説明

医用画像処理装置

【課題】灌流解析の診断精度向上を支援すること。
【解決手段】医用画像処理装置は、被検体に関する一連の医用画像のデータを扱う。時間濃度曲線発生部121は、一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する。近似処理部123は、複数の時間濃度曲線中の特定の時間濃度曲線と、複数種類の灌流モデル各々とのコンボリューションを、灌流モデル各々が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って複数の時間濃度曲線各々に対して近似させる。適合性指標マップ発生部124は、近似処理部による複数の画素にそれぞれ対応する複数の近似誤差に基づいて、複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の適合性指標マップを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血流灌流(Perfusion)の解析は臓器の機能診断に非常に有効である。灌流解析では、臓器に流入する動脈に関する時間濃度曲線(TDC)と臓器組織に関する時間濃度曲線との間の移行係数を例えば最小二乗法により近似的に同定し、同定した移行係数から灌流指標を計算する。
【0003】
例えば脳の灌流解析と異なり、腹部臓器の栄養および機能血管は臓器ごとにさまざまであるため、複数種類の灌流モデル(分画モデル)および解析モデルから対象臓器に応じて選択した灌流モデルおよび解析モデルの組み合わせの種類を用いて解析が行われる。
【0004】
従って、選択した灌流モデルおよび解析モデルに対応する臓器領域以外の領域では灌流指標はその適合性が低い。当該領域では灌流診断から除外する必要があるが、その領域を明りょうに認識することができない。一般的に、腹部領域の組織はCT値の差異が小さい軟部組織の集合体であるため、CT画像から臓器領域を区分してもその適合性は高くはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−144139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、灌流解析の診断精度向上を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、被検体に対して同一部位を時間を変えて複数回撮像、つまりダイナミックスキャン又はシネスキャンして得られる一連の医用画像のデータを記憶する記憶部と、前記一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する時間濃度曲線発生部と、前記複数の時間濃度曲線中の特定の時間濃度曲線と、複数種類の灌流モデルにそれぞれ適合した複数の形状をそれぞれ有する複数の応答関数各々とのコンボリューションを、前記灌流モデル各々が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って前記複数の時間濃度曲線各々に対して近似させる近似処理部と、前記近似処理部による前記複数の画素にそれぞれ対応する複数の近似誤差に基づいて、前記複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の適合性指標マップを発生する適合性指標マップ発生部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態による画像処理手順を示す流れ図である。
【図3】図3は、図2に続く本実施形態による画像処理手順を示す流れ図である。
【図4】図4は、図2のS13で生成されるTDCの一例を示す図である。
【図5】図5は、図1の灌流解析モデル記憶部に記憶される脳モデル(One compartment model)を示す図である。
【図6】図6は、図1の灌流解析モデル記憶部に記憶される肝臓モデル(Dual-input one compartment model)を示す図である。
【図7】図7は、図1の灌流解析モデル記憶部に記憶される膵臓モデル(Open two compartment model)を示す図である。
【図8】図8は、図1の灌流解析モデル記憶部に記憶される脾臓モデル(Open two compartment model)を示す図である。
【図9】図9は、図1の灌流解析モデル記憶部に記憶される腎臓モデル(Open two compartment model)を示す図である。
【図10】図10は、図2のS14で生成される脾臓モデルを用いた灌流マップと肝臓モデルを用いた灌流マップの一例を示す図である。
【図11】図11は、図2のS15で生成される脾臓モデルを用いたAICマップと肝臓モデルを用いたAICマップの一例を示す図である。
