説明

医用換気・吸引器具のためのポート密閉カートリッジ

【課題】たとえ使用中であっても、システムを実質的に閉鎖状態に維持するポートアクセスを提供する。
【解決手段】ポート密閉カートリッジであって、カテーテルまたは他の医療器具を、利用可能なアクセスポートを通って気管内チューブ内へ、そしてそこから患者の肺内へと挿入することを可能にするものが提供される。ポート密閉カートリッジは、1次シール及びカラーをなす2次シールを有し、両シールは、医療器具がシールを通ってシステム内へと挿入されるときに順次圧力シールを提供する。ポート密閉カートリッジの近位端において、テザー付き埃よけカバーを用いることもできる。取り外し、廃棄及び交換が容易にできるように、ポート密閉カートリッジに迅速継手を嵌合できることが望ましい。ポート密閉カートリッジは、患者の肺にアクセスする目的で、気管支肺胞カテーテル、気管支鏡あるいは他の気道の処置またはサンプリング用医療器具と併用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用換気・吸引器具のためのポート密閉カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が十分に自発呼吸を行えるようになって補助呼吸から解放されるまで、医療処置中及び医療処置後に患者の呼吸を補助するために、気管カテーテルが用いられる。気管カテーテルの一種である気管内チューブ(ETチューブ)は、患者の口から挿入され、声帯及び声門を過ぎて気管内へ誘導される。患者に挿管が行われた時点で、ETチューブは、肺の機械的換気のために人工呼吸器(ベンチレータまたはレスピレータ)に接続される。ベンチレータ器具は、ホースセット、つまり、換気システムとして患者に換気ガスを送る換気チューブまたはチューブ回路に接続される。
【0003】
気管−気管支樹からの分泌物の除去は、挿管されかつ機械的人工換気または他の人工換気が行われる患者に対して提供されるケアになくてはならないものである。分泌物は一部の呼吸器疾患において過剰に産生する場合があり、そのような呼吸器疾患を患う患者にとって分泌物は深刻な脅威となる。気管内チューブの存在は、咳により分泌物を喀出しようとする患者の努力の妨げになる。現在の医療においては、そのような分泌物を患者の気道から吸引によって取り除くために、肺に吸引カテーテルが挿入される。
【0004】
吸引は、「開放式」または「閉鎖式」システムを用いて行うことができる。開放式システムでは、吸引カテーテルは、気管チューブの換気ルーメンに挿入される単なる軟質プラスチックチューブであり、吸引カテーテルの近位端には吸引源が接続される。吸引カテーテルは、必要な深さまで進められ、分泌物を除去するために吸引力が加えられる。ルーメンに入る前に吸引カテーテルが接触する如何なるものも滅菌状態に維持されていなければならないので、患者に接触または隣接して「滅菌領域」が作られなければならない。吸引カテーテルは、使用後には、表面が患者の分泌物で覆われることになるので、慎重に取り扱わなければならない。対照的に、例えば共同所有の米国特許第4,569,344号(特許文献1)に開示されているような「閉鎖式」システムにおいて、分泌物を吸引するために用いることができる吸引器具10は、使用前に吸引カテーテルの汚染を排除するかまたは最小にするために、概ね円筒状のプラスチックバッグ14に封入された吸引カテーテル12を用いる(図1)。これは、一般に「閉鎖式吸引カテーテル」と呼ばれるもので、バラード(登録商標)メディカルプロダクツ社(キンバリークラーク社)からトラックケアー(登録商標)という商品名で販売されている。患者が分泌物の人工的な除去を必要としているとき、吸引カテーテル12を、プラスチックバッグ14の一端から接続継手16を通って気管チューブ内へ、そして必要に応じて患者の片方の主気管支内へと進めることができる。吸引カテーテル12の他端すなわち近位端17は、吸引源19に装着される。分泌物を除去するために、指で制御するフィンガーバルブ18を用いて吸引カテーテル12の近位端17に吸引力が加えられる。他方の主気管支も同じように吸引することができる。分泌物はこうして吸引カテーテル12のルーメンに吸い込まれて除去され、システムは閉じたままである。吸引カテーテル12はその後、気管チューブから引き抜かれ、プラスチックバッグ14内に戻され、それによって回路は閉状態に維持される。閉鎖式吸引システムは広く医療提供者に好まれているが、その理由は、閉鎖式吸引システムの方が患者の分泌物からの医療提供者の保護が優れているからである。開放式吸引システムでは、患者を吸引する都度、滅菌領域を作る必要があるが、閉鎖式吸引システムでは、その必要がないので、より容易かつ迅速でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,569,344号明細書
