説明

化粧石板付パネル

【課題】石材の外観表面を呈する化粧石板付パネルとして、軽量、安価であり、しかもシミを生じ難い化粧石板付パネルを提供することを目的とする。
【解決手段】板状石材31の裏側全面に発泡セメントパネル41Aを接合した化粧石板付パネルである。発泡セメントパネル41Aは、パネル本体2と表面補強層43Aの積層構造体である。パネル本体2が、セメントに補強繊維が分散された多孔質成形体7であり、前記表面補強層43Aが、合成樹脂に繊維集合体が埋設状に設けられてパネル本体2に固着されたものである。表面補強層43Aが板状石材31とパネル本体2との間に存在する。表面補強層43Aにより板状石材31の裏面側への水の浸透が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築物・構築物の外壁や内壁、或いは床材などに用いられる化粧石板付パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物等の外壁や内壁、更には床材、柱材などには、意匠性の観点から大理石や御影石といった石材が化粧パネルとして用いられることがある。しかし石材単独の化粧パネルは重いので、施工時の持ち運び性や、建築物への重量負荷の軽減などの観点から軽量化が望まれている。
【0003】
そこで軽量化を図った化粧パネルとして、石材を薄い板状に切り出し、その裏面にハニカム状のアルミニウム基盤を貼り付けたものが提案されている(例えば特許文献1の図3(e)参照)。なお石材の両面に基板を貼り付けてから石材を薄くスライスして2枚に分ける、という方法も知られている。
【0004】
特許文献2,3に示される公知技術は本願出願人の出願に基づくものであり、これらについては後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−294195号公報
【特許文献2】特開2009−74344号公報
【特許文献3】特開2009−74345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の様に薄板状石材にハニカム状アルミニウム基盤を貼り付けた構成とすることにより、石材単体の化粧パネルに比べて軽量となるが、アルミニウムが高価であるために、化粧パネル全体としても高価なものとなる。
【0007】
またハニカム状であるため、このハニカム状の空間を通じて雨水などが侵入することがあり、また内外両面の気温差によってハニカムの空間内で結露を生じること等がある。大理石等のように水に弱い石材では、長時間水に曝されるとシミになる等の問題があるが、上記のように雨水の浸入や結露によって石材の裏面に水分が付着すると、この水分を石材が吸収して表側面に汚れを浮き出させたり、シミを生じる虞がある。因みに各種石材のうち吸水率の高い石材の場合に、上記シミや寒割れなどの問題が顕著に表れる。
【0008】
なお、石材の表側面は水分を拭き取ることによって、シミ等の生成に至ることを防いでいる。ところが石材の裏面への水分付着は取り除くことができず、上記のようなシミになることを完全に防止することはできないのが実情である。
【0009】
そこで本発明においては、石材の外観表面を呈する化粧石板付パネルとして、軽量、安価であり、しかもシミを生じ難い化粧石板付パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る化粧石板付パネルは、板状石材の裏側全面に発泡セメントパネルを接合したものであり、前記発泡セメントパネルが、パネル本体と表面補強層の積層構造体であり、前記パネル本体が、セメントに補強繊維が分散された多孔質成形体であり、前記表面補強層が、合成樹脂に繊維集合体が埋設状に設けられて前記パネル本体に固着されたものであって、該表面補強層が少なくとも前記板状石材と前記パネル本体との間に存在することを特徴とする。
【0011】
当初、上記繊維集合体としてガラス繊維を用いた上記表面補強層では、合成樹脂とガラス繊維の馴染みが不十分になって水の浸入移動通路になるのではないかとの危惧を抱いたが、予想に反し、上記表面補強層は良好な防水性を発揮することを見出した。
【0012】
従って上記補強層を有する発泡セメントパネルを板状石材の裏面に接合した化粧板材付きパネルであれば、セメントパネル側から板状石材への水分浸入及び水分付着を防止できることを見出した。
【0013】
結局本発明の化粧石板付パネルによると、軽量化に関しては、上記発泡セメントパネルのパネル本体が多孔質成形体であることにより、比重が小さく、この発泡セメントパネルを板状石材に接合した化粧石板付パネルは全体として軽量となる。
【0014】
板状石材裏面への水分付着に関しては、板状石材の裏側全面に発泡セメントパネルの表面補強層側が接合されているので、たとえ発泡セメントパネルのパネル本体に水が浸透しても、この水分の板状石材への浸透は表面補強層によって阻止される。即ち表面補強層が防水層としての役割を発揮し、板状石材への水分の付着や浸透を防止する。
【0015】
更に表面補強層は合成樹脂に繊維集合体を埋設したものであるから、表面に凹凸があり、発泡セメントパネルと板状石材を接着剤等で接合する際に、この凹凸がアンカー効果を発揮し、接着が良好となり、衝撃や振動による板状石材の剥離や脱落事故を防止できる。
【0016】
なお壁材等に無垢の石材を使用する場合には表裏面に防水処理を施しており、特に裏面へは防水シートを貼付することが行われる。しかし本発明のように板状石材の裏面に発泡セメントパネルを接合した化粧石板付パネルでは、上述の様に化粧石板付パネルの表面補強層が防水効果を発揮するので、板状石材の裏面への防水処理が不要となり、また化粧石板付パネルの裏面に防水シートを設ける必要もない。
【0017】
しかも上記発泡セメントパネルは安価に構成できるので、この発泡セメントパネルに板状石材を接合した上記化粧石板付パネルも、石材単体のものに比べて、安価となる。
【0018】
ところで、例えば前掲の特許文献2,3にはコンクリート型枠用パネル等として、発泡セメントのパネルを主体としたものが提案されている。発泡セメントは非常に軽量である反面、強度が不十分となる。そこで上記特許文献2,3では、例えば短繊維ガラスマットを集積した不織布等のシートを合成樹脂に埋設した表面補強層によって発泡セメントパネルの表裏面を被覆したり、必要により発泡セメントパネルの周囲に発泡合成樹脂からなる側部補強層を設ける等の改善が図られている。そして必要により表面保護層を設け、防水を図っている。
【0019】
本発明の化粧石板付パネルにおいても、パネル本体の補強の観点から、前記表面補強層が前記パネル本体の表裏両面に設けられものであっても良い。なお以下、パネル本体における板状石材側面を表面、その反対側面を裏面と言うことがある。
【0020】
また前記発泡セメントパネルが、前記パネル本体の周側面に、合成樹脂に繊維集合体が埋設状に設けられてなる側部補強層を設けたものであっても良い。
【0021】
上記側部補強層としては、無発泡の合成樹脂で構成しても良いが、軽量化の観点から発泡合成樹脂で構成しても良い。そして無発泡合成樹脂あるいは発泡合成樹脂に繊維を含浸させたものとすることが好ましい。
【0022】
あるいは前記発泡セメントパネルにおける前記パネル本体の周側面に、繊維集合体を含浸させていない合成樹脂製の側部補強層を設けたものであっても良い。
【0023】
加えて本発明の化粧石板付パネルにおいては、前記発泡セメントパネルの周側面に板状石材が接合されてなり、該周側面の板状石材と前記パネル本体との間に前記側部補強層が存在することが好ましい。
【0024】
本発明の化粧石板付パネルの基本構成は、板状石材の裏面に発泡セメントパネルを接合したもの、言い換えると、発泡セメントパネルの表側面に板状石材を接合したものであるが、さらに上記の通り発泡セメントパネルの周側面に板状石材を接合することで、表側からの外観が無垢の石材のようになり、意匠性に優れる。
【0025】
この場合において上記の通り周側面の板状石材とパネル本体との間に側部補強層が存在するので、周側面の板状石材に対してパネル本体からの水分の浸透が防止され、周側面の板状石材のシミが防止される。
【0026】
また本発明においては、前記板状石材と前記発泡セメントパネルが各種接着剤により接着される。接着剤としては、合成ゴム系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、石膏系接着剤、α−シアノアクリレート系接着剤など、様々な接着剤の使用が可能である。
【0027】
本発明での発泡セメントパネルにおける前記表面補強層の合成樹脂としては、発泡合成樹脂、非発泡合成樹脂のいずれを用いても良いが、発泡合成樹脂であることがより好ましい。発泡合成樹脂を用いることにより、より軽量化を図ることができるからである。
【0028】
なお発泡合成樹脂を用いた表面補強層の場合においても、良好な防水性を発揮することを、実験により確認している。防水性が損なわれない理由は、発泡合成樹脂が実質的に独立気泡構造であることによる。
【0029】
また本発明において、表面補強層や側部補強層の前記合成樹脂としては、硬質ポリウレタンや軟質ポリウレタン等のウレタン系合成樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、硬質塩化ビニル系樹脂、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、その他の樹脂を用いることができる。
【0030】
また前記表面補強層としては、前記繊維集合体として織布もしくは不織布〔長繊維または短繊維によって予めマット状(シート状、フィルム状、ボード状などを含む)に整えたもの〕を用い、これを前記合成樹脂に埋設させたものであっても良く(以下、マットタイプという)、或いは所望の長さにカットされた短繊維(所謂チョップドストランド)をパネル本体にアトランダムに分散させた状態で(この分散させた短繊維が本発明での繊維集合体となる)前記合成樹脂に埋設させたものであっても良い(以下、散布タイプという)。なお以下、上記マットタイプで使用する織布や不織布のことを表面補強布と称する。
【0031】
尚ここで用いられる繊維集合体としては、ガラス繊維で代表される無機繊維の他、天然または合成の有機繊維を挙げることができる。このうちでもガラス繊維が好ましい。
