説明

化粧用ディスペンサー容器

【課題】化粧料をミスト状に噴霧するディスペンサー容器において、化粧料に皮膜性高分子を配合した場合であっても、化粧料の乾燥固化による噴射経路の詰まりや噴霧パターン異常が生じることがないディスペンサー容器を提供する。
【解決手段】皮膜性高分子を配合した化粧料を、噴射ボタン3に嵌着したノズル部材の噴口8aからミスト状に噴霧するディスペンサー容器において、ノズル部材をノズル収納穴11に圧入して、ノズル部材の裏面8bとノズル収納穴の奥端面11bを当接し、ノズル部材の裏面8bで、環状溝14、渦巻き溝15、中心凹部13の開口を塞ぎ、噴口8aから化粧料をミスト状に噴霧する噴射流路16を形成したことを特徴とするディスペンサー容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ボタンを押し下げて収納容器内の皮膜性高分子を配合した化粧料を噴射ボタンの噴口から外部へ霧状にして噴射するディスペンサー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、整髪用化粧製品においては、化粧料を簡便に頭髪に塗布することができるため、エアゾール製品やディスペンサー製品が市場に導入されてきたが、近年では、特に整髪効果を高めるため、頭髪をセットする効果に優れた皮膜性高分子をより多く頭髪に塗布し得る整髪用化粧製品が望まれている。
【0003】
しかし、エアゾール製品は、エアゾール容器に化粧料とLPGガス(液化石油ガス)等の噴射剤を充填するため、エアゾール容器内の化粧料は噴射剤によって希釈された状態にある。使用の際には、化粧料を溶解した噴射剤が噴射ボタンの噴口から噴出され、その後、噴射剤は気化し、化粧料のみが頭髪に残存して整髪するものである。したがって、頭髪に残存する皮膜性高分子の量は僅かであり、必ずしも整髪力が充分ではなかった。
【0004】
一方、ディスペンサー製品では、噴射剤を必要とせず、化粧料を噴射ボタン内の噴射流路を経由して噴口からミスト状に噴霧し、化粧料を頭髪に塗布するため、頭髪に塗布される皮膜性高分子の量は多くなり、エアゾール製品と比較して整髪力を高めることができる。
【0005】
しかし、ディスペンサー製品では、使用後に噴射ボタン内の噴射流路に滞留した化粧料が乾燥し固化するために流路に詰まりが生じ、次回の噴霧の際に噴霧できないなどの問題が生じたり、流路内で固化した内容物がはがれて噴口付近に引っかかり、噴口を塞ぐことにより内容物の噴霧方向が曲がるなどの噴霧パターン異常を生じるといった問題があった。特に、整髪力の高い皮膜性高分子を多量に配合した化粧料を噴霧する場合には、流路内に析出する固化成分の量が増えるため、上記の問題の発生は顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−343007号公報
【特許文献2】特開2001−213488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、化粧料をミスト状に噴霧するディスペンサー容器において、化粧料に皮膜性高分子を配合した場合であっても、化粧料の乾燥固化による噴射経路の詰まりや噴霧パターン異常が生じることがないディスペンサー容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、被膜性高分子を配合した化粧料を噴霧するディスペンサーにおいて、ボタン本体の連通孔からノズル部材の噴口に至るまでの化粧料の流路を短くすることにより、化粧料の流路内での乾燥固化を防止し、あるいは、乾燥固化してもその量は僅かであるために再溶解し易く、化粧料の噴霧不良を防止する効果があることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、皮膜性高分子を0.1〜15質量%配合した化粧料を、噴射ボタンに嵌着したノズル部材の噴口からミスト状に噴霧するディスペンサー容器において、噴射ボタンは、ステム嵌合穴を設けて下向きに開口する中心穴と、側方に向けて開口するノズル収納穴と、中心穴とノズル収納孔とを連通する連通孔と、ノズル収納穴の奥端面中央に円形の中心凹部と、該中心凹部の外側に中心凹部と同心円状の環状溝と、中心凹部から環状溝に伸びる渦巻き溝と、を設けたボタン本体とノズル部材を備え、ノズル部材をノズル収納穴に圧入して、ノズル部材の裏面とノズル収納穴の奥端面を当接し、ノズル部材の裏面で、環状溝、渦巻き溝、中心凹部の開口を塞ぎ、噴口から化粧料をミスト状に噴霧する噴射流路を形成したことを特徴とするディスペンサー容器である。
【0010】
さらに本発明は、ノズル部材が金属であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0011】
さらに本発明は、ノズル部材がステンレス製であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0012】
