説明

医用画像処理装置、医用画像処理方法および異常検出プログラム

【課題】解剖学的構造の異常を検出する医用画像処理装置を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像処理装置は、健常ボリュームデータと被検体のボリュームデータとを記憶する記憶部と前記被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標を計算する形態的指標計算部と、前記複数種類の形態的指標と前記健常ボリュームデータにおける健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせする位置合わせ部と、前記位置合わせされた被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて計算された形態的相違度を、閾値と比較することにより、前記被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出する異常検出部と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、解剖学的構造の異常を検出する医用画像処理装置、医用画像処理方法、異常検出プログラムと、正常な解剖学的構造を有する統計アトラスを発生する医用画像処理装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な状態の診断または被検体の状態の解析において、ボリュームデータを使用することは、ますます重要になっている。診断は、通常、医師またはその他の訓練を受けた医療従事者による医用画像の再検討を必要とする。しかしながら、医師によるさらなる再検討のために何らかの手段で、異常である可能性がある領域を識別および強調するための自動化された方法、または関心領域を識別および表示するための自動化された方法は、医用画像を再検討する効率および速度を、向上させることができる。これに関連して、様々なコンピュータ支援検出(Computer Aided Detection:以下、CADと呼ぶ)の技術が開発されてきた。
【0003】
CADアルゴリズムは、原発がんおよび転移がんを検出するために、腫瘍学に適用されてきた。CADアルゴリズムは、一般的に、特定の病変を特定のアルゴリズムにより分割および分類させることによって動作する。例えば、CT仮想結腸内視術のためのいくつかの既知のCAD技術は、結腸内腔を分割し、例えば曲率解析を使用して結腸壁上のポリープ状構造を識別する。肺CADに対する技術は、肺を分割することによって開始され、その後、肺小結節を分割および等級付けすることを試みる。マンモグラフィCADに対する技術は、微小石灰化クラスタを探索する。しかしながら、既知の解剖学的特有のCADプロセッサは、異常な症例における訓練を必要とする。この訓練において、異常な症例を獲得するのは難しいことがある。また、このような既知の解剖学的特有のCADプロセッサは、訓練段階において非常に多くの時間および専門家の入力を必要とする。訓練段階は、特定の解剖学的特徴および特定のタイプの異常の訓練に限定される。
【0004】
解剖学的構造、または解剖学的構造における特定の器官に関する複数の解剖図譜(以下、アトラスと呼ぶ)が生成される。生成された複数のアトラスは、被検体に関する医用画像の解析または処理に用いられる。
【0005】
画像データにより特定された特定の解剖学的特徴は、通常、位置合わせ手順により、アトラスに位置整合される。医用画像における特定の解剖学的特徴の位置を、アトラスによって定義された複数の解剖学的特徴に対する標準的な位置に配列するために、リジッド変換または非リジッド変換が医用画像のデータ(以下、画像データとよぶ)に適用される。このようなアトラスおよび位置合わせ手順の使用は、例えば、異なる被検体各々から得られた画像データにおける直接比較を可能にする。
【0006】
既知のアトラスは、複数のボクセルを有する。複数のボクセル各々は、画像強度(画素値)と位置データとを有する。また、複数のボクセル各々は、アトラスにおける複数の特定の解剖学的特徴の位置を示す位置データをさらに有していてもよい。また、アトラスにおける画像強度に関連する他の統計的尺度を有することが、提案されている。
【0007】
ボクセルに基づく形態計測(Voxel Based Morphometric:以下、VBMと呼ぶ)技術は、異なる被検体間の脳構造における違いを比較するために、使用される。位置の関数として生の画像強度をボクセルごとに有するボリュームデータは、アトラスまたは標準的なテンプレートに照合される。VBM技術は、異なる被検体から得られた脳画像間の直接比較を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、解剖学的構造の異常を検出する医用画像処理装置、医用画像処理方法、異常検出プログラムと、正常な解剖学的構造と複数種類の形態的指標に関する統計量とを有する統計アトラスを発生する医用画像処理装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る医用画像処理装置によれば、健常ボリュームデータと被検体のボリュームデータとを記憶する記憶部と、前記被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標を計算する形態的指標計算部と、前記複数種類の形態的指標と前記健常ボリュームデータにおける健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせする位置合わせ部と、前記位置合わせされた被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて計算された形態的相違度を、閾値と比較することにより、前記被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出する異常検出部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態による医用画像処理装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、図1の本実施形態に係り、統計アトラスの生成手順および異常検出手順の概要を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図2における統計アトラスの生成手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施形態に係り、統計アトラスの生成において用いられる複数の健常ボリュームデータセットの重複の概略を示す概略図である。
【図5】図5は、図2における異常検出手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、統計アトラス内の位置(以下、アトラス位置と呼ぶ)でのボクセルについて、上記アトラス位置における正常な解剖学的構造を示す標本点の分布を、選択された閾値(閾値マハラノビス距離)とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態によれば、画像データにおける異常の存在を検出する方法において、被検体の画像を表す画像データセットを取得することと、複数の参照被検体から得られた複数の健常画像データセットを表す統計アトラスを取得することと、画像データを統計アトラスと比較することと、画像データと統計アトラスとの間の差を検出した値を決定することによって、異常の存在を決定することとを含む方法が、提供される。
【0012】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、図1に模式的に示されており、先の段落に記載された方法を実行するように構成されている。医用画像処理装置は、処理装置2、この場合には表示装置4に接続されたパーソナルコンピュータ(Personal Computer:以下、PCと呼ぶ)またはワークステーションと、記憶部6と、1つまたは複数のユーザ入力部8とを有する。入力部8は、コンピュータキーボードおよびマウスを有する。
【0013】
