説明

化粧用パックシートロール及び化粧用パックシートロールの製造方法

【課題】本発明は、高額となることなく簡易且つ確実にパックを行うことのできる化粧用パックシートロールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る化粧用パックシートロールは、基材層と、この基材層の一方の面側に積層されるとともに化粧用有効成分を含むゲル層とを備える多層シートがロール状に巻回され、上記多層シートに、短手方向に沿った複数の切断容易線が形成されている構成からなる。多層シートの短手方向の長さが、1cm以上10cm以下であることが好ましい。複数の切断容易線が長手方向略等間隔に形成され、この切断容易線同士の間隔が、多層シートの短手方向の長さの1倍以上5倍以内であることが好ましい。ゲル層が、化粧用有効成分を含む融点15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用パックシートロール及び化粧用パックシートロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予め化粧料を不織布等に含浸させた化粧用パックシートが発案されている(特開2010−222320号公報参照)。この公報所載の化粧用パックシートは、直接肌部に貼付させることで肌部へ化粧料の浸透又は付着を行うことができる。
【0003】
このような化粧用パックシートは、例えば顔に貼付するよう顔型形状に形成されたものが存在している。つまり、従来の化粧用パックシートは一回で使用される形状に形成されており、この一回で使用される形状のものが個別包装されている。
【0004】
しかしながら、従来の化粧用パックシートにあっては、例えば顔型形状に形成されている場合には、顔の一部(例えば頬)のみに使用したくとも、顔全体をパックする必要があり、その他の部位のパックが無駄であるばかりか、この化粧用パックシートの使用に要する費用が高額となってしまう。また、従来の化粧用パックシートを顔の部位ごとに貼付できるような形状に形成したとしても、この部位ごとの化粧用パックシートを個別包装する必要があり、使用に際して各部位の化粧用パックシートごとに包装を開封する必要があり、この開封作業が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−222320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高額となることなく簡易且つ確実にパックを行うことのできる化粧用パックシートロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、
本発明に係る化粧用パックシートロールは、
多層シートがロール状に巻回されており、
この多層シートが、
化粧用有効成分を含むゲル層と、
このゲル層の一方の面側に積層される基材層とを備え、
上記多層シートに、短手方向に沿ってゲル層を切断するための複数の切断容易線が形成されている
構成を採用した。
【0008】
上記構成を採用することによって、ロール状の当該化粧用パックシートロールから所望長さ分の多層シートを引き出し、切断容易線に沿って切断して、この切断した切断片のゲル層を肌部に貼付することにより、ゲル層に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。当該化粧用パックシートロールは、使用したい長さに切断して使用することができるので、従来の化粧用パックシートに比して、パックに要する費用が高額となることを防止できる。また、当該化粧用パックシートロールの切断片を貼付した時に肌部には弾力を有するゲル層が接触するため、肌部へ密着性が高く、このゲル層が肌部から熱を吸収するため、清涼感を使用者に与えることができる。さらに、当該化粧用パックシートロールは、ゲル層の一方の面側に基材層が配設されているので、基材層によってゲル層の破損を防止できる。
【0009】
また、当該化粧用パックシートロールにあっては、多層シートの短手方向の長さが、1cm以上10cm以下であることが好ましい。多層シートの短手方向の長さが上記範囲内とすることにより、ゲル層が不用意に破損しにくく、また切断容易線に沿った切断を容易且つ確実に行うことができる。
【0010】
さらに、当該化粧用パックシートロールにあっては、複数の切断容易線が長手方向略等間隔に形成され、この切断容易線同士の間隔が、多層シートの短手方向の長さの1倍以上5倍以内であることが好ましい。つまり、切断容易線同士の間隔が多層シートの短手方向の長さよりも長いので、切断容易線に沿って切断した切断片の面積を維持しつつ、使用に際して切断する長さ(切断容易線の長さ)が短く、容易且つ確実に使用することができる。また、切断容易線同士の間隔が多層シートの短手方向の長さの5倍以内であるので、切断片の取扱いが容易である。
【0011】
また、当該化粧用パックシートロールにあっては、ゲル層の厚さが1μm以上1000μm以下であることが好ましい。ゲル層の厚さを上記範囲とすることで、十分な量の化粧用有効成分を含有させることができ、またゲル層の重量が大きくなり過ぎず、肌部へ貼付した際の違和感が少ない。
【0012】
さらに、当該化粧用パックシートロールにあっては、ゲル層が、化粧用有効成分を含む融点15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスを有する構成を採用することが好ましい。これにより、肌部に貼付したゲル層が肌部からの熱によって融解するため、肌部に化粧用有効成分を浸透又は付着させ易い。
【0013】
ゲル層が上記のように融点15℃以上40℃以下である場合には、ゲル層の厚さが1μm以上100μm以下であることが好ましい。これにより、十分な量の化粧用有効成分を含有させることができるとともに、ゲル層が肌部からの熱によって完全に融解して肌部に化粧用有効成分をより浸透又は付着させ易い。
【0014】
また、当該化粧用パックシートロールにあっては、上記基材層の両面が離型性を有し、上記多層シートが、上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層された二層構造であり、上記基材層の両面のうち一方の面における剥離強度が、一方の面における剥離強度よりも小さい構成を採用することが可能である。これにより、当該化粧用パックシートロールは、上述のようにロール状に巻回された状態から多層シートを的確に引き出すことができる。つまり、ゲル層の外面に基材層が積層された二層構造の場合を例にとり説明すると、当該化粧用パックシートロールのうち最も外側に位置する部分を引き出すに際して、ゲル層は外側及び内側に基材層が位置するものの、このゲル層は外側の基材層から剥離せずに内側の基材層から剥離され易い。すなわち、上記のように基材層の内面にゲル層を積層した構造にあっては、基材層は外面における剥離強度が内面における剥離強度よりも小さく設けられるので、上述のように引き出した際にゲル層は外側に位置する基材層から剥離せずに内側に位置する基材層から剥離されることになる。また、ゲル層の内面に基材層が積層された二層構造の場合にも、基材層は内面における剥離強度が外面における剥離強度よりも小さく設けられるので、引き出した際に基材層は内側のゲル層から容易に剥離することができる。しかも、基材層の両面が離型性を有するので、基材層から剥離した状態で切断片のゲル層のみを肌部に貼付することができ、このため剛軟度の大きい基材層を有する場合でも、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。
【0015】
さらに、当該化粧用パックシートロールにあっては、上記基材層の他方の面が離型性を有し、基材層の他方の面に上記ゲル層が積層され、上記多層シートが、上記ゲル層の他方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造である構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、当該化粧用パックシートロールの多層シートは、ゲル層が基材層及び剥離層に挟まれた三層構造となる。このため、ロール状の当該化粧用パックシートロールから多層シートを引き出した際にゲル層が破損等することを基材層及び剥離層によって防止することができる。そして、引き出した後に切断された切断片から剥離層を剥離することによって、表出したゲル層を肌部に貼付して使用することができる。しかも、基材層の他方の面が離型性を有するので、基材層から剥離した状態で切断片のゲル層のみを肌部に貼付することができ、このため剛軟度の大きい基材層を有する場合でも、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。
【0016】
また、当該化粧用パックシートロールにあっては、上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層され、上記多層シートが、上記基材層の一方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造であり、上記基材層とゲル層との剥離強度、基材層と剥離層との剥離強度、剥離層とゲル層との剥離強度の順に大きい構成を採用することも可能である。この構成を採用することにより、当該化粧用パックシートロールの多層シートは、基材層の両面に剥離層及びゲル層が配設された三層構造となり、当該化粧用パックシートロールは、ロール状に巻回された状態から多層シートを的確に引き出すことができる。つまり、ロール状に巻回された状態において剥離層とゲル層とが接触しているものの、剥離層とゲル層との剥離強度が他の剥離強度よりも小さいので、上述の多層シートの引き出しに際して剥離層とゲル層とを容易に剥離することができ、ロール状に巻回された状態から多層シートを確実に引き出すことができる。そして、このように引き出した多層シートの基材層から剥離層を剥離して、ゲル層を肌部に貼付することができる。つまり、基材層と剥離層との剥離強度が基材層とゲル層との剥離強度よりも小さいので、引き出した多層シートの基材層から剥離層を容易に剥離することができる。このため剛軟度の大きい剥離層を有する場合でも、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。
【0017】
当該化粧用パックシートロールにあっては、上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層され、上記多層シートが、上記ゲル層の他方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造であり、上記基材層とゲル層との剥離強度、剥離層とゲル層との剥離強度、及び基材層と剥離層との剥離強度の順に大きい構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、当該化粧用パックシートロールの多層シートは、ゲル層が基材層及び剥離層に挟まれた三層構造となる。このため、ロール状の当該化粧用パックシートロールから多層シートを引き出した際にゲル層が破損等することを基材層及び剥離層によって防止することができる。そして、剥離層とゲル層との剥離強度が基材層とゲル層との剥離強度よりも小さいので、引き出した多層シートから剥離層を剥離して切断片のゲル層を肌部に貼付して使用することができる。このため剛軟度の大きい剥離層を有する場合でも、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。
