説明

化粧用および医薬品水中油型エマルジョン用乳化剤系

【課題】滑らかな絹のような皮膚感触を得ることが可能であり、同時に高いエマルジョンの安定化をもたらす乳化剤系を提供する。
【解決手段】化粧用および医薬品水中油型エマルジョン用の1.6超の分散指数を有する高分子量の有機変性ポリシロキサンを含む乳化剤系、化粧用および医薬品水中油型エマルジョンならびに化粧品および医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用および医薬品水中油型エマルジョン用の1.6超の多分散性を有する高分子量の有機変性ポリシロキサンを含む乳化剤系、化粧用および医薬品水中油型エマルジョンならびに化粧品および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機変性シロキサンは、多種多様な用途において使用される。それらの特性は、標的化した方法で、特に、変性の種類により、およびその変性濃度によっても調節することができる。
【0003】
したがって、例えば、アリルポリエーテルでは、有機親和性または非イオン性親水性基をシロキサン骨格に結合することができる。このタイプの化合物は、例えば、ポリウレタンフォームの安定剤として、燃料中の消泡剤としてまたはペイントおよび塗料中の添加剤として使用される。
【0004】
このように、例えば、DE102005001041は、官能化ポリオルガノシロキサンおよび燃料消泡剤としてのそれらの使用について記載している。ここで提示されているシロキサン中のアリルポリエーテルは、適切な場合、その合成を変更することにより炭化水素基によって置換することができる。
【0005】
一般に、シロキサンは、例えば、α−オレフィンと反応させることによって疎水性基と連結することができる。この方法によって得られたシリコーンワックスは、例えば、パーソナルケア用途における添加剤として役立つ。
【0006】
シロキサンの効果は、対応する製剤に対する適合性に決定的に依存することが多くの応用分野で見出されている。
【0007】
好適な化粧品乳化剤は、例えば、α−オレフィンに基づく脂肪族基に加えて、ポリエーテルを有するシロキサンである。ここで言及すべき典型的な例は、特に油中水型(W/O)エマルジョンの優れた安定化を特徴とするEvonik Goldschmidt GmbH(ドイツ)が提供している商品ABIL EM 90(米国特許第4698178号)である。
【0008】
水中油型(O/W)エマルジョン用のシロキサン系乳化剤は、比較的親水性の性質を持たなければならず、その理由のためこれらの製品は通常は純粋なポリエーテルシロキサンである。
【0009】
欧州特許第1125574号は、O/W型乳化剤として、ポリエーテル基がシロキサン骨格のα−ω−位にある比較的疎水性のポリエーテルシロキサンの使用を記載している。これらの構造体は、特に、滑らかな絹のような皮膚感触を特徴とし、それによりそれらを化粧用エマルジョン中に組み入れることができる。
【0010】
これらの構造体を使用する不利な点は、多くの場合エマルジョンの安定化が不適切なことと、また要求が厳しいトポロジーが理由の複合生産であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
滑らかな絹のような皮膚感触を得ることが可能であり、同時に高いエマルジョンの安定化をもたらす乳化剤系を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、高分子量の有機変性シロキサンまたは様々な高分子量有機変性シロキサンの混合物は、それらが異常に広い分子量分布を有する場合、乳化成分として作用して良好な皮膚感触と併せて特に安定な水中油型エマルジョンを生じることが見出された。
【0013】
驚くべきことに、広い分子量分布を有する高分子量のポリエーテルシロキサンの場合は、比較的低い親水性ポリエーテル基による置換の度合いでさえも、良好な乳化性能を得ることができ、さらに滑らかな絹のような皮膚感触が同時に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による有機変性ポリシロキサンまたはポリエーテルシロキサン混合物を、例として以下に記載するが、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定することを目的とするものではない。範囲、一般式または化合物の種類が以下に示される場合、そのときこれらは、はっきりと言及された対応する範囲または化合物の群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を移動させることによって得ることができる化合物のすべての部分の範囲および部分の群を網羅することを意味している。本記述の文脈内に文献が引用されている場合、その全体としてのそれらの内容について、本発明の開示の一部を形成することを意味している。本発明についての文脈の中に、例えば、異なる構成単位を有することができる有機変性ポリシロキサンが何回も記載される場合、これらは、これらの化合物中にランダム分布で(ランダムオリゴマー)または配列されて(ブロックオリゴマー)存在し得る。このような化合物中の構成単位の数に関するデータは、対応する化合物の全体に関して平均化した平均値を意味するものと理解すべきである。別段の断りのない限り、記載されているパーセント(%)はすべて、質量パーセントである。
【0015】
本発明は、したがって、1.6超の多分散性Dを有する高分子量の有機変性ポリシロキサンを含む化粧用および医薬品水中油型エマルジョン用乳化剤系を提供する。
【0016】
多分散性Dは、ポリシロキサンの分子量分布の重量平均Mwと数平均Mnとの商である。多分散性は、分子量分布の幅の認定された評価基準である。ポリシロキサンは、一般的には1.6未満のDの多分散性を有する。
【0017】
分子量分布を確定する慣例方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)である。
【0018】
本用途で使用されるGPC法は、規格DIN55072−1/ISO13885−1にと同様である。そのGPCデータは、HP RI検出器および以下のパラメーター:
・カラム:SDV1000/10000Å、
長さ:65.00cm、
内径:0.80cm、
温度:30℃
・移動相:THF
・流速:1.00ml/min
・試料濃度:10.00g/l
