説明

化粧用具

【課題】滑らかな動作を実現できると共に静粛性、及び軽量化を図りうる化粧用具を提供する。
【解決手段】化粧対象部に対して化粧動作を行うマスカラ塗布具10Aを有する化粧用具であって、マスカラ塗布具10Aとアクチュエータ15Aとを一体化する。また、アクチュエータ15Aとして、導電性高分子16A,電解質17、対向電極18A,18B等により構成される導電性高分子アクチュエータを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用具に係り、特に化粧動作を行う化粧施術部が電動で駆動する化粧用具に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧を行う際に使用する化粧用具として種々のものがあるが、その一つしてマスカラを塗布する際に使用するマスカラ塗布具がある。マスカラは、睫毛を濃く、長く、またカールさせるものである。
【0003】
このマスカラを収納するマスカラ容器は、マスカラを収納する容器本体と、マスカラ塗布具(マスカラブラシ)が取り付けられた蓋体とにより構成されている。マスカラ塗布時には、マスカラの施術者は蓋体を容器本体から取り外すことにより、容器本体からマスカラが付着したマスカラ塗布具を引き抜き、蓋体を操作しながらマスカラを睫毛に塗布(施術)する。
【0004】
この睫毛にマスカラを塗布する処理は、かなり面倒な処理である。このため、従来からマスカラ塗布具を駆動装置(モータや振動子等)で回転させたり振動させたりすることにより、マスカラの塗布を容易に行えるように構成された電動マスカラが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−045529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電動マスカラでは駆動装置としてモータや振動子を用いていたため重くなり、使用性が悪いという問題点があった。また、モータや振動子は駆動時に大きな音を発生させるため、この音がうるさいという問題点もあった。
【0007】
また、振動タイプの電動マスカラでは、駆動装置と化粧施術部(ブラシ部分)が離れており、化粧施術部は伝達される振動により間接的に振動する構成であった。このため、化粧施術部が十分に振動せず、睫毛を確実にセパレートすることができず、ボリューム感を出すことができなかった。また、回転タイプの電動マスカラにおいても、化粧施術部が単に回転するだけの構成であったため、やはり睫毛を確実にセパレートすることができず、ボリューム感を出すことができなかった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、静かで滑らかな動作を実現できると共に化粧施術部自体を駆動しうる化粧用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、第1の観点からは、
化粧品の塗布に用いる化粧施術部を有する化粧用具であって、
前記化粧施術部に化粧動作を行わせるアクチュエータを、前記化粧施術部内に一体的に設けたことを特徴とする化粧用具により解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
開示の化粧用具によれば、化粧施術部を滑らかに動作できると共に、軽量化及び静粛性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の第1実施形態であるマスカラ塗布具(化粧用具)を説明するための図であり、(A)は外観図、(B)は断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態である化粧用具を適用したマスカラ容器を示す半断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態であるマスカラ塗布具に組み込まれたアクチュエータの動作原理を説明するための図である。
【図4】図4は本発明の第2実施形態であるマスカラ塗布具(化粧用具)を説明するための図であり、(A)は外観図、(B)は駆動前の断面図、(C)は駆動時における断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態であるマスカラ塗布具に組み込まれたアクチュエータの動作原理を説明するための図である。
【図6】図6は本発明の第3実施形態であるマスカラ塗布具(化粧用具)の断面図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態であるマスカラ塗布具の使用感に関する実験結果を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態であるマスカラ塗布具の静粛性に関する実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の第1実施形態である化粧用具であるマスカラ塗布具を説明するための図である。図1はマスカラ塗布具10Aを説明するための図であり、図2はマスカラ塗布具10Aを適用したマスカラ容器20を示す図である。