【図12】図12は、図2のS16で生成される最小AICマップの一例を示す図である。
【図13】図13は、図2のS17で生成される領域マップの一例を示す図である。
【図14】図14は、図2のS18で生成される合成灌流マップの一例を示す図である。
【図15】図15は、図2のS20−S25による合成灌流マップの各種表示機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置を説明する。本実施形態に係る医用画像処理装置は、被検体に対して同一部位を時間を変えて複数回撮像、つまりダイナミックスキャン又はシネスキャンして得られる一連の医用画像のデータを扱う。時間濃度曲線発生部は、一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する。近似処理部は、複数の時間濃度曲線中の特定の時間濃度曲線と、複数種類の灌流モデルにそれぞれ適合した複数の形状をそれぞれ有する複数の応答関数各々とのコンボリューションを、灌流モデル各々が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って複数の時間濃度曲線各々に対して近似させる。適合性指標マップ発生部は、近似処理部による複数の画素にそれぞれ対応する複数の近似誤差に基づいて、複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の適合性指標マップを発生する。
【0010】
本実施形態は、主に被検体の任意部位、典型的には本実施形態の作用効果がもっとも発揮されると想定され得る腹部に関する時間的に連続して収集された一連の複数枚の医用画像から、画素毎に臓器組織の血流動態を表す指標、つまり灌流指標を計算し、灌流指標の空間的分布としての灌流マップを生成する技術分野に関る。本実施形態で扱う医用画像としては、X線コンピュータトモグラフィ装置による断層画像に限定されず、シングルフォトンエミッショントモグラフィ装置(SPECT)、ポジトロンエミッショントモグラフィ装置(PET)、磁気共鳴イメージング装置(MRI)、超音波診断装置のいずれのモダリティで収集された医用画像でも良い。ここでは、本実施形態では、X線コンピュータトモグラフィ装置による断層画像を扱うものとして説明する。
【0011】
図1には、本実施形態に係る医用画像処理装置をX線コンピュータ断層撮影装置と共に示している。ガントリ部100は、回転自在に支持される回転リング102を有する。回転リング102には、X線管101、高電圧発生装置109、2次元検出器103、データ収集回路104(DAS;Data Aquisition System)が搭載される。X線管101にはスリップリング機構108を介して高電圧発生装置109が接続される。データ収集回路104には光学的又は電磁的要素を用いた非接触データ伝送装置105を介して前処理装置106が接続される。前処理装置106はデータ収集回路104から出力される生データを、アナログ/ディジタル変換処理及び各種補正処理により投影データに変換する。データ記憶部112は投影データを記憶する。画像再構成処理部118は、投影データに基づいて断層画像データを再構成する。データ記憶部112は断層画像データを記憶する。なお、本実施形態では、ホストコントローラ110の制御のもとで、被検体の腹部を撮影対象として、回転フレーム102の連続的な回転により、いわゆるダイナミックスキャンが実行される。それにより被検体腹部の同一段面に関して時間的に連続して収集された一連の複数枚の断層画像のデータが発生され、断層画像記憶部112に記憶される。
【0012】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、データ記憶部112の他、次の構成要素から構成される。TDC発生部121は、一連の断層画像のデータから図4に例示するCT値の時間変化、一般的には時間濃度曲線(TDC;Time Density Curve)を画素毎に発生する。データ記憶部112はTDCデータを記憶する。灌流解析モデル記憶部122には、被検体に含まれる複数の臓器にそれぞれに対して複数種類の灌流解析モデルのいずれかが関連付けらている。
【0013】
