説明

医用スプレー装置

【課題】着脱具が噴射位置の見定めに邪魔にならず、しかも、操作性に優れた医用スプレー装置を提供すること。
【解決手段】スプレー本体に着脱具にて嘴管を取り付け、薬液を圧搾空気で噴霧する医用スプレー装置において、着脱具は、円筒ハウジングに係止ボールを遊嵌するボール落し孔を設け、円筒ハウジングの外側に進退動作により係止ボールを内方への押し出す係脱筒体を設け、嘴管は、薬液管と、空気管と、外管と、薬液管と空気管の端部の係合管と、ボール受け凹部とを具備し、前記嵌合孔に嘴管の挿入端部を嵌合したとき、係脱筒体で係止ボールを押し出してボール受け凹部に係合し、係脱筒体による係止ボールの押し出しを解除したとき、嘴管はスプレー本体から押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液や消毒液などを患部に噴霧するときに使用され、主として、耳、鼻、咽喉に用いられる医用スプレー装置に関するもので、狭い患部への噴射位置を確実に見定めることができ、かつ、患部に接触する嘴管を直接手で触れることなく交換できるようにしたものある。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の医用スプレー装置は、図6に示すように、スプレー本体10の下端に薬液びん11を着脱自在に嵌合し、スプレー本体10の前端に嘴管18を着脱自在に取り付け、グリップ兼用の薬液びん11を片手で握り、嘴管18の先端噴霧口20を耳、鼻、咽喉などの患部に臨ませ、親指で押釦13を押す。すると、バルブ12が開いて、エアチューブ14から圧搾空気が薬液びん11と嘴管18へ送り込まれ、薬液びん11内の薬液17が薬液チューブ16を通って薬液管19へ送られ、この薬液管19の先端部では、嘴管18からの空気によって薬液17が霧状になって噴霧口20から患部へ噴霧するものである。
【0003】
図6に示すような嘴管18の直線状のものは、耳、鼻などの患部に噴霧する場合に使用され、咽喉の場合には、嘴管18がやや長く、先端部近くをくの字に折れ曲げたものが使用される。
【0004】
本出願人は、術者等が嘴管に直接手などを触れることなくスプレー本体に嘴管を装着することができ、使用後にも嘴管に直接手などを触れることなく外すことのできる医用スプレー装置をすでに提案した(特許文献1)。
【0005】
この医用スプレー装置は、図5に示すようなスプレー本体10に着脱具38を取り付けておき、嘴管立て39の差し込み孔40に差し込まれている嘴管18を着脱具38に上から押しこむと、手を触れずに装着でき、また、着脱具38の押釦を押すと、嘴管18が回収容器内に飛び出すものである。
さらに詳しくは、図3及び図4(a)(b)において、この医用スプレー装置は、スプレー本体10の嘴管連結部15に取り付けた嘴管18から薬液びん11の薬液を圧搾空気で噴霧するようにした医用スプレー装置において、前記嘴管18は、薬液管19と、この薬液管19の外周を被覆する空気管48と、この空気管48の外周に嵌合し、外側面に係止溝50を形成した外管49とを具備し、前記嘴管連結部15の端部に嘴管18を連結するための着脱具38を取り付け、この着脱具38は、ハウジング42と、このハウジング42に設けられ前記外管49を着脱自在に嵌め込むための貫通孔43と、この貫通孔43に前記外管49を圧入すると前記係止溝50に係止する係止リング46と、この係止リング46の係止状態を解除するための押釦44とを具備している。
【0006】
前記空気管48と外管49との間に、前記外管49の係止溝50に係止リング46が係止したとき、薬液管19と空気管48を嘴管連結部15側に付勢するコイルばね29を介在している。
【0007】
前記着脱具38における略直方体のハウジング42の略中央に貫通孔43を貫通して設け、外管49の全外周に係止溝50を形成し、前記ハウジング42の切り溝59から2個のU字形の係止リング46を互いに相対する方向から嵌め込み、これらの係止リング46をそれぞれ逆方向に付勢するばね部45を有する押釦44に連結し、この押釦44で嘴管18を着脱する。
【0008】
前記押釦44にばね部45を一体に形成し、この押釦44に係止リング46を係止部47で連結している。
