説明

医用レポート評価装置、医用レポート評価方法、医用レポート評価プログラム、並びに医用ネットワークシステム

【課題】医師に余計な負担を掛けずに、より客観性のある医用レポートの評価を行う。
【解決手段】センタサーバ20には、自然言語処理部43と評価点算出部44が構築される。自然言語処理部43は、一次読影医による一次読影レポート15aと二次読影医による二次読影レポート15bの記述文に自然言語処理を施し、記述文を構成する語句をカテゴリ別に抽出する。評価点算出部44は、自然言語処理部43で抽出した語句の分類を語句リスト57から抽出し、その分類の類似度を類似度リスト58から抽出する。評価点算出部44は、抽出した類似度を元にカテゴリ別の評価点を算出する。また、カテゴリ別の評価点を加算してカテゴリ数で除算した平均を算出し、これを一次読影レポートの総合評価点とする。評価点算出部44で算出した評価点は一次読影医のレポート作成端末15に送信され、レポート作成端末15にて評価結果表示ウィンドウ65として表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用レポートの自動評価を行う医用レポート評価装置、医用レポート評価方法、医用レポート評価プログラム、並びに医用ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の医療現場には、カルテや医用レポート等の医用文書を電子データとして扱い、医用文書の作成や管理を容易ならしめ、医用レポートを作成する読影医等の医師の負担を減らすための様々なコンピュータシステムが導入されつつある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、予め定められた評価基準に従ってテスト用画像に対する読影レポートを自動採点し、その評価結果を出力する評価装置が開示されている。評価基準として、部位、画像種別、異常箇所、異常箇所に関する形容詞等の各項目に対して加点数、減点数が定められた単語評価テーブル、および類似病名テーブルを備える。評価基準は「信頼できる医師」が追加登録することが可能である。読影レポートの評価は、まず、テスト用画像に対する読影レポートの記述文を形態素解析、構文解析、意味解析する。そして、この解析結果と単語評価テーブル、類似病名テーブルを照合し、単語の一致不一致、および診断の妥当性を加味して読影レポートを採点している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−312918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、現在遂行している読影に関係のないテスト用画像を読影する必要があり、そのうえテスト用画像のための評価基準を用意する手間が掛かる。このため、医師の負担がかえって増してしまうおそれがある。さらに、評価基準に「信頼できる医師」の主観が混ざるため、客観的な評価がしにくいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、医師に余計な負担を掛けずに、より客観性のある医用レポートの評価を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の医用レポート評価装置は、医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析手段と、前記解析手段の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記評価点算出手段の算出結果を作成担当医師の端末に送信する第一送信手段を備えることが好ましい。
【0009】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を抽出する。前記評価点算出手段は、前記解析手段で抽出した語句を第一、第二医用レポート間で比較し、各語句の類似度、または各語句の相違の多寡を評価基準として評価点を算出する。
【0010】
階層構造の分類別に語句が登録された語句情報と、前記語句情報の分類同士の類似度が登録された類似度情報とを備えることが好ましい。前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を抽出し、前記評価点算出手段は、前記語句情報から第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句の分類を抽出し、前記類似度情報から分類の類似度を抽出する。
【0011】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を複数のカテゴリ別に抽出する。前記評価点算出手段は、前記解析手段で抽出した語句をカテゴリ別に第一、第二医用レポート間で比較し、カテゴリ別に評価点を算出する。前記評価点算出手段は、カテゴリ別の評価点を加算してカテゴリ数で除算した評価点の平均を算出し、これを第一医用レポートの評価点として出力する。カテゴリ別の評価点に重み付け係数を掛けて平均を算出してもよい。なお、カテゴリは、病名、病名の原因、原因の箇所、上記以外のその他の様態、および医師間の連絡事項のうちの少なくともいずれか二つを含む。前記語句情報と前記類似度情報を備える場合は、これらをカテゴリ別に用意する。
【0012】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文に自然言語処理を施して語句を抽出する。前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を定型文に変換する。
【0013】
医用レポートの作成またはチェックに携わる個々の医師の情報を医師データベースに格納する格納手段と、医用レポートの作成依頼元の端末からのオーダに基づいて、医師データベースから作成担当医師とチェック担当医師を検索・抽出する検索・抽出手段と、前記検索・抽出手段で抽出した各医師の端末に第一、第二医用レポートの作成の依頼を送信する第二送信手段とを備えることが好ましい。
【0014】
前記格納手段は、前記評価点算出手段の算出結果を医師データベースに格納し、前記評価点算出手段で新たに評価点が算出された場合、医師データベースを更新する。前記検索・抽出手段は、前記医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果に基づき、評価点が作成担当医師以上の医師をチェック担当医師として抽出する。
【0015】
前記第二送信手段は、作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をチェック担当医師の端末に送信する。
【0016】
本発明の医用レポート評価方法は、医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析手段により解析する解析ステップと、前記解析ステップの解析結果、および所定の評価基準を元に、評価点算出手段で第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の医用レポート評価プログラムは、医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析機能と、前記解析機能の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とする。
【0018】
