説明

化粧組成物

【課題】使用感に優れ、長期保存しても粘度低下、分離等の変質が生じない、良好な安定性を有し、かつ安全性の高い化粧組成物を提供する。
【解決手段】下記の(a)〜(d)成分および水を含有することを特徴とする化粧組成物。
(a)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(b)キサンタンガム
(c)ペンチレングリコールおよび/または1,2−ヘキサンジオール
(d)多価アルコール脂肪酸エステル(但し、ウンデシレン酸モノグリセリドを除く)、アルキルグルコシドから選ばれた1種または2種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性、安全性の高い化粧組成物に関する。さらに詳しくは、使用感に優れ、長期保存しても粘度低下、分離等の変質が生じない良好な安定性を有し、かつ安全性の高い化粧組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学物質の安全性や環境への影響について、社会的関心が高まってきている。しかし、その一方で、化粧組成物において、強い乳化力や良好な分散力を有すること等から、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物を含む界面活性剤が汎用されている。また、パラオキシ安息香酸エステル(以下、パラベン)は、防腐剤として最も多く汎用されている。
【0003】
上記酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物を含まない非イオン界面活性剤、なかでも多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシドの安全性が高いということは公知である。また、ペンチレングリコールおよび/または1,2−ヘキサンジオールが、パラベンに比べ、感覚的刺激(スティギング)を含めて安全性が高いということも公知である。
【0004】
そのような中で、化粧組成物については、ますます機能性の訴求が強まり、顕著に効果を発現することのできる薬効成分の配合も種々検討されつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機能性を訴求する薬効成分を配合した場合には、その安定的制御が困難であることが多く、粘度低下、分離等の変質が生じるという問題が内在していた。
【0006】
このような状況を踏まえ、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いて油溶性紫外線吸収剤や粉体を分散させる方法(特許文献1を参照)や、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いてアスコルビン酸グルコシド、pH調整剤、水を含むゲル状組成物の性状変化を抑制する方法(特許文献2を参照)等が開示されている。
【特許文献1】特開平5−97644号公報
【特許文献2】特許第3814224号公報
【0007】
しかしながら、長期保存安定性の実態は依然懸案を残しており、安全性についての考慮も、未だ明確にはなされていなかった。また、酸化エチレン、酸化プロピレン付加重合物を含む界面活性剤やパラベンの安全性に対する疑義は、必ずしも払拭されていないというのが実情である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、酸化エチレン、酸化プロピレン付加重合物を含む界面活性剤やパラベンを含有せず、使用感に優れ、長期保存しても粘度低下、分離等の変質が生じない、安定性良好かつ安全性の高い化粧組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(a)〜(d)成分および水を含有し、
(a)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(b)キサンタンガム
(c)ペンチレングリコールおよび/または1,2−ヘキサンジオール
(d)多価アルコール脂肪酸エステル(但し、ウンデシレン酸モノグリセリドを除く)、アルキルグルコシドから選ばれた1種または2種以上、
かつ、パラオキシ安息香酸エステル、並びに、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物を含有しないことを特徴とする化粧組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明の化粧組成物は、上記の(a)〜(d)成分および水を含有することにより、酸化エチレン、酸化プロピレン付加重合物を含む界面活性剤やパラベンを含有せず、使用感に優れ、かつ長期保存しても粘度低下、分離等の変質が生じない、安定性良好かつ安全性の高い化粧組成物となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
本発明における(a)成分、すなわちアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とも呼ばれ、アクリル酸と炭素数10〜30の直鎖状または分岐状アルキル基のエステル体、およびメタクリル酸と同じくアルキル基のエステル体が共重合したものであり、大きな親水基と小さな親油基をもつ高分子乳化剤である。
【0013】
このアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、カーボポール13421、カーボポールETD2020、PEMURENN TR−1、PEMURENN TR−2、ULTREZ−20、ULTREZ−21(いずれも、ルーブルリゾール社)として市販されている。
【0014】
これらは、必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでもULTREZ―20および/またはULTREZ―21を用いることが好適である。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量は特に限定されないが、優れた使用感と安定性を得るためには0.01〜5.0%配合することが好ましく、0.1〜2.0%配合することが、特に好ましい。
【0015】
本発明における(b)成分、すなわちキサンタンガムは、ケルトロールCG(三昌社)、エコーガム(大日本住友製薬)、ノムコートZ、ノムコートZZ(日清オイリオ社)等として市販されているものである。その配合量は、優れた使用感と安定性を得るためには0.01〜1.0%とすることが好ましく、0.05〜0.5%とすることが、特に好ましい。
【0016】
本発明における(c)成分、すなわちペンチレングリコールおよび/または1,2−ヘキサンジオールの配合量は、高い保存効力を備えるためには0.01〜10.0%とすることが好ましく、0.5〜5.0%とすることが、特に好ましい。
【0017】
本発明における(d)成分、すなわち多価アルコール脂肪酸エステル(d)多価アルコール脂肪酸エステル(但し、ウンデシレン酸モノグリセリドを除く)、アルキルグルコシドは、特に限定されず、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、グルコース脂肪酸エステルおよびアルキルグルコシドから選ばれた1種または2種以上であればよい。特に好適なのは、アルキル(C12―20)グルコシド、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジステアリン酸スクロース、ジステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル−2、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸メチルグルコース、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリステアリン酸スクロース、トリベヘニン、トリベヘン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、パルミチン酸ソルビタン、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/エイコ酸二酸)ポリグリセリルー10、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10、ベヘン酸グルセリル等である。
【0018】
また、本発明における水の配合量は、30〜95%であることが好ましい。
【0019】
本発明の化粧組成物には、一般に用いられる薬効成分、着香剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、懸濁剤、安定化剤、湿潤剤、抗酸化剤、pH調整剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤等を適宜配合することができる。ただし、安全性等の観点から、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物と、パラベンは配合しないことが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量はすべて重量%を表す。
【0021】
まず、この実施例で用いた試験法、評価法について説明する。
【0022】
[保存効力試験]
第15改正日本薬局方「保存効力試験」に準拠して行い、判定基準もそれに依拠した。28日後に化粧組成物の生菌数を測定し、菌が減衰したものを○、菌が増殖したものを×で示した。
【0023】
[安定性試験]
5℃、40℃恒温槽保管品および室温保管品について、それぞれ翌日、1週間後、および1ヶ月後の経時観察を目視にて行った。その結果40℃恒温保管品にて顕著な有意性がみられたため、これで評価した。分離等の異常を示さなかったものを○、著しい分離等の外観異常がみられたものを×で示した。
【0024】
[実用試験]
女子専門パネル(20名)による使用感触試験を行い、それぞれに5段階評価を行った評点の平均点を、判定基準に基づき○または×で示した。
(評価) :(内容)
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い
1 : 悪い
(判定基準)
(評点の平均点):(判定)
3.5以上 : ○
3.5未満 : ×
【0025】
[実施例1〜4、比較例1〜4]美白ゲル
製法:
(1)成分1〜11を約70℃にて均一に分散膨潤させる。(2)成分12、13を均一に混合溶解させる。(3)成分14〜16を約70℃にて均一に混合溶解させる。(4)成分17、18を均一に混合溶解させる。そして、(1)に(2)をホモミキサーで攪拌しながら加えた後、(3)を加えて約40℃まで冷却を行い、(4)を加えて、さらに約30℃まで冷却した。
【0026】
アスコルビルリン酸ナトリウムは電解質を有するため、しばしば製剤化が困難であったが、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物、またパラベンを用いることなく、保存性、安定性、実用性が良好な半透明の美白ゲルを得ることができた。
【0027】
【表1】