前記嘴管18は、薬液管19の基端部に、この薬液管19を貫通し、かつ、差し込み環30を有し、前記薬液管19を嘴管連結部15の薬液チューブ16に連通する差し込み環30を連結し、空気管48の基端部に、前記差し込み環30と空気管48の内部を連通する空気溝55を有し、外管49の内孔部57内のコイルばね29を係止する係合部54を連結している。
【0009】
このように構成された医用スプレー装置は、図5に示すように、予め嘴管立て39の複数の差し込み孔40にそれぞれ嘴管18を差し込んでおき、術者等がスプレー本体10に設けた着脱具38の貫通孔43に、差し込んである嘴管18を圧入するだけで嘴管18に直接手などを触れることなくスプレー本体10に装着することができ、使用後には、押釦44を押して係止リング46の係止状態を解除するだけで嘴管18に直接手などを触れることなく嘴管18を外すことができる。したがって、特に、耳鼻咽喉科の分野における鼻、咽喉の奥部に薬液17を噴霧する治療における感染症発生を未然に防止できる。
【0010】
着脱具38の貫通孔43に嘴管18を圧入したとき、嘴管18とスプレー本体10の嘴管連結部15がコイルばね29で確実に密着し、また、押釦44で係止リング46の係止状態を解除するときに手を加えなくてもコイルばね29で嘴管18が飛び出してくれる。
【0011】
着脱具38の貫通孔43に嘴管18を圧入したとき、嘴管18とスプレー本体10の嘴管連結部15が確実に密着し、かつ、空気と薬液17の通過をより確実に行える、などの作用効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−104187号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人が先に提案した医用スプレー装置は、術者等が手に触れることなく、スプレー本体10に嘴管18を装着することができ、使用後には、押釦44で係止リング46の係止状態を解除するだけで嘴管18に直接手などを触れることなく嘴管18を外すことができ、感染症発生を未然に防止できる、という作用効果を有する。
しかし、嘴管18を着脱するための着脱具38がスプレー本体10や嘴管18に比較してやや外形が大きいため、術者等が狭い患部への噴射位置を見定めるのに着脱具38が邪魔になるという若干の問題があった。
また、嘴管18は、患者毎に交換して熱湯等で消毒し、スプレー本体10は、1日1回程度熱湯等で消毒することが通常行われており、この交換の作業が頻繁に行われる。しかるに、着脱具38の押釦44が180度間隔を置いた2個所に固定的に設けられていたため、スプレー本体10から嘴管18を外す際に両側から押釦44を押し込むのに親指と人差し指で挟む方法に限られており、操作性にやや問題があった。
【0014】
本発明は、このような問題点を解決するために、着脱具が邪魔にならず、しかも、着脱具の操作性に優れたものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による医用スプレー装置は、スプレー本体の筒状の嘴管連結部に設けた着脱具にて嘴管を着脱自在に取り付け、この嘴管の先端から薬液を圧搾空気で噴霧するようにした医用スプレー装置において、前記着脱具は、前記嘴管連結部と略同形の筒状をなし、内部に嵌合孔を形成した円筒ハウジングと、この円筒ハウジングの先端部付近に外部から嵌合孔まで貫通して設けたボール落し孔と、このボール落し孔に遊嵌した係止ボールと、前記円筒ハウジングの外側に嵌合し、この円筒ハウジングの進退動作により前記係止ボールを内方への押し出す係脱筒体とからなり、前記嘴管は、薬液管と、空気管と、これら薬液管と空気管の外周に進退自在に嵌合した外管と、前記薬液管と空気管の基端部に固着され、前記嘴管連結部に連結される係合管と、前記嵌合孔に挿入される外管の挿入端部に設けられ、前記係止ボールを係脱するボール受け凹部とを具備し、前記嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、係脱筒体による係止ボールの押し出しを解除したとき、係止ボールをボール受け凹部との係合を解いて嘴管をスプレー本体から分離するようにしたものである。