本発明の医用ネットワークシステムは、第一医用レポートの作成担当医師の端末と、第一医用レポートをチェックして第二医用レポートを作成するチェック担当医師の端末と、各端末とネットワークを介して接続されるデータセンタのサーバとを備えることを特徴とする。
【0019】
前記サーバは、医用レポートの作成またはチェックに携わる個々の医師の情報を医師データベースに格納する格納手段と、医用レポートの作成依頼元の端末からのオーダに基づいて、医師データベースから作成担当医師とチェック担当医師を検索・抽出する検索・抽出手段と、前記検索・抽出手段で抽出した各医師の端末に第一、第二医用レポートの作成の依頼を送信する送信手段と、前記作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および前記チェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析手段と、前記解析手段の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出手段とを有する。
【0020】
前記送信手段は、前記評価点算出手段の算出結果を前記作成担当医師の端末に送信する。前記作成担当医師の端末は、前記送信手段より送信された前記評価点算出手段の算出結果をディスプレイに表示させる第一表示制御手段を備える。
【0021】
前記送信手段は、第一、第二医用レポートの記述文を前記作成担当医師の端末に送信する。前記第一表示制御手段は、前記送信手段より送信された第一、第二医用レポートの記述文を比較可能にディスプレイに表示させる。
【0022】
前記格納手段は、前記評価点算出手段の算出結果を医師データベースに格納し、前記評価点算出手段で新たに評価点が算出された場合、医師データベースを更新する。前記送信手段は、作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をチェック担当医師の端末に送信する。前記チェック担当医師の端末は、前記送信手段より送信された作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をディスプレイに表示させる第二表示制御手段を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、作成担当医師とチェック担当医師が作成した第一、第二医用レポートの解析結果と所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出するので、医師に余計な負担を掛けずに、より客観性のある医用レポートの評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】医用ネットワークシステムの構成図である。
【図2】病院から読影施設に送信するデータの内容を示す説明図である。
【図3】各端末およびサーバを構成するコンピュータの概略を示す構成図である。
【図4】センタサーバの概略構成を示す図である。
【図5】オーダリストを示す図である。
【図6】読影医リストを示す図である。
【図7】病名に関する語句リストを示す図である。
【図8】述語に関する語句リストを示す図である。
【図9】病名に関する類似度リストを示す図である。
【図10】述語に関する類似度リストを示す図である。
【図11】自然言語処理の概略を示す説明図である。
【図12】評価点算出処理の概略を示す説明図である。
【図13】評価結果表示ウィンドウを示す図である。
【図14】病院からの読影依頼のオーダの受信から読影施設へのオーダの送信までの流れを示すフローチャートである。
【図15】読影レポートの格納処理と配信処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】自然言語処理および評価点算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】性向表示ウィンドウを示す図である。
【図18】病院に本発明を適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1において、医用ネットワークシステム2は、データセンタ10と複数の医療施設11、12とからなる。データセンタ10と各医療施設11、12は、IPネットワーク13を介して相互接続されている。データセンタ10は、医用画像14の読影依頼の仲介サービスをはじめとして、医療検査の予約のスケジュール管理サービス、医療施設が保有する医療情報をバックアップして保管するデータバックアップサービス、症例データを蓄積して医療施設間で共有させる症例参照サービス等のアプリケーションサービスを医療施設に提供する。
【0026】
IPネットワーク13は、ベースネットワークとして通信事業者が保有する専用の広域IP網を使用しており、この広域IP網上にVPN(Virtual Private Network)を構築した閉域のネットワークである。VPNにより、IPネットワーク13内を行き交うデータが医用ネットワークシステム2の外部に漏洩することはなく、データのセキュリティが確保される。
【0027】
医療施設は読影施設11と病院12とを含む。読影施設11には読影医が常駐し、データセンタ10を仲介した病院12からの読影依頼を受託する。病院12は比較的小規模な医療施設で、医療検査は行うが読影医がいないか、または少数しかおらず、データセンタ10を介して読影施設11に読影を依頼する。
【0028】
読影施設11の読影医は、依頼対象の医用画像14の読影を行い、その読影結果を記述した読影レポート15を作成する。読影医は作成した読影レポート15をデータセンタ10にアップロードする。データセンタ10にアップロードされた読影レポート15は、読影依頼元の病院12からアクセス(閲覧)可能となる。
【0029】
読影医は未熟者と熟練者とにランク分けされる(図6参照)。未熟な読影医が読影レポート15を作成した場合は、熟練した読影医がその読影レポート15をチェック(二次読影)する。熟練した読影医は、二次読影の依頼を受けて、未熟な読影医によりデータセンタ10にアップロードされた読影レポート15にアクセスして二次読影を行った後、二次読影した読影レポート15をデータセンタ10にアップロードする。最初の読影(一次読影)を熟練者が行った場合、二次読影は行われない。以下、一次読影を行う読影医を一次読影医、二次読影を行う読影医を二次読影医という。また、一次読影医が作成した読影レポート15を一次読影レポート15a、二次読影医が作成した読影レポートを二次読影レポート15bという。
【0030】
読影施設11には、クライアント端末16およびレポート作成端末17が設置されている。各端末16、17は、読影施設11内に敷設されたLAN(Local Area Network)で相互接続されている。図2に示すように、クライアント端末16は、データセンタ10から送信される病院12からの読影依頼のオーダ25を受け付ける。クライアント端末16は、受信したオーダ25に適当な管理IDを付与して、オーダ25のデータを管理する。読影医は、クライアント端末16で受信したオーダ25に基づいて、レポート作成端末17による読影レポート15の作成を行う。
【0031】
レポート作成端末17は、読影医がオーダ25を確認したり、読影レポート15を作成したりするときに利用される。レポート作成端末17は、医用画像14の表示ウィンドウや読影レポート15の編集ウィンドウを表示して、読影レポート15の作成を支援する。
【0032】