・較正:PS[162〜2,057、000g/mol]
を有するHewlett Packard HP 1100測定器によって得た。
【0019】
そのクロマトグラムの評価には、Polymer Standards Service、マインツ、ドイツ、による評価ソフトウェアWinGPC Unityを用いた。
【0020】
本データについては、GPCクロマトグラムにおける生成物シグナルのみを考慮に入れた。ポリシロキサンがヒドロシリル化によって調製されたポリエーテルシロキサンである場合、これらは通常2次成分として一定割合の遊離のポリエーテルを含む。GPCにおいて、これらは、その生成物ピークと重なり合い得るシグナルを生ずる。したがって、HPLC評価に似た標準的な複数ピークの評価を使用し、生成物シグナルのみを考慮に入れた。比較的低分子量のその他のシグナルがこの生成物シグナルと重なり合っている場合、そのシグナル間の最低値を、評価ソフトウェアを用いて確定し、ベースラインまでの低下を行い、その分子量の最低値より上のみを評価された比較的大きい分子量についてのクロマトグラムとした。
【0021】
本発明による乳化剤系において使用されるポリシロキサンの多分散性Dは、1.6より大きく、好ましくは1.7より大きく、特に好ましくは1.8より大きい(上で説明したGPC法による生成物シグナルについて測定した)。
【0022】
本発明の脈絡の中で「高分子量ポリシロキサン」は、少なくとも5,000g/mol、好ましくは10,000g/mol、特に好ましくは15,000g/molの重量平均Mwを有する(上で説明したGPC法による生成物シグナルについて測定した)。
【0023】
本発明による乳化剤系は、幅広い分子量分布を有する単一の有機変性ポリシロキサン、または異なる分子量分布の有機変性ポリシロキサンの混合物であり得る。
【0024】
著しく高分子量の画分をさらに含む幅広い分布の分子量分布を有するポリシロキサンは特に有利である。
【0025】
したがって、本発明による乳化剤系においては、ポリシロキサンの全体量を基準として、75%超、好ましくは80%超、特に好ましくは85%超の1×10g/mol以上の分子量を有するポリシロキサンの割合を有するポリシロキサンを使用することが選択される。
【0026】
ここで特に選択されるのは、ポリシロキサンの全体量を基準として、2%を超え、好ましくは2.5%を超え、特に好ましくは5%超の1×10g/mol以上の分子量を有するポリシロキサンの割合を有するポリシロキサンを含む乳化剤系である。
【0027】
本発明による乳化剤系において使用されるポリシロキサンの分子量が高過ぎると、乳化性能に悪影響を有する可能性があり、したがって、本発明による乳化剤系においては、ポリシロキサンの全体量を基準として、5%未満、好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満の1×10g/mol以上の分子量を有するポリシロキサンの割合を有するポリシロキサンを使用することが好ましい。
【0028】
特定の分子量のポリシロキサンの割合は、上で説明したGPC法による特定の分子量のそれぞれのポリシロキサンの割合の特定面積により確定される。その面積の割合は、すべてのポリシロキサンの面積(ポリシロキサンの全体量に等しい)に基づいており、したがって、本明細書で言及する%は、面積%である。
【0029】
ここでの好ましい乳化剤系は、少なくとも1つのポリエーテルシロキサンを含む。
【0030】
ポリエーテルシロキサンを含む好ましい乳化剤系は、一般式I
2+c+2dD’ 式I
のポリエーテルシロキサンを含み、
式中、
Mは、(RSiO1/2)であり、
Dは、(RSiO2/2)であり、
D’は、(RSiO2/2)であり、
Tは、(RSiO3/2)であり、
Qは、(SiO4/2)であり、
aは、30〜800、好ましくは40〜500、特に50〜400であり、
bは、1〜15、好ましくは3〜10、特に4〜8であり、
cは、0〜2、好ましくは0〜1、特に0であり、
dは、0〜2、好ましくは0〜1、特に0であり、
は、RまたはRであり、
は、互いに独立して、任意選択によりOHまたはエステル基を有する同じまたは異なる1〜16個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の、任意選択により芳香族の炭化水素基、好ましくはメチルまたはフェニル、特にメチルであり、
は、互いに独立して、一般式II
−CH−CH−(CHO(EO)(PO)(XO) 式II
(式中、
EOは、(CO)であり、
POは、(CO)であり、
XOは、(CO)であり、
nは、1〜9、特に1であり、
xは、2〜50、特に10〜30であり、
yは、0〜50、特に2〜15であり、
zは、0〜10、特に0であり、
は、互いに独立して、H、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、またはカルボキシレート基を含む群から選択される同じまたは異なる基、好ましくはHまたはメチルであり、
は、互いに独立して、任意選択によりエーテル官能基が割り込んでいる2〜16個の炭素原子を有するアルキル基、7〜18個の炭素原子を有するアルカリル基、6〜16個の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択される同じまたは異なる基、好ましくはエチルまたはフェニルである)
の同じまたは異なるポリエーテル基である。
【0031】
本化合物は、基本的に統計学の法則によって制御される分布を有する混合物の形態である。したがって、指数x、yおよびzに対する値は、平均値である。指数x、yおよびzにより特徴付けられる単位は、式IIの化合物中にランダム分布、ブロック様式で存在するかまたは任意のその他の望ましい順序で配列させることができる。
【0032】
本発明による乳化剤系においては、比較的親水性のポリエーテルを含むポリエーテルシロキサンを、化粧用および皮膚用製剤における乳化剤系の滑らかな絹のような皮膚感触に悪影響を与えることなく使用することが可能である。同時に、また一方で、上記分子は、特に良好なエマルジョン安定化を果たすことを特徴とする。
【0033】
したがって、本発明による乳化剤系は、高いEO画分を有するポリエーテルシロキサンを好ましくは含み、式IIによるそのポリエーテル成分については、以下が当てはまる:
x/(y+z)>1、好ましくは>2、特に好ましくは>3である。
