説明

医用システム

【課題】医用診断装置が異常になったときでも完全に停止することなく機能を制限して使用し、かつ他の医用診断装置で処理を分担する医用システムを提供する。
【解決手段】複数の医用診断装置と医用情報管理部とをネットワークを介して接続可能として医用システムであって、複数の医用診断装置が、自己の異常状態を検知する異常検知部と、複数の医用診断装置の各異常検知部からの異常情報を受信して自己及び他の医用診断装置の状態を把握するステータス受信部と、自己の医用診断装置で検査を行う場合のリスク度を異常情報をもとに算出し、リスク度に応じて自己の医用診断装置で検査可能なオーダを判断するデータ処理部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された複数の医用診断装置(モダリティ)のいずれかが異常になった場合に、他の医用診断装置との間で通信を行いリスク度に応じて検査オーダを振り分けるようにした医用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用装置としてX線CT装置(X線コンピュータトモグラフィ装置)、MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)、超音波診断装置等の様々なモダリティを使用して医療検査を行っている。また医療機関内の情報を管理するHIS(Hospital Information System)や、放射線科内の情報を管理するRIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving Communication System)等のシステムが構築され、情報伝達のオンライン化が図られている。これにより医用画像の撮影オーダの予約受付けを行ったり、各種モダリティと他の医用装置との間で情報のやり取りを行うようにしている。
【0003】
ところで、従来の医用システムでは、複数のモダリティのうち、いずれか1つが故障した場合、或いは故障しそうになった場合、故障したモダリティは使用を中止するか、一部の機能のみを実行するように使用を制限していた。例えばX線CT装置のX線管球の寿命が近づいた場合は使用を中止するか、故障に影響のない機能のみを使用するようにしていた。このためワークフローが妨げられることがあった。
【0004】
特許文献1には、X線検出器の一部の検出器列に故障が発生した場合に、異常画像が再構成されることになるヘリカルピッチを明示して誤った臨床が行われるのを防止したX線CT装置が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、医用画像を複数の確認装置で確認する際に、或る確認装置が故障したり未確認の医用画像が集中している場合に、別の確認装置に配信するようにした医用画像システムが開示されている。
【0006】
さらに特許文献3には、画像撮影装置で撮影した画像を画像再生装置に出力する際に、出力先が故障した場合にバックアップ装置を探索して出力先を切り替えるようにした画像撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−95308号公報
【特許文献2】特開2005−218758号公報
【特許文献3】特開2004−97637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の医用システムでは、複数のモダリティのうち、いずれか1つが故障した場合、或いは故障しそうになった場合、故障したモダリティは使用を中止するか、一部の機能のみを使用するように制限していたため、ワークフローが妨げられることがあった。また特許文献1の例では、ワークフローを改善できないし、特許文献2,3に記載のように故障した装置をシステムから切り離して他の装置に処理を負担させる例では、機能によっては使用できる場合でも、完全に故障した場合と同様に扱ってしまうため検査効率の低下を招いていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたもので、医用診断装置が異常になったときでも装置を完全に停止することなく機能を制限して使用し、他の装置で処理を分担することによりワークフローを妨げずに検査を実行することができる医用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明は、複数の医用診断装置と、前記複数の医用診断装置に検査オーダを送信する医用情報管理部とをネットワークを介して接続可能な医用システムであって、前記複数の医用診断装置は、自己の異常状態を検知する異常検知部と、前記複数の医用診断装置の各異常検知部からの異常情報を受信して自己及び他の医用診断装置の状態を把握するステータス受信部と、自己の医用診断装置で検査を行う場合のリスク度を前記ステータス受信部で受信した前記異常情報をもとに算出し、前記リスク度に応じて自己の医用診断装置で検査可能なオーダを判断するデータ処理部と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
