化粧用ブラシ
【課題】針状突起の形状、材質、色彩を部分的に異にして多様なバリエーションを生み出すことが可能であり、射出成形が容易で、しかも、成形金型の構造も簡単にすることのできる化粧用ブラシを提供すること。
【解決手段】縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシとする。
【解決手段】縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ等の化粧料を塗布するための化粧用ブラシとしては、ブラシ繊維を2条の金属芯線材で把持しながら螺旋状に捻回したスクリューブラシや、ブラシ繊維を櫛軸周部に植毛した植毛ブラシが用いられてきたが、近時、樹脂材料を使用した一体射出成形により作成された、軸部の表面に軸部の中心方向から放射状に延伸する多数の針状突起を軸部の長手方向に多数設けたブラシが提案され、商品化されている。
例えば、特許文献1に記載された塗布具においては、樹脂を一体射出成形されたブラシ部の塗布域は、同一材料からなる針状突起が、半径方向に360°放射状に規則正しく、且つ、軸方向にも所定の長さだけ規則正しく配列されて形成されている。
【0003】
しかしながら、一体射出成形による場合には、針状突起は同一材質であるため、同一の物性を有することになるが、逆に、部分的に材質や色彩を変えて異なった物性や色感を得たい、との要請に応えることはできない。
更に、一つの金型で一体射出成形するので、一見、容易に、且つ安価に製造できるように思われるが、金型は全ての針状突起に対応する多数の細孔を有するものであり、それらの細孔を樹脂で完全に満たすためには、超高圧で樹脂を射出する必要がある。また、針状突起が径方向に放射状に配列されているため、金型を複雑に加工する必要があり、多額な加工費を要し、しかも、常に同じ形、配列のものしか成形できないため、顧客の多様なニーズに応えるためには、常に新規な金型を作り直さなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針状突起の形状、材質、色彩を部分的に異にして多様なバリエーションを生み出すことが可能であり、射出成形が容易で、しかも、成形金型の構造も簡単にすることのできる化粧用ブラシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、縦方向凹溝を有する軸部と突条形状部分を有する複数の部材を組み合わせて化粧用ブラシを構成することにより、前記課題を解決した。
すなわち本発明は、軸部の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなる化粧用ブラシであって、表面に縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、針状突起の形状、材質、色彩において多様なバリエーションを有する化粧用ブラシを製造することができ、しかも、小さなブラシでも組み立て易く且つ固定もし易いという効果も得ることができる。又、成形金型を簡単で加工の容易な割型とすることができ、その場合には、例えば、針状突起に対応する部分やベント孔を、孔を開けて形成するのではなく、割型の双方に溝を掘って形成することが可能である。更に又、構造の簡単な複数個の構成部材毎に射出成形するので、超高圧で射出しなくとも、針状突起を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の化粧用ブラシの一例の斜視図である。
【図2】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の斜視図(部分)である。
【図3】図2に示した軸部の平面図である。
【図4】本発明の化粧用ブラシの構成部材の一例の斜視図(部分)である。
【図5】図4に示した構成部材の平面図である。
【図6】本発明の化粧用ブラシの軸部における縦方向凹溝の他の例の平面図である。
【図7】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の斜視図(部分)である。
【図8】図7に示した軸部の平面図である。
【図9】図7に示した軸部の正面図(部分)である。
【図10】本発明の化粧用ブラシのコの字形状の構成部材の一例の斜視図である。
【図11】本発明の化粧用ブラシのH字形状の構成部材の一例の斜視図である。
【図12】図7〜9に示した軸部と、図10に示したコの字形状の構成部材及び図11に示したH字形状の構成部材とを組み合わせる順序を示す説明図である。
【図13】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の平面図である。
【図14】図13に示した軸部の正面図(部分)である。
【図15】本発明の化粧用ブラシのH字形状の構成部材の上端の別の形状及びコの字形状若しくはH字形状の構成部材の下端の別の形状を示す斜視図である。
【図16】化粧用ブラシの先端部に隙間のできない、跨線橋型の構成部材の形状の組み合わせの1例を示す斜視図である。
【図17】化粧用ブラシの先端部に隙間のできない、跨線橋型の構成部材の形状の組み合わせの他の例を示す斜視図である。
【図18】化粧用ブラシの先端部にできた隙間を隠す覆いを有するコの字形状の構成部材の2つの例を示す斜視図である。
【図19】本発明の化粧用ブラシの湾曲した軸部の一例と該軸部を2分割した部材を組み合わせて作製する方法を説明するための斜視図及び上面図である。
【図20】湾曲した軸部を有する化粧用ブラシの斜視図である。
【図21】本発明の化粧用ブラシを使用する化粧容器の一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の化粧用ブラシを説明する。尚、以下の説明での上下は、各図面における上下を意味する。
本発明の化粧用ブラシ100は、図1に示すように、軸部120の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起110が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなるものである。
【0010】
本発明の実施態様は、請求項6に記載した如き、軸部の有する縦方向凹溝に柱状の構成部材を組み合わせて構成する態様(態様I)と請求項2に記載した如き、偶数本の縦方向凹溝を有する軸部と軸部の有する縦方向凹溝の2本ずつに対応する脚部を有する跨線橋型の構成部材とを組み合わせて構成する態様(態様II)とがある。