【0018】
なお、多層シートが上述のように剥離層を有する三層構造から構成され、さらに剥離層を剥離した際に基材層がゲル層側に残存するよう構成する場合には、上記基材層が、主成分としてエラストマー系材料を含む構成を採用することが好ましい。これにより、剥離層を剥離した際にゲル層に残存する基材層によってゲル層が支持され、ゲル層の破損を防止できる。このため、例えば肌部からの熱によってゲル層が融解する場合にあっても、溶解していくゲル層の形状維持に基材層が寄与し得る。しかも、基材層が主成分としてエラストマー系材料を含むものゆえ、ゲル層の肌部への密着性を高めるべくゲル層と基材層との積層体の剛軟度を容易かつ的確に調整することができ商品設計の自由度を高めることができる。
【0019】
また、当該化粧用パックシートロールにあっては、ゲル層が複数のマイクロ層からなる積層体であるとよい。このようにゲル層が複数のマイクロ層からなる積層体であることによって、これらの各マイクロ層に任意の化粧用有効成分を含有させることができ、様々な用途に当該化粧用パックシートロールを用いることができる。
【0020】
上記マイクロ層の厚さは1μm以上100μm以下であることが好ましい。マイクロ層の厚さを上記範囲とすることで、マイクロ層に十分な量の化粧用有効成分を含有させることができ、このマイクロ層からなるゲル層の重量が大きくなり過ぎず、肌部へ貼付した際の違和感が少ない。
【0021】
また、本発明に係る化粧用パックシートロールの製造方法は、
化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程と、
上記ゲル層形成材料からなるゲル層とこのゲル層の一方の面側に積層された基材層とを備える多層シートを形成する多層シート形成工程と、
多層シートの短手方向に沿ってゲル層を切断するための切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、
多層シート形成工程により形成された多層シートをロール状に巻回する巻回工程と
を有する構成を採用した。
【0022】
上記構成を採用することで、基材層とゲル層とを備える多層シートがロール状に巻回された当該化粧用パックシートロールを製造することができる。そして、この化粧用パックシートロールの多層シートには短手方向に沿った複数の切断容易線が形成されるため、ロール状の当該化粧用パックシートロールから所望長さ分の多層シートを引き出し、切断容易線に沿って切断して、この切断した切断片のゲル層を肌部に貼付することにより、ゲル層に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。当該化粧用パックシートロールは、使用したい長さに切断して使用することができるので、従来の化粧用パックシートに比して、パックに要する費用が高額となることを防止できる。また、当該化粧用パックシートロールの切断片を貼付した時に肌部には弾力を有するゲル層が接触するため、肌部へ密着性が高く、このゲル層が肌部から熱を吸収するため、清涼感を使用者に与えることができる。さらに、当該化粧用パックシートロールは、ゲル層の一方の面側に基材層が配設されているので、基材層によってゲル層の破損を防止できる。
【0023】
当該化粧用パックシートロールにおいて、「化粧用」とは、文字通りの化粧のほか、美容用途やスキンケア用途、肌を本来の状態に戻す用途等を含む概念である。層の「厚さ」とは、層の平均厚さを意味し、JIS K7130に準拠して測定される値である。「融点」とはゲル層が加熱によってゾル化する温度を意味し、JIS K6503に準拠して測定される値である。「剥離強度」とは、一つの層(例えば基材層)を他の層(例えばゲル層)から剥離する際の強度を表し、JIS K6854−2:1999に準拠して剥離速度0.3mm/min、剥離角度180°、測定巾50mmで測定した値を意味する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の化粧用パックシートロールは、所望の箇所を的確にパックすることができ、このパックに要する費用が高額となることなく確実にパックを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態の化粧用パックシートロールを示す模式的斜視図である。
【図2】図1の化粧用パックシートの模式的断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態の化粧用パックシートロールの模式的断面図である。
【図4】本発明の第三実施形態の化粧用パックシートロールの模式的断面図である。
【図5】本発明の第四実施形態の化粧用パックシートロールの模式的断面図である。
【図6】本発明の第五実施形態の化粧用パックシートロールの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第一実施形態]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説するが、まず本発明の第一実施形態の化粧用パックシートロールを図1及び図2を参酌しつつ説明する。
【0027】
当該化粧用パックシートロールは、図1に示すように、芯材2と、長尺状の多層シート1とを備え、芯材2に多層シート1がロール状に巻回されている。ここで、芯材2は、外形が円柱状に形成されており、具体的には円筒形状の筒体から構成されている。また、芯材2の外表面(後述のゲル層5との接触面)は、離型処理が施されており、この離型処理は後述する基材層3の離型処理と略同様の処理とすることができる。
【0028】
<多層シート1>
上記多層シート1は、図2に示すように、化粧用有効成分を含むゲル層5と、このゲル層5一方の面側に積層される基材層3とを備えている。この多層シート1は、上記ゲル層5の一方の面(外面)に上記基材層3が積層された二層構造からなる。なお、この多層シート1は、ゲル層5が内側となり基材層3が外側となるようロール状に巻回されている。
【0029】
この多層シート1には、図1に示すように、多層シートの短手方向に沿ってゲル層5を切断するための複数の切断容易線1aが形成されている。この切断容易線1aは、多層シート1の短手方向に沿って形成されている。また、この複数の切断容易線1aは、長手方向略等間隔に形成されている。
【0030】
上記切断容易線1aは、短手方向に沿ったゲル層5の切断が容易となるよう短手方向に沿って形成された部位であり、破断可能な弱化線から構成され、具体的にはミシン目から構成されている。ここで、この切断容易線としては、ミシン目のほか溝等のその他の弱化線を採用することができ、さらには鋏等によって切断する際に目印となるよう印刷された線から構成することもできる。
【0031】
また、この切断容易線1aは、多層シート1を切断するために基材層3及びゲル層5に形成されており、具体的には基材層3及びゲル層5を貫通する複数の貫通孔からなるミシン目から構成されている。なお、上記のように切断容易線1aを基材層3及びゲル層5の双方に亘って形成するものに限られず、例えば、基材層3のみに切断容易線を形成することも可能である。具体的には、例えば基材層3のみに弱化線を形成し、この弱化線に沿って基材層3を破断し、この破断に伴ってゲル層5も切断されるよう構成することも可能である。さらには、基材層3に切断容易線として切離線(切り離された線)を設けておき、この切離線に沿って基材層3を離反して、この離反に伴ってゲル層5が切断されるよう構成することも可能である。また、ゲル層5のみに切断容易線を形成し、ゲル層5を基材層3から剥離するとともにゲル層5を破断するよう構成することも可能である。
【0032】
上記多層シート1の短手方向の長さ(以下、幅ということがある)は、1cm以上10cm以下であることが好ましい。この多層シート1の幅の下限値は、3cmであることがより好ましく、5cmであることがさらに好ましい。一方、多層シート1の幅の上限値は、8cmであることがより好ましく、6cmであることがさらに好ましい。多層シート1の幅が上記下限値未満であると、基材層3に積層されたゲル層5が不用意に破損してしまうおそれがある。逆に、上記幅が上記上限値を超えると、切断容易線1aに沿った切断作業が煩雑となるおそれがある。
【0033】
また、上記多層シート1には、長手方向略等間隔に上記複数の切断容易線1aが形成されている。この切断容易線1a同士の間隔(切断容易線1aとこの切断容易線1aに隣接する切断容易線1aとの長手方向の間隔)は、多層シート1の幅の1倍以上5倍以内であることが好ましい。この多層シート1の幅に対する切断容易線1a同士の間隔の下限値は、1.2倍がより好ましく、1.4倍がさらに好ましい。一方、この多層シート1の幅に対する切断容易線1a同士の間隔の上限値は、3倍がより好ましく、2倍であることがさらに好ましい。切断容易線1a同士の間隔が上記下限値未満であると、多層シート1の幅を比較的に長く設けなければ切断容易線1aに沿って切断される切断片の面積が小さくなり、また多層シート1の幅を長く設けると切断容易線に沿った切断作業が煩雑となるおそれがある。逆に、切断容易線1a同士の間隔が上記上限値を超えると、切断片の長辺が短辺よりも長くなり過ぎ、この切断片の取扱いが困難となり、特に肌部への貼付までの切断片のハンドリング性が悪くなる。
【0034】
なお、多層シート1の長手方向の長さ(以下、全長ということがある)は、特に限定されるものではないが、当該化粧用パックシートロールの直径が一定範囲となるような長さであることが好ましい。この当該化粧用パックシートロールの直径は、2cm以上7cm以下が好ましく、3cm以上5cm以下がより好ましい。なお、多層シート1の厚さを仮に1mmと仮定すると、多層シート1の長さは15cm以上1m以下であることが好ましい。また、多層シート1の厚さを仮に10μmと仮定すると、多層シート1の長さは5m以上10m以下であることが好ましい。
【0035】
また、多層シート1は、厚さが特に限定されるものではないが、その厚さが11μm以上600μm以下であることが好ましい。この多層シート1の厚さの下限値は、20μmがより好ましく、35μmがさらに好ましい。一方、多層シート1の厚さの上限値は、350μmあることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。多層シート1の厚さが上記下限値未満であると、多層シート1の剛軟度が小さくなり過ぎ、多層シート1の取扱いが困難となり、特に肌部への貼付までの切断片のハンドリング性が悪くなるおそれがある。逆に、多層シート1の厚さが上記上限値を超えると、重量が増すことにより、多層シート1の取扱いが困難となり、特に肌部への貼付までの切断片のハンドリング性が悪くなるおそれがある。
【0036】
(基材層3)