【0014】
先ず、図2を用いてマスカラ容器20について説明する。マスカラ容器20は、大略するとマスカラ塗布具10A、容器本体21、蓋体22、及びしごき部材24等により構成されている。
【0015】
容器本体21は、内部にマスカラ(図示せず)が充填される容器である。この容器本体21の上部には、マスカラを取り出すための開口部が形成されている。この開口部は、容器本体21に蓋体22が装着されることにより閉蓋される。
【0016】
マスカラ塗布具10Aは、請求項に記載の化粧施術部に相当するものである。このマスカラ塗布具10Aは、蓋体22に配設されている。また、マスカラ塗布具10Aは、蓋体22を容器本体21に装着すると突出部13がマスカラに浸漬された状態となる。なお、マスカラ塗布具10Aの詳細については、説明の便宜上後述するものとする。
【0017】
しごき部材24は、容器本体21の開口部に装着されている。このしごき部材24は弾性体により構成されており、蓋体22を容器本体21から取り外す際、マスカラ塗布具10A(突出部13)に付着したマスカラをしごくのに使用される。このしごき部材24により、マスカラ塗布具10Aに含ませるマスカラの量を適度に調整することができる。
【0018】
また、蓋体22の内部には、マスカラ塗布具10Aに内設されたアクチュエー15Aを駆動するための各種の電気部品が内設されている。具体的には、蓋体22の内部には、電池25、スイッチ26、駆動回路27等が配設されている。
【0019】
電池25はアクチュエータ15Aの電源となるものであり、ボタン電池が使用されている。なお、本実施形態では蓋体22の小型化を図るためボタン電池を使用しているが、アクチュエータ15Aの電源は必ずしもボタン電池に限定されるものではなく、他の小型電池を用いることも可能である。
【0020】
スイッチ26は、アクチュエータ15AのON/OFFを行うためのものである。このスイッチ26はスイッチノブ26aを有し、このスイッチノブ26aを操作することにより、アクチュエータ15AのON/OFFを行う。
【0021】
駆動回路27は、アクチュエータ15Aの駆動制御を行う電子回路である。この駆動回路27及び前記のスイッチ26は基板28に配設されており、この基板28は蓋体22に固定されている。また、蓋体22に取り付けられた軸部12は中空軸とされており、この軸部12の内部には配線29が配設されている。この配線29は、マスカラ塗布具10A内のアクチュエータ15Aと駆動回路27とを電気的に接続する。
【0022】
本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aは、このような容器本体21と蓋体22とを有するマスカラ容器20に適用することができる。なお、本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aは、必ずしもマスカラ容器20と一体化する必要はなく、美容具としてマスカラ容器と別箇な構成とすることも可能である。
【0023】
次に、マスカラ塗布具10Aについて説明する。
【0024】
マスカラ塗布具10Aは、軸部12、突出部13、及びアクチュエータ15A等とにより構成されている。軸部12と突出部13は、樹脂を一体成型することにより形成されている。樹脂材料としては熱可塑性樹脂を用いることが望ましく、例えばエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセテート等を用いることができる。
【0025】
軸部12は、円柱形状を有している。突出部13は、軸部12の外周表面から外側に向けて突出するよう形成されている。この突出部13は、軸部12から外側に向けて多数突出するよう形成されており、よってこの多数の突出部13はブラシとして機能する。
【0026】
このブラシとして機能する多数の突出部13は、蓋体22が容器本体21に装着された状態では、容器本体21に収納されたマスカラ内に浸漬された状態となっている。マスカラを睫毛に塗布する際、施術者は蓋体22を容器本体21から取り外すことにより、容器本体21からマスカラが付着したマスカラ塗布具10Aを引き抜く。この状態において、ブラシとして機能する多数の突出部13には、マスカラが付着した状態となっている。
【0027】
そして施術者は、蓋体22を操作することにより、突出部13に付着したマスカラを睫毛に塗布する。この際、施術者が直接に蓋体22を操作してマスカラを塗布する方法ではその処理が面倒となり、またモータ等を用いた電動マスカラでは重くモータ音が大きい等の問題点があったことは前述した通りである。