【0011】
先ず態様Iについて、図2〜6に基づいて説明する。
軸部120は、図2、3に示すように、その表面に縦方向凹溝121、122、123、124を有する円柱状であり、構成部材140は、図4、5に示すように、一方表面に針状突起110の縦列を有し、その裏面に突条形状部分141を有する柱状である。
構成部材140は、2列以上の針状突起110の縦列を有しても良いが、構成部材140の成形のし易さからは、各々が1列の針状突起110の縦列を有しているものが好ましい。
軸部120の縦方向凹溝121、122、123、124と構成部材140の突条形状部分141とは、雄雌関係で係合し合う形状となっており、その長さを略同一としている。
【0012】
而して、軸部120の有する縦方向凹溝の本数と同じ個数の構成部材140を、図2における上方から、縦方向凹溝121、122、123、124の各々に、突条形状部分141を挿入し、縦方向凹溝と突条形状部分とを係合して、化粧用ブラシ100を形成する。
軸部120の有する縦方向凹溝の本数は、図2及び図3に示した例では4本であるが、化粧用ブラシ全体に設ける針状突起110の縦列の列数と構成部材140の有する針状突起110の縦列の列数によって適宜決定することができる。但し、組み立ての容易さ等からは、マスカラブラシ及びアイブロウブラシにおいては2本以上で10本以下、ヘアブラシにおいては2本以上で16本以下が適当である。
なお、軸部の有する縦方向凹溝の全部又は一部に対して、当該縦方向凹溝の長さを2以上に分割した長さの構成部材を2個以上使用する形を採ることも可能であり、その場合は、軸部の有する縦方向凹溝の本数よりも多い個数の構成部材を組み合わせることとなる。また、構成部材を挿入していった際、構成部材が軸部の根元から飛び出さないように、軸部の根元にストッパーがあってもよく、その場合は軸部がストッパーの分だけ若干長くなる。
【0013】
縦方向凹溝及び突条形状部分の形状は、互いに雄雌関係で係合し合い、脱落しない形状であれば、特に制限はなく、図2〜5に示した形状の他に、図6に(A)又は(B)として示した如き形状を例示することができる。
軸部と各構成部材とは、必要に応じて、組み合わせの過程又は組み合わせの終了後に、接着剤による接着や超音波による溶着を適用して、全体の固定を確実にしても良い。
【0014】
次いで、態様IIについて、図7〜16に基づいて説明する。
軸部220は、図7〜9に示すように、4本の縦方向凹溝221、222、223、224と、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝221と223とを連結する横方向凹溝231、及び、同じく、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝222と224とを連結する横方向凹溝232を有する円柱状である。
態様IIにおいて、跨線橋型の構成部材としては、図10に示すように、外表面に針状突起110の縦列を有する2本の脚部241、242の上端に連結部243を有するコの字形状の構成部材240と、図11に示すように、外表面に針状突起110の縦列を有する2本の脚部251、252の上端より下がった位置に連結部253を有するH字形状の構成部材250の2種類を使用する。
【0015】
而して、図12に示すように、先ず、図11に示すH字形状の構成部材250を、軸部220の横方向凹溝231の上方から、脚部251と252を、各々、縦方向凹溝221と223とに沿わせて、連結部253が横方向凹溝231内に納まるまで下降させ、次いで、図10に示すコの字形状の構成部材240を、軸部220の横方向凹溝232の上方から、脚部241と242を、各々、縦方向凹溝222と224に沿わせて、連結部243が横方向凹溝232内に納まるまで下降させることにより、化粧用ブラシ100を形成する。
【0016】
このように組み立てることを可能とするために、構成部材の連結部の上下位置と軸部の横方向凹溝の深さとを調節する必要がある。
即ち、コの字形状の構成部材240の連結部243と、H字形状の構成部材250の連結部253とは、軸部220の上面中心部で重ね合わさることになるので、コの字形状の構成部材240の連結部243は、その上面が脚部241、242の上端と同じとなる位置に設けるのに対し、H字形状の構成部材250の連結部253は、その上面から脚部251、252の上端までの高さが、コの字形状の構成部材240の連結部243の厚み(図10中のt1)に等しくなる位置に設ける。
また、これに伴い、軸部220の横方向凹溝232の深さ(図9中のy1)は、コの字形状の構成部材240の脚部241、242の上端から連結部243の下面までの高さ(図10中のt1)に等しくし、横方向凹溝231の深さ(図9中のy2)は、H字形状の構成部材250の脚部251、252の上端から連結部253の下面までの高さ(図10中のt1と図11中のt2との和)に等しくする。
【0017】
図7〜12に示したのは、4本の縦方向凹溝を有する軸部と2個の跨線橋型の構成部材とから構成される例であるが、この例に限定されず、例えば、図13〜14に示すように6本の縦方向凹溝221、222、223、224、225、226を有する軸部と3個の跨線橋型の構成部材、詳しくは、1個のコの字形状の構成部材及び2個のH字形状の構成部材とから構成しても良い。
【0018】
即ち、周方向に2n本(但し、nは1以上の整数)の縦方向凹溝とn本の横方向凹溝を有する軸部と、1個のコの字形状の構成部材及びn−1個のH字形状の構成部材とから構成することができる。
従って、1個のコの字形状の構成部材の連結部の厚みをt1とし、n−1個のH字形状の構成部材の連結部の厚みを、各々、t2、t3、・・・、tnとした場合、n本の横方向凹溝の深さy1、y2、y3、・・・、ynを、各々、y1=t1、y2=t1+t2、y3=t1+t2+t3、・・・・、yn=t1+t2+t3+・・・+tnとすることとなる。
なお、図15の(A)や、後記する、図16の(A)、図17の(A)、(B)に示す如き、両肩部の厚みが脚部より厚いH字形状の構成部材を使用する場合は、「構成部材の連結部」及び「構成部材の連結部の厚み」は、連結部中央の他の構成部材の連結部と重なる部分およびその部分の厚みを意味する。