基材層3は、両面が離型性を有する層であり、両面に離型処理が施された合成樹脂シートから構成されている。ここで、離型処理としては、シリコーン処理を採用可能である。なお、離型処理としては、その他長鎖アルキル処理、フッ素処理等を採用することも可能である。また、基材層3の剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類及び/又はその塗工量等を調節することによって制御することができる。
【0037】
上記シリコーン処理においては例えば水溶性シリコーンを用いることができ、この水溶性シリコーンのシリコーン化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、Si−H基含有シリコーン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルコキシ基含有シリコーン、シラノール基含有シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ビニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0038】
また、上記基材層3は、各面の剥離強度が異なるよう離型処理が施されている。具体的には、基材層3の両面の剥離強度は、内面(ゲル層5の積層面)のゲル層5に対する剥離強度が、外面のゲル層5に対する剥離強度よりも大きい。
【0039】
ここで、基材層3の内面の剥離強度(ゲル層5に対する剥離強度)としては、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましい。この基材層3の内面の剥離強度の下限値は、0.03N/50mmがより好ましく、0.1N/50mmがさらに好ましい。一方、上記剥離強度の上限値は、0.7N/50mmであることがより好ましく、0.2N/50mmであることがさらに好ましい。上記剥離強度が上記下限値未満であると、ゲル層5と基材層3との接着力が小さ過ぎ、ゲル層5が基材層3から不用意に剥離するおそれがある。逆に、剥離強度が上記上限値を超えると、基材層3をゲル層5から剥離する際に要する力が大きくなり、肌部への貼付後に基材層3を容易に剥離できないおそれがある。なお、この基材層3のゲル層5に対する剥離強度は、JIS K6854 2:1999に準拠し、引張試験器を用いて基材層3を剥離速度300mm/min、剥離角度180°、測定巾50mmで試験片から剥離して測定した測定値である。なお、剥離強度の測定方法は以下同様の方法によって測定した値である。
【0040】
また、基材層3の外面の剥離強度(ゲル層5に対する剥離強度)は、上述のように基材層3の内面の剥離強度よりも小さく、基材層3の内面の剥離強度に対して基材層3の外面の剥離強度は、5%以上80%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。基材層3の内面の剥離強度に対する外面の剥離強度の割合が上記上限値を超えると、ゲル層5とその内側の基材層3とを剥離する際にゲル層5とその外側の基材とが剥離されてしまうおそれがある。逆に、上記割合が上記下限値未満であると、基材層3の外面の離型性を高める必要からこの外面の離型処理にコストが嵩むおそれがある。
【0041】
また、上記基材層3は、低透湿性の層から構成されており、具体的には層厚方向に貫通する貫通孔が形成されておらず層厚方向に水蒸気等の揮発成分の透過が抑制されるよう構成されている。
【0042】
上記基材層3は、上述のように合成樹脂シートから構成したが、その他、合成樹脂シートと他の層との複層構造から構成することも可能である。つまり、この基材層3としては、プラスチックシート単体の場合のほか、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なシート状体を用いることができ、さらにこのシート状体に合成樹脂層を積層したものを用いることができる。但し、基材層3としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等からなる合成樹脂シートが、取扱い容易性等の観点から好適に用いられる。
【0043】
上記基材層3の厚さは、特に限定されないが、基材層3の厚さの下限値としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。他方、基材層3の厚さの上限値としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。基材層3の厚さが上記下限値未満であると、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがある。また、基材層3の厚さが上記上限値を超えると、基材層3の剛軟度が大きくなってしまい、剥離作業の困難性をもたらすおれそがあるためである。
【0044】
上記基材層3の透湿度は、1000g/m・24hr以下であることが好ましく、100g/m・24hr以下であることがより好ましく、50g/m・24hr以下であることがさらに好ましい。透湿度が上記上限値を超えると、ゲル層5に含有される揮発成分が基材層3側に揮発するのを十分に抑制できないおそれがあるためである。ここで、この透湿度は、JIS Z0208カップ法に準拠して温度40℃、相対湿度90%で測定した測定値である。
【0045】
上記基材層3の剛軟度は、20mm以上150mm以下であることが好ましい。この剛軟度の下限値は、40mmがより好ましく、60mmがさらに好ましい。一方、上記剛軟度の上限値は、100mmがより好ましく、80mmがさらに好ましい。基材層3の剛軟度が上記下限値未満であると、ゲル層5を肌部に貼付するまでに、自重によって多層シート1が撓み過ぎて、基材層3からゲル層5が不用意に剥離したり、ゲル層5が破損するおそれがあり、この貼付の際のハンドリング性が低下するおそれがある。逆に、基材層3の剛軟度が上記上限値を超えると、基材層3の柔軟性が低下し、肌部への貼付後に基材層3を剥離する際に、基材層3が撓みにくく剥離し難くなるおそれがある。なお、「剛軟度」とは、JIS L 1096 6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定される値である。
【0046】
<ゲル層5>
ゲル層5は、溶媒にゲル化剤及び化粧用有効成分を添加したものをゲル化したゲル体からなるマトリックスと、このマトリックスに含有される化粧用有効成分とを有する。
【0047】
上記ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、アルブミン、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド、ペクチン、マルメロ、澱粉等を用いることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。これらの中でも、弾力性が高く、保水性及び生体への安全性を有するゼラチンが特に好ましい。
【0048】
上記ゼラチンはコラーゲンの加水分解タンパク質であり、牛骨、牛皮、豚皮、魚鱗等を原料とする。これらの中でも、生体への親和性と肌部への有効成分を有する、豚皮由来ゼラチン、魚鱗由来ゼラチンが好ましい。ゼラチンの製造方法については特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、塩酸や硫酸などの無機酸に数十時間浸漬させて前処理した後にゼラチンを抽出する酸処理法、消石灰の懸濁液中に数ヶ月含浸させて前処理した後にゼラチンを抽出するアルカリ処理法等を用いることができる。また、上記酸処理法又はアルカリ処理法で製造したゼラチンを酵素処理によって低分子化したゼラチンを用いることもできる。
【0049】
また上記ゼラチンとしては、ゼラチン誘導体を用いることもできる。このゼラチン誘導体としては、公知の誘導体を使用することができ、例えば、ゼラチンの酸無水物付加体(例えばフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンなど)、ラクトン付加体(グルコノ−δ−ラクトン付加ゼラチンなど)、アシル化ゼラチン(アセチル化ゼラチンなど)、エステル化ゼラチン(メチルエステル化ゼラチンなど)、ゼラチン有機酸塩等(ゼラチン−酢酸塩、ゼラチン−ステアリン酸塩、ゼラチン−安息香酸塩等)を挙げることができる。これらの中でも、生体への親和性の点から、コハク化ゼラチン、フタル化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンが好ましい。
【0050】
上記ゲル体は、ゲル化剤として上記ゼラチン又はその誘導体を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、ゼラチンとその誘導体とを混合して用いてもよく、さらにコラーゲンを含有してもよい。
【0051】
上記のようにゼラチン又はその誘導体を用いる場合、ゼラチン又はその誘導体の重量平均分子量は5000以上60000以下であることが好ましい。この重量平均分子量の下限値は、10000がより好ましく、20000がさらに好ましい。一方、重量平均分子量の上限値としては、50000がより好ましく、40000がさらに好ましい。上記重量平均分子量が上記下限値未満であると、肌部への定着性、強度等が低下する。逆に、上記重量平均分子量が上記上限値を超えると、融解したゼラチンの肌部への浸透性が低下し、またゲル層5の強度が高くなって肌部への貼付時のゲル層5の感触が悪化するおそれがある。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
【0052】
上記ゲル体の融点は、15℃以上40℃以下であることが好ましい。このゲル体の融点の下限値としては、20℃がより好ましく、25℃がさらに好ましく、30℃が特に好ましい。一方、ゲル体の融点の上限値としては、35℃がより好ましく、34℃がさらに好ましく、33℃が特に好ましい。ゲル体の融点が上記下限値未満であると、ゲル層5が融解し易くなり過ぎ取扱い性が低下する。逆に、ゲル体の融点が上記上限値を超えると、ゲル層5が肌部に接触してもゲル層5が融解せず、含有する化粧用有効成分を肌部に十分に浸透及び付着させることができないおそれがある。なお、ゲル体の融点はゲル化剤の含有量又は二種以上のゲル化剤の混合によって調節することができる。
【0053】
上記ゲル層5の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。このゲル層5の厚さの下限値としては、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、ゲル層5の厚さの上限値としては、50μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。厚さが上記下限値未満であると、十分な量の化粧用有効成分を含有させることができないおそれがある。逆に、ゲル層5の厚さが上記範囲より大きいと、ゲル層5の重量が増し、ゲル層5を肌部へ貼付した際の違和感が大きくなる。
【0054】