また請求項6記載の本発明は、異常検知部を備えた複数の医用診断装置と、医用情報管理部とをネットワークを介して接続可能な医用システムであって、前記医用情報管理部は、前記複数の医用診断装置に検査オーダを送信する検査オーダ送信部と、前記異常検知部からの異常情報をそれぞれ受信して前記複数の医用診断装置の状態を把握するステータス受信部と、前記各医用診断装置で検査を行う場合のリスク度を前記ステータス受信部で受信した前記異常情報をもとに算出し、前記リスク度に応じて前記医用診断装置毎の検査可能なオーダを判断するデータ処理部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医用診断装置のいずれかが異常になったとき場合は、リスク度の低い検査を実行し、リスク度の高い検査は正常な医用診断装置で行うようにすることで、ワークフローを妨げずに検査を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用システムに使用するデータ処理モジュールを示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る医用システムを示す構成図。
【図3】第1の実施形態の動作を説明するフローチャート。
【図4】第1の実施形態の変形例を示す構成図。
【図5】第1の実施形態の変形例における表示画面の一例を示す説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る医用システムを示す構成図。
【図7】第2の実施形態における表示画面の一例を示す説明図。
【図8】第2の実施形態の変形例を示す構成図。
【図9】第2の実施形態の変形例の動作を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る医用システムに使用するデータ処理モジュール示す構成図である。一般に、病院等の医療機関では、X線CT装置や、MRI装置、超音波診断装置等の医用診断装置(モダリティ)がネットワークを介して接続されており、医療機関内の情報を管理するHIS(Hospital Information System)、或いは放射線科内の情報を管理するRIS(Radiology Information System)等で各モダリティを管理するようにしている。
【0016】
図1のデータ処理モジュールは、モダリティ又はHIS等の医用情報管理部内に設けられ、データ処理部11、データ入力部12、リスク度保存部13、装置ステータス受信部14、データ送信部15を含む。
【0017】
データ処理部11は、データ入力部12、リスク度保存部13、及び装置ステータス受信部14からの各種のデータを処理し、処理結果をデータ送信部15に供給する。データ入力部12は検査オーダ等を入力する。リスク度保存部13は、モダリティが各種の検査を行うときのリスク度を保存している。リスク度は検査の種類とモダリティの状態(異常か正常化)に応じて設定される。装置ステータス受信部14は、各装置(本実施形態では複数のモダリティ)から現在の状態を示す情報を受信する。例えばX線CT装置のX線管の管球寿命が近い場合に故障予知情報を受信する。データ送信部15は各種のデータ、例えば検査オーダを取得した旨のデータを送信する。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る医用システムを示す構成図である。図2は、第1、第2のモダリティ20,30と医用情報管理部40(HIS、RIS等)とを含んで構成され、第1、第2のモダリティ20,30と医用情報システム40はネットワークを介して接続可能である。尚、以下の説明では、医用診断装置として第1、第2のモダリティ20,30を有する場合を述べるが、他の医用診断装置が含まれてもよい。
【0019】
第1、第2のモダリティ20、30内には、図1のデータ処理モジュール10に相当するモジュール101、102が備えられている。図2では、第1、第2のモダリティ20、30がそれぞれX線CT装置であり、医用情報管理部40がHISである場合について説明する。
【0020】
