説明

医用画像処理装置及び方法、プログラム

【課題】より高い精度で血管を検出すること。
【解決手段】医用画像処理装置100は、取得した画像中の血管候補領域を複数の第1の領域に分割する分割部105と、前記複数の第1の領域のうち、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ第1の領域を、前記血管候補領域とは異なる第2の領域に設定する設定部と、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々に隣接する領域が、前記血管候補領域であるか否かに応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像内の血管を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像診断装置により取得した医用画像から血管を検出する血管検出技術がある(非特許文献1を参照)。血管検出技術には、血管の輝度値が他の部分の輝度値と異なることを利用して、閾値処理を行う領域拡張法がある。領域拡張法は、ノイズにロバストである複雑な3次元形状を持つ血管でも検出可能である、という特長がある。
【0003】

しかしながら、医用画像では、血流量が少ない血管において、輝度値が低下する場合がある。そのため、単純な閾値処理による領域拡張法では、血管領域全体を検出することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】関口博之,杉本直三,英保茂,花川隆,浦山慎一,“枝単位リージョングローイングによる頭部MRA からの血管検出”, 信学論(D-II), Vol.J87-D-II, No.1, pp.125-133, Jan.2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

非特許文献1の方法では、例えば、血管周辺に血管の輝度値に近い輝度値を持った臓器などが近接している場合、これらの臓器なども血管として誤検出するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、より高い精度で血管を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る医用画像処理装置は、取得した画像中の血管候補領域を複数の第1の領域に分割する分割部と、前記複数の第1の領域のうち、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ第1の領域を、前記血管候補領域とは異なる第2の領域に設定する設定部と、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々に隣接する領域が、前記血管候補領域であるか否かに応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より高い精度で血管を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る医用画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】棄却処理の一例を示す図である。
【図4】採択処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る医用画像処理装置100を示すブロック図である。取得部101は、医用画像診断装置等によって取得された医用画像を取得する。記憶部103は、取得部101で取得された医用画像を記憶する。操作部102は、操作者が領域の指定、基準点の指定、画像表示法の変更などの操作を行う。分割部105は、取得部101で取得された医用画像から、例えば、血管の分岐や血管領域の長さなどに注目して血管の候補となる血管候補領域を検出し、検出した血管候補領域を複数の小領域(以下「第1の領域」という。)に分割する。設定部106は、分割部105で検出された候補領域に対して、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ領域を、血管候補領域から除外する。判定部107は、隣接する領域が血管候補領域であるか否かに応じて、設定部106で除外された血管領域を再検出したり、設定部106で除外されなかった血管とは異なる領域を除外する。出力部104は、判定部107の判定結果を出力する。制御部108は、医用画像処理装置100の各部を制御する。
【0012】
次に、医用画像処理装置100の動作について、図2を用いて説明する。図2は、医用画像処理装置100の動作を示すフローチャートである。
【0013】
ステップS201では、取得部101は、医用画像診断装置等によって取得された医用画像を取得する。医用画像は、例えば、超音波診断装置、X線CT装置、MR装置等の医用画像診断装置から取得してもよいし、画像サーバ等に保存された医用画像から取得してもよい。医用画像は、2次元画像であってもよいし、3次元画像であってもよい。取得部101で取得された医用画像は、記憶部103に記憶される。
【0014】
ステップS202では、分割部105は、記憶部103に記憶された医用画像から、血管の候補となる血管候補領域を検出し、検出した血管候補領域を複数の第1の領域に分割する。血管候補領域を検出するための画像処理手順を以下に説明する。まず、操作者は、操作部102により、不図示の表示部に表示された医用画像内で、検出したい血管内部の一点を基準点として指定する。基準点は、操作者が操作部102で指定するものに限定されず、制御部108が自動的に指定するように構成してもよい。次いで、分割部105は、指定された基準点を含む血管候補領域を検出し、検出した血管候補領域を複数の第1の領域に分割する。
【0015】
血管候補領域の検出方法としては、例えば、周知の領域拡張法(リージョングローイング法)を用いることができる。第1の領域への分割は、血管が分岐した部分にある分岐点や領域の長さなどの血管の形状に注目して分割を行うことが好ましい。例えば、血管の分岐点を検出しながら領域拡張を行うことによって、血管候補領域を枝単位で第1の領域に分割することが好ましい。第1の領域のサイズは、被験体や検出対象となる領域の違いなどによって変化させてもよいし、検出対象となる領域別に予め設定してもよいし、検出処理を行うときに自動で最適なサイズに設定してもよい。例えば、脳領域や肝臓領域などの部位では、血管の長さや太さはもちろん、過検出されやすい血管とは異なる部分の長さや太さも異なる場合があるため、検出対象となる部位などに応じて、第1の領域のサイズを変更させてもよい。
