説明

医用ネットワークシステム及びサーバ

【課題】医用画像に撮影された部位に適した解剖図を選択する。
【解決手段】画像サーバには、医用画像DBと解剖図DBと属性情報DBとが構築されている。属性情報DBには、各解剖図に描かれた部位が各解剖図の属性として対応付けられて記録されている。画像サーバのCPUは、解剖図の転送要求を受信すると、医用画像DBを検索し、転送要求に含まれるファイル名とタグ領域にメタデータとして記録されたファイル名とが一致する医用画像を、医用画像DBから読み出す。医用画像を読み出したCPUは、その医用画像を部位認識部に入力し、撮影された部位を認識させる。部位を認識させたCPUは、部位認識部が認識した部位と、属性情報DBに記録された部位とが一致する解剖図を、医用画像に最も適した解剖図として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して互いに接続されたサーバと端末とを有し、端末からの転送要求に応じて、サーバに保管された解剖図を端末に転送する医用ネットワークシステム、及びそのサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
診療所や病院などの医療施設には、CR(Computed Radiography)装置、CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像)装置、PET(Positron Emission Tomography:ポジトロン断層撮影)装置、超音波診断装置などといった様々なモダリティ機器が普及している。モダリティ機器によって撮影された医用画像は、医師が患者を診断する際などに用いられ、患者の症状を決定する上で大きな役割を担っている。
【0003】
医用画像は、予後の確認を行うためなどの理由から、複数年に亘って医療施設に保管される。このため、医療施設では、大量の医用画像を保管しなければならず、各医用画像をフイルムなどで保管しようとすると、保管スペースの確保や管理作業、及び検索作業などが大きな負担となる。これを防止するため、撮影した医用画像を電子化してサーバなどに保管するようにしたシステムが、例えば、特許文献1などによって知られている。このようなシステムでは、サーバのスペースだけを用意すればよいので、医療施設における医用画像の保管スペースを大幅に削減することができる。また、管理、検索作業をサーバに行わせることで、医療施設の業務の効率化を図ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−276002号公報
【特許文献2】実開昭53−076782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医用画像を用いて読影や患者への説明を行う際には、読影をより的確に行ったり、患者への説明を分かりやすくしたりするため、医用画像に撮影された部位(頭部や腹部など)と同じ部位が描かれた解剖図を医用画像と並べて閲覧する場合がある(特許文献1参照)。このような場合、医師などがサーバにアクセスして医用画像に適した解剖図を逐一検索していたのでは、非常に手間がかかってしまう。このため、特許文献1記載の診断支援システムでは、サーバに解剖図の検索を行わせて各医用画像に適した解剖図を自動的に表示できるようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の診断支援システムでは、撮影時のオーダ情報などによって予め各医用画像に記録される部位情報などを基に解剖図の検索を行うため、医用画像の撮影がオーダ通りに行われなかったり、医用画像の部位情報を間違えて記録してしまったりすると、医用画像に撮影された部位と解剖図に描かれた部位とが一致しない不適切な解剖図が読み出されてしまうという問題がある。
【0007】
特に近年、複数枚の断層画像を連続して撮影するCT装置やMRI装置などでは、撮影能力の向上にともなって、取り直しなどを行わなくてもよいように、オーダ情報で指定された部位よりも広い範囲(例えば、全身など)を予め撮影するようになってきている。このような場合、撮影された各断層画像には、オーダで指定された部位以外も当然含まれるため、特許文献1の方法では、指定外の断層画像に対する解剖図の検索が煩雑になってしまう。こうした背景により、オーダで指定した部位と実際に撮影された部位とが異なっていても、各医用画像に適した解剖図を簡単に読み出せるようにしたいという要望が高まってきている。
【0008】