処理装置2は、様々なソフトウェアモジュールまたはその他のソフトウェアコンポーネントをロードおよび実行することができる、中央演算処理装置(Central Procesing Unit:以下、CPUと呼ぶ)10を含む。図1の実施形態において、ソフトウェアモジュールは、画像強度データから画像テクスチャ特徴(形態的指標)を決定するためのテクスチャ特徴モジュール12を有する。ソフトウェアモジュールはまた、画像データをアトラスと照合するための位置合わせモジュール14、正常画像データを含むデータ集合からアトラスを生成するためのアトラス生成モジュール16、および異常検出モジュール18も有する。
【0014】
なお、テクスチャ特徴モジュール12、位置合わせモジュール14、アトラス生成モジュール16、および異常検出モジュール18は、ソフトウェアモジュールの代わりにハードウェアであってもよい。ハードウェアとしてのテクスチャ特徴モジュール18は、被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標(画像テクスチャ特徴)を計算する形態的指標計算部である。ハードウェアとしての位置合わせモジュール14は、位置合わせ部である。ハードウェアとしてのアトラス生成モジュール16は、健常ボリュームデータ発生部である。ハードウェアとしての異常検出モジュール18は、被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出する異常検出部である。
【0015】
処理装置2は、ハードディスクドライブも含む。図1の実施形態において、ハードディスクドライブは、位置合わせプロセスにおいて使用される統計アトラス(解剖図譜)を記憶する。
【0016】
処理装置2は、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:以下、RAMと呼ぶ)、リードオンリーメモリ(Read−Only Memory:以下、ROMと呼ぶ)、データバス、様々なデバイスドライバを含むオペレーティングシステム、および様々な周辺機器と接続するためのハードウェア装置(例えばグラフィックカード)を含む、PCのその他の標準構成要素を含む。このような標準構成要素は、明確さのため、図1には示されていない。
【0017】
図1の実施形態における記憶部6は、例えば被検体に対するコンピュータ断層撮影装置(Computed Tomography Scanner:CTスキャナと呼ぶ)から得られた三次元CT値データを表すボリュームデータなどの多数の異なるボリュームデータを保存するデータベースを有する。動作時に、選択されたボリュームデータ7が、処理のためにサーバから処理装置2にダウンロードされる。図1の実施形態における記憶部6は、大量の被検体に関するボリュームデータを記憶するサーバであり、医用画像保管通信システム(Picture Archiving Communication System:以下、PACSと呼ぶ)の一部分を形成してもよい。別の実施形態において、ボリュームデータ7は、サーバからダウンロードされるよりむしろ処理装置2のメモリ内に記憶されてもよい。
【0018】
図1の医用画像処理装置は、図2のフローチャートに概観的に示されるような、一連の処理手順を実行するように構成されている。第1ステージS1において、処理装置2は記憶部6から、複数の参照被検体から得られた複数の参照ボリュームデータセットを取得する。参照ボリュームデータセットは、位置の関数として画像強度(画素値)を有するボクセル(または画素)を有する。参照ボリュームデータセット各々は、正常な被検体の解剖学的構造による画像データを表している。また、参照ボリュームデータセット各々は、正常な被検体の解剖学的構造による画像データを表示するために処理装置2によって処理される。参照ボリュームデータセット各々は、その後、各ボクセルに関連づけられた複数の画像テクスチャ特徴(形態的指標)を計算するためにステージS2においてテクスチャ特徴モジュール12によって処理される。そして、参照ボリュームデータセット各々は、計算された複数の画像テクスチャ特徴を含むように更新される。次のステージS3において、アトラス生成モジュール16、および位置合わせモジュール14は協働して、複数の参照ボリュームデータセットから正常な被検体の解剖学的構造を表す統計アトラスを生成する。
【0019】
参照ボリュームデータセットとは、正常な解剖学的構造を有するボリュームデータセットである。統計アトラスとは、例えば、位置合わせされた参照ボリュームデータセットにおいて、複数種類各々の形態的指標(画像テクスチャ特徴)の平均値と、複数種類の形態的指標に関する相関値(共分散行列)と、正常な解剖学的構造に関するボクセル値とを、ボクセルごとに有する健常ボリュームデータである。
【0020】
統計アトラスはその後、被検体から得られたボリュームデータ(以下、被検体ボリュームデータと呼ぶ)における形態的異常(以下、異常と呼ぶ)の存在を検出するために使用されることが可能である。このとき、次のステージS4において、被検体から得られた被検体ボリュームデータが、処理装置2によって記憶部6から取得される。または、被検体から得られた被検体ボリュームデータは、例えばCTスキャナ(図1には図示せず)などの撮像装置から直接、取得される。次に、ステージS5で、テクスチャ特徴モジュール12は、被検体ボリュームデータの各ボクセルに関連づけられた画像テクスチャ特徴を計算する。被検体ボリュームデータは、計算された画像テクスチャ特徴を含むように更新される。次のステージS6において、異常検出モジュール18および位置合わせモジュール14は協働して、被検体ボリュームデータを統計アトラスに位置合わせする。異常検出モジュール18はその後、ステージS7において、選択された異常の尤度(または閾値)よりも大きい値を有するいかなるボクセルも検出するために、被検体ボリュームデータを統計アトラスと比較する。最後に、ステージS8において、処理装置2は、異常であるとして検出されたボクセルを強調して、被検体ボリュームデータに関する医用画像を表示する。
【0021】
図1の実施形態において、統計アトラスの生成およびこれに続く被検体ボリュームデータにおける異常の検出の両方において、特定のプロセスが実行される。これらのプロセスは、以下を含む:
1.画像テクスチャ特徴の計算(複数種類の形態的指標の計算)
2.患者間位置合わせ(ボリュームデータ間の位置合わせ)
3.多変量ガウス分布に基づく確率的(統計的)距離の計算。
【0022】
ここで図2に示されるプロセスの各ステージが、より詳細に検討される。統計アトラスの生成に関するステージは、訓練ステージまたは訓練段階とも称される。訓練段階の外観をより詳細に示すフローチャートが、図3に提供されている。
【0023】
第1ステージS1において、複数の参照ボリュームデータセットが取得される。モダリティおよび解剖学的関心領域が選択される。正常な複数の参照体からの十分な数N(例えばN=100)の参照ボリュームデータセットが、選択されて、記憶部6から取得される。
【0024】
X線量の影響を有するCTスキャナなどのモダリティにおいて、完全に正常なボリュームデータセットを見つけることは困難である。そのため、訓練に使用されるボリュームデータセットが異常な領域を有する可能性がある。従って、ボリュームデータセットは、熟練者による精査により異常領域が排除されるため、正常な解剖学的構造を表すボリュームデータのみとしてもよい。この場合、選択された異常領域は統計アトラスの生成には使用されないため、異常領域の正確な切り出しは必要とされない。多くの場合、統計アトラスを生成するための動機の下で、被検体の全体積をカバーする参照ボリュームデータセットは存在しない。通常は、選択された異なる参照ボリュームデータセット21a、21b、21c、21d、21e、21fが使用される。これらの異なる参照ボリュームデータセット各々は全体積の1部のみをカバーするが、図4に模式的に示されるように、全体として全体積をカバーする。
【0025】
次のステージS2において、参照ボリュームデータセット各々の各ボクセルについて、テクスチャ特徴モジュール12によってテクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)が計算される。例えば、様々なテクスチャ状の特徴が、各ボクセルの局所近傍における画像値に基づいて計算されることが可能である。可能性のある特徴は、以下を含む(ただしこれらに限定されない):
