説明

化粧用シート

【課題】皮膚への貼付が簡単であり貼付後はほとんど透明となりその上から化粧ができ傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠し、上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからない化粧用シートの提供。
【解決手段】ナノファイバー不織布からなる化粧用シート21であり、その化粧用シートに糊となる成分を配合した美容液をしみこませることでナノファイバー不織布のみを皮膚に貼付することが可能である。この化粧用シートを糊を含んだ美容液とともに皮膚に貼付後、化粧用シートの上から化粧を施すことにより、肌のシミ、シワ、傷などを隠蔽できることが可能となり、傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に自然な状態を持たせ、上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからない状態を作ることができる化粧用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用シートに関し、さらに詳しくは、ニキビ痕などによる皮膚上の凹凸、毛穴、シワ等の皮膚の凹凸やシミ、そばかす、あざなどの皮膚の濃色部分を隠すために用いる化粧用シートならびにこの化粧用シートを使用してニキビ痕などによる皮膚上の凹凸、毛穴、シワ等の皮膚の凹凸やシミ、そばかす、あざなどの皮膚の濃色部分を隠す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年肌の傷やシミ、シワを改善あるいは隠蔽するための方法がたくさん開発され、特に化粧品においては、傷の隠蔽やシミ、シワを目立たせなくするための化粧品やパック剤がたくさん市販されている。
【0003】
特許第3944526号公報によれば皮膚への刺激性がより少なく、かつ皮膚への装着製が高い化粧料含浸用皮膚被覆シートとして親水性繊維層と極細繊維層の2種類の太さと性質の異なる繊維からなる皮膚被覆シートがあり、極細繊維層を皮膚に当てることで皮膚表面の刺激を抑え、また極細繊維層を疎水性とすることで繊維自体が化粧料を吸収しないことから皮膚表面との間に滑らかな層を作りやすいという。さらに極細繊維と親水性繊維の割合はほぼ50:50で目付けは、極細繊維が15g/平方メートル〜50g/平方メートルである。またこのシートは水平方向と垂直方向で伸張性が異なることから肌へ装着する場合も目、鼻、口などの凹凸があっても、部分的に伸張することで顔への装着性が優れるという。しかしこの化粧料含浸用皮膚被覆シートは化粧料を皮膚に浸透させることを目的としているためニキビ痕などによる皮膚上の凹凸、毛穴、シワ等の皮膚の凹凸やシミ、そばかす、あざなどの皮膚の濃色部分を隠すことはできない。
【0004】
特許第4632333公報によれば深いシワや傷を目立たないように隠蔽できるシートとして5層の構成からなるシートがある。構成としては、水性液浸透性ベース基材の上に水溶性の糊層があり、その上に肌色インキで着色あるいは光反射インキを塗布した層、さらに透明の肌に接着するための層があり、この上を保護フィルムが覆っている。使用時は保護フィルムをはがし、透明接着層の接着剤で皮膚に貼付し、最外層の水性液浸透性ベース基材の表面を水でぬらし基材のみをはがすことで3層を残して皮膚に貼付する。これらはすべてシルクスクリーン印刷という手法で作成されたものである。しかしこの方法ではあらかじめ皮膚の色が決められていて、使用されている糊が強力であるため貼付の際位置決めが難しく、かつ上から化粧を施すとその部分の化粧が厚くなりかえってその部分が目立ってしまうという課題がある。
【0005】
特開2007−70347号公報によれば繊維径が1〜500ナノメートルの熱可塑性樹脂のナノファイバーとこれより大きな繊維の2層以上の不織布からなる皮膚貼付用不織布に化粧水または美容液を含浸させたフェイスパックがあり、ナノファイバー層を皮膚に貼付することで長時間の貼付が可能となり、美容液の効果も長時間持続が可能であるという。しかしナノファイバー単独では皮膚表面の細かい溝に繊維が入り込んで皮膚の密着性が大幅に向上することや繊維間にナノオーダーの空隙を持つようになり、美容液や化粧水などの吸液性および保液性が向上することはわかっているがナノファイバー単独では強度が弱く肌に貼付し、貼付した上から化粧を施すことが難しいという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3944526号公報
【特許文献2】特許第4632333号公報
【特許文献3】特開2007−70347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に化粧品に使用される不織布や紙などのシートの厚みは50〜100ミクロンと厚く、皮膚に貼付したまま、日常活動の掃除や洗濯または仕事をすることは不可能であり、さらに接着層の接着力が強く貼る位置の微調整や、貼りなおしができないこと。あらかじめ肌色のインキで着色されているため肌の色とあわなかったりして個人の肌の色やシミ、シワの深さなどの要望には十分対応できるとはいえない。
【0008】
これらの問題を解決するためには皮膚に貼付して傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に目立たず、上から化粧を施してもシートを貼っていることがわからないことが必要で、使用する化粧用シートはきわめて薄いものが良く、なおかつ上から化粧が施せるだけの強度が必要となる。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので従来ナノファイバー単独では強度が弱く皮膚に貼付し、貼付した上からメイクアップを施すことが不可能であるといわれていたことを、ナノファイバー素材を選択し、その繊維径を選択し、厚みを選択し、糊を含有させた美容液を使用し、皮膚に貼付して傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に目立たず、上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからない化粧用シートおよびそれを使用した美容方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明はナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させた化粧用シートに係る。
【0011】
請求項2の発明は前記ナノファイバー不織布の繊維径が10〜800ナノメートル、目付けは0.1〜0.8g/平方メートルであり、厚みが2〜15ミクロンである化粧用シートに係る。
【0012】
請求項3の発明はナノファイバー不織布がウレタン、ナイロン、キトサンのいずれかの繊維からなる化粧用シートに係る。
【0013】
請求項4の発明は美容液に含有する糊が水溶性高分子で、その濃度は0.1〜5重量%である化粧用シートに係る。
【0014】
請求項5の発明は美容液に含有する糊が蛋白質であり、その濃度は0.1〜5重量%である化粧用シートに係る。
【0015】
請求項6の発明はナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させた化粧用シートを皮膚に貼付後、さらに前記化粧用シートの上から化粧を施すことを特徴とする化粧方法に係る。
【0016】
請求項7の発明はナノファイバー不織布は繊維径が100〜500ナノメートルであるとともに坪量が0.2〜0.4g/平方メートル、厚みが5〜10ミクロンである化粧用シートを用いた化粧方法に係る。