【特許文献2】米国特許第5,735,271号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/334,123号(米国特許公開第20100147297号)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気管ケアにおける数多くの課題は、今現在、患者の多様なニーズ及び多様な処置(幾つかは同時に行われることになる)の提供に集中している。例えば、肺活量が小さい患者(未熟児及び気腫を患う成人など)の場合、1つの課題は、分泌物除去処理中に患者が酸素欠乏に苦しむことなく、貯留した肺分泌物を除去することである。この課題に対する1つの解決策は、共同所有の米国特許第5,735,271号(特許文献2)によって既に与えられており、特許文献2は、例えば特許文献1の気管ケア器具と換気回路との間に取り付けられるマルチアクセス・マニホールド(複数のアクセスポートを有するマニホールド)を提供する。この医療器具は、図2に示されている。
【0007】
図2の分解図では、アセンブリ20は、挿管患者に換気ガスを送るための流路を画定しかつ挿管患者に換気ガスを送るためのアクセス経路を提供するアダプタを含む。アセンブリ20は、エルボコネクタ22と、回転マニホールド33と、ポート28、30及び32とを含み得る。エルボ22は、気管チューブに接続する遠位ポート24と、機械的ベンチレータに接続するための近位ポート26と、回転可能なマニホールド33への接続部とを有する。
【0008】
使用中、マルチアクセス・マニホールド・アセンブリ20は、医療提供者による患者の他の呼吸器へのアクセスの実施とは無関係に、気管チューブへの直接かつ真っ直ぐな挿入を可能にする位置までポート28、30を回転させることによって、連続的で周期的な患者換気を提供する。アクセスポート32からは、使用後に吸引カテーテル12が引き抜かれるときに例えば吸引カテーテル12の外側を洗浄する洗浄液または洗液を、導入することができる。アクセスポート28及び30は、閉鎖式吸引カテーテル12アセンブリの選択的挿入及び抜去などの付属品によるアクセスを提供するために、マニホールド33を回転させることによって位置を切り替えることができる。吸引カテーテル12アセンブリの吸引カテーテル12は、肺から分泌物を除去し、その後、概ね円筒状のプラスチックバッグ14内に引っ込められる。アクセスポート28及び30は、酸素化カテーテルアセンブリを受け入れることもできる。カテーテルアセンブリのカテーテルチューブを用いて、肺の中で、残留二酸化炭素を酸素と交換し、かつ/または温度または圧力監視装置を入れ、または痰やガスのサンプルを採取し、かつ/または目視検査器具を挿入することができる。
【0009】
任意の処置中に患者換気システム内の圧力が維持されること、及び処置が完了した時点でシステムの整合性及び圧力が維持されることが重要である。空気が肺に運ばれておらず、代わりに単に外部環境中に漏れ出していれば、圧力損失によって患者は呼吸困難になることがある。環境中への空気の漏出による圧力損失は、医療提供者が感染症患者のすぐ近くで呼吸するときに、医療提供者を健康被害の危険にさらすこともある。
【0010】
図2に見られるように、アクセスポートには、医療器具に繋ぎ留めることができる交換可能なキャップ34を設けることができる。これらの開放アクセスポートは、適切に機能していたが、ポートをエルボより上の位置まで回転させた時点で、システムを開にする働きをする。たとえ使用中であっても、システムを実質的に閉鎖状態に維持するポートアクセスが非常に望ましいであろう。さらに、任意の密閉機構を容易に取り外しかつ交換することができるようなシステムを備えていることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポート密閉カートリッジであって、カテーテルまたは他の医療器具を、利用可能なアクセスポートを通って気管内チューブ内へ、そしてそこから患者の肺内へと挿入することを可能にするものが提供される。ポート密閉カートリッジは、医療器具がポート内に挿入されるときのシステム内の圧力維持及び清潔さの維持に役立つように、1次シールと、カラーをなす2次シールとを有する。ポート密閉カートリッジの近位端において任意選択のテザー付き埃よけカバーを用いることもできる。ポートからの取り外し、廃棄及び交換が容易にできるように、ポート密閉カートリッジの遠位端に迅速継手(クイックコネクト・フィッティング)を嵌合することが望ましいであろう。人工呼吸器関連肺炎または他の病気の診断に役立つように、気管支肺胞カテーテル、気管支鏡、あるいは他の気道の処置またはサンプリング用医療器具を用いて患者の肺にアクセスする目的で、ポート密閉カートリッジを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特許文献1に記載の患者の肺からの分泌物を取り除くために用いることができる器具を示す。