【0032】
加えて、発泡セメントパネルにおいて、前記パネル本体と表面補強層との積層構造体の外周端部を、非発泡合成樹脂製のフィルムやシート、ボード等により、一体に被覆するようにしても良い。なお以下、この様に積層構造体の外周端部に設ける上記フィルムやシート、ボード等を端部保護シートと称する。
【0033】
また、前記パネル本体と表面補強層との積層構造体の更に表裏面を、非発泡合成樹脂製のフィルムやシート、ボード等により、一体に被覆するようにしても良い。なお以下、このように積層構造体の更に表裏面に設ける上記フィルムやシート、ボード等を表面保護層と称する。
【0034】
ここで使用される素材としては前記表面補強層の素材として使用されるものを再掲することができる。そして表面保護層は表面補強層に次いで、または同時に形成しても良いが、同時に形成するときは同一素材を用いることができる。
【0035】
以下、化粧石板付パネルにおける発泡セメントパネルを説明するが、まずは好適実施技術を代表的に取り上げることとし、パネル本体の側端面に側部補強層を備えず、パネル本体の表面、または表裏両面に、合成樹脂と繊維集合体から構成される表面補強層を備えた発泡セメントパネル(以下この発泡セメントパネルを小口なしタイプという)について述べる。
【0036】
上述の様に発泡セメントパネル(小口なしタイプ)は、前記パネル本体の表面に表面補強層(合成樹脂に繊維集合体が埋設された層)が被覆されたものである。具体的に述べると、発泡セメントパネルにおけるパネル本体としては、例えばセメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化した多孔質成形体からなり、該成形体中に前記補強繊維及び泡を分散状態で含有してなり、比重が0.5〜1.0の範囲内であるものが挙げられる。なおパネル本体の成形に際しては、シラスなどの軽量骨材を配合しても良い。
【0037】
前記混練物中においては、補強繊維を、セメント100質量部に対して1〜5質量部を配合することが好ましい。前記補強繊維としては、ビニロンが好ましい。前記補強繊維の繊維長は、4〜35mmの範囲であることが好ましい。
【0038】
本発明の化粧石板付パネルにおける小口なしタイプの発泡セメントパネルの製造方法の例〔その1(マットタイプの表面補強層の例)〕としては、密閉可能な製品用成形型内に発泡セメントからなるパネル本体を配置するとともに、前記製品用成形型の内面とパネル本体の表面間に、織布又は不織布からなる表面補強布が埋設状に配置されるように発泡性合成樹脂を充填し、この状態で前記製品用成形型を型閉じして発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、表面補強層(表面補強布が埋設された合成樹脂)にて、前記パネル本体の表面を一体に被覆することが挙げられる。なお表面補強布(織布又は不織布)を用いたマットタイプに代えて、短繊維を分散的に散布して構成する散布タイプでも良い(以下、同じ)。
【0039】
本発明の化粧石板付パネルにおける小口なしタイプの発泡セメントパネルの製造方法の例〔その2(マットタイプの表面補強層の例)〕としては、密閉可能な製品用成形型の内面に、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを配置させた状態で、前記製品用成形型内に発泡セメントからなるパネル本体を配置させるとともに、前記表面保護層の内面とパネル本体の表面間に、織布又は不織布からなる表面補強布が埋設状に配置されるように発泡性合成樹脂を充填し、この状態で前記製品用成形型を型閉じして発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、前記表面補強布が埋設された発泡合成樹脂(表面補強層)にて、前記パネル本体の表面を一体に被覆すると同時に、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを前記発泡性合成樹脂にてパネル本体に接着することが挙げられる。
【0040】
前記製造方法のその1、その2の例において、前記発泡セメントからなるパネル本体の製造方法としては、下述の第1のパネル本体の製造方法、第2のパネル本体の製造方法のいずれかを採用することができる。
【0041】
第1のパネル本体の製造方法は、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化する工程を設け、1つのセメント用成形型内で1つのパネル本体を成形するものである。
【0042】
第2のパネル本体の製造方法は、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化して多孔質成形体を製造する工程と、前記多孔質成形体をスライスしてパネル本体を製作する工程とを設けたもので、セメント成形型内でパネル本体よりも大きなブロック状の多孔質成形体を製作し、これを設定厚さにスライスしてパネル本体を製作するものである。
【0043】
また、前記パネル本体の外周端部を端部保護シートにより被覆する工程を備えさせることができる。
【0044】
次に、発泡セメントパネルのうち、パネル本体の周側面に側部補強層を備えた発泡セメントパネル(以下、この発泡セメントパネルを小口付きタイプという)について更に述べる。
【0045】
小口付きタイプの発泡セメントパネルは、パネル本体の表面(或いは表裏面)に表面補強層が設けられ、更にパネル本体の周側面に側部補強層を備えたものである。
【0046】
更に、前記パネル本体の側端面と側部補強層間に織布又は不織布からなる側面補強布を埋設状に設け、パネル本体の捩じりに対する強度剛性を高めるようにしても良い。
【0047】
このような側面補強布や、上記表面補強層の繊維集合体としては、製作コストの上昇を抑制するとともに、層間剥離を防止するため、目付を50〜1000g/m2に設定したガラス繊維製の不織布を用いることが好ましい。
【0048】
前記発泡セメントパネルの表裏面に表面保護層が設けられたものにおいて、該表面保護層がその外周端部から剥離しないように、発泡セメントパネルの外周端部を端部保護シートにて一体に被覆することが好ましい。
【0049】
化粧石板付パネルにおける発泡セメントパネル(小口付きタイプ)のパネル本体としては、上述の小口なしタイプのものと同様のものが挙げられる。
【0050】
そして小口付きタイプの発泡セメントパネルとして具体的には、例えば、パネル本体の周側面を一体に被覆する発泡合成樹脂からなる側部補強層と、前記パネル本体の周側面と前記側部補強層間に埋設状に設けた織布又は不織布からなる側面補強布と、前記パネル本体及び側部補強層の表面を一体に被覆する表面補強層(合成樹脂に繊維集合体(例えば表面補強布)が埋設されたもの)とを備えたものが、好ましい形態として挙げられる。
【0051】
本発明の化粧石板付パネルにおける小口付きタイプの発泡セメントパネルの製造方法の例〔その3(マットタイプの表面補強層の例)〕としては、パネル本体よりも若干大きな内部空間を有する密閉可能な製品用成形型の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次にパネル本体を製品用成形型の中央部に位置決め載置し、次にパネル本体の外周側及び上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させる。これにより、パネル本体の側端面を側部補強層にて被覆するとともに、表面補強層(表面補強布が埋設された合成樹脂)にてパネル本体及び側部補強層の表面を被覆したものを得ることができる。
【0052】
前記製品用成形型の内面に、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを予め配置させた状態で、前記パネル本体の側端面を側部補強層にて被覆するとともに、表面補強層(表面補強布が埋設された発泡性合成樹脂)にてパネル本体及び側部補強層の表面を被覆してもよい。これにより、表面補強層を構成する発泡性合成樹脂により、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを前記パネル本体に接着することができる。また前記パネル本体として、周側面に織布又は不織布からなる側面補強布を予め固定したものを用いても良い。
【0053】
本発明の化粧石板付パネルにおける小口付きタイプの発泡セメントパネルの製造方法の例〔その4(マットタイプの表面補強層の例)〕は、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化してブロック状の多孔質成形体を製造する工程と、密閉した発泡成形用成形型内で、前記多孔質成形体の外周側面と発泡成形用成形型間に発泡性合成樹脂を充填して発泡硬化させ、前記多孔質成形体の外周側面を発泡合成樹脂層にて一体に被覆する工程と、発泡合成樹脂層にて被覆した多孔質成形体をスライスして、前記発泡合成樹脂からなる側部補強層にて周側面を被覆した設定厚さのパネル本体を製作する工程と、密閉可能な製品用成形型の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次にパネル本体を製品用成形型内に位置決め載置し、次にパネル本体の上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、表面補強層(表面補強布が埋設された発泡合成樹脂)にてパネル本体及び側部補強層の表面を被覆することが挙げられる。
【0054】