【0016】
円筒ハウジングと係脱筒体の間にコイルばねを介在し、このコイルばねにより係脱筒体を付勢してこの係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、コイルばねに抗して係脱筒体を移動して係止ボールとボール受け凹部の係合を解いたとき嘴管をスプレー本体から分離する。
【0017】
円筒ハウジングの嵌合孔内に、押し出しコイルばねにより嵌合孔の開口側に付勢されてボール落し孔を閉鎖して係止ボールの押し出しを遮断するボール受け管と外管の挿入端部に接触するばね受け管を進退自在に設け、外管の挿入端部を嵌合孔に嵌合したとき、前記押し出しコイルばねに抗してボール受け管を押し込んでボール落し孔を開口し、係脱筒体をコイルばねで押し出して係止ボールをボール受け凹部に係合するとともに、係止ボールの外方への突出を阻止するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、スプレー本体の筒状の嘴管連結部に設けた着脱具にて嘴管を着脱自在に取り付け、この嘴管の先端から薬液を圧搾空気で噴霧するようにした医用スプレー装置において、前記着脱具は、前記嘴管連結部と略同形の筒状をなし、内部に嵌合孔を形成した円筒ハウジングと、この円筒ハウジングの先端部付近に外部から嵌合孔まで貫通して設けたボール落し孔と、このボール落し孔に遊嵌した係止ボールと、前記円筒ハウジングの外側に嵌合し、この円筒ハウジングの進退動作により前記係止ボールを内方への押し出す係脱筒体とからなり、前記嘴管は、薬液管と、空気管と、これら薬液管と空気管の外周に進退自在に嵌合した外管と、前記薬液管と空気管の基端部に固着され、前記嘴管連結部に連結される係合管と、前記嵌合孔に挿入される外管の挿入端部に設けられ、前記係止ボールを係脱するボール受け凹部とを具備し、前記嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、係脱筒体による係止ボールの押し出しを解除したとき、係止ボールをボール受け凹部との係合を解いて嘴管をスプレー本体から分離するようにしたので、術者等が嘴管に直接手などを触れることなくスプレー本体に嘴管を装着することができ、使用後にも嘴管に直接手などを触れることなく外すことのできるだけでなく、着脱具がスプレー本体と略同一の円筒形からなるので、術者等が狭い患部への噴射位置を見定めるのに着脱具38が邪魔になることがなく、正確に処置できる。また、係脱筒体が円筒形であるから、1本の指で円周のどの位置でも嘴管を外す操作ができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、円筒ハウジングと係脱筒体の間にコイルばねを介在し、このコイルばねにより係脱筒体を付勢してこの係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、コイルばねに抗して係脱筒体を移動して係止ボールとボール受け凹部の係合を解いたとき嘴管をスプレー本体から分離するようにしたので、係止ボールのボール受け凹部への係脱をコイルばねの力で行うことができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、円筒ハウジングの嵌合孔内に、押し出しコイルばねにより嵌合孔の開口側に付勢されてボール落し孔を閉鎖して係止ボールの押し出しを遮断するボール受け管と外管の挿入端部に接触するばね受け管を進退自在に設け、外管の挿入端部を嵌合孔に嵌合したとき、前記押し出しコイルばねに抗してボール受け管を押し込んでボール落し孔を開口し、係脱筒体をコイルばねで押し出して係止ボールをボール受け凹部に係合するとともに、係止ボールの外方への突出を阻止するようにしたので、係止ボールがコイルばねで押し出されてボール受け凹部に確実に係止される。