【0028】
[実施例5]アロマジェル
製法:
(1)成分1〜12を約70℃にて均一に分散膨潤させる。(2)成分13、14を均一に混合溶解させる。(3)成分15〜19を約70℃にて均一に混合溶解させる。(4)成分20〜22を均一に混合溶解させる。そして、(1)に(2)をホモミキサーで攪拌しながら加えた後、(3)を加えて約40℃まで冷却を行い、(4)を加えて、さらに約30℃まで冷却した。
【0029】
この実施例においても、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物、またパラベンを用いることなく、保存性、安定性、実用性が良好なアロマジェルを得ることができた。
【0030】
【表2】

【0031】
[実施例6]ボディマッサージクリーム
製法:
(1)成分1〜9を約70℃にて均一に分散膨潤させる。(2)成分10、11を均一に混合溶解させる。(3)成分12〜17を約70℃にて均一に混合溶解させる。(4)成分18〜20を均一に混合溶解させる。(5)成分21〜24を均一に混合溶解させる。そして、(1)に(2)をホモミキサーで攪拌しながら加えた後、(3)を加えて約40℃まで冷却を行い、(4)及び(5)を加えて、さらに約30℃まで冷却した。
【0032】
この実施例においても、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物、またパラベンを用いることなく、保存性、安定性、実用性が良好なボディマッサージクリームを得ることができた。
【0033】
【表3】

【0034】
[実施例7]オールパーパスクリーム
製法:
(1)成分1〜10を約70℃にて均一に分散膨潤させる。(2)成分11、12を均一に混合溶解させる。(3)成分13〜17を約70℃にて均一に混合溶解させる。そして、(1)に(2)をホモミキサーで攪拌しながら加えた後、(3)を加えて約30℃まで冷却した。
【0035】
この実施例においても、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物、またパラベンを用いることなく、保存性、安定性、実用性が良好なオールパーパスクリームを得ることができた。
【0036】
【表4】

【0037】
[実施例8]セルフタンニングエマルジョン
製法:
(1)成分1〜8を約70℃にて均一に分散膨潤させる。(2)成分9〜14を約70℃にて均一に混合溶解させる。(3)成分15〜17を均一に混合溶解させる。そして、(1)に(2)をホモミキサーで攪拌しながら加えて約40℃まで冷却を行い、(3)を加えて、さらに約30℃まで冷却した。
【0038】
この実施例においても、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物、またパラベンを用いることなく、保存性、安定性、実用性が良好なセルフタンニングエマルジョンを得ることができた。
【0039】
【表5】

【0040】
表1〜5に示した結果からわかる通り、実施例1〜8の化粧組成物は、酸化エチレン、酸化プロピレン付加重合物を含む界面活性剤やパラベンを含有せず、使用感に優れ、長期保存しても粘度低下、分離等の変質が生じない、安定性良好、かつ安全性の高い化粧組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(d)成分および水を含有し、
(a)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(b)キサンタンガム
(c)ペンチレングリコールおよび/または1,2−ヘキサンジオール
(d)多価アルコール脂肪酸エステル(但し、ウンデシレン酸モノグリセリドを除く)、アルキルグルコシドから選ばれた1種または2種以上、
かつ、パラオキシ安息香酸エステル、並びに、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加重合物を含有しないことを特徴とする化粧組成物。

【公開番号】特開2012−214514(P2012−214514A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178324(P2012−178324)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2008−42647(P2008−42647)の分割
【原出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】