ゲル層5を形成する溶媒に対する上記ゲル化剤の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。このゲル化剤の含有量の下限値としては、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。一方、ゲル化剤の含有量の上限としては、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。ゲル化剤の含有量が上記下限値未満であると、ゲル層5の強度が低くなり、溶媒及び化粧用有効成分を安定に保つことが困難になるおそれがある。逆に、ゲル化剤の含有量が上記上限値を超えると、ゲル層5の融解時に肌部に浸透せずに付着して残存するゲル化剤の量が増え、肌部からの拭き取りの手間が生じるおそれがあり、さらにはゲル層5が十分な量の化粧用有効成分を含有できなくなるおそれや、ゲル層5の強度が高くなってゲル層5の肌部への貼付時の感触が悪化するおそれがある。
【0055】
ゲル層5には、化粧用有効成分として、例えば肌部に浸透又は付着させることで皮膚を保湿し、滑らかにする働きを奏する化粧水成分を含有している。なお、ゲル層5に含有される化粧用有効成分としては、特に限定されるものではないが、化粧水成分のほか、乳液成分、美容液成分、薬剤などが挙げられる。
【0056】
上記化粧水成分としては、一般に化粧水に用いられている化粧用有効成分を用いることができる。具体的には、例えば、多価アルコール類(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソトリデカン酸、イソノナン酸、ペンタデカン酸等)、糖類(ヒアルロン酸、マルチトール等)、増粘剤類(アルギン酸塩、セルロース誘導体、クインスシードガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸系ポリマー等)、防腐剤類(パラベン、フェノキシエタノール、サリチル酸、ソルビン酸、イソプロピルメチルフェノール等)、収斂剤類、紫外線吸収剤類、アミノ酸類、グリチルリチン酸誘導体類、植物エキス類、pH調整剤、香料、脂溶性ビタミン等を用いることができる。また、皮膚用外用剤として利用される成分も用いることができ、例えば、美白剤、血行促進剤等をあげることができる。
【0057】
上記pH調整剤としては、例えば、有機酸又はその塩を用いることができる。特に、防腐効果を有する有機酸又はその塩を用いることにより、防腐剤の使用量を低減することができる。
【0058】
なお、上記美容液成分としては、一般に美容液に用いられている化粧用有効成分を用いることができる。具体的には、例えば、コラーゲン、蜂蜜、セラミド、トレハロース、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンK、アルジレリン、リコピン、油溶性肝草エキス、水溶性プラセンタエキス、アラントイン、海草エキス、アシル化ケフィライン水溶液、麦芽エキス、N−アセチル−L−チロシン、カッコン、ヒアルロン酸又はその塩類、トラネキサム酸、アイプライトエキス、ゴールデンシール、ローズ油、アミノ酸類、有機ゲルマニウム、マトリカイン、アロエエキス、ヨーグルトの乳清成分、カフェイン、ハイドロキノン等を用いることができる。また、これ以外の美白剤、血行促進剤、しわ防止剤、肌荒れ防止剤、消炎剤等の成分を含有させることができる。
【0059】
上記美白剤としては、例えば、フェルラ酸、L−アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体(アルブチン等)、コウジ酸及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、グリチルリチン酸ジカリウム、胎盤抽出物のほか、茶、丁子、営実、地楡、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、桑白皮、厚朴、デイオスコレアコンポジタ根、インチンコウ、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アセロラ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、オリーブ葉、コンフリー、サクラ、ローズマリー、ロート等の植物抽出液等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0060】
上記血行促進剤としては、例えば、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、米胚芽油、ボダイジュエキス、マロニエエキス、ユズエキス等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0061】
上記しわ防止剤としては、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニル系樹脂等の皮膜剤等を挙げることができる。
【0062】
上記肌荒れ防止剤としては、ヒアルロン酸産生促進、コラーゲン合成促進、グリコサミノグリカン合成促進等の効果を有し、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、レチノール、レチノイン酸、α−ヒドロキシ酸等を挙げることができる。
【0063】
上記消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸ステアレート等)、グアイアズレン及びその誘導体(グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等)、酸化亜鉛、植物エキス(シソ、アロエ、コンフリー、ゲンチアナ、カミツレ、ムラサキ、キンギンカ、セージ、バーチ、トウキンセンカ、ニワトコ、ガマ、オトギリソウ等)等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0064】
また、上記乳液成分としては、一般に乳液に用いられている化粧用有効成分を用いることができ、例えば、保湿剤、油剤及び非イオン性界面活性剤の組合せからなる成分を用いることができる。
【0065】
上記保湿剤としては、例えば、多価アルコール類(ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、糖及び糖アルコール類(グルコース、果糖、蔗糖、ソルビトール、マンニトール等)、アミノ酸類(アスパラギン酸、アルギニン等)、ムコ多糖類又はその塩(ヒアルロン酸(ナトリウム)、コンドロイチン硫酸(ナトリウム)、デルマタン硫酸(ナトリウム)等)、タンパク質又はその分解物(コラーゲン、エラスチン等)、ピロリドンカルボン酸(ナトリウム)等のほか、天然物として、アロエ、アルニカ、イラクサ、イリス、ウスベニアオイ、オトギリソウ、カミツレ、サルビア、シラカバ、スギナ、セイヨウサンザイシ、セイヨウノコギリソウ、タイム、ニンジン、ハマメリス、パンジー、ヒナゲシ、ラベンダー、ローズマリー、レモン、ユーカリ、ダイズ等の植物抽出エキス、ビフィズス菌等の発酵エキス等を挙げることができる。これらの中でも、しっとり感、エモリエント効果を有する点から、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール等)、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、水溶性コラーゲン、アロエ抽出エキス、ローズマリー抽出エキス等が特に好ましい。これらの保湿剤は、単独で使用してもよいが、しっとり効果を増強するために2種以上を組み合せて用いることが好ましい。
【0066】
上記油剤としては、例えば、炭化水素、油脂、脂肪酸、高級アルコール、合成エステル、シリコーン類等を用いることができる。具体的には、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オリーブ油、アーモンド油、カカオ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガト油、ヒマワリ油、月見草油、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニル酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデシルアルコール、コレステロール、イソプロピルミリステート、セチルパルミテート、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、コレステリルエステル、ネオペンチルグリコール脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、シクロメチコン等を挙げることができる。これらの中でも、流動パラフィン、オリーブ油、アーモンド油、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ペンタエリスリトールテトラ2−エチルヘキサン酸エステル、ネオペンチルグリコールジカプリル酸エステル、ジメチルポリシロキサン等が特に好ましい。これらの油剤は、単独で使用してもよいが、使用感を向上させるために2種以上を組み合せて用いることが好ましい。
【0067】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル等が特に好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて使用してもよく、特にソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレン脂肪酸エステルとを組み合わせて使用するのが好ましい。
【0068】
上記乳液成分のpHは、25℃で3.0以上9.0以下が好ましく、5.0以上7.5以下が特に好ましい。pHはクエン酸、乳酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等の塩基で調整することができる。
【0069】
上記化粧用有効成分はその種類に応じて必要量が異なるため、ゲル層5における化粧用有効成分の含有量は適宜決定することが望ましい。一般的には、例えば、ゲル層5を形成する溶媒に対する化粧用有効成分の含有量の下限値としては、0.001質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。一方、化粧用有効成分の含有量の上限値としては、80質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。化粧用有効成分の含有量が下限値未満であると、十分な効果を奏する量の化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができないおそれがある。逆に、化粧用有効成分の含有量が上記上限値を超えると、過度の化粧用有効成分が肌部に浸透又は付着するおそれや、ゲル層5の融解時に液だれが生じるおそれがある。
【0070】