【0017】
請求項8の発明はナノファイバー不織布がウレタン、ナイロン、キトサンのいずれかの繊維からなる化粧用シートを用いた化粧方法に係る。
【0018】
請求項9の発明は美容液に含有する糊は水溶性高分子で、その濃度は0.1〜5重量%である化粧用シートを用いた化粧方法に係る。
【0019】
請求項10の発明は美容液に含有する糊は蛋白質であり、その濃度は0.1〜5重量%である化粧用シートを用いた化粧方法に係る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させた化粧用シートを使用すると、ニキビ痕などによる皮膚上の凹凸、毛穴、シワ等の皮膚の凹凸や、シミ、そばかす、あざ等の皮膚の濃色部分を隠す事が可能である。
上記発明の化粧用シートを使用し皮膚に貼付するとその上から化粧を施す事ができ、化粧を施す事によって皮膚のシミ、シワ、傷等を隠す事が可能となる。又、化粧用シートもほとんど目立つ事が無い為、自然な化粧となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の化粧シートの一形態を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の化粧シートの一形態を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の化粧シートの一形態を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の化粧シートの一形態を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の化粧シートの一形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の化粧シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の化粧シートの一実施形態の一部を示し、貼付する前の状態を示す写真である。
【図8】本発明の化粧シートの一実施形態の一部を示し、貼付した状態を示す写真である。
【図9】本発明の化粧シートの一実施形態の一部を示し、貼付した経過の状態を示す写真である。
【図10】本発明の化粧シートの一実施形態の一部を示し、化粧用シートの上から化粧を施したところを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の化粧用シートはナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させており、ナノファイバー不織布はキトサン、ウレタン、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、バイオポリマーとしてはシルクフィブロイン、などの繊維が好ましくさらに好ましくはウレタン、ナイロン、キトサンである。ウレタン、ナイロン、キトサンの素材は電界紡糸法でのナノファイバーの製造が容易で、太さ、目付けのコントロールも容易である。
【0023】
前記ウレタン、ナイロン、キトサンのナノファイバー不織布は美容液が良くなじみ皮膚への貼付が簡単である。ナノファイバー不織布は糊を含んだ美容液が水性であることから貼った後の位置決めや貼り直し可能であり、さらに貼付後はほとんど透明となりその上から化粧を施すことができる強度があり、上から化粧を施すことで、シミ、そばかす、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に目立たず、上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからない状態を作ることができる。
【0024】
ナノファイバー不織布は繊維径が1ミクロン以下の不織布の総称であり、従来の不織布に比べ皮膚への貼付が簡単で皮膚になじみやすく、皮膚の凹凸や毛穴などの部分にも追随性が高い皮膚貼付用のシートが得られる。ナノファイバー不織布の目付量は1平方メートル当たり通常0.1〜10gである。厚みは目付量に依存し、目付量0.1〜10gでは5〜80ミクロンの厚さとなる。
【0025】
前記ナノファイバー不織布の繊維径、目付量、厚さは特に限定されないが、ナノファイバー不織布の繊維径が10ナノメートル未満では目付量が増大し、ナノファイバー不織布が硬くなり皮膚への貼付が難しくなる傾向がある。また、ナノファイバー不織布の繊維径が800ナノメートルを超えると、同じくナノファイバー不織布が硬くなり皮膚への貼付が難しくなる傾向がある。これらのことから、ナノファイバー不織布の繊維径は10〜800ナノメートルが好ましい。この場合、皮膚への貼付性の観点から目付量は1平方メートルあたり0.1〜0.8gが好ましい。0.1g未満では不織布としての強度に乏しく皮膚への貼付が不完全となり、0.8gを超えるとナノファイバー不織布の弾力性が損なわれ皮膚への貼付が難しくなる傾向にある。その目付量によりナノファイバー不織布の厚みは2〜15ミクロンとなる。この、ナノファイバー不織布の繊維径が10〜800ナノメートルで規定されるナノファイバー不織布を用いることにより皮膚表面の細かい溝に繊維が入り込み肌への密着性が向上する。また繊維間にナノオーダーの空隙を持つようになり、糊を含んだ美容液のファイバーへの浸透性が高まるため皮膚への貼付が確実となり、貼付後上から化粧を施すことができるようになる。
【0026】
また、前記ナノファイバー不織布の繊維径を100〜500ナノメートルとすることにより、さらに皮膚表面の細かい溝に繊維が入り込み肌への密着性が向上する。また、目付量を0.2〜0.4gとすることにより、ナノファイバー不織布繊維間にナノオーダーの空隙がさらにでき、糊を含んだ美容液のファイバーへの浸透性が高まり皮膚への貼付が確実となる。この場合、ナノファイバー不織布の厚さは5〜10ミクロンとなり、貼付後に化粧を施してもナノファイバー不織布が殆ど目立たなくなるという効果がある。
【0027】
糊を含んだ美容液は一般的に市販されている化粧水に水溶性高分子又は蛋白質を溶解したものである。化粧水に水溶性高分子または蛋白質を糊として溶解しナノファイバー不織布を肌に貼付すると化粧水に含まれる美容成分による美容効果が得られると同時にナノファイバー不織布によって美容液が長時間にわたり保持されるため、美容効果を持続させることができる。
【0028】
美容液について記す。美容液の主体は皮膚の保湿成分を水に溶解して調製する。使用する保湿成分としてはパンテノール:ビタミンB群の一つで、皮膚に対しては肌荒れ、小じわ、日焼け防止作用があるといわれている。アロエベラ果汁:アロエベラの果肉からアロインという成分を取り除いた保湿用成分である。ブチレングリコール:水分を吸収する性質があり乾燥から皮膚を保護する目的で配合。キサンタンガム:皮膚表面に保護膜を作り皮膚に張りを与える。アラントイン:消炎効果、細胞活性化作用がある。ポリカルボン酸ナトリウム:配合の安定化を図る。ヒアルロン酸:多量の水分を含むことができる性質を持っているため、それを応用して、強力で効果的な保湿成分として活用されている。以上を化粧品の使用前例に基づき配合して水に溶解し最後に防腐剤であるフェノキシエタノールを添加する。
【0029】
この美容液の処方例を基本美容液として表1に示すが本発明を実施するうえでの美容液はこれに限定されるものではなく、美容液成分と糊とが反応して変性したり、沈殿したり、糊としての性質が失われることがなければ美容液としての制限はない。
【0030】
表1に美容液の処方を示す。本発明における美容液はこの処方を使用した。
【表1】

