)耐汚染性
化粧板表面を赤クレヨン、靴墨、染料、2%マーキュロクロムにてそれぞれ汚染した後、時計皿で覆った。24時間経過後に汚染物を水、中性洗剤、エタノールでそれぞれ拭き取り、さらに24時間放置した。放置後の化粧板表面の汚染残り、膨れ、艶変化等の外観を下記の基準で評価した。
○+;外観変化はなかった。
○;外観変化はほとんどなかった。
○−;汚染残り、膨れ、もしくは艶変化等の外観変化がわずかに生じた。
△−○;汚染残り、膨れ、もしくは艶変化等の外観変化が生じた。
△;著しい汚染残り、膨れ、もしくは艶変化等の外観変化が生じた。
(8)耐光性
実施例及び比較例で得られたサンプルを、岩崎電気(株)製「アイス−パーUVテスタ−」にセットし、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で48時間試験後、25℃、50%RHの条件下で2日間保持してから、化粧板表面の変色やクラックなどの外観を下記の基準で評価した。
◎;外観変化は全くなかった。
○;外観変化はほとんどなかった。
○−;外観変化は若干あるが、実用上問題なかった。
△;認識できる外観変化が生じた。
×;外観変化が著しかった。
【0059】
各例における材料として、下記に示すものを用いた。
・基材:厚さ3mmの木質合板
・接着剤:酢酸ビニル系接着剤[アイカ工業(株)製、商品名「アイカエコエコボンド」]
・原紙:
厚さ30g/m2の平滑処理白薄紙(原紙A)
厚さ50g/m2の平滑処理白薄紙(原紙B)
厚さ80g/m2の白チタン紙(原紙C)
・隠蔽インキ層用インキ組成物1:水系アクリル樹脂インキ(酸化チタン:樹脂100質量部に対して300質量部)
隠蔽インキ層用インキ組成物2:2液硬化型アクリルポリオール樹脂インキ(酸化チタン:樹脂100質量部に対して300質量部)
隠蔽インキ層用インキ組成物3:2液硬化型アクリルポリオール/ポリエステル系ウレタン樹脂インキ(アルミペースト:樹脂100質量部に対して20質量部)
・シーラー:2液硬化型アクリル系樹脂塗料[(株)昭和インク工業所製、商品名「FW(NT)」]
・EB樹脂:4官能モノマーと、2官能モノマーの混合樹脂[大日精化工業(株)製、商品名「REB−M700」]
・熱硬化性樹脂:ポリエステル系熱硬化性樹脂[日本合成化学(株)社製、商品名「ニチゴーポリエスター」]
・賦型シート:厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[三菱樹脂(株)製、商品名「E−130]
【0060】
実施例1
(1)化粧板用原板の作製
厚さ2.5mmの木質合板の一方の面に、酢酸ビニル系接着剤を用いて厚さ60μmの接着剤層を形成し、その上に、隠蔽インキ層を設けた平滑処理白薄紙(原紙A:坪量30g/m2)を貼付し、化粧板用原板を作製した。ここで、隠蔽インキ層は、原紙A上に隠蔽インキ層用インキ組成物を厚さが10μmとなるように塗布して設けたものであり、隠蔽インキ層を設けた原紙Aの透気度は500(μm/Pa・s)であった。
(2)電子線硬化型シートの作製
EB樹脂100質量部に、隠蔽性顔料の酸化チタン35質量部を加え、酸化チタン含有EB樹脂を調製した。
厚さ25μmの賦型シート上に、硬化厚さが60μmになるように、上記酸化チタン含有EB樹脂をロールコート法にて塗工し、電子線硬化型シートを作製した。
(3)化粧板の作製
前記(1)で得た化粧板用原板と、前記(2)で得た電子線硬化型シートとを、それぞれ原紙Aと、酸化チタン含有EB樹脂層とを対面させてラミネートしたのち、加速電圧200kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、EB樹脂層を硬化させて、表面保護層を形成した。次いで、賦型シートを剥離することにより、図1で示される構成である、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層の構成からなる化粧板を得た。
この化粧板の意匠性及び物性の評価結果を第1表に示す。
【0061】
実施例2〜5及び7
実施例1において、原紙、隠蔽インキ層用インキ組成物、及びEB樹脂組成物を第1表に示されるものにかえた以外は、実施例1と同様な操作を行い、各々実施例2〜5及び7の化粧板を作製した。
これらの化粧板の意匠性及び物性評価結果を第1表に示す。
【0062】
実施例6
実施例1において、原紙A上に隠蔽インキ層を設けた後、シーラーを、硬化時の塗布量が60〜80g/m2になるようにロールコート法で塗布し、次いで100℃、0.5MPaの荷重下で1分間熱プレス処理して、基材、接着剤層、原紙A、及びシーラー層の構成からなる化粧板用原板を作製した以外は、実施例1と同様な操作を行い、化粧板を作製した。
得られた化粧板の意匠性及び物性評価結果を第1表に示す。
【0063】
比較例1
実施例1において、酸化チタンをEB樹脂に加えず、隠蔽インキ層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化粧板を作製した。
この化粧板の意匠性及び物性の評価結果を第1表に示す。
【0064】
比較例2
実施例1において、酸化チタンをEB樹脂に加えなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化粧板を作製した。
この化粧板の意匠性及び物性の評価結果を第1表に示す。
【0065】
比較例3
実施例2において、酸化チタンをEB樹脂に加えず、隠蔽インキ層を設けなかったこと以外は、実施例2と同様な操作を行い、化粧板を作製した。
