説明

化粧柱の固定構造

【課題】2分割化粧柱の外周に段差を発生させず取り付け作業が容易な化粧柱の固定構造を提供する。
【解決手段】2分割柱体は空洞部を挟んだ両側部に取り付け金具と係合する凹部を各々備え、取り付け金具は2分割柱体の各凹部と係合する凸部と2分割柱体の一方の側部を構造柱側から外側方向に押圧する弾性体とを備え、更に構造柱91の外周面と2分割柱体における弾性体に押圧される側面22に対向する側部の内周側面21との間隔が所定値以下にならないようにする間隔保持部110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に用いられる化粧柱の固定構造に関し、特に、内部に空洞部を有して2分割された化粧柱を、建造物の構造柱に取り付け金具を用いて取り付ける固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2分割された化粧柱は、建造物の構造柱に、長い寸法のドリルビス又はタッピングネジ等を用いて固定されていた。しかし、この方法は、化粧柱に穴をあけるため外観性を大きく低下させることから、構造柱に取り付け金具を固定し、さらにその取り付け金具に2分割された化粧柱を固定する方法が用いられるようになった。
【0003】
例えば、予め2分割された化粧柱の各々の内側に取り付け金具を接着等により取り付けておく。一方、構造柱の周囲にも取り付け金具を取り付けておく。そして、まず、2分割化粧柱の一方の取り付け金具を構造柱側の取り付け金具にネジでビス止めする。その後、残りの2分割化粧柱の取り付け金具を先に固定された分割部の取り付け金具にビス止めする方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、予め2分割化粧柱の各々の内側に突出する突起部を設けておく。一方、構造柱の周囲に取り付けられる取り付け金具には、化粧柱側の突起部が嵌め込まれる取り付け部を設けておく。取り付け部は弾性的に突起部を保持することができ、化粧柱の突起部を取り付け金具側の取り付け部に挿入して取り付ける方法が知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−248058号公報
【特許文献2】特開2000−160808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法のように、金具を化粧柱の内側に接着等により取り付けることは技術的に困難であり、ネジ等でビス止めすることも化粧柱の材質の強度等により困難であった。また、構造柱側に取り付けられた金具のビス穴と、重量物である2分割化粧柱の内側に取り付けられた金具のビス穴とを、2分割化粧柱の重量を支えながら位置合わせしてビス止めする作業も、1人又は2人等の少人数では困難であった。さらに、一方の2分割化粧柱を構造柱側の金具に固定した後に、やはり重量物である他方の2分割化粧柱の金具のビス穴を、すでに固定された2分割化粧柱の金具のビス穴とを、重量を支えながら位置合わせしてビス止めすることも少人数では困難であった。また、この方法はビス止め等の工数が多く、取り付けや取り外しに時間が多く必要であった。
【0007】
また、上記した特許文献1の方法における「少人数で重量物である2分割化粧柱を取り付け金具に固定する作業は容易ではないこと」を改善するために、取り付け金具への固定範囲を広げ、取り付け自由度を高める方法が考えられる。しかし、取り付け自由度を高めると、2分割化粧柱の外周が面一になり、両2分割化粧柱間の対向部分に段差が発生しないように、各々の対向面を位置合わせしながら取り付け金具に固定する必要がある。
【0008】
また、特許文献2の弾性的に突起部を保持する方法は、重量物である化粧柱を金具の弾性のみで仮に固定するものであり、恒久的に固定するものではない。恒久的に固定するには、建築材用の接着剤、又は、従来のドリルビス等を用いたビス止め等を用いて固定する必要があった。しかし、接着剤を用いた場合には、やり直しができず、後で取り外しをすることはできない。又、タッピングネジ等を用いると、構造柱に穴をあけるため外観性を大きく低下させる可能性があった。また、取り付け部に弾性的に突起部を保持させる場合、取り付け金具へ取り付け部を固定する精度を高くできない場合や、取り付け部の各押圧方向への弾性の応力にばらつきがある場合等には、両2分割化粧柱間の対向部分に段差が発生する場合があった。