【0031】
糊は高分子化合物としてはシリコン、ウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、天然物では天草由来の麩糊、トウモロコシデンプン、米などがあり、蛋白質としてコラーゲンやアルブミンなどが知られている。このうち化粧品としてはその使用前例から安全性が担保されたポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルブミンが好ましい。
【0032】
糊として溶解される水溶性高分子および蛋白質は、美容液への溶解性が高く、溶解後、沈殿を生じたりしないことが好ましい。
【0033】
糊を含む美容液の糊について検討した。糊としては水溶性高分子からポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを選定し蛋白質からアルブミンを選定し、表1の美容液に対する水溶性高分子ならびにアルブミンの溶解性を検討した。
【0034】
糊としてポリビニルピロリドン(以下PVPと記す)、ポリビニルアルコール(以下PVAと記す)アルブミン(以下ALBと記す)は、それぞれ糊の成分として単独で0.1〜5.0重量%まで含有するよう調製し、溶解性と性状について検討した。評価の結果については◎:澄明に溶解し冷蔵庫で保存しても沈殿などを生じない。○:澄明に溶解するが冷蔵庫で保管するとわずかに沈殿と濁りを生じる×:溶解性が悪く不溶物が残る、の3段階で評価しその結果を表2に示す。
【表2】