【図2】特許文献1の気管ケア器具と換気回路との間に配置され得るような、特許文献2に記載されているように取り付けられるマルチアクセス・マニホールドを示す。
【図3】カテーテルが挿入されていない状態の、「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの一実施形態の断面図を示す。
【図4】カテーテルが中に挿入されている状態の、「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの一実施形態の断面図を示す。
【図5】「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの一実施形態の上面図を示す。
【図6】「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの一実施形態の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、図面を参照するが、図面全体にわたって、類似の部品を指定するために類似の符号が用いられている。
【0014】
図1は、特許文献1に開示されている吸引/換気器具を示しており、この器具は商品名でトラックケアー(登録商標)とも呼ばれる。この閉鎖式吸引カテーテル吸引器具10は、継手16を用いて患者の気管内チューブに装着され、吸引器具10は、換気回路全体の一部として含まれることもある。吸引カテーテル12は、カテーテルの汚染を排除するかまたは最小にするために、プラスチックバッグ14に封入されている。患者が分泌物の人工的な除去を必要としているとき、吸引カテーテルは、換気器具の継手16を通って気管内チューブ(図示せず)内へ、そして患者の気道内へ、その後、患者の片方の肺内へと進められる。分泌物を除去するために、カテーテル12の近位端上のフィンガーバルブ18を用いて吸引力が加えられる。このケア器具のより詳細な説明は、特許文献1に見られる。
【0015】
図1の閉鎖式吸引器具10を、気管内チューブに直接装着して用いたり、あるいは実質的に気管内チューブに沿わせて気管内チューブ内で動かすことができる限り他の構成で用いたりすることができる。1つの方法として、吸引器具10を、例えば特許文献2に示されているようなマルチアクセス・マニホールド20(図2)に装着して用いることができる。マルチアクセス・マニホールド20は、どのポートを気管内チューブに合わせるかを使用者が選択できるように、回転機構を有する。図2に示されているように、マニホールドアセンブリは、医療提供者による患者の他の呼吸器へのアクセスの実施とは無関係に、連続的で周期的な患者換気を提供する。アクセスポート32からは、使用後に吸引カテーテル12が引き抜かれるときに例えば吸引カテーテル12の外側を洗浄する洗浄液または洗液を、導入することができる。医療器具の遠位端24は気管内チューブ(図示せず)に接続され、それにより患者の換気が行われる。アクセスポート26はベンチレータに接続されることができ、ポート28及び30には付属品を装着することができる。他の医療器具は、例えばポート28に隣接して示されている吸引カテーテル12であり得る。他方のポート30は、「課題を解決するための手段」に記載されているようなポート密閉カートリッジと併用され得る。吸引器具を用いることが望ましいときは、カテーテルが遠位ポート24と整合するようにマニホールドを回転させることができる。その後、カテーテル12を、マニホールドを通って患者の気管支内へと進めることができ、既に述べたように吸引を行うことができる。この医療器具のより詳細な説明は、特許文献2に見られる。
【0016】
図3は、「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの図であり、断面図として示されている。ポート密閉カートリッジ40は、近位端41と、換気システムのアクセスポート(図示せず)に装着するための遠位端42とを有する。ポート密閉カートリッジ40の本体44は、1次シール46を保持するようにサイズ決定されかつ形作られており、1次シール46を介して患者の肺にアクセスすることができる。1次シールは、1次シール保持リング45によって適所に保持されることができる。1次シール46を適所に保持する任意の他の適切な手段を用いることもできる。