本発明の化粧石板付パネルにおける小口付きタイプの発泡セメントパネルの製造方法の例〔その5(マットタイプの表面補強層の例)〕は、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物を、密閉したセメント用成形型内に充填し、養生固化してブロック状の多孔質成形体を製造する工程と、多孔質成形体の外周側面に織布又は不織布からなる側面補強布を仮固定する工程と、密閉した発泡成形用成形型内で、前記側面補強布を仮固定した多孔質成形体の外周側面と発泡成形用成形型間に発泡性合成樹脂を充填して発泡硬化させ、前記多孔質成形体の外周側面に前記側面補強布及び発泡合成樹脂層を一体に被覆する工程と、前記側面補強布及び発泡合成樹脂層にて被覆した多孔質成形体をスライスして、前記側面補強布と、前記発泡合成樹脂からなる側部補強層とで側端面を被覆した設定厚さのパネル本体を製作する工程と、密閉可能な製品用成形型の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次にパネル本体を製品用成形型内に位置決め載置し、次にパネル本体の上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布を埋設状に配置し、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、表面補強層(表面補強布が埋設された発泡合成樹脂)にてパネル本体及び側部補強層の表面を被覆することが挙げられる。
【0055】
上記製造方法のその4,その5の例の、前記パネル本体及び側部補強層を表面補強層にて被覆する工程において、密閉可能な製品用成形型の内面に、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを予め配置した状態で、前記製品用成形型内で、前記パネル本体の表面を表面補強層(表面補強布を埋設した発泡合成樹脂)にて一体に被覆すると同時に、表面保護層となるフィルム、シート又はボードを、前記表面補強層の発泡合成樹脂にてパネル本体に接着することができる。
【0056】
上記製造方法のその3〜5の例において、前記パネル本体及び側部補強層の外周端部を、端部保護シートにより被覆する工程を備えてもよい。
【0057】
前記発泡セメントパネルの製造方法のその3〜5の例において、前記発泡セメントからなるパネル本体の製造方法としては、上述の第1のパネル本体の製造方法、第2のパネル本体の製造方法のいずれかを採用することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の化粧石板付パネルにおいては、発泡セメントパネルによって化粧石板付パネル全体として軽量なものとなり、安価に供給できることに加え、化粧石板付パネルの板状石材の表面にシミを生じ難いという効果がある。しかも板状石材と発泡セメントパネルが良好に接合され、板状石材が剥離し難い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態1に係る化粧石板付パネル(小口なしタイプの発泡セメントパネルの例1を用いた場合)を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る化粧石板付パネル(小口付きタイプの発泡セメントパネルの例4を用いた場合)を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る化粧石板付パネル(小口付きタイプの発泡セメントパネルの例5を用いた場合)を示す断面図である。
【図4】本発明で用いる小口なしタイプの発泡セメントパネルの例1を示す断面図である。
【図5】本発明で用いる発泡セメントパネル例1におけるパネル本体の製造方法の他の例であり、ブロック状の多孔質成形体からパネル本体を切り分けるときの説明図である。
【図6】本発明で用いる小口なしタイプの発泡セメントパネル例2を示す断面図である。
【図7】本発明で用いる小口付きタイプの発泡セメントパネルの例3であり、パネル本体の表面を表面補強層で被覆し、その上に表面保護層を設けたものの断面図である。
【図8】本発明で用いる発泡セメントパネルのパネル本体の製造方法の更に他の例であり、側部補強層を被覆したブロック状の多孔質成形体からパネル本体を切り分けるときの説明図である。
【図9】本発明で用いる小口付きタイプの発泡セメントパネルの例4であり、表面補強層及び側部補強層が設けられたパネルの断面図である。
【図10】本発明で用いる発泡セメントパネルの更に他の例であり、表面補強層及び側部補強層が設けられ、更に表面保護層及び端部保護シートが設けられたパネルの断面図である。
【図11】本発明で用いる小口付きタイプの発泡セメントパネルの例5であり、表面補強層が設けられ、パネル本体と側部補強層の間に側面補強布が埋設状に設けられたパネルの断面図である。
【図12】本発明で用いる小口付きタイプの発泡セメントパネルのパネル本体の製造方法の更に他の例であり、側面補強布が仮固定されたブロック状の多孔質成形体の説明図である。
【図13】同じく製造方法の更に他の例であり、側面補強布の表面に側部補強層が更に被覆されたブロック状の多孔質成形体からパネル本体を切り分けるときの説明図である。
【図14】本発明で用いる小口付きタイプの発泡セメントパネルの更に他の例であり、表面補強層が設けられ、パネル本体と側面発泡層間に側面補強布が埋設状に設けられたパネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
まず本発明の化粧石板付パネルにおいて用いる発泡セメントパネルについて説明し、その後、本発明に係る化粧石板付パネルについて説明する。
【0061】
<発泡セメントパネル(小口なしタイプ)の例1>
図4は、小口なしタイプの発泡セメントパネルの一例を示す断面図である。図4に示す発泡セメントパネル41Aは、発泡セメントからなるパネル本体2と、パネル本体2の表裏面2aを被覆する表面補強層43Aからなる。この表面補強層43Aは、合成樹脂49に表面補強布44を埋設状に設けたものであり、パネル本体2の表面に一体に被覆されている。表面補強布44は織布又は不織布からなる。
【0062】
前記発泡セメントからなるパネル本体2は、例えば、補強繊維6と多数の気泡(図示せず)を分散状態で含有する多孔質成形体7からなる。この多孔質成形体7は、例えば、セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡を混練した混練物をセメント用成形型内に充填し、養生固化することで得られる。
【0063】
前記セメントの種類としては特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できる。これらのなかでも、生産性、強度等の点から早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0064】
セメントと水との配合割合は、セメント100質量部に対して水が20〜100質量部、更には20〜50質量部の範囲が好ましい。水が多すぎると強度が低下する傾向にあり、水が少なすぎると成形時にセメント混練物の流動性が低下して成形性を阻害する傾向にある。
【0065】
前記補強繊維6としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらの繊維のなかでも、ビニロン繊維は耐久性が高く、しかもセメントとの親和性に優れるので好ましい。補強繊維6の繊維長は特に限定されないが、4〜35mmの範囲が好ましい。補強繊維6の繊維長が4mm未満では補強効果が不足する傾向がみられる。補強繊維6の繊維長が長い方が補強効果の点では有利であるが、その一方で、繊維長が長くなるほど分散性が低下し、成形体内で補強繊維6が偏在して、かえってパネル強度を低下させる場合もある。また、補強繊維6の太さにも特に限定はないが、通常、10μm〜100μmのものが用いられる。
【0066】
前記パネル本体2は、セメント混練時にビニロンやガラスチョップ等の補強繊維6を均一に分散させるだけで、図4に示すような補強繊維6の絡み合いによる補強構造が得られる。従って、パネルの製造に際して、網状補強材等の補強材を埋設する場合の位置決め操作等の煩雑な作業も不要で、強度にバラツキのないパネルを容易に製造できる。
【0067】
補強繊維6の配合量は、前記セメント100質量部に対して0.5〜5質量部とすることが好ましい。補強繊維6の配合量が少ないと、補強効果も低く、パネル強度も低くなる。補強繊維6の配合量が多いほどパネル補強効果においては有利であるものの、補強繊維6の配合量が過剰であるとセメント混練物中での分散性が悪くなり、補強繊維6が偏在して、パネルの強度が不均一になり、かえってパネルの強度を低下させるおそれがある。このような観点から、補強繊維6の配合量のより好ましい範囲は、セメント100質量部に対して0.5〜3質量部である。
【0068】
前記起泡剤は特に限定されず、セメント用、コンクリート用の起泡剤、例えば、タンパク質系、界面活性剤系、樹脂系等の公知の各種の起泡剤を使用できる。更に、前記起泡剤とともに、アルミニウム粉等の金属系発泡剤を使用することもできる。起泡剤の添加量や添加方法は特に限定されないが、通常はセメント100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲で、得られるパネルの比重が、1.0以下の、目標値となるように適宜調整すればよい。パネルの比重は、好ましくは0.5〜1.0であり、更に好ましくは0.6〜0.9の範囲、特に好ましくは木質合板と同じ0.7〜0.8程度である。比重が小さいほどパネルは軽量となり、取り扱い性の面では有利である。しかし、比重が小さくなるほど気孔率が大きくなり、パネルの強度が低下する。一方、比重が大きくなるほどパネルが重くなり、取り扱い性が低下する。
【0069】
発泡コンクリートの製造に際して、適宜、減水剤を使用しても良い。減水剤としては、例えばナフタレン系減水剤、スルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0070】
前記セメント、水、補強繊維及び起泡剤をプレフォームした泡、その他の添加剤等からなる混練物の混練に際しては、従来公知のセメントミキサーやコンクリートミキサーなどを使用できるが、混練物中の起泡剤をプレフォームした泡(気泡)の状態や補強繊維にダメージを与えることなく、かつ全体を均一に混練することが必要である。混練時に起泡剤の泡(気泡)がダメージを受けると、成形後のパネルにおける気泡の大きさが不均一となり、パネル強度にバラツキが生じることがある。また、補強繊維がダメージを受けると折損して所期の補強効果が得られないおそれがある。
【0071】