【0028】
本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aは、突出部13が形成された軸部12の内部にアクチュエータ15Aが一体的に配設された構成とされている。このように、マスカラ塗布具10Aとアクチュエータ15Aとが一体化することにより、マスカラ塗布具10A自体にアクチュエータとしての機能を持たせることができる。
【0029】
また本実施形態では、アクチュエータとして人工筋肉を用いたことを特徴としている。人工筋肉には、種々の形態のものが提案されているが、本実施形態では比較的低電力低電圧(例えば、1.5V程度)で駆動すると共に発生力が大きく、かつ構造体が樹脂であるため軽量である導電性高分子アクチュエータを適用した。
【0030】
なお、人工筋肉としては、導電性高分子アクチュエータの他にも誘電エラストマーを利用した人口筋肉、圧電素子を利用した人口筋肉、形状合金を利用した人口筋肉等、種々のものがあるが、化粧用具に適用される人工筋肉としては、上記のように低電圧駆動で一定の駆動力を発揮でき、かつ軽量である必要がある。よって、この条件を満たす人口筋肉であれば、導電性高分子アクチュエータ以外の人口筋肉を用いることも可能である。
【0031】
導電性高分子アクチュエータであるアクチュエータ15Aは、図1(B)に示すように、導電性高分子16A、電解質17、及び対向電極18A,18B等を有した構成とされている。このアクチュエータ15Aは、軸部12の内部に、例えばインサート成形されることにより一体的に配設される。
【0032】
次に、アクチュエータ15Aの動作原理について、図1に加えて図3を用いて説明する。図3は、アクチュエータ15A(導電性高分子アクチュエータ)の基本構成図である。各図に示すように、アクチュエータ15Aは一対の対向電極18A,18Bを有し、この一対の対向電極18A,18Bの中央位置に導電性高分子16Aが配設された構成とされている。また、対向電極18A,18Bと導電性高分子16Aとの間には、電解質17が配設されている。更に、対向電極18A,18Bは、駆動回路27に接続された構成とされている。
【0033】
導電性高分子16Aは、例えば導電性ポリマーであるポリピロールを用いることができる。この導電性高分子16Aは、導電性を有すると共に、イオンをドーパントとして取り込むことが可能な性質を有している。
【0034】
電解質17は特に限定されるものではないが、例えばピロール,チオフェン等を用いることができる。この電解質17は、多孔質とされた樹脂材に含浸された上で、導電性高分子16Aと対向電極18A,18Bとの間に配設される。対向電極18A,18Bは、金属電極である。この対向電極18A,18Bの材料としては、例えば白金,金,銅等を用いることができる。
【0035】
上記構成とされたアクチュエータ15Aにおいて、導電性高分子16Aに電圧を印加したときの動作について説明する。導電性高分子16Aは導電性を有すると共に、イオンをドーパントとして導入又は離脱が特性を有している。
【0036】
図3(A)は、駆動回路27により導電性高分子16Aをマイナス電位とし、対向電極18A,18Bをプラス電位となるよう電圧を印加した場合を示している。この場合、電解質17内のプラスイオンは導電性高分子16Aに導入され、これにより導電性高分子16Aは伸びる動作を行う。
【0037】
これに対し、図3(B)は、駆動回路27により導電性高分子16Aをプラス電位とし、対向電極18A,18Bをマイナス電位となるよう電圧を印加した場合を示している。この場合、導電性高分子16Aのプラスイオンは導電性高分子16Aから離脱し、電解質17内に導入するため、導電性高分子16Aは縮む動作を行う。
【0038】
この現象を利用し、駆動回路27により導電性高分子16Aと対向電極18A,18Bとの間でプラス電位/マイナス電位を所定の周期で変化させて印加することにより、アクチュエータ15Aは伸縮振動(図中左右方向の振動)を行う。この伸縮振動動作により、突出部13も伸縮振動する。
【0039】
前記のようにアクチュエータ15Aはマスカラ塗布具10Aの軸部12の内部に一体的に配設された構成とされている。従って、アクチュエータ15Aが伸縮振動を行うことにより軸部12も伸縮振動を行う。また、軸部12が伸縮振動を行うことにより、軸部12に配設された個々の突出部13も図中左右方向に振動動作を行う。
【0040】
このようにマスカラ塗布具10Aが伸縮振動することにより突出部13が図中左右方向に振動動作するため、施術者が蓋体22を把持しマスカラ塗布具を操作する場合に比べ、容易かつ確実に対してマスカラを睫毛に塗布することができる。また、睫毛にボリューム感を持たせることができ、睫毛を確実にセパレートすることができ、かつ、いわゆるダマやムラを防ぎ良好な仕上がりを実現することができる。
【0041】