【0035】
この結果からPVAについては0.1〜3.0重量%まで溶解したが沈殿などを生じない濃度は0.1〜1.0重量%であった。PVPについては0.1〜5.0重量%まで澄明に溶解し冷蔵庫での保管でも沈殿や濁りを生じることはなかった。ALBについては0.1〜4.0重量%まで溶解できたが沈殿などを生じない濃度は0.1〜2.0重量%であった。
【0036】
次に人の皮膚に対するナノファイバー不織布の貼付性について検討した。ナノファイバー不織布の素材はウレタン、ナイロン、キトサンの3種類を使用した。
【0037】
人の皮膚へのナノファイバー不織布の貼付性を確認するため、成人男女の前腕部内側を貼付部位とし、事前に汚れや汗などを落とすため、ぬるま湯で肌の表面を洗い、タオルでふきあげて、水気を取っておいた。このようにした人の前腕の内側に直径1センチメートルに打ち抜いた前記化粧用シートを用意し前記糊を0.1−5%、ただしPVAは3%まで、ALBは4%まで含有した美容液0.2mlを使用直前に含浸させ、ナノファイバー不織布を皮膚に貼付した。
【0038】
前腕の内側には約2cmの間隔で1列当たり10個、1本の前腕の内側に20個のナノファイバー不織布を貼付し、貼付後18時間まで貼付したまま観察し、ナノファイバー不織布の脱落、収縮、貼付部位の発赤やかゆみなどの皮膚の変化、18時間後貼付部位からナノファイバー不織布をぬるま湯で洗い落とし、貼付部位に発赤やかゆみなどが生じてないかについて検討した。評価は◎:18時間以上貼付が可能で貼付後の皮膚に変化無し、○:18時間の貼付ができなかった、×:貼付部位に発赤やかゆみが見られた、―:試験せずの4段階で評価しその結果を表3〜11に記す。
【0039】
糊をPVAとしたときの各ナノファイバー不織布の貼付性について表3〜5に示す。
【表3】

【表4】

【表5】

以上の結果から糊の成分をPVAとした場合、3種類のナノファイバー不織布を人の皮膚に18時簡以上貼付しても脱落や収縮がなく、貼付部位に発赤やかゆみが生じなかった濃度はウレタンのナノファイバー不織布では1.0〜20.重量%、ナイロンのナノファイバー不織布では0.5〜2.0重量%、キトサンのナノファイバー不織布では0.1〜2.0重量%であった。
【0040】
糊をPVPとしたときの各ナノファイバー不織布の貼付性について表6〜8に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

【0041】
以上の結果から糊の成分をPVPとした場合、3種類のナノファイバー不織布を人の皮膚に18時簡以上貼付しても脱落や収縮がなく、貼付部位に発赤やかゆみが生じなかった濃度はウレタンのナノファイバー不織布は0.5〜30.重量%、ナイロンのナノファイバー不織布は0.3〜4.0重量%、キトサンのナノファイバー不織布は0.3〜4.0重量%であった。
【0042】
糊をALBとしたときの各ナノファイバー不織布の貼付性について表9〜11に示す。
【表9】

