医用画像処理装置
【課題】三次元動画像において非変形の特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にする。
【解決手段】医用画像処理装置は、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部8bと、その特徴領域以外の領域である非特徴領域における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備える。
【解決手段】医用画像処理装置は、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部8bと、その特徴領域以外の領域である非特徴領域における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置は、通常、被検体内部の医用画像を撮影する医用画像撮影装置やその医用画像を処理する医用画像処理装置などを備えている。例えば、医用画像撮影装置としては、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)などが挙げられる。このような医用画像撮像装置は、撮像により被検体内部の情報としてボリュームデータを取得する。
【0003】
医用画像処理装置では、前述のボリュームデータを可視化する可視化技術として、例えば、ボリュームレンダリングを用いることがある。このボリュームレンダリングでは、例えば、視点から各画素に至る光線を追跡して対象物を描画するレイキャスティング法によりボリュームデータから三次元画像を生成する(3Dレンダリング)。さらに、その三次元画像を時系列に並べて三次元動画像を生成することもある(4Dレンダリング)。
【0004】
ここで、大動脈弁狭窄症の治療方針決定、例えば、弁形成や弁置換などの決定のための画像診断では、大動脈弁を大動脈起始部方向から見た三次元動画像で観察することが最適である。具体的には、弁が動いている最中の弁口面積の変化をその弁周囲の石灰化部分による影響を考慮しながら観察を行う。
【0005】
ところが、弁の動き自体が速いため、時系列に撮像された医用画像(例えば、CT画像)を単純に順次表示する動画再生では、フレーム数が足りず、弁の動きを十分に観察することができない。そこで、時系列のボリュームデータからさらに細かい時系列のボリュームデータを補間処理により生成し、弁の動きを滑らかに再生する高時間分解能4Dレンダリングが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−205号公報
【特許文献2】特開2007−181674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の高時間分解能4Dレンダリングでは、非線形位置合わせに基づく補間処理により弁の動きが滑らかに再生される一方、弁に付着した石灰化部分は非線形位置合わせによって変形する。このため、弁口面積の変化に対する石灰化部分の影響を正確に診断することができなくなってしまう。
【0008】
本来、石灰化部分は骨と同じカルシウム成分であり、弁の動きによって変形することはないため、補間処理後の石灰化部分は正確な形状でなくなっている。このため、診断者は石灰化部分、すなわち非変形の特徴部分及びその周囲への影響を正確に診断することができない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、三次元動画像において非変形の特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる医用画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る医用画像処理装置は、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部と、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部と、特徴領域以外の領域である非特徴領域における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部と、特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部と、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の一形態に係る医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す医用画像処理装置が備える画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す画像処理部が行う画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3に示す画像処理における非特徴領域補間データの生成を説明するための説明図である。
【図5】図3に示す画像処理における特徴領域補間データの生成を説明するための説明図である。
【図6】対象範囲の決定方法を説明するための説明図である。
【図7】対象範囲の決定に用いる情報を設定するための設定画像の一例を示す図である。
【図8】第1の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【図10】第2の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【図12】第3の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図12に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置1は、各部を集中的に制御するCPU(中央処理装置)などの制御部2と、ROM(リードオンリーメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などのメモリ3と、医用画像などの各種画像を表示する表示部4と、操作者からの入力操作を受け付ける操作部5と、各種プログラムや各種データ(例えば、撮像ボリュームデータ群D1)などを記憶する記憶部6と、外部装置との通信を行う通信部7と、医用画像を処理する画像処理部8とを備えている。これらの各部は、例えば、バスライン9により電気的に接続されている。
【0014】
制御部2は、メモリ3又は記憶部6に記憶された各種プログラムや各種データなどに基づいて各部を制御する。特に、制御部2は、各種プログラムや各種データに基づいて、データ計算又は加工などを行う一連のデータ処理や医用画像を表示する表示処理などを実行する。
【0015】
メモリ3は、制御部2が実行する起動プログラムなどを記憶するメモリであって、制御部2のワークエリアとしても機能する。なお、起動プログラムは、医用画像処理装置1の起動時に制御部2により読み出されて実行される。