病院12には、モダリティ18およびクライアント端末19が設置されている。モダリティ18およびクライアント端末19は、病院12内に敷設されたLANで相互接続されている。モダリティ18は、CR装置、CT装置、MRI装置といった医用画像14の撮影装置である。クライアント端末19は、データセンタ10に読影施設11への読影依頼のオーダ25を送信する際に操作される。
【0033】
モダリティ18で医用画像14の撮影を行う場合には、患者名や各医療施設固有の患者IDといった情報が入力される。入力された情報は、医用画像14のデータファイル内に付帯情報として格納される。医用画像14のデータファイルは、例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格のファイル形式で保存される。
【0034】
DICOM規格の医用画像14のデータファイルには、画像本体のデータを格納するエリアの他に、付帯情報を格納するエリアが設けられている。付帯情報には、上記の患者名、患者IDに加えて、性別、年齢等の患者情報や、検査ID、検査(撮影)日時、モダリティ18の種類(検査種別)、検査目的、撮影部位、および撮影を行った医療施設の名称等の検査情報が含まれる。
【0035】
図2において、クライアント端末19は、読影依頼のオーダ25とともに読影対象の医用画像14をデータセンタ10に送信する。オーダ25は、読影依頼元の病院12のID、医師のID、画像ID、患者ID、撮影部位、検査種別、緊急度、重要度、希望納期等の項目を含み、これらの項目はクライアント端末19を介して入力される。
【0036】
データセンタ10には、センタサーバ20およびデータベース(以下、DBと略す)部21が設けられている。これらはデータセンタ10内に敷設されたLANで相互接続されている。センタサーバ20は、医用画像14の読影依頼の仲介サービスといったデータセンタ10のアプリケーションサービスを遂行する。DB部21は、画像DB50(図4参照)等の各種DBを有し、医用画像14等の各種データの管理・保管を担う。
【0037】
データセンタ10と各医療施設11、12には、IPネットワーク13に対応した形式と各施設10〜12内のLANに対応した形式とでデータ形式を変換し、IPネットワーク13と各施設10〜12内のLANとを接続する通信インタフェースが設けられている。通信インタフェースはモデムやルータであり、IPネットワーク13や各施設10〜12のLANの規格に準拠して適宜選択される。
【0038】
各端末16、17、19およびセンタサーバ20は、それぞれ、パーソナルコンピュータ、サーバ用コンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、クライアントプログラムまたはサーバプログラムといったアプリケーションプログラムをインストールして構成される。
【0039】
図3において、各端末16、17、19およびセンタサーバ20を構成するコンピュータは、基本的な構成は略同じであり、それぞれ、CPU30、メモリ31、ストレージデバイス32、LANポート33、およびコンソール34を備えている。これらはデータバス35を介して相互接続されている。
【0040】
ストレージデバイス32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス32には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)36が格納される。センタサーバ20には、プログラムを格納するHDDとは別に、DB部21用のストレージデバイス32として、例えば、HDDを複数台連装したディスクアレイが設けられる。ディスクアレイは、センタサーバ20の本体に内蔵されるものでもよいし、本体とは別に設けられ、本体にケーブルやネットワークを通じて接続されるものでもよい。
【0041】
メモリ31は、CPU30が処理を実行するためのワークメモリである。CPU30は、ストレージデバイス32に格納された制御プログラムをメモリ31へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
【0042】
LANポート33は、各施設10〜12内のLANによる伝送制御を行うネットワークインタフェースである。コンソール34は、ディスプレイ37と、キーボードやマウス等の入力デバイス38とからなる。
【0043】
読影施設11のクライアント端末16には、AP36として、オーダ25の管理用ソフトウエア等のクライアントプログラムがインストールされる。クライアント端末16には、入力デバイス38を通じて、レポート作成端末17へのオーダ25の発行指示といった操作指示が入力される。
【0044】
レポート作成端末17には、AP36として、レポート作成支援を行うレポート編集用のクライアントプログラムがインストールされている。レポート作成端末17は、レポート編集用のクライアントプログラムによって、医用画像14の表示処理と、読影レポート15の編集処理とを行う。レポート作成端末17は、読影レポート15に記述する文をキーボード入力で受け付ける。
【0045】
病院12のクライアント端末19には、AP36として、モダリティ18に対する医療検査のオーダや電子カルテ、読影依頼のオーダ25の管理用ソフトウエアといったクライアントプログラムがインストールされている。クライアント端末19には、入力デバイス38を通じて、読影依頼のオーダ25の入力、発行指示といった操作指示が入力される。
【0046】
センタサーバ20には、AP36として、クライアントである各端末16、17、19からの要求に応じて処理を実行し、処理結果を応答するサーバプログラムがインストールされている。
【0047】
図4において、センタサーバ20のCPU30は、サーバプログラムを起動すると、送受信部40、格納処理部41、検索処理部42、自然言語処理部43、および評価点算出部44として機能する。また、DB部21には、画像DB50、レポートDB51等の複数のDBが構築されている。画像DB50は、モダリティ18によって撮影された医用画像14のデータを格納する。レポートDB51は、レポート作成端末17によって作成された読影レポート15のデータを格納する。医用画像14や読影レポート15のデータは、画像IDやレポートID等の検索キーで検索が可能である。
【0048】
送受信部40は、読影施設11のクライアント端末16への読影依頼のオーダ25の送信、レポート作成端末17への読影対象の医用画像14の送信、レポート作成端末17からアップロードされる読影レポート15の受信、病院12のクライアント端末19からのオーダ25の受信、クライアント端末19への読影レポート15の送信等、各端末16、17、19との各種データの遣り取りを行う。
【0049】
格納処理部41は、送受信部40で受信した各端末16、17、19からの格納要求に応じて、DB部21の各DBへのデータの格納処理を実行する。格納要求には、医用画像14のデータの画像DB50への格納要求や、読影レポート15のデータのレポートDB51への格納要求等がある。
【0050】
検索処理部42は、送受信部40で受信した各端末16、17、19からの配信要求に応答して、要求されたデータをDB部21の各DBから検索・抽出する。抽出したデータは、送受信部40を通じて要求元の端末へ配信される。画像DB50に対する検索要求には、検査IDや画像IDといった情報を検索キーとする医用画像14の検索要求がある。レポートDB51に対する検索要求には、作成した読影レポート15のデータや、作成途中の読影レポート15のデータの検索要求がある。