ゲル層5を構成する溶媒としては、水、有機溶剤等を用いることができるが、水が特に好ましい。ゲル層5を構成する溶媒が水であることによって、肌部への貼付時にゲル層5が肌部になじみ易くでき、また、ゲル層5の融解時には肌部へ水分を浸透又は付着させることができる。
【0071】
ゲル層5を形成するためのゲル層形成材料(溶媒、化粧用有効成分及びゲル化剤)に対する上記溶媒の含有量の下限としては、20質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。一方、溶媒の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。溶媒の含有量が上記下限値未満であると、ゲル層5が十分な量の化粧用有効成分を保持できないおそれがある。逆に、溶媒の含有量が上記上限値を超えると、ゲル層5の強度が低くなり、溶媒及び化粧用有効成分を安定に保つことが困難になるおそれがある。
【0072】
<化粧用パックシートロールの製造方法>
当該化粧用パックシートロールの製造方法としては、化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程と、上記ゲル層形成材料からなるゲル層5とこのゲル層5の一方の面側に積層された基材層3とを備える多層シート1を形成する多層シート形成工程と、多層シート1の短手方向に沿ってゲル層5を切断するための切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート1をロール状に巻回する巻回工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート1を切断する切断工程とを有する製造方法を採用できる。
【0073】
上記形成材料配合工程は、溶媒にゲル化剤及び化粧用有効成分を添加してゲル層形成材料を配合する工程である。この形成材料配合工程は、例えば、熱した溶媒に粉末状のゲル化剤及び化粧用有効成分を配合する方法等を用いることができる。
【0074】
上記多層シート形成工程は、基材層3の一方の面にゲル層形成材料を積層する工程であり、例えば形成材料配合工程で配合したゲル層形成材料をゲル化させて基材層3上に積層する工程である。
【0075】
具体的には、この多層シート形成工程として、連続的に流される基材層3の上にゲル層形成材料を塗工し、この塗工されたゲル層形成材料を冷却することでゲル化させてゲル層5を形成する方法等を採用することができる。このゲル層形成材料を塗工する手段としては周知の方法が使用でき、例えば、スリットコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、フローコート法、グラビアコート法、スプレー法、バーコート法等を用いることができる。さらには、ゲル層形成材料を塗工する手段としては、例えばゲル層形成材料を充填機から基材層3に滴下し、さらにゲル層形成材料が滴下された基材層3を振動させて形成材料を均一な層状に形成することも可能である。
【0076】
なお、この多層シート形成工程は、上記方法のほか、ゲル層形成材料からシート状のゲル層5を先に形成し、このシート状のゲル層5と基材層3とを貼り合わせる方法等を採用することも可能である。具体的には、例えば連続的に流される工程紙の上にゲル層形成材料を塗工し、この塗工されたゲル層形成材料を冷却することでゲル化させてシート状のゲル層5を形成しておき、このゲル層5の上に基材層3を積層し、その後工程紙を剥離する方法を採用することができる。なお、基材層3の積層は冷却する前の塗工されたゲル層形成材料に行うことも可能である。
【0077】
切断容易線形成工程は、多層シート1の長手方向所定間隔をあけて複数の切断容易線1aを形成する工程である。この切断容易線形成工程は、多層シート形成工程の後に行うことができ、具体的には、連続的に形成される多層シート1に、その短手方向に沿った切断容易線を間欠的に形成している。
【0078】
なお、切断容易線形成工程は、多層シート形成工程の前や、多層シート形成工程と同時に行うことも可能である。具体的には、予め切断容易線を形成した基材層3を多層シート形成工程に用いる方法や、またゲル層5の形成に際して工程紙を用い、この工程紙に切断容易線形成用の突条部を設けてゲル層5に溝部(切断容易線)を形成する方法や、基材層3等に塗工されたゲル層形成材料に切断容易線を形成しつつ冷却する方法等を採用することが可能である。
【0079】
上記巻回工程は、上記積層工程によって形成された多層シート1を芯材2に巻き付けて、多層シート1をロール状に巻回する工程である。また、上記切断工程は、上記積層工程によって形成された多層シート1を所望の長さに切断する工程である。なお、上記切断工程は巻回工程の後に行うことも可能(連続状の多層シートを一枚の多層シートに切断した後にロール状に巻回することも可能)であるが、巻回工程の後に切断工程を行う(多層シートを全長分巻回した後に多層シートを切断する)ことが好ましい。また、上記巻回工程は、先に上記全長以上の長さの多層シート1を巻回する一次巻回工程と、この一次巻回工程によってロール状に巻回された多層シート1から多層シート1を繰り出して全長分の長さの多層シート1を再度巻回する第二巻回工程とを有することも可能である。また、上記切断工程は、多層シート1を短手方向に切断するほか、長手方向に切断することも可能である。つまり、切断工程の前工程において基材層3等の幅を最終製品の多層シート1の幅以上としておき、この切断工程において最終製品の多層シート1の幅となるよう多層シート1を長手方向に切断することも可能である。
【0080】
<化粧用パックシートロールの使用方法>
当該化粧用パックシートロールは、上述のようにロール状に巻回された状態から多層シート1を的確に引き出すことができる。つまり、当該化粧用パックシートロールのうち最も外側に位置する部分を引き出すに際して、ゲル層5は外側及び内側に基材層3が位置するものの、このゲル層5は外側の基材層3から剥離せずに内側の基材層3から剥離される。すなわち、基材層3は内面における剥離強度が外面における剥離強度よりも大きく設けられるので、上述のように引き出した際にゲル層5は外側に位置する基材層3から剥離せずに内側に位置する基材層3から剥離されることになる。
【0081】
そして、上述のように所望長さ分の多層シート1を引き出し、切断容易線に沿って切断して、この切断した切断片をゲル層5と肌部とが対向する状態で肌部に貼付することができる。このようにゲル層5を肌部に貼付した後に、基材層3を剥離することができる。そして、肌部にゲル層5を貼付した状態としておくと、ゲル層5に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。
【0082】
このように当該化粧用パックシートロールは使用したい長さに切断して使用することができるので、従来の化粧用パックシートに比して、パックに要する費用が高額となることを防止できる。
【0083】
また、当該化粧用パックシートロールは、ゲル層5の外面に基材層3が配設されているので、基材層3によってゲル層5の破損を防止できる。特に、切断容易線1aが基材層3に形成され、基材層3とともにゲル層5を切断できるので、この切断片はゲル層5の外側に基材層3が配設された多層構造となり、この多層シート1の剛軟度が比較的大きく、肌部への貼付までの間にゲル層5が破損することを防止でき、この切断片のハンドリング性が高い。
【0084】
さらに、基材層3は、所定の剛軟度で且つ所定の剥離強度に設けられているので、肌部への貼付後に容易且つ確実に剥離することができる。
【0085】
また、切断片はゲル層5と基材層3との二層構造であるので、肌部に貼付した後基材層3を剥離すると、肌部にはゲル層5のみが貼付された状態となる。そして、このゲル層5は肌部の熱によって融解するため、融解後には不織布等の層状の残存物が肌部に残らず、これにより使用後に残存物を肌部から離脱して廃棄する手間が必要でない。
【0086】
さらに、当該化粧用パックシートロールの切断片を貼付した時に肌部には弾力を有するゲル層5が接触するため、肌部へ密着性が高く、このゲル層5が肌部から熱を吸収するため、清涼感を使用者に与えることができる。さらに、肌部への貼付後に上述のように基材層3を剥離するので、剛軟度を大きい基材層3を有する場合でも、ゲル層5の肌部への密着性を損なわない。
【0087】
また、基材層3は一定以下の透湿度であるため、商品包装状態等においてこの基材層3によってゲル層5からの揮発成分の基材層3側への揮発を防止することができる。
【0088】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の化粧用パックシートロールについて、図3を参酌しつつ以下説明する。なお、第二実施形態の化粧用パックシートロールが、第一実施形態の化粧用パックシートロールと略同一の構成及び機能を有する場合に、その説明を省略することがある。
【0089】
第二実施形態の化粧用パックシートロールは、第一実施形態の化粧用パックシートロールと同様に、ロール状に巻回された多層シート11を有する。第二実施形態の多層シート11は、ゲル層15と、このゲル層15の外面に積層された基材層13と、ゲル層15の内面に剥離可能に積層された剥離層17との三層構造から構成されている。なお、第二実施形態の化粧用パックシートロールの多層シート11は、剥離層17が内側となり基材層13が外側となるようロール状に巻回されているものについて説明するが、剥離層17が外側となり基材層13が内側となるようロール状に巻回することも可能である。
【0090】
また、この多層シート11には、第一実施形態と同様に切断容易線(図示省略)が形成されている。ここで、この切断容易線は、基材層13及びゲル層15のみならず剥離層17まで形成された破断可能な弱化線とすることができる。なお、切断容易線として切離線(切り離された線)を剥離層17に形成することも可能である。
【0091】
上記剥離層17は、第一実施形態の基材層3と略同様のものを採用でき、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等からなる合成樹脂シートが好適に採用できる。
【0092】
上記剥離層17の外面(ゲル層15の積層面)及び上記基材層13の内面(ゲル層15の積層面)はそれぞれ離型処理が施されている。ここで、離型処理は第一実施形態と同様の離型処理を採用でき、特にシリコーン処理が好適に採用できる。
【0093】
ここで、基材層13の内面の剥離強度(ゲル層15に対する剥離強度)は、第一実施形態と同様とすることができ、具体的には0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましい。一方、剥離層17の外面の剥離強度(ゲル層15に対する剥離強度)は、基材層13の内面の剥離強度よりも小さく、基材層13の内面の剥離強度に対して剥離層17の外面の剥離強度は、5%以上80%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。基材層13の内面の剥離強度に対する剥離層17の剥離強度の割合が上記上限値を超えるとゲル層15から剥離層17を剥離する際にゲル層15(の一部)が剥離層17に残存するおそれがある。逆に、上記割合が上記下限値未満だと剥離層17が不用意に剥離されてしまうおそれがある。