また、特許文献2には、ポテンショメータなどによって断層画像の撮影位置(部位)を特定する断層撮影装置が記載されている。しかしながら、臓器などの位置には個人差があるため、ポテンショメータなどで撮影位置を特定したとしても、それが必ずしもオーダの部位と一致しているとは限らない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、オーダで指定した部位と実際に撮影された部位とが異なるような場合でも、医用画像に撮影された部位に適した解剖図を選択することができる医用ネットワークシステム、及びこれに用いられるサーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、複数枚の医用画像を保管するとともに、これらの各医用画像との対比に用いられる複数枚の解剖図を保管する記憶手段を備えたサーバと、ネットワークを介して前記サーバに接続され、ユーザからの要求に応じて前記解剖図の転送を要求する転送要求を前記サーバに送信することにより、前記サーバから前記各解剖図を読み出す端末とを有する本発明の医用ネットワークシステムは、前記医用画像を前記記憶手段に保管する際に画像解析を行って、その医用画像に撮影された解剖学的部位を認識し、その認識結果を前記医用画像と関連付けて記録する部位認識手段と、前記転送要求には、対比する前記医用画像を識別するための識別情報が含まれており、この識別情報を基に、対応する前記医用画像を前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段が読み出した前記医用画像に関連付けられた前記認識結果と、前記各解剖図のそれぞれに描かれた解剖学的部位を含む前記各解剖図の属性情報とを照合して、それぞれの解剖学的部位が一致する前記解剖図を、前記医用画像に適した前記解剖図として選択する選択手段と、前記選択手段で選択された前記解剖図を前記端末に転送する転送手段とを、前記サーバに設けたことを特徴とする。
【0011】
なお、前記医用画像に、それが撮影された検査の内容を表す検査情報が付帯させ、前記選択手段は、さらに前記検査情報に基づいて前記医用画像に適した前記解剖図を選択することが好ましい。また、この際、前記検査情報には、前記医用画像を撮影したモダリティ機器の種類と、前記医用画像を撮影した方向とが含まれることが好ましい。さらに、前記属性情報には、前記検査情報と照合されて前記医用画像との適合度を判定するための特性情報が含まれていることが好ましい。
【0012】
前記解剖学的部位には、頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部、脚部などが含まれるとともに、脳、心臓、肺、肝臓、胃などの臓器が含まれることが好ましい。
【0013】
また、複数枚の医用画像を保管するとともに、これらの各医用画像との対比に用いられる複数枚の解剖図を保管する記憶手段を備え、ネットワークを介して接続された端末から、前記解剖図の転送を要求する転送要求を受信したことに応じて、その転送要求に対応した前記解剖図を前記端末に転送する本発明のサーバは、前記医用画像を前記記憶手段に保管する際に画像解析を行って、その医用画像に撮影された解剖学的部位を認識し、その認識結果を前記医用画像と関連付けて記録する部位認識手段と、前記転送要求には、対比する前記医用画像を識別するための識別情報が含まれており、この識別情報を基に、対応する前記医用画像を前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段が読み出した前記医用画像に関連付けられた前記認識結果と、前記各解剖図のそれぞれに描かれた解剖学的部位を含む前記各解剖図の属性情報とを照合して、それぞれの解剖学的部位が一致する前記解剖図を、前記医用画像に適した前記解剖図として選択する選択手段と、前記選択手段で選択された前記解剖図を前記端末に転送する転送手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、対比させる医用画像に撮影された解剖学的部位を認識して、その解剖学的部位と描かれた解剖学的部位とが一致する解剖図を選択するので、オーダで指定した部位と実際に撮影された部位とが異なるような場合でも、医用画像に撮影された部位に適した解剖図を選択することができる。また、医用画像の保管時に部位認識を行うので、転送要求を受信した後、部位認識の画像解析に掛かる待ち時間をユーザに与えてしまうことを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】医用ネットワークシステムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】画像サーバの構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】属性情報DBの構成を概略的に示す説明図である。
【図4】医用ネットワークシステムの動作を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、病院などの医療施設で用いられる医用ネットワークシステム10の構成を概略的に示すブロック図である。医用ネットワークシステム10は、医用画像を撮影するモダリティ機器12と、このモダリティ機器12が撮影した医用画像などを保管する画像サーバ(解剖図選択装置、サーバ)14と、医療施設内の種々の情報を管理する情報管理サーバ16と、診察の際などに医師に用いられる複数のクライアント端末(端末)18とで構成されている。また、これらの各部は、医療施設内のLAN(ネットワーク)20によって互いに接続されている。