【0016】
表示部4は、二次元画像や三次元画像、三次元動画像(四次元画像)などの各種画像をカラー表示する表示装置である。この表示部4としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(ブラウン管)ディスプレイなどを用いることが可能である。
【0017】
操作部5は、操作者により入力操作される入力部であって、画像表示の開始や画像の切り替え、各種設定などの様々な入力操作を受け付ける入力部である。この操作部5としては、例えば、マウスやキーボードなどの入力デバイスを用いることが可能である。
【0018】
記憶部6は、各種プログラムや各種データなどを記憶する記憶装置であって、例えば、有線又は無線のネットワークを介して送信された撮像ボリュームデータ群D1を記憶する。この記憶部6としては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0019】
ここで、撮像ボリュームデータ群D1は、時系列に撮像された複数のボリュームデータにより構成されている。ボリュームデータは、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)などの医用画像撮像装置により取得され、通信部7を介して記憶部6に保存されたり、あるいは、一旦、画像サーバなどの医用画像保管装置に保存されてから、必要に応じて通信部7を介して記憶部6に保存されたりする。
【0020】
通信部7は、LAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネットなどの無線又は有線のネットワークを介して外部装置との通信を行う装置である。この通信部7としては、LANカードやモデムなどを用いることが可能である。なお、外部装置としては、前述のX線CT装置やMRIなどの医用画像撮像装置、あるいは、画像サーバなどの医用画像保管装置などが挙げられる。
【0021】
画像処理部8は、撮像ボリュームデータ群D1に対して画像処理を行う装置である。この画像処理部8は、例えば、撮像ボリュームデータ群D1において撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、ボリュームレンダリングによる時系列高時間分解能レンダリング画像、すなわち三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する。
【0022】
ここで、ボリュームレンダリングは、ボリュームデータを可視化する可視化技術であり、例えば、レイキャスティング法を用いてボリュームデータから三次元画像を生成する。詳しくは、ボリュームデータに対して所定の視線方向(投影光線の投影方向)を決め、予め定めた視点から光線追跡処理を行い、視線上のボクセル値(輝度値など)の積分値や重み付け累積加算値を投影面上の画像ピクセルに出力して臓器などを立体的に抽出し、三次元画像を生成する。
【0023】
次に、前述の画像処理部8について詳しく説明する。
【0024】
図2に示すように、画像処理部8は、撮像ボリュームデータ群D1に対して撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせを行う非線形位置合わせ部8aと、撮像ボリュームデータ群D1に対して非変形の特徴領域を設定する領域設定部8bと、その特徴領域以外の非特徴領域補間データを生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域補間データを生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データを用いてボリュームデータの補間を行って三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備えている。
【0025】
非線形位置合わせ部8aは、撮像ボリュームデータ群D1に対して撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出を行う(図3中のステップS1)。これにより、その算出結果である非線形移動量情報が得られる。
【0026】
領域設定部8bは、非変形の特徴領域を設定し、その非変形の特徴領域とそれ以外の非特徴領域との区別を行う。この領域設定部8bは、撮像ボリュームデータ群D1、すなわち全撮像ボリュームデータ内の石灰化領域の抽出を行う(図3中のステップS2)。この抽出では、例えば、石灰化領域のCT値は1000HU程度であるため、CT値が900HU以上である領域を石灰化領域として抽出する。これにより、石灰化領域と非石灰化領域(軟組織)とが区分される。
【0027】
ここで、石灰化領域は骨と同じカルシウム成分であり、弁(動きのある病変部の一例)などの周囲の動きによって移動することはあるが変形することはない。したがって、石灰化領域はその形状が変化しない非変形の特徴領域であり、非石灰化領域は非特徴領域である。なお、特徴領域は石灰化領域に限られるものではなく、例えば、石灰化以外で硬化した組織(物質)であっても良く、非変形の領域であれば良い。
【0028】
非特徴領域補間データ生成部8cは、非石灰化領域における撮像ボリュームデータ間の補間データ、すなわち非特徴領域補間データの作成を行う(図3中のステップS3)。この非特徴領域補間データの作成では、前述のステップS1で得られた非線形移動量情報に基づいて、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1から非特徴領域補間データを作成する。
【0029】
詳しくは、図4に示すように、非石灰化領域R1の重心位置J1を非線形移動量情報に基づいて移動させ、非石灰化領域R1の補間ボリュームデータとして非特徴領域補間データを生成する。
【0030】
特徴領域補間データ生成部8dは、石灰化領域における撮像ボリュームデータ間の補間データ、すなわち特徴領域補間データの作成を行う(図3中のステップS4)。この特徴領域補間データの作成では、前述のステップS1で得られた非線形移動量情報に加え、計算により求めた線形移動量情報に基づいて、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1から特徴領域補間データを作成する。
【0031】
詳しくは、図5に示すように、石灰化領域R2の重心位置J2を非線形移動量情報に基づいて移動させ、さらに、石灰化領域R2自体を線形位置合わせにより移動、すなわち石灰化領域R2の線形回転量(線形移動量情報)に基づいて石灰化領域R2を三次元回転させて、石灰化領域R2の補間ボリュームデータとして特徴領域補間データを生成する。このとき、石灰化領域R2の重心位置J2は非線形位置合わせにより処理されるが、その石灰化領域R2自体は線形回転量による線形位置合わせにより処理されるので、石灰化領域R2の形状が変形することは無くなる。