第1のモダリティ20(X線CT装置)は、データ処理モジュール101を備え、データ処理モジュール101は、データ処理部111、データ入力部121、リスク度保存部131、装置ステータス受信部141、データ送信部151を含む。また第1のモダリティ20は、検査オーダ取得部21、検査オーダ保存部22、異常検知部23を備えている。さらに第1のモダリティ20は、撮影部24を有している。
【0021】
撮影部24は、被検体に関する投影データを収集するため、X線管球、X線検出器、データ収集部、データ伝送装置等を含む。X線管球から被検体に対してX線が照射されると、X線検出器は被検体を透過したX線を検出し、データ収集部はX線検出器から出力された信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(投影データ)を出力する。
【0022】
第2のモダリティ30(X線CT装置)も第1のモダリティ20と同様に構成され、データ処理モジュール102を備えている。データ処理モジュール102は、データ処理部112、データ入力部122、リスク度保存部132、装置ステータス受信部142、データ送信部152を含む。また第2のモダリティ30は、検査オーダ取得部31、検査オーダ保存部32、異常検知部33及び撮影部34を有している。
【0023】
第1、第2のモダリティ20、30は、ネットワークNWを介して接続されており、異常検知部23,33で異常を検知したとき異常情報を生成してネットワークNWに送信する。異常の検知とは、例えば故障の検知や故障の予測などを意味し、故障を検知したり故障を予測した場合はネットワークNWに異常情報が送信され、装置ステータス受信部141,142は自身の装置及び他の装置(モダリティ)の状態を、異常情報を受信することで把握することができる。
【0024】
一方、医用情報システム(HIS)40は、検査オーダ入力部41、検査オーダ送信部42、検査オーダ受信部43を備えている。検査オーダ入力部41は、患者の撮影が必要な場合に、患者情報や検査オーダの入力を行う。検査オーダ送信部42は、モダリティ20または30に対して検査オーダを送信する。検査オーダ受信部43は、モダリティ20または30が検査オーダを取得したとき、検査オーダ取得部21,31から検査オーダを取得した旨の情報を受信する。
【0025】
このような図2の医用システムの動作を図3のフローチャートを参照して説明する。尚、以下の説明では、モダリティ20において故障が発生又は故障が予測された場合を想定して述べる。故障の予測としては、例えばX線管球の寿命検知がある。X線管球の寿命はX線管球の管電圧や使用時間等から算出することができ、異常検知部23は、算出した値が予め設定した数値に近付いたときに寿命が近づいたことを示す異常情報を生成する。
【0026】
図3のステップS1で、例えばX線管球の寿命が近づいたことが検知されると、異常検知部23は装置ステータス受信部141に異常情報を送信する。またネットワークNW上に異常情報を送信する。なお、異常情報とは実際に故障したとき及び故障が予測されたときに出力される情報を意味する。 ステップS2では、モダリティ20の装置ステータス受信部141が異常情報を受信し、モダリティ20の管球寿命が近いことを把握する。
【0027】
一方、HIS40は、ステップS3において検査オーダ送信部42からモダリティ20,30に対して検査オーダを送信する。またステップS4で、モダリティ20,30は、データ入力部121,122を介して検査オーダを受信する。検査オーダを受信すると、ステップS5において、データ処理部111,112は装置ステータス受信部141,142からの情報と受信した検査オーダを基にリスク度保存部131,132に対してリスク度の問い合わせを行う。
【0028】
ステップS6では、リスク度保存部131,132からデータ処理部111,112に対してリスク度が送信される。データ処理部111,112はステップS7において、送信されたリスク度と予め設定された閾値を比較する。リスク度が閾値よりも低い場合(YES)、データ送信部151,152はステップS8で検査オーダを取得するための情報を生成し、検査オーダ取得部21,31を介してHIS40に送信する。また検査オーダ取得部21,31はステップS9で検査オーダを取得し、かつ取得した検査オーダを検査オーダ保存部22,32に保存する。
【0029】
HIS40から新たな検査オーダが送信されたときはステップS4に戻ってステップS5〜S9の処理を繰り返す。またステップS7においてリスク度が閾値よりも大きいと判断したきは、モダリティ20,30は検査オーダを取得せず、ステップS4に戻る。例えばモダリティ20のX線管球の寿命が近づいたとき、リスク度が大きくなるため、検査オーダを全て受け付けることはせず、リスクの低い検査(撮影)のみを実行するように検査オーダの取得を調整する。