そして、軸部に対し、先ずH字形状の構成部材を、脚部の上端から連結部の下面までの距離の大きい順に組み合わせ、最後にコの字形状の構成部材を組み合わせて、化粧用ブラシを形成する。
【0019】
態様IIにおいては、跨線橋型の構成部材の脚部は、それ自体が突状形状部分となるが、2本の脚部で連結部を介して軸部を挟む形となっているため、脱落する恐れが少ない。
従って、軸部の縦方向凹溝及び構成部材の突条形状部分である脚部の形状は、互いに雄雌関係で係合し合う形状ではあるが、態様Iの場合のような形状を採る必要はなく、逆に、組み立てを容易にする為には、縦方向凹溝を四角形又はV字形若しくはU字形とし、突条形状部分である脚部をそれに係合し得る形とするのが好ましい。
また、構成部材の脚部の下端を図15(B)の如くに内側に曲げた形とすると共に、対応する形状の凹部を軸部の対応位置に設け、構成部材の軸方向の抜けを防止する方法を採ることができる。但し、その場合には、構成部材の弾性を利用して構成部材を軸部に組み合わせることとなる。
無論、態様Iの場合と同様に、軸部と各構成部材とは、必要に応じて、組み合わせの過程又は組み合わせの終了後に、接着剤による接着や超音波による溶着を適用して、全体の固定を確実にしても良い。
【0020】
図10に示した例では、コの字形状の構成部材240の連結部243の上面にも針状突起110を設けているが、必ずしも設けなくとも良い。又、逆に、図15(A)に示すように、H字形状の構成部材250に於ける両肩部(連結部より上に出ている部分)の厚みを脚部より厚くして、その上面にも針状突起を設ける形としても良い。細部への化粧料の塗布を容易に行うことを可能とする点からは、コの字形状の構成部材の上面を図10の如くにするか、又はH字形状の構成部材の1つの上面を図15の如くにして、針状突起が1列のみある態様が好ましい。
【0021】
図11に示したH字形状の構成部材の如く、両肩部の厚みが脚部と同じである場合には、H字形状の構成部材の連結部の上部の長さとコの字形状の構成部材の連結部の幅とは必ずしも同じとはならないため、軸部と全ての構成部材とを組み合わせて得られた化粧用ブラシの先端部は平坦とはならず、隙間ができることとなるが、跨線橋型の構成部材の形状を適宜変更して、この隙間ができないようにするか、又は、この隙間を隠して、見栄えの良い、デザイン的に優れたものとするのが好ましい。
【0022】
例えば、軸部と2個の跨線橋型の構成部材とで化粧用ブラシを構成する場合には、図16に(A)として示した如き、両肩部の厚みが脚部より厚いH字形状の構成部材250と、(B)として示すコの字形状の構成部材240及び図8に示す軸部220を用い、先ず軸部の縦方向凹溝221、223と横方向凹溝231に(A)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、次に、軸部の縦方向凹溝222、224と横方向凹溝232に(B)のコの字形状の構成部材240を組み合わせることにより、隙間ができないようにすることができる。即ち、図16に示した態様においては、H字形状の構成部材250の連結部253の上部は、幅がコの字形状の構成部材240の連結部243の幅と等しく、深さがコの字形状の構成部材240の連結部243の厚みと等しい切り欠き部となっており、この切り欠き部にコの字形状の構成部材240の連結部243が、隙間なく嵌めこまれる。
【0023】
軸部と3個の跨線橋型の構成部材とで化粧用ブラシを構成する場合には、図17に(A)及び(B)として示した如き、両肩部の厚みが脚部より厚い2個のH字形状の構成部材250と、(C)として示すコの字形状の構成部材240及び図13に示す軸部220を用い、先ず、軸部の縦方向凹溝223、226と横方向凹溝233に(A)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、次に、軸部の縦方向凹溝222、225と横方向凹溝232に(B)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、最後に、軸部の縦方向凹溝221,224と横方向凹溝232に(C)のコの字形状の構成部材240を組み合わせることにより、隙間をできないようにすることができる。
なお、図17に示した態様においても、図16に示した態様と同様に、(A)及び(B)で示すH字形の構成部材250の連結部253の上部の切り欠きは、その部分で重なり合う他の構成部材の連結部の幅及び厚みに合わせた、隙間の生じない幅及び深さとしている。
【0024】
また、図18に(A)及び(B)として示した如き、上部に覆い261、262を設けたコの字形状の構成部材240を用いることにより、隙間ができても、最後に組み合わせたコの字形状の構成部材240の覆い261又は262で隠すことができる。
【0025】
以上、態様I及び態様IIについて説明したが、部品点数が少ないことや組み立ての容易さからは、態様IIの方が有利である。
以下、態様I及び態様IIに共通する事項について説明する。
化粧用ブラシは、軸部が湾曲したものでも差し支えなく、例えば、硬い材質で成形した湾曲形状の軸部に、柔らかい材質で成形した構成部材を軸部の形状に追随させる形で変形させながら、順次組み合わせて、全体として湾曲した形状に製造することができる。
湾曲した軸部は、例えば、図19に斜視図及び上面図で示した如くに、右側の2個の分割した部材を別個に成形し、それらを組み合わせることにより、左端の軸部220を容易に作製することができる。
図20は、湾曲した軸部と突条形状部分を有する構成部材とを組み合わせることにより得られる化粧用ブラシを示すものである。
化粧用ブラシとしては、針状突起が軸部の半径方向に放射状に延伸しているのものが、使い勝手の点から好ましい。
【0026】
針状突起の形状は、断面が円形、楕円形、三角形、四角形やその他の多角形等のいずれでも良い。又、先端まで同じ太さであっても、先端に向かって先細りであるなど、突起内で部分的に異なる太さであっても良く、見た目や触感を和らげる意味で先端は球形にしても良い。更に又、これらの形状に限らず、種々の形状を採ることができる。
構成部材は、全て同じ材質、色彩とする必要はなく、化粧用ブラシとして要求される特性に応じて、構成部材毎に、または、幾つかの構成部材の組み合わせ毎に、材質や色彩、針状突起の形状を異にしてもよく、又は、一つの構成部材でも、場所によって針状突起の形状を異にしてもよい。因みに、図10のコの字形状の構成部材及び図11のH字形状の構成部材では、脚部毎に異なった形状の針状突起を設けている。