・複数のスケールでの勾配の大きさ
(ボクセル各々の複数スケールでの近傍領域の複数のボクセルによる勾配の大きさ)
・複数のスケールでの勾配ベクトル(例えばx、y、z勾配成分)
・共起行列からの統計量
・例えばハールテクスチャ特徴などの各ボクセル近傍における強度のウェーブレット変換に基づく特徴。
【0026】
画像テクスチャ特徴は、入力された複数の参照ボリュームデータセットに対して、直接計算されることが可能である。一般的に、画像テクスチャ特徴は、N個の参照ボリュームデータセット各々について異なるスケール(mm/画素)となる。このため、画像テクスチャ特徴に関する空間パラメータ(勾配を計算するために使用されるガウスカーネルサイズなど)は、画素単位ではなくミリメートル単位で指定されることが、重要である。
【0027】
使用可能な数十の可能な画像テクスチャ特徴またはその他の使用可能な画像特徴が存在する。特定のデータセットまたは解剖学的構造に対する異常検出、または統計アトラスの生成に最も適した画像テクスチャ特徴は、以下により詳細に論じられるように選択されてもよい。前述の解析において、M個の画像テクスチャ特徴またはその他の特徴が、各ボクセルに提供される。このため、参照ボリュームデータセット各々nにおける各ボクセルiについて、画像テクスチャ特徴ベクトル(以下、特徴ベクトルと呼ぶ)xn,iが計算され、各特徴ベクトルはサイズM(M個の成分)を有する。
【0028】
次のステージS3において、統計アトラスは、複数の参照ボリュームデータセットから生成される。参照ボリュームデータセットは、訓練データセットとも称される。統計アトラスを生成するために、N個の参照ボリュームデータセットが、相互に位置整合される(リジッドおよび非リジッド位置合わせによって)。
【0029】
多数の特徴(例えば画像テクスチャ特徴)が、各ボクセルiにおいて利用可能である。統計アトラスは、各々のボクセルiにおいて、M×1平均ベクトルμおよびM×M共分散行列Σを維持する。M×1平均ベクトルμおよびM×M共分散行列Σは、N個のサンプルから推定される。N個のサンプルは、そのアトラス位置(統計アトラス内の位置)で(リジッドおよび非リジッド位置合わせによって)相互に整列される。参照ボリュームセットによって覆われるボリューム全体が、このポイントにおいて重複するとは限らず、および/または、いくつかのボクセルが異常として隠されるかもしれないため、ある場合において、NはN(訓練ボリューム(参照ボリュームデータセット)の総数)より小さくてもよい。Nが小さいとき、例えば、N<Mの場合には、Σは非正則なために不可逆である可能性がある。これが起こると、共分散重み付けを使用することが可能である。または、Σを全体積(参照ボリュームデータセットにより覆われる全体積)にわたって推定されたΣglobalに置き換えることが可能となる。このため、整合されたボリューム(位置合わせされた参照ボリュームデータセット)における画像テクスチャ特徴の多変量ガウスモデルは、各アトラスボクセル(統計アトラスにおける複数のボクセル各々)に対して維持される。
【0030】
平均ベクトルと共分散行列と(統計的特徴量)は、統計アトラスにおけるボクセル各々について計算される。具体的には、複数の参照ボリュームデータセットにおいて、統計アトラスにおけるボクセルiと同位置の複数のボクセルにおける画像テクスチャ特徴各々について平均値が計算される。これにより、ボクセルiについて、M個の画像テクスチャ特徴の平均値が、M×1の平均ベクトルμとして、ボクセルiに記憶される。ボクセルiにおけるM個のテクスチャ特徴に基づいて、M×M共分散行列Σが計算される。
【0031】
統計アトラスを生成するために、N個の参照ボリュームデータセットは、相互に位置合わせしなければならない。すなわち、各参照ボリュームデータセットk、k=1…Nについて、共通のアトラス座標系にkの座標をマッピングするための変換Tk、Tk:R→Rが計算される。この変換を実現するために、リジッドおよび非リジッド位置合わせを含む多くの方法が存在する。いずれの適切な方法が使用されてもよいが、変換を決定するために、ここでは2つの変形例の方法について概説する。変換Tkは、3次元実空間から3次元実空間への写像(R→R)に対応する。
【0032】
統計アトラスSを漸次的に生成するために、第1の変形例の方法は、各参照ボリュームデータセットを反復的に位置合わせさせる方法である。この方法は、2つのループを有する。第1ループにおいて、統計アトラスSは、開始点として、複数の参照データセットのうちのいずれか1つkに一致させて使用される。他の参照データセット各々は、順に統計アトラスに位置合わせされる。参照データセット各々が統計アトラスに位置合わせされた後、統計アトラスは、この変換された参照ボリュームデータセットを含んで更新される。図2の実施形態において、統計アトラスは、上述したように、位置合わせされた参照ボリュームデータセットから推測されたM×1平均ベクトルμおよびM×M共分散行列Σを、各ボクセルにおいて維持する。平均ベクトルおよび共分散行列に寄与する参照ボリュームデータセットの数は1つずつ増加し、最終的にはすべての参照ボリュームデータセットが位置合わせされてアトラスSに含まれる。第1ループは、以下のように表すことができる:
S=k
n=2からNについて
←KをSに位置合わせ
S←Tn(K)をSに追加
換言すると、第1ループにおいて、ループの開始点における統計アトラスとして、複数の参照ボリュームデータセットのうちのいずれか1つ(k)が選択される。次いで、他の複数の参照ボリュームデータのうち一つ(k)が、統計アトラスkに位置合わせされる。この位置合わせにより、kをS(k)にマッピングするための変換Tが決定される。変換Tを用いて、kがS(k)にマッピングされ、S(k)にkが加えられる。これにより、S(k)がS(k)に更新される。この時、S(k)における複数のボクセル各々について、M×1平均ベクトルμ、M×M共分散行列Σおよび統計アトラスS(k)のボクセル値が更新される。第1ループでは、位置合わせ及び統計アトラスSの更新に係る処理がN−1回繰り返される。なお、変換Tは、例えば、参照ボリュームデータにおけるボクセル単位ではなく、参照体に関するスケール(例えばmm)単位で、決定される。これにより、複数の参照ボリュームデータセット各々において、参照体に対する縮尺が異なっていても、位置合わせが可能となる。
【0033】
この後、複数の参照ボリュームデータセット各々kが第1ループを使用して生成された統計アトラスSに再び位置合わせるという第2ループが実行される。そして、複数の参照ボリュームデータセット各々kに対して、統計アトラスSは、変換された参照ボリュームデータセットを用いて更新される。第1ループにおいて、参照ボリュームデータセットを統計アトラスSにマッピングすることにより統計アトラスSを更新するため、統計アトラスへ参照ボリュームデータをマッピングするための変換は、ほとんどの場合、第1ループにおける変換とわずかに異なる。第2ループは、以下のように表すことができる:
n=1からNについて
←KをSに位置合わせ
S←SにおけるTn(K)を置き換え
第2ループは、所望であれば、例えば、統計アトラスが許容可能なレベルの変動内に収束するまで、数回繰り返されてもよい。
【0034】
換言すると、第2ループは、以下で説明する手順を、複数の参照ボリュームデータセットの数について実行される。なお、第2ループの繰り返しは、例えば、Sに追加された(K)を第2ループで新たに決定されたTn(K)に置き換えることによる統計アトラスの変動幅が所定の変動幅に収束するまで、繰り返されてもよい。第2ループは、第1ループにより生成された統計アトラスSに対して、複数の参照ボリュームデータセットを再度位置合わせする。再度位置合わせすることにより、参照ボリュームデータセットkを統計アトラスSにマッピングするための変換Tが決定される。統計アトラスSに含まれるkは、参照ボリュームデータセットkを変換したT(k)に置き換えられる。この置き換えは、すべての参照ボリュームデータセットk(i=1…N)について実行される。
【0035】