さらに本発明は、ノズル部材の噴口が直径0.2乃至0.5mmであることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0013】
さらに本発明は、中央凹部から環状溝に延びる渦巻き溝が3本又は4本の傾斜放射状又は湾曲放射状であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0014】
さらに本発明は、皮膜性高分子が、アクリル系皮膜性高分子であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0015】
また本発明は、皮膜性高分子が、ビニル系皮膜性高分子であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【0016】
また本発明は、皮膜性高分子が、ウレタン系皮膜性高分子であることを特徴とするディスペンサー容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化粧用ディスペンサーに組み込む噴射ボタンは、ボタン本体の連通孔からノズル部材の噴口に至るまでの化粧料の流路を、従来の噴射ボタンに比べて短くすることができるため、化粧料が乾燥して固化することを防止することができる。また、化粧料が乾燥し固化しても、その量は僅かであるために、再び使用する際には、流入する化粧料に再溶解しやすく、流路を塞ぐことを防止することができる。
【0018】
本発明の化粧用ディスペンサー容器によれば、整髪力を高めた化粧料、特に、皮膜性高分子を0.1〜15%配合した化粧料を充填した場合にも噴射経路内で化粧料の乾燥固化による詰まりが生じることなく、連用することが可能となる。
【0019】
ディスペンサー容器では、エアゾール容器のように噴射剤を使用することなく、化粧料のみをミスト状に噴霧できるため、頭髪に塗布する化粧料を多くすることができる。これにより、頭髪のセット力において優れた化粧効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ディスペンサー容器の部分断面図
【図2】噴射ボタンの断面図
【図3】ノズル収納穴奥端面の渦巻き溝を形成する部分の正面図
【図4】従来のディスペンサー容器用の噴射ボタン(比較例1乃至3)の断面図
【図5】従来の噴射ボタンで用いるノズル部材(比較例1)で、(A)は断面図、(B)は(A)の右側面(内面)拡大図
【図6】従来の噴射ボタンで用いるノズル部材(比較例2)の内面拡大図
【図7】従来の噴射ボタンで用いるノズル部材(比較例3)の内面拡大図
【図8】噴射ボタンとディスペンサーの拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態につき説明する。
【0022】
図1には、この発明の一例としての噴射ボタンを備えてなるディスペンサー容器の全体構成を示す。
【0023】
図1に示すように、ディスペンサー容器(1)は、収納容器(6)と、それに螺合したディスペンサー(4)、噴射ボタン(3)を備える。
【0024】
収納容器(6)は、開口部外周に螺旋溝を配置し、ディスペンサー(4)を螺合して取り付ける。ディスペンサー(4)は、中心にステム(2)を備え、そのステム(2)の下部には、タンク(18)を備える。そして、収納容器(6)の内部には、このディスペンサー容器(1)より噴射する化粧料(5)を液体の状態で収納する。
【0025】
図2に示すように、噴射ボタン(3)はボタン本体(7)とノズル部材(8)を組み付けてなる。ノズル部材を形成する材料は、特に限定されるものではないが、量産性や耐久性を考慮し、金属が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。また、ボタン本体を形成する材料は、成形性や強度から高密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0026】
ボタン本体(3)は、入口にステム嵌合穴(9)を設けて下向きに開口する中心穴(10)と、側方に向けて開口する、突起(11a)を備えたノズル収納穴(11)と、中心穴(10)とノズル収納穴(9)とを連通する径方向の連通孔(12)とを有する。
【0027】
ノズル部材(8)は、円形の皿状で、中心には噴口(8a)が形成されている。噴口の形状や大きさは、噴霧する化粧料の粘度や噴霧する面積に応じて適宜選択することができるが、頭髪への使用に適した化粧料の粘度や頭部への噴霧面積を考慮すると、噴口は、直径0.2乃至0.5mmの円形が好ましく、整髪に適した噴霧面積にするためには、特に、直径0.3乃至0.4mmの円形とすることが好ましい。
【0028】