【0027】
本発明において、軸部及び構成部材は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を射出成形したものが適当であるが、組み立てを容易にするために、軸部には比較的固い材質の樹脂を、構成部材には比較的柔らかい材質の樹脂を選ぶのが適切である。
熱可塑性樹脂としては、ニトリルゴム、ブチルゴム等の合成ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)等の熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、HDPE・MDPE・LDPE・LLDPE等のポリエチレン(PE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、PET・PBT等のポリエステル樹脂、メタクリル酸エステル重合体等のアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等を使用することができる。
これらの樹脂の中では、特に、組み立て作業性の観点からは、軸部にはポリオレフィン樹脂、PBT、ポリアセタール樹脂が、構成部材には、ポリオレフィン樹脂が望ましく、又、ブラシの良好な使用感の観点からは、構成部材には、熱可塑性エラストマーやポリアミド樹脂が好ましい。
【0028】
本発明の化粧用ブラシを使用する化粧容器は、例えば、図21の平面図に示す如きものであり、容器本体Xと塗布具Yとからなり、塗布具Yは、キャップY1に本発明の化粧用ブラシ100を、直接に、又は適当な支持部材を介して固着して形成する。
塗布具Yは、キャップY1の内周面に設けられた雌ねじ(図示せず)と容器本体Xの上部開口端の外周面に設けられた雄ねじとで螺合することにより、容器本体Xに冠着させ得る形となっている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の、化粧用ブラシは、針状突起の形状、材質、色彩において、多様なバリエーションを生み出すことが可能であり、しかも成形金型を簡単で加工の容易な割型とすることが可能であり、また、射出成形が容易であるので、各種円筒状体、角筒状体、瓶体等の容器に入ったマスカラブラシ、アイブロウブラシや、ヘアブラシとして好適に用いられる。
マスカラブラシなどの微小の一体射出成形ブラシは、金型を複雑に加工しなければならない点やバリエーションを生み出しにくいといった課題が顕著であるが、本発明の化粧用ブラシはこれら微小の一体射出成形ブラシが有する課題を解決することができるため、特にマスカラブラシに用いられることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
100:化粧用ブラシ
110:針状突起
120、220:軸部
121、122、123、124、221、222、223、224、225、226 :縦方向凹溝
231、232、233:横方向凹溝
140:構成部材
240:コの字形状の構成部材
250:H字形状の構成部材
141:突条形状部分
241、242、251、252:脚部
243、253:連結部
261、262:覆い
X:容器本体
Y:塗布具
Y1:キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ等の化粧料を塗布するための化粧用ブラシとしては、ブラシ繊維を2条の金属芯線材で把持しながら螺旋状に捻回したスクリューブラシや、ブラシ繊維を櫛軸周部に植毛した植毛ブラシが用いられてきたが、近時、樹脂材料を使用した一体射出成形により作成された、軸部の表面に軸部の中心方向から放射状に延伸する多数の針状突起を軸部の長手方向に多数設けたブラシが提案され、商品化されている。
例えば、特許文献1に記載された塗布具においては、樹脂を一体射出成形されたブラシ部の塗布域は、同一材料からなる針状突起が、半径方向に360°放射状に規則正しく、且つ、軸方向にも所定の長さだけ規則正しく配列されて形成されている。
【0003】
しかしながら、一体射出成形による場合には、針状突起は同一材質であるため、同一の物性を有することになるが、逆に、部分的に材質や色彩を変えて異なった物性や色感を得たい、との要請に応えることはできない。
更に、一つの金型で一体射出成形するので、一見、容易に、且つ安価に製造できるように思われるが、金型は全ての針状突起に対応する多数の細孔を有するものであり、それらの細孔を樹脂で完全に満たすためには、超高圧で樹脂を射出する必要がある。また、針状突起が径方向に放射状に配列されているため、金型を複雑に加工する必要があり、多額な加工費を要し、しかも、常に同じ形、配列のものしか成形できないため、顧客の多様なニーズに応えるためには、常に新規な金型を作り直さなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針状突起の形状、材質、色彩を部分的に異にして多様なバリエーションを生み出すことが可能であり、射出成形が容易で、しかも、成形金型の構造も簡単にすることのできる化粧用ブラシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、縦方向凹溝を有する軸部と突条形状部分を有する複数の部材を組み合わせて化粧用ブラシを構成することにより、前記課題を解決した。
すなわち本発明は、軸部の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなる化粧用ブラシであって、表面に縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、針状突起の形状、材質、色彩において多様なバリエーションを有する化粧用ブラシを製造することができ、しかも、小さなブラシでも組み立て易く且つ固定もし易いという効果も得ることができる。又、成形金型を簡単で加工の容易な割型とすることができ、その場合には、例えば、針状突起に対応する部分やベント孔を、孔を開けて形成するのではなく、割型の双方に溝を掘って形成することが可能である。更に又、構造の簡単な複数個の構成部材毎に射出成形するので、超高圧で射出しなくとも、針状突起を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の化粧用ブラシの一例の斜視図である。