【0094】
上記構成の第二実施形態の化粧用パックシートロール製造方法としては、化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程と、上記ゲル層形成材料からなるゲル層15とこのゲル層の外面に積層された基材層13とゲル層15の内面に積層される剥離層17とを備える多層シート11を形成する多層シート形成工程と、多層シート11の短手方向に沿ってゲル層15を切断するための切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、多層シート形成工程により形成された多層シートをロール状に巻回する巻回工程と
を有する製造方法を採用できる。なお、上記製造方法における形成材料配合工程、切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程は第一実施形態と略同様に構成できるので詳細な説明を省略する。
【0095】
上記多層シート形成工程は、第一実施形態と同様に基材層13の一方の面にゲル層形成材料を積層する工程を有し、積層されたゲル層形成材料(又は冷却された後のゲル層15)の一方の面に剥離層17を積層する工程を有する。なお、この多層シート形成工程として、剥離層17の一方の面にゲル層形成材料を積層し、積層されたゲル層形成材料(又は冷却された後のゲル層15)の一方の面に基材層13を積層することも可能である。
【0096】
上記構成からなる第二実施形態の化粧用パックシートロールにあっては、第一実施形態と同様の利点を有するとともに、ゲル層15が基材層13と剥離層17とにより挟まれているので、ロール状の当該化粧用パックシートロールから多層シート11を引き出した際にゲル層15が破損等することを防止することができる。また、基材層13及び剥離層17に切断容易線が形成されているので、引き出した後に切断された切断片が基材層13及び剥離層17を有する三層構造を有しているので、切断片のハンドリング性が高い。
【0097】
また、多層シート11(切断片)から剥離層17を剥離することによって、表出したゲル層15を肌部に貼付して使用することができる。しかも、基材層13の両面が離型性を有するので、切断片を肌部へ貼付した後に基材層13を剥離することができ、このため剛軟度の大きい基材層13を有する場合でも、ゲル層15の肌部への密着性を損なうことがない。
【0098】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の化粧用パックシートロールについて、図4を参酌しつつ以下説明する。なお、第三実施形態の化粧用パックシートロールが、第一又は第二実施形態の化粧用パックシートロールと略同一の構成及び機能を有する場合に、その説明を省略することがある。
【0099】
第三実施形態の化粧用パックシートロールは、第一及び第二実施形態の化粧用パックシートロールと同様に、ロール状に巻回された多層シート21を有する。第三実施形態の多層シート21は、ゲル層25と、このゲル層25の外面に積層された基材層23と、この基材層23の外面に剥離可能に積層された剥離層27との三層構造から構成されている。なお、第三実施形態の化粧用パックシートロールの多層シート21は、剥離層27が外側となりゲル層25が内側となるようロール状に巻回されているものについて説明する。
【0100】
上記基材層23は、多層シート21から剥離層27を剥離した際にゲル層25側に残存する軟質層から構成されている。この基材層23は、主成分としてエラストマー系材料を含む層から形成されている。ここで、基材層23は内面(ゲル層25の積層面)に離型処理が施されている。この基材層23は、ゲル層25と基材層23との剥離強度が、基材層23と剥離層27との剥離強度よりも大きくなるよう構成されており、このためゲル層25と剥離層27とを剥離した際に基材層23がゲル層25側に残存することになる。
【0101】
上記剥離層27は、第二実施形態と略同様のものを採用可能であるが、剥離層27の両面がそれぞれ離型処理を施したものが用いられる。ここで、離型処理は第一及び第二実施形態と同様の離型処理を採用でき、特にシリコーン処理が好適に採用できる。また、基材層23は、上記剥離層27と微接着されており、具体的には粘着剤等により微接着されている。なお、微接着とは、不用意に剥離することがないが剥離する際に容易に剥離可能な程度に接着していることを意味し、上記粘着剤による接着のほか熱ラミネート等によって接着されている場合も含む。
【0102】
上記基材層23と剥離層27との剥離強度は、上記基材層23とゲル層25との剥離強度よりも小さく設けられ、また上記剥離層27とゲル層25との剥離強度よりも大きく設けられている。つまり、基材層23の内面とゲル層25の外面との剥離強度、基材層23の外面と剥離層27の内面との剥離強度、剥離層27の外面とゲル層25の内面との剥離強度の順に大きくなるよう設けられている。
【0103】
この剥離強度について以下具体的に説明する。微接着される基材層23と剥離層27との剥離強度は、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましい。この両層の剥離強度の下限値は、0.03N/50mmがより好ましく、0.1N/50mmがさらに好ましい。一方、この基材層23と剥離層27との剥離強度の上限値は、0.7N/50mmであることがより好ましく、0.2N/50mmであることがさらに好ましい。上記剥離強度が上記下限値未満であると、基材層23と剥離層27との接着力が小さ過ぎ、剥離層27が不用意に剥離するおそれがある。逆に、上記剥離強度が上記上限値を超えると、剥離層27を剥離する際に要する力が大きくなり、剥離層27を容易に剥離できないおそれがあり、ひいては剥離層27の剥離に際してゲル層25を破損してしまうおそれがある。
【0104】
また、基材層23の内面の剥離強度(ゲル層25に対する剥離強度)は、上記基材層23と剥離層27との剥離強度の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上あることがさらに好ましい。基材層23と剥離層27との剥離強度に対する基材層23の内面の剥離強度が上記下限値未満であると、剥離層27を剥離する際に基材層23が剥離層27とともに剥離されてしまうおそれがある。なお、上記基材層23の内面の剥離強度は、基材層23と剥離層27との剥離強度の30倍以内であることが好ましい。
【0105】
さらに、剥離層27の外面の剥離強度(ゲル層25に対する剥離強度)は、上記基材層23と剥離層27との剥離強度に対して、5%以上80%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。上記剥離層27の外面の剥離強度が上記上限値を超えると、ロール状に巻回された状態から多層シート21を引き出した際に引き出される多層シート21のゲル層25の内側の剥離層27(ロール状側の剥離層27)がゲル層25(引き出される側のゲル層25)に追従して剥離されたり、ゲル層25が破損してしまうおそれがある。逆に、上記剥離強度が上記下限値未満であると、剥離層27の外面の離型性を高める必要からこの外面の離型処理にコストが嵩むおそれがある。
【0106】
上記基材層23は、種々のものを採用可能であるが、例えばエラストマー系材料を主成分とする形成材料をシート状に押し出して形成することが可能である。この基材層23の形成材料としてのエラストマー系材料としては、樹脂やゴムを採用可能である。この樹脂は特に限定されるものではないが、例えばウレタン樹脂を採用可能である。このウレタン樹脂としては、例えば、特公昭42−24194号、特公昭46−7720号、特公昭46−10193号、特公昭49−37839号、特開昭50−123197号、特開昭53−126058号、特開昭54−138098号の各公報に開示されたポリウレタン樹脂またはそれらの誘導体を用いることができる。かかる誘導体としては、例えば、イソシアネート末端を持つウレタンプレポリマーやそれらのブロック体(ブロックイソシアネートと呼ばれることもある)が挙げられる。また、上記エラストマー系材料としてのゴムも特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系ゴムを採用することが可能である。ここで、シリコーン系ゴムは、シリコーンゴム単体であるものの他、シリコーンコンパウンド(例えば、ポリエチレン、ボリプロピレン、ポリビニルアルコール等の樹脂と、シリコーンゴムとをブレンドしたもの)を用いることも可能である。
【0107】
上記基材層23は伸縮性を有し、この基材層23の50%引張応力が、0.6N/cm以上4.0N/cm以下であることが好ましく、0.7N/cm以上3.0N/cm以下であることがより好ましく、0.8N/cm以上2.5N/cm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、肌部へのフィット感を維持できるとともに、製造コストの増加するおそれが少ない。なお、この50%引張応力は、JIS−K7115に準拠して測定した値である。
【0108】
上記基材層23の厚さは特に限定されないが、下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方、基材層23の厚さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましい。基材層23の厚さが上記下限値未満であると、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがある。逆に、上記厚さが上記上限値を超えると、ゲル層25を肌部へ貼付した際に基材層23による違和感が生ずるおそれがある。
【0109】
上記基材層23の剛軟度は、特に限定されないが、下限値としては、10mmが好ましく、15mmがより好ましく、20mmがさらに好ましい。一方、基材層23の剛軟度の上限値としては、100mmが好ましく、70mmがより好ましく、40mmがさらに好ましい。基材層23の剛軟度が上記下限値未満であると、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがある。逆に、基材層23の剛軟度が上記上限値を超えると、肌部への貼付時において基材層23とゲル層25との積層体が肌部の形状に沿って変形しにくく、ゲル層25が肌部に接触しない箇所が生ずるおそれがある。なお、「剛軟度」とは、JIS L 1096 6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定される値である。
【0110】