【表10】

【表11】

以上の結果から糊の成分をALBとした場合、3種類のナノファイバー不織布を人の皮膚に18時簡以上貼付しても脱落や収縮がなく、貼付部位に発赤やかゆみが生じなかった濃度はウレタンのナノファイバー不織布は0.3〜0.5重量%、ただしウレタンナノファイバー不織布の目付けは1平方メートル当たり0.3g以下ナイロンのナノファイバー不織布は0.5〜1.0重量%、キトサンのナノファイバー不織布は0.1〜1.0重量%であった。
【0043】
以上の結果を総合すると3種類のナノファイバー不織布を皮膚に貼付するための美容液に糊として使用する成分としては0.3〜2.0重量%のPVPがもっとも好ましく次に0.5〜1.0重量%のPVAで次が0.3〜0.5重量%のALBであった。
【0044】
上記で検討した糊を含んだ美容液を調製しナノファイバー不織布の素材と目付けから化粧用シートして必要とされる機能を満足できる組み合わせを検討した。化粧用シートの機能としては1:皮膚に化粧用シートを貼付し貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施すことができること。2:化粧用シートを貼付すると皮膚にある傷、シミ、シワなどの皮膚の欠点を隠しながら同時に見た目に目立たず、化粧用シートの上から化粧を施しても化粧用シートを貼っていることがわからない状態となることとした。検討の対象とするのはウレタン、ナイロン、キトサンの3種類の素材のナノファイバー不織布で、目付けを0.2、0.3、0.4g/平方メートルの3種類とし、糊の成分と濃度は、18時間以上皮膚に貼付が可能で、貼付後皮膚に変化をきたさないもので、化粧用シートを皮膚に貼付したあと、その上から化粧を施し、50cmの距離で観察することで選定した。評価は○:上から化粧ができて、シミ、シワを隠し化粧用シートも目立たない。×:化粧はできてシミ、シワを隠すが化粧用シートが目立つの○×評価で行った。
【0045】
ナノファイバー不織布と糊を含む美容液の組み合わせを用いた実施例を下記に示す。実施にあたりナノファイバー不織布を製造する方法としては、たとえば以下のような方法を採用することができる。図5に示すようにナノファイバー不織布21はきわめて薄いため基材22の上に作ることが取り扱い上便利である。ただしこの基材22はナノファイバー不織布21を皮膚へ貼付した後は、ナノファイバー不織布21のみを皮膚上に残しながら、ナノファイバー不織布21から簡単に剥離できることが必要である。そこで基材22としては通常ポリプロピレンやポリエチレンといった不織布が用いられる。
【0046】
また図5に示すようにナノファイバー不織布21を取り扱う上では基材22の上に作られたナノファイバー不織布21を保護することが必要で、かかる目的でナノファイバー不織布21を基材22の不織布とサンドイッチするように保護シート20をかぶせ、3層シートとすると、ナノファイバー不織布21に傷をつけることなく取り扱いが便利になる。この保護シート20も通常ポリプロピレンやポリエチレンといった不織布が用いられる。
【0047】
以上のようにナノファイバー不織布21は上下に保護シート20と基材22の2つの不織布に挟まれて製造され、図1〜4に模式的に示されるような形状に加工され、図6の断面図に示されるような容器32に入れて蓋31をかぶせて密封され、使用直前までこの状態が維持されるのが好ましい。さらに糊を含んだ美容液を含浸させてから容器32に入れて蓋31で密封してもよい。そこで糊を含んだ美容液の使用量を決めるため基材22にナノファイバー不織布21、保護シート20の3層シートに糊を含んだ美容液を含浸させるのに必要十分量な美容液の量を検討したところ、糊を含んだ美容液は3層シート1平方センチメートルあたり0.2ml以上あればよいことがわかり、3層シートに糊を含んだ美容液を含浸させる場合は3層シート1平方センチメートルあたり糊を含んだ美容液0.2mlを含浸させた。さらにこの状態でナノファイバー不織布のみを取り出しその重量から1平方センチメートルあたりの美容液の量を測定したところ0.02mlであった。以上を踏まえた上で1平方メートルあたりの目付けが0.2g、0.3g、0.4gのウレタン、ナイロン、キトサンのナノファイバー不織布と糊の濃度との検討結果を表12〜20に示す。表の縦は目付け、横に糊の濃度で記載した。以下表12〜20において同じである。又、美容液を含浸させていないナノファイバー不織布を単にナノファイバー不織布、美容液を含浸させたナノファイバー不織布を化粧用シートと記載する。なお、化粧用シートの態様としては基材、ナノファイバー不織布、保護シートの3層、あるいは基材、ナノファイバー不織布の2層からなる場合もあり得る。
【0048】
[実施例1]
ウレタン製ナノファイバー不織布を化粧用シートとした実施例を示す。ウレタン製ナノファイバー不織布を紡糸するために基材用の不織布として東洋紡株式会社製スパンボンドを使用しその上にダウケミカル社製ペレタンをDMFに溶解し、電解紡糸法によりナノファイバー不織布を紡糸した。繊維径は紡糸用ノズルと剥離用不織布までの距離、ノズルからのナノファイバー原料の吐出量と電圧によって100〜500ナノメートルになるよう調節して紡糸し、紡糸されたウレタン製ナノファイバー不織布面に保護シートとして同じ不織布である東洋紡株式会社製スパンボンドを使用してナノファイバー不織布を保護しながらロールに巻き取り化粧用シートの原反とした。この原反をトムソン刃のついたプレス機で一定の形状に打ち抜き、糊を含む美容液を含浸させて化粧用シートとした。美容液に配合された糊の違いによる人の皮膚への貼付性と上から化粧を施した状態を観察した結果を表12〜14に示す。
【表12】