パネル本体2は、上記のようなセメント、水、補強繊維および起泡剤をプレフォームした泡を混練し、セメント用成形型に充填して使用目的に応じた大きさの板状に成形するか、又はそれより大きなブロック状に成形した後、養生することで、気泡を含んだセメントミルクが、セメントと水との水和反応により硬化して、補強繊維と多数の気泡を分散状態で含有する軽量な多孔質成形体が得られる。パネル本体2の厚さは、通常、8〜30mm程度である。
【0072】
発泡セメントからなるパネル本体2の具体的な製造法の一例を挙げると、セメントに水及び減水剤を混合し、これに補強繊維を加えて混練する。一方、起泡剤に空気を導入し、所定の倍率、例えば10〜30倍程度にプレフォームする。この起泡剤をプレフォームした泡を、前記混練物に加えて混練する。なお、混練の途中で混練物の比重を適宜測定し、目標値に近づけるよう、起泡剤をプレフォームした泡を更に追加して混練してもよい。このセメント混練物を、例えば、金属製の耐圧成形型に充填し、例えば600mm(幅)×1800mm(長さ)×11mm(厚)の板状に成形し、これを養生、固化させる。これにより、図4に示すような、セメントが固化した多孔質成形体7からなり、成形体7中に分散した補強繊維6の絡み合いにより補強された発泡セメントからなるパネル本体2が得られる。また、図5に示すように、大きなブロック状の多孔質成形体7Aに成形し、養生固化した後、所望の厚さ、大きさの板状に切り出すようにしてもよい。なお、養生は、通常の養生でもよいし、蒸気養生でもよいし、両者を組み合わせてもよい。また、養生はセメント用成形型内で完了させるのではなく、セメント用成形型内で蒸気養生し、ある程度固化した段階、通常は数時間後、型から取り出して更に養生することで、セメント用成形型での成形サイクルが短くなり、生産性が向上する。
【0073】
パネル本体2に対して表面補強層43Aを一体に被覆させる方法としては、パネル本体2の表面を合成樹脂49にて一体に被覆して、この合成樹脂49に表面補強布44を埋設状に設け、合成樹脂49を構成する発泡性合成樹脂により表面補強布44をパネル本体2に接着して一体に被覆させる方法が好ましい。なお図4では合成樹脂49と表面補強布44を層状に分けて描いているが、実際には表面補強布に合成樹脂が含浸してあたかも一つの層になる。
【0074】
このような表面補強布44と合成樹脂49からなる表面補強層43Aにより、発泡セメントパネル41Aの強度が増大するとともに、表面性、耐水性が向上する。
【0075】
なお表面補強層43Aはパネル本体2の表裏両面を被覆するように設けることが好ましいが、板状石材側となる表面2aのみを被覆するように設けても良い。
【0076】
表面補強布44としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等などの繊維材からなる織布又は不織布が採用できる。また表面補強布44と合成樹脂49が一体化するように、比較的大きな多数の貫通孔を有するメッシュ状の織布又は不織布を採用することが好ましい。特に、目付が50〜1000g/m2、好ましくは200〜300g/m2のガラス繊維からなるチョップドストランドマットは、安価に入手が可能で、しかも発泡セメントパネル41Aの強度剛性を大幅に向上できるので好ましい。表面補強布44は、合成樹脂49に埋設状に設けてあれば良く、合成樹脂49の厚さ方向における中央位置に限らず、表面側(板状石材側)寄りに位置していてもよい。
【0077】
合成樹脂49に表面補強布44を埋設状に設けた表面補強層43Aにより、発泡セメントパネルの曲げや捩じりに対する強度剛性が高められるとともに、パネル本体2の保護性能が一層向上される。また、表面補強布44により、発泡セメントパネルの表面に凹凸が表れ、このアンカー効果により板状石材との接着がより良好となる。
【0078】
表面補強層43Aを構成する合成樹脂49は特に限定されるものではないが、例えばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、硬質塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォーム、酢酸セルロースフォーム、その他の発泡合成樹脂が例示できる。また、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、軟質ポリウレタン樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース樹脂、その他の非発泡の合成樹脂を採用することも可能である。
【0079】
発泡合成樹脂を成形する方法としては、一般的に公知な方法が適用可能であり、例えば上述のポリウレタンフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォームなどの発泡方法が挙げられる。これら3種類の発泡方法を代表例として、以下に具体的に示す。
【0080】
ポリウレタンフォームは、ポリオール、過剰のジイソシアネート、架橋剤、発泡剤、触媒、気泡サイズ調整剤等の原料によって得られ、発泡剤として水とイソシアネートとの反応による二酸化炭素、メチレンジクロライド、ペンタン、機械混合時に入れる空気等、その他分解型の有機系発泡剤が用いられる。気泡サイズ調整剤にはシリコーン樹脂や乳化剤が、触媒にはアミン類や有機スズ化合物等が使用できる。
【0081】
ユリアフォームは、粘度が1000cp程度の粘稠なユリア−ホルムアルデヒド水溶液(樹脂分50〜90%)100部に、プロパン、ブタン、ブテン、ヘキサン、塩化メチルのような発泡剤を2〜30部低温または密閉容器中で分散させ、乳化剤の存在下で酸触媒を加えた後、15〜115℃に温度を上げて得る。また乳化剤を含んだユリア樹脂初期縮合物を、現場発泡機によって塩酸液を混合しながら機械的に起泡しながら吐出させてもよい。
【0082】
フェノールフォームは、レゾール型初期縮合物に泡立機で空気を吹き込みながらクリーム状としつつ、攪拌下で硬化剤を混合して対象部分に被着あるいは充填することによって得る。さらに、クリーム状とする時に重炭酸ソーダを1%程度加えて発泡を助けてもよい。この方法によれば、硬化剤の添加後速やかに硬化する。酸化触媒にはベンゼンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、硫酸、リン酸等が用いられる。また、揮発性発泡剤を配合しておくと、反応熱で起泡するので初めの泡立ては必要ない。発泡用に適したフェノール樹脂も市販されているが、レゾール85部にアジピン酸とヘキサメチレンジアミンから得られたポリアミド5部を共重合させて強靱な発泡体を作製することもでき、ポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂を5〜20部程度配合して強靱性、弾性などを補うこともできる。
【0083】
表面補強層43Aの合成樹脂49の発泡倍率に特に限定はないが、通常は2〜10倍程度でよい。合成樹脂49の発泡倍率が小さいほどパネル強度は増大するが、その一方でパネル重量も増大する。また、合成樹脂49の発泡倍率が大きくなるほどパネルは軽量化されるが、その一方でパネル強度が低下する傾向が見られる。従って、合成樹脂49の発泡倍率は、パネルの軽量性、強度、耐衝撃性などの観点から適宜決定される。
【0084】
パネル本体2に被覆する合成樹脂49の量としては、表面補強布44を挟んでそれぞれ厚さ0.5〜2mm程度になるようにし付与し(合計1〜4mm程度)、表面補強布44に含浸させる。
【0085】
この表面補強層43Aの合成樹脂49は、連続気泡の少ない、または連続気泡のない独立気泡からなるものが、耐水性、表面性等に優れることから好ましい。
【0086】
上記発泡セメントパネル41Aの製造方法としては、パネル本体2の平面寸法と略同じ大きさの内部空間を有する製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂49を充填するとともに、パネル本体2とほぼ同じ広さ(平面形状)の表面補強布44をこの発泡性合成樹脂49に埋設状に設け、次にパネル本体2を製品用成形型に位置決め載置し、次にパネル本体2の上側に発泡性合成樹脂49を充填するとともに、この発泡性合成樹脂49に表面補強布44を埋設状に設ける。次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂49を発泡硬化させることで、パネル本体2の表面を合成樹脂49と表面補強布44とからなる表面補強層43Aにて一体に被覆させて製作できる。
【0087】
<発泡セメントパネル(小口なしタイプ)の例2>
図6は、発泡セメントパネルの他の例を示すものである。図6に示す発泡セメントパネル41Cは、パネル本体2の表面に一体に被覆した表面補強層(合成樹脂49に表面補強布44を埋設した表面補強層)の更に表面側を表面保護層45で被覆し(これらを表面層43Cと称する)、さらにこの表面層43Cの外周端部を端部保護シート46で被覆したものである。なお、図6中、図4と共通する構造については、同一符合を付して説明を省略する。
【0088】
表面層43Cは、パネル本体2の表面全体と同じ大きさに設定され、表面層43Cの外周端部はパネル本体2の外周端部に沿って配置されている。パネル本体2と表面層43Cの外周端部(周側面)が端部保護シート46にて一体に被覆されている。そして、この端部保護シート46により、パネル本体2への周側面からの吸水が防止され、発泡セメントパネル41Cの耐水性、耐久性が一層向上される。また端部保護シート46は、表面層43Cがその外周端部から剥離するのを防止する。
【0089】
前記表面保護層45の材質には特に限定はないが、例えば、非発泡合成樹脂、紙、更には非発泡合成樹脂にて被覆された紙等により構成することができる。非発泡合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂の他、ABS、MMA等が挙げられる。表面保護層45を構成する合成樹脂からなるフィルム、シート又はボードの表面をコロナ放電加工したり、それらの表面を酸で表面処理したりする等して、表面保護層45と、この上に接合する板状石材との接着性を高めるようにしてもよい。表面保護層45を構成する合成樹脂製のフィルム、シート又はボード、紙等は単層であってもよいし、多層であってもよい。このように、発泡セメントパネルの最外層に、非発泡合成樹脂からなるフィルム、シート又はボードを接着したり、合成樹脂を塗布したりして表面保護層45を設けることで、防水性をより確実なものにできる。