【0034】
使用されるポリエーテルシロキサン中の未変性D単位の画分が、変性されたD’単位の画分より著しく大きい場合、乳化特性および皮膚感触に対して有利であり得る。
【0035】
したがって、本発明による乳化剤系は、比a/b(式Iから)>5、好ましくは>8、特に好ましくは>10であることを特徴とするポリエーテルシロキサンを好ましくは含む。
【0036】
比較的低いポリエーテル画分を有するポリエーテルシロキサンが使用される場合は、皮膚感触に対して特に有利であり得る。
【0037】
したがって、本発明による乳化剤系は、平均して少なくとも3個のポリエーテル基を含み、該分子に結合しているポリエーテル基Rの最大数が<a/5である一般式Iのポリエーテルシロキサンを好ましくは含む。
【0038】
本発明による乳化剤系において使用するためのポリエーテルシロキサンは、様々な方法で入手可能である。一般に、それらはアリル官能性ポリエーテルのSiH官能性シロキサンへのヒドロシリル化によって得られる。このタイプの化合物は、例えば、欧州特許第1754740号に記載されている。
【0039】
親のSiH官能性シロキサンは、様々なシロキサン基質の平衡化によって一般に得られる。平衡化方法は、例えば、参照が明確になされており、本出願の開示の一部である特許明細書欧州特許第1439200号およびDE102005001039に記載されている。工業的規模で、SiH基を持つ有機ポリシロキサンを合成するには、好ましくは、容易に入手可能なシロキサン化合物、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリ(メチル水素)シロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンまたはヘキサメチルジシロキサンなどを好適な触媒の存在下で反応させる。好適な触媒は、強酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸などである。そのプロセスにおいて対応する均衡生成物が形成される。SiH官能性は、使用される触媒によって、シロキサン主鎖上にランダムに存在するか、あるいはブロック様式であってもよい。個々のポリマー分子の官能性の程度も、分布に影響される。したがって、本発明との関連で使用されるシロキサンの指数a、b、cおよびdは、平均値である。指数a、b、cおよびdによって特徴付けられる単位は、式I化合物中にランダム分布、ブロック様式で存在するかまたは任意のその他の望ましい順序で配列させることができる。
【0040】
ヒドロシリル化反応のために使用する触媒は、特に、白金および白金化合物である。これに関連して、白金は、担体に固定された金属として金属形態、または任意選択により可溶性の白金錯体の形態のいずれかで使用される。今日まで、工業的に行われたヒドロシリル化反応の大部分は米国特許第3715334号および米国特許第3775452号から知られるいわゆるカールシュテット(Karstedt)触媒を使用して行われてきた。
【0041】
本発明によるポリエーテルシロキサンの合成は、溶媒無しで行うことができる。しかしながら、状況次第で溶媒の使用は有利であるか必要である。例えば、ポリエーテルは一般にシロキサンと不溶性であり、溶媒を使用することによってその反応の開始が遅れるのを避けることが可能である。
【0042】
ポリエーテルシロキサンを調製するための技術的反応手順は、複数の異なるポリエーテル基を含める場合には特に製品の特性に影響を及ぼし得る。本発明による製品は、特に、不連続的に操作される容器、半連続的に操作される容器、または連続的に操作される容器中のいずれかで調製することができる。ヒドロシリル化のための好適なプロセスは、例えば、書籍「Chemie und Technologie der Silicone[シリコーンの化学と技術]」、Verlag Chemie、1960年、43頁、およびドイツ特許第2646726号、米国特許第3775452号および欧州特許第1520870号に記載されており、それらに関しては特別に参照する。
【0043】
本発明によるポリエーテルシロキサンの調製に対しては、様々なポリエーテルを使用することが可能である。これらは一般にアルコキシドのモノまたはポリ官能性アルコールまたはアミンへの付加反応によって調製される。それらの良好な商業的入手性の理由で、特にアルコキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはスチレンオキシドが、ポリエーテルの合成に適している。
【0044】
例えば標的化した方法で生成物の親水性を調節するためにポリエーテルの調製に対して異なるモノマーを使用する場合、計量添加の順序および様々な反応条件の調節によって、ポリマー主鎖に沿ったモノマー単位の分布を、例えば、異なるモノマー単位がブロック様式で生じるか段階的なおよび/またはランダム分布で存在するように制御することが可能である。
【0045】
使用することができるポリエーテルは、グラフト重合の処理によってさらに変性されたポリエーテルでもある。このためには、ポリエーテルを二重結合を持つモノマーとフリーラジカル活性剤の存在下で反応させる。グラフトの程度および使用するモノマーの量と種類を調節することにより、ならびに/またはコポリマーを調製する方法によって、標的化した方法でポリエーテルの特性を改善することが可能である。好適なモノマーは、例えば、メチルメタクリレート、スチレンまたは無水マレイン酸である。
【0046】
これらの処理によって得られるポリシロキサンは、D<1.6の多分散性を有する分子量分布を一般的に有する。
【0047】
分子量分布の広がりは、最も簡単には、異なる平均分子量を有するシロキサンを一緒に混合することによって引き起こすことができる。
【0048】
したがって、本発明は、ポリシロキサンの多分散性が、異なる分子量を有する複数のポリシロキサンを混合することによって調節されている乳化剤系を提供する。
【0049】
加えて、分子量分布を広げることは、ポリシロキサンの標的化した架橋によっても可能である。例えば、これは、多官能性二重結合含有基質をヒドロシリル化の間にポリエーテル、例えば、ジアリルポリエーテルまたはジビニルシロキサンに添加することによって成し遂げることができる(米国特許出願公開第2006/0155090号)。
【0050】