【表13】

【表14】

【0049】
[実施例2]
ナイロン製ナノファイバー不織布を化粧シートとした実施例を示す。ナイロン製ナノファイバー不織布を紡糸するために基材用の不織布として東洋紡株式会社製スパンボンドを使用しその上に日本ゼオン株式会社のナイロン6の粉末をギ酸に溶解し、電解紡糸法によりナノファイバーを紡糸した。繊維径は紡糸用ノズルと基材用不織布までの距離、ノズルからのナノファイバー原料の吐出量と電圧によって100〜500ナノメートルになるよう調節して紡糸し、紡糸されたナイロン製ナノファイバー不織布面に保護シートとして同じ不織布である東洋紡株式会社製スパンボンドを使用してナノファイバー不織布を保護しながら巻き取り化粧用シートの原反とした。この原反をトムソン刃をつけたプレス機で一定の形状に打ち抜き、糊を含む美容液を含浸させて化粧用シートとした。美容液に配合された糊の違いによる人の皮膚への貼付性と上から化粧を施した状態を観察した結果を表15〜17に示す。
【表15】

【表16】

【表17】

【0050】
[実施例3]
キトサン製ナノファイバー不織布を化粧シートとした実施例を示す。キトサン製ナノファイバー不織布を紡糸するために基材用の不織布として東洋紡株式会社製スパンボンドを使用しその上に甲陽ケミカル株式会社キトサン粉末を水に溶解し、電解紡糸法によりナノファイバー不織布を紡糸した。繊維径は紡糸用ノズルと剥離用不織布までの距離、ノズルからのナノファイバー原料の吐出量と電圧によって100〜500ナノメートルになるよう調節して紡糸し、紡糸されたキトサン製ナノファイバー不織布面に保護シートとして同じ不織布である東洋紡株式会社製スパンボンドで被覆してナノファイバー不織布を保護しながらロールに巻き取り、化粧用シートの原反とした。この原反をトムソン刃のついたプレス機で一定の形状に打ち抜き、糊を含む美容液を含浸させて化粧用シートとした。美容液に配合された糊の違いによる人の皮膚への貼付性と上から化粧を施した状態を観察した結果を表18〜20に示す。
【表18】