【0090】
端部保護シート46については、水密性を有する封止テープを貼着して形成したり、合成樹脂製のフィルム、シートを接着や熱融着して形成したり、パネル本体2の外周端部に合成樹脂を塗布して形成したりするなど、任意の方法で形成することができる。また、合成樹脂製の断面コ字状のフレーム材をパネル本体2の側端部に沿って嵌合し、接着剤で固定して設けることもできる。端部保護シート46を構成する合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂の他、ABS、MMA等が好ましいものとして挙げられる。端部保護シート46と表面層43Cとの重合幅は任意に設定可能であるが、3mm〜10mm程度に設定できる。ただし、この端部保護シート46は使用条件等に応じて省略することも可能である。
【0091】
発泡セメントパネル41Cの製造方法としては、製品用成形型の内面に表面保護層45となる前記シート、フィルム又はボードを配置した状態で、前記発泡セメントパネル41Aの場合と同様にして、製品用成形型内において、表面補強層(合成樹脂49に表面補強布44を埋設した層)にてパネル本体2の表裏面2aを一体に被覆し、次に成形品の周側面に水密性を有する封止テープを貼着するなどして、端部保護シート46を形成することで製作できる。
【0092】
以上のような発泡セメントパネル(小口なしタイプ)についての効果について述べる。
【0093】
発泡セメントパネル(小口なしタイプ)は、軽量、高強度である。また、セメントを主材料とし、木質合板のように木材資源を使用しないので、熱帯林からの木材資源の使用を削減でき、環境保全に寄与しうる。更に、合板に比べて耐久性が高い。更に、起泡剤により形成された多数の気泡を有する多孔質成形体からなるので、比重が1.0以下であり、合板と同程度に軽いため、取り扱い性、施工性に優れるとともに、合板に比べて吸水による重量の増大も少なく、強度低下の問題もない。また、前記多孔質成形体が、分散状態で含有する補強繊維の絡み合いにより補強された構造を有することから、高い強度を有しながら、釘打ち等の加工性にも優れ、且つ成形体内に含有される補強繊維により、打ち込まれた釘等がしっかりと保持される。
【0094】
また、パネル本体の表面が、表面補強層で一体に被覆されているので、発泡セメントパネルの曲げ強度が一層高められるとともに、パネル本体の表面の保護性能が向上する。即ちパネル本体の軽量性を保ちつつ、発泡セメントパネル全体としての強度及び耐衝撃性が向上する。また、表面補強層により吸水が防止され、発泡セメントパネルの耐水性を向上できる。例えば降雨による吸水が防止され、吸水によるパネル重量の増大を確実に防止できる。
【0095】
上記表面補強布としてガラス繊維からなる織布又は不織布を用いると、発泡セメントパネルの製作コストの上昇を抑制しつつ、その強度剛性を十分に高めることができる。
【0096】
上記発泡セメントパネル(小口なしタイプ)においては、補強繊維をセメント100質量部に対して1〜5質量部を配合することで、成形体中に分散状態で含有されている補強繊維の絡み合いによる補強構造が形成される。補強繊維としては、ポリビニルアルコール繊維であるビニロンが好ましい。
【0097】
発泡セメントパネル(小口なしタイプ)におけるパネル本体において、セメント混練物を目的とする大きさの板状に成形して製作してもよいが、大きなブロック状に成形した後、所望の厚さ、大きさの板状にスライスして製作することもできる。ブロック状に成形した後、板状にスライスする場合には、一つのセメント用成形型で多数のパネルの成形を一度に行うことができ、また養生、固化もまとめて行うことができるので、生産性が向上する。
【0098】
更に上記のように表面補強層の表面側を表面保護層にて被覆すると、表面保護層によりパネル表面からの吸水が防止され、発泡セメントパネルの耐水性を一層向上させることができる。
【0099】
表面保護層が非発泡合成樹脂で構成されていると、パネル表面からの吸水をより確実に防止できる。また、パネルの曲げ剛性、弾力性、耐衝撃性も増大し、またパネルに打ち込んだ釘の引き抜き強度が増大し、釘打ち性も向上する。
【0100】
なお発泡セメントパネルの例2のように、パネル本体の周側面を端部保護シートにて被覆すると、パネル本体の周側面からの吸水を防止でき、耐水性、耐久性を一層向上できるとともに、周側面からの表面補強層や表面保護層の剥離を効果的に防止することができる。端部保護シートは、水密性を有する封止テープを貼着して形成したり、表面保護層と相溶性を有する合成樹脂材料からなるフィルムやシートを熱融着して形成したり、表面補強層や表面保護層と相溶性を有する合成樹脂材料に浸漬して形成したりするなど、任意の方法で形成することができる。
【0101】
<発泡セメントパネル(小口付きタイプ)の例3>
図7は、小口なしタイプの発泡セメントパネルの例を示す断面図である。この発泡セメントパネル1Dは、パネル本体2の周側面2bを発泡合成樹脂からなる側部補強層4で一体に被覆すると共に、パネル本体2の表裏面2aを発泡合成樹脂からなる表面補強層48にて被覆し、この表面補強層48の上に表面保護層3を設け、更にこれらの周側面を端部保護シート5で被覆したものである。
【0102】
これらの各材料や製造方法についは上記と同様である。
【0103】
そして、発泡セメントパネル1は、前記のような発泡セメントからなるパネル本体2の4つの周側面2bが側部補強層4にて一体に被覆されている。即ちパネル本体2の外側部に側部補強層4が枠状に形成されている。
【0104】
側部補強層4を構成する発泡合成樹脂は特に限定されるものではないが、例えばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、硬質塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォーム、酢酸セルロースフォーム、その他の発泡合成樹脂が例示できる。
【0105】
側部補強層4を成形する方法としては、一般的に公知な方法が適用可能である。例えば上述のポリウレタンフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォームが代表例として挙げられる。
【0106】
側部補強層4の発泡倍率に特に限定はないが、通常は2〜10倍程度でよい。側部補強層4の発泡倍率が小さいほどパネル強度は増大するが、その一方でパネル重量も増大する。また、側部補強層4の発泡倍率が大きくなるほどパネルは軽量化されるが、その一方でパネル強度が低下する傾向が見られる。従って、側部補強層4の発泡倍率は、パネルの軽量性、強度、耐衝撃性などの観点から適宜決定される。また、側部補強層4の厚さは、パネル本体2と略同じ厚さに設定され、幅は特に限定はないが、発泡セメントパネル1の落下時の衝撃を効果的に吸収できるように、2〜10mm程度に設定されている。
【0107】
パネル本体2の周側面2bを側部補強層4で一体に被覆する方法も特に限定されないが、一例を挙げると、密閉可能な製品用成形型内で、発泡セメントからなるパネル本体2の周囲に充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2の周側面2bを側部補強層4にて一体に被覆する。より具体的には、先ず、パネル本体2よりも若干大きな内部空間を有する製品用成形型の中央部内にパネル本体2を位置決め載置し、次にパネル本体2の外周側に発泡性合成樹脂を充填し、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2の周側面2bに側部補強層4を被覆することになる。このように、密閉した製品用成形型内で発泡性合成樹脂を発泡硬化させて側部補強層4を設けることで、側部補強層4は、その表面が気泡のないスキン層に覆われた平滑面に形成される。なお、側部補強層4は、連続気泡の少ない、または連続気泡のない独立気泡からなるものが、耐水性、表面性、コンクリート型枠用として使用した場合の打設コンクリートからの離型性等に優れることから好ましい。
【0108】
また、図8に示すように、パネル本体2の周側面に予め側部補強層4を形成したパネル本体2Aを用いても良い。このようなパネル本体2Aの具体的な製造方法としては、前述したブロック状の多孔質成形体7Aよりも大きな内部空間を有する密閉した発泡成形用成形型内の中央部に前記多孔質成形体7Aを装填し、多孔質成形体7Aと発泡成形用成形型間の隙間に、発泡性合成樹脂を充填して発泡硬化させて、図8に示すように、多孔質成形体7Aの外周側面を側部補強層4で被覆させ、これを所望の厚さ、大きさの板状にスライスして製作することができる。側部補強層4は多孔質成形体7Aの少なくとも外周4面に設けられていればよく、側部補強層4がパネル本体2Aの外周部に配置されるように丸ノコ或いは帯ノコなどの刃物でスライスする。
【0109】
表面補強層48の厚さは0.5〜2mm程度に設定されている。なお、図7に示す例では、パネル本体2の表裏両面に表面補強層48を設けたが、板状石材を接合する面である表面のみに設けてもよい。
【0110】
表面補強層48を構成する合成樹脂は特に限定されるものではなく、上記例1で示した樹脂と同様のものが例示される。
【0111】
表面補強層48の合成樹脂とパネル本体2の周側面の側部補強層4とは、異種素材で構成することも可能であるが、同一素材で構成して、同時成形或いは別個に成形することが好ましい。
【0112】
同時成形する場合には、例えば、密閉可能な製品用成形型内で、発泡セメントからなるパネル本体2の周囲に充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2の表裏面2a及び周側面2bを表面補強層48及び側部補強層4にて一体に被覆する。より具体的には、先ず、パネル本体2よりも若干大きな内部空間を有する製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂を充填すると共に表面補強布を埋設し、次にパネル本体2を製品用成形型の中央部に位置決め載置する。次にパネル本体2の外周側及び上側に発泡性合成樹脂を充填して、前記パネル本体2を包むように発泡性合成樹脂を充填し、続いてパネル本体2上側の発泡性合成樹脂に表面補強布を埋設する。次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2を表面補強層48及び側部補強層4にて被覆できる。このように、密閉した製品用成形型内で発泡性合成樹脂を発泡硬化させて表面補強層48及び側部補強層4を設けることで、表面補強層48は、その表面が気泡のないスキン層に覆われた平滑面に形成されるとともに、多孔質成形体7からなるパネル本体2表面の気孔も封止され、パネル表面からの吸水が防止される。