また、ノズル収納穴(11)の奥端面(11b)には、図3に示すように、中央に円形の中心凹部(13)と、その外側に中心凹部(13)と同心円状の環状溝(14)、中心凹部(13)から環状溝(14)に延びる渦巻き溝(15)を設ける。渦巻き溝は、化粧料を噴霧した際のミストの形状を円錐形状とすることが使用性の上から望ましく、美観的にも好ましいことから、図3のように、3又は4本の傾斜放射状あるいは湾曲放射状に配置することが好ましい。但し、噴霧する量や化粧料の粘度に応じて適宜選定されるべきであり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
図2のように、裏面(8b)を内側に向けてボタン本体(7)のノズル収納穴(11)にノズル部材(8)を圧入して突起(11a)に掛け止めすると、ノズル部材(8)の裏面(8b)とノズル収納穴(11)の奥端面(11b)が当接し、このノズル部材(8)の裏面(8b)が、環状溝(14)、渦巻き溝(15)、中心凹部(13)の開口を塞ぎ、噴射流路(16)を形成する。すると、中心穴(10)から連通孔(12)、噴射流路(16)を経て、噴口(8b)に至る流路が形成される。すなわち、ボタン本体(7)にノズル部材(8)を取り付けて噴射流路(16)を形成する。
【0030】
このように構成された噴射ボタン(3)は、ステム嵌合穴(9)に、容器のステム(5)の先端を嵌め付ける。
【0031】
このディスペンサー容器を使用するときは、ユーザーは、収納容器(6)を手で持って、噴射ボタン(3)の噴口(8a)を所望する位置に向ける。
【0032】
そして、指掛け部(17)に指をかけて噴射ボタン(3)を押すと、ステム(2)がタンク(18)内に押し込まれ、予めタンク(18)内に貯蔵された化粧料がステム(2)を通して吐出し、噴射ボタン(3)の中心穴(10)から連通孔(12)を経て、噴射流路(16)に至る。
【0033】
すると、噴射流路(16)にある環状溝(14)から渦巻き溝(15)を通り中心凹部(13)に向かって流入してきた内容物(6)が、渦巻きを形成して噴口(8a)から霧状になって所望する位置に噴射される。すなわち、噴射流路(16)を通してノズル部材(8)の噴口(8a)よりタンク(18)内の化粧料を霧状に噴射する。
【0034】
そして、噴射を終えるときは、噴射ボタン(3)の指掛け部(17)から指を離すと、タンク内に内蔵されたバネの力によってステム(2)が戻ると同時に、ディップチューブ(19)を通って収納容器(6)の化粧料(5)がタンク(18)内に吸い上げられ、貯蔵される。
【0035】
化粧料に配合する皮膜性高分子としては、アクリル系、ビニル系、ウレタン系の皮膜形成性高分子が用いられる。また、これらの皮膜性高分子は1種を配合することも可能であるが、2種以上を配合しても良い。高分子に結合する官能基の性質にしたがい配合される皮膜性高分子を以下に記載する。
【0036】
アクリル系皮膜性高分子としては、例えば、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミド共重合体(プラスサイズL−53P、プラスサイズL−9909B、プラスサイズL−9948Bなど(いずれも互応化学工業株式会社製))、アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド共重合体(Dermacryl 79(日本エヌエスシー株式会社製))、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール−25・ジメチコン・アクリレーツ共重合体(ルビフレックスSILK(BASF社製))、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体(ウルトラホールド8、ウルトラホールドStrong(BASF社製))、アクリル酸アルキル共重合体(アニセットNF−1000,アニセットHS−3000(大阪有機化学工業株式会社製))、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体(AMPHOMER SH30、AMPHOMER LV-71(日本エヌエスシー株式会社製))、メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキル共重合体(ユカフォーマーR205、ユカフォーマー301、ユカフォーマーSM、ユカフォーマー104Dなど(三菱化学株式会社製)、