図5〜図9に灌流解析モデルの一例を示している。灌流解析モデルには、例えば単一臓器内における血液動態上の区画数(compartment)、当該臓器への流入血管本数(input)、当該臓器内区画間での間隙性の有無(Open)、当該臓器の血管以外からの漏出性の有無(leakage)等の観点から“One compartment model(単一区画モデル)”、“Dual-input one compartment model(2流入/単一区画モデル)”、“Open two compartment model(間隙性2区画モデル)”、“leakage open two compartment model(漏出間隙性2区画モデル)”などの複数種類のタイプに分化される。正常脳組織は脳血液関門(BBB: blood-brain barrier)により造影剤が血管外に流出しないため、One compartment modelと仮定することができる。肝臓は、動脈および門脈の2本からなるInput curveからなり、Dual-input one compartment modelと仮定することができる。膵臓領域は、造影剤の流出が非常に早い臓器。 Interstitialを無視すれば、One compartment modelで簡便に解析が可能かもしれないが、本命はTwo compartment modelと考える。脾臓領域は血管内(Plasma)・血管外液(Interstitial)間を自由に行き来することができ、Open two compartment modelと仮定することができる。子宮腫瘍領域は血管内(Plasma)・血管外液(Interstitial)間を自由に行き来することができ、Open two compartment modelと仮定することができる。頸部腫瘍領域は血管内(Plasma)・血管外液(Interstitial)間を自由に行き来することができ、Open two compartment modelと仮定することができる。
【0014】
また灌流解析には臓器ごとに流入出血管の位置を特定する必要があり、臓器ごとに流入血管の位置に関する情報が、灌流解析モデル記憶部122において複数の臓器それぞれに対して関連付けられる。例えば肝臓であれば動脈と門脈と静脈とに関する情報が関連付けられる。操作者は流入出血管を特定する情報に従って画像上に流入出血管を指定することができる。
【0015】
灌流解析処理部123は、一連の断層画像のデータと、流入出血管の情報と、予め規定された複数の灌流モデルとを用いて、複数の灌流モデルにそれぞれ対応する複数の灌流マップを生成する。各灌流モデルは、対応する臓器へ流入する流入量の時間変化と、当該臓器内の組織における血流量の時間変化との間の関係を規定する応答関数である。複数の応答関数は、複数種類の灌流モデルにそれぞれ適合した複数の形状をそれぞれ有する。なお、応答関数の代表例としてここでは「伝達関数」を扱うものとして説明する。各伝達関数は、少なくとも一つのパラメータを有する。各臓器への血液の流入は、断層画像内の動脈上の特定画素に関する時間濃度曲線、又は特定画素及び周辺画素に関する平均時間濃度曲線により与えられる。当該臓器の組織に関する血流量の時間変化は、当該臓器内の組織上の複数の画素各々に関する時間濃度曲線により与えられる。特定画素に関する時間濃度曲線は、時間方向に伝達関数を線形又は非線形にコンボリュートされる。本実施形態では、コンボリュートされた時間濃度曲線が、当該画像内のすべての画素各々の時間濃度曲線に対して近似される、つまり両者の間の誤差が最小化されるように、伝達関数のパラメータが調整される。この近似誤差が小さいとき、当該伝達関数に対する適合性が高い。高い適合性を示す画素の組織は、当該伝達関数に対応する臓器内の組織である可能性が高い。近似誤差が大きいとき、当該伝達関数に対する適合性が低い。低い適合性を示す画素の組織は、当該伝達関数に対応する臓器内の組織である可能性が低い。複数の伝達関数は複数種類の臓器にそれぞれ対応して既定される。各伝達関数は、対応する臓器における血流の入出力メカニズムに従って構築される。複数の伝達関数は、相互に相違する基本的形状を有する。伝達関数のパラメータが変更されたときでさえ、基本的形状は維持される。ある臓器の血流メカニズムは単一の矩形関数としての伝達関数で表現される。他の臓器の血流メカニズムは矩形関数と自然関数などの複数の関数が組み合わされた伝達関数で表現される。様々な臓器の血流メカニズムは後述する。
【0016】
なお、近似処理で用いられる入力関数としての臓器へ流入する血流の時間濃度変化は、典型的には、一連の断層画像から発生されるが、それに限定されない。灌流モデル毎に、それぞれのモデルが対応する臓器の標準的な時間濃度変化を予め用意しておき、この標準的な時間濃度変化と伝達関数とのコンボリューションを、一連の断層画像から画素毎に発生された時間濃度変化に近似させるようにしても良い。この場合、近似誤差は臓器の機能低下を示唆する。
【0017】
動脈上の特定画素に関する時間濃度曲線を入力関数Ca(t)、すべての画素に関する組織の時間濃度曲線を出力関数Ct(t)、伝達関数をMTF、コンボリューション処理を*とする。Ca(t)*MTFが、Ct(t)に近似するように、つまりCt(t)に対するCa(t)*MTFの誤差の最小二乗和が最小になるようにMTFのパラメータを決定する。パラメータが決定された伝達関数MTFから、例えば脳組織であればその血流動態を表す灌流指標(CBP、CBV、MTT)が計算される。CBPは、脳組織の毛細血管内の単位体積及び単位時間あたりの血流量[ml/100ml/min]を表し、CBVは、脳組織内の単位体積あたりの血液量[ml/100ml]、MTTは毛細血管の血液平均通過時間[秒]を表す。