したがって、本発明は、ポリシロキサンの分散指数が、ポリシロキサンの調製中にヒドロシリル化の過程で多官能性二重結合含有基質を使用することによって調節されている乳化剤系をさらに提供する。
【0051】
ポリエーテルシロキサンを多官能性の反応性基質、例えばイソシアネート(米国特許第7319120号)またはカルボン酸無水物などとポリエーテルの末端基を介して反応させることによって、分子量分布をさらに広げるための架橋がさらに可能である。
【0052】
したがって、本発明は、ポリエーテルシロキサンを多官能性の反応性基質とポリエーテルの末端基を介して反応させることによってポリシロキサンの多分散性が調節されている乳化剤系を提供する。
【0053】
分子量分布を広げるための様々な手段の組み合わせはもちろん可能である。
【0054】
本発明による乳化剤系の化粧品用途における使用のためには、これらが液体であり、室温でポンプ輸送できる場合に有利である。
【0055】
したがって、本発明による高粘度の乳化剤系を好適な液化剤を添加することによってポンプ輸送可能な流動可能な形態に転換することが有利である。一般的に、このタイプのポンプ輸送可能な系は、10,000mPas未満の粘度(25℃で10s−1のずり速度で)を有する。これらの液化剤を含有するポンプ輸送可能な乳化剤系は、好ましくは透明ないし半透明〜不透明である。
【0056】
使用することができる好適な液化剤は、通常すべてのタイプの化粧用皮膚軟化剤である。使用することができる化粧用皮膚軟化剤は、すべて化粧用オイル、特に、2〜44個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状かつモノおよび/またはジカルボン酸の、1〜22個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状の飽和または不飽和アルコールとのモノまたはジエステルである。2〜36個の炭素原子を有する脂肪族二官能性アルコールの1〜22個の炭素原子を有する単官能性脂肪族カルボン酸とのエステル化生成物も同様に好適である。長鎖アリール酸エステル、例えば、安息香酸のエステル、例えば、1〜22個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状かつ飽和または不飽和アルコールの安息香酸エステル、あるいは安息香酸イソステアリルまたは安息香酸オクタドデシルなども好適である。皮膚軟化剤およびオイル成分として好適なさらなるモノエステルは、例えば、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸のメチルエステルおよびイソプロピルエステル、例えば、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピルなどである。その他の好適なモノエステルは、例えば、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、パルミチン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシルおよび工業グレードの脂肪族アルコールカットと工業グレードの脂肪族カルボン酸混合物とから得られるエステル、例えば、動物および植物脂肪から入手できる12〜22個の炭素原子を有する不飽和脂肪アルコールと12〜22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸とのエステルである。しかしながら、同様に好適であるのは、例えば、ホホバ油中またはマッコウクジラ油中に存在するような天然に存在するモノエステルおよび/またはワックスエステル混合物である。好適なジカルボン酸エステルは、例えば、アジピン酸ジ−n−ブチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、コハク酸ジ(2−ヘキシルデシル)、アゼライン酸ジイソトリデシルである。好適なジオールエステルは、例えば、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジイソトリデカノエート、プロピレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、ブタンジオールジイソステアレート、ブタンジオールジカプリレート/カプレートおよびネオペンチルグリコールジカプリレートである。皮膚軟化剤として使用することができるさらなる脂肪酸エステルとしては、例えば、C12〜15アルキルベンゾエート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネートである。同様に使用することができる皮膚軟化剤およびオイル成分は、比較的長鎖のトリグリセリド、すなわち、その少なくとも1つが比較的長鎖である3つの酸分子によるグリセロールのトリプルエステルである。例として脂肪酸トリグリセリドを本明細書挙げることができ、そんなわけで、例えば、天然の植物油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、落花生油、ナタネ油、アーモンド油、ゴマ油、アボカド油、ヒマシ油、ココアバター、パーム油、さらにはココナツ油やパーム核油の液体画分、ならびに動物油、例えば、サメの肝油、タラの肝油、鯨油、牛脂およびバター脂など、ワックス、例えば、蜜蝋、カルナバパームワックス、鯨ロウ、ラノリンおよび牛脚油など、牛脂の液体画分、ならびにカプリル酸/カプリン酸混合物の合成トリグリセリド、工業グレードのオレイン酸のトリグリセリド、イソステアリン酸によるかまたはパルミチン酸/オレイン酸混合物のトリグリセリドもまた、皮膚軟化剤およびオイル成分として使用することが可能である。さらに炭化水素、特に液体のパラフィンおよびイソパラフィンも使用することができる。使用することができる炭化水素の例は、パラフィン油、イソヘキサデカン、ポリデセン、ワセリン、流動パラフィン(Paraffinum perliquidum)、スクワラン、セレシンである。さらに、直鎖状および分枝状の脂肪アルコール、例えばオレイルアルコールまたはオクチルドデカノールなど、および脂肪アルコールエーテル、例えばジカプリリルエーテルなども同様に使用することが可能である。好適なシリコーンオイルおよびシリコーンワックスは、例えば、ポリジメチルシロキサン、シクロメチルシロキサン、および、アリールまたはアルキルまたはアルコキシ置換ポリメチルシロキサンまたはシクロメチルシロキサンである。