RAMレジン−1000、RAMレジン−2000、RAMレジン−3000、RAMレジン−4000(大阪有機化学工業株式会社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(マーコート280、マーコート295(ナルコ社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸共重合体(マーコートプラス3330、マーコートプラス3331(ナルコ社製))、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸塩(H.C.ポリマー1S(M)、H.C.ポリマー2(大阪有機化学工業株式会社製)、ガフコート755N(ISP社製))、ビニルピロリドン・ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド・ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(スタイリーゼW−20(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸アルキル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体(コスカットGA467,コスカットGA468(大阪有機化学工業株式会社製)、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(マーコート100(ナルコ社製))、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(マーコート550(ナルコ社製))、塩化トリメチルアミノプロピルアクリルアミド・ジメチルアクリルアミド共重合体などを例示することができる。
【0037】
ビニル系皮膜性高分子としては、例えば、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸塩(H.C.ポリマー1S(M)、H.C.ポリマー2(大阪有機化学工業株式会社製)、ビニルピロリドン・ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド・ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(スタイリーゼW−20(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸アルキル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体(コスカットGA467,コスカットGA468(大阪有機化学工業株式会社製)、ポリビニルピロリドン(ルビスコールK17、ルビスコールK30、ルビスコールK90(BASF社製)、PVP K(ISP社製))、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体(PVP/VA S−630、PVP/VA E−735、PVP/VA E−335(以上ISP社製)、ルビスコールVA73W、ルビスコール37E(以上BASF社製)、PVA−6450(大阪有機化学工業株式会社製))、ビニルメチルエーテル・マレイン酸アルキル共重合体(ガントレッツA-425、ガントレッツES-225、ガントレッツES-335など(ISP社製))、ビニルピロリドン・メタクリルアミド・ビニルイミダゾール共重合体(ルビセットクリア(BASF社製))などを例示することができる。
【0038】
ウレタン系の皮膜形成性高分子としては、例えば、シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、「ルビセットP.U.R.」(BASF社製)、「ヨドゾールPUD」(日本エヌエスシー株式会社製)、特開2006−213706号公報に記載のシリル化ウレタン系ポリマー等が挙げられる。アクリル−ウレタン系皮膜形成性高分子としては、例えば、「DynamX」(日本エヌエスシー株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
化粧料に配合する皮膜性高分子の量は、0.1〜15質量%が好ましく、特に、3〜6質量%が好ましい。これは、0.1質量%未満では、皮膜性高分子による頭髪のセット力が不十分であり、15質量%より多く配合しても、セット力は15質量%の場合と変わらないためである。また、使用性に優れ、かつセット力に優れた高分子量であって、噴霧異常が生じない配合量として3〜6質量%が特に適していることによるものである。
【実施例】
【0040】
実施例では、本発明のディスペンサー容器について行った噴霧試験の試験方法およびその結果について記載する。
【0041】
噴霧試験は、本発明によるノズル収納穴奥端面に渦巻き溝を配置したことを特徴とした流路構造を有する噴射ボタンを組み込んだディスペンサー容器(実施例1)と、従来のノズル裏面に渦巻き溝を配置したことを特徴とした流路構造を有する噴射ボタンを組み込んだディスペンサー容器(比較例1乃至3)について、化粧料を充填した。充填後、化粧料を噴霧し、流路内に化粧料を通過した後、室温(RT)、37℃、50℃に放置した。各温度条件は、流路内に滞留した化粧料が乾燥し、皮膜性高分子の析出による噴霧不良を確認するための加速試験のための条件として設定したものである。各温度条件に放置後、1週間ごとに噴霧し、噴霧状態を評価した。
【0042】