また、本実施形態ではアクチュエータ15Aとして導電性高分子アクチュエータ(人工筋肉)を用いている。前記のように導電性高分子アクチュエータは、電圧印加した際に導電性高分子16Aにイオンが導入又は離脱を行うことにより伸縮動作を行うため、モータや振動子と異なり伸縮動作時に音が発生することはない。よって本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aを用いることにより、静粛な状態でマスカラの塗布を行うことができる。
【0042】
また、アクチュエータ15Aは導電性高分子16A、電解質17、及び対向電極18A,18Bからなる簡単な構成であり、また各構成要素は軽量なものである。このため、アクチュエータ15Aの軽量化を図ることができ、マスカラ塗布具10Aの操作性及び使用性を高めることができる。
【0043】
また、導電性高分子アクチュエータであるアクチュエータ15Aは、いわゆるソフトアクチュエータであり、その動作はモータや振動子による機械的振動に比べて滑らかな動作となる。よって、これによってもマスカラ塗布具10Aの使用感を向上させることができる。
【0044】
更に、アクチュエータ15Aは導電性高分子アクチュエータであるため、駆動回路27によりアクチュエータ15Aに印加する電位を制御することにより、収縮状態から伸張状態の任意の状態においてアクチュエータ15Aを停止させることが可能である。また前記のように、マスカラ塗布具10Aの軸部12に配設された個々の突出部13は、アクチュエータ15Aにより図中左右方向に振動動作を行う。
【0045】
このため、軸部12が伸張した状態でアクチュエータ15Aを停止した場合、隣接する突出部13の間の長さ(ピッチ)は長くなる。逆に、軸部12が収縮した状態でアクチュエータ15Aを停止した場合、隣接する突出部13の間の長さ(ピッチ)は短くなる。よって、人によって異なる睫毛に合わせて突出部13のピッチを調整することが可能となり、これによってもマスカラ塗布具10Aの操作性及び使用性を高めることができる。

図7及び図8は、本発明者が実施した実験結果を示している。本発明者は、第1実施形態に係るマスカラ塗布具10Aを複数人のモニターに使用してもらい、その使用性及び静粛性に関する使用結果をアンケート調査する実験を行った。
【0046】
モニターとしては20代〜40代の女性20人に参加してもらい、各モニターにマスカラ塗布具10Aを設けたマスカラ容器20を使用してマスカラの塗布を行ってもらった。そして、使用性に関するアンケートは、(A)セパレート効果と(B)ボリューム効果を項目として挙げ、「とてもある」、「ややある」、「どちらともいえない」、「ややない」、「全くない」の5つの回答から選定してもらう形式を取った。
【0047】
また、静粛性に関するアンケートは、(C)把持部の振動性と(B)騒音性を項目として挙げ、「全く気にならない」、「やや気にならない」、「どちらともいえない」、「やや気になる」、「とても気になる」の5つの回答から選定してもらう形式を取った。
【0048】
図7に示す「(A)セパレート効果」に関する実験結果では、20人のモニターの内、12人がセパレート効果が「とてもある」と回答し、8人がセパレート効果が「ややある」と回答し、「どちらともいえない」、「ややない」、及び「全くない」との回答はなかった。即ち、本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aを用いた場合、100パーセントのモニターがセパレート効果を実感していることなる。
【0049】
また、「(B)ボリューム効果」に関する実験結果では、20人のモニターの内、14人がボリューム効果が「とてもある」と回答し、6人がボリューム効果が「ややある」と回答し、「どちらともいえない」、「ややない」、及び「全くない」との回答はなかった。よって、ボリューム効果に対しても100パーセントのモニターがその効果を実感していることなる。
【0050】
従って図7に示す実験結果より、導電性高分子アクチュエータをアクチュエータ15Aとして使用するマスカラ塗布具10Aを用いることにより、マスカラ塗布時にセパレート効果及びボリューム効果を得ることができることが実証された。
【0051】
図8に示す「(C)把持部の振動性」に関する実験結果では、20人のモニターの内、9人が振動について「全く気にならない」と回答し、8人がが「やや気にならない」と回答し、「どちらともいえない」、「やや気になる」、及び「とても気になる」との回答は合計で3人であった。よって、本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aを用いた場合、80パーセント以上のモニターが把持部の振動を不快としていないことになる。
【0052】