【0032】
ここで、石灰化領域R2の重心位置J2は、その石灰化領域R2以外の非石灰化領域R1、例えば弁の移動に用いるのと同じ非線形移動量情報に基づいて移動することになるため、石灰化領域R2とその石灰化部分が付着している弁との位置ずれが生じることはほとんどない。ただし、位置合わせ精度を向上させるため、石灰化領域R2の重心位置J2の一点ではなく、石灰化領域R2の全体の非線形移動量を考慮して石灰化領域R2の移動量や線形回転量を計算しても良い。具体的には、石灰化領域R2内において重心位置J2の周辺の他の複数点を非線形移動量情報に基づいて移動させるようにする。
【0033】
合成補間データ生成部8eは、非石灰化領域R1の補間データである非特徴領域補間データと石灰化領域R2の補間データである特徴領域補間データを三次元合成し、合成補間データを生成する(図3中のステップS5)。これにより、高時間分解能4Dレンダリングを実現するための補正ボリュームデータとして、合成補間データが生成される。
【0034】
画像生成部8fは、合成補間データ生成部8eにより生成された合成補間データを用いて撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する(図3中のステップS6)。これにより、高時間分解能4Dレンダリングが実現される。
【0035】
ここで、通常、大動脈弁本体と石灰化領域とを区別せずに一律に非線形位置合わせに基づく補正処理を実施すると、三次元動画像上では石灰化部分の変形が引き起こされてしまう。ところが、実際には、大動脈弁本体は時間の変化に応じて変形するが、石灰化部分は時間の変化に応じて変形しない。そこで、大動脈弁本体と石灰化領域とを別々の補間処理により高時間分解能化し、それらを合成することにより正確な高時間分解能動画再生を行うことによって、弁口面積の変化に対する石灰化部分の影響を正確に診断することを可能にすることができる。
【0036】
図2に戻り、画像処理部8は、さらに、補間処理の対象とする対象範囲を決定する対象範囲決定部8gと、対象範囲を決定するための変化量閾値を設定する変化量閾値設定部8hと、対象範囲を決定するための対象領域を設定する対象領域設定部8iと、対象範囲を決定するための対象時間を設定する対象時間設定部8jとを備えている。
【0037】
対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ群D1から補間処理の対象とする対象範囲を決定する。この対象範囲決定部8gは、各種の決定方法(例えば、いくつかの決定方法の組み合わせ)に基づいて対象範囲の決定を行う。このとき、対象範囲の決定に用いる情報は、変化量閾値設定部8h、対象領域設定部8i及び対象時間設定部8jのいずれかから取得される。
【0038】
ここで、対象範囲の決定方法には、図6に示すように、VOI(Volume Of Interest:興味領域)の決定とTOI(Time Of Interest:興味時間)の決定があり、それらの決定方法の各々に自動決定と手動決定とが存在する。
【0039】
VOIの自動決定では、「1.変化の大きい領域の特定を行う」。例えば、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせの結果、移動量が予め指定された閾値より大きいボクセル群の領域を特定して処理対象とする。
【0040】
また、VOIの手動決定では、「2.ROI(Region Of Interest:関心領域)の描画を行う」。例えば、三次元画像に3DのROIを描いて対象領域を指定して処理対象とする。
【0041】
さらに、VOIの手動決定では、「3.オブジェクトの指定を行う」。例えば、予め作成しておいた区分オブジェクト(Segmentation Object)から処理対象を指定する。
【0042】
また、TOIの自動決定では、「4.変化の大きい時間帯の特定を行う」。例えば、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせの結果、ボリュームデータ(例えば、VOI)内の平均移動量が予め指定された閾値より大きい時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0043】
さらに、TOIの自動決定では、「5.画像内特定箇所の画素値変化に基づく興味時間帯の決定を行う」。例えば、ボリュームデータ内の特定箇所の画素値の変化量から興味時間帯を特定し、その特定した時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0044】
加えて、TOIの自動決定では、「6.非画像情報に基づく興味時間帯の決定を行う」。例えば、心電波形などの非画像情報の値(例えば、波形値など)の特徴から興味時間帯を特定し、その特定した時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0045】
また、TOIの手動決定では、「7.開始及び終了時間の指定を行う」。例えば、Time Density Curveなどの上で、開始時間及び終了時間を示すバーなどのUI(ユーザインタフェース)により興味時間帯を指定して処理対象とする。
【0046】
これらの決定方法は組み合わされて用いられる。ただし、このとき、各決定手法の処理順を最適化することで、無駄な計算処理を減らし、トータルの処理時間を短縮することができる。例えば、VOIの手動決定とTOIの自動決定を組み合わせる場合には、VOIの手動決定を先に行った方が良く、逆に、VOIの自動決定とTOIの手動決定を組み合わせる場合には、TOIの手動決定を先に行った方が良い。
【0047】
このような対象範囲の決定に用いる情報を設定する手段としては、例えば、各決定方法に対応する設定画像が表示部4に表示され、操作者は操作部5を入力操作してその設定画像に対して各種入力を行う。この各種入力に応じて、変化量閾値設定部8h、対象領域設定部8i及び対象時間設定部8jは各種データの設定を行う。この各種データに基づき、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ群D1から補間処理の対象範囲を決定する。
【0048】
ここで、前述の設定画像の一例としては、図7に示すような設定画像G1が挙げられる。この設定画像G1には、オブジェクト(例えば、大動脈弁本体とその周辺など)を示す三次元画像G1aが含まれており、さらに、変化量閾値を入力する入力スペース(入力欄)11、空間上の範囲を指定するためのROI描画ボタン12、オブジェクトを選択するためのオブジェクト選択ボタン13、時間上の範囲を指定するための開始バー14や終了バー15などが設けられている。
【0049】