噴霧試験に使用した化粧料の処方(A乃至C)を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表2に、処方Aの化粧料を充填した噴霧試験の結果を示す。噴霧状態が正常な場合は○、噴霧したミストの円錐形状の幅が狭いものや歪んだ形状の場合(パターン異常の場合)は△、詰まりが発生し、噴霧できない場合は×と表記した。各水準のサンプル数は5本とし、例えば、正常2本、パターン異常2本、噴霧不能1本の場合には、○2△2×1と表記した。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例1のディスペンサー容器は、本発明によるノズル収納穴奥端面に渦巻き溝を配置したことを特徴とした流路構造を有する噴射ボタンを組み込んだものである。すなわち、噴射ボタンは、高密度ポリエチレンからなるボタン本体にステンレス鋼からなるノズル部材を組み合わせてなる。ボタン本体の側部に設けられたノズル収納穴の奥端面の中央に形成された円形の中心凹部とその外側に同心円状に形成された環状溝、中心凹部から環状溝に向かって形成された4本の渦巻き溝をノズル部材で塞ぎ、噴口から化粧料をミスト状に噴霧する噴射流路を形成する。尚、ノズル部材に形成される噴口は、直径0.3mmの円形である。
【0047】
比較例1乃至3のディスペンサー容器は、従来のノズル裏面に渦巻き溝を配置したことを特徴とした流路構造を有する噴射ボタンを組み込んだものである。比較例1乃至3は、渦巻き溝の形状が異なるものであるが(図5乃至7)、基本的な構造は共通である(図4)。
【0048】
したがって、以下では比較例1乃至3のディスペンサー容器の説明として、比較例1を例にとり噴射ボタンの構造を説明する。
【0049】
噴射ボタン(21)は、図4に示すように、高密度ポリエチレンで形成したボタン本体(22)に、ポリオキシメチレンで形成したノズル部材(23)を組み付けてなる。
【0050】
ボタン本体(22)は、入口にステム嵌合穴(24)を設けて下向きに開口する中心穴(25)と、側方に向けて開口する円筒状のノズル収納穴(26)と、中心穴(25)とノズル収納穴(26)とを連通する径方向の連通孔(33)とを有する。そして、ノズル収納穴(26)内には、先端面(27a)がフラットな凸状のセンターポスト(27)を形成する。また、ボタン本体(22)の頂面には、指掛け部(28)を設けている。
【0051】
ノズル収納穴(26)には、キャップ状のノズル部材(23)が圧入される。ノズル部材(23)は、図5(A)および(B)に示すように、頂部(23a)を有する筒状で、その頂部(23a)と筒部(23b)とからなる。
【0052】
頂部(23a)は、中央に噴口(23c)を有し、頂部(23a)の内面(23d)には、その噴口(23c)を中心とする矩形の中心凹部(29)と、その各辺から延びる4つの渦巻き溝(30)を設けている。
【0053】
一方、筒部(23b)には、外周面に周方向の外周突起(23e)を形成する。
【0054】
そして、図4に示すように、ボタン本体(22)のノズル収納穴(26)にノズル部材(23)の頂部(23a)を外向きとして圧入して取り付け、外周突起(23e)をノズル収納穴(26)の内周面に掛け止めて抜け止めして、噴射ボタン(21)を構成する。
【0055】
すると、センターポスト(27)の先端面(27a)が、ノズル部材(23)の頂部(23a)の内面(23d)に形成された渦巻き溝(30)と中心凹部(29)の開口を塞ぎ、噴射流路(31)を形成する。また、筒部(23b)の内周面とセンターポスト(27)の外周面との間に排出流路(32)を形成する。これにより、中心穴(25)から連通孔(33)を経て排出流路(32)を通って噴射流路(31)に達し、噴口(23c)に至る流路が連通する。
【0056】
そして、噴射ボタン(21)のステム嵌合穴(24)に、ステムの先端をはめ付けて、ディスペンサー容器を構成する。
【0057】
噴射試験の結果(表2)から、実施例1は比較例1乃至3と異なり、パターン異常や噴霧不能がなく、すべての条件において正常に噴霧できることが確認された。
【0058】
本発明の化粧用ディスペンサーに組み込む噴射ボタン(実施例1)は、ボタン本体の連通孔(12)からノズル部材の噴口(8a)に至るまでの流路を、従来の噴射ボタン(比較例1乃至3)に比べて短くすることができるため、流路内において化粧料が乾燥して固化することを防止することができる。また、化粧料が乾燥し固化しても、その量は僅かであるために、再び使用する際には、流入する化粧料に再溶解しやすく、流路を塞ぐことを防止することができる。
【0059】
さらに、本発明の化粧用ディスペンサー(実施例1)によれば、ディスペンサーの上部シール面(49)からノズル部材の噴口(8a)に至るまでの流路の体積(流路体積)を小さくすることができるため(58μL)、当該流路内に滞留する化粧料が外気の温度上昇等により噴口から流れ出す量を少なくすることができ、噴口の出口付近に堆積する乾燥固形物が噴口を塞ぎ、噴霧不良が生じるような問題も防止することができる。