図2の実施形態において、統計アトラスへの参照ボリュームデータセットの位置合わせは、マハラノビス距離(形態的相違度)を最小化することによって、最尤法の枠組みで実行される。統計アトラスSに関する参照ボリュームデータセットの候補となるどんな位置合わせに対しても、平均ベクトルおよび共分散行列に基づいて、ボクセル各々でマハラノビス距離を計算することは可能である:
=((x−μ)’Σ−1(x−μ))1/2
ここでxは浮動ボリュームデータセット(位置合わせされる参照ボリュームデータセット)のボクセルiにおける特徴ベクトルである。
【0036】
特徴ベクトルとは、形態的指標計算部(テクスチャ特徴モジュール18)で計算される複数種類の形態的特徴を成分とするベクトルである。
【0037】
直感的に、Dは、統計アトラスにおいて参照されるサンプルとxが統計的にどれほど異なっているかを表す。Dは、類似性測度(形態的相違度)を形成する。一変量の場合(M=1)、Dは、平均値からの標準偏差の数まで減少する。
【0038】
いずれの類似性方法が使用されても、図2の実施形態による位置合わせは、リジッド位置合わせステージと、それに続く非リジッド位置合わせステージとを含む。リジッド位置合わせは、9つのリジッド変換パラメータ(3つの並進、3つの尺度(scales)、3つの回転)を前提として、ボクセルごとの平均的な類似性を最適化することを伴う。図2の実施形態ではパウエル最小化が使用されるが、代替実施形態ではいずれの適切な最適化が使用されることも可能である。
【0039】
換言すると、例えば、参照ボリュームデータにおける複数のボクセル各々の特徴ベクトルと、統計アトラスにおける複数のボクセル各々の平均ベクトルおよび共分散行列とに基づいて、マハラノビス距離が計算される。マハラノビス距離が最小となるように、参照体の実体スケール(例えばmmなど)に合わせたリジッド変換のパラメータが決定される。
【0040】
非リジッド段階は、類似性測度の局所的な最適化を必要とする。図2の実施形態では、2003年のWR Crumらによるコンピュータ・サイエンスの講義ノート、非リジッド位置合わせにおける情報理論的類似性測度(Information Theoretic Similarity Measures in Non-Rigid Registration)に記載されるものと類似の密度場枠組が使用される。要するに、湾曲場上の「力」が類似性測度における勾配から計算される。勾配は中心差分によって、数値的に計算される。湾曲場の正規化は、平滑化された累積湾曲場に加えられる前に力場に適用されるガウス平滑化関数によって達成される。このプロセスは、収束するまで繰り返される。平滑化の2つのステージはそれぞれ、湾曲場の複雑さにおいて、「粘性流体」および「弾性体」拘束条件の形態を実現し、不可逆的であることを保証する。
【0041】
正常な解剖学的構造を表す統計アトラスSを用いての異常の検出における使用を検討する前に、統計アトラスSを生成する代替方法が記載される。
【0042】
統計アトラスSを構築する代替方法は、より従来型の位置合わせ手法を使用する。繰り返しになるが、M個の特徴(例えば画像テクスチャ特徴)が各ボクセルで利用可能であると仮定する。N個の参照ボリュームデータセットのうちの1つが基準として選択される。残りのN−1個の参照ボリュームデータセットは、得られたモダリティに関する患者間位置合わせに適したいずれかの位置合わせ戦略を使用して、それぞれ基準と位置合わせされる。これは通常、リジッド位置合わせ段階(並進、尺度(scale)、および回転)および非リジッド位置合わせ段階を伴うことになる。位置合わせ手順の間に最適化される測度(類似性測度、形態的相違度)を決定するために、相互情報技術が使用される。
【0043】
相互情報(Mutual Information:以下、MIと呼ぶ)は一般的に、ジョイントヒストグラムを介して計算される。しかしながら、MIは、ここ(画像テクスチャ特徴)のような多変数の入力が必要なため、実用的ではない。従って、共分散法によるMIに関するより計算しやすく便利な類似性(類似性測度、形態的相違度)が使用される。
【0044】
上記のMI法は統計アトラスSを決定する代替方法を提供するが、マハラノビス距離による統計アトラスSへの位置合わせに基づく第1の方法は、実際にはMI法と比較して付加的な利点を提供できることが見出されている。
【0045】
例えば、MIは被検体のボリューム全体にわたってまとめて計算されるため、MIは異なる解剖学的構造における強度関係の変動に鈍感である。一方、マハラノビス距離法はこのような変動に敏感である。加えて、MI法は、選択された基準となる参照ボリュームデータセットによって占められるボリュームの領域においてのみ、正確な変換(例えば、リジッドおよび非リジッド段階の両方を含む)を導出することが可能である。MI法では、すべての利用可能な参照ボリュームデータセットの結合をカバーする十分な大きな参照ボリュームデータセットを見つけることはできない可能性がある。対照的に、マハラノビス距離法は、参照ボリュームデータセットによって示されるすべての領域にわたって正確な変換を提供することができる。さらに、MI法では、基準用に使用するための参照ボリュームデータセットの任意の選択が必要となる。
【0046】
どちらの統計アトラス生成方法が使用されるかに関わらず、訓練段階の最終ステージは、最大N個の利用可能な参照ボリュームデータセットに基づいて、統計アトラスの各ボクセルに対して、平均ベクトルμおよび逆共分散行列Σ−1を得ることを有する。マハラノビス距離法の最小化を伴う方法のさらなる利点は、平均ベクトルおよび逆共分散行列が統計アトラス生成方法の1部分としてすでに取得されているおり、従って、場合によっては計算負荷および処理時間を削減することができる。対照的に、MI法では、平均ベクトルおよび共分散行列を計算するために、さらに重要な処理ステップが要求される。
【0047】
統計アトラスSはその後、いずれの所望の目的にも使用されてもよい。例えば、統計アトラスSまたは統計アトラスSからいずれかの選択された参照ボリュームデータは、所望であれば、ユーザに対して表示されてもよい。統計アトラスSは、多数の参照被検体から決定された正常な解剖学的構造を表し、正常な解剖学的構造のために関する画像強度データ、様々な画像テクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)、および被検体間の上記強度または画像テクスチャ特徴の分散も表す。したがって、統計アトラスSは、様々な診断目的、基準としての使用、あるいは医療またはその他の医療従事者の訓練のために役立つ可能性がある。
【0048】
正常な解剖学的構造を表す統計アトラスSに対する特に有益な使用の1つは、図2に関連して先に簡単に記載されたように、患者またはその他の被検体から得られた被検体ボリュームデータにおける異常の検出にある。このような異常検出のさらなる記載が、ここで提供される。検出段階を模式的により詳細に示すフローチャートが、図5に提供される。
【0049】
検出段階の第1ステージS4において、被検体から被検体ボリュームデータが取得され、ステージS5において、テクスチャ特徴モジュール12が、被検体ボリュームデータの各ボクセルについて、画像テクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)を計算する。統計アトラスSの生成のため、参照ボリュームデータセットに対して計算されたのと同じ画像テクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)が計算される。被検体ボリュームデータはその後、計算された画像テクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)を有するように更新される。
【0050】
次のステージS6において、被検体ボリュームデータが統計アトラスSに位置合わせされる。位置合わせプロセスは、位置合わせモジュール14によって実行される。位置合わせプロセスは、リジッドおよび非リジッド位置合わせ段階を有する。位置合わせプロセスは、再び、位置合わせされたボクセル各々について、被検体ボリュームデータにおける複数のボクセルと、統計アトラスSにおける複数のボクセルとの間におけるマハラノビス距離の最小化に基づいている。被検体ボリュームデータを統計アトラスSに位置合わせするための位置合わせプロセスは、統計アトラスSの生成中に個々の参照ボリュームデータセットを統計アトラスSに位置合わせするために使用されたのと同じ、または類似である。