【0017】
この医用ネットワークシステム10は、医療施設で生じる各種の情報や医用画像などを電子データとして管理することにより、カルテや医用画像のフイルムなどの保管スペースを医療施設から削減する。また、医用ネットワークシステム10は、各クライアント端末18が各種の情報や医用画像などを簡単に読み出せるようにすることにより、医療施設の業務の効率化を図る。なお、図1では、複数台のクライアント端末18を示しているが、クライアント端末18は、医用ネットワークシステム10に1台だけであってもよい。反対に、モダリティ機器12、画像サーバ14、情報管理サーバ16の各部は、医用ネットワークシステム10に複数設けられていてもよい。
【0018】
画像サーバ14は、例えば、PACS(picture archiving and communication system for medical application:医用画像保管・伝送システム)のサーバである。この画像サーバ14には、モダリティ機器12からの医用画像の他に、例えば、ネットワークやメディアなどを介して他の医療施設から送られてきた医用画像や、症状の対比などに用いられる解剖図などが保管される。画像サーバ14に保管された医用画像や解剖図は、必要に応じて各クライアント端末18に読み出され、医師による読影や患者への説明などに用いられる。なお、解剖図には、イラストレーションによって描かれたものの他に、例えば、モダリティ機器12で撮影された医用画像などを含めるようにしてもよい。
【0019】
情報管理サーバ16は、例えば、HIS(hospital information system:病院情報システム)のサーバや、RIS(radiology information system:放射線科情報システム)のサーバである。情報管理サーバ16は、患者情報、診療情報、検査情報、会計情報などといった各種の情報を患者毎に管理する。なお、患者情報は、各患者の個人情報を表すものであり、例えば、患者氏名、患者ID、現住所、生年月日、年齢、性別、家族構成、及び既往歴やアレルギーの有無などが含まれる。
【0020】
診療情報は、患者に対しての診療の情報であり、例えば、診療日付、診療科、傷病名、診断結果、治療期間、投薬の種類及び量、処方薬局名などが含まれる。なお、治療期間とは、同一傷病に関して医療施設に通院した期間である。検査情報は、診断に際して撮影された医用画像などの情報であり、例えば、検査日付、検査機器、検査方法、検査部位などが含まれる。なお、検査方法とは、正面及び側面などの撮影に対する患者の向きや、造影剤の有無などである。また、検査部位とは、検査の対象となっている頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部、脚部、及びこれらの一部が重複した頭頸部や胸腹部などである。さらに、会計情報には、例えば、診察費用、投薬費用、検査費用、及び保険適用の有無を表す情報などが含まれる。
【0021】
各クライアント端末18は、例えば、診療室毎、あるいは診療科毎などの単位で医療施設に複数配置される。これらの各クライアント端末18は、例えば、周知のパーソナルコンピュータやワークステーションなどによって構成され、各種の情報や医用画像などを表示するためのモニタ22、各種の情報などを入力するための入力機器24などが設けられている。医師は、患者と対面して診察を行いながら、モダリティ機器12で撮影された医用画像や情報管理サーバ16から読み出した各情報などをモニタ22に表示して、診断結果の説明などを行う。また、医師は、診察によって得られた各種の情報などを入力機器24を介して入力する。なお、入力機器24には、例えば、キーボードやマウスなどといった周知の入力デバイスを用いればよい。
【0022】
また、情報管理サーバ16には、モダリティ機器12の予約表が構築されている。医師は、モダリティ機器12による撮影を必要とした際に、クライアント端末18を介して情報管理サーバ16の予約表にアクセスする。そして、予約表の空いている日時を指定して検査の内容を指示するオーダ情報を入力することにより、モダリティ機器12の検査予約を行う。情報管理サーバ16は、新しい検査予約を受け付ける毎、あるいは一定期間毎などのタイミングで、オーダ情報を放射線科内のクライアント端末18やモダリティ機器12などに配信する。放射線科の医師や技師などは、このオーダ情報に基いてモダリティ機器12を操作し、オーダ情報に対応した医用画像の撮影を行う。
【0023】