好適なさらなる油体は、例えば、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を有する脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール(Guerbet alcohols)、直鎖状C6〜C22脂肪酸の直鎖状C6〜C22脂肪アルコールとのエステル、分枝状C6〜C13カルボン酸の直鎖状C6〜C22脂肪アルコールとのエステル、直鎖状C6〜C22脂肪酸の分枝状C8〜C18アルコール、特に2−エチルヘキサノールまたはイソノナノールとのエステル、直鎖状および/または分枝状脂肪酸の多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6〜C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6〜C18脂肪酸に基づく液体モノ/ジ/トリグリセリド混合物、C6〜C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールの芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル、植物油、分枝状第一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖状C6〜C22脂肪アルコールカーボネート、ゲルベカーボネート、安息香酸の直鎖状および/または分枝状C6〜C22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv(商標)TN)、ジアルキルエーテル、エポキシ化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーンオイルおよび/または脂肪族もしくはナフテン炭化水素である。
【0057】
液化剤として使用する皮膚軟化剤は、好ましくは、2〜44個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状のモノおよび/またはジカルボン酸の1〜22個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状の飽和もしくは不飽和アルコールとのモノまたはジエステルである。比較的長鎖のトリグリセリド、すなわち、グリセロールの、少なくとも1つが比較的長鎖(炭素原子の数が12より大きい)である3つの酸分子とのトリプルエステルが、同様に好ましくは使用される。分枝および非分枝液体炭化水素ならびにまたシリコーンオイルを液化剤として使用することも同様に選択される。
【0058】
ハイドロトロープも液化剤として使用することができる。ハイドロトロープは、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールまたはポリオールである。本明細書好適なポリオールは、2〜15個の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有するものであり得る。典型的な例は、以下のものである:グリセロール、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコールおよび100から1000ダルトンまでの平均分子量を有するポリエチレングリコールなど、1.5から10までの自己縮合度を有する工業グレードのオリゴグリセロール混合物、例えば、40から50重量%までのジグリセロール含量を有する工業グレードのジグリセロール混合物など、メチロール化合物、例えば、特に、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなど、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール、低級アルキルグルコシド、特に、アルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するもの、例えば、メチルグルコシドおよびブチルグルコシドなど、5〜12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えば、ソリビトールまたはマンニトールなど、5〜12個の炭素原子を有する糖類、例えば、グルコースまたはスクロースなど、アミノ糖類、例えば、グルカミンなど。
液化剤として選択的に使用されるハイドロトロープは、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。
【0059】
本発明は、したがって、追加成分として液化剤を含む液体のポンプ輸送可能な乳化剤系をさらに提供する。
【0060】
これらの乳化剤系は、好ましくは透明ないし半透明〜不透明である。
【0061】
本発明による乳化剤系は、化粧用および医薬品水中油型エマルジョンの調製のための水中油型乳化剤として使用され、それらは、したがって、同様に、粒子および顔料のための、したがって分散液の調製のための分散助剤として使用することができる。
【0062】
分散すべき好適な粒子および顔料は、例えば、微分散金属酸化物および塩、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩(タルク)、硫酸バリウムおよびステアリン酸亜鉛などである。ここでの粒子は、100nm未満、例えば、5と50nmの間、特に15と30nmの間の平均直径を有さなければならない。それらは球形を有するものであり得るが、楕円形または何か他の方法で球形から外れる形を有するような粒子を使用することも可能である。粒子および顔料は、さらに、微粉化された有機顔料、例えば、200nm未満の粒径を有する2,2’−メチレンビス{6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール}などであり得る。さらに、特別の感覚効果をもたらす粒子および顔料を、例えば、ナイロン12、窒化ホウ素、ポリアクリレートもしくはポリメチルアクリレート粒子またはシリコーンエラストマーなどのポリマー粒子などの中に分散させることもできる。
【0063】
本発明による乳化剤系を含む化粧用および医薬品水中油型エマルジョンおよび分散液が、したがって同様に、本発明によって提供される。
【0064】
本発明による化粧用および医薬品エマルジョンおよび分散液は、全質量を基準として、乳化剤、界面活性剤および任意選択により共乳化剤の質量百分率の合計より多い質量パーセントのオイル成分を含む。