【0051】
位置合わせプロセスは、被検体ボリュームデータにより示されたボリュームにおける座標jを、対応するアトラス座標系のアトラス座標iにマッピングする変換T:R→Rに帰着する。変換Tは、3次元実空間から3次元実空間への写像(R→R)に対応する。
【0052】
次のステーS7では、異常検出モジュール18は、異常であることに関する選択された尤度(閾値)よりも大きいいかなるボクセルも検出するために、位置合わせされた被検体ボリュームデータを統計アトラスSと比較する。異常検出ステージS7は、以下のような一連のプロセスを含む:
被検体ボリュームデータにおける各ボクセルjについて:
(a)アトラス空間(アトラス座標系)において対応するポイントi=T(j)を同定し、平均ベクトルμおよび共分散行列Σ−1を選択する;
(b)xと、μおよびΣ−1によって表される分布との間のマハラノビス距離Dを決定する;
(c)これ(決定されたマハラノビス距離)が見られる確率、またはより類似しない観測(あるいは異常値の確率を参照して)を決定する;
(d)ボクセル(ポイント)に対する異常値の確率が選択された閾値よりも大きいか否かを決定する。異常値の確率が閾値よりも大きい場合には、(被検体ボリュームデータにおける)ボクセルは可能性のある異常を表すように示される。
【0053】
図2の実施形態において、各ポイントの異常値の確率は、ホテリングのT統計を用いて決定される。ホテリングのT統計は、一変量t検定の多次元的な一般化である。十分に大きいサンプルから推定された分布に対して単一のM次元サンプルを検定する場合には、マハラノビス距離の自乗Dに関して、自由度Mを有するχ関数まで減少する。このためマハラノビス距離に対する閾値は、特定のMおよび選択された偽陽性動作閾値(False positive operating threshold)に設定されてもよい。偽陽性動作閾値は、いくつかの実施形態において、操作者によって選択される。
【0054】
高い偽陽性動作閾値が選択されると、可能性のある異常を表すより多くのポイントがプロセスによって検出される可能性がある。しかし、これらのうちのいくつかが実際には異常を表していないという可能性がより大きくなる。低い偽陽性動作閾値が選択されると、可能性のある異常を表すより少ないポイントがプロセスによって検出される可能性がある。しかし、すべてのポイントが実際に異常を表すという可能性がより大きくなる。
【0055】
選択された閾値は、図6に示されるように「正常」を表す特徴空間に、楕円形状を定義する。図6は、ひとつのアトラス位置に対する特徴空間を示す。アトラス位置で正常な解剖学的構造を表す複数の参照ボリュームデータセットからのサンプルポイントは、+の印で示されている。点線は、選択された閾値Dが等しいマハラノビス距離の等値線を示している。被検体ボリュームデータにおいてアトラス位置に対応するボクセルにおいて計算された特徴ベクトルは、Xで示されている。この場合、ポイントXは、選択された閾値マハラノビス距離Dよりも大きいマハラノビス距離Dを有することがわかり、したがって、このアトラス位置に対応する被検体ボリュームデータにおけるボクセルは、異常を表す潜在的可能性として識別される。
【0056】
特徴空間とは、統計アトラスSにおける複数のボクセルにそれぞれ対応する複数の参照ボリュームデータセットにおける複数のボクセルにおける画像テクスチャ特徴(複数種類の形態的指標)の分布を、画像テクスチャ特徴(形態的指標)に関するパラメータ(主成分分析による直交するパラメータ)の値を軸として表した分布空間である。例えば、画像テクスチャ特徴がMの場合、特徴空間はM次元空間となる。図6は、画像テクスチャ特徴(形態的指標)の項目が、2種類の場合(f1、f2)の特徴空間を示している。なお、特徴空間の軸として、画像テクスチャ特徴(形態的指標)各々の値としてもよい。
【0057】
プロセス(a)から(d)は、被検体ボリュームデータにおける各ボクセルに対して繰り返され、その結果、異常を表す潜在的可能性として検出されたボクセルの集合を生じる。検出されたボクセルは、アトラス空間において分断された領域を形成する。いくつかの実施形態において、例えば素集合アルゴリズム(disjoint sets algorithm)またはその他の適切な方法を使用して、連結成分解析が実行される。あるいは、孤立したボクセルからの応答を抑制するために、マルコフ平滑化(Markov smoothing)が適用される。この結果、ゼロ以上の異常の候補領域が生じる。ユーザのオプションとして、複数の点に関して、ユーザにより定義された閾値より小さい閾値を有する領域が抑制されてもよい。
【0058】
異常の候補領域は、逆変換T−1を適用することによって、被検体ボリュームデータの空間に戻るようマッピングされる。被検体ボリュームデータはその後、異常を表している可能性があることを示すいくつかのボクセルに関連づけられた標識で更新される。
【0059】
被検体ボリュームデータはその後操作者に対して表示されてもよい。異常を表すと特定された箇所が、ユーザに対して強調表示されてもよい。異常の箇所を強調表示するいずれの適切な方法も使用可能である。例えば、異常箇所は他の箇所とは異なる色(例えば赤)、あるいは他の箇所より明るい色で表示されてもよく、または異常領域の周りに線が引かれてもよい。1つの動作モードにおいて、候補となる異常領域(以下、異常候補領域と呼ぶ)は、矩形で囲まれた候補領域を有する関連2次元画像に対してスクロールすることによって、領域内のサイズまたは合計マハラノビス距離の順番で(大きい順に)、ユーザに対して示される。その他いずれかの適切な表示方法が使用されてもよい。
【0060】
一実施形態において、スライダを有するオペレータインターフェースが提供される。スライダは、偽陽性動作閾値を選択するために操作者により用いられてもよい。被検体ボリュームデータは表示される。より低いまたはより高い閾値を選択するために、操作者がスライダを摺動させると、異常候補領域を示すように、より多くのまたは少ない箇所が表示画像上で強調される。これは、操作者が偽陽性率を制御し、異常に関する潜在的な領域を表示するという特に有益な方法を提供することができる。
【0061】
上述した実施形態は、医療データベースにおいて、ボクセルレベルで、異常に関する広範な範囲を同定することができる。上述した実施形態は、画像テクスチャ特徴、患者間位置合わせ、および確率的距離測度に基づいたコンピュータ支援検出(CAD)の形態を提供する。選択された画像診断法および解剖学的領域(全身の可能性もある)に対して、本実施形態は、異常である可能性が高い接続されたボクセルを何らかの方法で強調することができる。システムは全自動式であり、現在のハードウェア上の典型的なデータセットに対して、本実施形態における処理は、合理的に数分かかる可能性がある。記載されている実施形態に関する方法における特定の値は、検出可能な異常の一般性に関するものである。本実施形態において、訓練用の参照ボリュームデータセットのみが要求される。実施形態は、CAD問題を検討する手法を、正常分布からの異常値の検出の1つとして捉える。これは監視されないパターン認識問題となるために、特定のグラウンドトルース(ground truth)を用いず、参照ボリュームデータセットのみが必要とされる。したがって、正常な解剖学的構造を表すボリュームデータセットを選択するのとは異なり、訓練段階の間に専門家の入力が必要とされるとしても、わずかである。
【0062】
記載されている実施形態の強みは、事実上、特に各解剖学的領域のために分類器が訓練されることである。解剖学的構造各々は、複数の構造のエッジまたは表面を有する。解剖学的構造各々は、一般的には大きく異なる画像テクスチャ特徴を有する。それは、位置合わせアルゴリズムが有効である場合のみである。身体における非常に複雑かつ重要な部位(腸など)において、位置合わせはより不確実であるかもしれない。しかしながら、方法のさらなる強みは、これらの領域におけるその感度に自然に適応(減少)し、この特異度を一定に維持することである。即ち、位置合わせが不正確な箇所(腸、または小血管など)ではアトラス空間への対応は無秩序状態となる。従って、計算された分布は大きな広がりを有するため見落としが多くなり感度が低下するが、計算されたマハラノビス距離は一般的に小さくなり、したがって偽陽性信号(偽陽性率)は他の箇所よりも高くならないため特異度は維持される。