【図2】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の斜視図(部分)である。
【図3】図2に示した軸部の平面図である。
【図4】本発明の化粧用ブラシの構成部材の一例の斜視図(部分)である。
【図5】図4に示した構成部材の平面図である。
【図6】本発明の化粧用ブラシの軸部における縦方向凹溝の他の例の平面図である。
【図7】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の斜視図(部分)である。
【図8】図7に示した軸部の平面図である。
【図9】図7に示した軸部の正面図(部分)である。
【図10】本発明の化粧用ブラシのコの字形状の構成部材の一例の斜視図である。
【図11】本発明の化粧用ブラシのH字形状の構成部材の一例の斜視図である。
【図12】図7〜9に示した軸部と、図10に示したコの字形状の構成部材及び図11に示したH字形状の構成部材とを組み合わせる順序を示す説明図である。
【図13】本発明の化粧用ブラシの軸部の一例の平面図である。
【図14】図13に示した軸部の正面図(部分)である。
【図15】本発明の化粧用ブラシのH字形状の構成部材の上端の別の形状及びコの字形状若しくはH字形状の構成部材の下端の別の形状を示す斜視図である。
【図16】化粧用ブラシの先端部に隙間のできない、跨線橋型の構成部材の形状の組み合わせの1例を示す斜視図である。
【図17】化粧用ブラシの先端部に隙間のできない、跨線橋型の構成部材の形状の組み合わせの他の例を示す斜視図である。
【図18】化粧用ブラシの先端部にできた隙間を隠す覆いを有するコの字形状の構成部材の2つの例を示す斜視図である。
【図19】本発明の化粧用ブラシの湾曲した軸部の一例と該軸部を2分割した部材を組み合わせて作製する方法を説明するための斜視図及び上面図である。
【図20】湾曲した軸部を有する化粧用ブラシの斜視図である。
【図21】本発明の化粧用ブラシを使用する化粧容器の一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の化粧用ブラシを説明する。尚、以下の説明での上下は、各図面における上下を意味する。
本発明の化粧用ブラシ100は、図1に示すように、軸部120の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起110が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなるものである。
【0010】
本発明の実施態様は、請求項6に記載した如き、軸部の有する縦方向凹溝に柱状の構成部材を組み合わせて構成する態様(態様I)と請求項2に記載した如き、偶数本の縦方向凹溝を有する軸部と軸部の有する縦方向凹溝の2本ずつに対応する脚部を有する跨線橋型の構成部材とを組み合わせて構成する態様(態様II)とがある。
【0011】
先ず態様Iについて、図2〜6に基づいて説明する。
軸部120は、図2、3に示すように、その表面に縦方向凹溝121、122、123、124を有する円柱状であり、構成部材140は、図4、5に示すように、一方表面に針状突起110の縦列を有し、その裏面に突条形状部分141を有する柱状である。
構成部材140は、2列以上の針状突起110の縦列を有しても良いが、構成部材140の成形のし易さからは、各々が1列の針状突起110の縦列を有しているものが好ましい。
軸部120の縦方向凹溝121、122、123、124と構成部材140の突条形状部分141とは、雄雌関係で係合し合う形状となっており、その長さを略同一としている。
【0012】
而して、軸部120の有する縦方向凹溝の本数と同じ個数の構成部材140を、図2における上方から、縦方向凹溝121、122、123、124の各々に、突条形状部分141を挿入し、縦方向凹溝と突条形状部分とを係合して、化粧用ブラシ100を形成する。
軸部120の有する縦方向凹溝の本数は、図2及び図3に示した例では4本であるが、化粧用ブラシ全体に設ける針状突起110の縦列の列数と構成部材140の有する針状突起110の縦列の列数によって適宜決定することができる。但し、組み立ての容易さ等からは、マスカラブラシ及びアイブロウブラシにおいては2本以上で10本以下、ヘアブラシにおいては2本以上で16本以下が適当である。
なお、軸部の有する縦方向凹溝の全部又は一部に対して、当該縦方向凹溝の長さを2以上に分割した長さの構成部材を2個以上使用する形を採ることも可能であり、その場合は、軸部の有する縦方向凹溝の本数よりも多い個数の構成部材を組み合わせることとなる。また、構成部材を挿入していった際、構成部材が軸部の根元から飛び出さないように、軸部の根元にストッパーがあってもよく、その場合は軸部がストッパーの分だけ若干長くなる。
【0013】
縦方向凹溝及び突条形状部分の形状は、互いに雄雌関係で係合し合い、脱落しない形状であれば、特に制限はなく、図2〜5に示した形状の他に、図6に(A)又は(B)として示した如き形状を例示することができる。
軸部と各構成部材とは、必要に応じて、組み合わせの過程又は組み合わせの終了後に、接着剤による接着や超音波による溶着を適用して、全体の固定を確実にしても良い。
【0014】
次いで、態様IIについて、図7〜16に基づいて説明する。
軸部220は、図7〜9に示すように、4本の縦方向凹溝221、222、223、224と、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝221と223とを連結する横方向凹溝231、及び、同じく、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝222と224とを連結する横方向凹溝232を有する円柱状である。
態様IIにおいて、跨線橋型の構成部材としては、図10に示すように、外表面に針状突起110の縦列を有する2本の脚部241、242の上端に連結部243を有するコの字形状の構成部材240と、図11に示すように、外表面に針状突起110の縦列を有する2本の脚部251、252の上端より下がった位置に連結部253を有するH字形状の構成部材250の2種類を使用する。
