説明

医用画像処理装置、及び医用画像処理方法

【課題】 3次元医用画像に対し、任意の3次元位置に点を設定する操作を支援する医用画像処理装置及び医用画像処理方法を提供する。
【解決手段】 3次元医用画像20に点を設定する際、3次元医用画像20上でマウスダウン操作(マウスのボタンスイッチを押下し続ける操作)が行われると、CPU101は、点を奥行方向へ移動する。このときCPU101は3次元医用画像20の奥行方向の濃度勾配を求め、例えば臓器中心設定モードでは、濃度勾配が小さくなるところで点を低速に移動し、濃度勾配が大きいところで点を高速に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像に対し、所望の3次元位置に点を設定するための操作を支援する医用画像処理装置及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばX線CT(computed tomography)装置やMRI(magnetic resonance imaging)装置、超音波診断装置、核医学診断装置等を含む医用画像診断装置やその他の画像生成装置によって撮影される一連の断層像群を用いて3次元画像を生成し、表示する医用画像処理装置が知られている。また、この種の医用画像処理装置では、表示中の医用画像から観察対象とする臓器を抽出する機能や、注目する平面または曲面を設定してその平面や曲面の画像を生成して解析する機能を有するものがある。
例えば、特許文献1には、画像の局所的な濃度差を参照して関心領域の輪郭を追跡する輪郭追跡法、関心領域内のある一点の隣接する点であって濃度値範囲や隣接点同士の濃度差といった拡張条件を満たす点を取り込み、領域を拡張することにより領域を抽出する領域拡張法等について記載されている。このように医用画像から特定の領域を抽出する場合、操作者が臓器の中心や境界に点を設定する操作を行うことがある。しかし、設定する点の位置が数画素ずれただけで結果(抽出される領域)が異なることがあるため、操作者によって異なる結果となりやすく、再現性に劣るという問題があった。
【0003】
また、3次元画像の3次元位置に点を設定する従来の方法としては、例えば特許文献2に記載されるように、異なる方向から見た画像を複数枚作成して表示し、操作者は表示されている複数の画像を交互に参照しながら、点位置を3次元的に決定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2087517号公報
【特許文献2】特開2006−246941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、ユーザが複数枚の画像を交互に操作しながら点を設定する場合には、操作量が多く点の設定に多くの時間がかかっていた。また、ノイズが多い画像では境界が不明瞭となり、臓器の境界等に正確に点を設定することは困難であった。そのため、点設定における操作性や再現性を向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、3次元医用画像に対し、任意の3次元位置に点を設定する操作を支援する医用画像処理装置及び医用画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、3次元医用画像を表示する表示手段と、前記3次元医用画像の任意の3次元位置に点を設定する点設定手段と、前記点の位置を操作する操作入力手段と、を備えた医用画像処理装置であって、前記3次元医用画像の濃度勾配を算出する濃度勾配算出手段と、前記濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定する移動速度設定手段と、前記操作入力手段により前記点の位置の移動操作が行われると、前記点の位置における前記濃度勾配に応じて前記移動速度設定手段により設定された前記点の移動速度によって前記点の位置を移動する点位置移動手段と、を備えることを特徴とする医用画像処理装置である。
【0008】
第2の発明は、3次元医用画像の任意の3次元位置に点を設定するための操作を入力する操作入力手段を備えた医用画像処理装置における医用画像処理方法であって、前記3次元医用画像の濃度勾配を算出する濃度勾配算出ステップと、前記濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定する移動速度設定ステップと、前記操作入力手段により前記点の位置の移動操作が行われると、前記点の位置における前記濃度勾配に応じて前記移動速度設定ステップにより設定された前記点の移動速度によって前記点の位置を移動する点位置移動ステップと、を備えることを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医用画像処理装置及び医用画像処理方法によれば、3次元医用画像に対し、任意の3次元位置に点を設定する操作を有効に支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】医用画像処理装置100の全体構成を示す図
【図2】第1の実施の形態の点設定処理の流れを説明するフローチャート
【図3】操作画面300の一例を示す図
【図4】臓器中心設定モードにおける濃度勾配と点の移動速度との関係を示す濃度曲線23の一例
【図5】臓器境界設定モードにおける濃度勾配と点の移動速度との関係を示す濃度曲線23の一例
【図6】濃度勾配と濃度値と点の移動速度との関係を示す濃度曲面の一例
【図7】第2の実施の形態の点設定処理の流れを説明するフローチャート
【図8】第3の実施の形態の操作画面310の一例を示す図
【図9】第3の実施の形態の点設定処理の流れを説明するフローチャート
【図10】水平方向(あるいは平面内の方向)及び垂直方向の点の移動速度の関係を示す曲面の一例
【図11】第4の実施の形態の点設定処理の流れを説明するフローチャート
【図12】(a)ノイズ除去前の濃度曲線、(b)ノイズ除去後の濃度曲線の一例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の医用画像処理装置100を適用した画像処理システム1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、画像処理システム1は、表示装置107、マウス108、入力装置109を有する医用画像処理装置100と、医用画像処理装置100にネットワーク110を介して接続される画像データベース111と、医用画像撮影装置112とを備える。
【0014】
医用画像処理装置100は、画像生成、画像解析等の処理を行うコンピュータである。例えば、病院等に設置される医用画像表示装置を含む。
医用画像処理装置100は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、主メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース(通信I/F)104、表示メモリ105、及び外部機器とのインタフェース(I/F)106を備え、各部はバス113を介して接続されている。
【0015】