【0030】
以下、図3のフローチャートの処理を具体的に説明する。ステップS1での異常検知(故障予測)は、例えばX線管球のヒートユニット(HU)値を用いることができる。異常検知部23,33は、HU値と寿命警告閾値を持ち、積算HU値が予め設定した閾値を越えると、X線管球の寿命が近づいたことを知らせるアラート信号(異常情報)を生成する。
【0031】
例えばモダリティ20の異常検知部23で管球寿命を検知すると、ステップS2においてステータス受信部141はアラート信号を受信し、データ処理部111に対してモダリティ20が故障を予測したことを把握する。
【0032】
またデータ入力部121は、ステップS4でHIS40の検査オーダ送信部42から検査オーダを受信する。例えば、データ1が腹部CT検査オーダを表し、データ2が心臓CT検査オーダを表すものとする。データ処理部111は、データ入力部12でデータ1,データ2を受け取ると、データ処理部111は受け取ったデータ(データ1,データ2)と装置ステータス受信部141からのアラート信号(異常情報)に応じたリスク度を、リスク度保存部131に問い合わせる。
【0033】
ここで、ステップS5におけるリスク度の計算方法の一例を説明する。上述したようにX線管球の入力を表す単位にHU値がある。HU値は管電圧や使用時間等から算出したもので、積算HU値のデータを集めることで、HU値が或る値(α)のときに管球が切れる確率Pが求められる。P(HU値=α)とする。そこで、モダリティ20の今までの積算HU値を「HU_積算」とし、或る検査の平均HU値を「HU_平均」とすると、「HU_積算」と「HU_平均」から或る検査を行う際のリスク度「R」が算出される。
【0034】
リスク度保存部131は、モダリティ20のステータス(正常か異常か)と検査種別毎にリスク度を示すテーブルを有しており、例えばX線管球が寿命に近付いたときのリスク度を検査種別ごとに保持している。したがって、モダリティ20のX線管球が寿命に近付いたとき、腹部CT検査(データ1)は比較的負荷が少ないためリスク度は低く、心臓CT検査(データ2)は負荷が高いためリスク度は高い。
【0035】
ステップS6では、例えば、データ1=リスク度:0.01、データ2=リスク度:0.10として、データ処理部111にリスク度を送信する。ステップS7では、リスク度と閾値を比較し検査可能なオーダを判断する。閾値を例えば0.05とすると、リスク度が閾値以下であれば、ステップS8でデータ送信部151はオーダ取得のための情報を生成し、検査オーダ取得部21は、閾値以下の検査オーダ(上述の例では、腹部CT検査)を取得する。
【0036】
一方、閾値以上の検査オーダ(上述の例では、心臓CT検査)を受けた場合は、ステップS4に戻り、ステップS5〜S7の動作を繰り返す。つまり、リスク度が低い検査オーダのみを取得し、リスク度の高い検査オーダは取得しないように調整する。こうして、ステップS9ではリスク度が低い検査オーダのみが保存される。また他のモダリティ30は正常に動作するので各検査のリスク度は低いため、殆どの検査オーダを取得することができる。
【0037】
尚、X線管球が寿命に近付くほどリスク度は徐々に高くなるため、データ処理部111は、リスク度保存部131から読み出したリスク度をX線管球の使用時間が多くなるに従って修正し、徐々にリスク度を高くするようにしてもよい。
【0038】
データ処理部111、112は、リスク度に応じて、例えば以下の(a),(b)の処理を行う。
(a)故障検知又は故障を予測したモダリティは、リスク度が大きい検査オーダは取得しない。つまり故障したモダリティでは、リスク度が閾値以上の場合、検査オーダを選択しないようにする。
(b)正常なモダリティは、高リスク度の検査オーダを順に選択し、故障したモダリティでは、リスク度が小さな検査オーダから順に選択する。勿論、完全に故障して使用できなくなった場合は、全ての検査オーダを排除することになる。
【0039】
モダリティ20,30は互いに通信可能であり、自身のモダリティのステータスだけでなく、他のモダリティのステータスを確認することもできるため、他のモダリティが正常であれば、他のモダリティに対してリスク度の高い検査オーダを受け持ってもらうようにすることができる。したがって、正常なモダリティではリスク度の高い検査オーダを選択し、異常のモダリティではリスク度の低い検査オーダを受け持つことで、検査オーダを振り分けることができ、ワークフローが妨げられることはない。
【0040】