【0113】
なお、表面補強層48及び側部補強層4は、連続気泡の少ない、または連続気泡のない独立気泡からなるものが、耐水性、表面性、コンクリート型枠用として使用した場合の打設コンクリートからの離型性等に優れることから好ましい。
【0114】
また、表面補強層48及び側部補強層4を別個に成形する場合には、前述の方法で図8に示すように外周部に側部補強層4を成形したパネル本体2Aを製作し、製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂を充填した状態で、このパネル本体2Aを製品用成形型の中央部に位置決め載置し、次にパネル本体2Aの上側に発泡性合成樹脂を充填し、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2に対して別個に表面補強層48及び側部補強層4を設けることができる。
【0115】
また、表面補強層48の上に設ける表面保護層3としては、表面補強層48に接着剤で接着することも可能であるが、表面補強層48を成形する際に、表面補強層48を構成する発泡性合成樹脂の発泡硬化時に、該発泡性合成樹脂により表面保護層3を接着することもできる。例えば、成形型の内面に表面保護層3となる前記シート、フィルム又はボードを配置した状態で、パネル本体2の周囲に充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2の表裏面2a及び周側面2bを表面補強層48及び側部補強層4にて一体に被覆すると同時に、発泡性合成樹脂を接着剤として表面保護層3を接着することができる。
【0116】
<発泡セメントパネル(小口付きタイプ)の例4>
図9は、発泡セメントパネル(小口付きタイプ)の例4を示す断面図である。この発泡セメントパネル1Eは、上述の発泡セメントパネル1Dにおける、表面保護層3及び端部保護シート5を省略したものであって、表面補強層48における表面補強布13を側部補強層4まで延長し、この側部補強層4に埋設させたものである。それ以外については前記発泡セメントパネル1Dと同様に構成されている。尚、図9中、図4や図7と共通する構造については、同一符号を付してその説明を省略する。また図9において、表面補強層48における合成樹脂4Aや側部補強層4の合成樹脂と、表面補強布13を層状に描いているが、実際には表面補強布13に合成樹脂が含浸して一体となる。
【0117】
この発泡セメントパネル1Eの製造方法について説明すると、先ず、パネル本体2よりも若干大きな内部空間を有する密閉可能な製品用成形型の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布13を埋設状に配置する。次に、パネル本体2を製品用成形型の中央部に位置決め載置してから、パネル本体2の外周側及び上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布13を埋設状に配置する。次に、製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、パネル本体2の側端面が側部補強層4にて被覆されるとともに、表面補強層(合成樹脂4Aに表面補強布13が埋設された層)にてパネル本体2及び側部補強層4の表裏面が被覆された、発泡セメントパネル1Eを得ることになる。
【0118】
別の製造方法としては、発泡セメントパネル1Eと同じ大きさの内部空間を有する密閉可能な製品用成形型を用い、この製品用成形型の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布13を埋設状に配置する。次に、外周に側部補強層4を形成した前述のパネル本体2Aを製品用成形型内に載置してから、パネル本体2Aの上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、この発砲合成樹脂に製品用成形型の内部空間と略同じ平面寸法の織布又は不織布からなる表面補強布13を埋設状に配置する。次に、製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させて製造する製造方法を採用することもできる。
【0119】
尚、図10に示す発泡セメントパネル1Hのように、前記発泡セメントパネル1E(図9)に対して表面保護層3と端部保護シート5を設けることもできる。このような発泡セメントパネル1Hを製造するには、製品用成形型の内面に表面保護層3となる前記シート、フィルム又はボードを配置した状態で、前記と同様にして、製品用成形型内において、パネル本体2を表面補強層48及び側部補強層4にて一体に被覆し、次に成形品の外周端部に水密性を有する封止テープを貼着するなどして、端部保護シート5を形成することで製造できる。
【0120】
<発泡セメントパネル(小口付きタイプ)の例5>
図11は、発泡セメントパネルの他の例を示す断面図である。この例の発泡セメントパネル1Fは、前記発泡セメントパネル1E(図9に示す発泡セメントパネルの例4)におけるパネル本体2の周側面2bと側部補強層4間に、織布又は不織布からなる側面補強布14を埋設状に設けたもので、それ以外については前記発泡セメントパネル1Eと同様に構成されている。尚、図11中、図9と共通する構造については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0121】
側面補強布14としては、前記表面補強布と同様に、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等などの繊維材からなる織布又は不織布を採用できる。特に、目付が50〜1000g/m2、好ましくは200〜300g/m2のガラス繊維からなるチョップドストランドマットは、安価に入手が可能で、しかも発泡セメントパネル1の強度剛性を大幅に向上できるので好ましい。
【0122】
このようにパネル本体2の側端面2bに側面補強布14を埋設状に設けると、発泡セメントパネル1Fの曲げや捩じりに対する強度剛性を一層高めることができる。なお、上述の図7,図10に示す発泡セメントパネルの例についても、パネル本体2と側部補強層4間に側面補強布14を埋設状に設けて、捩じりに対するパネルの強度剛性を向上させることができる。
【0123】
発泡セメントパネル1Fの製造方法について説明すると、先ず、発泡セメントパネル41Aのパネル本体2と同様にして発泡セメントからなるパネル本体2を製作し、この周側面2bに帯状の側面補強布14を接着剤や仮止めテープで仮固定する。次に、パネル本体2よりも若干大きな内部空間を有する製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、製品用成形型内とほぼ同じ広さ(平面形状)の表面補強布13をこの発泡性合成樹脂に埋設状に設ける。次に、側面補強布14を仮固定したパネル本体2を製品用成形型の中央部に位置決め載置してから、パネル本体2の外周側及び上側に発泡性合成樹脂を充填して、前記パネル本体2を包むように発泡性合成樹脂を充填するとともに、パネル本体2の上側の発泡性合成樹脂に、上記と同じく表面補強布13を埋設状に設ける。次に、製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、発泡セメントパネル1Fを得ることができる。
【0124】
また、発泡セメントパネルの他の製造方法として、図12に示すように、発泡セメントからなる大きなブロック状の多孔質成形体7Aを成形し、側面補強布14の素材として補強シート14Bをこの多孔質成形体7Aの外周側面に接着剤や仮止めテープ15で仮固定し、これを発泡成形用成形型内の中央部に装填し、多孔質成形体7Aと発泡成形用成形型間の隙間に、発泡性合成樹脂を充填して発泡硬化させて、図13に示すように、多孔質成形体7A及び補強シート14Bの外周側面を側部補強層4で被覆させ、これを所望の厚さ、大きさの板状にスライスして、外周部に側面補強布14が埋設された側部補強層4を有するパネル本体2Bを製作する。そして、前記と同様に、製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、表面補強布13をこの発泡性合成樹脂に埋設状に設ける。次に、パネル本体2Bを製品用成形型に載置してから、パネル本体2Bの上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、表面補強布13をこの発泡性合成樹脂に埋設状に設ける。次に、製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させることで、発泡セメントパネル1Fを製造することもできる。
【0125】
尚、図14に示す発泡セメントパネル1Jのように、前記発泡セメントパネル1F(図11)に対して表面保護層3と端部保護シート5を設けることもできる。このような発泡セメントパネル1Jを製造するときには、製品用成形型の内面に表面保護層3となる前記シート、フィルム又はボードを配置した状態で、前記と同様にして、製品用成形型内の下部内に発泡性合成樹脂を充填するとともに、表面補強布13をこの発泡性合成樹脂に埋設状に設けてから、パネル本体2Bを製品用成形型に載置する。次に、パネル本体2Bの上側に発泡性合成樹脂を充填するとともに、表面補強布13をこの発泡性合成樹脂に埋設状に設け、次に製品用成形型を密閉した状態で、充填した発泡性合成樹脂を発泡硬化させ、最後に外周端部に水密性を有する封止テープを貼着するなどして、端部保護シート5を形成することで製造することができる。
【0126】