【表19】

【表20】

【0051】
以上の結果よりナノファイバー不織布の素材はウレタン、ナイロン、キトサンで1平方メートルあたりの目付けが0.2gまたは0.3g、美容液に含まれる糊の濃度はPVAとPVPは0.3〜2.0重量%が好ましく、ALBにおいては0.3〜1.0重量%が好ましいことがわかった。
【0052】
次に、本発明の化粧方法について説明する。図7は人の顔の貼付部位を示し、化粧用シートを貼付する準備として洗顔し汚れや化粧品などを洗い落としておくことが好ましい。
【0053】
図5に示したように3層シートに糊を含む美容液をあらかじめ含浸させたものを図6の容器32から取りだし、3層シートから保護シート20を取り除く。図8に示すように貼付部位に基材用不織布22をつけたまま、化粧用シート(ナノファイバー不織布)21を皮膚に貼付する。またナノファイバー不織布に糊を含有する美容液を含浸させる方法としてはあらかじめ貼付部位の皮膚に糊を含有した美容液を薄く塗布し、貼付部位の皮膚上で含浸させても良い。貼付後、化粧用シートの位置の微調整を行い基材用不織布を化粧用シートから指で注意深く取り除くか、図8に示したように基材用不織布の上から別の粘着テープなどを貼り付けて、基材用不織布を取り除くと図9に示すように化粧用シートのみが皮膚に残る。こうして皮膚に化粧用シートを貼ることができる。図10は化粧用シートの上から化粧を施した状態であり、皮膚のシミやシワなどを隠しながら化粧用シートを貼っていることがわからない状態を作ることができる。
【0054】
これより本発明の化粧方法を実施した使用例を説明する。
本発明による化粧用シートを作成し人の顔に貼付した。化粧用シートは基材用不織布、ナノファイバー不織布、保護用不織布の3層になった3層シートを使用した。ナノファイバー不織布の素材はウレタンで、繊維径が100〜500ナノメートルで目付けが1平方メートルあたり0.2gのものを使用した。糊を含んだ美容液の3層シートへの含浸量は1平方センチメートル当たり0.2ml、糊としてPVP0.5%を美容液に配合した。貼付は40代女性の右目の周囲にあるシミ、シワを対象とし、貼付前に貼付部位から50cmの距離でシミ、シワを観察し、写真撮影後、3層シートから保護シートを指で取り除き、シミ、シワの上から化粧用シートをシミ、シワの全体を覆うように貼付した。位置を決め、3層シートの基材用不織布をピンセットを用いてゆっくりと剥がし取り除いた。貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施したところ、シミ、シワなどは見た目に目立たず、化粧用シートを貼っていることはほとんどわからなかった。
【0055】
次に本発明の化粧方法を実施した別の使用例を説明する。
本発明による化粧用シートを作成し成人男性の顔に貼付した。化粧用シートは基材用不織布、ナノファイバー不織布、保護シートの3層シートを使用した。ナノファイバー不織布の素材はナイロンで、目付けが1平方メートルあたり0.2gのものを使用した。美容液含浸料は3層シート1平方センチメートル当たり0.2ml糊として、PVP0.5%を美容液に配合した。貼付は50代男性の左目の横にある直径5mm程度のシミとその付近のシワと2mm程度の長さの傷を対象とし、貼付前に貼付部位から50cmの距離でシミ、シワ、傷を観察し、写真撮影後、3層シートから保護シートを指で取り除き、シミ、シワの上から全体を覆うようにナノファイバー不織布面を皮膚に貼付した。位置を決め、3層シートの基材用不織布に小さくカットした粘着シートを貼り、ゆっくりと剥がして取り除いた。貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施したところ、シミ、シワなどは見た目にはほとんど目立たず、化粧用シートを貼っていることはほとんどわからなかった。
【0056】
また次に本発明の化粧方法を実施した別の使用例を説明する。化粧用シートを作成し成人男性の顔に貼付した。化粧用シートは基材用不織布、ナノファイバー不織布、保護シートの3層シートを使用した。ナノファイバー不織布の素材はキトサンで、目付けが1平方メートルあたり0.3gのものを使用した。美容液含浸料は3層シート1平方センチメートル当たり0.2ml糊としてALB2.0%を美容液に配合した。貼付は50代男性の左ほほの横にある直径8mm程度のシミとその付近のシワと3mm程度の長さの傷を対象とし、貼付前に貼付部位から50cmの距離でシミ、シワ、傷を観察し、写真撮影後、3層シートの保護シートを指で取り除き、シミ、シワの上からナノファイバー不織布面を皮膚に貼付した。位置を決め、3層シートの基材用不織布をピンセットで剥がし取り除いた。貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施したところ、シミ、シワなどは見た目にはほとんど目立たず、化粧用シートを貼っていることはほとんどわからなかった。
【0057】