この設定画像G1では、操作者が操作部5のキーボードなどを入力操作して入力スペース11に数値を入力すると、変化量閾値設定部8hはその数値を対象範囲の決定に用いる変化量閾値として設定する。なお、変化量とは、ボリュームデータ間の組織(物質)の移動量である。
【0050】
また、操作者が操作部5のマウスなどを入力操作してROI描画ボタン12をクリックすると、ROI描画が許可される。その後、操作者は操作部5のマウスなどを入力操作して三次元画像G1aにROI12aを描画する。これに応じて、対象領域設定部8iはそのROI12aを処理対象の空間領域として設定する。
【0051】
また、操作者が操作部5のマウスなどを入力操作してオブジェクト選択ボタン13をクリックすると、大動脈弁や左房室弁、右房室弁などのオブジェクト名が並ぶサブフレームが表示される。操作者はそのサブフレーム中のオブジェクト名から所望のオブジェクト名をクリックして、処理対象とするオブジェクトを選択する。これに応じて、対象領域設定部8iは、選択されたオブジェクトを処理対象の空間領域として設定する。
【0052】
また、操作者は操作部5のマウスなどを入力操作して開始バー14や終了バー15をスライド移動させ、時間範囲を示す開始時間と終了時間を指定する。これに応じて、対象時間設定部8jは、指定された開始時間と終了時間に基づいて処理対象の時間帯を設定する。
【0053】
ここで、通常、高時間分解能4Dレンダリング技術では、多量のボリュームデータを補間計算により生成し、その多量のボリュームデータをレンダリング処理する。このため、膨大な計算処理時間がかかってしまい、これは無駄な計算処理によって引き起こされている。すなわち、実際に高時間分解能で観察(あるいは解析)したい範囲は、全ボリュームデータの中でごく限られた対象領域や時間帯のみであり、その他の領域に対するボリュームデータ補間及びレンダリング処理は無駄に計算時間及びメモリ使用量を増加させる原因となっている。
【0054】
例えば、診断において、高時間分解能で観察あるいは解析したい範囲は、動き(変化)の大きい箇所や時間帯、また、観察あるいは解析対象となる病変部を中心としたVOI内、あるいは、非画像情報(例えば、心電波形など)や画像内の特定箇所の画素値の変化に基づくTOI内などである。
【0055】
そこで、前述のように特定の興味範囲(VOIやTOIなど)のみに高時間分解能処理を適用することによって、計算処理時間及びメモリ使用量を減らし、診断者が待ち時間なく快適に興味範囲を観察あるいは解析することを可能にする。また、観察対象である興味範囲のみを高時間分解能で表示することによって、診断者が興味範囲に集中して観察することができるようになる。
【0056】
なお、前述の画像処理部8の各部は、電気回路などのハードウエアで構成されていても良く、あるいは、これらの機能を実行するプログラムなどのソフトウエアで構成されていても良い。また、それらの両方の組合せにより構成されていても良い。
【0057】
次に、前述の医用画像処理装置1が行う画像処理及び表示処理について第1ないし第3の実施例で説明する。なお、処理に用いる各種データは必要に応じて記憶部6に一時的あるいは長期的に保存される。
【0058】
(第1の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第1の決定方法と第4の決定方法(図6参照)を組み合わせた第1の実施例について図8及び図9を参照して説明する。なお、図9では、一例として、撮像ボリュームデータはPhase(フェーズ)1からPhase4まで存在している。
【0059】
図8に示すように、変化量閾値の決定が行われる(ステップS11)。このステップS11では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて、変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定される。例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。
【0060】
前述のステップS11が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS12)。このステップS12では、図9に示すように、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0061】
前述のステップS12が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS13)。このステップS13では、撮像ボリュームデータ群D1から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図9に示すように、前述のステップS12で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS11に応じて設定された変化量閾値より移動量が大きいボクセル群の領域をVOI21として、同じく移動量が大きい時間帯をTOI22として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。なお、図9では、TOI22はPhase2からPhase3の間である。
【0062】
前述のステップS13が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS14)。このステップS14では、図9に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS12で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0063】
前述のステップS14が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS15)。このステップS15では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図9に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0064】
このように、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0065】
(第2の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第2又は第3の決定方法と第4の決定方法(図6参照)を組み合わせた第2の実施例について図10及び図11を参照して説明する。なお、図11でも、図9と同様に、一例として、撮像ボリュームデータはPhase1からPhase4まで存在している。
【0066】
図10に示すように、撮像ボリュームデータ上のVOIの指定及び変化量閾値の決定が行われる(ステップS21)。このステップS21では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて、VOIが対象領域設定部8iにより設定され、さらに、変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定される。