このように、情報管理サーバ16は、患者毎の各情報を管理するとともに、モダリティ機器12の空き状況を管理し、同じ時間帯に複数の検査予約が重なってしまうことを防止する。なお、オーダ情報は、例えば、検査方法や検査部位、及び検査を実施する患者のID番号、検査を依頼した医師のID番号などによって構成される。
【0024】
モダリティ機器12には、例えば、超音波診断装置、CR装置、CT装置、MRI装置などといった周知の医用撮影装置が用いられる。モダリティ機器12で撮影された医用画像は、LANを介して画像サーバ14に送信される。この際、モダリティ機器12は、オーダ情報を基に患者IDなどをメタデータとして医用画像に書き込み、撮影された医用画像が、どの患者のものであるかなどを容易に識別できるようにする。なお、デジタルの医用画像には、撮像素子などを利用したモダリティ機器12によって直接撮影されるものの他に、アナログ式のモダリティ機器12でフイルムなどに撮影された後、スキャナ(図示は省略)によってデジタイズされたものを含めるようにしてもよい。
【0025】
図2は、画像サーバ14の構成を概略的に示すブロック図である。画像サーバ14は、周知のパーソナルコンピュータやワークステーションなどによって構成され、CPU(選択手段)30と、メモリ31と、HDD(記憶手段)32と、モニタ33と、入力機器34と、ネットワークインタフェース(転送手段)35と、部位認識部(部位認識手段)36とを有している。また、これらの各部は、バス37を介して互いに接続されている。
【0026】
HDD32には、医用ネットワークシステム10に対応した種々のプログラムを保管するソフトウェアデータベース(DB)40、医用画像50を保管する医用画像DB42、医用画像50との対比に用いられる解剖図60を保管する解剖図DB44、各解剖図60の内容などを表す各属性をまとめて記録した属性情報DB46などといった種々のデータベースが構築されている。
【0027】
CPU30は、HDD32のソフトウェアDB40から各プログラムを読み出してメモリ31に展開し、読み出したプログラムを逐次処理することによって、画像サーバ14を統括的に制御する。また、CPU30は、ネットワークインタフェース35を介して医用画像50が入力されると、その医用画像50をHDD32の医用画像DB42に保管する。そして、各クライアント端末18からの要求に応じて保管した医用画像50を医用画像DB42から読み出し、読み出した医用画像50を要求元のクライアント端末18に転送する。
【0028】
属性情報DB46には、図3に示すように、解剖図60に描かれた部位、解剖図60の描かれた方向、造影剤の有無、適応モダリティなどといった各種の情報が、各解剖図60に係る属性として各解剖図60のファイル名に対応付けられて記録されている。この属性情報DB46は、CPU30が各解剖図60を検索する際に用いられる。なお、適応モダリティとは、各解剖図60の最も適したモダリティ機器12を示すものである。例えば、頭蓋骨や肋骨などが除去された解剖図の適応モダリティは、骨などが写りにくいMRI装置と設定される。一方、頭蓋骨や肋骨なども描かれた解剖図の適応モダリティは、骨なども鮮明に撮影されるCT装置と設定される。このように、適応モダリティは、各モダリティ機器12の特性に合わせて任意に設定される。また、属性情報DB46に記録される各解剖図60の項目は、上記に限定されることなく、他の検査内容などを含めても勿論よい。
【0029】
なお、本例では、各種のプログラムや医用画像50などを同じHDD32に保管するようにしているが、それぞれを個別のHDDに保管するようにしてもよい。また、本例では、いわゆる内蔵タイプのHDD32に医用画像50などを保管するようにしているが、これに限ることなく、例えば、外付けタイプのHDDに保管するようにしてもよいし、DVD−ROMやCD−ROMなどといった各種のメディアに保管するようにしてもよい。
【0030】
モニタ33は、CPU30によるプログラムの各処理に応じて種々の操作画面を表示する。なお、モニタ33には、例えば、液晶ディスプレイやCRTディスプレイなどの周知の表示装置を用いればよい。入力機器34には、例えば、キーボードやマウスなどが用いられる。モニタ33と入力機器34とは、例えば、医療施設内の管理者が、ソフトウェアDB40に記録された各プログラムを更新したり、医用画像DB42の各医用画像50や解剖図DB44の各解剖図60の保管状況を確認したりする際などに用いられる。ネットワークインタフェース35は、画像サーバ14を医療施設のLAN20に接続する。ネットワークインタフェース35は、例えば、Ethernet(登録商標)など、LAN20の規格に応じたものが適宜選択される。
【0031】
部位認識部36は、入力された医用画像の画像解析を行って、その医用画像にどの部位が撮影されているかを認識する。なお、部位認識部36による画像解析は、例えば、各画素の濃度などを基に画像の特徴量を算出し、算出した特徴量を予め記憶された各部位の特徴量と比較してマッチングさせることにより行われる。
【0032】
