説明

化粧板

【課題】製造コストを削減するとともに、消臭効果を確実に得る。
【解決手段】多孔質基材3に表面側に開口する多数の凹陥空隙7を形成するとともに、多孔質基材3の表面に、水分散樹脂を主成分とし、かつ充填材を含有する塗膜5を塗布形成する。塗膜5には、多孔質基材3の凹陥空隙7よりも小さく塗膜5を貫通する貫通空隙9が凹陥空隙7に連通するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性に優れた化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住空間や生活環境の改善の要望が高まり、様々な手法で消臭・抗菌・防黴対策を施した内装用建材が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維質ボードに無機銀系抗菌剤を添加することにより、消臭・抗菌・防黴効果を長期間発揮させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、消臭剤を含有する合成樹脂からなる消臭剤混入層を、床材のトップコート層表面に付着させることにより、室内中のアルデヒド類を消臭する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−338353号公報
【特許文献2】特開2008−156876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、繊維質ボードが抗菌剤を添加した状態で熱圧成形されるので、抗菌剤として耐熱性を有する高価なものが必要となる。また、上記抗菌剤が、ボード表面だけでなくボード内部の繊維にも付着するので、抗菌剤の消費量が増大する。したがって、上記特許文献1では、製造コストが増大する。
【0007】
一方、上記特許文献2では、消臭剤混入層が床材の表面に形成されているので、床材の使用により消臭剤が合成樹脂と共に剥がれ、消臭効果を失ってしまうおそれがある。また、消臭剤が樹脂で覆われているので、消臭剤を露出させる場合に比べ、同じ量の消臭剤で得られる消臭効果が低くなる。したがって、十分な消臭効果を得るためには、大量の消臭剤や抗菌剤が必要となり、製造コストの増大を招く。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストを削減するとともに、消臭効果を確実に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、臭気を基材内部に長期に亘って効率良く閉じこめるようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明は、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、表面側に開口する多数の凹陥空隙が形成された多孔質基材と、該多孔質基材の表面に塗布形成され、水分散樹脂を主成分とし、かつ充填材を含有する塗膜とを備え、上記塗膜には、上記多孔質基材の凹陥空隙よりも小さく上記塗膜を貫通する貫通空隙が上記凹陥空隙に連通するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の化粧板において、上記塗膜の見かけ密度が、上記多孔質基材の見かけ密度よりも高いことを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第2の発明の化粧板において、上記塗膜の見かけ密度が、上記多孔質基材の見かけ密度の10〜15倍であることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明の化粧板において、上記塗膜は、抗菌防黴剤を含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、多孔質基材の凹陥空隙と塗膜の貫通空隙とが連通していわゆるインクボトル構造をなしているので、塗膜表面に吸着した臭気が、多孔質基材の凹陥空隙内に上記貫通空隙を介して取り込まれる。貫通空隙は凹陥空隙よりも小さく形成されているので、一旦取り込まれた臭気は外部に放散されにくい。したがって、高価な消臭剤や抗菌剤を用いることなく消臭効果を得ることができ、製造コストを削減できる。
【0016】
また、仮に、化粧板の使用により塗膜が剥がれても、多孔質基材の凹陥空隙が外部に露出して臭気を取り込むので、消臭効果を確実に得ることができる。
【0017】
第2の発明によれば、塗膜の見かけ密度が多孔質基材の見かけ密度よりも高いので、凹陥空隙よりも小さい貫通空隙が形成されやすい。また、塗膜と多孔質基材とに密度差があるので、塗膜に物理吸着した臭気が取り込まれ、多孔質基材の凹陥空隙内に拡散・吸着しやすい。したがって、上記消臭効果を確実に大きく得ることができる。
【0018】
第3の発明によれば、塗膜の見かけ密度が多孔質基材の見かけ密度の10倍以上であり、塗膜と多孔質基材との密度差が大きいので、塗膜に物理吸着した臭気が取り込まれ、多孔質基材の凹陥空隙内により拡散・吸着しやすい。
【0019】