【0051】
DB部21のオーダDB52には、図5に示すオーダリスト55が格納されている。オーダリスト55には、クライアント端末19から送信されたオーダ25の項目毎に、管理ID、受付日時、一次、二次読影医それぞれのID、一次、二次読影医の所属する読影施設11のID等が格納処理部41により受付順に記録されている。一次、二次読影医のID、および所属施設のIDは、検索処理部42で読影を依頼する読影医を抽出したときに、読影医DB53から読み出されるデータが登録される。
【0052】
読影医DB53には、図6に示す読影医リスト56が格納されている。読影医リスト56には、読影施設11に所属する読影医の基本的な情報が登録されている。読影医リスト56は、個々の読影医を識別する読影医ID毎に、所属する読影施設11のID、読影医の氏名、経験年数、専門分野、手持ちの読影件数、ランク、および評価点等の項目を有する。
【0053】
手持ちの読影件数は、その読影医が現在抱えている読影依頼の件数であり、読影医に掛かる仕事の負担を表す。ランクは評価点(総合評価点)に基づいて1〜5までの5段階で表される。評価点が1〜20の読影医のランクは1、同様に21〜40は2、41〜60は3、61〜80は4、81〜100は5である。本例では、ランク1〜4の読影医を未熟者、ランク5の読影医を熟練者とする。評価点には、各カテゴリの評価点と総合評価点があり、その読影医が手掛けた読影レポートの評価点の平均が登録される。評価点の詳細は後述する。
【0054】
専門分野、手持ちの読影件数、ランク等は、検索処理部42で読影を依頼する読影医を検索・抽出する際に検索条件として加味される。例えば専門分野が検査種別と一致する読影医を絞り込み検索したり、手持ちの読影件数が10件以上の読影医を検索対象から外したりする。
【0055】
検索処理部42は、送受信部40でクライアント端末19からのオーダ25を受け付けた場合、そのオーダ25の条件を満たす読影医を読影医リスト56から検索・抽出する。検索処理部42は、抽出した読影医が未熟者か熟練者かをランクの項目から判定する。抽出した読影医が未熟者であると判定した場合、検索処理部42は読影医リスト56を再検索する。そして、最初に抽出した読影医と同じ読影施設11から、二次読影医として読影レポート15のチェックを依頼する熟練者の読影医を抽出する。送受信部40は、検索処理部42で抽出した読影医が所属する読影施設11のクライアント端末16にオーダ25を送信する。
【0056】
辞書DB54には、図7、図8に示す語句リスト57と、図9、図10に示す類似度リスト58が格納されている。語句リスト57には、読影レポート15に記述する文で使用され得る語句が、複数の分類階層毎に登録されている。類似度リスト58には、語句リスト57の分類階層同士の類似度が登録されている。
【0057】
図7に示す語句リスト57aは、病名を表す語句を大中小の分類毎に記録している。例えば病名「心臓悪性リンパ腫瘍」と「心臓線維腫」は、大分類「腫瘍」、中分類「心臓腫瘍」、小分類「心臓腫瘍A」の行に登録されている。大分類には「腫瘍」、「呼吸器疾患」等の病名の大きな括り、中分類には大分類の括りをさらに細分化した「心臓腫瘍」、「間質性肺疾患」等、小分類には中分類の概念をさらに枝分かれさせた「心臓腫瘍A」、「その他肺疾患A」等の行が設けられている。
【0058】
図8に示す語句リスト57bは、病名を含む診断文の述語を表す語句を大小の分類毎に記録している。例えば述語「である。」、「原因である。」は、大分類「肯定」の小分類「確信度高」の行に登録されている。大分類には「肯定」、「否定」があり、小分類には「確信度高」、「確信度中」、「確信度低」がある。確信度は診断文に含まれる病名に対する読影医の自信の程度を示す。「である。」等の断定調は確信度が比較的高く、「思われる。」、「疑いあり。」等は確信度が比較的低いと考えられるため、小分類でそのように分類されている。
【0059】
読影レポート15に記述する文は、上記の病名やそれに続く述語の他に、診断に至る原因を示す語句、原因の箇所を示す語句、その他の様態を示す語句で構成される。また、読影レポート15には、必要に応じて、追加検査の指示等の読影医から依頼医への連絡事項も記述される。
【0060】
例えば肝臓の超音波画像に関する読影レポート15の文は、「辺縁やや鈍、表面不整。左葉が軽度腫大しています。萎縮はありません。実質エコーは不均一、密度粗雑で低エコーです。左葉に径30×20mm、点状の石灰化を認めます。アルコール性肝硬変を疑います。生検を行って下さい。」となる。「アルコール性肝硬変を疑います。」が病名に関する文、「萎縮はありません。」がその他の様態、この文を除く「辺縁やや鈍・・・石灰化を認めます。」が原因、その中の「左葉」が原因の箇所、「生検を行って下さい。」が連絡事項に該当する。
【0061】
このため、辞書DB54には、例示した語句リスト57a、57bの他に、原因を示す語句、原因の箇所を示す語句、その他の様態を示す語句、連絡事項の文に使用される語句のカテゴリ毎に、同様に複数の分類階層で語句を登録した語句リスト57が用意されている。
【0062】
図9に示す類似度リスト58aは、病名の語句リスト57aの分類同士の類似度を記録している。小分類「心臓腫瘍A」、「心臓腫瘍B」の類似度は「0.9」、大分類「腫瘍」、「呼吸器疾患」の類似度は「0.2」である。一方、図10に示す類似度リスト58bは、述語の語句リスト57bの分類同士の類似度を記録している。小分類「確信度高」、「確信度中」の類似度は「0.9」、大分類「肯定」、「否定」の類似度は最小値の「0.1」である。類似度リスト58a、58bには登録されていないが、小分類が完全一致した場合の類似度は最大値の「1.0」である。なお、語句リスト57と同様に、原因を示す語句、原因の箇所を示す語句、その他の様態を示す語句、連絡事項の文に使用される語句のカテゴリ毎に、同様の類似度リスト58が辞書DB54に用意されている。
【0063】
辞書DB54には、語句リスト57、類似度リスト58の他に、自然言語処理部43による自然言語処理に必要な類義語辞書や文法辞書等のデータが格納されている。
【0064】
自然言語処理部43および評価点算出部44は、二次読影を依頼した場合に起動する。図11において、自然言語処理部43は、一次、二次読影レポート15a、15bの記述文に対して周知の自然言語処理技術を適用し、検索処理部42を介して辞書DB54の各種辞書データを参照して、記述文に使用されている語句の抽出、語句同士の係り受け、病名や述語といった語句の種別の特定、類義語の表記ゆれの解消等の各種処理を行う。自然言語処理部43は、各種処理の解析結果に基づき、語句リストに登録された語句からなる記述文の要約を作成してそのデータを評価点算出部44に送信する。
【0065】
例えば一次読影レポート15aの「心臓悪性リンパ腫瘍が疑われます。」という病名の記述文は、まず形態素解析により「心臓」、「悪性」、「リンパ」、「腫瘍」「が」、「疑われ」、「ます。」という語句に分けられ、構文解析、意味解析等により「心臓悪性リンパ腫瘍」、「疑われます。」が一まとまりの語句として認識され、前者が病名、後者が述語と判定される。そして、「心臓悪性リンパ腫瘍」は「心臓悪性リンパ腫」、「疑われます。」は「疑いあり。」と語句リストに登録された語句に変換され、要約「心臓悪性リンパ腫の疑いあり。」が作成される。二次読影レポート15bの「心膜腫瘍と判断できます。」は、「心膜腫瘍と判断する。」と要約される。病名の原因、原因の箇所、その他の様態、連絡事項の文の各カテゴリについても同様に要約が作成される。