また、図2に示すように、各医用画像50は、画像データ52aを記録する画像記録領域52と、メタデータを記録するタグ領域54とを有している。医用画像50のタグ領域54には、例えば、ファイル名54aや検査ID54bなどの各種の情報がメタデータとして記録される。ファイル名54aは、各医用画像50に個別に付与されるものである。検査ID54bは、検査毎に付与される固有の番号である。この検査ID54bは、どの検査時に撮影された医用画像50であるかの識別を可能にし、一度の検査で複数枚の医用画像50が撮影された際に、各医用画像50を検査毎にまとめて管理するために用いられる。
【0033】
さらに、各解剖図60も、各医用画像50と同様に、画像データ62aを記録する画像記録領域62と、メタデータを記録するタグ領域64とを有している。解剖図60のタグ領域64には、例えば各解剖図60に個別に付与されるファイル名64aなどがメタデータとして記録される。
【0034】
各タグ領域54、64に記録される各メタデータは、例えば、医用画像50、解剖図60の作成時に画像データ52a、62aと同時に記録されるか、あるいは、作成後に画像サーバ14やクライアント端末18などで記録される。なお、各タグ領域54、64に記録されるメタデータは、上記に限定されるものではなく、他の如何なる情報が記録されていてもよい。また、このようなタグ領域54、64を有する医用画像50、解剖図60のファイル形式としては、例えば、DICOM(Digtal Imaging and Communications in Medicine)形式が知られている。
【0035】
次に、図4に示すフローチャートを参照しながら、上記構成による医用ネットワークシステム10の作用について説明する。診断に際してモダリティ機器12による撮影が必要であると判断した医師は、クライアント端末18を介して情報管理サーバ16の予約表にアクセスし、予約表の空いている日時にオーダ情報を入力してモダリティ機器12の検査予約を行う。入力されたオーダ情報は、情報管理サーバ16によって放射線科内のクライアント端末18やモダリティ機器12などに配信される。
【0036】
クライアント端末18やモダリティ機器12などでオーダ情報を確認したモダリティ機器12のオペレータ(放射線科医や放射線技師など)は、そのオーダ情報に基いて患者の撮影を行い、オーダ情報で指定された検査部位の医用画像50を取得する。
【0037】
取得された医用画像50は、LAN20などを介して画像サーバ14に転送される。医用画像50を受信した画像サーバ14のCPU30は、受信した医用画像50をHDD32の医用画像DB42に保管する。また、この際、モダリティ機器12は、撮影時の検査方向や検査部位などを、撮影した医用画像50に付帯する検査情報として情報管理サーバ16に保管する。
【0038】
次に、読影や患者への説明などに際して取得した医用画像50が必要であると判断した医師は、クライアント端末18を介して画像サーバ14に医用画像50の転送要求を送信する。医用画像50の転送要求には、医用画像50を特定するための検査IDが含まれている。なお、検査IDは、医師が直接入力するようにしてもよいし、情報管理サーバ16に保管された検査情報などを基に該患者に対する医用画像50のリストを作成し、そのリストから選択させるようにしてもよい。
【0039】
画像サーバ14のCPU30は、医用画像50の転送要求を受信すると、HDD32の医用画像DB42を検索し、転送要求に含まれる検査IDとタグ領域54にメタデータとして記録された検査ID54bとが一致する医用画像50を、医用画像DB42から読み出す。このように、検査IDを基に医用画像50の検索を行うことで、一度の検査で複数枚の医用画像50が撮影された際にも、各医用画像50を効率よく読み出すことができる。
【0040】
医用画像50を読み出したCPU30は、要求元のクライアント端末18のアドレスを確認し、そのクライアント端末18に読み出した医用画像50のコピーを転送する。画像サーバ14から医用画像50を取得した医師は、クライアント端末18のモニタ22に医用画像50を表示し、読影や患者への説明などを行う。
【0041】
次に、医用画像50を閲覧しながら、その医用画像50と対比させる解剖図60が必要であると判断した医師は、クライアント端末18を介して画像サーバ14に解剖図60の転送要求を送信する。解剖図60の転送要求には、対比させたい医用画像50のファイル名が含まれる。なお、医用画像50のファイル名は、医師が直接入力するようにしてもよいし、モニタ22に表示された医用画像50のファイル名を自動的に入力するようにしてもよい。
【0042】
画像サーバ14のCPU30は、解剖図60の転送要求を受信すると、HDD32の医用画像DB42を検索し、転送要求に含まれるファイル名とタグ領域54にメタデータとして記録されたファイル名54aとが一致する医用画像50を、医用画像DB42から読み出す。医用画像50を読み出したCPU30は、その医用画像50を部位認識部36に入力し、医用画像50に撮影された部位を部位認識部36に認識させる。