【0016】
ステップS203では、設定部106は、予め定められた血管の太さを基準として、分割部105により分割された第1の領域が、血管であるか否かを判定する。設定部106は、予め定められた血管の太さ以上の太さを持つ第1の領域を、血管以外の領域(以下「第2の領域」という。)に設定し、血管候補領域から除外する。予め定められた血管の太さは、例えば、実際の血管の太さを予め測定することにより、適宜設定することができる。予め定められた血管の太さは、注目領域の部位や目的に応じて、適宜変更することができる。血管の太さの判定には、第1の領域の画素数を用いてもよいし、物理的な血管の太さを用いてもよい。第1の領域の太さは、一般には、3次元画像では面積で表され、2次元画像では幅で表されるが、本実施形態はこれに限定されない。第1の領域の太さは、周知の方法により求められる(例えば、非特許文献1を参照).例えば、非特許文献1のように、領域拡張法によって抽出された領域に対しては、2次元画像、3次元画像共に、拡張1サイクルで抽出された画素数の平均値を用いて近似するとよい。
【0017】
ステップS204では、判定部107は、血管の連結性による血管判定を行う(以下「連結判定処理」という。)。連結判定処理は、棄却処理と採択処理に分けられる。
【0018】
棄却処理では、判定部107は、設定部106で血管候補領域であると判定された第1の領域のうち、周囲の領域の情報から判断して血管らしくない領域を、血管候補領域から除外する。例えば、注目している第1の領域の周囲には血管候補領域がなく、孤立している第1の領域を血管候補領域から除外したり、周囲が血管候補領域であっても周辺領域と比較して太さが急激に変化している領域を血管候補領域から除外したりする。例えば、血管が臓器と重なった場合には、臓器を血管候補領域から除外することができる。
【0019】
図3は、棄却処理の一例を示す図である。図3(a)は、第1の領域を血管候補領域から除外する場合を示す。図3(b)は、第1の領域を血管候補領域から除外しない場合を示す。図3において、R1〜R4は、第1の領域又は第2の領域を示している。○は、血管候補領域に設定された第1の領域であることを示している。×は、血管候補領域から除外された第2の領域であることを示している。
【0020】
まず、図3(a)を参照して棄却処理について説明する。棄却処理では、棄却処理の対象となっている領域に隣接する領域から投票処理による多数決によって判定を行うとよい。例えば、図3(a)に示すように、設定部106は、棄却処理の対象となっている領域とそれに隣接する領域の中で、第1の領域に設定された領域の個数が、第2の領域に設定された領域の個数よりも少なければ、棄却処理の対象となっている領域を第2の領域に設定する。図3(a)では、R3が棄却処理の対象となっている。R3は、第1の領域に設定されているが、R3に隣接するR1、R2、R4は、第2の領域に設定されている。図3(a)では、第1の領域に設定された領域が1つ(すなわち、R3)、第2の領域に設定された領域が3つ(すなわち、R1、R2、R4)であるため、設定部106は、R3を第2の領域に設定し、血管候補領域から除外する。
【0021】
次に、図3(b)を参照して棄却処理について説明する。図3(b)では、第1の領域に設定された領域が2つ(R1、R3)、第2の領域に設定された領域が2つ(R2、R4)であるため、設定部106は、棄却対象であるR3を第1の領域のままに設定し、血管候補領域から除外しない。
【0022】
図4は、採択処理の一例を示す図である。図4(a)は、第2の領域を血管候補領域として再検出する場合を示す。図4(b)は、第2の領域を血管候補領域として再検出しない場合を示す。図4において、R1〜R4は、第1の領域又は第2の領域を示している。○は、血管候補領域に設定された第1の領域であることを示している。×は、血管候補領域から除外された第2の領域であることを示している。
【0023】
まず、図4(a)を参照して採択処理について説明する。採択処理においても同様に、採択処理の対象となっている領域に隣接する領域から投票処理による多数決によって判定を行うとよい。例えば、図4(a)に示すように、設定部106は、採択処理の対象となっている領域とそれに隣接する領域の中で、第1の領域に設定された領域の個数が、第2の領域に設定された領域の個数以上であれば、採択処理の対象となっている領域を第1の領域に再設定する。図4(a)では、R3が採択処理の対象となっている。R3とR3に隣接するR2は、第2の領域に設定されている。R3に隣接するR1、R4は、第1の領域に設定されている。図4(a)では、第1の領域に設定された領域が2つ(すなわち、R1、R4)、第2の領域に設定された領域が2つ(すなわち、R2、R3)であるため、設定部106は、R3を第1の領域に設定し、血管候補領域に再設定する。
【0024】
次に、図4(b)を参照して採択処理について説明する。図4(b)では、第1の領域に設定された領域が1つ(R1)、第2の領域に設定された領域が3つ(R2、R3、R4)であるため、設定部106は、採択対象であるR3を第2の領域のままに設定し、血管候補領域として再検出しない。
【0025】
また、棄却処理及び採択処理の少なくとも一方において、例えば、採択処理の対象となっている領域の走行方向を考慮して、血管候補領域に設定するか否かを判定してもよい。具体的には、医用画像処理装置100は、処理の対象となっている領域の各々の走行方向を検出する検出部109を更に備え、判定部107が、検出部109で検出された走行方向の変化量に応じて、処理の対象となっている領域の各々が血管であるか否かを判定してもよい。検出部109で検出された走行方向の変化量が予め設定した値よりも大きい場合、すなわち領域の曲がりが大きい場合には、血管でない可能性が高い。その場合、判定部107は、棄却処理において、棄却処理の対象となっている領域を、血管候補領域から除外してもよいし、採択処理において、採択処理の対象となっている領域、血管候補領域として再検出しないようにしてもよい。また、領域の走行方向は、領域拡張法で領域が拡張する方向から、領域ごとに平均化されたものを用いてもよいし、更に細かい領域で走行方向を求めてもよい。また、連結判定処理では、棄却処理と採択処理の順序を入れ替えてもよい。
【0026】
このように、連結判定処理を行うことによって、ステップS203での太さ判定において、除外しきれなかった血管以外の領域(例えば、臓器の末端で領域のサイズが小さい領域)を血管候補領域から除外したり、誤って除外されてしまった血管領域候補を再検出したりすることができる。