【0060】
表3に各ディスペンサーについて、ディスペンサーの上部シール面(49)からノズル部材の噴口(8a)に至るまでの流路の体積(流路体積)と37℃又は50℃に1週間放置した場合の噴口部に堆積した固形物の量について測定した結果を示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3に示す結果から、本発明にかかるディスペンサーは流路体積(ディスペンサーの上部シール面からノズル部材の噴口に至るまでの流路の体積)を約60μL以下まで小さくすることができるため、流れ出す化粧料の量を少なくし、乾燥固形物が噴口を塞ぐことによる噴霧不良を防止できる。
【0063】
つぎに、本発明の噴射ボタンを組み込んだディスペンサー容器(実施例1)に、更に、皮膜性高分子を増量し配合した化粧料(処方Bおよび処方C)を充填し、同様の噴霧試験を行った。その噴霧試験の結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4に示す結果から、実施例2および3においてパターン異常は認められるものの、噴霧不良の発生は認められなかった。また、実施例3では、2週間、3週間でパターン異常があるものの、翌週には回復し、正常な噴霧に戻っている。このことから、本発明のディスペンサー容器であれば、一時的なパターン異常が生じたとしても、流路を塞ぐ乾燥固形成分の量は僅かであり、次回の噴霧の際に、流路内を通過する化粧料によって再溶解し、正常に戻る傾向にあり、噴霧不良の問題が生じるおそれはないものと考えられる。
【符号の説明】
【0066】
1 ディスペンサー容器
2 ステム
3,21 噴射ボタン
4 ディスペンサー
5 化粧料
6 収納容器
7,22,50 ボタン本体
8,23,48 ノズル部材
8a,23c 噴口
8b 裏面
9 ステム嵌合穴
10,25 中心穴
11,26 ノズル収納穴
11a 突起
11b 奥端面
12,33 連通孔
13,29,46 中心凹部
14 環状溝
15,30,47 渦巻き溝
16,31 噴射流路
17、28 指掛け部
18 タンク
19 ディップチューブ
23a 頂部
23b 筒部
23d 内面
23e 外周突起
24 ステム嵌合穴
27,44 センターポスト
32 排出流路
45 先端面
49 ディスペンサー上部シール面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜性高分子を0.1〜15質量%配合した化粧料を、噴射ボタンに嵌着したノズル部材の噴口からミスト状に噴霧するディスペンサー容器において、噴射ボタンは、ステム嵌合穴を設けて下向きに開口する中心穴と、側方に向けて開口するノズル収納穴と、中心穴とノズル収納孔とを連通する連通孔と、ノズル収納穴の奥端面中央に円形の中心凹部と、該中心凹部の外側に中心凹部と同心円状の環状溝と、中心凹部から環状溝に伸びる渦巻き溝と、を設けたボタン本体とノズル部材を備え、ノズル部材をノズル収納穴に圧入して、ノズル部材の裏面とノズル収納穴の奥端面を当接し、ノズル部材の裏面で、環状溝、渦巻き溝、中心凹部の開口を塞ぎ、噴口から化粧料をミスト状に噴霧する噴射流路を形成したことを特徴とするディスペンサー容器。
【請求項2】
ノズル部材が金属であることを特徴とする請求項1記載のディスペンサー容器。
【請求項3】
ノズル部材がステンレス製であることを特徴とする請求項1又は2記載のディスペンサー容器。
【請求項4】
ノズル部材の噴口が直径0.2乃至0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスペンサ容器。
【請求項5】
中央凹部から環状溝に延びる渦巻き溝が3本又は4本の傾斜放射状又は湾曲放射状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスペンサー容器。
【請求項6】
皮膜性高分子が、アクリル系皮膜性高分子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスペンサー容器。
【請求項7】
皮膜性高分子が、ビニル系皮膜性高分子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のディスペンサー容器。
【請求項8】
皮膜性高分子が、ウレタン系皮膜性高分子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスペンサー容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−70990(P2012−70990A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218937(P2010−218937)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】