尚、以上の説明では、モダリティ20が故障しモダリティ30が正常な場合を例にして述べたが、モダリティ20が正常で、モダリティ30が故障した場合は、逆にモダリティ20ではリスク度の高い検査オーダを順に選択し、モダリティ30はリスク度の低い検査オーダのみを選択するように動作させればよい。
【0041】
図4は、一実施形態に係る医用システムの変形例を示すブロック図である。
【0042】
図4では、モダリティ20,30の検査オーダ取得部21,31の前段にそれぞれ検査オーダ表示部25,35を設けたことに特徴がある。
【0043】
基本的には図2と同じであるが、検査オーダを選択するのがモダリティ20,30ではなく操作者であり、モダリティ20,30において検査オーダを受信した際に検査オーダ表示部25,35にメッセージを表示するようにしたものである。これにより、故障したモダリティがある場合に、操作者が検査オーダを選択する際の目安にすることができる。
【0044】
データ処理部111,112は、リスク度に応じてデータの処理を行うが、故障したモダリティがある場合、検査可能なオーダを判断し、以下の(a),(b)の処理を行い、検査オーダ表示部25,35にメッセージを表示する。
(a)故障したモダリティでは、リスク度が閾値以上の検査オーダは選択しないように注意を促す表示を行う。例えば、リスク度の高い検査項目を色付けして表示する。
(b)故障したモダリティと正常なモダリティを連携させて、故障したモダリティがある場合、正常なモダリティでは、リスク度が閾値以上の検査を優先して選択するように注意を促す表示を行う。また故障したモダリティではリスク度の高い検査は除外し、リスク度の低い検査オーダを選択するように注意を促す表示を行う。
【0045】
図5は、検査オーダ表示部25,35での表示例を示す説明図である。図5(a)は故障が検知されたモダリティでの表示例であり、図5(b)は、正常なモダリティでの表示例を示す。例えば、故障が検知されたモダリティの表示部には、図5(a)のように「故障が検知されました」、「負荷の高い検査(赤字)は控えるようにして下さい」と表示し、検査項目のうち、リスク度の高い検査項目(色付きの検査Aと検査D)は、選択しないようにメッセージ表示する。
【0046】
また正常なモダリティの表示部には、図5(b)のように「装置2で故障が検知されました」、「負荷の高い検査(青字)は極力こちらで行って下さい」と表示し、検査項目のうち、リスク度の高い検査項目(色付きの検査Aと検査D)を選択するようにメッセージを表示する。
【0047】
検査オーダ表示部25,35に表示されたメッセージをもとに操作者が検査オーダを選択したあと、検査オーダ取得部21,31は、HIS40に対して選択された検査オーダを送信し、検査オーダ保存部22,32に選択された検査オーダを保存する。
【0048】
以上述べたように本発明の第1の実施形態では、X線管球寿命が近いなどの異常を検知した医用診断装置ではリスク度の低い検査を優先的に行い、リスク度の高い検査は正常な医用診断装置で行うようにすることで、ワークフローを妨げずに、リスクを最小化した運用をすることができる。
【実施例2】
【0049】
次に本発明の第2の実施形態について図6を参照して説明する。図6では医用情報システム40(HIS)内に、図1のデータ処理モジュール10に相当するモジュール103を備えている。データ処理モジュール103は、データ処理部113、データ入力部123、リスク度保存部133、装置ステータス受信部143、データ送信部153を含む。
【0050】
データ処理部113は、データ入力部123、リスク度保存部133、及び装置ステータス受信部143からの各種のデータを処理し、処理結果をもと検査可能なオーダを判断し、データ送信部153からモダリティ20,30に対して検査オーダを送信する。またデータ送信部153は異常な医用診断装置がある場合は検査オーダの調精を行う。データ入力部123は検査オーダ等を入力するもので、リスク度保存部13はモダリティが異常時の各種の検査毎のリスク度を保存している。
【0051】
またモダリティ20は、検査オーダ取得部21と、異常検知部23と、HIS40に対して異常情報を送信する異常情報送信部26を有している。同様にモダリティ30は、検査オーダ取得部31と、異常検知部33と、異常情報送信部36を有している。
【0052】
尚、図6では、HIS40からモダリティ20,30に対して検査オーダを送信する部分と、モダリティ20,30からHIS40に対して異常情報を送信する部分を主体に示している。図6の構成では、HIS40において検査オーダの振り分けを行う部分に、データ処理モジュール103が組み込まれ、HIS40がモダリティ20,30に対して検査オーダを振り分ける点が第1の実施形態と異なる。