【0043】
また、CPU30は、部位認識部36に医用画像50の部位を認識させるとともに、情報管理サーバ16にアクセスして医用画像50の検査情報を参照し、医用画像50の撮影方向、造影剤の有無、撮影モダリティなどといった検査の内容を表す各属性を取得する。部位認識部36による部位認識と検査情報の参照とを行ったCPU30は、属性情報DB46にアクセスする。
【0044】
属性情報DB46にアクセスしたCPU30は、部位認識部36が認識した部位と、属性情報DB46に記録された部位とが一致する解剖図60を検索する。また、CPU30は、検査情報に記録された部位以外の各属性と、属性情報DB46に記録された部位以外の各属性とが一致するか否かの適合度の判定を行う。すなわち、本例においては、解剖図60の描かれた方向、造影剤の有無、適応モダリティの各属性が、請求項記載の特性情報に相当している。これにより、CPU30は、部位が一致し、かつその他の各属性の適合度の最も高い解剖図60のファイル名を、読み出した医用画像50に最も適した解剖図60として選択する。
【0045】
例えば、部位認識部36が認識した部位が「胸部」、検査情報に記録された医用画像50の撮影方向が「アキシャル(軸位)方向」、造影剤の投与が「あり」、撮影モダリティが「CT」であるとする。この場合、CPU30は、各属性が一致している「解剖図3」(図3参照)を、最も適した解剖図60のファイル名として選択する。なお、この際、同程度の適合度を有する解剖図60が複数存在することも考えられる。このような場合でも、1つの解剖図60に絞り込めるように、各解剖図60に予め優先順位を付けておくようにしてもよい。
【0046】
属性情報DB46からファイル名を選択したCPU30は、解剖図DB44にアクセスし、選択したファイル名の解剖図60を解剖図DB44から読み出す。解剖図60を読み出したCPU30は、要求元のクライアント端末18のアドレスを確認し、そのクライアント端末18に読み出した解剖図60のコピーを転送する。解剖図60を受信したクライアント端末18は、その解剖図60を要求した医用画像50と並べてモニタ22に表示する。このように、本例によれば、対比させる医用画像50に撮影された部位を認識して、その部位と描かれた部位とが一致する解剖図60を選択するので、オーダで指定した部位と実際に撮影された部位とが異なるような場合でも、対比させる医用画像50に適した解剖図60を選択することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、医用画像50をクライアント端末18に転送した後、ユーザからの転送要求に応じて解剖図60を転送するようにしているが、解剖図60を転送するタイミングは、これに限ることなく、例えば、医用画像50の転送が要求された時点で、それに適した解剖図60の読み出しを行い、医用画像50と合わせて解剖図60をクライアント端末18に転送するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ユーザから解剖図60の転送要求を受信した時点で医用画像50の部位認識を行うようにしているが、部位認識を行うタイミングは、これに限ることなく、例えば、モダリティ機器12から送られた医用画像50を医用画像DB42に保管する際などに行うようにしてもよい。この際、認識した部位は、タグ領域54などに記録しておき、解剖図60を選択する際に読み出せるようにしておけばよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、解剖図60の各属性を、属性情報DB46にまとめて記録するようにしているが、これに限ることなく、例えば、各属性を各解剖図60のタグ領域64にメタデータとして記録するようにしてもよい。また、上記実施形態では、医用画像50の検査情報を情報管理サーバ16に記録するようにしているが、これに限ることなく、例えば、検査情報を医用画像50のタグ領域54にメタデータとして記録するようにしてもよい。
【0050】
なお、上記実施形態では、解剖学的部位として、頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部、脚部などを示しているが、これに限ることなく、例えば、脳、心臓、肺、肝臓、胃などの臓器を含めるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、1つの医療施設で用いられる医用ネットワークシステム10に本発明を適用した例を示したが、本発明は、これに限ることなく、例えば、複数の医療施設が接続されてなる医用ネットワークシステムに適用してもよい。さらに、上記実施形態では、画像サーバ14を解剖図選択装置として示しているが、解剖図選択装置は、これに限ることなく、例えば、クライアント端末18などに適用し、クライアント端末18のHDDなどから各解剖図60を読み出してモニタ22に表示する際などに、選択を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 医用ネットワークシステム