【0009】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、2分割化粧柱の設置時に外周に段差を発生させない正確な位置合わせを可能にするとともに、取り付け作業が少人数でも容易であり、外周の段差を抑制することで美観を改善した化粧柱の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る化粧柱の固定構造は、建造物に用いられて内部に空洞部を有する化粧柱を2等分割した2分割柱体を、取り付け金具を用いて建造物の構造柱を挟んで取り付ける固定構造であって、2分割柱体は、空洞部を挟んだ両側部に取り付け金具と係合する凹部を各々備え、取り付け金具は、2分割柱体の各凹部と係合する凸部を備え、更に、2分割柱体の一方の側部を構造柱側から外側方向に押圧する弾性体と、構造柱の外周面と2分割柱体における弾性体に押圧される側面に対向する側部の内周側面との間隔が所定値以下にならないようにする間隔保持部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1の本発明によれば、弾性体と間隔保持部が、構造柱における対向する面の外側に配置され、弾性体により2分割柱体の一方の側部を外側へ押す応力と、間隔保持部により2分割柱体の他方の側部の間隔を所定値以下にしないことにより、他方の側部の内周側面と構造柱の外周面との間隔を所定値にすることができる。その場合、構造柱の外周面と一方の側部の内周側面との間隔は、2分割柱体の各側部と構造柱の両側との間隔の和から、他方側の間隔保持部で確保された所定値を引いた残りである。従って、間隔保持部の所定値と、両側間隔の和から所定値を引いた残りとを極力同じ値になるように近づけることで、2分割柱体を構造柱を挟んで取り付けた場合の外周面の段差を所定範囲内に抑制することができる。
【0012】
好ましくは、請求項2に係る本発明のように、間隔保持部は、所定値が構造柱の両側外周面と2分割柱体の内周の両側面との間隔の和の略1/2になるように形成されるようにしてもよい。
本実施態様では、間隔保持部の所定値を、2分割柱体の各側部と構造柱の両側間隔の和の略1/2にすることで、他方側の間隔保持部で確保された所定値を引いた残りも、構造柱の両側間隔の和の略1/2にすることができ、両側間隔が同じになる。従って、間隔保持部により、2分割柱体を構造柱を挟んで取り付けた場合の外周面の段差を無くすことができる。
【0013】
好ましくは、請求項3に係る本発明のように、弾性体は、取り付け金具上に設けられるようにしてもよい。
本実施態様では、弾性体を取り付け金具上に設けることで、弾性体の挿入を容易にして、2分割柱体の取付工数を減らすことができる。
【0014】
好ましくは、請求項4に係る本発明のように、前記間隔保持部は、内周側形状が構造柱の外周形状と同様で、前記化粧柱の上端又は下端の少なくとも一方と建造物との隙間に配置される固定プレート上に設けられるようにしてもよい。
本実施態様では、間隔保持部は、構造柱における弾性体が配置される面と対向する面の外側と、2分割柱体の内周側面との間に配置される。一方、固定プレートは、化粧柱の上端又は下端の少なくとも一方に、両2分割柱体に半分ずつまたがり、正方形断面を有する構造柱にガイドされて挿入される。従って、間隔保持部を、構造柱にガイドされる固定プレート上に設けることで、間隔保持部の位置決めが容易になる。その結果、2分割柱体の取付工数を減らすことができる。
【0015】
好ましくは、請求項5に係る本発明のように、固定プレートは、外周側形状が化粧柱を2等分割した断面における外周形状と同様に形成されるようにしてもよい。
本実施態様では、化粧柱の上下と建造物との間に隙間ができないようにすることができ、外観上の美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧柱の固定構造によれば、2分割化粧柱の設置時に外周に段差を発生させない正確な位置合わせを含む取り付け作業が少人数でも容易であり、外周の段差を抑制することで美観を改善した化粧柱の固定構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は化粧柱の一例として家屋の玄関ポーチ柱に化粧柱を設けた場合を示す斜視図であり、(b)は本発明の第1実施形態の化粧柱の縦断面図と横断面図である。
【図2】図1(b)の化粧柱及び取り付け金具の横断面図の拡大図である。
【図3】(a)〜(g)は本発明の固定プレートが用いられる化粧柱の組み立て方法を順に示した上面図である。
【図4】本発明の固定プレートの上面図及び側面図を図2の化粧柱に取付前の状態の横断面図と共に示した図である。