【0015】
而して、図12に示すように、先ず、図11に示すH字形状の構成部材250を、軸部220の横方向凹溝231の上方から、脚部251と252を、各々、縦方向凹溝221と223とに沿わせて、連結部253が横方向凹溝231内に納まるまで下降させ、次いで、図10に示すコの字形状の構成部材240を、軸部220の横方向凹溝232の上方から、脚部241と242を、各々、縦方向凹溝222と224に沿わせて、連結部243が横方向凹溝232内に納まるまで下降させることにより、化粧用ブラシ100を形成する。
【0016】
このように組み立てることを可能とするために、構成部材の連結部の上下位置と軸部の横方向凹溝の深さとを調節する必要がある。
即ち、コの字形状の構成部材240の連結部243と、H字形状の構成部材250の連結部253とは、軸部220の上面中心部で重ね合わさることになるので、コの字形状の構成部材240の連結部243は、その上面が脚部241、242の上端と同じとなる位置に設けるのに対し、H字形状の構成部材250の連結部253は、その上面から脚部251、252の上端までの高さが、コの字形状の構成部材240の連結部243の厚み(図10中のt1)に等しくなる位置に設ける。
また、これに伴い、軸部220の横方向凹溝232の深さ(図9中のy1)は、コの字形状の構成部材240の脚部241、242の上端から連結部243の下面までの高さ(図10中のt1)に等しくし、横方向凹溝231の深さ(図9中のy2)は、H字形状の構成部材250の脚部251、252の上端から連結部253の下面までの高さ(図10中のt1と図11中のt2との和)に等しくする。
【0017】
図7〜12に示したのは、4本の縦方向凹溝を有する軸部と2個の跨線橋型の構成部材とから構成される例であるが、この例に限定されず、例えば、図13〜14に示すように6本の縦方向凹溝221、222、223、224、225、226を有する軸部と3個の跨線橋型の構成部材、詳しくは、1個のコの字形状の構成部材及び2個のH字形状の構成部材とから構成しても良い。
【0018】
即ち、周方向に2n本(但し、nは1以上の整数)の縦方向凹溝とn本の横方向凹溝を有する軸部と、1個のコの字形状の構成部材及びn−1個のH字形状の構成部材とから構成することができる。
従って、1個のコの字形状の構成部材の連結部の厚みをt1とし、n−1個のH字形状の構成部材の連結部の厚みを、各々、t2、t3、・・・、tnとした場合、n本の横方向凹溝の深さy1、y2、y3、・・・、ynを、各々、y1=t1、y2=t1+t2、y3=t1+t2+t3、・・・・、yn=t1+t2+t3+・・・+tnとすることとなる。
なお、図15の(A)や、後記する、図16の(A)、図17の(A)、(B)に示す如き、両肩部の厚みが脚部より厚いH字形状の構成部材を使用する場合は、「構成部材の連結部」及び「構成部材の連結部の厚み」は、連結部中央の他の構成部材の連結部と重なる部分およびその部分の厚みを意味する。
そして、軸部に対し、先ずH字形状の構成部材を、脚部の上端から連結部の下面までの距離の大きい順に組み合わせ、最後にコの字形状の構成部材を組み合わせて、化粧用ブラシを形成する。
【0019】
態様IIにおいては、跨線橋型の構成部材の脚部は、それ自体が突状形状部分となるが、2本の脚部で連結部を介して軸部を挟む形となっているため、脱落する恐れが少ない。
従って、軸部の縦方向凹溝及び構成部材の突条形状部分である脚部の形状は、互いに雄雌関係で係合し合う形状ではあるが、態様Iの場合のような形状を採る必要はなく、逆に、組み立てを容易にする為には、縦方向凹溝を四角形又はV字形若しくはU字形とし、突条形状部分である脚部をそれに係合し得る形とするのが好ましい。
また、構成部材の脚部の下端を図15(B)の如くに内側に曲げた形とすると共に、対応する形状の凹部を軸部の対応位置に設け、構成部材の軸方向の抜けを防止する方法を採ることができる。但し、その場合には、構成部材の弾性を利用して構成部材を軸部に組み合わせることとなる。
無論、態様Iの場合と同様に、軸部と各構成部材とは、必要に応じて、組み合わせの過程又は組み合わせの終了後に、接着剤による接着や超音波による溶着を適用して、全体の固定を確実にしても良い。
【0020】
図10に示した例では、コの字形状の構成部材240の連結部243の上面にも針状突起110を設けているが、必ずしも設けなくとも良い。又、逆に、図15(A)に示すように、H字形状の構成部材250に於ける両肩部(連結部より上に出ている部分)の厚みを脚部より厚くして、その上面にも針状突起を設ける形としても良い。細部への化粧料の塗布を容易に行うことを可能とする点からは、コの字形状の構成部材の上面を図10の如くにするか、又はH字形状の構成部材の1つの上面を図15の如くにして、針状突起が1列のみある態様が好ましい。
【0021】
図11に示したH字形状の構成部材の如く、両肩部の厚みが脚部と同じである場合には、H字形状の構成部材の連結部の上部の長さとコの字形状の構成部材の連結部の幅とは必ずしも同じとはならないため、軸部と全ての構成部材とを組み合わせて得られた化粧用ブラシの先端部は平坦とはならず、隙間ができることとなるが、跨線橋型の構成部材の形状を適宜変更して、この隙間ができないようにするか、又は、この隙間を隠して、見栄えの良い、デザイン的に優れたものとするのが好ましい。
【0022】
例えば、軸部と2個の跨線橋型の構成部材とで化粧用ブラシを構成する場合には、図16に(A)として示した如き、両肩部の厚みが脚部より厚いH字形状の構成部材250と、(B)として示すコの字形状の構成部材240及び図8に示す軸部220を用い、先ず軸部の縦方向凹溝221、223と横方向凹溝231に(A)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、次に、軸部の縦方向凹溝222、224と横方向凹溝232に(B)のコの字形状の構成部材240を組み合わせることにより、隙間ができないようにすることができる。即ち、図16に示した態様においては、H字形状の構成部材250の連結部253の上部は、幅がコの字形状の構成部材240の連結部243の幅と等しく、深さがコの字形状の構成部材240の連結部243の厚みと等しい切り欠き部となっており、この切り欠き部にコの字形状の構成部材240の連結部243が、隙間なく嵌めこまれる。
【0023】