上記構成の第三実施形態の化粧用パックシートロール製造方法としては、化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程と、ゲル層形成材料からなるゲル層25とこのゲル層25の外面に積層される基材層23と基材層23の外面に積層される剥離層27とからなる多層シート21を形成する多層シート形成工程と、多層シート21の短手方向に沿った切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート21をロール状に巻回する巻回工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート21を切断する切断工程とを有する製造方法を採用できる。なお、上記製造方法における形成材料配合工程、切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程は第一実施形態と略同様に構成できるので詳細な説明を省略する。
【0111】
上記多層シート形成工程としては、予め基材層23の一方の面に剥離層27を微接着し、その後基材層23の他方の面にゲル層25を積層する方法を採用することができる。なお、この多層シート形成工程として、基材層23の一方の面にゲル層形成材料を積層し、その後に基材層23の他方の面に剥離層27を微接着する方法を採用することも可能である。
【0112】
上記構成からなる第三実施形態の化粧用パックシートロールにあっては、第一及び第二実施形態と同様の利点を有するとともに、ロール状に巻回された状態において剥離層27とゲル層25とが接触しているものの、剥離層27とゲル層25との剥離強度が他の剥離強度よりも小さいので、ロール状に巻回された状態から多層シート21を引き出すに際して、剥離層27とゲル層25とを容易に剥離して多層シート21を確実に引き出すことができる。また、基材層23と剥離層27との剥離強度が基材層23とゲル層25との剥離強度よりも小さいので、上述のように引き出した多層シート21の基材層23から剥離層27を容易に剥離することができる。このため剛軟度の大きい剥離層27を有する場合でも、ゲル層25の肌部への密着性を損なうことがない。
【0113】
また、剥離層27を剥離した後においても残存する基材層23によってゲル層25を支持することができる。このため、肌部からの熱によって融解していくゲル層25が、肌部からの熱量の相違によって他の部分よりも早く薄くなった部位が生じても、この薄くなった部位からゲル層25に亀裂等が生ずることを基材層23によって抑制することができ、融解していくゲル層25の形状維持に寄与することができる。
【0114】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態の化粧用パックシートロールについて、図5を参酌しつつ以下説明する。なお、第四実施形態の化粧用パックシートロールが、第一、第二又は第三実施形態の化粧用パックシートロールと略同一の構成及び機能を有する場合に、その説明を省略することがある。
【0115】
第四実施形態の化粧用パックシートロールは、第一実施形態等の化粧用パックシートロールと同様に、ロール状に巻回された多層シート31を有する。第四実施形態の多層シート31は、ゲル層35と、このゲル層35の外面に積層された基材層33と、ゲル層35の内面に剥離可能に積層された剥離層37との三層構造から構成されている。なお、第四実施形態の化粧用パックシートロールの多層シート31は、基材層33が外側となり剥離層37が内側となるようロール状に巻回されているものについて説明しているが、剥離層37が外側となり基材層33が内側となるようロール状に巻回することも可能である。なお、基材層33及び剥離層37は第三実施形態と略同様の構成を採用可能であるので、その詳細な説明を省略する。
【0116】
上記剥離層37は、上述のよう第三実施形態と略同様のものを採用可能であるが、剥離層37の一面(外面)に離型処理を施したものが用いられる。ここで、離型処理は第一実施形態等と同様の離型処理を採用でき、特にシリコーン処理が好適に採用できる。また、剥離層37の他面(内面)は特に離型処理を施していないが、離型処理を施すことも適宜設計変更可能である。
【0117】
当該化粧用パックシートロールにあっては、上記基材層33とゲル層35との剥離強度、剥離層37とゲル層35との剥離強度、及び基材層33と剥離層37との剥離強度の順に大きく設けられている。
【0118】
ここで、剥離層37の外面の剥離強度(ゲル層35に対する剥離強度)は、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましい。この剥離層37の外面の剥離強度の下限値は、0.03N/50mmがより好ましく、0.1N/50mmがさらに好ましい。一方、上記剥離強度の上限値は、0.7N/50mmであることがより好ましく、0.2N/50mmであることがさらに好ましい。上記剥離強度が上記下限値未満であると、ゲル層35と剥離層37との接着力が小さ過ぎ、剥離層37が不用意に剥離するおそれがある。逆に、剥離強度が上記上限値を超えると、剥離層37を剥離する際に要する力が大きくなり、剥離層37をゲル層35から容易に剥離できないおそれがある。
【0119】
また、基材層33の内面の剥離強度(ゲル層35に対する剥離強度)は、上記剥離層37の外面の剥離強度(ゲル層35に対する剥離強度)の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上あることがさらに好ましい。剥離層37の外面の剥離強度に対する基材層33の内面の剥離強度が上記下限値未満であると、剥離層37を剥離する際にゲル層35が剥離層37とともに剥離されてしまうおそれがある。なお、上記基材層33の内面の剥離強度は、剥離層27の外面の剥離強度の30倍以内であることが好ましい。
【0120】
また、基材層33と剥離層37とは、特に接着されていない単に積層(巻回)されている状態であり、この基材層33と剥離層37との剥離強度は、上記剥離層37とゲル層35との剥離強度よりも小さい。
【0121】
上記構成の第四実施形態の化粧用パックシートロール製造方法としては、化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程、ゲル層形成材料からなるゲル層35とこのゲル層35の外面に積層される基材層33とゲル層35の内面に積層される剥離層37とからなる多層シート31を形成する多層シート形成工程と、多層シート31の短手方向に沿った切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート31をロール状に巻回する巻回工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート31を切断する切断工程とを有する製造方法を採用できる。なお、上記製造方法における形成材料配合工程、切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程は第一実施形態と略同様に構成できるので詳細な説明を省略する。また、上記多層シート形成工程は、第二実施形態の多層シート形成工程と略同様の構成を採用することができる。
【0122】
上記構成からなる第四実施形態の化粧用パックシートロールにあっては、第一乃至第三実施形態と同様の利点を有するほか、多層シート31の最外層に位置する基材層33と剥離層37とは接着されない状態で巻回されているので、ロール状に巻回された状態から多層シート31を的確に引き出すことができる。また、剥離層37とゲル層35との剥離強度が基材層33とゲル層35との剥離強度よりも小さいので、容易且つ確実に剥離層37を剥離することができる。
【0123】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態の化粧用パックシートロールについて、図6を参酌しつつ以下説明する。なお、第五実施形態の化粧用パックシートロールが、第一、第二、第三又は第四実施形態の化粧用パックシートロールと略同一の構成及び機能を有する場合に、その説明を省略することがある。
【0124】
第五実施形態の化粧用パックシートロールは、第一実施形態等の化粧用パックシートロールと同様に、ロール状に巻回された多層シート41を有し、多層シート41は、基材層43とゲル層45との二層構造からなる。
【0125】
第五実施形態のゲル層45は、多層のマイクロ層(図示例では第一マイクロ層45a、第二マイクロ層45b及び第三マイクロ層45cの三層のマイクロ層)が積層されて構成されている。各マイクロ層45a,45b,45cの材料等の具体的構成は、第一実施形態のゲル層45と同様の構成を採用できるため、第一実施形態と異なる構成のみについて以下説明する。
【0126】
上記複数のマイクロ層45a,45b,45cは、それぞれ異なる化粧用有効成分を含有し、具体的には、複数のマイクロ層45a,45b,45cが、化粧水成分、美容液成分及び乳液成分をこの順に内側のマイクロ層45aから外側のマイクロ層45cにかけて含有している。
【0127】
また、複数のマイクロ層45a,45b,45cを構成するゲル体の融点が、内側(肌部の貼付側)のマイクロ層45aから外側のマイクロ層45cに行くに従って高くなるよう設けられている。
【0128】
上記各マイクロ層45a,45b,45cの厚さは特に限定されるものではないが、厚さの下限値としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、各マイクロ層45a,45b,45cの厚さの上限値としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。各マイクロ層45a,45b,45cの厚さが上記上限値未満であると、十分な量の化粧用有効成分を各マイクロ層45a,45b,45cに含有させることができないおそれがある。逆に、各マイクロ層45a,45b,45cの厚さが上記上限値を超えると、融解時に肌部に浸透せずに付着するゲル化剤の量が増え、肌部からの拭き取りの手間が生じるおそれがあり、さらにはゲル層45の重量が増し、ゲル層45を肌部への貼付した際の違和感が大きくなる。
【0129】
上記ゲル層45の厚さの下限値としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、35μmがさらに好ましい。一方、ゲル層45の厚さの上限値としては、200μmが好ましく、150μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。ゲル層45の厚さが上記範囲より小さいと十分な量の化粧用有効成分を含有させることができないおそれや、肌部への貼付時のハンドリングが困難になるおそれがある。逆に、ゲル層45の厚さが上記上限値を超えると、ゲル層45の重量が増し、ゲル層45を肌部へ貼付した際の違和感が大きくなる。
【0130】
上記構成の第五実施形態の化粧用パックシートロール製造方法としては、化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程、ゲル層形成材料からなるゲル層45とこのゲル層45の外面に積層される基材層43とからなる多層シート41を形成する多層シート形成工程と、多層シート41の短手方向に沿った切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート41をロール状に巻回する巻回工程と、多層シート形成工程により形成された多層シート41を切断する切断工程とを有する製造方法を採用できる。なお、上記製造方法における切断容易線形成工程、巻回工程及び切断工程は第一実施形態と略同様に構成できるので詳細な説明を省略する。