【図5】図4の固定プレートの上面図を図2の化粧柱に取付後の状態の横断面図と共に示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態の化粧柱の横断面図及びそれに関係する取り付け金具の側面図と副取り付け金具の三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の化粧柱の固定構造の実施の形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1(a)には、化粧柱の一例として、家屋の玄関ポーチ柱に化粧柱を設けた場合を示す斜視図である。図1(b)は本発明の第1実施形態の固定プレートを含む化粧柱の縦断面図と化粧柱の横断面図である。図1(b)では、上部の縦断面図のA−A線の横断面図が下部に示され、その横断面図のB−B断面が上部の図となる。図2は、図1(b)に示した化粧柱の横断面図の拡大図である。
【0020】
化粧柱1は、建造物に用いられ、例えば、見た目の安定感を高め、又は、柱の見栄えを良くする等の理由から、実際に構造体の加重を支持する構造柱91より大きい断面で内部に空洞部を有してその周囲に追加され、その外周面に装飾用の塗装等の化粧仕上げが施された柱である。尚、玄関ポーチとは、一般的に玄関扉前の庇(ひさし)の下で、アプローチ部分から数段程度の段差で高くなったスペースのことである。化粧柱1は、玄関ポーチの基礎部分の上部と、庇の下部部分を垂直に結んで設けられる。又、化粧柱1は、その他にベランダ等にも使用される場合がある。
【0021】
2分割柱体11は、上記したような住宅等の建造物に用いられる化粧柱1が縦に2等分割されたものであり、比重が0.7〜1.5程度のセメント系押出成形体からなる。以後、一方の2分割柱体11を示す場合は2分割柱体11aと称し、他方の2分割柱体11を示す場合は2分割柱体11bと称する。当該2分割柱体11の内部は建造物の構造柱91を包含できるように空洞(空洞部95)が形成されている。構造柱91を挟んで対向して取り付けられる2分割柱体11は、空洞部95を挟んだ両側部14/15に取り付け金具31と係合する凹部71/72を各々備えるように形成される。
【0022】
第一対向面12は、一方の側部14の対向面であり、この対向面には凹部は形成されない。第一対向面12の表面形状は、凸部41に当接させることで2分割柱体11を位置決めすることができるように、凸部41の第1直線凸部41aにおける対応する側の面の表面形状に合わせて形成される。それに対して、第二対向面13は、2分割柱体11の空洞部95を挟んだ他方の側部15の対向面であり、この対向面には凹部72が形成される。第二対向面13の表面形状は、凸部41に当接させることで2分割柱体11を位置決めすることができるように、凸部41の第1直線凸部41aにおける対応する側の面の表面形状に合わせて形成される。
【0023】
第一対向面12と第二対向面13は、2分割柱体11の縦割りされた分断面であり、1本の構造柱91の周囲に配置される2個の2分割柱体11は、各々の第一対向面12と第二対向面13が隙間を挟んで対向するように配置される。第一対向面12と第二対向面13との隙間は、通常、コーキング剤等が穴埋め用に充填されるか、乾式目地材で隠される。コーキング剤等は凝固する際に被接着面の接着作用を有しているので、接着剤とも考えられる。つまり、第一対向面12と第二対向面13の隙間は、接着剤により充填される。乾式目地材の場合は、化粧柱1の取り外し又は交換が容易である。
【0024】
第一側部14は、2分割柱体11における空洞部95を挟んだ一方の側部であり、内周側面に凹部71を有する。第二側部15は、2分割柱体11における空洞部95を挟んだ他方の側部であり、もう一つの2分割柱体11との第二対向面13に凹部72を有する。
【0025】
第一内周側面21は、2分割柱体11の空洞部95を挟んだ一方の側部14の内周側の側面であり、この内周側面には凹部71が形成される。それに対して、第二内周側面22は、2分割柱体11の空洞部95を挟んだ他方の側部15の内周側の側面であり、この内周側面には凹部は形成されない。
【0026】
取り付け金具31は、建造物の構造柱91を挟んで一カ所につき2個用いて、2分割柱体11を構造柱91に固定可能であるように形成されている。2個の取り付け金具31は、建造物の構造柱91を挟んで、固定用ネジ81を固定用ネジ穴32にねじ込むことで固定可能であるように同形状に形成され、構造柱91の上下2カ所を含む複数箇所に固定用ネジ81により取り付けられる。取り付け金具31を設置する間隔は、構造柱91の上下方向に、例えば、700mm間隔程度で設けられる。
【0027】
取り付け金具31は、2分割柱体11を位置決めすると共に、2分割柱体11の凹部72と係合する凸部41、2分割柱体11の凹部71と係合する凸部51、及び、2分割柱体11の一方の側部15の第二内周側面22を外側方向に押圧する弾性体61を有している。取り付け金具31は、例えばアルミニウム等の押し出し成型により形成される。取り付け金具31は、押し出し成型により形成することで、製造を容易にして製造コストを低減させることができ、2個の取り付け金具31が同形状であるので、製造コストおよび部品点数を減少させることができる。なお、弾性力を必要とする凸部51および弾性体61については、ステンレス鋼板等により形成されるのが好ましく、アルミ押出成形体からなる基板部分や凸部41とリベット82、83を用いて一体化される。