【0066】
図12において、評価点算出部44は、自然言語処理部43から各読影レポート15a、15bの要約のデータを受けて、検索処理部42を介して該要約の語句の分類(分類名)を語句リスト57から抽出する。この際、検索処理部42は、階層が上の大分類から順番に見ていって、初めて異なった分類を抽出する。例えば「心臓悪性リンパ腫」と「心膜腫瘍」は、図7の語句リスト57aの大分類「腫瘍」、中分類「心臓腫瘍」は一致するが、小分類が「心臓腫瘍A」と「心臓腫瘍B」で異なる。このため検索処理部42で抽出される分類は、「心臓腫瘍A」、「心臓腫瘍B」となる。
【0067】
分類の抽出後、評価点算出部44は、検索処理部42を介して、一次、二次読影レポート15a、15bの要約の語句の分類同士の類似度を類似度リスト58から抽出する。そして、病名等のカテゴリ毎に抽出した類似度を乗算して、各カテゴリの評価点を算出する。
【0068】
評価点算出リスト60は、評価点算出部44による分類、類似度の抽出、および評価点の算出を視覚化したものである。本例では、評価点算出リスト60に示すように、一次読影レポート15aの要約の語句「心臓悪性リンパ腫」、「疑いあり。」の分類「心臓腫瘍A」、「確信度低」、二次読影レポート15bの要約の語句「心膜腫瘍」、「判断する。」の分類「心臓腫瘍B」、「確信度高」がそれぞれ語句リスト57a、57bから抽出されている。また、「心臓腫瘍A」と「心臓腫瘍B」の類似度「0.9」、および「確信度高」と「確信度低」の類似度「0.7」がそれぞれ類似度リスト58a、58bから抽出されている。そして、病名のカテゴリの評価点として、各語句の類似度「0.9」と「0.7」、および100を掛けた「63(=0.9×0.7×100)」が算出されている。病名以外の他のカテゴリについても、同様に分類、類似度の抽出、および評価点の算出が行われる。
【0069】
評価点算出部44は、各カテゴリの評価点を加算してその平均値を求め(Σ(各カテゴリの評価点)/(カテゴリ数))、これを一次読影レポート15aの総合評価点とする。この際、各カテゴリの評価点に適当な重み付け係数を掛けてもよい(Σ(各カテゴリの評価点)×(重み付け係数)/(カテゴリ数))。例えば病名のカテゴリを重視する場合は病名のカテゴリの評価点に重み付け係数2を掛ける。連絡事項のカテゴリを重視しない場合は、連絡事項のカテゴリの評価点に重み付け係数0.1を掛けるといった具合である。
【0070】
一次、二次読影レポート15a、15bの要約の語句の分類同士が完全一致した場合の類似度は「1.0」であるので、評価点は「100」となる。従って、重み付け係数を用いず、全カテゴリで完全一致した場合の総合評価点も「100」となる。なお、読影レポートによっては、連絡事項等のカテゴリの文がないものも存在する。この場合は存在しないカテゴリを除いて総合評価点を算出する。
【0071】
評価点算出部44は、算出した各カテゴリの評価点、および総合評価点のデータを格納要求とともに格納処理部41に送信する。格納処理部41は、受け取った評価点のデータに基づき、読影医リスト56の一次読影医の評価点の項目を更新する。具体的には、当該一次読影医が過去に手掛けた読影レポートの評価点の総計に評価点算出部44からの評価点を加え、これを過去に手掛けた読影レポートの件数+1で除算する。つまり、新たに算出した評価点を加えて、評価点の平均を計算し直す。格納処理部41は、各カテゴリの評価点、および総合評価点に関して上記計算を行う。
【0072】
送受信部40は、解析処理部43による一次、二次読影レポート15a、15bの要約のデータ、評価点算出部44で算出した一次読影レポート15aの各カテゴリの評価点および総合評価点のデータ、格納処理部41により更新された評価点のデータ、並びに更新前の評価点のデータ等を一次読影医のレポート作成端末17に送信する。これらのデータを受けて、一次読影医のレポート作成端末17のCPU30は、図13に示す評価結果表示ウィンドウ65を生成し、これをディスプレイ37に表示させる。
【0073】
評価結果表示ウィンドウ65は、評価点算出部44の算出結果に基づく今回の一次読影レポート15aの評価点とランクの表示領域66aと、格納処理部41の更新に基づく当該一次読影医の現在の評価点とランクの表示領域66bとを有する。各表示領域66a、66bには、カテゴリ別の評価点と総合評価点とが分れて表示されている。
【0074】
表示領域66aのカテゴリ別の行の横には、詳細表示ボタン67とチェックボックス68が設けられている。チェックボックス68にマウスのポインタ69を合わせてクリック選択し、詳細表示ボタン67を選択すると、チェックボックス68で選択したカテゴリの一次、二次読影レポート15a、15bの要約が吹き出し等で表示される。一次読影医は、二次読影医によって自分の記述文のどこがどう修正されたかを詳細表示で確認することができる。なお、評価結果表示ウィンドウ65に「病名、その他様態のカテゴリについて修正されています。」等のメッセージを表示し、二次読影で修正されたカテゴリを報せてもよい。
【0075】
表示領域66bには、ランクの上下を矢印で示す前回比較の項目が設けられている。一次読影医は、次回はどのカテゴリの記述文の書き方を改善すればよいかといった一次読影レポート15aを作成する際の自らの課題を認識することができる。また、ランクの上下を表示することで、ランクが上がった場合は一次読影医には励みになり、下がった場合は一次読影医に自省を促し奮起させるきっかけとすることができる。
【0076】
以下、上記構成による作用について、データセンタ10の処理を中心に図14〜図16に示すフローチャートを参照して説明する。読影依頼の流れを示す図14において、まず、病院12のクライアント端末19から、オーダ25および読影対象の医用画像14のデータがデータセンタ10に送信される(ステップ(以下、Sと略す。)10)。
【0077】
データセンタ10で受信されたオーダ25のデータは、送受信部40を通じて格納処理部41に受け渡され、格納処理部41によりオーダDB52のオーダリスト55に登録される。医用画像14のデータは画像DB50に格納される。
【0078】
また、検索処理部42により読影医DB49の読影医リスト56が検索され、オーダ25のデータに応じた読影医が抽出される(S11)。抽出した読影医のランクが1〜4の未熟者であった場合(S12でYES)、続いて二次読影医の検索・抽出が行われる(S13)。二次読影医の検索・抽出に際しては、S11で抽出した一次読影医と同じ読影施設11に所属する読影医の中からランクが5の熟練者を候補とする。S11で抽出した読影医が熟練者であった場合(S12でNO)は二次読影医の検索・抽出は行われない。
【0079】
読影医の抽出には、オーダ25と読影医リスト56の各項目の兼ね合いが加味される。例えば、オーダ25の撮影部位と読影医リスト56の専門分野が一致しているか否か、緊急度や希望納期に対応可能な手持ちの読影件数であるか否か、重要度に対して経験年数やランクが釣り合っているか否か等が調べられる。一次読影医には、なるべくオーダ25に見合った読影医を振り分けるため、熟練者が一次読影医として抽出される確率が高い。しかし、オーダ25と読影医リスト56の各項目の兼ね合いを加味した結果、未熟者を一次読影医として抽出することもある。この場合は熟練者の二次読影医に一次読影レポート15aをチェックしてもらい、読影レポート15の質を担保する。