【0065】
本発明による乳化剤系は、化粧用繊維のためのO/W型含浸エマルジョンを製造するために好ましくは使用される。繊維は、好ましくはウェットワイプ、特に好ましくは化粧用ウェットワイプである。
【0066】
したがって、本発明による乳化剤系の助けによって得られる繊維用のO/W型エマルジョンが、同様に本発明によって提供される。
【0067】
本発明によるO/W型含浸エマルジョンが含浸された繊維が、同様に本発明によって提供される。
【0068】
これらは、良好な洗浄性能および心地よい柔らかくて滑らかな皮膚感触を特徴とする。
【0069】
本発明は、さらに、化粧用、皮膚用または医薬品製剤を製造するための本発明による乳化剤系の使用を提供する。したがって、少なくとも1つの本発明による乳化剤系または少なくとも1つの本発明によるエマルジョンまたは分散液を含む化粧用、皮膚用または医薬品製剤が、同様に本発明によって提供される。
化粧用、皮膚用または医薬品製剤およびケアおよび洗浄組成物は、例えば、
皮膚軟化剤、
乳化剤および界面活性剤、
増粘剤/粘性調節剤/安定剤、
UV光防護フィルター、
酸化防止剤、
ハイドロトロープ(またはポリオール)、
固形物および充填剤、
膜形成剤
真珠光沢の添加剤、
脱臭および発汗抑制活性成分、
防虫剤、
セルフタンニング(self-tanning)、
保存料、
調整剤、
香料、
染料、
化粧用活性成分
ケア添加剤、
過脂肪剤、
溶剤、
の群から選択される少なくとも1つの追加成分を含むことができる。
【0070】
個々の群の例示的な代表として使用することができる物質は、ドイツ国出願書類DE102008001788.4の中に見出すことができる。したがって、この特許出願は、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を形成する。
【0071】
1つの好ましい実施形態において、本発明による化粧用、皮膚用または医薬品製剤は、追加成分として、粒子または顔料、好ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩(タルク)、およびステアリン酸亜鉛、ナイロン12、窒化ホウ素、ポリアクリレートもしくはポリメチルアクリレート粒子またはシリコーンエラストマーの群から選択されるものを含む。
【0072】
同様に好ましい実施形態において、本発明による化粧用、皮膚用または医薬品製剤は、追加成分として、化粧用活性成分、好ましくは、トコフェロール、酢酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、アスコルビン酸、デオキシリボ核酸、コエンザイムQ10、レチノール、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、ヒアルロン酸、α−ヒドロキシ酸、ポリグルタミン酸、クレアチン(およびクレアチン誘導体)、グアニジン(およびグアニジン誘導体)、セラミド、フォトスフィンゴシン(およびフォトスフィンゴシン誘導体)、スフィンゴシン(およびスフィンゴシン誘導体)、擬似セラミド、スフィンゴリピド、エッセンシャルオイル、ペプチドおよびオリゴペプチド、タンパク質加水分解物、植物の抽出物ならびに複合ビタミンの群から選択されるものを含む。
【0073】
したがって、本発明による乳化剤系を含むエマルジョンおよび分散液の可能な適用形態は、スプレー、ローション、クリーム、軟膏であり、したがって、水のような薄さから濃密なペースト状、極端な場合は固体までの非常に幅広い稠度範囲にわたる使用が可能である。
【0074】
したがって、乳化剤系は、例えば、顔、体および手のためのケアクリームおよびローションにおいて、日焼け止めエマルジョンにおいて、メーキャップにおいて、例えば制汗剤/デオドラント剤(AP/deo)領域におけるエアロゾル、ロールオン、ポンプスプレー、スティックにおいて、ベビーケア製品において、インティメイトケア製品、フットケア製品、ヘアケア製品、ネイルケア製品、デンタルケア製品またはオーラルケア製品において、ならびに皮膚用軟膏において使用することができる。
【0075】
以下に示す実施例において、本発明を例として説明するが、本発明、全体の記述から発生する出願の範囲および特許請求の範囲を実施例に示される実施形態に限定することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例で使用されるポリエーテルシロキサンの調製についての一般スキーム1:
【0077】
【化1】

【0078】
乳化剤1:
スキーム1に従い、攪拌器、滴下漏斗、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコ中で、SiHシロキサン(ただし、R=R=H、a=200、b=5)の48g(SiHの25mmol)、第2のSiHシロキサン(ただし、R=CH、R=H、a=80、b=10)の17g(SiHの25mmol)、アリルポリエーテル(ただし、x=25、y=4、R=CH)の101g(65mmol)および100mlのトルエン中のカールシュテット触媒の10ppmを窒素下の95℃で反応させた。SiH値の測定により、2時間後にSiHシロキサンの完全な反応が得られた。揮発性成分を次に120℃の真空中で留去した。粘稠で透明な、実質的に無色の生成物を得た。
【0079】
乳化剤2:
スキーム1に従い、攪拌器、滴下漏斗、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコ中で、SiHシロキサン(ただし、R=H、R=Me、a=50、b=0)の18g(SiHの10mmol)、第2のSiHシロキサン(ただし、R=Me、R=H、a=80、b=10)の14g(SiHの20mmol)、第3のSiHシロキサン(ただし、R=Me、R=H、a=200、b=5)の63g(SiHの20mmol)、アリルポリエーテル(ただし、x=20、y=5、R=H)の90g(65mmol)および50mlのトルエン中のカールシュテット触媒の10ppmを窒素下の95℃で反応させた。SiH値の測定により、2時間後にSiHシロキサンの完全な反応が得られた。揮発性成分を次に120℃の真空中で留去した。粘稠で曇りのある、わずかに黄色の生成物を得て、保存後層分離する。エマルジョンの実験で使用する前に、その生成物を室温での単なる攪拌によって均一化した。