また、仮に、塗膜の見かけ密度が高すぎると、塗膜の貫通空隙が小さくなって臭気を凹陥空隙内に取り込まなくなり、消臭効果が低減する。一方、多孔質基材の見かけ密度が低すぎても、凹陥空隙が繋がって凹陥空隙の内壁面の面積(比表面積)が縮小し、当該内壁面に吸着される臭気が減少して消臭効果が低減する。しかし、第3の発明によれば、塗膜の見かけ密度が多孔質基材の見かけ密度の15倍を超えないので、塗膜と多孔質基材の見かけ密度を適切に設定することにより、上述のような消臭効果の低減を防止できる。
【0020】
第4の発明によれば、塗膜が抗菌防黴剤を含有しているので、抗菌防黴効果がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る化粧板の断面図であり、(b)は、(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る化粧板としての板状の天井材1を示す。該天井材1は、板状の多孔質基材3を備えている。この多孔質基材3は、ロックウール、ガラス繊維、セラミック繊維、木質繊維等の繊維3aを絡み合わせ、バインダー3bを用いて成形することにより製造された繊維板であり、その見かけ密度は、0.1〜0.4g/cm程度に設定される。バインダー3bとしては、均一に分散して接合力を発揮する天然樹脂又は合成樹脂等が用いられる。多孔質基材3の繊維3a同士の間等には、図1(b)に示すように、表面側に開口する多数の凹陥空隙7が形成されている。なお、多孔質基材3として、石膏に発泡剤を混合することにより低密度化した石膏ボード、又はケイ酸カルシウムを原料として繊維状のゾノトライトを生成させることにより低密度化したボードを用いてもよい。また、多孔質基材3の裏面に、補強用の薄紙を貼着してもよい。
【0024】
該多孔質基材3の表面には、水分散樹脂を主成分とし、かつ充填材及び抗菌防黴剤を含有する塗膜5が塗布形成されている。該塗膜5の樹脂同士の間、樹脂と充填材との間、及び充填材同士の間には、図1(b)に示すように、上記多孔質基材3の凹陥空隙7よりも小さく上記塗膜5を貫通する貫通空隙9が、上記凹陥空隙7に連通するように形成されている。上記水分散樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はこれら樹脂の混合物、上記充填材としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、ガラス粉末、シラスバルーン、パーライト等の無機充填材を使用できる。上記充填材の含有量は、20〜60重量%に設定される。なお、塗膜5にさらに着色顔料を含有させてもよい。
【0025】
上記塗膜5の塗布量は、50〜300g/mに設定される。塗膜5の厚さは、50〜200μm(望ましくは、50〜100μm程度)に設定される。塗膜5の見かけ密度は、2.5〜4g/cm程度であって、上記多孔質基材3の見かけ密度の10〜15倍になるように設定されている。
【0026】
また、塗膜5に含有される抗菌防黴剤としては、銅イオン、2・オクチル・4・イソチアゾリン・3・オン等のイソチアゾリン系、トリアジン系、ピリジン系、ピリチオン系、有機銅系、無機系、又はこれらを組み合わせたものを使用できる。抗菌防黴剤の添加量は、塗膜5重量の0.5〜5重量%程度に設定される。
【0027】
上述のように構成された天井材1が、老人介護保健施設、病院、福利厚生施設、住宅等の天井に配設されると、多孔質基材3の凹陥空隙7と塗膜5の貫通空隙9とが連通していわゆるインクボトル構造をなすので、室内の臭気が塗膜5表面に吸着し、臭気の濃度が塗膜5の貫通空隙9内に比べて低い多孔質基材3の凹陥空隙7内に上記貫通空隙9を介して取り込まれ、室内の臭気濃度が低下する。貫通空隙9は凹陥空隙7よりも小さく形成されているので、一旦取り込まれた臭気は外部に放散されにくい。したがって、高価な消臭剤や抗菌剤を用いることなく消臭効果を得ることができ、製造コストを削減できる。
【0028】
また、塗膜5の見かけ密度が多孔質基材3の見かけ密度よりも高いので、凹陥空隙7よりも小さい貫通空隙9が形成されやすい。また、塗膜5と多孔質基材3とに密度差があるので、塗膜5に物理吸着した臭気が取り込まれ、多孔質基材3の凹陥空隙7内に拡散・吸着しやすい。したがって、上記消臭効果を確実に大きく得ることができる。
【0029】
また、塗膜5が抗菌防黴剤を含有しているので、抗菌防黴効果がより高められる。
【0030】
なお、塗膜5の見かけ密度が多孔質基材3の見かけ密度の10倍以上であり、塗膜5と多孔質基材3との密度差が大きいので、塗膜5に物理吸着した臭気が取り込まれ、多孔質基材3の凹陥空隙7内により拡散しやすい。また、塗膜5の見かけ密度を多孔質基材3の見かけ密度の15倍以下に設定したのは、塗膜5の見かけ密度が多孔質基材3の見かけ密度の15倍を上回ると、塗膜5の見かけ密度が高くなり過ぎることにより、塗膜5の貫通空隙9が小さくなって臭気を凹陥空隙7内に取り込まなくなったり、多孔質基材3の見かけ密度が低くなり過ぎることにより、凹陥空隙7が繋がって凹陥空隙7の内壁面の面積(比表面積)が縮小し、当該内壁面に吸着される臭気が減少したりするからである。
【0031】
上述のことを実証するために、以下に実験例(実施例1〜4、比較例1〜3)を挙げる。
【0032】