CPU101は、主メモリ102または記憶装置103等に格納されるプログラムを主メモリ102のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス113を介して接続された各部を駆動制御し、医用画像処理装置100が行う各種処理を実現する。
【0016】
また、CPU101は、後述する点設定処理(図2参照)において、操作者のマウス操作に従って3次元医用画像の任意の3次元位置に対して、点の設定を行う。点設定処理についての詳細は後述する。
【0017】
主メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置103等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU101が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0018】
記憶装置103は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う記憶装置であり、CPU101が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU101により必要に応じて読み出されて主メモリ102のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0019】
通信I/F104は、通信制御装置、通信ポート等を有し、医用画像処理装置100とネットワーク110との通信を媒介する。また通信I/F104は、ネットワーク110を介して、画像データベース111や、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、MRI装置等の医用画像撮影装置112との通信制御を行う。
I/F106は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。例えば、マウス108やタッチペン等のポインティングデバイスをI/F106を介して接続させるようにしてもよい。
【0020】
マウス108は、ボタンスイッチと、変位量を検知するセンサとを有し、位置の変位量データやボタンスイッチの入力データ等をI/F106を介してCPU101へ出力する。なお、マウス108は、例えば左ボタン及び右ボタンのように2つのボタンスイッチを有するものが望ましい。またマウス108に代えてタッチペンを用いる場合は、サイドスイッチを有するタッチペンを用いることが望ましい。
【0021】
表示メモリ105は、CPU101から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置107に出力される。
【0022】
表示装置107は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ105を介してCPU101に接続される。表示装置107はCPU101の制御により表示メモリ105に蓄積された表示データを表示する。
【0023】
入力装置109は、例えば、キーボード等の入力装置であり、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU101に出力する。操作者は、表示装置107、入力装置109、及びマウス108等の外部機器を使用して対話的に医用画像処理装置100を操作する。
【0024】
次に、本発明の各実施の形態で用いるマウスの操作方法について説明する。
本発明は、医用画像処理装置に表示される3次元医用画像の任意の3次元位置に点を設定する処理を行う。点位置を決定する操作に際し、操作者はマウス108により、以下の操作を行うものとする。
ドラッグ・・・・マウス108のボタンスイッチを押したままの状態でマウスカーソルの位置を移動すること。本発明の各実施の形態では、ドラッグ操作によって点の水平方向及び垂直方向の位置を移動する。
マウスダウン・・・マウス108のボタンスイッチを押したままの状態にすること。左ボタンスイッチを押下したままの状態にすることを左マウスダウン、右ボタンスイッチを押下したままの状態にすることを右マウスダウンと呼ぶものとする。本発明の各実施の形態では、マウスダウン操作によって点の位置を奥行方向(表示画面に対する奥行方向)へ移動する。
マウスアップ・・・マウスダウンしたボタンスイッチを放すこと。本発明の各本実施の形態では、マウスアップ操作によって奥行方向への移動を停止するものとする。
【0025】
なお、マウスホイールを有するマウス108であれば、マウスホイールの動作と奥行方向への点移動とを連動させるようにしてもよい。例えば、マウスホイールを前方に回転させたときは点を奥方向へ移動し、マウスホイールを後方に回転させたときは点を手前方向へ移動するようにしてもよい。
その他、上述のドラッグ操作、マウスダウン操作、マウスアップ操作に準ずる操作を入力可能なものであれば、マウス108以外の入力機器を用いてもよい。例えば、サイドスイッチ付きタッチペン等も好適である。
【0026】
ネットワーク110は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース111やサーバ、他の情報機器等と医用画像処理装置100との通信接続を媒介する。
【0027】
画像データベース111は、医用画像撮影装置112によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。図1に示す画像処理システム1では、画像データベース111はネットワーク110を介して医用画像処理装置100に接続される構成であるが、医用画像処理装置100内の例えば記憶装置103に画像データベース111を設けるようにしてもよい。
【0028】
次に、図2〜図5を参照して、医用画像処理装置100の動作について説明する。
【0029】
医用画像処理装置100のCPU101は、主メモリ102から図2の点設定処理に関するプログラム及びデータを読み出し、このプログラム及びデータに基づいて処理を実行する。また、以下の処理の実行開始に際して、演算対象とする画像データは画像データベース111等からネットワーク110及び通信I/F104を介して取り込まれ、医用画像処理装置100の記憶装置103に記憶されているものとする。
【0030】
図2に示す点設定処理において、まず操作者によりマウス108やキーボード(入力装置109)等が操作され、観察対象となる画像データが選択されると、医用画像処理装置100のCPU101は、選択された画像データを入力画像データとして読み込む(ステップS101)。入力画像データの好適な例として、CT画像、MR画像、または超音波画像等が挙げられる。
【0031】
次に、CPU101は、ステップS101で取得した画像データから、臓器領域の3次元医用画像を作成し(ステップS102)、表示装置107に表示する(ステップS103)。以下の説明では、3次元医用画像を3D画像20と呼ぶこととする。
例えば、図3に示すような操作画面300を表示装置107に表示し、操作画面300内の3D画像表示領域301に、上述の3D画像20を表示する。
【0032】
ここで、操作画面300について説明する。
操作画面300は、3D画像表示領域301、モード選択領域302、水平方向の直交断面画像表示領域303、垂直方向の直交断面画像表示領域304、濃度勾配表示領域305等を有する。