【0080】
乳化剤3:
「実施例3」の生成物を、スキーム1に従い、実施例1と同じようにして個別に調製した以下のポリエーテルシロキサンをトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中で混合することによって得た。
【0081】
最初のポリエーテルシロキサン(ただし、R=CH、R=PE、x=25、y=4、R=CH、a=45、b=5)の50gと2番目のポリエーテルシロキサン(ただし、R=R=PE、x=20、y=5、R=H、a=200、b=6)の32gとを、18gのトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中に溶解させた。
【0082】
乳化剤4:
「実施例4」の生成物を、スキーム1に従い、実施例1と同じようにして個別に調製した以下のポリエーテルシロキサンをトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中で混合することによって得た。
【0083】
最初のポリエーテルシロキサン(ただし、R=CH、R=PE、x=25、y=4、R=CH、a=75、b=5)の50gと2番目のポリエーテルシロキサン(ただし、R=R=PE、x=20、y=5、R=H、a=200、b=6)の32gとを、18gのトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中に溶解させた。
【0084】
乳化剤5:
「実施例5」の生成物を、スキーム1に従い、実施例1と同じようにして個別に調製した以下のポリエーテルシロキサンをトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中で混合することによって得た。
【0085】
最初のポリエーテルシロキサン(ただし、R=CH、R=PE、x=25、y=4、R=CH、a=45、b=5)の45gと、2番目のポリエーテルシロキサン(ただし、R=R=PE、x=20、y=5、R=H、a=200、b=6)の28gと、次の構造
[RMeSiO1/2[SiMe2/250[SiPhO3/2
【0086】
【化2】

を有するポリエーテルシロキサンの11gとを、16gのトリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリド中に溶解させる。
【0087】
乳化剤の例に対するGPCデータ:
【0088】
【表1】

【0089】
比較乳化剤1〜4(本発明によらない、従来技術による限界を定めるため):
比較乳化剤1〜3の構造は、一般式:
(CHSiO−[(CHSiO]−[(CH)RSiO]−Si(CH
に対応し、式中、R、RはCHであるかまたはポリエーテル(「PE」)の類:−(CH−O−(CO)−(CO)−Rであって、式中、Rは、HまたはCHである。
【0090】
【表2】

【0091】
比較乳化剤1〜2は、欧州特許第1125574号における実施例2〜3に対応する。
【0092】
比較乳化剤CE3は、くし型構造を有する典型的なシリコーンポリエーテルである。
【0093】
比較乳化剤CE4:
ABIL CARE 85(INCI:ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコーン;トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド;EVONIK Goldschmidt GmbH):
D=1.4、
10g/mol超の画分=58.4%
10g/mol超の画分=<0.1%。
【0094】
応用例:
応用例中のすべての濃度は、重量パーセントで示す。エマルジョンを調製するためには当業者には周知の通例の均質化処理を用いた。
【0095】
乳化力:
O/W型エマルジョンにおける乳化力を詳細に調べるために、非常に厳しい条件下(わずか0.5%の乳化剤)で、どの乳化剤系が優れた乳化活性を示す特徴を有するかを非常に速やかに示すクイック(quick)試験を用いた。
【0096】
通例の油および安定剤を用いることにより、特に50℃で24時間にわたる保存後の安定性は、乳化剤系が非常に良好な安定化特性を有するかどうかを非常にはっきりと示す。
【0097】
本発明による乳化剤系1〜5の結果が、比較乳化剤1〜4の結果と比較して表1にまとめられている。
【0098】
エマルジョンは、ここでは次の処理によって調製した:
相AおよびBを室温で混合し、相Cを攪拌せずに加える。その混合物を次に1分間均一にする。相DおよびEを加え、その混合物を1分間再び均一化する。
【0099】
エマルジョン実施例1〜5の結果は、本発明による乳化剤が比較乳化剤CE1〜4よりも大幅に高い安定化特性を有することを示している。
【0100】
【表3】

【0101】
比較例:
【0102】
【表4】

【0103】
皮膚感触およびエマルジョン安定性:
本発明による2つの乳化剤系1および2の皮膚感触および安定性を詳細に調査するために、これらを化粧用製剤中に2%の濃度で使用した(エマルジョン実施例6および7)。
【0104】
使用した比較例は、比較乳化剤1〜4である。(エマルジョン比較例C5〜C8)。対応するエマルジョンの皮膚感触は、いずれの場合も製剤に対して比較乳化剤1と比較した10人の回答者の中で評価した。
【0105】
その試験結果を表2に集約する。
【0106】
エマルジョン試料は、評価のために、室温、5℃、40℃および45℃で保存し、3カ月の貯蔵時間後に評価した。
【0107】
もとより45℃における貯蔵が特に厳しいため、表2中の安定性のデータは、45℃における観測に限定されている。
【0108】
これらの例の製剤において、本発明による乳化剤によってのみ安定でもありかつまた皮膚感触に関して有利でもある製剤を調製することが可能であることが明らかとなる。
【0109】
【表5】

【0110】
さらなるエマルジョン実施例:
これらの例は、本発明による乳化剤が多数の化粧用製剤において使用することができることを示すことを目的としている。
【0111】
さらに、本発明による乳化剤の助けにより、顔料または固形物をエマルジョン配合物中に安定的に組み込むことが可能である。
【0112】
さらに、実施例は、代表的な共乳化剤、油、増粘剤および安定剤との良好な相溶性を示す。
【0113】
O/W型エマルジョン実施例
【0114】
【表6】

【0115】
【表7】