実施例1〜4では、上記多孔質基材3としてのロックウール吸音板の表面に、炭酸カルシウムを充填材とした酢酸ビニル樹脂塗料を塗布することにより、塗膜5の塗布量が160g/m、多孔質基材3の厚さ、全体見かけ密度、多孔質基材3の見かけ密度、及び塗膜5の見かけ密度が、以下の表1に示すように設定された天井材1を得た。そして、得られた天井材1を100mm角に切断し、その木口及び裏面にアルミ箔を貼ったものを試験片とし、この試験片を5Lテドラー(登録商標)バッグに封入後、バッグに5Lの空気を封入し、バッグ内部が8.5ppmとなるようにマイクロシリンジを使用してバッグに酢酸を注入して気化させた後、検知管で2時間後の酢酸の濃度を測定した。
【0033】
比較例1〜3では、厚さが約9mm、見かけ密度が以下の表1に示すように設定されたロックウール吸音板を、酢酸ビニル樹脂塗料を塗布しない状態で100mm角に切断し、その木口及び裏面にアルミ箔を貼ったものを試験片とし、実施例1〜4と同様の測定を行った。
【0034】
【表1】

【0035】
<実施例1>
上述の方法により、多孔質基材3の厚さが9mm、全体見かけ密度が0.32g/cm、多孔質基材3の見かけ密度が0.27g/m、塗膜5の見かけ密度が3.9g/cmの天井材1を得た。
【0036】
そして、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、0.3ppmであった。
【0037】
<実施例2>
上述の方法により、多孔質基材3の厚さが約9mm、全体見かけ密度が0.36g/cm、多孔質基材3の見かけ密度が0.32g/m、塗膜5の見かけ密度が4.2g/cmの天井材1を得た。
【0038】
そして、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、0.6ppmであった。
【0039】
<実施例3>
上述の方法により、多孔質基材3の厚さが約9mm、全体見かけ密度が0.45g/cm、多孔質基材3の見かけ密度が0.41g/m、塗膜5の見かけ密度が3.8g/cmの天井材1を得た。
【0040】
そして、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、0.9ppmであった。
【0041】
<実施例4>
上述の方法により、多孔質基材3の厚さが約6mm、全体見かけ密度が0.58g/cm、多孔質基材3の見かけ密度が0.51g/m、塗膜5の見かけ密度が4.2g/cmの天井材1を得た。
【0042】
そして、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、1.3ppmであった。
【0043】
<比較例1>
見かけ密度が0.32g/cmのロックウール吸音板に対し、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、1.3ppmであった。
【0044】
<比較例2>
見かけ密度が0.36g/cmのロックウール吸音板に対し、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、1.0ppmであった。
【0045】
<比較例3>
見かけ密度が0.45g/cmのロックウール吸音板に対し、上述の測定を行ったところ、測定された酢酸の濃度は、1.0ppmであった。
【0046】
実験の結果、実施例1,2では、実施例3,4に比べて、高い臭気低減効果が認められた。また、実施例1では、基材密度が等しい比較例1に比べて、高い臭気低減効果が認められ、実施例2では、基材密度が等しい比較例2に比べて、高い臭気低減効果が認められ、実施例3では、基材密度が等しい比較例3に比べて、高い臭気低減効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、消臭性に優れた化粧板として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 天井材(化粧板)
3 多孔質基材
5 塗膜
7 凹陥空隙
9 貫通空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に開口する多数の凹陥空隙が形成された多孔質基材と、
該多孔質基材の表面に塗布形成され、水分散樹脂を主成分とし、かつ充填材を含有する塗膜とを備え、
上記塗膜には、上記多孔質基材の凹陥空隙よりも小さく上記塗膜を貫通する貫通空隙が上記凹陥空隙に連通するように形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧板において、
上記塗膜の見かけ密度が、上記多孔質基材の見かけ密度よりも高いことを特徴とする化粧板。
【請求項3】
請求項2に記載の化粧板において、
上記塗膜の見かけ密度が、上記多孔質基材の見かけ密度の10〜15倍であることを特徴とする化粧板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧板において、
上記塗膜は、抗菌防黴剤を含有していることを特徴とする化粧板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−76215(P2013−76215A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215180(P2011−215180)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】