12 モダリティ機器
14 画像サーバ
16 情報管理サーバ
18 クライアント端末
20 LAN(ネットワーク)
30 CPU(選択手段)
32 HDD(記憶手段)
35 ネットワークインタフェース(転送手段)
36 部位認識部(部位認識手段)
46 属性情報DB
50 医用画像
60 解剖図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の医用画像を保管するとともに、これらの各医用画像との対比に用いられる複数枚の解剖図を保管する記憶手段を備えたサーバと、ネットワークを介して前記サーバに接続され、ユーザからの要求に応じて前記解剖図の転送を要求する転送要求を前記サーバに送信することにより、前記サーバから前記各解剖図を読み出す端末とを有する医用ネットワークシステムにおいて、
前記医用画像を前記記憶手段に保管する際に画像解析を行って、その医用画像に撮影された解剖学的部位を認識し、その認識結果を前記医用画像と関連付けて記録する部位認識手段と、
前記転送要求には、対比する前記医用画像を識別するための識別情報が含まれており、この識別情報を基に、対応する前記医用画像を前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記医用画像に関連付けられた前記認識結果と、前記各解剖図のそれぞれに描かれた解剖学的部位を含む前記各解剖図の属性情報とを照合して、それぞれの解剖学的部位が一致する前記解剖図を、前記医用画像に適した前記解剖図として選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された前記解剖図を前記端末に転送する転送手段とを、前記サーバに設けたことを特徴とする医用ネットワークシステム。
【請求項2】
前記医用画像には、それが撮影された検査の内容を表す検査情報が付帯されており、
前記選択手段は、さらに前記検査情報に基づいて前記医用画像に適した前記解剖図を選択することを特徴とする請求項1記載の医用ネットワークシステム。
【請求項3】
前記検査情報には、前記医用画像を撮影したモダリティ機器の種類と、前記医用画像を撮影した方向とが含まれることを特徴とする請求項2記載の医用ネットワークシステム。
【請求項4】
前記属性情報には、前記検査情報と照合されて前記医用画像との適合度を判定するための特性情報が含まれていることを特徴とする請求項2又は3記載の医用ネットワークシステム。
【請求項5】
前記解剖学的部位には、頭部、頸部、胸部、腹部、骨盤部、脚部などが含まれるとともに、脳、心臓、肺、肝臓、胃などの臓器が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用ネットワークシステム。
【請求項6】
複数枚の医用画像を保管するとともに、これらの各医用画像との対比に用いられる複数枚の解剖図を保管する記憶手段を備え、ネットワークを介して接続された端末から、前記解剖図の転送を要求する転送要求を受信したことに応じて、その転送要求に対応した前記解剖図を前記端末に転送するサーバにおいて、
前記医用画像を前記記憶手段に保管する際に画像解析を行って、その医用画像に撮影された解剖学的部位を認識し、その認識結果を前記医用画像と関連付けて記録する部位認識手段と、
前記転送要求には、対比する前記医用画像を識別するための識別情報が含まれており、この識別情報を基に、対応する前記医用画像を前記記憶手段から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記医用画像に関連付けられた前記認識結果と、前記各解剖図のそれぞれに描かれた解剖学的部位を含む前記各解剖図の属性情報とを照合して、それぞれの解剖学的部位が一致する前記解剖図を、前記医用画像に適した前記解剖図として選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された前記解剖図を前記端末に転送する転送手段とを設けたことを特徴とするサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229929(P2011−229929A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131685(P2011−131685)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2006−258534(P2006−258534)の分割
【原出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】