【0028】
固定用ネジ穴32は、構造柱91を挟んで対向して取り付けられる2個の取り付け金具31を、固定用ネジ81で取り付けるための穴である。尚、固定用ネジ81がドリルネジ又はタッピングネジ等のようにネジ穴を開けて溝を切りながら締め付けするタイプの場合は、予め固定用ネジ穴32を設ける必要はなく、取り付け金具31をネジ止めする時に形成される。又、固定用ネジ81がネジ溝を切りながら締め付けするタイプでない場合には、予め固定用ネジ穴32の内側にネジ溝を形成しておく。又、固定用ネジ81としてボルトをナットと共に使用する場合には、予め固定用ネジ穴32の内側にネジ溝を形成しておく必要はなはなく単なる円形の開口でよい。
【0029】
凸部41は、例えば2分割柱体11と第二対向面13で凹部72に係合できる鉤型に形成される。より詳しくは、凸部41は、構造柱91から2分割柱体11の凹部72の入り口部までの間に配置される第1直線凸部41aと、第1直線凹部72aの内部に配置される第2直線凸部41bと、第1直線凸部41aと第2直線凸部41bとの間の第1折れ曲がり凸部42と、第2直線凹部72bの内部に配置される第3直線凸部41cと、第2直線凸部41bと第3直線凸部41cとの間の第2折れ曲がり凸部43を有する鉤型に形成される。
【0030】
凸部41は、取り付け金具31の外側表面から突出して、第一対向面12と第二対向面13を位置決めする突起部である。凸部41は、2個の2分割柱体11の第一対向面12及びと第二対向面13の表面が第1直線凸部41aの両側面に当接されることで2分割柱体11の対向方向の位置を決めることができる。2個の2分割柱体11のすり合わせ方向の位置は、第2直線凸部41b及び第1直線凹部72aと、凸部51と凹部71とから決めることができる。
【0031】
凸部51は、例えば略直線形状で、第一内周側面21の凹部71に係合して第一対向面12を、対向する2分割柱体11の第二対向面13側へ押圧する(垂直な)方向に弾性を有し、リベット82により取り付け金具31上に設けられる。又、凸部51は、第一内周側面21の凹部72における第一対向面12側に先端が当接することで、第一対向面12側に押圧することで位置を決定する。凸部51は、第一対向面12の挿入方向に垂直な方向に弾性を有しているので、第一対向面12が外れる方向に移動しないように位置決めと固定することができる。
【0032】
弾性体61は、例えば開口側が開いたヘアピン形状で、第二内周側面22に接触し、その第二内周側面22を外周側に垂直に押圧する方向に弾性を有し、リベット83により取り付け金具31上に設けられる。この弾性体61は、取り付け金具31上に設けられることで、弾性体61を第二内周側面22と取り付け金具31と隙間に挿入することを容易にして、2分割柱体11の取付工数を減らすことができる。
【0033】
凹部71は、弾性体61により押圧される側と反対側の側部14における内周側面21に設けられる。本実施態様では、弾性体61により押圧される側の側部15の内周側面22を弾性体61で外側に押すことにより、弾性体61により押圧されない側の側部14の内周側面21の凹部71を略直線形状の凸部51の先端部分とを係合させることにより2分割柱体11を固定することができる。
【0034】
側部15の凹部72は、側部15における他方の2分割柱体11との第二対向面13に設けられる。凹部72は、入り口部から直角に奥側に形成される第1直線凹部72aと、その第1直線凹部72aの奥側端部から内側の直角方向に形成される第2直線凹部72bと、第1直線凹部72aと第2直線凹部72bとの間の折れ曲がり凹部73を有する鉤型に形成される。凹部72を折れ曲がり凹部73で1回折れ曲がった鉤型にし、鉤型の凸部41に係合させることで、2分割柱体11の金具31への固定をより堅固にすることができる。
【0035】
固定用ネジ81は、2個の取り付け金具31を、構造柱91を挟んで各々取り付けるためのネジである。固定用ネジ81は、ドリルネジ又はタッピングネジ等のようにネジ穴を開けて溝を切りながら締め付けするタイプ、ネジ溝を切りながら締め付けしない通常タイプ、ボルトとナットのタイプ等の様々なタイプを使用することができる。又、固定用ネジ穴32は、上記したようにネジのタイプに合わせて形成される。
【0036】
構造柱91は、例えば、軽量鉄骨住宅の角柱、又は、木造住宅の角柱等であり、実際に住宅の屋根等の構造体の加重を支持するには十分な強度を有しており、又、比較的重量が重い2分割柱体11を周囲に固定するための十分な強度を有している。