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、着脱具の係脱筒体をコイルばねに抗して引き寄せ、係止ボールの外方への突出を可能としたとき、係止ボールが必要以上に突出するのを防止するため係脱筒体の先端部内側に係合切り欠きを形成し、この係合切り欠きに係止ボールが係合したとき、押し出しコイルばねの反発力により、ボール受け管を押し出して係止ボールをボール受け凹部から脱出させるとともに、ばね受け管を押し出して嘴管をスプレー本体から押し出すようにしたので、押し出しコイルばねの反発力により嘴管をスプレー本体から飛び出し、また、係止ボールが係脱筒体の係合切り欠きに係合して突出するのを防止することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、嵌合孔の内方であって、嘴管連結部の先端部に、薬液チューブを連結するとともに空気孔を形成した支持円板を取り付け、嘴管の係合管の一部を挿入端部から突出して設け、嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、この係合管の突出部を係合管と外管との間に設けた押し込みコイルばねで付勢して薬液チューブと薬液管を密着連結させるようにしたので、薬液と圧搾空気が漏れることなく、薬液の患部への噴射を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による医用スプレー装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1におけるスプレー本体と嘴管を分離し、一部切り欠いた正面図である。
【図3】本出願人が先に提案した医用スプレー装置の要部の断面図である。
【図4】(a)は、図3のA-A線断面図、(b)は、図3のB-B線断面図である。
【図5】着脱具で嘴管を差し込み装着するときの説明図である。
【図6】従来の医用スプレー装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、スプレー本体の筒状の嘴管連結部に設けた着脱具にて嘴管を着脱自在に取り付け、この嘴管の先端から薬液を圧搾空気で噴霧するようにした医用スプレー装置において、前記着脱具は、前記嘴管連結部と略同形の筒状をなし、内部に嵌合孔を形成した円筒ハウジングと、この円筒ハウジングの先端部付近に外部から嵌合孔まで貫通して設けたボール落し孔と、このボール落し孔に遊嵌した係止ボールと、前記円筒ハウジングの外側に嵌合し、この円筒ハウジングの進退動作により前記係止ボールを内方への押し出す係脱筒体とからなり、前記嘴管は、薬液管と、空気管と、これら薬液管と空気管の外周に進退自在に嵌合した外管と、前記薬液管と空気管の基端部に固着され、前記嘴管連結部に連結される係合管と、前記嵌合孔に挿入される外管の挿入端部に設けられ、前記係止ボールを係脱するボール受け凹部とを具備し、前記嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、係脱筒体による係止ボールの押し出しを解除したとき、係止ボールをボール受け凹部との係合を解いて嘴管をスプレー本体から分離するようにしたことを特徴とする医用スプレー装置である。
【0025】
円筒ハウジングと係脱筒体の間にコイルばねを介在し、このコイルばねにより係脱筒体を付勢してこの係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、コイルばねに抗して係脱筒体を移動して係止ボールとボール受け凹部の係合を解いたとき嘴管をスプレー本体から分離するようにしたことを特徴とする。
【0026】
円筒ハウジングの嵌合孔内に、押し出しコイルばねにより嵌合孔の開口側に付勢されてボール落し孔を閉鎖して係止ボールの押し出しを遮断するボール受け管と外管の挿入端部に接触するばね受け管を進退自在に設け、外管の挿入端部を嵌合孔に嵌合したとき、前記押し出しコイルばねに抗してボール受け管を押し込んでボール落し孔を開口し、係脱筒体をコイルばねで押し出して係止ボールをボール受け凹部に係合するとともに、係止ボールの外方への突出を阻止するようにしたことを特徴とする。
【0027】