【0067】
例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中のROI描画ボタン12を押下し、三次元画像G1aにROI12aを描画すると、あるいは、オブジェクト選択ボタン13を押下してオブジェクト選択を実行すると、ROI12a又は選択されたオブジェクトが処理対象の空間領域として設定される。これにより、例えば、図11に示すように、Phase1の撮像ボリュームデータにVOI21が設定される。
また、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。
【0068】
前述のステップS21が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS22)。このステップS22では、前述の第1の実施例と同様、図11に示すように、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0069】
前述のステップS22が完了すると、他の撮像ボリュームデータ上のVOI位置の算出が行われる(ステップS23)。このステップS23では、前述のステップS21で設定されたVOI位置に基づいて、図11に示すように、Phase1の以外の撮像ボリュームデータ、すなわちPhase2からPhase4の撮像ボリュームデータ上のVOI位置も設定される。
【0070】
前述のステップS23が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS24)。このステップS24では、撮像ボリュームデータ群D1から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図11に示すように、前述のステップS22で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS21に応じて設定された変化量閾値よりVOI21内の移動量が大きい時間帯をTOI22として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。なお、図11では、TOI22はPhase2からPhase3の間である。
【0071】
前述のステップS24が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS25)。このステップS25では、図11に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、前述の第1の実施例と同様、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS22で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0072】
前述のステップS25が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS26)。このステップS26では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図11に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0073】
このように、前述の第1の実施例と同様、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0074】
(第3の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第1の決定方法と第7の決定方法(図6参照)を組み合わせた第3の実施例について図12及び図13を参照して説明する。なお、図13でも、図9及び図11と同様に、一例として、撮像ボリュームデータはPhase1からPhase4まで存在している。
【0075】
図12に示すように、変化量閾値の決定及びTOIの指定が行われる(ステップS31)。このステップS31では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定され、さらに、TOIが対象時間設定部8jにより設定される。
【0076】
例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。また、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1中の開始バー14や終了バー15をスライド移動させ、開始時間(開始点)と終了時間(終了点)を指定すると、その時間帯がTOI22として設定される。これにより、例えば、図13に示すように、Phase2からPhase3の間の時間帯がTOI22として設定される。
【0077】
前述のステップS31が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS32)。このステップS32では、図13に示すように、TOI22内の撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0078】
前述のステップS32が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS33)。このステップS33では、TOI22内の撮像ボリュームデータ群から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図13に示すように、前述のステップS32で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS31に応じて設定された変化量閾値よりTOI22内の移動量が大きいボクセル群の領域をVOI21として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。
【0079】
前述のステップS33が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS34)。このステップS34では、図13に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、前述の第1及び第2の実施例と同様、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS32で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0080】