【0063】
特異度は閾値によって制御されることが可能であり、原則的に、少なくとも閾値は特異度に直接関連している。従って、特異度は閾値の設定に拠るためと言うより、較正の出来ない尺度と言える。一方、いずれか特定の病変に関する感度は、いずれのCADシステムに関しても、グラウンドトルースに対する適切な試験によってのみ決定されてもよい。このため、特異度は設定することはできるが、感度は未知のグラウンドトルースと逆相関となるため変化する。位置合わせアルゴリズム、または画像テクスチャ特徴の計算が改善すると、感度は、与えられた特異度の設定に対して(再訓練を続けることにより)改善する。
【0064】
ある特定の解剖学的特徴に特化し、および訓練を受けた医療従事者の協力によるこの特定の解剖学的特徴(例えば、心臓、肝臓、腎臓)に対する異常データについての訓練用集合(参照ボリュームデータセット)に基づくいくつかの既知の解剖学固有の教師付きアルゴリズムは、この特定の特徴に関する異常の有無の検出において、最終的にはより正確となる可能性がある。しかしながら、記載されている実施形態に関する特別の強みは、いずれのタイプの解剖学的特徴においても多くの異なるタイプの異常を迅速に検出し、患者または画像データ(被検体ボリュームデータ)に対してさらなる注意的または診断的分析を必要としていることを示すことが可能であることにある。必要であれば、さらなる解剖学特有の教師付きアルゴリズムは、記載されている実施形態によって異常の可能性を表していると示されたデータについて選択された部分に適用されてもよい。
【0065】
本実施形態における方法は、また、偶発的な所見を報告するための補助としても利用可能である。例えば、CTまたはその他のスキャンが例えば被検体の解剖学的構造の特定部位を詳細に見るためなどの別の目的で被検体に対して実行されている場合、取得された画像データ(被検体ボリュームデータ)は、画像データ中に何らかの異常が存在するか否かを判断するために、習慣的な背景確認として、統計アトラスと比較されてもよい。方法は、例えば外傷画像診断、または心臓専門医によって行われるCT冠動脈造影などの画像データを最初に再検討するのが放射線医ではない状況において、使用されてもよい。
【0066】
記載されている実施形態を使用して正確に検出されることが可能な異常の例としては、動脈瘤、大動脈の石灰化または高度狭窄、肺、肝臓、または脳の高悪性度腫瘍、いくつかの先天性異常、先の手術の箇所(例えば切除された腎臓)、重篤な骨折、器官萎縮(例えば脳の)およびその他の慢性疾患の進行の兆候(例えば骨変性、左心室不全による心肥大)、または複雑かつ広範な画像所見を用いた疾患経過の鑑別診断の要素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
方法は、各ボクセルについていくつかの特徴の決定を必要とし、これに対して多変量解析が実行される。上述のように、例えば数十の画像テクスチャ特徴などの使用可能な多くの可能性のある特徴が存在する。保管効率のため、およびより重要なことは統計的な過剰適合を回避するために、限られた数の特徴(形態的指標)が使用される。特徴選択は原則的に、参照となる統計アトラスにおける複数のボクセル各々(以下、参照アトラスボクセルと呼ぶ)について独立して実行されてもよい。しかしながら、効率性のため、通常は同じ特徴集合(画像テクスチャ特徴、複数種類の形態的指標)が、統計アトラスにおける複数のボクセル各々について使用される。これにより、各ボクセルの特徴識別子を保存する必要性が回避され、特徴の効率的な計算が可能になる。
【0068】
M×1平均ベクトルおよびM×M(左右対称)共分散行列を計算するために最大N個の参照ボリュームデータセットが用いられているため、ボクセル当たりM+M(M+1)/2個のパラメータ(形態的指標)を有する。例えば、M=4の場合、これは14個の特徴となるので、信頼できる予測にはおよそ150個のサンプルが必要となる(経験則にしたがって、または予測された各パラメータについて10個のサンプル)。特徴選択は、よく研究された主題である。このケースでは、解剖学的箇所、ひいては病変を識別するために最大の力を有するように、統計アトラスにおける複数のボクセル間の統計的重複を最小化するように特徴を選択することが望ましい。
【0069】
特徴選択の代替は、多数Lの特徴を計算し、その後主成分分析によってM個の直交する特徴まで次元を減少させることである。これは、M×L射影行列が各基準アトラスボクセルのために保管されることを必要とする。すべてのL個の特徴は使用時に計算されなければならないので、計算時間がかかるが、場合により、さらなる正確さまたは感度が得られる可能性がある。
【0070】
すべての訓練されたアルゴリズムと同様に、訓練および使用されるデータが限定されるほど、精度が向上する。このため、統計アトラスは、性別、年齢層、または民族性に特化されてもよい。訓練データ集合(参照ボリュームデータセット)および患者画像データ集合(被検体ボリュームデータ)が同じスキャナモデルを使用してすべて得られるような、特定のスキャナモデルへの特化もまた、有益である可能性がある。訓練プロセスは自動であり、正常データ集合(参照ボリュームデータセット)のみが必要とされ、したがってこのような特化が有益である。特化されるメタパラメータの選択は、実行時間に操作者によって行われることが可能である。しかしながら、実現される統計的偏りの減少と、小型化された訓練集合(参照ボリュームデータセット)から生じる偏差の増加(過剰適合)との間には、二律背反がある。
【0071】
メタデータが順序値(ordinal value)(年齢または体重など)であるとき、これらはデータ集合のすべてのボクセルに共通な、付加的特徴として組み込まれ、こうして離散部分集合を形成する必要性を回避する。
【0072】
統計アトラスに寄与するN個の参照ボリュームデータセット各々は、通常は、異なる解剖学的領域をカバーし、異なる空間尺スケールで取得される。さらに、(参照ボリュームデータセットにおける)ボクセルは、通常は立方体ではない。このため、統計アトラスが保管される明確な解像度はない。統計アトラスの尺度(すなわち解像度)を選ぶ際には、必要とされるデータストレージの用量、および過剰適合の危険性を考慮する必要がある。
【0073】
M個の特徴が(主成分分析を使用するのではなく)明確に選択されると仮定すると、平均ベクトルおよび逆共分散行列は、統計アトラス内の各ボクセルのために保存される必要がある。検討されている解剖学的領域は、例えば300mm×300mm×300mmをカバーしてもよい。例えば5mmのアトラス解像度は60=216,000個のアトラスボクセルを生じるが、これは扱いやすい。典型的なデータ集合(参照ボリュームデータセット)は、例えばボクセル当たり1mmの解像度で取得されてもよい。N=100個の参照ボリュームデータセットを有する場合には、各アトラスボクセルに寄与する最大5×100=12,500列(部分的に相関しているが)のボクセルがある。このため過剰適合は問題とならない。
【0074】
アトラス尺度の選択とは無関係に、画像テクスチャ特徴およびその結果生じるマハラノビス距離の計算は、参照ボリュームデータセットにおけるボクセル各々について実尺度(例えばmm単位)で実行される。このため本明細書に記載されるパラメータの削減は、元データのダウンサンプリングと同等ではない。画像テクスチャ特徴を通じて細かい詳細が見えているままである。モデルパラメータは、補完によって部分ボクセルのために取得されることが可能である。共分散行列の場合には、補完はログ−ユークリッド的に実行されることが可能である。
【0075】
図2の実施形態は、被検体ボリュームデータにおける異常の自動検出に関連して記載されてきた。関連する用途は、いずれかのユーザ選択図上に正常解剖学的構造の画像の例を提示することによって、被検体に関する画像が正常か異常かの評価を視覚的に行うように、臨床医(場合により研修生)を支援することである。例えば、脊椎に関して何らかの疑わしい形態を可視化するために特定のMPR(場合により傾斜している)を選択したとき、「正常性の表示」ツールが、例えば4cm×4cm四方の参照ボリュームデータセットからの対応するデータの図を、現在のデータ集合と一致する尺度および方位に置き換えてもよい。