【0018】
灌流解析処理部123による灌流解析処理により、肝臓モデルと脾臓モデルとを用いるとき、肝臓モデルを用いて解析対象医用画像内の全画素を個々に解析した灌流指標の空間モデル(肝臓モデルに関する灌流マップという)と、脾臓モデルを用いて全画素を個々に解析した灌流指標の空間モデル(脾臓モデルに関する灌流マップという)とがそれぞれ発生される。また灌流解析処理部123による灌流解析処理により、伝達関数を近似する際の誤差総和又は誤差の二乗和の平方根(残差)に関する残差マップも灌流モデル毎にそれぞれ発生される。灌流解析処理部123は、灌流解析処理の中で、部位に含まれる複数の臓器に対応する複数の灌流マップとともに、複数の残差マップも生成する。
【0019】
AICマップ生成部124は、部位に含まれる複数の臓器に対応する複数の残差マップからそれぞれ対応する複数のAICマップを生成する。AICは、灌流解析の近似処理の誤差に基づいて計算される、灌流指標に関する統計的適合性指標の一例であり、AICマップとはAICの空間分布である。AICは、情報量規準(An Information Crterion)の略称であり、赤池情報量規準やベイズ情報量規準などがある。例えば赤池情報量規準は、次の通り与えられる。
【0020】
AIC=−2・(最大対数尤度−自由パラメータ数)
自由パラメータ数は最小二乗法では定数である。AICでは、その値が低いほど、適合性が高い、適合性が高いとほぼ認定出来る。つまり、AICマップでAIC値が低い領域はその灌流解析に用いた灌流モデルに対する適合性が高く、AIC値が高い領域はその灌流解析に用いた灌流モデルに対する適合性が低いといえる。
【0021】
AICマップ処理部125は、複数の臓器にそれぞれ対応する複数のAICマップから画素毎に最も適合性の高い値、ここでは最小値(最小AIC)を選択し、選択した最小AICの値を画素値とするその空間分布を表す単一の最小AICマップを生成する。またAICマップ処理部125は、最小AICマップにクラスタリング・ラベリング処理および輪郭抽出処理を行い、血管や各臓器領域を同定し、血管や臓器領域を区分した領域マップを生成する。
【0022】
灌流マップ合成部126は、AICマップ処理部125で生成された領域マップに従って、複数の灌流マップを部分的に貼り合わせて単一の灌流マップ(合成灌流マップ)を発生する。要するに、合成灌流マップは、各灌流モデルに対する適合性の高い灌流指標値に関するその空間分布を示している。
【0023】
表示制御部127は、表示装置116に合成灌流マップを表示するために必要な処理をする。また入力デバイス115を介して操作者から入力された各種表示に関する指令に従って、合成灌流マップの表示態様に応じた処理をする。
【0024】
図2、図3には本実施形態による灌流解析処理の処理手順を示している。入力デバイス115を介して入力された操作者の指令に従ってデータ記憶部112から灌流処理対象としての特定の一連の断層画像のデータがTDC発生部121に読み出される(S11)。一連の断層画像のデータに属性される診断部位、例えば腹部に対応する複数の臓器に係る複数の灌流モデルのデータが灌流解析モデル記憶部122から灌流解析処理部123に読み出される(S12)。ここでは説明の便宜上、肝臓モデルと脾臓モデルが読み出されると仮定する。また灌流解析処理部123には、TDC発生部121で一連の断層画像から生成されたその全画素に関する複数の時間濃度曲線(TDC)が供給される(S13)。
【0025】
灌流解析処理部123では、肝臓モデルを用いて全画素に関する複数の時間濃度曲線(TDC)に基づいて肝臓モデルに対応する灌流マップ(図10参照)が生成される(S14)。それとともに肝臓モデルに対応する残差マップが生成される。同様に、脾臓モデルを用いて全画素に関する複数の時間濃度曲線(TDC)に基づいて脾臓モデルに対応する灌流マップが生成され、脾臓モデルに対応する残差マップが生成される。
【0026】
次に、AICマップ生成部124により、肝臓モデルに対応する残差マップから、肝臓モデルに対応するAICマップ(図11参照)が生成される(S15)。同様に脾臓モデルに対応する残差マップから、脾臓モデルに対応するAICマップが生成される。AICマップ処理部125により、図12に示すように、肝臓モデルに対応するAICマップのAIC値と、肝臓モデルに対応するAICマップのAIC値との最小値が画素毎に選択され、最小AICマップが生成される(S16)。AICマップ処理部125において、最小AICマップに対してクラスタリング・ラベリング処理および輪郭抽出処理がかけられ、図13に示すように、血管や臓器領域が区分された領域マップが生成される(S17)。領域マップは、各灌流モデルに対する適合性指標に基づいて、血管や臓器領域を区分したものである。