3D画像表示領域301には、ステップS102で生成された3D画像20が表示される。以下の説明では、3D画像20の投影面をx−y面とする。また3D画像20上には、任意の3次元位置に点を設定するための点オブジェクト306が表示される。ユーザがマウス108を用いて点オブジェクト306をドラッグ操作し、所望の位置へ移動すると、点オブジェクト306の水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)の位置が決定される。また、点オブジェクト306の奥行方向(z方向)の位置は「マウスダウン操作」によって設定される。すなわち、マウスに設けられている第1のボタン(例えば左ボタン)が押下される間(左マウスダウン)、CPU101は、奥行方向奥側に点オブジェクト306の位置を移動する。また、マウス108に設けられている第2のボタン(例えば右ボタン)が押下される間(右マウスダウン)、CPU101は、奥行方向手前側に点オブジェクト306の位置を移動する。
【0033】
3D画像表示領域301において点オブジェクト306の位置を奥行方向に移動するということは、移動後の奥行方向の位置(z位置)に応じて、異なる視点の3D画像20に切り替えるということである。例えば、奥行き奥方向に点の位置を移動するということは、3D画像20の仮想的な視点位置と投影面との距離を近付けることを意味する。投影面は移動しないので、距離を近づけるためには、仮想的な視点位置を移動することになる。そして、仮想的な視点位置を移動するということは、異なる視点の3D画像20を生成し、その3D画像20に切り替えて表示するということになる。つまり、点オブジェクト306の位置を連続的に移動する場合、スライドショーのように3D画像20を切り替える。以下では、説明を分かり易くする為に、点オブジェクト306の移動処理において、3D画像20の切り替え処理の説明を省略する。
【0034】
水平方向の直交断面画像表示領域303には、3D画像20上で点オブジェクト306によって設定された点の3次元位置を含む、水平方向直交断面画像21が表示される。3D画像20の投影面をx−y面とした場合、水平方向の直交断面はz−x面である。また、水平方向直交断面画像21上において、3D画像20内の点オブジェクト306と対応する位置に点オブジェクト306が表示される。CPU101は、奥行方向に点オブジェクト306の位置を移動する場合、移動後の奥行方向の位置に応じて、同一断面の水平方向直交断面画像21上において点オブジェクト306を移動する。
【0035】
垂直方向の直交断面画像表示領域304には、3D画像20上で点オブジェクト306によって設定された点の3次元位置を含む垂直方向直交断面画像22が表示される。3D画像20の投影面をx−y面、水平方向の直交断面をz−x面とする場合、垂直方向の直交断面はy−z面である。また、垂直方向直交断面画像22上において、3D画像20内の点オブジェクト306との対応する位置に点オブジェクト306が表示される。CPU101は、奥行方向に点オブジェクト306の位置を移動する場合、移動後の奥行き方向の位置に応じて、同一断面の垂直方向直交断面画像22上において点オブジェクト306を移動する。
【0036】
モード選択領域302は、選択可能なモードが一覧表示される。例えば、臓器の境界に点を設定するための臓器境界設定モード、臓器の中心に点を設定するための臓器中心設定モード等がある。
濃度勾配表示領域305には、3D画像20の濃度勾配を示すグラフが表示される。例えば第1の実施の形態では、点オブジェクト306の位置における3D画像20の奥行方向の濃度曲線23が表示される。第1の実施の形態の濃度勾配表示領域305の横軸は、3D画像20の奥行方向に対応し、濃度勾配表示領域305の縦軸は濃度値を表している。
【0037】
一般に、医用画像は、臓器中心では濃度勾配が0に近く、臓器境界付近では濃度勾配が急であるという特徴がある。操作者は濃度曲線23を参照することにより点オブジェクト306が臓器中心にあるか臓器境界にあるかを判断可能である。
【0038】
図2のフローチャートの説明に戻る。
操作画面300に3D画像20が表示され、モード選択領域302に一覧表示されたモードから所望のモードが選択設定されると(ステップS104)、CPU101は、設定されたモードに応じて適用する移動速度関数を決定する。移動速度関数とは、3D画像20の濃度勾配と移動速度との関係を示す関数である。例えば、図4や図5に示す線形関数や非線形関数等が好適である。いずれのモードでも、点オブジェクト306の移動速度は、点を移動する方向(第1の実施の形態では、奥行方向)の画像の濃度勾配の大きさ(絶対値)に基づいて決定される(ステップS105)。
移動速度関数はモード別に予め用意され、記憶装置103等に記憶されているものとする。
【0039】
上述したように、臓器中心では濃度勾配は0に近く、臓器境界付近では濃度勾配が急であるという特徴がある。このため、臓器中心設定モードでは、例えば図4(a)の線形関数グラフ400に示すように、濃度勾配の絶対値が小さくなるにつれて点オブジェクト306の移動速度を小さくする。また、濃度勾配の絶対値が大きくなるにしたがって、点オブジェクト306の移動速度を大きくする。更に、濃度勾配の絶対値がある閾値401より大きくなると、点オブジェクト306の移動速度が閾値401での移動速度と同一となるようにしてもよい。また、図4(b)に示す非線形関数グラフ402のように、2次曲線等、非線形の関数に従って移動速度が変化するようにしてもよい。
このように、臓器中心設定モードでは濃度勾配の絶対値が小さくなるにしたがって点オブジェクト306の移動速度を低速にすれば、濃度値の変化の小さい臓器中心付近では点オブジェクト306がゆっくりと移動する。このため、操作者はマウスアップのタイミングを逃さずに点位置を決定することができる。また、臓器中心以外では点オブジェクト306の移動速度が高速となるため、素早く所望の位置へ移動させることができる。
【0040】
また、臓器境界設定モードでは、例えば図5(a)に示す線形関数グラフ403に示すように、濃度勾配の絶対値が小さくなるにつれて点オブジェクト306の移動速度を大きくする。また、濃度勾配の絶対値が大きくなるにしたがって、点オブジェクト306の移動速度を小さくする。更に、濃度勾配の絶対値がある閾値404より大きくなると、点オブジェクト306の移動速度が閾値404での移動速度と同一となるようにしてもよい。また、図5(b)に示す非線形関数グラフ405のように、2次曲線等、非線形の関数に従って移動速度が変化するようにしてもよい。
このように、臓器境界設定モードでは濃度勾配の絶対値が大きくなるにしたがって点オブジェクト306の移動速度を低速にすれば、濃度値の変化の大きい臓器境界付近では点オブジェクト306がゆっくりと移動する。このため、操作者はマウスアップのタイミングを逃さずに点位置を決定することができる。また、臓器境界以外では点オブジェクト306の移動速度が高速となるため、素早く所望の位置へ移動させることができる。
【0041】