【0076】
さらに、正常性のいくつかの例が提示されることが可能である(参照ボリュームデータセットおよび位置合わせ湾曲場が実行時間に利用可能な場合)。システムは、ユーザインターフェースを通じてユーザの命令があったときにスクロールされるように、例えば5つの例示画像または画像の部分を選択することができる。対象とされる各例示画像または画像の各部は、先の段落に記載されたように、表示された画像の残りと照合され得る。例えば、少数の例が可能な限り広い範囲の正常変動を捕捉するように、特徴空間のスパニング(すでに測定された画像テクスチャ特徴)を最小化するように、選択されることが可能である。
【0077】
図2に関連して先に記載された動作のモードにおいて、CT画像データは参照ボリュームデータセットおよび被検体ボリュームデータの両方について使用されており、統計アトラス生成および異常検出で使用される多変量特徴(複数種類の形態的指標)はCT値に関する画像テクスチャ特徴である。しかしながら、例えば陽電子放出コンピュータ断層撮影装置(Positron Emission computed Tomography:以下、PETと呼ぶ)または磁気共鳴イメージング装置(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)などのいずれの適切な画像診断法が使用されることも可能である。さらに、記載されている実施形態は、統合された多モードの画像データセット(以下、統合多モード画像データセットと呼ぶ)から統計アトラスを生成するために、またはこの中の異常を検出するために使用されることが可能である。
【0078】
PET/CTまたはマルチシーケンス(multi−sequence)MRIなどのこのような統合多モード画像データセットへの拡大は、直接的であり得る。マルチシーケンスMRIによるデータセットは、例えばT1重み付け、T2重み付け、またはFLAIRデータセットのいずれかの適切な組合せなどのいずれかの適切なデータセットの組合せを含むことができる。
【0079】
統合多モード画像データセットは通常、被検体の運動が最小限であって非リジッド位置合わせによって修正され得るように、間を空けずに連続して取得された複数のボリュームデータセットからなる。画像テクスチャ特徴はその後、各ボリュームデータセットについて計算され、各ボリュームデータセットにおいて利用可能なパターンベクトルを増加させる。PET信号は腫瘍成長の強力な標識であるが、PET/CTの場合には、これは解剖学に特化された方法で解釈される必要があり、例えば膀胱からのPET信号は無視されるべきである。PET/CTで使用される本開示の方法は、特別な規則を用いずに、必然的にこれを実現する。例えば、膀胱領域に関する統計アトラスは、正常な解剖学的構造について膀胱領域から取得されたPET信号において大きなばらつきを見せる。したがって、正常な解剖学的構造についての膀胱からのPET信号の広範な分布を前提として(膀胱から得られたPET信号のマハラノビス距離に対する閾値は非常に大きくなる)、方法は、検査対象の被検体の膀胱から受診したPET信号に基づいて、膀胱領域のいかなる異常も示さない可能性が高い。
【0080】
MRI検査はしばしばマルチシーケンスのために取得される。T1およびT2重み付けの両方を含む例えばマルチシーケンスによるボリュームデータの取得は、脳内の灰白質(Grey Matter:GM)、白質(White Matter:WM)、および脳脊髄液(Cerebral−Spinal−Fluid:CSF)の識別を改善するために示されてきた。このため、統計アトラスの生成に使用される各ボクセルの特徴がT1およびT2重み付けMRI画像特徴である場合には、GM/WM/CSF分布の異常パターンが検出され得る。ともに使用されるT1およびT2重み付け取得は、多発性硬化症を識別するためにも示されてきた。
【0081】
図1および2の実施形態において、システムは最初に統計アトラスを生成し、次に異常を検出するために統計アトラスを使用する。統計アトラスが事前に生成されて、例えば記憶部6に保存されることは、より一般的である。統計アトラスはその後、被検体ボリュームデータにおける異常の検出のため、あるいは訓練またはその他の目的のため、画像取得または処理装置2に提供されることが可能である。
【0082】
図2の実施形態は、ボリュームデータセットに関連して記載されてきた。記載されている方法はまた、2次元データセットからの統計アトラスの生成、または2次元データセットにおける異常の検出に使用されることも可能である。
【0083】
2次元データセットへの特に有益な適用は、スカウト画像データの解析においてである。CT撮影を行うとき、画像撮影における最初の画像データセットが、しばしば単一の角度または角度集合から、被検体に対して実行される。撮影は通常、X線源の固定角度位置での患被検体に対するX線投影撮影を含む。このような最初の撮影(以下、初期撮影と呼ぶ)は、比較的低い出力または解像度である場合が多い。初期撮影はスカウト画像撮影と呼ばれる。結果的に得られる画像はスカウト画像と呼ばれる。スカウト画像は、従来のX線画像と類似である。操作者は一般的に、撮像装置に対する被検体の位置を同定し、特定の解剖学的特徴または領域のおおまかな位置を同定するために、スカウト画像を観察する。操作者は次に、その後の特定の解剖学的領域のより正確なまたはより高い線量撮影のために撮像装置を設定するため、この情報(スカウト画像)を使用する。
【0084】
さらなる実施形態において、統計アトラスは、正常な解剖学的構造から得られたCTスカウト画像データセットから生成される。統計アトラスは、CT撮像装置と関連づけられている制御端末に保存される。動作時、スカウト画像は、CT撮像装置によって被検体から取得される。スカウト画像は、図2に関連して先に記載されたように統計アトラスと比較され、スカウト画像内の異常の可能性のある領域が比較から同定される。異常領域が強調されたスカウト画像を表示するのと同様に、CT撮像装置の制御端末もまた自動的に、検出された異常領域に対するより詳細な撮影のための動作パラメータを決定することができる。より詳細な撮影が、ユーザインターフェースを通じて端末によって操作者に示唆されてもよい。操作者がより詳細な撮影を選択した場合には、制御端末は自動的に決定された動作パラメータを使用して撮影を進める。
【0085】
マハラノビス距離は、統計アトラスの生成および異常の存在の検出において使用される統計的距離として、使用されてきた。マハラノビス距離は、論じられたように、この文脈において特に有益となり得るが、所望であれば、その他の統計的距離が使用されることも可能である。
【0086】
特定のモジュールが本明細書に記載されてきたが、代替実施形態においては、これらのモジュールのうち1つ以上の機能性は単一のモジュールまたはその他のコンポーネントによって提供されることが可能であり、あるいは単一のモジュールによって提供される機能性は、統合された2つ以上のモジュールまたはその他のコンポーネントによって提供されることが可能である。
【0087】
実施形態がソフトウェアによって特定の機能性を実現する一方で、この機能性がハードウェア(例えば1つ以上のASIC(特定用途向け集積回路)による)のみにおいて、またはハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されることも可能であることも当業者にはよく理解される。
【0088】
特定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態は例示のみによって提示され、本発明の範囲を限定するように意図されるものではない。実際、本明細書に記載される新規な方法およびシステムは、その他の様々な形態で実現されてもよい。さらに、本明細書に記載される方法およびシステムの形態の様々な省略、置き換え、および変更は、本発明の精神を逸脱することなく行われてもよい。添付の特許請求の範囲およびこれらの同等物は、本発明の範囲内に含まれるような形態および変形例を網羅するように意図される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