前述のステップS34が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS35)。このステップS35では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図13に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0081】
このように、前述の第1及び第2の実施例と同様、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0082】
前述の第1から第3の実施例のような処理が診断内容に応じて実行される。例えば、VOIを指定するような空間上の範囲限定は、大動脈弁の診断時に心筋の動きが観察不要であるため、大動脈弁領域のみを高時間分解能で再生するために実行される。また、変化量の大きい領域を特定するような空間上の範囲限定は、大動脈や肺静脈などがほとんど動かないため、心臓領域のみを高時間分解能で再生するために実行される。変化量の大きい時間帯を特定するような時間上の範囲限定は、造影時間外の観察が不要であるため、血管造影時間帯のみを高時間分解能で再生するために実行される。
【0083】
このように限定された時間及び空間範囲、すなわち対象範囲のみを高時間分解能表示すれば良いので、補正計算のための処理時間を大幅に短縮することが可能となり、診断効率が向上する。また、4D再生中にリアルタイムにレンダリングすることが可能となり、再生中に画像表示条件をインクラクティブに変更して観察することもできる。さらに、低線量又は低時間分解能で撮像したデータに対しても、関心範囲のみを高時間分解能表示することにより、低線量又は低時間分解能でも十分な時間分解能の4D再生又は解析が可能となる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る医用画像処理装置1によれば、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域(例えば、石灰化領域R2)を設定する領域設定部8bと、それ以外の非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備える。このため、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非変形の特徴領域と非特徴領域との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において非変形の特徴部分が変形することが無くなるので、非変形の特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。
【0085】
また、特徴領域補間データ生成部8dは、特徴領域の重心位置を非線形位置合わせにより移動させ、特徴領域自体を線形位置合わせにより移動させて、特徴領域補間データを生成する。これにより、特徴領域の正確な移動を実現しつつ、特徴領域の形状が変形することを確実に防止することができる。
【0086】
また、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータから、領域設定部8b、特徴領域補間データ生成部8d及び非特徴領域補間データ生成部8cによる処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部8gを設けることによって、その特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0087】
また、対象範囲決定部8gは対象範囲として空間領域を決定する。これにより、空間上の範囲限定により処理時間の短縮を実現することができる。
【0088】
また、対象範囲決定部8gは処理対象として時間帯を決定する。これにより、時間上の範囲限定により処理時間の短縮を実現することができる。
【0089】
また、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい領域を空間領域として決定する。これにより、変化の大きい箇所を診断したい場合にその箇所を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。さらに、空間領域の自動決定により診断効率を向上させることができる。
【0090】
また、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい時間帯を前述の時間帯として決定する。これにより、変化の大きい箇所を診断したい場合にその箇所を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。さらに、時間帯の自動決定により診断効率を向上させることができる。
【0091】
また、対象範囲決定部8gは、複数の撮像ボリュームデータ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて時間帯を決定することも可能である。これにより、例えば、造影剤による血管造影時間帯のみを診断したい場合、その時間帯を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。
【0092】
また、対象範囲決定部8gは、複数の撮像ボリュームデータと別の時系列の画像データ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて時間帯を決定することも可能である。これにより、例えば、撮像ボリュームデータに限らず、他の様々な医用画像データからも時間帯を決定することができる。
【0093】
また、対象範囲決定部8gは、時系列の非画像データの値の変化に基づいて時間帯を決定する。これにより、例えば、非画像データとして心電波形から時間帯を決定することができる。
【0094】
また、対象範囲決定部8gは、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて対象範囲として空間領域を決定する。これにより、診断者は所望の空間領域を対象範囲として設定することが可能となるので、所望の空間領域内の箇所を確実に診断することができる。
【0095】
また、対象範囲決定部8gは、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて処理対象として時間帯を決定する。これにより、診断者は所望の時間帯を対象範囲として設定することが可能となるので、所望の時間帯内の箇所を確実に診断することができる。
【0096】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 医用画像処理装置
5 操作部
8b 領域区分部
8c 非特徴領域補間データ生成部
8d 特徴領域補間データ生成部
8e 合成補間データ生成部
8f 画像生成部
8g 対象範囲決定部
D1 撮像ボリュームデータ群
R1 非石灰化領域