【0080】
読影医の検索・抽出後、格納処理部41により抽出した読影医、所属施設のID等の情報がオーダリスト55の当該オーダ25の行に登録される。また、送受信部40を通じて、抽出した読影医が所属する読影施設11のクライアント端末16にオーダ25と医用画像14のデータが送信され、読影の依頼が出される(S14)。
【0081】
読影医は、レポート作成端末17でオーダ25を確認し、読影レポート15の作成を開始する。読影医は、ディスプレイ37で医用画像14を観察し、これにより認識した病変の状態等の観察記録を表す文をキーボードにて入力し、読影レポート15を完成させる。
【0082】
図15において、作成が完了した読影レポート15は、レポート作成端末17からデータセンタ10の送受信部40に送信され、格納処理部41によりレポートDB51に格納される(S20)。また、検索処理部42により当該読影レポート15に対応するオーダ25がオーダリスト55から検索・抽出される(S21)。
【0083】
抽出されたオーダ25に二次読影医のIDが記録されていた場合は二次読影が必要と判断される(S22でYES)。この場合、抽出したオーダ25に登録された二次読影医が所属する読影施設11(一次読影と同じ読影施設11)のクライアント端末16に、送受信部40を通じて一次読影レポート15a(S20でレポートDB51に格納された読影レポート15)がアップロードされた旨の通知が出される(S23)。
【0084】
一次読影レポート15aがアップロードされた旨の通知を受けた二次読影医は、レポート作成端末17でデータセンタ10にアクセスし、一次読影レポート15aのダウンロード要求をデータセンタ10に向けて送信する。データセンタ10では、ダウンロード要求された一次読影レポート15aを検索処理部42によりレポートDB51から検索・抽出し、送受信部40を介してレポート作成端末17に送信する(S24)。
【0085】
二次読影医は、ダウンロードした一次読影レポート15aの修正・加筆を適宜行って二次読影レポート15bを作成する。作成が完了した二次読影レポート15bは、一次読影レポート15aのときと同様、レポート作成端末17からデータセンタ10の送受信部40に送信され、格納処理部41によりレポートDB51に格納される(S25)。
【0086】
S20で一次読影レポート15aがレポートDB51に格納され、且つ二次読影が不要と判断された場合(S22でNO)、またはS25で二次読影レポート15bがレポートDB51に格納されたとき、S21と同様、検索処理部42により当該読影レポート15に対応するオーダ25がオーダリスト55から検索・抽出される。そして、抽出されたオーダ25に登録された依頼元の病院12のIDに基づき、依頼元の病院12のクライアント端末19に、送受信部40を通じて読影が完了した旨の通知が出される(S26)。
【0087】
読影が完了した旨の通知を受けた病院12の医師は、クライアント端末19でデータセンタ10にアクセスし、対象となる読影レポート15(二次読影していない場合は一次読影レポート15a、二次読影した場合は二次読影レポート15b)のダウンロード要求を送信する。データセンタ10では、ダウンロード要求された読影レポート15を検索処理部42によりレポートDB51から検索・抽出し、送受信部40を介してクライアント端末19に送信する(S27)。クライアント端末19のディスプレイ37には、レポート表示画面と、読影レポート15に関連する医用画像14を表示する画像表示ウィンドウが出力される。病院12の医師は、これらの画面を閲覧して、読影レポート15の内容を確認する。
【0088】
図16において、二次読影を行った場合、図15のS20、S25で受信した一次、二次読影レポート15a、15bのデータが自然言語処理部43に送られ、自然言語処理部43にて一次、二次読影レポート15a、15bの記述文に対して自然言語処理が行われる。自然言語処理は、検索処理部42を介して辞書DB54の各種辞書データが参照され、語句の抽出、語句の種別の特定、類義語の表記ゆれの解消等が行われる。そして、この自然言語処理の結果に基づき、記述文の要約が作成される(S30)。要約は、病名、病名の原因、原因の箇所、その他の様態、連絡事項の文の各カテゴリについて作成される。要約のデータは評価点算出部44に送信される。
【0089】
次いで、評価点算出部44により、検索処理部42を介して各カテゴリの要約の語句の分類が語句リスト57から抽出される(S31)。この際抽出される分類は、階層が上の大分類から順番に見ていって、初めて異なった分類である。分類の抽出後、一次、二次読影レポート15a、15bの要約の語句の分類同士の類似度が類似度リスト58から抽出される(S32)。そして、カテゴリ毎に抽出した類似度が乗算され、各カテゴリの評価点が算出される。また、各カテゴリの評価点が加算されてその平均値が求められ、以て一次読影レポート15aの総合評価点が算出される(S33)。
【0090】
各評価点のデータは、格納要求とともに評価点算出部44から格納処理部41に送信される。そして、格納処理部41により、当該一次読影医が過去に手掛けた読影レポートの評価点の総計に評価点算出部44からの評価点が加えられ、この値が過去に手掛けた読影レポートの件数+1で除算され、当該一次読影医の読影医リスト56の評価点の項目が更新される。また、送受信部40により、評価点算出部44で算出した一次読影レポート15aの各カテゴリの評価点および総合評価点のデータ等が一次読影医のレポート作成端末17に送信される(S34)。
【0091】
データセンタ10の送受信部40からのデータを受けて、一次読影医のレポート作成端末17のディスプレイ37には、評価点算出部44の算出結果に基づく今回の一次読影レポート15aの評価点とランクの表示領域66a等を有する評価結果表示ウィンドウ65が表示される。
【0092】
以上説明したように、本発明は、未熟な読影医による一次読影レポート15aと熟練した読影医による二次読影レポート15bの記述文を解析して比較し、比較結果に応じて一次読影レポート15aを自動評価するので、読影医に余計な業務をさせることがなく、読影医の負担増加を防止することができる。
【0093】
一次読影レポート15aの評価の基準となる語句リスト57や類似度リスト58は予め用意されているので、特定の読影医が評価基準を作成する従来技術と比べて読影医の負担が減り、また評価基準に作成者の主観が混ざる可能性が低く、評価の客観性、信憑性、妥当性を確保することができる。
【0094】
従来技術では現在遂行している読影に関係のないテスト用画像の読影を強制しているが、本発明はテスト用画像を読影する必要はなく、普段と変わらず読影業務を行っていればよいので、読影医に無用なストレスを与えることがない。
【0095】
評価結果を一次読影医に表示するので、一次読影医は高評価を得るためには何をすべきかといったその後の読影業務の目標を立てやすくなる。カテゴリ別に評価点を算出してこれを表示すれば、強化すべき点がさらに明確になる。また、二次読影レポート15bの要約も併せて表示するので、一次読影医は二次読影医の診断に至る考え方や記述文の書き方を学ぶことができる。このように、本発明は、一次読影医の育成にも寄与することができる。
【0096】
二次読影医は、一次読影レポート15aのチェックを行うことで、一次読影医の現状のスキルを把握することができ、その後の指導に役立てることができる。
【0097】