【0027】
灌流マップ合成部126により、図14に示すように、AICマップ処理部125で生成された領域マップに従って、複数の灌流マップが部分的に貼り合わされて単一の灌流マップ(合成灌流マップ)が発生される(S18)。合成灌流マップは、表示制御部127の制御のもとで表示装置116に濃淡又はカラーで表示される(S19)。
【0028】
この表示に際しては、表示制御部127は、図3にS20−S25で示し、図15に例示するように、各種表示指示に対して対応する処理を実行することができる。操作者から「領域区分枠の表示指示」が入力されたとき、表示制御部127は、領域マップに従って臓器領域を区分する領域区分枠を生成し、これを合成灌流マップに重畳して表示する(S20)。操作者から「断層画像の重畳表示指示」が入力されたとき、表示制御部127は、一連の断層画像中の任意の一枚、例えば最後のフレームの断層画像、又は一連の断層画像をそのまま連続的に表示して動画として、合成灌流マップ(又は指示された灌流マップ)に重畳して表示する(S21)。操作者から「表示条件個別調整指示」が入力されたとき、表示制御部127は、合成灌流マップの表示画面に表示ウインドウ調整スケール及びルックアップテーブル選択ボックス等の表示設定可能な条件に対応する操作ボックスを表示させ、操作者により選択された臓器領域に対して表示ウインドウを調整し、またルックアップテーブルを切り替える(S22)。このように臓器領域毎に個別に表示条件を調整することができる。
【0029】
操作者から合成灌流マップ上の任意の点が指定されたとき、表示制御部127では、当該指定点に対応するTDCをそのままグラフとして合成灌流マップと同じ画面にそれと並べて表示する(S23)。操作者から合成灌流マップ上に関心領域(ROI)が設定されたとき、表示制御部127では、当該ROIに対応する複数のTDCから平均TDCを生成し表示し、またROI内の平均灌流指標を計算し表示する(S24)。
【0030】
操作者から「適合性の低い領域を表示しない」との指令が入力されたとき、表示制御部127では、最小AICマップ上で所定の閾値よりも高いAIC値を示す領域について合成灌流マップを非表示にする(S25)。操作者から「血管領域を明示する」との指令が入力されたとき、表示制御部127では、領域マップ上で同定された血管領域に対応する網掛け等の特異な態様のマスクマークを発生し合成灌流マップに重畳する(S26)。この際、血管領域は上記ROIの計算から除外される。容易に血管領域の確認もしくは解析精度が低い領域を認識して、擬陽性を判別することができる。
【0031】
このように今まで個別に解析・出力していた灌流マップを同時に表示することにより、読影がしやすくなり誤診をする確率が低くなる。また、血管と各組織の領域分けを行うことで最適な解析条件・表示条件を個別に設定することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
100…ガントリ部、101…X線管、102…回転リング、103…2次元検出器、104…データ収集回路、105…非接触データ伝送装置、106…前処理装置、108…スリップリング機構、109…高電圧発生装置、110…ホストコントローラ、112…データ記憶部、116…表示装置、118…画像再構成処理部、121…TDC発生部、122…灌流解析モデル記憶部、123…灌流解析処理部、124…AICマップ生成部、125…AICマップ処理部、126…灌流マップ合成部126、127…表示制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する一連の医用画像のデータを記憶する記憶部と、
前記一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する時間濃度曲線発生部と、
前記複数の時間濃度曲線中の特定の時間濃度曲線と、複数種類の灌流モデルにそれぞれ適合した複数の形状をそれぞれ有する複数の応答関数各々とのコンボリューションを、前記灌流モデル各々が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って前記複数の時間濃度曲線各々に対して近似させる近似処理部と、