次に、3D画像表示領域301に表示されている3D画像20上で操作者のマウス操作により点オブジェクト306が所望の位置(水平及び垂直方向位置)に移動され、その位置でマウスダウン操作が行われると(ステップS106)、CPU101は、マウスダウンされた位置を含む直交断面画像を作成する(ステップS107)。直交断面画像はステップS101で取得した画像データに基づいて、水平方向及び垂直方向についてそれぞれ作成される。CPU101は、作成した水平方向直交断面画像21及び垂直方向直交断面画像22を、それぞれ水平方向の断面画像表示領域303及び垂直方向の断面画像表示領域304に表示する(ステップS108)。この際、CPU101は、各直交断面画像21、22上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置(点の奥行方向位置)に点オブジェクト306を描画する。
【0042】
次に、CPU101は、現在点が設定されている位置の奥行方向についての濃度曲線23を作成する(ステップS109)。濃度曲線23は、ステップS101で入力した画像データに基づいて作成可能である。CPU101は、ステップS109にて作成した濃度曲線23を、操作画面300の濃度勾配表示領域305に表示する(ステップS110)。CPU101は、濃度曲線23上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0043】
マウスダウン操作が行われている間、CPU101は、マウス108の操作に応じて点オブジェクト306を手前方向に移動するか奥方向に移動するかを設定する。例えば、現在行われている操作が左マウスダウン状態の場合は点オブジェクト306の移動方向を奥方向とし、右マウスボタン状態の場合は点オブジェクト306の移動方向を手前方向に設定する(ステップS111)。
そして、CPU101は、ステップS109で作成した濃度曲線23から、現在、点オブジェクト306が存在する位置の濃度勾配を算出し、ステップS105で設定した移動速度関数を参照して現在の濃度勾配に相当する移動速度を取得する。そして、取得した移動速度で点オブジェクト306を移動する。移動方向は、ステップS111で設定した方向である。点が移動されると、CPU101は、直交断面画像21、22や濃度曲線23上に表示されている点オブジェクト306の描画位置も移動する。
【0044】
操作者により直交断面画像21、22や濃度曲線23等が確認され、点の位置が妥当であると判断され(ステップS113;OK)、マウスアップされると(ステップS114)、CPU101は点の移動を停止する。一方、点の位置が妥当でないと判断された場合は(ステップS113;NG)、マウスダウン操作が継続されるため、ステップS111〜ステップS112を繰り返し、点オブジェクト306の移動を行う。
点オブジェクト306の位置が所望の位置を通り過ぎた場合は、操作者は、それまでに押していたボタンスイッチと逆のボタンスイッチをダウン状態にすればよい。例えば、奥方向へ移動させるため左マウスダウンしていた場合は、右マウスダウンすれば手前方向へ点オブジェクト306の位置を戻すことができる。
操作者のマウスアップ操作により、CPU101は点オブジェクト306の奥行方向への移動を停止する(ステップS114、S115)。
【0045】
以上の処理により、操作者は3D画像20上でのマウス操作だけで、所望の3次元位置に点を設定することができる。特に、水平、垂直方向のみならず、点の奥行方向位置についても、簡単なマウス操作(例えば、マウスダウン操作)を行えば移動させることができるため、点設定の操作が容易となる。
また、奥行方向位置の設定操作中(マウスダウン操作中)は、点位置における濃度勾配の大きさに基づいて、点オブジェクト306の移動速度を速めたり、遅くしたりする。すなわち、画像の濃度勾配の大きさに基づいて、臓器中心設定モードでは臓器の中心付近で移動速度を遅くし、臓器境界設定モードでは臓器の境界付近で移動速度を遅くする。このため操作者は、マウスアップのタイミングを逃さずに、精度よく所望の位置に点を設定することが可能となる。また、点設定を行うべき位置以外の箇所では、点の移動速度を速めるため、迅速に所望の位置まで点を移動させることができきる。
【0046】
更に、操作画面300では、対象とする3D画像20とともに、点のある位置の奥行方向の濃度曲線23や、点位置を含む水平及び垂直方向の直交断面画像21、22を表示し、これらの濃度曲線23や直交断面画像21、22にも、3D画像20上の点オブジェクト306の位置と対応する位置に点オブジェクト306を表示する。このため、操作者は点の位置を様々な観点から確認することができ、点位置の設定をより正確に行える。したがって再現性よく点を設定することが可能となる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、図6〜図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態の医用画像処理装置100のハードウエア構成は第1の実施の形態と同様である。また、点設定時のマウス操作や操作画面も第1の実施の形態と同様でよい。以下、第1の実施の形態と重複する説明は省略し、同一の各部は同一の符号を用いて説明することとする。
【0048】
第2の実施の形態の医用画像処理装置100は、奥行方向の点設定処理において、移動速度の設定を濃度勾配と濃度値との両方に基づいて行う。
すなわち、第1の実施の形態では、図4及び図5に示すような奥行方向の濃度勾配(濃度曲線)に基づいて、移動速度関数を設定したが、第2の実施の形態では、奥行方向の濃度勾配に加え、濃度値の大きさも考慮して点オブジェクト306の移動速度を設定する。
【0049】
図6は境界中心設定モードにおける濃度勾配及び濃度値と点の移動速度との関係を示す曲面関数600の一例である。このような曲面関数600を適用すると、濃度勾配が小さい箇所は移動速度を小さく、濃度勾配が大きい箇所は移動速度が小さく設定できる。これに加え、濃度値が小さい箇所では濃度値が大きい箇所よりさらに移動速度を小さく設定できる。このように、濃度勾配の大きさに加え濃度値の大きさを考慮して、点の移動速度を設定するようにすれば、臓器の種類、或いは造影剤の有無に応じて移動速度を変更させることが可能となる。これにより、更に、迅速に点の設定を行えるようになる。
【0050】
以下、図7のフローチャートを参照して、第2の実施の形態における点設定処理の流れを説明する。
【0051】
ステップS201〜ステップS204は第1の実施の形態と同様である。すなわち、操作者による操作に従って医用画像処理装置100のCPU101は、入力画像データを読み込み、臓器領域の3次元画像(3D画像20)を作成し、操作画面300の3D画像表示領域301に表示する(ステップS201〜ステップS203)。
【0052】
次に、CPU101は、モード選択を受け付ける(ステップS204)。モード選択は、第1の実施の形態と同様に、モード選択領域302に一覧表示されたモードから所望のモードを選択設定する。モードとしては、第1の実施の形態と同様に臓器中心設定モード、臓器境界設定モードの他、抽出対象となる臓器の種類、或いは造影剤の有無によってモードを切り替えるようにしてもよい。例えば、造影剤を用いる検査では、対象臓器は造影箇所、すなわち高濃度値であるため、高濃度値臓器抽出モードを選択するようにすればよい。また、造影剤を用いない検査において、対象臓器周辺の骨領域(高濃度値)を素早く通過させたい場合、低濃度値臓器抽出モードを選択するようにすればよい。
【0053】
CPU101は、設定されたモードに応じて適用する移動速度関数を決定する(ステップS205)。