【0053】
HIS40は、装置ステータス受信部143において各モダリティ20,30から異常情報を受信しているため、モダリティ20,30の状態(異常か正常か)を把握することができる。データ送信部153は、いずれかのモダリティで異常が検知された場合は、モダリティ20,30に対してリスク度を基に検査オーダを振り分ける。
【0054】
例えばモダリティ20が正常で、モダリティ30で故障が検知された場合(管球寿命が予測された場合)の動作を説明する。図7(a)は、HIS40がリスク度を考えずに検査オーダを振り分けた場合を示す図であり、モダリティ20にはリスク度の低い検査1、検査3(ともにリスク度0.01)と、比較的リスク度の高い検査5(リスク度0.05)が振り分けられ、モダリティ30には、比較的リスク度の高い検査2(リスク度0.05)とリスク度の高い検査4(リスク度0.10)が振り分けられた場合を例示している。
【0055】
この場合、モダリティ30は故障が検知されているため、このままではモダリティ30では検査2,4はいすれも実行できないため、検査が滞ってしまう。
【0056】
一方、図7(b)は、HIS40がモダリティ20,30のステータスに応じて適正に検査オーダを振り分けた場合を例示している。図7(b)では、リスク度の高い検査、例えば検査4(リスク度0.10)、及び比較的リスク度の高い検査2と検査5(いずれもリスク度0.05)はモダリティ20に振り分け、リスク度の低い検査、例えば検査1と検査3(いずれもリスク度0.01)はモダリティ30に振り分けている。
【0057】
したがって、モダリティ30が故障を検知した場合、リスク度の低い検査のみをモダリティ30で実行し、リスク度の高い検査をモダリティ20で優先的に実行するように検査オーダを調整する(振り分ける)ことができ、検査の滞りを低減することができる。
【0058】
ところで、異常検知としてはX線管球の寿命に限らず、コンピュータウィルスの感染による機能低下といった事態も起こり得る。例えば、医用診断装置(モダリティ等)はネットワークNWを介してコンピュータウィルスに感染する恐れがある。或いは、医師個人や院内のパーソナルコンピュータ(PC)をインターネットに接続した場合にもPCがコンピュータウィルスに感染する場合があり、それらのPCを院内のネットワークNWに接続して使用した場合にはコンピュータウィルスに感染する恐れがある。尚、以下の説明では、コンピュータウィルスを単にウィルスと称す。
【0059】
またウィルスに感染した場合には、ウィルス対策ソフトウェアを利用して、ウィルスの削除、駆除、隔離といった対策を行うが、対策を行うまでの間は医用診断装置の機能が低下する可能性がある。そこで図8の医用システムでは、モダリティ20,30がウィルスに感染したときの対応策を施している。
【0060】
図8では、医用情報システム40(HIS)内に、図1のデータ処理モジュール10に相当するモジュール103を備えている。データ処理モジュール103は、データ処理部113、データ入力部123、リスク度保存部133、装置ステータス受信部143、データ送信部153を含む。
【0061】
データ処理部113は、データ入力部123、リスク度保存部133、及び装置ステータス受信部143からの各種のデータを処理し、処理結果をもとに検査可能なオーダを判断し、データ送信部153からモダリティ20,30に対して検査オーダを送信する。データ入力部123は検査オーダ等を入力するもので、リスク度保存部13はウィルスに感染したときのリスク度を保存している。
【0062】
またモダリティ20は、検査オーダ取得部21と、情報送信部27を有している。情報送信部27は、ウィルスに感染したか否かをスキャンしてスキャン済みの情報をHIS40の装置ステータス受信部143に送信する。モダリティ30もモダリティ20と同様の構成を有しているが詳細は省略する。また図8ではウィルス管理部50からの情報が装置ステータス受信部143に入力される。
【0063】
ウィルス管理部50は、例えばウィルス発生の可能性を示す特異データを収集してウィルスの特徴を示す情報を定義し、この情報を基にウィルスの検索を実施し、ウィルスが検索された場合、装置ステータス受信部143にウィルスアラートを送信する。またHIS40のデータ送信部153は、プリンタ60などの機器にオフラインで接続している。
【0064】
図8の医用システムの動作を図9を参照して説明する。ウィルスに感染したことが検出されると、一般的にはそれ以上の感染拡大を防ぐために、装置をネットワークから遮断する。モダリティ20,30では、サービスエンジニアの到着を待ってからウィルススキャンを行い、問題ないことが判明するまでネットワークに接続できない場合が多い。このため、復帰するまでファイルサーバを必要とするような検査はできない。