【0037】
空洞部95は、2分割柱体11の内部側に形成される空洞であり、構造柱91及び取り付け金具31の主要部分等を収容する。
【0038】
図3(a)〜(g)は、図2の2分割柱体11を構造柱91に取り付ける手順を示す図である。
図3(a)では、構造柱91の複数箇所(700mm毎等の等間隔)に、構造柱91を挟み込むようにして各箇所毎に2個の取り付け金具31を、固定用ネジ81を用いて固定し、2分割柱体11aを取り付け金具31に近づける。
図3(b)では、2分割柱体11aの側部14を、先に、その第一対向面12を凸部41に接触させると共に、その内周側面21を凸部51に接触させた後、2分割柱体11aの側部15を、弾性体61を押圧しながら他方の凸部41に接触させる。
【0039】
図3(c)では、弾性体61の押圧を緩和させる方向に2分割柱体11aを摺動させて、側部14における内周側面21の凹部71を凸部51に係合させると共に、側部15の凹部72に凸部41を係合させる。
図3(d)では、2分割柱体11bを、構造柱91を挟んで2分割柱体11aの反対側から取り付け金具31に近づける。
【0040】
図3(e)では、2分割柱体11bの側部14を、先に、その第一対向面12を凸部41に接触させると共に、その内周側面21を凸部51に接触させた後、2分割柱体11bの側部15を、弾性体61を押圧しながら他方の凸部41に接触させる。
図3(f)では、弾性体61の押圧を緩和させる方向に2分割柱体11bを摺動させて、側部14における内周側面21の凹部71を凸部51に係合させると共に、側部15の凹部72に凸部41を係合させる。
図3(g)では、2分割柱体11aと2分割柱体11bが構造柱91を挟んで取り付け金具31に取り付けられる。この場合の2分割柱体11aと2分割柱体11bは、弾性体61の押圧力で、凸部51が凹部71に突き当たった位置か、又は、凸部41が凹部72に突き当たった位置の何れか先に突き当たった位置に固定される。
【0041】
以上のように本実施形態では、2分割柱体11における弾性体61により押圧される側の側部15の内周側面22が弾性体61により外側に押される。一方、取り付け金具31の凸部41は、2分割柱体11の凹部72に係合している。従って、側部15の内周側面22側の部分は、弾性体61と取り付け金具31の凸部41との間に挟み込まれる。又、側部15の内周側面21は、凹部71に凸部51が係合して側部14の第一対向面12側の部分が凸部41との間に挟み込まれる。これにより2分割柱体11を、容易に固定することができる。
【0042】
このように取り付け金具31と2分割柱体11を形成することで、2分割柱体11aと2分割柱体11bは、構造柱91に取り付けることができる。しかし、取り付け金具の寸法誤差や弾性力のバラツキ、セメント系押出成形体の寸法誤差等の理由から、2分割柱体11aと2分割柱体11bとの対向面における段差寸法D1(図2参照)を完全に無くすことが難しいという問題がある。段差寸法D1があると、化粧柱1の美観が損なわれるため、美観に影響を与えない範囲にD1を抑えることが求められる。
【0043】
そこで本発明者は、段差寸法D1による美観の悪影響を無くすために、構造柱91の外周面と2分割柱体11における弾性体61に押圧されない側部14の内周側面21との間に、所定間隔を保持させる間隔保持部を挿入することを検討した。これにより、構造柱91の外周面と2分割柱体11における弾性体61に押圧されない内周側面21との間隔が所定値以下にならないようにすることができる。しかし、その間隔保持部を、建築現場で、構造柱91の外周面と重量物である2分割柱体11の内周側面との間に挿入する作業は容易ではない。そこで本発明では、間隔保持部を化粧柱1の上下の何れか又は両方に挿入する固定プレートに設け、固定プレートを化粧柱1の上下の何れか又は両方に挿入することで、間隔保持部を構造柱91の外周面と2分割柱体11の内周側面との間に挿入できるように構成した。
【0044】
図4は、図1(b)に示した固定プレートの取付前の状態を示す平面図であり、図5は、図1(b)に示した固定プレートの取付後の状態を示す平面図である。
【0045】
固定プレート101は、内周側面102の形状が構造柱91の外周形状と略同様で、その外周側面103の形状が、段差無く形成された化粧柱1を2等分割した断面の外周形状と同様に形成される。固定プレート101は、化粧柱1の上端又は下端の少なくとも一方と建造物との隙間に配置(挿入)される。その際に固定プレート101は、両2分割柱体11a/11bに半分ずつまたがって直交位置となるように、方形断面を有する構造柱91にガイドされて挿入される。例えば、構造柱91がプレハブ工法のC形鋼である場合は、その正方形断面の対向する2面の組のうち、両2分割柱体11a/11bに半分ずつまたがることになる方の組にガイドされて挿入される。尚、以後、構造柱91の反対側から挿入される2枚の固定プレート101を、各々固定プレート101a、固定プレート101bとする。