第2の実施の形態で適用する移動速度関数は、例えば図6に示すような、濃度勾配及び濃度値と移動速度との関係を示す関数である。上述したように、図6に示す曲面関数は、濃度値が低い臓器の中心付近に点を設定する場合に適用すべき移動速度関数の例である。他に、濃度値が低い臓器の境界付近に点を設定する場合、濃度値が高い臓器の中心付近に点を設定する場合、濃度値が高い臓器の境界付近に点を設定する場合等に応じて、それぞれ適用すべき移動速度関数が予め用意され、記憶装置103等に記憶されているものとする。
【0054】
次に、3D画像表示領域301に表示されている3D画像20上で操作者のマウス操作により点オブジェクト306が所望の位置(水平及び垂直方向位置)に移動され、その位置でマウスダウン操作が行われると(ステップS206)、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、マウスダウンされた位置を含む直交断面画像(水平方向直交断面画像21及び垂直方向直交断面画像22)を作成し、それぞれ水平方向の断面画像表示領域303及び垂直方向の断面画像表示領域304に表示する(ステップS207、ステップS208)。この際、CPU101は、各直交断面画像21、22上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0055】
また、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、現在の点オブジェクト306がある位置の奥行方向についての濃度曲線23を作成し、濃度勾配表示領域305に表示する(ステップS209、ステップS210)。この際、CPU101は、各直交断面画像21、22上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置(点の奥行方向位置)に点オブジェクト306を描画する。
【0056】
また、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、点オブジェクト306を手前方向に移動するか奥方向に移動するかを設定し(ステップS211)、CPU101は、ステップS209で作成した濃度曲線23から、現在、点オブジェクト306が存在する位置の濃度勾配を算出し、ステップS205で設定した移動速度関数(曲面関数)を参照して現在の濃度勾配及び濃度値に相当する移動速度を取得する。そして、取得した移動速度で点オブジェクト306を移動する。移動方向は、ステップS211で設定した方向である。点の移動が実行されると、CPU101は、直交断面画像21、22や濃度曲線23上に表示されている点オブジェクト306の描画位置を移動する。操作者がマウスアップすると(ステップS214)、点オブジェクト306の移動を停止する(ステップS215)。
【0057】
操作者により直交断面画像21、22や濃度曲線23等が確認され、点の位置が妥当であると判断され(ステップS213;OK)、マウスアップされると(ステップS214)、CPU101は点の移動を停止する。一方、点の位置が妥当でないと判断された場合は(ステップS213;NG)、マウスダウン操作が継続されるため、ステップS211〜ステップS212を繰り返し、点オブジェクト306の移動を行う。
点オブジェクト306の位置が所望の位置を通り過ぎた場合は、操作者は、それまでに押していたボタンスイッチと逆のボタンスイッチをダウン状態にすればよい。例えば、奥方向へ移動させるため左マウスダウンしていた場合は、右マウスダウンすれば手前方向へ点オブジェクト306の位置を戻すことができる。
操作者のマウスアップ操作により、CPU101は点オブジェクト306の奥行方向への移動を停止する(ステップS214、S215)。
【0058】
以上説明したように、第2の実施の形態の処理によれば、濃度勾配のみならず、濃度値に基づいて、点の移動速度を設定することができる。そのため、点の設定対象となる臓器以外では点を高速に移動したり、造影剤のある箇所(臓器)では点を低速に移動したりするなど、臓器や造影剤の有無に応じて点の移動速度を適切な値に設定することができる。そのため、第1の実施の形態の効果に加え、更に、容易かつ迅速に点設定を行える。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、図8〜図10を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態の医用画像処理装置100のハードウエア構成は第1の実施の形態と同様である。以下、第1の実施の形態と重複する説明は省略し、同一の各部は同一の符号を用いて説明することとする。
【0060】
第1の実施の形態では、マウスダウン操作のみにより点を奥行方向に移動している。但し、第1の実施の形態では、水平方向や垂直方向等に点位置を移動したい場合、一度マウスアップした後に、点オブジェクトをドラッグし所望の水平及び垂直方向位置に移動する必要がある。
そこで、第3の実施の形態では、マウスダウン操作中に更にマウスを所定の方向に移動する操作を行うことによって、奥行方向以外の方向にも点の移動を可能とする。なお、奥行方向以外の方向とは、奥行方向と直交する平面(すなわち、3D画像20の投影面と平行な面(x−y面))内の任意の方向とする。例えば、水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)、或いはそれら以外の任意の方向(x−y面内の任意の方向)とすればよい。移動方向は予め定めた一方向(例えば水平方向や垂直方向等)としてもよいし、ユーザが任意の角度を設定できるようにしてもよい。ユーザが任意に設定できるようにした場合は、例えば血管等に沿って点を移動させたい場合に有効である。
なお、点の移動方向を、奥行方向にもう一方向を加えた合計2方向とする理由は、3方向以上とすると、かえって操作が煩雑となるからである。
【0061】
ここで、第3の実施の形態におけるマウス操作及び操作画面について説明する。
第3の実施の形態では、マウスダウンとマウスの移動を組み合わせた操作を行う。マウスダウンした状態でマウスが移動されると、CPU101は、奥行方向と直交する平面(x−y面)内の予め設定された所定の方向に点オブジェクト306を移動する。
例えば、マウスダウン操作中にマウスを移動すると、水平方向に点オブジェクト306を移動するという設定の場合を考える。この場合、以下の4通りの移動が考えられる。
(A)左マウスダウン状態で、左側(厳密に左方向でなくてもよい。)にマウスが移動されると、CPU101は、奥方向かつ左方向に点を移動する。
(B)左マウスダウン状態で、右側(厳密に右方向でなくてもよい。)にマウスが移動されると、CPU101は、奥方向かつ右方向に点を移動する。
(C)右マウスダウン状態で、左側(厳密に左方向でなくてもよい。)にマウスが移動されると、CPU101は、手前方向かつ左方向に点を移動する。
(D)右マウスダウン状態で、右側(厳密に右方向でなくてもよい。)にマウスが移動されると、CPU101は、手前方向かつ右方向に点を移動する。
同様に、奥行方向の移動に加え、垂直方向に点オブジェクト306を移動するという設定の場合、左マウスダウン又は右マウスダウンの2通り、及び上側又は下側へのマウス移動の2通り、を組み合わせた4通りの移動が考えられる。