【0017】
カテーテルのような医療器具の通路を提供するために、1次シール46の中心に2つの「X」字形スリット47を画定することができることが望ましい。しかし、スリット形状がシールを閉じかつ維持することができるならば、スリットの正確な形状及び数は重要でない。他の実施形態では、例えば1つのスリットあるいは3つ、4つ、またはそれ以上のスリットが用いられることがあるが、スリットの数が多すぎると、医療器具が引き抜かれた後に1次シール46が再び閉じる能力を妨げかねない。1次シール46は、様々なサイズの医療器具を通過させるものでなければならないが、「X」字形のスリットは、多種多様なサイズ及び形状の通路を提供することができることが分かった。1次シール46は、医療器具が挿入されなければ、図3に示されているように閉じた(すなわち密閉された)ままであるので、換気システムの圧力は維持され、漏れは(もしあれば)最小限である。医療器具が挿入されると、スリット47はこじ開けられ、1次シール46が開になって医療器具が通過できるようになり、換気システム内で圧力はもはや維持されない。1次シール46は、図3に示したような全体としてドームまたは半球形状を有し得るが、他の形状を用いることもできる。1次シールは、加圧換気システムの方に向けられているシールである。
【0018】
医療器具が挿入されているときにシステム内の圧力維持を補助するために、1次シール46の上方(近位)に、開孔部52を画定しているカラーをなす2次シール50(中央に位置していることが望ましい)が取り付けられている。カラーをなす2次シール50は、保持リング56を用いて適所に保持されることができる。カラーをなす2次シール50は、図3に見られるように1次シール46と比べて実質的に平坦であり得るが、この形状は必須ではない。開孔部52は、ほぼ医療器具に合うようにサイズ決定されている。医療器具が挿入されていないとき、カラーをなす2次シール50は閉じたシールを形成せず、開孔部52は開いたままである。開孔部52内に医療器具を挿入すると、開孔部52が医療器具の外周面と接触するときに開孔部52の壁によってシールが形成される。
【0019】
そのため、1次シール及び2次シールは、医療器具が挿入されていないときに互いに異なる静止または「待機」状態を有し、それらの状態は、医療器具が挿入されると逆になる。1次シールの待機状態は通常閉であるが、2次シールの待機状態は通常開である。医療器具が先ず2次シールを通過し、次に1次シールを通過して、ポート密閉カートリッジ内へと挿入されるときに、1次シール及び2次シールは使用中であって待機状態にはなく、1次シールは開であり、2次シールは閉である。
【0020】
図4は、カテーテル55が中に挿入されている状態の、「課題を解決するための手段」に記載のポート密閉カートリッジの図であり、断面図で示されている。図からはっきり分かるように、カラーをなす2次シール50の開孔部52はカテーテル55によって完全に塞がれ、こうしてシールが形成される。1次シール46はこのとき、カテーテル55を受け入れるように開状態にある。
【0021】
ポート密閉カートリッジ40の近位端において無菌環境を維持するのに役立つように、カラーをなす2次シール50の上には、任意選択の、埃よけキャップ(図3及び図4には図示せず)のための保持リング54がある。
【0022】
ポート密閉カートリッジ40は、任意選択で、1次シール46の下方(遠位)にチャンバ48を有し、ここには、医療器具が1次シール46を通して引き抜かれているときに、医療器具の外壁から擦り落とされたかまたは拭き取られた分泌物を蓄積させることができる。医療器具が戻り途中で1次シール46を通過するとき、1次シール46は、離れてゆく医療器具の外壁に付着した分泌物を擦り落とすかまたは拭き取る。医療器具からの分泌物は、医療器具から拭き取られると、本体チャンバ48内において1次シール46の真下に蓄積することになる。ポート密閉カートリッジ40が着脱可能であれば、ポート密閉カートリッジ40を廃棄し、呼吸器システムから分泌物を除去することができ、人工呼吸器関連肺炎のリスクを低減するのに役立つであろう。
【0023】
図5は、ポート密閉カートリッジ40の上端(近位端)41から見た図である。本図には、保持リング56と、使用していない時にポート密閉カートリッジ40の上端を閉じるために用いることができる埃よけカバー60に連結するフォブ(連結部)58とが見える。本図には、カラーをなす2次シール50及び開孔部52も見られる。開孔部52を通して、1次シール46及びスリット47の一部を見ることができる。本図には、グリップディンプル62を備えた本体44も見られる。