【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
【表10】

【0119】
【表11】

【0120】
製法:室温で最初にAをB、次にCと混合し、攪拌しながらZを加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.6超の多分散性を有する高分子量の有機変性ポリシロキサンを含む、化粧用および医薬品水中油型エマルジョン用乳化剤系。
【請求項2】
1×10g/mol以上の分子量を有するポリシロキサンの割合が該ポリシロキサンの全体量に基づいて75%超であることを特徴とする、請求項1に記載の乳化剤系。
【請求項3】
1×10g/mol以上の分子量を有するポリシロキサンの割合が該ポリシロキサンの全体量に基づいて2%超であることを特徴とする、請求項1から2の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項4】
前記ポリシロキサンがポリエーテルシロキサンであることを特徴とする、請求項1から3の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、一般式I
2+c+2dD’ 式I
[式中、
Mは、(RSiO1/2)であり、
Dは、(RSiO2/2)であり、
D’は、(RSiO2/2)であり、
Tは、(RSiO3/2)であり、
Qは、(SiO4/2)であり、
aは、30〜800、好ましくは40〜500、特に50〜400であり、
bは、1〜15、好ましくは3〜10、特に4〜8であり、
cは、0〜2、好ましくは0〜1、特に0であり、
dは、0〜2、好ましくは0〜1、特に0であり、
は、RまたはRであり、
は、互いに独立して、任意選択によりOHまたはエステル基を有する同じまたは異なる1〜16個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の、任意選択により芳香族の炭化水素基、好ましくはメチルまたはフェニル、特にメチルであり、
は、互いに独立して、一般式II
−CH−CH−(CHO(EO)(PO)(XO) 式II
(式中、
EOは、(CO)であり、
POは、(CO)であり、
XOは、(CO)であり、
nは、1〜9、特に1であり、
xは、2〜50、特に10〜30であり、
yは、0〜50、特に2〜15であり、
zは、0〜10、特に0であり、
は、互いに独立して、H、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、またはカルボキシレート基を含む群から選択される同じまたは異なる基であり、
は、互いに独立して、任意選択によりエーテル官能基が割り込んでいる2〜16個の炭素原子を有するアルキル基、7〜18個の炭素原子を有するアルカリル基、6〜16個の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択される同じまたは異なる基、好ましくはエチルまたはフェニルである)
の同じまたは異なるポリエーテル基である]
のポリエーテルシロキサンであることを特徴とする、請求項1から4の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項6】
x/(y+z)>1であることを特徴とする、請求項5に記載の乳化剤系。
【請求項7】
比a/b>5であることを特徴とする、請求項5または6の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項8】
一般式Iの前記ポリエーテルシロキサンが、平均して少なくとも3個のポリエーテル基を含み、該分子に結合しているポリエーテル基Rの最大数がa/5より小であることを特徴とする、請求項5から7の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項9】
該ポリシロキサンの多分散性が、異なる分子量を有する複数のポリシロキサンを混合することによって調節されていることを特徴とする、請求項1から8の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項10】
該ポリエーテルシロキサンの多分散性が、該ポリエーテルシロキサンを多官能性の反応基質とポリエーテルの末端基により反応させることによって調節されていることを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項11】
前記ポリシロキサンの多分散性が、ポリシロキサンの調製中にヒドロシリル化の過程において多官能性の二重結合含有基質を使用することによって調節されていることを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一項に記載の乳化剤系。
【請求項12】
追加成分として液化剤を含むことを特徴とする、請求項1から11の少なくとも一項に記載の液体でポンプ輸送可能な乳化剤系。
【請求項13】
化粧用または医薬品水中油型エマルジョンまたは分散液を製造するための、請求項1から12の少なくとも一項に記載の乳化剤系の少なくとも1つの使用。
【請求項14】
請求項1から12の少なくとも一項に記載の乳化剤系の少なくとも1つを含む、化粧用または医薬品水中油型エマルジョンまたは分散液。
【請求項15】
請求項13に記載の使用によって得ることができる、化粧用繊維のためのO/W型含浸エマルジョン。
【請求項16】
化粧用、皮膚用または医薬品製剤を製造するための、請求項1から12の少なくとも一項に記載の乳化剤系の少なくとも1つ、または請求項14に記載の少なくとも1つの化粧用または医薬品水中油型エマルジョンまたは分散液、または請求項15に記載の含浸エマルジョンの使用。
【請求項17】
請求項16に記載の使用によって得ることができる、化粧用、皮膚用または医薬品製剤。
【請求項18】
追加成分として粒子または顔料を含む、請求項17に記載の化粧用、皮膚用または医薬品製剤。
【請求項19】
追加成分として化粧用活性成分を含む、請求項17に記載の化粧用、皮膚用または医薬品製剤。

【公開番号】特開2010−77127(P2010−77127A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−218373(P2009−218373)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】