【0062】
図8は第3の実施の形態の操作画面310の一例である。
図8の操作画面310は、モード選択領域302、3D画像表示領域301、水平方向直交断面画像表示領域303、垂直方向直交断面画像表示領域304、濃度勾配表示領域305の他、方向設定領域311を有する。
【0063】
水平方向の直交断面画像表示領域303には、3D画像20上で点オブジェクト306によって設定された点の3次元位置を含む水平方向直交断面画像21が表示される。また、水平方向直交断面画像21上において、3D画像20内の点オブジェクト306と対応する位置に点オブジェクト306が表示される。CPU101は、ある方向に点オブジェクト306の位置を移動する場合、移動後の位置に応じて、異なる断面の水平方向直交断面画像21に切り替えたり、同一断面の水平方向直交断面画像21上において点オブジェクト306を移動したりする。例えば、奥行き奥方向かつ上方向に点の位置を移動する場合、断面の位置も上方向に移動することを意味する。そして、断面の位置を移動するということは、異なる断面の水平方向直交断面画像21を生成し、その水平方向直交断面画像21に切り替えて表示することになる。つまり、点オブジェクト306の位置を連続的に移動する場合、スライドショーのように水平方向直交断面画像21を切り替える。以下では、説明を分かり易くする為に、点オブジェクト306の移動処理において、水平方向直交断面画像21の切り替え処理の説明を省略する。
【0064】
垂直方向の直交断面画像表示領域304には、3D画像20上で点オブジェクト306によって設定された点の3次元位置を含む垂直方向直交断面画像22が表示される。また、垂直方向直交断面画像22上において、3D画像20内の点オブジェクト306との対応する位置に点オブジェクト306が表示される。CPU101は、ある方向に点オブジェクト306の位置を移動する場合、移動後の位置に応じて、異なる断面の垂直方向直交断面画像22に切り替えたり、同一断面の垂直方向直交断面画像22上において点オブジェクト306を移動したりする。例えば、奥行き奥方向かつ右方向に点の位置を移動する場合、断面の位置も右方向に移動することを意味する。そして、断面の位置を移動するということは、異なる断面の垂直方向直交断面画像22を生成し、その垂直方向直交断面画像22に切り替えて表示することになる。つまり、点オブジェクト306の位置を連続的に移動する場合、スライドショーのように垂直方向直交断面画像22を切り替える。以下では、説明を分かり易くする為に、点オブジェクト306の移動処理において、垂直方向直交断面画像22の切り替え処理の説明を省略する。
【0065】
方向設定領域311は、奥行方向と直交する平面内の任意の角度方向に点を移動するか否かの設定、及び点の移動方向を設定するための領域である。
方向設定領域311内のチェック欄312にチェックが入力されると、マウスダウン状態でのマウス移動操作に応じて、CPU101は、奥行方向と直交する平面内の任意の角度方向に点を移動する処理を行う。チェック無しならば、第1または第2実施形態と同様の処理を行う。
また、角度設定欄313は、点の移動方向を入力するエリアである。角度設定欄313に「0」度と入力された場合は、点オブジェクト306は奥行方向だけでなく水平方向にも移動可能となる。また、「90」度と入力された場合は、奥行方向及び垂直方向に移動可能となる。
【0066】
次に、図9のフローチャートを参照して、第3の実施の形態における点設定処理の流れを説明する。
【0067】
ステップS301〜ステップS303は第1の実施の形態と同様である。すなわち、操作者による操作に従って医用画像処理装置100のCPU101は、入力画像データを読み込み、臓器領域の3次元画像(3D画像20)を作成し、操作画面310の3D画像表示領域301に表示する(ステップS301〜ステップS303)。
【0068】
次に、CPU101は、モード選択を受け付ける(ステップS304)。モード選択は、第1の実施の形態と同様に、モード選択領域302に一覧表示されたモードから所望のモードを選択設定する。
【0069】
CPU101は、設定されたモードに応じて適用する移動速度関数を決定する(ステップS305)。移動速度関数は、第1の実施の形態と同様に、臓器中心設定モードでは、例えば図4の移動速度関数を適用し、臓器境界設定モードでは、例えば図5の移動速度関数を適用すればよい。
或いは、第2の実施の形態のように、濃度勾配及び濃度値に基づいて移動速度を設定するようにしてもよい。
【0070】
次に、3D画像表示領域301に表示されている3D画像20上で操作者のマウス操作に応じて、点オブジェクト306が所望の位置(水平及び垂直方向位置)に移動し、その位置でマウスダウン操作が行われると(ステップS306)、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、マウスダウンされた位置を含む直交断面画像(水平方向直交断面画像21及び垂直方向直交断面画像22)を作成し、それぞれ水平方向の断面画像表示領域303及び垂直方向の断面画像表示領域304に表示する(ステップS307、ステップ3208)。この際、CPU101は、各直交断面画像21、22上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0071】
次に、CPU101は、現在の点オブジェクト306がある位置を含み、奥行方向及び操作画面310の方向設定領域317で予め設定された方向の情報を持つ濃度曲面800を作成し、濃度勾配表示領域305に表示する(ステップS309、ステップS310)。この際、CPU101は、濃度曲面800上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0072】
図10は、濃度曲面800の一例である。
図10に示すように、濃度曲面800は、奥行方向及び水平方向の濃度勾配と移動速度との関係を示す曲面である。図10では、奥行方向及び水平方向の濃度勾配としているが、水平方向に代えて、操作画面310で設定した奥行方向と直交する平面内の任意の方向としてもよい。また、3D画像20上の点オブジェクト306の位置に対応する濃度曲面800上の位置に点オブジェクト306を描画する。操作者は、濃度曲面800上の点オブジェクト306の位置を参照することにより、現在点がある位置を確認しやすくなる。
【0073】
尚、図8では、濃度勾配表示領域305に濃度曲線23が表示されている。このように、濃度勾配表示領域305には、濃度曲面800の所定の断面を濃度曲線23として表示しても良い。また、前述の説明の通り、濃度勾配表示領域305には、図10に示す濃度曲面800を表示し、点オブジェクト306を描画するようにしても良い。
【0074】
また、CPU101は、マウスの操作に応じて、点オブジェクト306を手前方向に移動するか奥方向に移動するかを設定し、また、マウスの移動方向に応じて点オブジェクト306をいずれの方向に移動するかを設定する(ステップS311)。例えば、左マウスダウンした状態で左側にマウスが移動されると、点の移動方向を奥方向かつ左方向とする。また例えば、右マウスダウンした状態で右側にマウスが移動されると、点の移動方向を手前方向かつ右方向とする。
【0075】