【0024】
図6は、ポート密閉カートリッジ40の側面から見た図であり、埃よけカバー60、保持リング56及び本体44が示されている。本図には、ポート密閉カートリッジ40を回転及び保持するのに役立つ任意選択のフィンガーグリップディンプル62も示されている。代わりの形状及びテクスチャが、図5に示したフィンガーグリップディンプル62と同じ目的で用いられることもある。斜めまたは垂直のスロットまたは凸状部分、凹凸のあるバンド、またはポート密閉カートリッジの外周面上の互いに相反する側に1つずつある合計2つの凹部を用いて、同様に指のグリップ性を向上させることもできる。
【0025】
また、図5には、本願と同日出願の同一出願人による同時係属の米国特許出願第12/334,123号(特許文献3)に記載されているようなルアータイプ継手のためのメス継手部分64も見られる。特許文献3は、引用を以て本明細書の一部となす。この出願には、オス継手部分及びメス継手部分を有する新規な迅速継手及びテーパ付き内部ルアータイプシールが記載されている。オス継手部分は、少なくとも1つのボスが設けられている外周面を有する。オス継手部分の外周面上の互いに相反する側に1つずつ、合計2つのボスがあることが望ましいであろう。2つのボスは、異なる長さのものであってよい。メス継手部分は、ボスを挿入することができるスロットを有する。スロットの底部には、ボスの挿入深さを制限するためのストッパ部がある。ここで、オス端部及びメス端部を互いに対して回転させて、ボスをメス端部の窓部内へ移動させることができる。窓部はフレームを有し、上部フレームは、僅かに角度をなしており、オス端部をメス端部内へさらに進入させるのに役立つ。窓部は、ボスの回転運動を止める側部フレームを有する。ボスの動きが止まったとき、オステーパ及びメステーパは、実質的に漏れのない状態で接触している。オス継手部分上のボスは、継手の中心線に直交する面に対して、5〜15°、とりわけ7〜12°、中でも9〜10°の下向きの角度をなしていることが望ましいであろう。オス継手部分及びメス継手部分を互いに対して右回り方向に回転させ、固く締めることができる。約4分の1回転させることが望ましいが、特定の用途ではそれ以上またはそれ以下が望ましいこともある。必要に応じて、左回り方向を用いることもできる。使用時には、オス継手部分のボスは、メス継手のスロット内に挿入されたら、スロットの底部にあるストッパ部と接触する限度までしか進むことができない。ストッパ部は、オス継手及びメス継手のルアーテーパ同士の距離を縮めるかまたは接触させるように、適切な深さに配置される。ボスがスロット内に完全に挿入されたら、ボスが窓部内の適所に入るようにオス継手部分をメス継手に対して一方向にのみ回転させることができる。ボスが窓部に入り、窓部の上部(角度をなす)フレームと接触することで、オス継手部分全体がさらにメス継手部分内へと僅かに動かされる。ボスが窓部の遠方側部フレームと接触すると、動きが止まり、オス継手部分及びメス継手部分のテーパ同士は、完全に係合され、実質的に漏れのない状態で接触している。
【0026】
本明細書に記載及び図示したルアー継手の代わりに、他の迅速継手を用いてもよい。他の迅速継手は、バヨネット継手(差し込み継手)、スナップ継手、ねじ継手、Oリング継手、及びポート密閉カートリッジ40を着脱可能に装着できる任意の他のタイプの継手を含み得る。当然のことながら、望ましくはないが、ポート密閉カートリッジ40をポートに取り外し不能に装着することも可能である。この場合、ポート密閉カートリッジ40を取り外して交換することはできない。
【0027】
ポート密閉カートリッジ内へ、そしてそこから肺内へ挿入され得る医療器具のタイプの例には、気管支鏡及び気管支肺胞(BAL)カテーテルが含まれる。これらの目的のために一般的に用いられる医療器具は、10〜20Fr、とりわけ15〜20Frのものである。1つのタイプの気管支肺胞カテーテルが、キンバリークラーク社の一部門であるバラードメディカルプロダクツ社からBAL CATH(登録商標)という商品名で市販されており、肺の洗浄及びサンプリングに用いることができ、人工呼吸器関連肺炎の診断に役立つ。
【0028】
ポート密閉カートリッジの構成材料は、従来のポリマー材料であってよい。例えば、本体44はやや硬いことが望ましく、医用ポリプロピレンポリマーは、この使用形態において十分に機能することが分かっている。例示的なポリプロピレンは、テキサス州ヒューストンのライオンデルバゼル・インダストリーズ社(Lyondell-Bassel Industries)から入手可能な、自社固有の安定剤を微量に有するProFax PD-626ポリプロピレンホモポリマーである。本体の他の原材料には、ポリエチレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ナイロン及びスチレンが含まれる。