【0065】
そこで、モダリティに付属しているデータ記憶部の記憶領域だけでしばらく対応するように、データ量の少ない検査から行うようにオーダを振り分け、ウィルス対策後にネットワークに復帰したモダリティから順に、データ量の大きい検査を振り分けるようにする。
【0066】
先ず、ウィルスの検知と、ウィルスが検知された際にユーザが行うであろう処理例について述べる。通常は、図8に示すようにオンライン(太線)で検査オーダをモダリティ20,30に送っている。ウィルスがネットワーク内で発見されると、図9で示すように、ユーザはモダリティ20,30等の全ての医用診断装置をネットワークから切り離す。このときウィルス管理部50は、ウィルスが発見され、モダリティ20,30が切り離されたことを示すウィルスアラートをHIS40に通知する。ウィルスアラートは他のシステムが自動的に行っても良いし、手動でHIS40に入力しても良い。
【0067】
次にHIS40の装置ステータス受信部143は、 ウィルスアラートを受信することでウィルスの発生疑いによりネットワークが遮断したことをデータ処理部113に伝える。またデータ入力部123から検査オーダが入力されると、データ処理部113はリスク度保存部133に対してリスク度を問い合わせる。
【0068】
ここで、ウィルス発生疑いに対するリスク度の計算方法の一例を述べる。例えば大きなディスク容量を必要とする検査を多く行った場合、モダリティのローカル記憶領域がすぐに飽和してしまう。そこで、検査種別毎の平均的なディスク使用量と、モダリティのデータ記憶部の空き容量からリスク度を計算する。例えば、リスク度をRとすると、R= (平均ディスク使用量)/(モダリティ空き容量)で求めることができる。モダリティのデータ記憶部の空き容量は、簡略化のためモダリティが保有する全ディスク容量と置き変えても良い。
【0069】
リスク度保存部133は、検査オーダ(腹部CT検査オーダ、広範囲CT検査オーダ等)、及びモダリティ20,30のステータス(ウィルス発生疑いによってネットワーク遮断)をもとにしたリスク度を読み出し、データ処理部113に送信する。腹部CT検査の場合のリスク度が例えば0.70で、広範囲CT検査でのリスク度が1.10であったとする。
【0070】
データ処理部113は、リスク度に応じて、リスク度の大きい検査は除外、つまり空き容量の少ないモダリティに対してはリスク度の高い検査オーダは送信しないようにする。各モダリティ20,30が保有する空き用容量の情報については、随時モダリティ20,30から装置ステータス受信部143に送信するようにしておけば、HIS40側で空き容量を知ることができる。
【0071】
こうしてモダリティが保有する空き容量を勘案して、データ処理部113はデータ送信部153からそれぞれのモダリティ20,30に対してリスク度の小さな検査から順に割り当てる。但し、ネットワークが遮断しているため、検査オーダの送り先をプリンタ60などのオフラインの機器に変更し、例えば、リスク度の小さい腹部CT検査オーをはオフライン機器に送信し、リスク度の大きな広範囲CT検査オーダは送信しないようにする。
【0072】
検査オーダを受信したプリンタ60は、検査オーダを印刷し、ユーザはオフラインで処理する。ウィルス対策が完了し、ウィルスが駆除されたことが確認できたら、ウィルス管理部50は再びネットワークを接続し、情報送信部26は、装置ステータス受信部143に対して異常がないことを送信し、元の状態(図8の状態)に復帰する。このように第2の実施形態では、ウィルスに感染した場合でも適切に検査オーダを振り分けることができる。
【0073】
以上述べたように本発明では、X線管球の寿命が近づいた場合やウィルスに感染した場合等の状況にあってもワークフローを妨げずに、リスクを最小化した運用をすることができる。
【0074】
尚、本発明の実施形態は、以上述べた実施例に限定されるものではない。例えば、異常検知としてX線管球の寿命やコンピュータウィルスへの感染を例に説明したが、異常の一例としては電源回路の故障などもある。電源回路からは装置の各部に対して電源電圧を供給するが、一部の電源電圧が低下しただけでは不都合なく検査を実施できる場合もあるため、どの電源電圧が異常かを判断してリスク度を求めるようにすることもできる。
【0075】
また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10、101,102,103…データ処理モジュール
11,111,112,113…データ処理部
12,121,122,123…データ入力部