また、「(D)騒音性」に関する実験結果では、20人のモニターの内、7人が騒音について「全く気にならない」と回答し、10人がが「やや気にならない」と回答し、「どちらともいえない」、「やや気になる」、及び「とても気になる」との回答は合計で3人であった。よって、本実施形態に係るマスカラ塗布具10Aを用いた場合、騒音に対しても80パーセント以上のモニターが不快としていないことになる。
【0053】
従って図8に示す実験結果より、導電性高分子アクチュエータをアクチュエータ15Aとして使用するマスカラ塗布具10Aは、把持部の振動及び騒音が少なく静粛性が高いことが実証された。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0055】
図4及び図5は、本発明の第2実施形態である化粧用具を説明するための図である。本実施形態についても、化粧用具としてマスカラ塗布具を例に挙げて説明する。
【0056】
図4は本発明の第2実施形態であるマスカラ塗布具10B(化粧用具)を説明するための図であり、図5はマスカラ塗布具10Bに組み込まれたアクチュエータ15Bの基本構成図である。なお、図4及び図5において、図1乃至図3を用いて説明した構成と対応する構成については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0057】
本実施形態に係るマスカラ塗布具10Bは、アクチュエータ15Bがたわみを発生させるよう構成したことを特徴としている。このアクチュエータ15Bは、図4(B)に示すように、電極として機能する一対の導電性高分子膜30A,30Bの間に、固体電解質成形体31を挟んだ構造とされている。
【0058】
先ず図5を用いて、本実施形態のアクチュエータ15Bの動作について説明する。図5(A)に示すように、導電性高分子膜30A,30Bに電圧を印加していない状態では、アクチュエータ15Bにたわみは発生していない。
【0059】
これに対し、図5(B)に示すように、導電性高分子膜30Aをマイナス電位とすると共に導電性高分子膜30Bをプラス電位とする電圧を印加すると、導電性高分子膜30Aからマイナスイオンが離脱し、導電性高分子膜30Bにマイナスイオンが導入される現象が発生する。
【0060】
これにより、導電性高分子膜30Aではマイナスイオンが離脱することにより収縮が発生し、逆に導電性高分子膜30Bではマイナスイオンが導入されることにより伸長が発生する。よって、アクチュエータ15B全体では、図5(B)に示されるように、アクチュエータ15Bは図中上方向に向けて湾曲した状態となる。
【0061】
また、図5(C)に示すように、導電性高分子膜30Aをプラス電位とすると共に導電性高分子膜30Bをマイナス電位とする電圧を印加すると、導電性高分子膜30Bからはマイナスイオンが離脱し、導電性高分子膜30Aではマイナスイオンが導入される現象が発生する。
【0062】
これにより、導電性高分子膜30Aではマイナスイオンが導入されることにより伸長が発生し、導電性高分子膜30Bではマイナスイオンが離脱することにより収縮が発生する。よって、アクチュエータ15B全体では、図5(C)に示されるように、アクチュエータ15Bは図中下方向に向けて湾曲した状態となる。
【0063】
上記構成とされたアクチュエータ15Bは、図4(B)に示すように、軸部12の内部に、例えばインサート成形されることにより一体的に配設される。また、導電性高分子膜30A,30Bは、駆動回路27に接続される。
【0064】
この駆動回路27は、導電性高分子膜30A,30Bに対して所定のタイミングで電圧を印加する。この際、駆動回路27は各導電性高分子膜30A,30Bに印加する各電位(プラス電位,マイナス電位)を切り替え可能な構成とされている。
【0065】
よって、駆動回路27により導電性高分子膜30A,30Bに印加する電圧の極性を変化させることにより、図5(C)に示すように、マスカラ塗布具10B(化粧施術部)を図中矢印A1,A2方向に湾曲させることが可能となる(図5(C)では、A1方向に湾曲した状態を示している)。
【0066】
このように本実施形態では、マスカラ塗布具10Bを図4(A),(B)に示す直線状と、図4(C)に示す湾曲状態とすることが可能となる。また、湾曲の度合いは、導電性高分子膜30A,30Bに印加する電圧の強さで調整することができる。よって、睫毛に個人差があっても、各人に対応した湾曲形状(例えば、睫毛の生え際のカーブに合わせた湾曲形状)のマスカラ塗布具10Bを実現することが可能となる。
【0067】
また、駆動回路27により導電性高分子膜30A,30Bに印加する電圧制御を行うことにより、マスカラの睫毛への塗布を行っている途中にアクチュエータ15Bを駆動してマスカラ塗布具10Bを湾曲させることも可能となる。
【0068】