軸部と3個の跨線橋型の構成部材とで化粧用ブラシを構成する場合には、図17に(A)及び(B)として示した如き、両肩部の厚みが脚部より厚い2個のH字形状の構成部材250と、(C)として示すコの字形状の構成部材240及び図13に示す軸部220を用い、先ず、軸部の縦方向凹溝223、226と横方向凹溝233に(A)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、次に、軸部の縦方向凹溝222、225と横方向凹溝232に(B)のH字形状の構成部材250を組み合わせ、最後に、軸部の縦方向凹溝221,224と横方向凹溝232に(C)のコの字形状の構成部材240を組み合わせることにより、隙間をできないようにすることができる。
なお、図17に示した態様においても、図16に示した態様と同様に、(A)及び(B)で示すH字形の構成部材250の連結部253の上部の切り欠きは、その部分で重なり合う他の構成部材の連結部の幅及び厚みに合わせた、隙間の生じない幅及び深さとしている。
【0024】
また、図18に(A)及び(B)として示した如き、上部に覆い261、262を設けたコの字形状の構成部材240を用いることにより、隙間ができても、最後に組み合わせたコの字形状の構成部材240の覆い261又は262で隠すことができる。
【0025】
以上、態様I及び態様IIについて説明したが、部品点数が少ないことや組み立ての容易さからは、態様IIの方が有利である。
以下、態様I及び態様IIに共通する事項について説明する。
化粧用ブラシは、軸部が湾曲したものでも差し支えなく、例えば、硬い材質で成形した湾曲形状の軸部に、柔らかい材質で成形した構成部材を軸部の形状に追随させる形で変形させながら、順次組み合わせて、全体として湾曲した形状に製造することができる。
湾曲した軸部は、例えば、図19に斜視図及び上面図で示した如くに、右側の2個の分割した部材を別個に成形し、それらを組み合わせることにより、左端の軸部220を容易に作製することができる。
図20は、湾曲した軸部と突条形状部分を有する構成部材とを組み合わせることにより得られる化粧用ブラシを示すものである。
化粧用ブラシとしては、針状突起が軸部の半径方向に放射状に延伸しているのものが、使い勝手の点から好ましい。
【0026】
針状突起の形状は、断面が円形、楕円形、三角形、四角形やその他の多角形等のいずれでも良い。又、先端まで同じ太さであっても、先端に向かって先細りであるなど、突起内で部分的に異なる太さであっても良く、見た目や触感を和らげる意味で先端は球形にしても良い。更に又、これらの形状に限らず、種々の形状を採ることができる。
構成部材は、全て同じ材質、色彩とする必要はなく、化粧用ブラシとして要求される特性に応じて、構成部材毎に、または、幾つかの構成部材の組み合わせ毎に、材質や色彩、針状突起の形状を異にしてもよく、又は、一つの構成部材でも、場所によって針状突起の形状を異にしてもよい。因みに、図10のコの字形状の構成部材及び図11のH字形状の構成部材では、脚部毎に異なった形状の針状突起を設けている。
【0027】
本発明において、軸部及び構成部材は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を射出成形したものが適当であるが、組み立てを容易にするために、軸部には比較的固い材質の樹脂を、構成部材には比較的柔らかい材質の樹脂を選ぶのが適切である。
熱可塑性樹脂としては、ニトリルゴム、ブチルゴム等の合成ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)等の熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、HDPE・MDPE・LDPE・LLDPE等のポリエチレン(PE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、PET・PBT等のポリエステル樹脂、メタクリル酸エステル重合体等のアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等を使用することができる。
これらの樹脂の中では、特に、組み立て作業性の観点からは、軸部にはポリオレフィン樹脂、PBT、ポリアセタール樹脂が、構成部材には、ポリオレフィン樹脂が望ましく、又、ブラシの良好な使用感の観点からは、構成部材には、熱可塑性エラストマーやポリアミド樹脂が好ましい。
【0028】
本発明の化粧用ブラシを使用する化粧容器は、例えば、図21の平面図に示す如きものであり、容器本体Xと塗布具Yとからなり、塗布具Yは、キャップY1に本発明の化粧用ブラシ100を、直接に、又は適当な支持部材を介して固着して形成する。
塗布具Yは、キャップY1の内周面に設けられた雌ねじ(図示せず)と容器本体Xの上部開口端の外周面に設けられた雄ねじとで螺合することにより、容器本体Xに冠着させ得る形となっている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の、化粧用ブラシは、針状突起の形状、材質、色彩において、多様なバリエーションを生み出すことが可能であり、しかも成形金型を簡単で加工の容易な割型とすることが可能であり、また、射出成形が容易であるので、各種円筒状体、角筒状体、瓶体等の容器に入ったマスカラブラシ、アイブロウブラシや、ヘアブラシとして好適に用いられる。
マスカラブラシなどの微小の一体射出成形ブラシは、金型を複雑に加工しなければならない点やバリエーションを生み出しにくいといった課題が顕著であるが、本発明の化粧用ブラシはこれら微小の一体射出成形ブラシが有する課題を解決することができるため、特にマスカラブラシに用いられることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
100:化粧用ブラシ
110:針状突起
120、220:軸部
121、122、123、124、221、222、223、224、225、226 :縦方向凹溝
231、232、233:横方向凹溝
140:構成部材
240:コの字形状の構成部材
250:H字形状の構成部材
141:突条形状部分
241、242、251、252:脚部
243、253:連結部
261、262:覆い
X:容器本体
Y:塗布具