CPU101は、ステップS309で作成した濃度曲面800から、現在、点オブジェクト306が存在する位置の濃度勾配を算出し、ステップS305で設定した移動速度関数を参照して現在の濃度勾配(或いは、濃度勾配及び濃度値)に相当する移動速度を取得する。そして、取得した移動速度で点オブジェクト306を移動する。移動方向は、ステップS311で設定した方向である。点の移動が実行されると、CPU101は、直交断面画像21、22や濃度曲線23上に表示されている点オブジェクト306の描画位置を移動する。操作者がマウスアップすると(ステップS314)、点オブジェクト306の移動を停止する(ステップS315)。
【0076】
操作者により直交断面画像21、22や濃度曲面800等が確認され、点の位置が妥当であると判断され(ステップS313;OK)、マウスアップされると(ステップS314)、CPU101は点の移動を停止する。一方、点の位置が妥当でないと判断された場合は(ステップS313;NG)、マウスダウン操作が継続されるため、ステップS311〜ステップS312を繰り返し、点オブジェクト306の移動を行う。
点オブジェクト306の位置が所望の位置を通り過ぎた場合は、操作者は、それまでに押していたマウスボタンと逆のマウスボタンをダウン状態にすればよい。例えば、奥方向へ移動させるため左マウスダウンしていた場合は、右マウスダウンすれば手前方向へ点オブジェクト306の位置を戻すことができる。また、マウスの移動方向を逆方向とすれば、それまでの移動方向と逆方向に点オブジェクト306を移動させることができる。
操作者のマウスアップ操作により、CPU101は点オブジェクト306の奥行方向への移動を停止する(ステップS314、S315)。
【0077】
以上説明したように、第3の実施の形態の処理によれば、マウスダウン状態で更にマウス移動操作が行われた場合は、点を奥行方向のみならず、予め設定した所定の方向へも移動可能となる。そのため、第1及び第2の実施の形態の効果に加え、3D画像20に対する3次元位置の設定がより円滑となり、更に、迅速に点設定を行える。
【0078】
[第4の実施の形態]
次に、図11〜図12を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態の医用画像処理装置100のハードウエア構成は第1の実施の形態と同様である。また、点設定時のマウス操作や操作画面も第1〜第3のいずれかの実施の形態と同様でよい。以下の説明では、第1の実施の形態と重複する説明は省略し、同一の各部は同一の符号を用いることとする。
【0079】
第1〜第3の実施の形態では、いずれも濃度勾配、または濃度勾配及び濃度値に基づいて、点の移動速度を設定する。ところで、画像によってはノイズ等により臓器境界や中心付近が視覚的に判別しにくいことがある。例えば、X線CT装置等では被曝量低減のためにX線量を小さくすることがあり、この場合は画像にノイズが生じやすい。ノイズが生じると、濃度にムラができてしまうので、濃度勾配を求めても、その濃度勾配の変化と臓器中心或いは臓器境界の位置とを結びつけることが困難な場合がある。
そこで、第4の実施の形態では、上述の濃度勾配のノイズを除去し、ノイズ除去後の濃度勾配に基づいて、点の移動速度を設定する。
【0080】
以下、図11のフローチャートを参照して、第4の実施の形態における点設定処理の流れを説明する。
【0081】
ステップS401〜ステップS403は第1の実施の形態のステップS101〜ステップS104と同様である。すなわち、操作者による操作に従って、医用画像処理装置100のCPU101は、入力画像データを読み込み、臓器領域の3次元画像(3D画像20)を作成し、操作画面300の3D画像表示領域301に表示する(ステップS401〜ステップS403)。
【0082】
次に、CPU101は、モード選択を受け付ける(ステップS404)。モード選択は、第1の実施の形態と同様に、モード選択領域302に一覧表示されたモードから所望のモードを選択設定する。
【0083】
CPU101は、設定されたモードに応じて適用する移動速度関数を決定する(ステップS405)。移動速度の設定も、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
次に、3D画像表示領域301に表示されている3D画像20上で操作者のマウス操作により点オブジェクト306が所望の位置(水平及び垂直方向位置)に移動され、その位置でマウスダウン操作が行われると(ステップS406)、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、マウスダウンされた位置を含む直交断面画像(水平方向直交断面画像21及び垂直方向直交断面画像22)を作成し、それぞれ水平方向の断面画像表示領域303及び垂直方向の断面画像表示領域304に表示する(ステップS407、ステップS408)。この際、CPU101は、各直交断面画像21、22上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0085】
また、第1の実施の形態と同様に、CPU101は、現在の点オブジェクト306がある位置の奥行方向についての濃度曲線900を作成する(ステップS409)。そして、CPU101は、ステップS409で作成した濃度曲線900からノイズ成分901、902を除去した濃度曲線904を作成する(ステップS410;図12参照)。ノイズ成分の除去は、例えば、濃度曲線900を周波数空間に変換し、高周波成分を除去するLowPassフィルタを用いるものとしてもよいし、その他のフィルタを適用するようにしてもよい。ステップS409で1次元の濃度曲線を作成している場合には、ステップS410で1次元方向のノイズ成分を除去すればよい。また、入力画像データ等を用いて、予め2次元的なノイズや3次元的なノイズを除去した後に濃度曲線904を作成するようにしてもよい。
【0086】
CPU101は、ノイズ除去後の濃度曲線904を濃度勾配表示領域305に表示する(ステップS411)。この際、CPU101は、濃度曲線904上において、操作者がマウスダウンした位置に対応する位置に点オブジェクト306を描画する。
【0087】
次に第1の実施の形態と同様に、CPU101は、点オブジェクト306を手前方向に移動するか奥方向に移動するかを設定し(ステップS412)、ノイズ除去後の濃度曲線904から、現在、点オブジェクト306が存在する位置の濃度勾配を算出し、ステップS205で設定した移動速度関数(曲面関数)を参照して現在の濃度勾配(または濃度勾配及び濃度値)に相当する移動速度を取得する。そして、取得した移動速度で点オブジェクト306を移動する(ステップS413)。移動方向は、ステップS412で設定した方向である。
【0088】
操作者により直交断面画像21、22やノイズ除去後の濃度曲線904等が確認され、点の位置が妥当であると判断され(ステップS414;OK)、マウスアップされると(ステップS415)、CPU101は点オブジェクト306の移動を停止する(ステップS416)。一方、点の位置が妥当でないと判断された場合は(ステップS414;NG)、マウスダウン操作が継続されるため、ステップS412〜ステップS413を繰り返し、点オブジェクト306の移動を行う。