着脱具の係脱筒体をコイルばねに抗して引き寄せ、係止ボールの外方への突出を可能としたとき、係止ボールが必要以上に突出するのを防止するため係脱筒体の先端部内側に係合切り欠きを形成し、この係合切り欠きに係止ボールが係合したとき、押し出しコイルばねの反発力により、ボール受け管を押し出して係止ボールをボール受け凹部から脱出させるとともに、ばね受け管を押し出して嘴管をスプレー本体から押し出すようにしたことを特徴とする。
【0028】
嵌合孔の内方であって、嘴管連結部の先端部に、薬液チューブを連結するとともに空気孔を形成した支持円板を取り付け、嘴管の係合管の一部を挿入端部から突出して設け、嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、この係合管の突出部を係合管と外管との間に設けた押し込みコイルばねで付勢して薬液チューブと薬液管を密着連結させるようにしたことを特徴とする。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
図1及び図2において、スプレー本体10の先端には、直接手を触れることなく嘴管18を交換するための本発明特有の着脱具60が固定的に取り付けられている。
前記嘴管18と着脱具60以外のスプレー本体10、薬液びん11、バルブ12、押釦13、エアチューブ14は、図6に示した従来例の構造のものをそのまま利用することができる。
また、図3に示した構成部分と略同一のものは、同一符号を付する。
【0030】
図1及び図2において、前記スプレー本体10の先端部の嘴管連結部15の開口端には、中心に薬液チューブ16を差し込み固定する差し込み孔32と、外周の数箇所に空気孔34を形成した支持円板37が固定的に取り付けられている。
【0031】
前記嘴管連結部15の先端外周部には、前記着脱具60が固定的に連結される。この着脱具60を構成する円筒ハウジング61がねじ部21とOリング22で気密に螺着されている。この円筒ハウジング61には、中心に嵌合孔62(図2)が貫通して設けられている。この嵌合孔62の内壁における嘴管連結部15の先端部に臨ませて押し出しコイルばね72が設けられ、この押し出しコイルばね72によって押し出される方向に付勢されるばね受け管70、Oリング71、ボール受け管69が設けられ、このボール受け管69は、押し出しコイルばね72で押し出されようとしてもボール受け管69の外周と円筒ハウジング61の内周との段差に係合して一定以上突出しないようになっている(図2)。
【0032】
前記円筒ハウジング61の先端部に120度、90度など所定間隔で係止ボール66を収納するボール落し孔67がテーパーをもって穿接され、このボール落し孔67の下端は、前記ボール受け管69が押し出しコイルばね72で押し出されたとき(図2)、係止ボール66が落下しない様に保持する。前記円筒ハウジング61の外周には、係脱筒体63が摺動可能に嵌合され、この係脱筒体63の内壁と円筒ハウジング61の外壁とのそれぞれの段部間に係脱筒体63を前方へ付勢するコイルばね64が設けられている。また、係脱筒体63の先端内側には、係止ボール66が外方へ飛び出すのを抑えるための係合切り欠き65が形成され、係脱筒体63の外周には、滑り止めのローレット(図2)が刻まれている。前記円筒ハウジング61の先端部外周にはOリング68が設けられている。
【0033】
前記嘴管18は、中心に細い薬液管19を有し、この薬液管19の外周に空気流通隙間をもって空気管48を固定的に被せ、さらにこの空気管48の外側に外管49が進退自在に嵌合される。詳しくは、前記空気管48の基端部に係合管79がねじ部77で螺着され、この係合管79の先端部と外管49の内孔部57の間にOリング51、ワッシャ53及びコイルばね76を介在し、外管49の挿入端部73から係合管79の一部が突出するように図2の左方向に付勢されている。このとき挿入端部73が必要以上突出しないように、空気管48に固着されたストッパ56が外管49先端部に密着して停止する。前記係合管79の突出端には、前記支持円板37の端部に密着するようにOリング78が設けられている。
前記外管49の外周には、円筒ハウジング61の嵌合孔62に着脱自在に嵌合するための突起部75と係止ボール66の係合するボール受け凹部74が構成されている。
【0034】
次に本発明の作用を説明する。