なお、二次読影医が一次読影レポート15aのチェックを行う際に、一次読影医の性向を二次読影医に報せてもよい。この場合、図15のS24で一次読影レポート15aのデータを送受信部40で二次読影医に送信する際に、一次読影医の読影医リスト56の評価点を検索処理部42により抽出し、これを併せて送信する。二次読影医のレポート作成端末17のCPU30は、一次読影医の評価点のデータを受けて、図17に示す性向表示ウィンドウ75を生成し、これをディスプレイ37に表示させる。
【0098】
性向表示ウィンドウ75には、評価結果表示ウィンドウ65と同様に、一次読影医の各カテゴリの評価点および総合評価点、並びにランクが表示領域76aに表示される。また、評価点から導かれる一次読影医の性向を表すコメントが表示領域76bに表示される。コメントは、予め用意された定型文に評価点またはランクに応じて各カテゴリ名を当て嵌めて作成する。二次読影医は性向表示ウィンドウ75でこれからチェックする一次読影レポート15aの作成者(一次読影医)の性向を知ることができ、重点的にチェックを行うべきカテゴリを事前に頭に入れてチェックに臨むことができる。なお、性向表示ウィンドウ75は、二次読影前だけでなく、二次読影中に二次読影医の指示に応じて表示してもよい。
【0099】
上記実施形態では、一次、二次読影レポート15a、15bの記述文を構成する語句の類似度を類似度リスト58から抽出し、これを元に評価点を算出しているが、単純に語句の一致不一致(各語句の相違の多寡)により評価点を算出してもよい。例えば基準点を100とし、語句が一致した場合は基準点に+1、不一致の場合は−1する。これを上記実施形態と同様に各カテゴリの記述文に対して行い、各カテゴリの評価点を算出する。総合評価点の算出の仕方は上記実施形態と同じである。上記実施形態の重み付け係数と同様に、病名が一致した場合は基準点に+2、不一致の場合は−2する等、カテゴリに応じて加減点に重み付けをしてもよい。
【0100】
上記実施形態では、一次読影医が一次読影レポート15aを作成した後、その一次読影レポート15aを二次読影医がチェックするという順番で説明したが、一次、二次読影医が同じオーダ25に基づいて別々に読影レポートを並行して作成し、各読影レポートを比較、評価してもよい。
【0101】
記述文の評価に加えて、オーダ25の希望納期、緊急度、重要度を評価基準として採用してもよい。希望納期通りに一次読影レポート15aがアップロードされた場合は評価点算出部44で算出した総合評価点に加点し、納期遅れが生じた場合は減点する。緊急度が高い場合に希望納期通りであった場合は大幅に加点し、緊急度が高いにも関わらず納期遅れが生じた場合は大幅に減点する。あるいは、重要度が高いのに総合評価点が基準に満たない場合は大幅に減点する。記述文の評価だけでは分からない一次読影医の納期への意識、緊急時の対応力等を考慮した評価を下すことができる。
【0102】
上記実施形態では、レポート作成端末17で読影レポートの記述文をキーボード入力する例を挙げたが、複数の用語選択ボタンやプルダウンメニューを選択させ、その選択状態に応じて記述文を作成するテンプレート式操作ツールを用いてもよい。この場合の記述文は、用語選択ボタン等の選択状態で一部の語句が変更される定型文となる。このため、選択状態のデータを解析しさえすれば記述文の構成は一義的に決まる。従って、上記実施形態の自然言語処理部43は不要となる。
【0103】
検査種は上記実施形態の例に限定されるものではなく、PET(Positron Emission Tomography)検査、内視鏡検査等でもよい。また、読影レポート15として、医用画像14の読影結果をまとめたレポートを例示したが、医用画像以外の検査データに対する所見をまとめたレポートでもよい。医用画像以外の検査データとしては、例えば、病理検査といった検体検査や生理検査等で得られる数値データ、あるいは心電図等の波形図がある。また、異なる検査種の検査データ等、種々のデータに関する所見が記入されるレポートでもよい。
【0104】
上記実施形態では、IPネットワーク13で相互に接続されたデータセンタ10、読影施設11、および病院12からなり、病院12から読影施設11への読影依頼をデータセンタ10が仲介する医用ネットワークシステム2を例示したが、図18に示すように、一病院内にデータセンタ10のセンタサーバ20およびDB部21と同じ機能を有する情報管理サーバ80およびDB部81を設け、クライアント端末19を有する診療科82と、クライアント端末16およびレポート作成端末17を有する検査科83間の読影依頼を情報管理サーバ80が仲介する態様にも本発明は適用可能である。この場合、診療科82が上記実施形態の病院12、検査科83が読影施設11に相当する。情報管理サーバ80等の構成および作用効果は上記実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0105】
上記実施形態では、語句の分類同士の類似度を類似度リストに記録して、分類に基づいて類似度を抽出しているが、語句を分類せずに語句同士の類似度リストを用意し、ダイレクトに語句の類似度を抽出してもよい。但し、語句を数種に分類する上記実施形態の例と比べて、類似度リストのデータ容量が膨大になる。このため、上記実施形態の語句を分類する態様を採用することが好ましい。
【0106】
なお、一次、二次読影医を異なる読影施設から抽出してもよい。また、熟練者が一次読影医となった場合も含めて全オーダに対して必ず二次読影を行ってもよい。熟練者が一次読影医となった場合は、その読影医とランクが同じ他の読影医を二次読影医として抽出すればよい。
【0107】
二次読影を複数の読影医が行ってもよい。この場合は各々の読影医による二次読影レポートと一次読影レポートを比較し、それぞれ評価点を算出する。そして、算出した複数の評価点の平均を最終的な一次読影レポートの評価点とする。複数の評価点のうちの最低点と最高点を除いて平均を算出してもよい。二次読影を複数人で行うことで、より客観的な評価が期待できる。
【0108】
なお、上記実施形態で示したとおり、本発明は、プログラムの形態、さらにはプログラムを記憶する記憶媒体にもおよぶことはもちろんである。
【符号の説明】
【0109】
2 医用ネットワークシステム
10データセンタ
11 読影施設
12 病院
15 読影レポート
15a、15b 一次読影レポート、二次読影レポート
17 レポート作成端末
20 センタサーバ
21、81 データベース(DB)部
30 CPU
32 ストレージデバイス
36 アプリケーションプログラム(AP)
37 ディスプレイ
38 入力デバイス
40 送受信部
41 格納処理部
42 検索処理部
43 自然言語処理部
44 評価点算出部
53 読影医DB
54 辞書DB
56 読影医リスト
57 語句リスト
58 類似度リスト
65 評価結果表示ウィンドウ
75 性向表示ウィンドウ
80 情報管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析手段と、
前記解析手段の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出手段とを備えることを特徴とする医用レポート評価装置。
【請求項2】
前記評価点算出手段の算出結果を作成担当医師の端末に送信する第一送信手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の医用レポート評価装置。