J1 非石灰化領域の重心位置
R2 石灰化領域
J2 石灰化領域の重心位置
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置は、通常、被検体内部の医用画像を撮影する医用画像撮影装置やその医用画像を処理する医用画像処理装置などを備えている。例えば、医用画像撮影装置としては、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)などが挙げられる。このような医用画像撮像装置は、撮像により被検体内部の情報としてボリュームデータを取得する。
【0003】
医用画像処理装置では、前述のボリュームデータを可視化する可視化技術として、例えば、ボリュームレンダリングを用いることがある。このボリュームレンダリングでは、例えば、視点から各画素に至る光線を追跡して対象物を描画するレイキャスティング法によりボリュームデータから三次元画像を生成する(3Dレンダリング)。さらに、その三次元画像を時系列に並べて三次元動画像を生成することもある(4Dレンダリング)。
【0004】
ここで、大動脈弁狭窄症の治療方針決定、例えば、弁形成や弁置換などの決定のための画像診断では、大動脈弁を大動脈起始部方向から見た三次元動画像で観察することが最適である。具体的には、弁が動いている最中の弁口面積の変化をその弁周囲の石灰化部分による影響を考慮しながら観察を行う。
【0005】
ところが、弁の動き自体が速いため、時系列に撮像された医用画像(例えば、CT画像)を単純に順次表示する動画再生では、フレーム数が足りず、弁の動きを十分に観察することができない。そこで、時系列のボリュームデータからさらに細かい時系列のボリュームデータを補間処理により生成し、弁の動きを滑らかに再生する高時間分解能4Dレンダリングが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−205号公報
【特許文献2】特開2007−181674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の高時間分解能4Dレンダリングでは、非線形位置合わせに基づく補間処理により弁の動きが滑らかに再生される一方、弁に付着した石灰化部分は非線形位置合わせによって変形する。このため、弁口面積の変化に対する石灰化部分の影響を正確に診断することができなくなってしまう。
【0008】
本来、石灰化部分は骨と同じカルシウム成分であり、弁の動きによって変形することはないため、補間処理後の石灰化部分は正確な形状でなくなっている。このため、診断者は石灰化部分、すなわち非変形の特徴部分及びその周囲への影響を正確に診断することができない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、三次元動画像において非変形の特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる医用画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る医用画像処理装置は、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部と、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部と、特徴領域以外の領域である非特徴領域における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部と、特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部と、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の一形態に係る医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す医用画像処理装置が備える画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す画像処理部が行う画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3に示す画像処理における非特徴領域補間データの生成を説明するための説明図である。
【図5】図3に示す画像処理における特徴領域補間データの生成を説明するための説明図である。
【図6】対象範囲の決定方法を説明するための説明図である。
【図7】対象範囲の決定に用いる情報を設定するための設定画像の一例を示す図である。
【図8】第1の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【図10】第2の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【図12】第3の実施例における画像処理及び表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図12に示す画像処理及び表示処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置1は、各部を集中的に制御するCPU(中央処理装置)などの制御部2と、ROM(リードオンリーメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などのメモリ3と、医用画像などの各種画像を表示する表示部4と、操作者からの入力操作を受け付ける操作部5と、各種プログラムや各種データ(例えば、撮像ボリュームデータ群D1)などを記憶する記憶部6と、外部装置との通信を行う通信部7と、医用画像を処理する画像処理部8とを備えている。これらの各部は、例えば、バスライン9により電気的に接続されている。
【0014】
制御部2は、メモリ3又は記憶部6に記憶された各種プログラムや各種データなどに基づいて各部を制御する。特に、制御部2は、各種プログラムや各種データに基づいて、データ計算又は加工などを行う一連のデータ処理や医用画像を表示する表示処理などを実行する。
【0015】
メモリ3は、制御部2が実行する起動プログラムなどを記憶するメモリであって、制御部2のワークエリアとしても機能する。なお、起動プログラムは、医用画像処理装置1の起動時に制御部2により読み出されて実行される。
【0016】
表示部4は、二次元画像や三次元画像、三次元動画像(四次元画像)などの各種画像をカラー表示する表示装置である。この表示部4としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(ブラウン管)ディスプレイなどを用いることが可能である。
【0017】
操作部5は、操作者により入力操作される入力部であって、画像表示の開始や画像の切り替え、各種設定などの様々な入力操作を受け付ける入力部である。この操作部5としては、例えば、マウスやキーボードなどの入力デバイスを用いることが可能である。