【0046】
間隔保持部110は、固定プレート101と接続する接続部111と、2分割柱体11の側部14の内周側面21の内側への移動を抑止するストッパ112と、内周側面21に接触する接触面113を備え、リベット121により固定プレート101上に固定される。この接続部111の構造柱91側から接触面113までの寸法L3を本実施形態の所定間隔にする。
【0047】
接続部111の内周側形状が構造柱91の外周形状と同様である。間隔保持部110は、固定プレート101上において、構造柱91における弾性体61が配置されない面(弾性体61が配置される面と対向する面)の外側と、2分割柱体11における弾性体61に押圧されない側部14の内周側面21との間に位置できるように配置され固定される。
【0048】
これにより、弾性体61と間隔保持部110は、構造柱91における対向する面の外側に各々配置される。従って、2分割柱体11の一方の側部15には、弾性体61により外側へ押す応力が働くが、2分割柱体11の他方の側部14の間隔が間隔保持部110により所定値以下にならないことにより、構造柱91の外周面と他方の側部14の内周側面21との間隔を所定値に維持させることができる。
【0049】
その場合、構造柱91の外周面と一方の側部14の内周側面21との間隔は、2分割柱体11の各側部14/15と構造柱91の両側との間隔の和(L1−L2)から、他方側の間隔保持部110で確保された所定値を引いた残りである。従って、間隔保持部110の所定値と、両側間隔の和から所定値を引いた残りとを極力同じ値になるように近づけることで、2分割柱体11を構造柱91を挟んで取り付けた場合の外周面の段差を所定範囲内に抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、外周面の段差を所定範囲内に抑制するために、上記所定値が、例えば、構造柱91の両側外周面と2分割柱体11の内周の両側面21、22との間隔の和の略1/2になるように形成される。
【0051】
より具体的には、例えば、2分割柱体11における側部14の内周側面21と、側部15の内周側面22間の空洞部95の空間距離寸法をL1とし、その空洞部95に配置される構造柱91のL1方向の寸法をL2とする。その場合に、間隔保持部110の所定値を、2分割柱体11の各側部14/15と構造柱91の両側間隔の和(L1−L2)の1/2にすることで、他方側の間隔保持部110で確保された所定値を引いた残りも、構造柱91の両側間隔の和(L1−L2)の1/2にすることができ、両側間隔が同じになる。つまり、本実施形態では、構造柱91に対して固定プレート101cと固定プレート101dを各々反対側から挿入することにより、構造柱91と2分割柱体11の側部14/15の内周側面21/22との間隔寸法を一定にすることができる。従って、間隔保持部110により、2分割柱体11を構造柱91を挟んで取り付けた場合の外周面の段差を無くすことができる。
【0052】
間隔保持部110は、構造柱91にガイドされる固定プレート101上に設けられることで、位置決めを容易にすることができる。その結果、2分割柱体11の取付工数を減らすことができる。又、本実施態様では、固定プレート101を用いることで、化粧柱1の上下と建造物との間に隙間ができないようにすることができ、外観上の美観を向上させることができる。
【0053】
このように本実施形態の化粧柱1の固定構造によれば、構造柱91に穴を開けないで、2分割柱体11の取り付け金具31への位置決め及び固定を含む取り付け作業及び取り外し作業を少人数でも容易に実施することができ、さらに、固定プレート101を用いることでさらに堅固な固定も容易にでき、取り外しも容易にできる。又、2個の取り付け金具31は、同一形状でアルミ押し出し成形等により製造可能であるので、材料及び工数コストの増加を少なくすることができる。
【0054】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態の化粧柱の横断面図及び側面図である。
本実施形態の第1実施形態との主な相違点は以下の各点であり、相違点以外の構成、作用、及び効果は第1実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態では、対向配置される2枚の固定プレート101を、固定プレート101c、固定プレート101dとする。また、本実施形態では、構造柱91に対して固定プレート101cと固定プレート101dを各々反対側から挿入することにより、構造柱91と2分割柱体11の側部14/15の内周側面21/22との間隔寸法を一定にすることができる。