【0029】
1次シール46は、望ましくはミシガン州ミッドランドのLMS社(Liquid Molding Systems Inc.。Aptar Group Inc.の子会社)製の部品番号V43の市販品であり、医用シリコン製であってもよい。1次シール保持リングは、本体と同じ材料から製造することができる。カラーをなす2次シール50も、望ましくは医用シリコン製であってよく、開孔部はほとんどの医療器具に対して直径2〜3mmであるとよい。1次シール及び2次シールは、医療器具が通過できるようなサイズ、すなわち10〜20Fr、とりわけ15〜20Frにするとよい。保持リング54、フォブ58及び埃よけカバー60は、単一の材料であることが望ましく、医用ポリエチレンは、この使用形態において十分に機能することが分かっているが、十分な柔軟性を有する任意の他の材料でも十分であろう。
【0030】
適切なポリエチレンは、セラニーズ社(Celanese Corporation)の事業部門会社であるティコナ・エンジニアリングポリマー社(Ticona Engineering Polymers)から入手可能な超高分子ポリマーGUR(登録商標)−5113−UHMW−PEである。
【0031】
ポート密閉カートリッジの寸法は、ポート密閉カートリッジを装着することが望まれるポートのサイズに応じて様々であり得る。例示的な医療器具寸法は、近位端から遠位端までが20〜25mm、直径は最大部分で15〜20mmである。ポート密閉カートリッジは円形であり得るが、ポート形状に合うように形作ってもよいことにも留意されたい。
【0032】
使用に当たっては、図6に示されているようなルアー継手やバヨネット継手のような迅速継手を用いて、ポート密閉カートリッジを、例えばマルチアクセス・マニホールドまたは他の類似医療器具上のポートに嵌合することができる。埃よけカバーを持ち上げ、気管支鏡、BAL CATH(登録商標)器具または他の医療器具を、カラーをなす2次シールの開孔部から挿入することができる。連携して動作する2つのシールの密閉能力が見られるのはこの点においてである。医療器具がカラーをなす2次シールの開孔部を通過するとき、開孔部の壁は医療器具と接触する。開孔部は、気道内に挿入される医療器具のほとんどがそうであるように、一般的に円形である。カラーをなす2次シールもまた、医療器具がたとえ開孔部より幾分か大きくても過剰な力を加えることなしにカラーをなす2次シールの中を進むことができるように、十分に柔軟である。カラーをなす2次シールはこのようにして医療器具の外壁に接触してシールを形成する。挿入された医療器具は、1次シールを通ってさらに深く移動させることができる。医療器具が1次シールを通過するとき、スリットが開く。スリットが開くと、スリットが提供していた圧力シールは失われる。しかし、2次シールが、システムに対して必要な密閉機能を提供するので、圧力損失は仮にあったとしても最小限である。医療器具が抜去されると、逆の過程をたどり、1次シールは再びシステム圧力を維持するために必要な密閉機能を提供する。このようにして、1次シール及び2次シールは、医療器具が挿入されている間及び抜去されている間に、換気システムに対して順次圧力シールを提供する。ポート密閉カートリッジを装着したポートが気管内チューブと整合していれば、医療器具は、気管内チューブを通って患者の片方の肺内へとさらに深く挿入することができる。医療器具は、患者の気道内で使用し終わった後に、医療器具を挿入するために用いた経路と同じ経路に沿って引き抜くことができる。医療器具が戻り途中で1次シールを通過するとき、1次シールは、離れてゆく医療器具の外壁に付着した分泌物を擦り落とすかまたは拭き取る。医療器具から拭き取られた分泌物は、1次シールの真下で本体チャンバ内に蓄積しやすくなっている。
【0033】
ポート密閉カートリッジから医療器具を完全に抜去した時点で、医療器具をポートに装着していた迅速継手を外すことによってポート密閉カートリッジをポートから取り外すことができる。患者に再導入される見込みがない使用済みのポート密閉カートリッジは、本体チャンバ内に蓄積した分泌物も取り除かれるように、一般に認められた方法で廃棄することができる。新しい未使用ポート密閉カートリッジを次の使用に備えてポートに取り付けることもできる。
【0034】