この化粧板の意匠性及び物性の評価結果を第1表に示す。
【0066】
比較例4
実施例3において、酸化チタンをEB樹脂に加えなかったこと以外は、実施例3と同様な操作を行い、化粧板を作製した。
この化粧板の意匠性及び物性の評価結果を第1表に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜7の結果より、本発明の化粧板は、優れた高隠蔽性及び高平滑性を有し、また耐薬品性や耐汚染性をはじめ、耐傷付き性、鉛筆硬度及び耐光性などの表面特性に優れていることが確認された。
実施例1〜3は、原紙の種類を変えた以外は、他の条件は同じであり、意匠性、物性の各項目の評価は、いずれも合格であるが、実施例1及び2は原紙として、平滑処理されてなる白薄紙を使用し、実施例3は、原紙として白チタン紙を使用しているため、隠蔽性及び白色度については実施例3の方が、実施例1、2よりも優れており、一方染み込みムラについては、実施例1、2の方が、実施例3、4よりも優れている。
また、本発明においては、隠蔽インキ層を設けた原紙の透気度が大きいほど、染み込みムラの評価は高いものとなる傾向があり、その一方で隠蔽性や色調安定性の評価の点で若干低くなる傾向があることが確認された。また、実施例1と実施例6は、シーラー層の有無に違いがあるが、シーラー層を設けた実施例6は染み込みムラの評価が高くなる傾向にあるが、その一方で耐薬品性及び耐汚染性が低くなる傾向がある。
【0069】
比較例1及び2は、実施例1に対応するが、隠蔽インキ層を設けていないことから隠蔽性及び色調安定性が低下しており、そのいずれかの評価の点で不合格である。比較例3は、実施例2に対応するが、隠蔽インキ層を設けていないこと、及びEB樹脂組成物中に隠蔽性顔料が含まれていないことから、隠蔽性、及び染み込みムラの評価の点で実施例2より低くなっており、特に染み込みムラの評価は不合格となった。また、比較例4は、実施例3及び5に対応するが、隠蔽インキ層を設けていないことから、全ての意匠性の評価の点、及び物性の評価においては耐薬品性及び耐汚染性の点で実施例3及び5より低くなっており、特に染み込みムラの評価は不合格となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の化粧板は、高強度かつ環境配慮型である上、耐薬品性及び耐汚染性を有すると共に、高隠蔽性及び高平滑性を合わせもつなどの好ましい性状を有しており、特に垂直面や水平面使用の建築材用化粧板として好適である。
[符号の説明]
【0071】
1 基材
2 接着剤層
3 原紙
4 隠蔽インキ層
5 シーラー層
6 表面保護層
7 賦型シート
10 化粧板
15 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、及び表面保護層を順に有し、該表面保護層が、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
原紙と表面保護層との間にシーラー層を有する請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
隠蔽インキ層が、酸化チタン系白色顔料及びアルミペーストから選ばれる少なくとも一種の隠蔽性顔料を含む請求項1又は2に記載の化粧板。
【請求項4】
電離放射線硬化型樹脂組成物に含まれる隠蔽性顔料が、酸化チタン系白色顔料及びアルミペーストから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板。
【請求項5】
電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに耐摩耗フィラー及び低艶形成フィラーから選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板。
【請求項6】
原紙が、平滑処理されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の化粧板。
【請求項7】
基材の他方の面に、反り防止機能層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の化粧板。
【請求項8】
下記の工程を順に有する、基材、接着剤層、原紙、隠蔽インキ層、表面保護層及び賦型シートを順に積層してなる化粧板の製造方法。
(a)工程:基材の一方の面に、接着剤層を介して、隠蔽インキ層を設けた原紙を、基材と原紙の隠蔽インキ層を設けない側とを対面させて貼付する工程
(b)工程:賦型シートの剥離層上に、隠蔽性顔料を含む電離放射線硬化型樹脂組成物の層を設け、電離放射線硬化型シートを形成する工程、
(c)工程:(a)工程で得られた基材上の原紙と、(b)工程で得られた電離放射線硬化型シートとを、その電離放射線硬化型樹脂組成物の層と原紙とを対面させてラミネートしたのち、電離放射線を照射して、該電離放射線硬化型樹脂組成物の層を硬化させて原紙上に表面保護層を形成させる工程
【請求項9】
隠蔽性顔料が、酸化チタン系白色顔料及びアルミペーストから選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−210742(P2012−210742A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76823(P2011−76823)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】