前記近似処理部による前記複数の画素にそれぞれ対応する複数の近似誤差に基づいて、前記複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の適合性指標マップを発生する適合性指標マップ発生部とを具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記複数種類の灌流モデルは、複数の臓器にそれぞれ対応する複数の伝達関数であり、
前記複数の伝達関数はそれぞれ対応する臓器における血液の流入と流出との間の関係に基づいて既定される請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記パラメータに基づいて、前記複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の灌流マップを発生する灌流マップ発生部をさらに備える請求項2記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記複数種類の適合性指標マップに基づいて、前記複数種類の灌流マップを切り張りして単一の灌流マップを発生する灌流マップ合成部をさらに備える請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記複数種類の適合性指標マップに基づいて、最も高い適合性指標値の空間分布を表す高適合性指標マップを発生する高適合性指標マップ発生部をさらに備える請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記高適合性指標マップ発生部は、前記高適合性指標マップに基づいて、前記複数の臓器の区分を表す区分マップを発生する請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記区分マップは前記単一の灌流マップに重畳表示されることを特徴とする請求項6記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示された灌流マップは、前記区分マップに従って表示態様が区分毎に相違される請求項7記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記表示された灌流マップは、前記高適合性指標マップ上での閾値未満の適合性指標値を示す領域を表すマーカを重ねられる請求項7記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記表示された灌流マップにおいて、前記高適合性指標マップ上での閾値未満の適合性指標値を示す領域に対応する部分が非表示に設定されることを特徴とする請求項7記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記区分マップには前記区分の境界を示す境界線が重ねられる請求項7記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記適合性指標マップの少なくとも一つは、前記灌流マップの少なくとも一つとともに表示される請求項6記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
被検体に関する一連の医用画像のデータを記憶する記憶部と、
前記一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する時間濃度曲線発生部と、
前記複数の時間濃度曲線各々に対して、複数種類の灌流モデル各々と標準的時間濃度曲線とのコンボリューションを、前記灌流モデル各々が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って近似させる近似処理部と、
前記コンボリューションの近似誤差に基づいて、前記複数種類の灌流モデルにそれぞれ対応する複数種類の適合性指標マップを発生する適合性指標マップ発生部とを具備する医用画像処理装置。
【請求項14】
被検体に関する一連の医用画像のデータを記憶する記憶部と、
前記一連の医用画像から複数の画素にそれぞれ対応する複数の時間濃度曲線を発生する時間濃度曲線発生部と、
前記複数の時間濃度曲線各々に対して、特定臓器の血流メカニズムを表す伝達関数と標準的時間濃度曲線とのコンボリューションを、前記伝達関数が有する少なくとも一つのパラメータの調整を伴って近似させる近似処理部と、
前記近似処理部による近似誤差に基づいて前記近似誤差に応じた指標に関するマップを発生するマップ発生部とを具備する医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−71124(P2012−71124A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191017(P2011−191017)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】