【0027】
ステップS205では、出力部104は、第1の領域に設定された領域(すなわち、血管領域)を出力する。出力部104は、例えば、画像上で血管領域を色分けして、血管領域が他の領域と区別可能なように表示することが好ましい。
【0028】
以上のように、本発明の実施形態に係る医用画像処理装置によれば、例えば、血管と臓器が接触して写り込んでしまうような領域でも、血管を効果的に検出することができる。そのため、操作者は、煩雑な作業なく、関心部位の血管診断をおこなうことができる。なお、血管が分岐する数は、血管の分岐がない場合も含めて、図3、4のものに限定されない。
【0029】
なお、本発明の実施形態に係る医用画像処理装置は、例えば、汎用のコンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。すなわち、医用画像処理装置の各部は、上記のコンピュータに搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このとき、医用画像処理装置は、上記のプログラムをコンピュータに予めインストールすることで実現してもよいし、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶するか或いはネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータに適宜インストールすることで実現してもよい。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形したりすることができる。また、上記実施形態に開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
100 医用画像処理装置
105 分割部
106 設定部
107 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した画像中の血管候補領域を複数の第1の領域に分割する分割部と、
前記複数の第1の領域のうち、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ第1の領域を、前記血管候補領域とは異なる第2の領域に設定する設定部と、
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々に隣接する領域が、前記血管候補領域であるか否かに応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、判定対象となっている前記第1の領域とそれに隣接する領域との中で、前記第1の領域に設定された領域の個数が、前記第2の領域に設定された領域の個数よりも少なければ、前記対象となっている領域を前記第2の領域に設定することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、判定対象となっている前記第2の領域とそれに隣接する領域との中で、前記第1の領域に設定された領域の個数が、前記第2の領域に設定された領域の個数以上であれば、前記処理の対象となっている領域を前記第1の領域に再設定することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、
判定対象となっている前記第1の領域とそれに隣接する領域との中で、前記第1の領域に設定された領域の個数が、前記第2の領域に設定された領域の個数よりも少なければ、前記対象となっている領域を前記第2の領域に設定し、
判定対象となっている前記第2の領域とそれに隣接する領域との中で、前記第1の領域に設定された領域の個数が、前記第2の領域に設定された領域の個数以上であれば、前記処理の対象となっている領域を前記第1の領域に再設定することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記血管候補領域は、分岐した部分を含み、
前記分割部は、前記分岐した部分の分岐点で前記血管候補領域を分割することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記分割部は、前記第1の領域のサイズを変更可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々の走行方向を検出する検出部を更に備え、
前記判定部は、前記走行方向の変化量に応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
分割部が、取得した画像中の血管候補領域を複数の第1の領域に分割する手順と、
設定部が、前記複数の第1の領域のうち、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ第1の領域を、前記血管候補領域とは異なる第2の領域に設定する手順と、
判定部が、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々に隣接する領域が、前記血管候補領域であるか否かに応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定する手順と、
を含む医用画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
分割部が、取得した画像中の血管候補領域を複数の第1の領域に分割する手順と、
設定部が、前記複数の第1の領域のうち、予め定められた血管の太さ以上の太さをもつ第1の領域を、前記血管候補領域とは異なる第2の領域に設定する手順と、
判定部が、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々に隣接する領域が、前記血管候補領域であるか否かに応じて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々が血管であるか否かを判定する手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−220775(P2010−220775A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70820(P2009−70820)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】