【請求項3】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を抽出し、
前記評価点算出手段は、前記解析手段で抽出した語句を第一、第二医用レポート間で比較し、各語句の類似度、または各語句の相違の多寡を評価基準として評価点を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の医用レポート評価装置。
【請求項4】
階層構造の分類別に語句が登録された語句情報と、
前記語句情報の分類同士の類似度が登録された類似度情報とを備え、
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を抽出し、
前記評価点算出手段は、前記語句情報から第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句の分類を抽出し、前記類似度情報から分類の類似度を抽出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項5】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を構成する語句を複数のカテゴリ別に抽出し、
前記評価点算出手段は、前記解析手段で抽出した語句をカテゴリ別に第一、第二医用レポート間で比較し、カテゴリ別に評価点を算出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項6】
前記評価点算出手段は、カテゴリ別の評価点を加算してカテゴリ数で除算した評価点の平均を算出し、これを第一医用レポートの評価点として出力することを特徴とする請求項5に記載の医用レポート評価装置。
【請求項7】
前記評価点算出手段は、カテゴリ別の評価点に重み付け係数を掛けて平均を算出することを特徴とする請求項6に記載の医用レポート評価装置。
【請求項8】
カテゴリは、病名、病名の原因、原因の箇所、上記以外のその他の様態、および医師間の連絡事項のうちの少なくともいずれか二つを含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項9】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文に自然言語処理を施して語句を抽出することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項10】
前記解析手段は、第一、第二医用レポートの記述文を定型文に変換することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項11】
医用レポートの作成またはチェックに携わる個々の医師の情報を医師データベースに格納する格納手段と、
医用レポートの作成依頼元の端末からのオーダに基づいて、医師データベースから作成担当医師とチェック担当医師を検索・抽出する検索・抽出手段と、
前記検索・抽出手段で抽出した各医師の端末に第一、第二医用レポートの作成の依頼を送信する第二送信手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の医用レポート評価装置。
【請求項12】
前記格納手段は、前記評価点算出手段の算出結果を医師データベースに格納し、前記評価点算出手段で新たに評価点が算出された場合、医師データベースを更新することを特徴とする請求項11に記載の医用レポート評価装置。
【請求項13】
前記検索・抽出手段は、前記医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果に基づき、評価点が作成担当医師以上の医師をチェック担当医師として抽出することを特徴とする請求項12に記載の医用レポート評価装置。
【請求項14】
前記第二送信手段は、作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をチェック担当医師の端末に送信することを特徴とする請求項12または13に記載の医用レポート評価装置。
【請求項15】
医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析手段により解析する解析ステップと、
前記解析ステップの解析結果、および所定の評価基準を元に、評価点算出手段で第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出ステップとを備えることを特徴とする医用レポート評価方法。
【請求項16】
医用レポートの作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および第一医用レポートのチェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析機能と、
前記解析機能の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とする医用レポート評価プログラム。
【請求項17】
第一医用レポートの作成担当医師の端末と、
第一医用レポートをチェックして第二医用レポートを作成するチェック担当医師の端末と、
各端末とネットワークを介して接続されるデータセンタのサーバであり、
医用レポートの作成またはチェックに携わる個々の医師の情報を医師データベースに格納する格納手段と、
医用レポートの作成依頼元の端末からのオーダに基づいて、医師データベースから作成担当医師とチェック担当医師を検索・抽出する検索・抽出手段と、
前記検索・抽出手段で抽出した各医師の端末に第一、第二医用レポートの作成の依頼を送信する送信手段と、
前記作成担当医師の端末から受信した第一医用レポート、および前記チェック担当医師の端末から受信した第二医用レポートを解析する解析手段と、
前記解析手段の解析結果、および所定の評価基準を元に第一医用レポートの評価点を算出する評価点算出手段とを有するサーバとを備えることを特徴とする医用ネットワークシステム。
【請求項18】
前記送信手段は、前記評価点算出手段の算出結果を前記作成担当医師の端末に送信し、
前記作成担当医師の端末は、前記送信手段より送信された前記評価点算出手段の算出結果をディスプレイに表示させる第一表示制御手段を備えることを特徴とする請求項17に記載の医用ネットワークシステム。
【請求項19】
前記送信手段は、第一、第二医用レポートの記述文を前記作成担当医師の端末に送信し、
前記第一表示制御手段は、前記送信手段より送信された第一、第二医用レポートの記述文を比較可能にディスプレイに表示させることを特徴とする請求項18に記載の医用ネットワークシステム。
【請求項20】
前記格納手段は、前記評価点算出手段の算出結果を医師データベースに格納し、前記評価点算出手段で新たに評価点が算出された場合、医師データベースを更新し、
前記送信手段は、作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をチェック担当医師の端末に送信し、
前記チェック担当医師の端末は、前記送信手段より送信された作成担当医師の医師データベースの前記評価点算出手段の算出結果をディスプレイに表示させる第二表示制御手段を備えることを特徴とする請求項17ないし19のいずれかに記載の医用ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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