本明細書に開示されている医療器具の変更形態及び変形形態は、当業者には、前述の詳細な説明から明らかであろう。例えば、上記の説明は、ポート密閉カートリッジ内へのカテーテルの挿入について言及しているが、同様に、適切なサイズのものであれば、カメラや他の視覚装置などの他の医療器具をポート密閉カートリッジ内に挿入することもできる。そのような変更形態及び変形形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポート密閉カートリッジであって、
遠位端及び近位端を有する本体と、
前記遠位端及び近位端の間に位置し、医療器具を通過させるように適合された1次シール及びカラーをなす2次シールとを含み、
前記遠位端が、ポートに装着されるように適合されており、
前記医療器具の挿入時及び抜去時に、前記1次シール及び前記2次シールが、換気システムに対して順次圧力シールを提供するようにしたことを特徴とするポート密閉カートリッジ。
【請求項2】
前記本体が、前記1次シールの遠位に位置するチャンバをさらに含み、該チャンバが、前記ポート密閉カートリッジから前記医療器具が引き抜かれるときに該医療器具から擦り落とされる分泌物を受容するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項3】
前記1次シールが、前記医療器具が挿入されていないときに閉状態にあるようなスリットを画定することを特徴とする請求項2に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項4】
前記2次シールが、前記医療器具が挿入されていないときに開状態にあるような円形開孔部を画定することを特徴とする請求項3に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項5】
前記ポート密閉カートリッジの前記近位端上に、埃よけカバーが設けられていることを特徴とする請求項4に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項6】
ポートに取り外し可能に装着されるように適合されていることを特徴とするポート密閉カートリッジ。
【請求項7】
前記ポート密閉カートリッジが、ルアー継手、バヨネット継手、スナップ継手、ねじ継手及びOリング継手からなる群から選択される継手システムを用いて、ポートに取り外し可能に装着されるように適合されていることを特徴とする請求項6に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項8】
前記本体が、アクリル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ナイロン及びスチレンからなる群から選択されるポリマー製であることを特徴とする請求項1に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項9】
前記1次シールが、シリコーン製であることを特徴とする請求項1に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項10】
使い捨てポート密閉カートリッジであって、
気管内チューブの近位端上で該気管内チューブに接続されているマニホールド上のポートに装着するための迅速継手を有する本体と、
1次シール及び2次シールとを含み、
前記両シールが、順次に配置されており、かつ該両シールを通って挿入される医療器具を受容するように適合されており、
前記医療器具が挿入されているとき、前記1次シールが開状態にありかつ前記2次シールが閉状態にあるようにしたことを特徴とする使い捨てポート密閉カートリッジ。
【請求項11】
前記ポート密閉カートリッジシールが、気管支肺胞機器を受容するように適合されていることを特徴とする請求項10に記載のポート密閉カートリッジ。
【請求項12】
前記本体が、前記医療器具が前記ポート密閉カートリッジから引き抜かれるときに前記医療器具からの分泌物を蓄積するための、前記1次シールの遠位に位置するチャンバをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のポート密閉カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−511376(P2012−511376A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540276(P2011−540276)
【出願日】平成21年11月22日(2009.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055271
【国際公開番号】WO2010/067241
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)