図2の右側に示される嘴管18は、予め消毒された状態で複数本を、予め図5に示すように、薬液管19の差し込み孔40に差し込んでおく。
また、スプレー本体10も同様に消毒され、その嘴管連結部15には、図2の左側に示すように、着脱具60が予め固定的に取り付けられている。
スプレー本体10と嘴管18が分離した状態では、嘴管18は、押し込みコイルばね76により薬液管19、空気管48及び係合管79が一体となって付勢され、外管49とストッパ56が接し係合管79が挿入端部73からやや突出する。
スプレー本体10側の着脱具60において、押し出しコイルばね72によってばね受け管70、Oリング71、ボール受け管69が円筒ハウジング61とボール受け管69の段差が係止する位置まで押し出されてボール落し孔67を塞いでいるので、係止ボール66は移動が規制され、また、係脱筒体63はコイルばね64にて押し出されて係合切り欠き65により係止ボール66の外方への突出を防いでいる。
【0035】
この状態で、薬液びん11をグリップとして握り、着脱具60における円筒ハウジング61の嵌合孔62に嘴管18の外管49の挿入端部73部分を嵌合圧入する。すると、挿入端部73の先端部がボール受け管69の内側に挿入され、さらに挿入端部73の先端部がばね受け管70の内側の段部に当接するとともに、ボール受け管69の先端部と突起部75が当接する。さらにスプレー本体10を押し出しコイルばね72に抗して押し込むと、ボール落し孔67が突起部75を超えてボール受け凹部74に至り、係止ボール66が移動可能となる。係脱筒体63がコイルばね64により付勢されて突出するので係合切り欠き65の内側の斜面で係止ボール66が押し込まれてボール受け凹部74に係合し、さらに係脱筒体63が突出してその内壁面で係止ボール66の移動を規制する。
このとき係合管79の先端部が支持円板37における薬液管差し込み孔32の他端部に嵌合し、スプレー本体10の薬液チューブ16と嘴管18の薬液管19が連結される。この状態が図1に示されている。
【0036】
このようにして、嘴管18に直接手を触れることなくスプレー本体10に着脱具60で装着することができ、その後、患者毎に薬液や消毒液が噴霧されて処置がなされる。
噴霧等の処理の終了後は、薬液びん11を握ったまま嘴管18を収容ボックスまで持ち込み、着脱具60の係脱筒体63をコイルばね64に抗して手前に引き、係合切り欠き65が係止ボール66の位置にくるまでくると、押し出しコイルばね72によりばね受け管70、Oリング71、ボール受け管69が押し出され、係止ボール66は外方へ移動してボール受け凹部74との係合が外れる。すると、押し出しコイルばね72の力により外管49が円筒ハウジング61の嵌合孔62から突出してその勢いで薬液管19が支持円板37から抜け出すとともに、押し込みコイルばね76の力で外管49は、ストッパ56に密着して停止する。このようにして嘴管18が収容ボックスに収納される。
以下同様にしてスプレー本体10に嘴管立て39の新たな嘴管18と交換して装着する。
【0037】
前記実施例において、スプレー本体10と嘴管18は、熱湯や薬剤による消毒のためにステンレススチールなどの金属とし、Oリングは、耐熱性のあるシリコンゴムであることが望ましい。しかし、金属部分でも、耐熱性、耐薬品性などを有する材料であれば、プラスチックなどの他の材料とすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10…スプレー本体、11…薬液びん、12…バルブ、13…押釦、14…エアチューブ、15…嘴管連結部、16…薬液チューブ、17…薬液、18…嘴管、19…薬液管、20…噴霧口、21…ねじ部、22…Oリング、29…コイルばね、30…差し込み環、31…空気孔、32…薬液管差し込み孔、33…薬液チューブ連結部、34…空気孔、36…空気取り込み溝、37…支持円板、38…着脱具、39…嘴管立て、40…差し込み孔、42…ハウジング、43…貫通孔、44…押釦、45…ばね部、46…係止リング、47…係止部、48…空気管、49…外管、50…係止溝、51…Oリング、52…Oリング、53…ワッシャ、54… 