なおパネル本体2に対する側部補強層4の取付強度を高めるため、少なくともパネル本体2と側部補強層4との境界部を含むように端部保護シート5を設けることが好ましい。更に、パネル本体2の周側面の側部補強層4に、表面保護層3の外周端部を一体に被覆する端部保護シート5を設けると、端部保護シート5を側部補強層4と同時に成形することが可能となり、製作コストの上昇を抑制できるので好ましい。
【0127】
なお以下に、上記発泡セメントパネル(小口付きタイプ)についての効果について述べる。
【0128】
上記発泡セメントパネルによれば、発泡セメントからなるパネル本体の側端面、いわゆるパネル本体の木口面が発泡合成樹脂からなる側部補強層により保護されているので、該側部補強層により発泡セメントパネルの落下時の衝撃を吸収でき、パネルの割れ、折れ等の損傷を防止できる。
【0129】
上記発泡セメントパネルは、軽量、高強度であり、しかも加工性も良い。また、上記発泡セメントパネルは、セメントを主材料としており、木質合板のように木材資源を使用しないので、熱帯林からの木材資源の使用を削減でき、環境保全に寄与しうる。
【0130】
また、上記発泡セメントパネルは、発泡セメント、例えば起泡剤の泡が分散して形成された多数の気泡を有する多孔質成形体からなるパネル本体と、該パネル本体の側端面を覆う側部補強層と、該パネル本体の表面を覆う表面保護層とからなり、比重が1.0以下で合板と同程度に軽いため、取り扱い性、施工性に優れるとともに、合板のように吸水による重量の増大や強度の低下もない。
【0131】
また、上記発泡セメントパネルは、前記多孔質成形体が、分散状態で含有する補強繊維の絡み合いにより補強された構造を有することから、曲げ弾性係数が、例えば1700N/mm2以上と高強度でありながら、釘打ち等の加工性にも優れ、且つ成形体内に含有される補強繊維により、打ち込まれた釘等がしっかりと保持される。
【0132】
上記発泡セメントパネルにおいては、パネル本体を構成する発泡セメントに含まれる補強繊維の量に特に限定はないが、セメント100質量部に対して0.5〜5質量部程度を配合することで、成形体中に分散状態で含有されている補強繊維の絡み合いによる補強構造が形成され、例えばコンクリート型枠用として使用した場合にも、打設コンクリート圧に対する十分な強度を確保することができる。補強繊維の種類にも、特に限定はないが、例えば、ポリビニルアルコール繊維であるビニロン、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維などのポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
【0133】
本発明のパネル本体は、セメント混練物を目的とする大きさの板状に成形して製作してもよいが、大きなブロック状に成形した後、所望の厚さ、大きさの板状にスライスして製作したり、大きなブロック状に成形した後、その外周側面に発泡合成樹脂層を被覆させ、これを所望の厚さ、大きさの板状にスライスして製作したりすることもできる。更に、大きなブロック状に成形した後、その外周側面に側面補強布となる補強シートを仮固定した状態で発泡合成樹脂層を被覆させ、これを所望の厚さ、大きさの板状にスライスして製作したりすることもできる。ブロック状に成形した後、板状にスライスする場合には、一つのセメント用成形型で多数のパネルの成形を一度に行うことができ、また養生、固化もまとめて行うことができるので、生産性が向上する。また、大きなブロック状に成形した後、外周側面に発泡合成樹脂層を被覆させたものをスライスする場合には、生産性を一層向上できるとともに、パネル本体の側端面に発泡合成樹脂層を予め形成できるので、製品用成形型に対するパネル本体の位置決め作業が容易になる。
【0134】
前記パネル本体の表面に表面補強層を設けているので、表面補強層によりパネル表面からの吸水が防止され、発泡セメントパネルの耐水性を向上できる。また、表面補強層によりパネル本体表面の耐衝撃性能を向上でき、パネル本体表面の破損を効果的に防止できる。
【0135】
また、パネル本体の周側面と側部補強層間に織布又は不織布からなる側面補強布を設けることで、発泡セメントパネルの曲げや捩じりに対する強度剛性を一層向上できる。更に、表面補強布や側面補強布として、目付50〜1000g/m2のガラス繊維製の不織布を用いることで、パネルの製作コストの上昇を抑制しつつ、曲げや捩じりに対する強度剛性を向上できる。
【0136】
パネル本体の表面を表面保護層にて被覆すると、表面保護層によりパネル表面からの吸水が一層効果的に防止され、発泡セメントパネルの耐水性を向上できる。また、前記表面保護層は、非発泡合成樹脂で構成することができる。表面保護層が非発泡合成樹脂から構成されていると、該非発泡合成樹脂層により、パネル表面からの吸水をより確実に防止できる。
【0137】
更に、発泡セメントパネルの外周端部を端部保護シートにて一体に被覆すると、表面補強層や表面保護層の外周端面からの吸水を防止でき、耐水性、耐久性を一層向上できるとともに、外周端部からの表面補強層や表面保護層の剥離を効果的に防止することができる。端部保護シートは、水密性を有する封止テープを貼着して形成したり、表面保護層と相溶性を有する合成樹脂材料からなるフィルムやシートを熱融着して形成したり、表面保護層と相溶性を有する合成樹脂材料に浸漬して形成したりするなど、任意の方法で形成することができる。
【0138】
<化粧石板付パネル>
次に本発明に係る化粧石板付パネルについて説明する。
【0139】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る化粧石板付パネルを示す断面図である。この実施形態1は上述の図4(小口なしタイプの発泡セメントパネルの例1)に示す発泡セメントパネル41Aを用いて作製された化粧石板付パネルである。
【0140】
実施形態1の化粧石板付パネルは、上記の如く発泡セメントパネル41Aを化粧石板付パネルの基板として用い、この発泡セメントパネル41Aの表面に板状石材(表面用板状石材31)を接着剤にて接着すると共に、発泡セメントパネル41Aの周側面にも板状石材(周側面用板状石材32)を接着剤にて接着する。
【0141】
このときの発泡セメントパネル41Aの表面補強層43Aと表面用板状石材31の接着性に関して言えば、表面補強層が合成樹脂に繊維集合体を埋設したものであることから表面に微細な凹凸が極めて多数形成され、この凹凸が接着面積増大効果とアンカー効果を発揮するので、良好に接着される。
【0142】
そして上記のように表面用板状石材31の裏面全面には、発泡セメントパネル41Aの表面補強層43Aが直接接着されているので、たとえ発泡セメントパネル41Aのパネル本体2内に水が浸透しても、表面補強層43Aが防水層としての役割を発揮し、パネル本体2中の水分が表面用板状石材31へ移行しない。従って表面用板状石材31に裏面から水分が付着、浸透することが防止される。その結果、表面用板状石材31の表面へのシミが防止される。
【0143】
本実施形態1の化粧石板付パネルの重量としては、発泡セメントパネル41Aの比重が低いので、板状石材31,32と発泡セメントパネル41Aを接合した化粧石板付パネル全体として軽量となる。
【0144】
また発泡セメントパネルは発泡セメントを主体としており、表面補強層43Aにより強度が向上しているが、更に表面用板状石材31や周側面用板状石材32が補強層的役割を担い、化粧石板付パネル全体としての強度が非常に高いものとなる。
【0145】
上記板状石材31,32としては、各種石材を用いることができ、例えば花崗岩、閃緑岩、ハンレイ岩などの御影石や、大理石等が挙げられる。そしてこの石材を薄板状に切り出して上記板状石材31,32とする。なお石材の両表面に発泡セメントパネルを接着した状態としてから、石材をスライスして切り分ける方法を採用することもできる。
【0146】
《実施形態2》
図2は、本発明の実施形態2に係る化粧石板付パネルを示す断面図である。この実施形態2は上述の図9(小口付きタイプの発泡セメントパネルの例4)に示す発泡セメントパネル1Eを用いて作製された化粧石板付パネルである。
【0147】
実施形態2の化粧石板付パネルは、発泡セメントパネル1Eの表面に板状石材(表面用板状石材31)が接着剤にて接着されると共に、発泡セメントパネル1Eの周側面に板状石材(周側面用板状石材32)が接着剤にて接着されたものである。
【0148】
発泡セメントパネル1Eは、実施形態1の発泡セメントパネル41Aと同様に、パネル本体2の表裏面に表面補強層(合成樹脂4Aに表面補強布13を埋設した層)を備えているので、表面補強層の防水性によって表面用板状石材31の裏面から水分が付着、浸透しない。また発泡セメントパネル1Eの表面補強層と表面用板状石材31の接着性が良好である。
【0149】
これに加えて発泡セメントパネル1Eは、パネル本体2の周側面2bに側部補強層4を備えるので、側部補強層4が防水層としての役割を発揮し、周側面用板状石材32についても裏面からの水分付着や水分浸透が防止される。
【0150】
更にパネル本体2は、その表裏面が表面補強層(合成樹脂4Aに表面補強布13を埋設した層)で被覆され、その周側面が側部補強層4で被覆されており、このことによりパネル本体2の全面が被覆された状態である。そしてこれら表面補強層及び側部補強層4が防水層として作用するので、パネル本体2自体に外からの水分が浸入することが殆どない。よってこれに接合した板状石材31,32に裏面から水分が付着、浸透する虞が殆どない。
【0151】
《実施形態3》
図3は、本発明の実施形態3に係る化粧石板付パネルを示す断面図である。この実施形態3は上述の図11(小口付きタイプの発泡セメントパネルの例5)に示す発泡セメントパネル1Fを用いて作製された化粧石板付パネルである。
【0152】
実施形態3の化粧石板付パネルは、発泡セメントパネル1Fの表面に板状石材(表面用板状石材31)が接着剤にて接着されると共に、発泡セメントパネル1Fの周側面に板状石材(周側面用板状石材32)が接着剤にて接着されたものである。
【0153】
実施形態3の化粧石板付パネルにおいても上記と同様に、板状石材31,32に裏面から水分が付着、浸透する虞が殆どない。
【0154】
また発泡セメントパネル1Fの表面補強層(合成樹脂4Aに表面補強布13を埋設した層)と表面用板状石材31の接着性が良好である。
【実施例1】
【0155】
[多孔質成形体からなるパネル本体の製造]