13,131,132,133…リスク度保存部
14,141,142,143…装置ステータス受信部
20,30…モダリティ(医用診断装置)
21,31…検査オーダ取得部
22,32…検査オーダ保存部
23,33…異常検知部
24,34…撮影部、
25,35…検査オーダ表示部
26,36…異常情報送信部
40…HIS(医用情報管理部)
50…ウィルス管理部
60…プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医用診断装置と、前記複数の医用診断装置に検査オーダを送信する医用情報管理部とをネットワークを介して接続可能な医用システムであって、
前記複数の医用診断装置は、
自己の異常状態を検知する異常検知部と、
前記複数の医用診断装置の各異常検知部からの異常情報を受信して自己及び他の医用診断装置の状態を把握するステータス受信部と、
自己の医用診断装置で検査を行う場合のリスク度を前記ステータス受信部で受信した前記異常情報をもとに算出し、前記リスク度に応じて自己の医用診断装置で検査可能なオーダを判断するデータ処理部と、
を具備したことを特徴とする医用システム。
【請求項2】
前記データ処理部は、自己の医用診断装置での検査の種類と異常の状態に応じて前記リスク度を算出し、異常の状態においてはリスク度の低い検査オーダを優先的に受け付けることを特徴とする請求項1記載の医用システム。
【請求項3】
前記複数の医用診断装置は、異常の状態及び検査内容に応じて設定したリスク度を保存したリスク度保存部を備え、
前記データ処理部は、前記ステータス受信部で自己の医用診断装置の異常情報を受信したとき、前記リスク度保存部から読み出した前記リスク度を用いて検査可能なオーダを判断することを特徴とする請求項1記載の医用システム。
【請求項4】
前記複数の医用診断装置は、検査オーダ表示部と検査オーダ取得部を備え、
異常がある医用診断装置では前記リスク度の低い検査項目を選択するように前記検査オーダ表示部にメッセージを表示し、正常な医用診断装置ではリスク度の高い検査項目を選択するように前記検査オーダ表示部にメッセージを表示し、
前記検査オーダ取得部は、それぞれの医用診断装置が選択した検査オーダを前記医用情報管理部に送信することを特徴とする請求項1記載の医用システム。
【請求項5】
前記医用診断装置は、X線管球を備えたX線CT装置であり、
前記異常検知部は、前記X線管の使用時間情報を利用して前記X線管の寿命を予測し、前記異常情報を出力することを請求項1記載の医用システム。
【請求項6】
異常検知部を備えた複数の医用診断装置と、医用情報管理部とをネットワークを介して接続可能な医用システムであって、
前記医用情報管理部は、
前記複数の医用診断装置に検査オーダを送信する検査オーダ送信部と、
前記異常検知部からの異常情報をそれぞれ受信して前記複数の医用診断装置の状態を把握するステータス受信部と、
前記各医用診断装置で検査を行う場合のリスク度を前記ステータス受信部で受信した前記異常情報をもとに算出し、前記リスク度に応じて前記医用診断装置毎の検査可能なオーダを判断するデータ処理部と、
を具備したことを特徴とする医用システム。
【請求項7】
前記医用情報管理部は、異常がある医用診断装置に対してリスク度の低い検査を実行させ、正常な医用診断装置に対してリスク度の高い検査を実行させるように前記検査オーダを調整することを特徴とする請求項6記載の医用システム。
【請求項8】
前記複数の医用診断装置の前記異常検知部は、前記医用診断装置の故障又はコンピュータウィルスの有無を検知して前記異常情報を前記ステータス受信部に送信することを特徴とする請求項6記載の医用システム。
【請求項9】
前記医用情報管理部は、前記ネットワーク上でコンピュータウィルスが検出されたとき、前記複数の医用診断装置が保有するデータ記憶部の空き容量をもとに、空き容量が不足する検査は実行しないように前記検査オーダを調整することを特徴とする請求項8記載の医用システム。
【請求項10】
前記医用情報管理部は、前記ネットワーク上でコンピュータウィルスが検出されたとき、前記複数の医用診断装置に対する前記検査オーダの送信をオフライン機器を介して行うことを特徴とする請求項8記載の医用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−36560(P2011−36560A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188625(P2009−188625)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】