これにより、睫毛を確実にセパレートさせることができると共に、ボリュームを出すことが可能となる。また、本実施形態においてもアクチュエータ15Bとして導電性高分子アクチュエータを用いているため、軽量化及び静粛性の向上を図るこができると共に、操作性及び使用性を高めることができる。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0070】
図6は、本発明の第3実施形態である化粧用具を説明するための図である。本実施形態についても、化粧用具としてマスカラ塗布具を例に挙げて説明する。なお、図6において、図1乃至図5を用いて説明した構成と対応する構成については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0071】
前記した第1及び第2実施形態に係るマスカラ塗布具10A,10Bでは、アクチュエータ15A,15Bとして導電性高分子アクチュエータを用いた。これに対して本実施形態では、形状記憶合金を駆動源とするアクチュエータ15Cを用いたことを特徴としている。このアクチュエータ15Cは、前記の第1及び第2実施形態と同様に、マスカラ塗布具10Cの軸部12に一体的に設けられている。
【0072】
アクチュエータ15Cは、繊維状の形状記憶合金を束ねて線材状にし、これをコイル状に巻回した構造を有している。このアクチュエータ15Cは、ヒータ40に巻回された構成とされている。
【0073】
ヒータ40は駆動回路27に接続されており、駆動回路27から給電されることにより加熱する。駆動回路27によりヒータ40に給電されるとヒータ40は加熱し、これによりアクチュエータ15Cも加熱される。また、給電を停止するとヒータ40の温度は低下し、これに伴いアクチュエータ15Cの温度も低下する。
【0074】
アクチュエータ15Cを構成する形状記憶合金は、温度が上昇することにより伸張し、温度が低下することにより収縮する特性を有している。よって、ヒータ40に通電してアクチュエータ15Cを加熱することによりアクチュエータ15Cは伸張し、ヒータ40に対する通電を停止し温度が低下することによりアクチュエータ15Cは収縮する。このように、アクチュエータ15Cが伸縮振動を行うことにより、軸部12も伸縮振動を行い、軸部12に配設された個々の突出部13も図中左右方向に振動動作を行う。
【0075】
よって第1実施形態に係るマスカラ塗布具10Aと同様に本実施形態に係るマスカラ塗布具10Cによっても、睫毛にボリューム感を持たせることができると共にダマやムラを防ぎ良好な仕上がりを実現できる。また、マスカラ塗布具10Cによっても静粛で滑らかな動作を実現できると共に軽量化を図ることができるため、操作性及び使用性の向上も図ることができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0077】
10A,10B,10C マスカラ塗布具
12 軸部
13 突出部
15A,15B,15C アクチュエータ
16A,16B 導電性高分子
17 電解質
18A,18B 対向電極
20 マスカラ容器
21 容器本体
22 蓋体
24 しごき部材
25 電池
26 スイッチ
27 駆動回路
28 基板
30A,30B 導電性高分子膜
31 固体電解質成形体
40 ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品の塗布に用いる化粧施術部を有する化粧用具であって、
前記化粧施術部に化粧動作を行わせるアクチュエータを、前記化粧施術部内に一体的に設けたことを特徴とする化粧用具。
【請求項2】
前記アクチュエータは、導電性高分子アクチュエータであることを特徴とする請求項1記載の化粧用具。
【請求項3】
前記アクチュエータは、温度変化により変形する形状記憶合金であることを特徴とする請求項1記載の化粧用具。
【請求項4】
前記化粧施術部は、軸部と突出部とを具備するブラシであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧用具。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記化粧施術部を振動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化粧用具。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記化粧施術部を湾曲させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化粧用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63262(P2013−63262A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188229(P2012−188229)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)