【0131】
上記形成材料配合工程は、各マイクロ層45a,45b,45cに対応したマイクロ層形成材料(ゲル層形成材料)を形成する工程を有している。具体的には、溶媒にゲル化剤及び各マイクロ層45a,45b,45cに対応した化粧用有効成分を添加してゲル層形成材料をそれぞれ配合する工程を有している。
【0132】
また、上記多層シート形成工程は、上記マイクロ層形成材料によって複層のマイクロ層45a,45b,45cからなるゲル層45を形成する工程である。具体的には、基材層43の一方の面に第一マイクロ層45aのマイクロ層形成材料を塗工して、この塗工されたマイクロ層形成材料を冷却してゲル化して第一マイクロ層45aを形成し、この第一マイクロ層45aの一方の面に第二マイクロ層45bのマイクロ層形成材料を塗工して、この塗工されたマイクロ層形成材料を冷却してゲル化して第二マイクロ層45bを形成し、この第二マイクロ層45bの一方の面に第三マイクロ層45cのマイクロ層形成材料を塗工して、この塗工されたマイクロ層形成材料を冷却してゲル化して第三マイクロ層45cを形成し、三層のマイクロ層45a,45b,45cからなるゲル層45を形成している。なお、塗工方法等については既述の実施形態と同様とすることができる。
【0133】
上記構成からなる第五実施形態の化粧用パックシートロールにあっては、第一乃至第四実施形態の使用方法と同様の使用を行うことができ、同様の利点を奏する。さらに、第五実施形態の化粧用パックシートロールにあっては、複数のマイクロ層45a,45b,45cがそれぞれ異なる化粧用有効成分を含有し、特に化粧用有効成分として化粧水成分、美容液成分及び乳液成分が用いられ、上記複数のマイクロ層45a,45b,45cが、これらの化粧水成分、美容液成分及び乳液成分を内側からこの順に含有しているので、当該化粧用パックシートロールのゲル層45の内面を肌部へ貼付することによって、化粧水、美容液、乳液をこの順に肌部に浸透又は付着させ、通常のスキンケアの手順を一度に行うことができ、スキンケアの手間を削減することができる。
【0134】
また、複数のマイクロ層45a,45b,45cを構成するゲル体の融点が、内側のマイクロ層45a,45b,45cから外側のマイクロ層45a,45b,45cに行くに従って高いので、ゲル層45を肌部に貼付した際に、内側にあるマイクロ層45a,45b,45cよりも先に外側にあるマイクロ層45a,45b,45cが融解することを防止することができ、その結果、各マイクロ層45a,45b,45cが含有する化粧用有効成分を内側のマイクロ層45a,45b,45cから順に肌部へ浸透又は付着させることができ、上述のスキンケアを確実に行うことができる。
【0135】
[その他の実施形態]
上記した各実施形態は上記構成によって上記利点を奏するものであったが、本発明は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0136】
つまり、上記各実施形態においては、ゲル層45が肌部の熱によって融解するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばゲル体の融点が40℃を超えるものも本発明の意図する範囲内である。また、上記第五実施形態のマイクロ層45a,45b,45cにおいて、第一マイクロ層45a及び第二マイクロ層45bのゲル体の融点が40℃以下で、第三マイクロ層45cのゲル体について融点が40℃より高いものも本発明の意図する範囲内である。つまり、複数のマイクロ層のうち最外層(肌部への貼付側の反対側の層)以外のマイクロ層45a,45bが、所定の上限値(40℃)以下の融点であり、最外層のマイクロ層45cが、所定の上限値を超えた融点であるものも本発明の意図する範囲内である。また、この場合には、最外層のマイクロ層45cの厚さを300μmとすることも可能である。この場合、最外層のマイクロ層45cの厚さは、100μm以上500μm以下であることが好ましく、150μm以上450μm以下がより好ましく、200μm以上400μm以下がさらに好ましい。
【0137】
また、上述のようにゲル層45が肌部の熱によって全て融解するものでない場合(ゲル層がマイクロ層を有さない単層の場合も含む)、ゲル層45の厚さの上限値は、1000μmであることが好ましく、800μm以下がより好ましく、600μm以下がさらに好ましい。ゲル層45の厚さが上記上限値を超えると肌部に貼付した際に装着感が損なわれるおそれがあるためである。
【0138】
さらに、第五実施形態のようなマイクロ層45a,45b,45cを備える構成を採用した場合、第二乃至第四実施形態のような剥離層37を有する構成を採用することも適宜設計変更可能な事項である。
【0139】
また、第一実施形態においては芯材を有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば芯材を有さずに多層シートのみがロール状に巻回されたものも本発明の意図する範囲内である。
【0140】
また、基材層として、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態においては合成樹脂シートを採用し、第三実施形態及び第四実施形態においては主成分としてエラストマー系材料を含む軟質層を採用したが、本発明において基材層の素材等は特に限定されるものではない。さらに、例えば基材層として、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態において第三実施形態のような軟質層を採用したり、第三実施形態及び第四実施形態においては第一実施形態のような合成樹脂シートを採用することも適宜設計変更可能な事項である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上のように、本発明は、化粧用有効成分を肌部に効果的に浸透又は付着させることができる化粧用パックシートロールに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0142】
1 多層シート
1a 切断容易線
2 芯材
3 基材層
5 ゲル層
11 多層シート
13 基材層
15 ゲル層
17 剥離層
21 多層シート
23 基材層
25 ゲル層
27 剥離層
31 多層シート
33 基材層
35 ゲル層
37 剥離層
41 多層シート
43 基材層
45 ゲル層
45a 第一マイクロ層
45b 第二マイクロ層
45c 第三マイクロ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層シートがロール状に巻回されており、
この多層シートが、
化粧用有効成分を含むゲル層と、
このゲル層の一方の面側に積層される基材層とを備え、
上記多層シートの短手方向に沿ってゲル層を切断するための複数の切断容易線が形成されている
化粧用パックシートロール。
【請求項2】
上記多層シートの短手方向の長さが、1cm以上10cm以下である
請求項1に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項3】
上記複数の切断容易線が長手方向略等間隔に形成され、
この切断容易線同士の間隔が、多層シートの短手方向の長さの1倍以上5倍以内である
請求項1又は請求項2に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項4】
上記ゲル層の厚さが1μm以上1000μm以下である
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項5】
上記ゲル層が、上記化粧用有効成分を含む融点15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスを有する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項6】
上記基材層の両面が離型性を有し、
上記多層シートが、上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層された二層構造であり、
上記基材層の両面のうち一方の面における剥離強度が、一方の面における剥離強度よりも小さい
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項7】
上記基材層の他方の面が離型性を有し、基材層の他方の面に上記ゲル層が積層され、
上記多層シートが、上記ゲル層の他方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項8】
上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層され、
上記多層シートが、上記基材層の一方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造であり、
上記基材層とゲル層との剥離強度、基材層と剥離層との剥離強度、剥離層とゲル層との剥離強度の順に大きい
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項9】
上記ゲル層の一方の面に上記基材層が積層され、
上記多層シートが、上記ゲル層の他方の面に剥離可能に積層される剥離層をさらに備えた三層構造であり、
上記基材層とゲル層との剥離強度、剥離層とゲル層との剥離強度、及び基材層と剥離層との剥離強度の順に大きい
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項10】
上記基材層が、主成分としてエラストマー系材料を含む
請求項8又は請求項9に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項11】
上記ゲル層が複数のマイクロ層からなる積層体である
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項12】
上記マイクロ層の厚さが1μm以上100μm以下である
請求項11に記載の化粧用パックシートロール。
【請求項13】
化粧用有効成分を含むゲル層形成材料を配合する形成材料配合工程と、
上記ゲル層形成材料からなるゲル層とこのゲル層の一方の面側に積層された基材層とを備える多層シートを形成する多層シート形成工程と、
多層シートの短手方向に沿ってゲル層を切断するための切断容易線を形成する切断容易線形成工程と、
多層シート形成工程により形成された多層シートをロール状に巻回する巻回工程と
を有する化粧用パックシートロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112626(P2013−112626A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258167(P2011−258167)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】