Y1:キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなる化粧用ブラシであって、表面に縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシ。
【請求項2】
軸部が周方向に偶数本の縦方向凹溝を有し、構成部材が外表面に針状突起の縦列を有し、内裏面に突条形状部分を有する2本の脚部を有する跨線橋型であって、軸部の軸心を挟んだ対角に位置する2本の縦方向凹溝毎に構成部材の脚部を組み合わせてなる請求項1に記載の化粧用ブラシ。
【請求項3】
軸部が周方向に2(1+n)本(但し、nは1以上の整数)の縦方向凹溝を有すると共に、軸部の一方端に、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝を連結する(1+n)本の横方向凹溝を有し、跨線橋型の構成部材がコの字形状又はH字形状を有し、且つ、軸部と1個のコの字形状の構成部材及びn個のH字形状の構成部材とを、横方向凹溝で連結された2本の縦方向凹溝に、各構成部材の2本の脚部を挿入し、構成部材の2本の脚部の連結部を横方向凹溝に収納する形で、コの字形状の構成部材を組み合わせる順番を最後にして、組み合わせてなる請求項2に記載の化粧用ブラシ。
【請求項4】
構成部材の2本の脚部の連結部の長さが前記横方向凹溝の長さと同じであり、1個のコの字形状の構成部材の連結部の連結部の厚みをt1とし、n−1個のH字形状の構成部材の連結部の厚みを、各々、t2、t3、t4、・・・、tnとした場合、n本の横方向凹溝の深さy1、y2、y3、・・・、ynを、各々、y1=t1、y2=t1+t2、y3=t1+t2+t3、・・・・、yn=t1+t2+t3+・・・+tnとしてなる、請求項3に記載の化粧用ブラシ。
【請求項5】
コの字形状の構成部材の連結部の外側表面にも針状突起の縦列を1列設けてなる、請求項3又は4に記載の化粧用ブラシ。
【請求項6】
軸部が周方向に2本以上の縦方向凹溝を有し、構成部材が一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に突条形状部分を有する柱状であって、且つ、軸部と軸部の縦方向凹溝の本数と同数以上の構成部材とを組み合わせてなる請求項1に記載の化粧用ブラシ。
【請求項7】
針状突起が軸部の半径方向に放射状に延伸するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項8】
針状突起の形状又は色彩が、構成部材毎に異なるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項9】
針状突起の縦列が、形状の異なる針状突起で形成されてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧用ブラシが設けられた化粧料容器。
【請求項1】
軸部の表面に、軸部の半径方向に延伸する針状突起が軸部の軸方向に多数本配列された針状突起の縦列が軸部の周方向に多数列配列されてなる化粧用ブラシであって、表面に縦方向凹溝を有する軸部と、一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に該縦方向凹溝と雄雌関係で係合し合う突条形状部分を有する構成部材とを、該縦方向凹溝に該突条形状部分を挿入・係合することにより組み合わせてなる化粧用ブラシ。
【請求項2】
軸部が周方向に偶数本の縦方向凹溝を有し、構成部材が外表面に針状突起の縦列を有し、内裏面に突条形状部分を有する2本の脚部を有する跨線橋型であって、軸部の軸心を挟んだ対角に位置する2本の縦方向凹溝毎に構成部材の脚部を組み合わせてなる請求項1に記載の化粧用ブラシ。
【請求項3】
軸部が周方向に2(1+n)本(但し、nは1以上の整数)の縦方向凹溝を有すると共に、軸部の一方端に、軸心を挟んだ対角に位置する縦方向凹溝を連結する(1+n)本の横方向凹溝を有し、跨線橋型の構成部材がコの字形状又はH字形状を有し、且つ、軸部と1個のコの字形状の構成部材及びn個のH字形状の構成部材とを、横方向凹溝で連結された2本の縦方向凹溝に、各構成部材の2本の脚部を挿入し、構成部材の2本の脚部の連結部を横方向凹溝に収納する形で、コの字形状の構成部材を組み合わせる順番を最後にして、組み合わせてなる請求項2に記載の化粧用ブラシ。
【請求項4】
構成部材の2本の脚部の連結部の長さが前記横方向凹溝の長さと同じであり、1個のコの字形状の構成部材の連結部の連結部の厚みをt1とし、n−1個のH字形状の構成部材の連結部の厚みを、各々、t2、t3、t4、・・・、tnとした場合、n本の横方向凹溝の深さy1、y2、y3、・・・、ynを、各々、y1=t1、y2=t1+t2、y3=t1+t2+t3、・・・・、yn=t1+t2+t3+・・・+tnとしてなる、請求項3に記載の化粧用ブラシ。
【請求項5】
コの字形状の構成部材の連結部の外側表面にも針状突起の縦列を1列設けてなる、請求項3又は4に記載の化粧用ブラシ。
【請求項6】
軸部が周方向に2本以上の縦方向凹溝を有し、構成部材が一方表面に針状突起の縦列を有し、その裏面に突条形状部分を有する柱状であって、且つ、軸部と軸部の縦方向凹溝の本数と同数以上の構成部材とを組み合わせてなる請求項1に記載の化粧用ブラシ。
【請求項7】
針状突起が軸部の半径方向に放射状に延伸するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項8】
針状突起の形状又は色彩が、構成部材毎に異なるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項9】
針状突起の縦列が、形状の異なる針状突起で形成されてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧用ブラシが設けられた化粧料容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−75723(P2012−75723A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224341(P2010−224341)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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