点オブジェクト306の位置が所望の位置を通り過ぎた場合は、操作者は、それまでに押していたマウスボタンと逆のマウスボタンをダウン状態にすればよい。例えば、奥方向へ移動させるため左マウスダウンしていた場合は、右マウスダウンすれば手前方向へ点オブジェクト306の位置を戻すことができる。
操作者のマウスアップ操作により、CPU101は点オブジェクト306の奥行方向への移動を停止する(ステップS415、S416)。
【0089】
以上説明したように、第4の実施の形態の処理によれば、ノイズがあり臓器の境界や中心付近が視覚的に判別しにくい画像を用いた場合にも、ノイズ除去後の濃度曲線904を用いて移動速度を設定し、設定した移動速度に従って点位置を変更するため、臓器の境界や中心付近に点を精度よく設定できるようになる。例えば、X線CT装置等によってX線量を小さくして撮影した画像において、ノイズが生じた場合でも、第4の実施の形態の処理を適用することにより、精度よくかつ再現性よく臓器境界や臓器中心に点を設定できる。ひいては、X線CT装置等での撮影における被曝量低減にもつながる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像処理装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。
例えば、点の移動速度を設定するための指標として、濃度値や濃度勾配を用いたが、指標はこれに限定されるものではなく、例えば、濃度曲線の2次微分量を用いてもよい。その場合、濃度曲線の2次微分量は臓器の境界付近で0に近づく傾向があるため、2次微分量が0付近になる場合に点の移動速度を小さくすることで、臓器境界付近に迅速に精度よく、再現性よく、点を設定することができるようになる。また、本発明は第1から第4の実施の形態を適宜組み合わせてもよい。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0091】
1・・・・・・・画像処理システム
100・・・・・医用画像処理装置
101・・・・・CPU
102・・・・・主メモリ
103・・・・・記憶装置
104・・・・・通信I/F
105・・・・・表示メモリ
106・・・・・I/F
107・・・・・表示装置
108・・・・・マウス
109・・・・・入力装置
110・・・・・ネットワーク
111・・・・・画像データベース
113・・・・・画像撮影装置
300・・・・・操作画面
301・・・・・3D画像表示領域
302・・・・・モード選択領域
303・・・・・水平方向直交断面画像表示領域
304・・・・・垂直方向直交断面画像表示領域
305・・・・・濃度勾配表示領域
20・・・・・・3次元医用画像(3D画像)
21・・・・・・水平方向直交断面画像
22・・・・・・垂直方向直交断面画像
23・・・・・・濃度曲線
400、403・・・移動速度関数(線形)
402、405・・・移動速度関数(非線形)
401、404・・・閾値
600・・・・・移動速度関数(曲面関数)
310・・・・・操作画面(第3の実施の形態)
311・・・・・方向設定領域
800・・・・・濃度曲面(第3の実施の形態)
904・・・・・ノイズ除去後の濃度曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元医用画像を表示する表示手段と、
前記3次元医用画像の任意の3次元位置に点を設定する点設定手段と、
前記点の位置を操作する操作入力手段と、を備えた医用画像処理装置であって、
前記3次元医用画像の濃度勾配を算出する濃度勾配算出手段と、
前記濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定する移動速度設定手段と、
前記操作入力手段により前記点の位置の移動操作が行われると、前記点の位置における前記濃度勾配に応じて前記移動速度設定手段により設定された前記点の移動速度によって前記点の位置を移動する点位置移動手段と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記濃度勾配算出手段は、奥行方向の前記濃度勾配を示す濃度曲線を算出し、
前記移動速度設定手段は、前記濃度曲線に基づいて前記点の移動速度を設定し、
前記点位置移動手段は、前記移動速度設定手段により設定された前記点の移動速度によって前記奥行方向に前記点の位置を移動することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記表示手段は、更に、前記濃度曲線を前記3次元医用画像とともに表示することを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記濃度勾配算出手段は、奥行方向の前記濃度勾配と、前記奥行方向と直交する平面内の任意の方向の前記濃度勾配と、を示す濃度曲面を算出し、
前記移動速度設定手段は、前記濃度曲面に基づいて、前記奥行方向の成分および前記平面内の任意の方向の成分について前記点の移動速度を設定し、
前記点位置移動手段は、前記移動速度設定手段により設定された前記点の移動速度によって、前記奥行方向に前記点の位置を移動するとともに、前記平面内の任意の方向に前記点の位置を移動する際に適用されることを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示手段は、更に、前記濃度曲面を前記3次元医用画像とともに表示することを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記3次元医用画像の濃度値を算出する濃度値算出手段を更に備え、
前記移動速度設定手段は、前記濃度値及び前記濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記濃度勾配のノイズを除去するノイズ除去手段を更に備え、
前記移動速度設定手段は、前記ノイズ除去手段によりノイズが除去された後の濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記点設定手段により水平方向位置及び垂直方向位置が決定されると、決定された水平方向位置における断層像及び垂直方向位置における断層像をそれぞれ前記3次元医用画像とともに表示することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
3次元医用画像の任意の3次元位置に点を設定するための操作を入力する操作入力手段を備えた医用画像処理装置における医用画像処理方法であって、
前記3次元医用画像の濃度勾配を算出する濃度勾配算出ステップと、
前記濃度勾配に基づいて、前記点の移動速度を設定する移動速度設定ステップと、
前記操作入力手段により前記点の位置の移動操作が行われると、前記点の位置における前記濃度勾配に応じて前記移動速度設定ステップにより設定された前記点の移動速度によって前記点の位置を移動する点位置移動ステップと、
を備えることを特徴とする医用画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97418(P2013−97418A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236968(P2011−236968)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】