また次に本発明の化粧方法を実施した別の使用例を説明する。化粧用シートを作成し40代女性の顔に貼付した。化粧用シートは基材用不織布、ナノファイバー不織布、保護シートの3層シートを使用した。ナノファイバー不織布の素材はナイロンで目付けが1平方メートルあたり0.3gのものを使用した。美容液含浸料は3層シート1平方センチメートル当たり0.2ml糊としてPVP2.0%を美容液に配合した。貼付は女性の右目の横にある直径2mm程度のシミ数十個とその付近のシワを対象とし、貼付前に貼付部位から50cmの距離でシミ、シワを観察し、写真撮影後、3層シートから指で保護シートを取り除き、シミ、シワの上から貼付ナノファイバー不織布面を皮膚に貼付した。位置を決め、3層シートの基材用不織布を別に用意した粘着テープを貼りつけ持ち上げるようにゆっくりと剥がして取り除いた。貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施したところ、シミ、シワなどは見た目にはほとんど目立たず、化粧用シートを貼っていることはほとんどわからなかった。
【0058】
また次に本発明の化粧方法を実施した別の使用例を説明する。化粧用シートを作成し30代女性の顔に貼付した。化粧用シートは基材用不織布、ナノファイバー不織布、保護シートの3層シートを使用した。ナノファイバー不織布の素材はナイロンで目付けが1平方メートルあたり0.4gのものを使用した。美容液含浸料は3層シート1平方センチメートル当たり0.2ml糊としてPVA0.5%を美容液に配合した。貼付は女性の右ほほにある直径1mm程度のシミ5〜6個とその付近のシワとニキビ痕を対象とし、貼付前に貼付部位から50cmの距離でシミ、シワ、ニキビ痕を観察し、写真撮影後、3層シートから保護シートを指で取り除き、シミ、シワ、ニキビ痕の上から全体を覆うようにナノファイバー不織布面を皮膚に貼付した。位置を決め、3層シートの基材用不織布をピンセットで剥がすように慎重に取り除いた。貼付後の化粧用シートはほとんど透明となりその上から化粧を施したところ、シミ、シワなどは見た目にはほとんど目立たず、化粧用シートを貼っていることはほとんどわからなかった。
【0059】
なお、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更し、また上述の実施例を適宜組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の化粧用シートはナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させてあり、皮膚表面の凹凸やシミ、シワなどに簡単に貼付でき、その上から化粧を施すことによって皮膚表面の凹凸、シミ、シワなどを隠すことが用意であることからフェイスマスクやニキビ痕などを隠す化粧品として用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
20 保護シート
21 化粧用シート(ナノファイバー不織布)
22 基材用不織布
30 3層シート
31 容器の蓋
32 容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させた化粧用シート。
【請求項2】
前記ナノファイバー不織布は繊維径が100〜500ナノメートル、目付けは0.2〜0.4g/平方メートルであり、厚みが5〜10ミクロン、であることを特徴とする請求項1記載の化粧用シート。
【請求項3】
前記ナノファイバー不織布がウレタン、ナイロン、キトサンのいずれかの繊維からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用シート。
【請求項4】
前記糊は水溶性高分子で、その濃度は0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧用シート。
【請求項5】
前記糊は蛋白質であり、その濃度は0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧用シート。
【請求項6】
ナノファイバー不織布に糊を含む美容液を含浸させた化粧用シートを皮膚に貼付後、さらに前記化粧用シートの上から化粧を施すことを特徴とする化粧方法。
【請求項7】
前記ナノファイバー不織布は繊維径が100〜500ナノメートルであるとともに坪量が0.2〜0.4g/平方メートル、厚みが5〜10ミクロンであることを特徴とする請求項6に記載の化粧方法。
【請求項8】
前記ナノファイバー不織布がウレタン、ナイロン、キトサンのいずれかの繊維からなることを特徴とする請求項6又は7に記載の化粧方法。
【請求項9】
前記糊は水溶性高分子で、その濃度は0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の化粧方法。
【請求項10】
前記糊は蛋白質であり、その濃度は0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の化粧方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28552(P2013−28552A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164786(P2011−164786)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(509127147)株式会社キコーコーポレーション (5)
【Fターム(参考)】