2…処理装置、4…表示装置、6…記憶部、7…ボリュームデータ、8…入力部、10…中央演算処理装置(CPU)、12…テクスチャ特徴モジュール、14…位置合わせモジュール、16…アトラス生成モジュール、18…異常検出モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常ボリュームデータと被検体のボリュームデータとを記憶する記憶部と、
前記被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標を計算する形態的指標計算部と、
前記複数種類の形態的指標と前記健常ボリュームデータにおける健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせする位置合わせ部と、
前記位置合わせされた被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて計算された形態的相違度を、閾値と比較することにより、前記被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出する異常検出部と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記形態的指標計算部は、
前記被検体のボリュームデータにおける複数のボクセル各々のボクセル値と前記ボクセル各々の近傍ボクセルのボクセル値とに基づいて、前記複数のボクセル各々に対して前記複数種類の形態的指標を計算すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記位置合わせ部は、
前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記健常ボリュームデータに対する前記被検体のボリュームデータの相対位置に応じて前記形態的相違度を計算し、
前記形態的相違度が最小となるように、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせすること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記形態的相違度の計算と、前記形態的指標の計算とは、前記健常ボリュームデータと前記被検体のボリュームデータとにおける実体のスケールに基づいて計算されること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記位置合わせ部は、前記健常ボリュームデータと前記被検体のボリュームデータとにおける実体のスケールを用いて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータにさらに位置合わせすること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記健常ボリュームデータは、正常な解剖学的構造を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記形態的相違度は、マハラノビス距離であること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記健常ボリュームデータは、複数の参照被検体にそれぞれ対応する複数の参照ボリュームデータセットに基づいて計算された前記複数種類各々の形態的指標の平均値と、前記複数種類の形態的指標に関する相関値とを有すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記複数種類の形態的指標は、前記近傍ボクセルにおいて、ボクセル値の平均値と、ボクセル値の勾配の大きさと、前記勾配を示すベクトルと、ウェーブレット変換に関するハールテクスチャ特徴量とのうち少なくとも一つであること、
を特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記被検体のボリュームデータは、コンピュータ断層撮影装置と核医学診断装置と磁気共鳴診断装置とのうち少なくとも一つにより発生されたボリュームデータであること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記位置合わせ部は、リジッド位置合わせ手順と非リジッド位置合わせ手順とのうち少なくとも一つを用いて前記位置合わせを実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記異常検出部は、前記被検体のボリュームデータに対して、前記形態的異常が検出された領域を特定すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記被検体のボリュームデータに基づいて発生された医用画像における前記形態的異常が検出された領域を強調表示する表示部をさらに具備すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記検出された形態的異常に関する偽陽性率を、前記閾値として入力する入力部をさらに具備すること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
複数の参照被検体にそれぞれ対応する複数の参照ボリュームデータセットを記憶する記憶部と、
前記参照ボリュームデータセットに基づいて、複数種類の形態的指標を計算する形態的指標計算部と、
前記複数種類の形態的指標を用いて、前記参照ボリュームデータセットを相互に位置合わせする位置合わせ部と、
前記参照ボリュームデータセットに基づいて、前記位置合わせされた参照ボリュームデータセットにおける同位置の前記複数種類各々の形態的指標の平均値と、前記複数種類の形態的指標に関する相関値とを有する健常ボリュームデータを発生する健常ボリュームデータ発生部と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項16】
健常ボリュームデータと被検体のボリュームデータとを記憶し、
前記被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標を計算し、
前記被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常ボリュームデータにおける健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせし、
前記位置合わせされた被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて計算された形態的相違度を、閾値と比較することにより、前記被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出すること、
を特徴とする医用画像処理方法。
【請求項17】
医用画像処理装置に内蔵されたコンピュータに、
被検体のボリュームデータに基づいて、複数種類の形態的指標を計算させる形態的指標計算機能と、
前記被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常ボリュームデータにおける健常な複数種類の形態的指標とに基づいて、前記被検体のボリュームデータを前記健常ボリュームデータに位置合わせさせる位置合わせ機能と、
前記位置合わせされた被検体のボリュームデータにおける前記複数種類の形態的指標と前記健常な複数種類の形態的指標とに基づいて計算された形態的相違度を、閾値と比較することにより、前記被検体のボリュームデータにおける形態的異常を検出させる異常検出機能と、
を実現させることを特徴とする異常検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39344(P2013−39344A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26382(P2012−26382)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】