【0056】
間隔保持部110aは、固定プレート101と接続する接続部111aと、2分割柱体11の側部14の内周側面21の内側への移動を抑止するストッパ112aと、内周側面21に接触する接触面113aを備える。
【0057】
間隔保持部110aは、固定プレート101上において、一方の2分割柱体11における側部14の内周側面21と、他方の2分割柱体11における側部15の内周側面22とを連続させ、ストッパ112aの接触面113aで固定することで、構造柱91の外周面との間の間隔を一定にできる。従って、本実施形態では、2分割柱体11における外周面の段差を、側部14の側部15との寸法の差のみに抑えることができる。
【0058】
又、上記した各実施形態では、本発明の取り付け金具31を軽量鉄骨住宅の玄関ポーチの角柱の構造柱91に用いる場合について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施の形態に記載された範囲には限定されるものではなく、例えば、木造住宅の任意箇所の角柱又は形状が円形の構造柱91に対しても、取り付け金具31及び固定プレート101の形状を変更することで適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 化粧柱、
11、11a、11b 2分割柱体、
12 第一対向面、
13 第二対向面、
14、15 側部
21 第一内周側面、
22 第二内周側面、
31 取り付け金具、
32 固定用ネジ穴、
41 凸部、
41a 第1直線凸部、
41b 第2直線凸部、
41c 第3直線凸部、
42 第1折れ曲がり凸部、
43 第2折れ曲がり凸部、
51 凸部、
61 弾性体、
71、72 凹部、
72a 第1直線凹部、
72b 第2直線凹部、
81 固定用ネジ、
82、83 リベット、
91 構造柱、
95 空洞部、
101、101a、101b、101c、101d 固定プレート、
102 内周側面、
103 外周側面、
110、110a 間隔保持部、
111、111a 接続部、
112、112a ストッパ、
113、113a 接触面、
121 リベット
D1 段差寸法、
L1 2分割柱体における両側部の内周側面間の空間距離寸法
L2 構造柱のL1方向の寸法
L3 間隔保持部で保持する所定間隔の寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に用いられて内部に空洞部を有する化粧柱を2等分割した2分割柱体を、取り付け金具を用いて建造物の構造柱を挟んで取り付ける固定構造であって、
前記2分割柱体は、
前記空洞部を挟んだ両側部に前記取り付け金具と係合する凹部を各々備え、
前記取り付け金具は、
前記2分割柱体の各凹部と係合する凸部と、
前記2分割柱体の一方の側部を前記構造柱側から外側方向に押圧する弾性体と
を備え、更に、
前記構造柱の外周面と前記2分割柱体における前記弾性体に押圧される側面に対向する側部の内周側面との間隔が所定値以下にならないようにする間隔保持部と
を備える
ことを特徴とする化粧柱の固定構造。
【請求項2】
前記間隔保持部は、前記所定値が前記構造柱の両側外周面と前記2分割柱体の内周の両側面との間隔の和の略1/2になるように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧柱の固定構造。
【請求項3】
前記弾性体は、前記取り付け金具上に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧柱の固定構造。
【請求項4】
前記間隔保持部は、内周側形状が前記構造柱の外周形状と同様で、前記化粧柱の上端又は下端の少なくとも一方と前記建造物との隙間に配置される固定プレート上に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の化粧柱の固定構造。
【請求項5】
前記固定プレートは、外周側形状が前記化粧柱を2等分割した断面における外周形状と同様に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の化粧柱の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196288(P2010−196288A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40099(P2009−40099)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】