係合部、55…空気溝、56…ストッパ、57…内孔部、58…凹部、59…切り溝、60…着脱具、61…円筒ハウジング、62…嵌合孔、63…係脱筒体、64…コイルばね、65…係合切り欠き、66…係止ボール、67…ボール落し孔、68…Oリング、69…ボール受け管、70…ばね受け管、71…Oリング、72…押し出しコイルばね、73…挿入端部、74…ボール受け凹部、75…突起部、76…押し込みコイルばね、77…ねじ部、78…Oリング、79…係合管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー本体の筒状の嘴管連結部に設けた着脱具にて嘴管を着脱自在に取り付け、この嘴管の先端から薬液を圧搾空気で噴霧するようにした医用スプレー装置において、前記着脱具は、前記嘴管連結部と略同形の筒状をなし、内部に嵌合孔を形成した円筒ハウジングと、この円筒ハウジングの先端部付近に外部から嵌合孔まで貫通して設けたボール落し孔と、このボール落し孔に遊嵌した係止ボールと、前記円筒ハウジングの外側に嵌合し、この円筒ハウジングの進退動作により前記係止ボールを内方への押し出す係脱筒体とからなり、前記嘴管は、薬液管と、空気管と、これら薬液管と空気管の外周に進退自在に嵌合した外管と、前記薬液管と空気管の基端部に固着され、前記嘴管連結部に連結される係合管と、前記嵌合孔に挿入される外管の挿入端部に設けられ、前記係止ボールを係脱するボール受け凹部とを具備し、前記嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、係脱筒体による係止ボールの押し出しを解除したとき、係止ボールをボール受け凹部との係合を解いて嘴管をスプレー本体から分離するようにしたことを特徴とする医用スプレー装置。
【請求項2】
円筒ハウジングと係脱筒体の間にコイルばねを介在し、このコイルばねにより係脱筒体を付勢してこの係脱筒体で係止ボールを内方に押し出してボール受け凹部に係合し、コイルばねに抗して係脱筒体を移動して係止ボールとボール受け凹部の係合を解いたとき嘴管をスプレー本体から分離するようにしたことを特徴とする請求項1記載の医用スプレー装置。
【請求項3】
円筒ハウジングの嵌合孔内に、押し出しコイルばねにより嵌合孔の開口側に付勢されてボール落し孔を閉鎖して係止ボールの押し出しを遮断するボール受け管と外管の挿入端部に接触するばね受け管を進退自在に設け、外管の挿入端部を嵌合孔に嵌合したとき、前記押し出しコイルばねに抗してボール受け管を押し込んでボール落し孔を開口し、係脱筒体をコイルばねで押し出して係止ボールをボール受け凹部に係合するとともに、係止ボールの外方への突出を阻止するようにしたことを特徴とする請求項1記載の医用スプレー装置。
【請求項4】
着脱具の係脱筒体をコイルばねに抗して引き寄せ、係止ボールの外方への突出を可能としたとき、係止ボールが必要以上に突出するのを防止するため係脱筒体の先端部内側に係合切り欠きを形成し、この係合切り欠きに係止ボールが係合したとき、押し出しコイルばねの反発力により、ボール受け管を押し出して係止ボールをボール受け凹部から脱出させるとともに、ばね受け管を押し出して嘴管をスプレー本体から押し出すようにしたことを特徴とする請求項3記載の医用スプレー装置。
【請求項5】
嵌合孔の内方であって、嘴管連結部の先端部に、薬液チューブを連結するとともに空気孔を形成した支持円板を取り付け、嘴管の係合管の一部を挿入端部から突出して設け、嵌合孔に挿入端部を嵌合したとき、この係合管の突出部を係合管と外管との間に設けた押し込みコイルばねで付勢して薬液チューブと薬液管を密着連結させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の医用スプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106816(P2013−106816A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254548(P2011−254548)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(592146900)永島医科器械株式会社 (5)
【Fターム(参考)】