早強ポルトランドセメント100質量部に対し、水30〜40質量部及び市販減水剤0.2〜1.0質量部を加えて混合し、これにビニロンの短繊維を上記早強ポルトランドセメント100質量部に対して0.2〜2.0質量部となるように添加し、これを混練してセメントミルクを得た。一方、市販起泡剤に空気を加えて攪拌混合し、約10〜30倍にプレフォームした。このプレフォームした起泡剤を、前記セメントミルクに、上記早強ポルトランドセメント100質量部に対して4〜8質量部となるように添加して混練し、セメント混練物を得た。このセメント混練物を、縦1780mm×横580mm×高さ300mmの金属製耐圧成形型内に充填し、密閉した状態で3〜18時間蒸気養生した。次いで脱型して更に8〜24時間蒸気養生し、あるいは該脱型後の蒸気養生を経て、もしくはせずに、その後室温で養生するかもしくはせずして、ブロック状の成形体を得た。
【0156】
このブロック状成形体を、厚さ11mmの板状にスライスし、多数の気泡を有する多孔質成形体からなるパネル本体を製造した。得られたパネル本体のサンプルは、比重が0.55〜0.85、曲げ強度が1.7〜3.5N/mm2、曲げ弾性係数が1400〜3000N/mm2の範囲内であった。
【0157】
なお、比重は試料の寸法(幅×長さ×厚さ)と質量から算出した。また、曲げ強度及び曲げ弾性係数は、JIS A 1408に準じ、支持棒間の距離(スパンL、資料幅)を250mmとして測定した値である。
【0158】
以下の発泡セメントパネルの作製、更には板状石材との接合にあたっては、上記得られたパネル本体のうちの4つ(パネル本体A〜D)を選んで試作を行った。これらパネル本体A〜Dの製作条件を下記表1に示す。
【0159】
【表1】

【0160】
[小口なしタイプの発泡セメントパネルの作製]
耐圧成形型として、縦、横及び高さのいずれもが前記パネル本体よりもやや大きな内部空間(成形空間)を有し、密閉可能なものを用いた。該耐圧成形型の内面とパネル本体との間に発泡性ウレタン樹脂を充填するとともに、目付が100〜900g/m2のガラス繊維からなるチョップドストランドマットを表面補強布として発泡性ウレタン樹脂に埋設状に設けた。この様にして、表面補強布と発泡性ウレタン樹脂で構成した表面補強層によりパネル本体の表裏両面を一体に被覆し、発泡セメントパネル(小口なしタイプ)を得た。
【0161】
[板状石材と発泡セメントパネルの接合]
上記発泡セメントパネルの周側面被覆用の板状石材(周側面用板状石材32)として縦1800mm×横15mm×厚さ3mmの大理石、及び縦600mm×横15mm×厚さ3mmの大理石を準備すると共に(但し縦の長さについては、大理石同士の突き合わせ箇所に応じて削ることとした)、上記発泡セメントパネルの片側表面被覆用の板状石材(表面用板状石材31)として縦1800mm×横600mm×厚さ3mmの大理石を準備した。
【0162】
これら板状の大理石を上記発泡セメントパネルの表面及び周側面に接着剤を用いて接着し、図1に示すような化粧石板付パネルを得た(完成試作品サンプルNo.1〜4)。化粧石板付パネルの各条件、特性を表2に併せて記載する。なお表面被覆用の板状石材としては厚さが2倍のものを準備してその両側に発泡セメントパネルを接着し、次いで板状石材を厚み中央でスライスすることによっても、同様の完成試作品を製造することができた。
【0163】
【表2】

【0164】
この様にして得られた化粧石板付パネル(サンプルNo.1〜4)は、大理石の意匠性を備えながらも軽いものであり、しかも長期間にわたって大理石表面にシミが生じないことを確認できた。また大理石(板状石材)は発泡セメントパネルに良好に接着されていた。
【0165】
なお、発泡セメントパネルの防水性についての試験方法は、サンプル上面に着色水を24時間滴下し、その後、パネル断面を観察する。パネル内に着色が認められれば、水が浸透していることから防水性不良であり、着色がなければ防水性良好である。
【0166】
化粧石板付パネルの比重は試料の寸法(幅×長さ×厚さ)と質量から算出した。また、曲げ強度は、JIS A 1408に準じ、支持棒間の距離(スパンL、資料幅)を250mmとして測定した値である。
【0167】
発泡セメントパネルと板状石材との接着強度は、タイル引張試験に準じ、試験ジグの大きさを45mm×95mmとし、試験ジグと板状石材を強力に固定して、ジグに沿って発泡セメントパネルと板状石材との縁切りをした上で、試験を行った(n=3)。
【実施例2】
【0168】
[多孔質成形体からなるパネル本体の製造]
上記実施例1と同様にしてパネル本体を作製した。
【0169】
[小口付きタイプの発泡セメントパネルの作製]
耐圧成形型として、縦、横及び高さのいずれもが前記パネル本体よりもやや大きな内部空間(成形空間)を有し、密閉可能なものを用い、該耐圧成形型内の下部内に発泡性ウレタン樹脂をスプレーするとともに、パネル本体とほぼ同じ広さ(平面形状)のガラス繊維からなる不織布シート(表面補強布)をこの発泡性ウレタン樹脂に埋設状に設けた。そして周側面にガラス繊維からなる帯状の不織布シート(側面補強布)を仮固定したパネル本体を成形型の中央部に位置決め載置し、次にパネル本体と成形型の内周面との隙間に発泡性ウレタン樹脂を充填するとともに、成形型の上部内に発泡性ウレタン樹脂を充填し、成形型の上部内にスプレーした発泡性ウレタン樹脂に、パネル本体とほぼ同じ広さ(平面形状)のガラス繊維からなる不織布シート(表面補強布)を埋設状に設け、成形型を密閉した状態で発泡硬化させた。これにより、図11に示すような小口付きタイプの発泡セメントパネル(縦1794mm×横594mm×厚さ15mm)を得た。なおパネル本体の表裏面上における発泡性ウレタン樹脂に不織布シートが埋設した層が表面補強層となり、パネル本体の周側面上における発泡性ウレタン樹脂(パネル本体と成形型の内周面との隙間に発泡性ウレタン樹脂)が側部補強層となる。
【0170】
[板状石材と発泡セメントパネルの接合]
上記実施例1と同様にして、発泡セメントパネルに板状の大理石(板状石材)を接着し、化粧石板付パネルを得た(完成試作品サンプルNo.5〜8)。なお化粧石板付パネルの各条件、特性は下記表3の通りである。また各試験方法は、上記と同じである。
【0171】
【表3】

【0172】
サンプルNo.5〜8の化粧石板付パネルも、上記実施例1と同様に、大理石の意匠性を備えながらも軽く、しかも長期間にわたって大理石表面にシミが生じないことを確認できた。また大理石(板状石材)は発泡セメントパネルに良好に接着されていた。
【実施例3】
【0173】
[多孔質成形体からなるパネル本体の製造]
上記実施例1と同様にしてパネル本体を作製した。
[発泡セメントパネル(小口なしタイプ)の作製]
縦、横及び高さのいずれもが上記パネル本体よりもやや大きな内部空間(成形空間)を有する耐圧成形型を用い、該耐圧成形型の底面上に発泡性ウレタン樹脂をスプレーし、続いてこの上にガラス繊維を散布し、該ガラス繊維を上記発泡性ウレタン樹脂に埋設させた。この際のガラス繊維の散布量は100〜900g/m2である。この様にしてパネル本体の表裏面を表面補強層で被覆した発泡セメントパネルを得た。
【0174】
[板状石材と発泡セメントパネルの接合]
上記実施例1と同様にして、発泡セメントパネルに板状の大理石(板状石材)を接着し、化粧石板付パネルを得た(完成試作品サンプルNo.9〜12)。なお化粧石板付パネルの各条件、特性は下記表4の通りである。また各試験方法は、上記と同じである。
【0175】
【表4】

【0176】
サンプルNo.9〜12の化粧石板付パネルも、上記実施例1と同様に、大理石の意匠性を備えながらも軽く、しかも長期間にわたって大理石表面にシミが生じないことを確認できた。また大理石(板状石材)は発泡セメントパネルに良好に接着されていた。
【符号の説明】
【0177】
1D,1E,1F,1H,1J,41A,41C 発泡セメントパネル
2、2A、2B パネル本体
2a パネル本体の表面、裏面
2b パネル本体の周側面
3,45 表面保護層
4 側部補強層
5,46 端部保護シート
6 補強繊維
7,7A 多孔質成形体(発泡セメント)
13,44 表面補強布
14 側面補強布
14B 補強シート
15 仮止めテープ
31 表面用板状石材
32 周側面用板状石材
43A,48 表面補強層
44 表面補強布
49 合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状石材の裏側全面に発泡セメントパネルを接合したものであり、
前記発泡セメントパネルは、パネル本体と表面補強層の積層構造体であり、
前記パネル本体が、セメントに補強繊維が分散された多孔質成形体であり、
前記表面補強層が、合成樹脂に繊維集合体が埋設状に設けられて前記パネル本体に固着されたものであって、該表面補強層が少なくとも前記板状石材と前記パネル本体との間に存在することを特徴とする化粧石板付パネル。
【請求項2】
前記表面補強層が前記パネル本体の表裏両面に設けられた請求項1に記載の化粧石板付パネル。
【請求項3】
前記発泡セメントパネルが、前記パネル本体の周側面に、合成樹脂に繊維集合体が埋設状に設けられてなる側部補強層を設けたものである請求項1または2に記載の化粧石板付パネル。
【請求項4】
前記発泡セメントパネルの周側面に板状石材が接合されてなり、該周側面の板状石材と前記パネル本体との間に前記側部補強層が存在する請求項3に記載の化粧石板付パネル。
【請求項5】
前記表面補強層の合成樹脂が、発泡合成樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧石板付パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−106128(P2011−106128A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260487(P2009−260487)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【特許番号】特許第4454693号(P4454693)
【特許公報発行日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】