【0018】
記憶部6は、各種プログラムや各種データなどを記憶する記憶装置であって、例えば、有線又は無線のネットワークを介して送信された撮像ボリュームデータ群D1を記憶する。この記憶部6としては、例えば、磁気ディスク装置や半導体ディスク装置(フラッシュメモリ)などを用いることが可能である。
【0019】
ここで、撮像ボリュームデータ群D1は、時系列に撮像された複数のボリュームデータにより構成されている。ボリュームデータは、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮像装置)やMRI(磁気共鳴診断装置)などの医用画像撮像装置により取得され、通信部7を介して記憶部6に保存されたり、あるいは、一旦、画像サーバなどの医用画像保管装置に保存されてから、必要に応じて通信部7を介して記憶部6に保存されたりする。
【0020】
通信部7は、LAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネットなどの無線又は有線のネットワークを介して外部装置との通信を行う装置である。この通信部7としては、LANカードやモデムなどを用いることが可能である。なお、外部装置としては、前述のX線CT装置やMRIなどの医用画像撮像装置、あるいは、画像サーバなどの医用画像保管装置などが挙げられる。
【0021】
画像処理部8は、撮像ボリュームデータ群D1に対して画像処理を行う装置である。この画像処理部8は、例えば、撮像ボリュームデータ群D1において撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、ボリュームレンダリングによる時系列高時間分解能レンダリング画像、すなわち三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する。
【0022】
ここで、ボリュームレンダリングは、ボリュームデータを可視化する可視化技術であり、例えば、レイキャスティング法を用いてボリュームデータから三次元画像を生成する。詳しくは、ボリュームデータに対して所定の視線方向(投影光線の投影方向)を決め、予め定めた視点から光線追跡処理を行い、視線上のボクセル値(輝度値など)の積分値や重み付け累積加算値を投影面上の画像ピクセルに出力して臓器などを立体的に抽出し、三次元画像を生成する。
【0023】
次に、前述の画像処理部8について詳しく説明する。
【0024】
図2に示すように、画像処理部8は、撮像ボリュームデータ群D1に対して撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせを行う非線形位置合わせ部8aと、撮像ボリュームデータ群D1に対して非変形の特徴領域を設定する領域設定部8bと、その特徴領域以外の非特徴領域補間データを生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域補間データを生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データを用いてボリュームデータの補間を行って三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備えている。
【0025】
非線形位置合わせ部8aは、撮像ボリュームデータ群D1に対して撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出を行う(図3中のステップS1)。これにより、その算出結果である非線形移動量情報が得られる。
【0026】
領域設定部8bは、非変形の特徴領域を設定し、その非変形の特徴領域とそれ以外の非特徴領域との区別を行う。この領域設定部8bは、撮像ボリュームデータ群D1、すなわち全撮像ボリュームデータ内の石灰化領域の抽出を行う(図3中のステップS2)。この抽出では、例えば、石灰化領域のCT値は1000HU程度であるため、CT値が900HU以上である領域を石灰化領域として抽出する。これにより、石灰化領域と非石灰化領域(軟組織)とが区分される。
【0027】
ここで、石灰化領域は骨と同じカルシウム成分であり、弁(動きのある病変部の一例)などの周囲の動きによって移動することはあるが変形することはない。したがって、石灰化領域はその形状が変化しない非変形の特徴領域であり、非石灰化領域は非特徴領域である。なお、特徴領域は石灰化領域に限られるものではなく、例えば、石灰化以外で硬化した組織(物質)であっても良く、非変形の領域であれば良い。
【0028】
非特徴領域補間データ生成部8cは、非石灰化領域における撮像ボリュームデータ間の補間データ、すなわち非特徴領域補間データの作成を行う(図3中のステップS3)。この非特徴領域補間データの作成では、前述のステップS1で得られた非線形移動量情報に基づいて、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1から非特徴領域補間データを作成する。
【0029】
詳しくは、図4に示すように、非石灰化領域R1の重心位置J1を非線形移動量情報に基づいて移動させ、非石灰化領域R1の補間ボリュームデータとして非特徴領域補間データを生成する。
【0030】
特徴領域補間データ生成部8dは、石灰化領域における撮像ボリュームデータ間の補間データ、すなわち特徴領域補間データの作成を行う(図3中のステップS4)。この特徴領域補間データの作成では、前述のステップS1で得られた非線形移動量情報に加え、計算により求めた線形移動量情報に基づいて、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1から特徴領域補間データを作成する。
【0031】
詳しくは、図5に示すように、石灰化領域R2の重心位置J2を非線形移動量情報に基づいて移動させ、さらに、石灰化領域R2自体を線形位置合わせにより移動、すなわち石灰化領域R2の線形回転量(線形移動量情報)に基づいて石灰化領域R2を三次元回転させて、石灰化領域R2の補間ボリュームデータとして特徴領域補間データを生成する。このとき、石灰化領域R2の重心位置J2は非線形位置合わせにより処理されるが、その石灰化領域R2自体は線形回転量による線形位置合わせにより処理されるので、石灰化領域R2の形状が変形することは無くなる。
【0032】
ここで、石灰化領域R2の重心位置J2は、その石灰化領域R2以外の非石灰化領域R1、例えば弁の移動に用いるのと同じ非線形移動量情報に基づいて移動することになるため、石灰化領域R2とその石灰化部分が付着している弁との位置ずれが生じることはほとんどない。ただし、位置合わせ精度を向上させるため、石灰化領域R2の重心位置J2の一点ではなく、石灰化領域R2の全体の非線形移動量を考慮して石灰化領域R2の移動量や線形回転量を計算しても良い。具体的には、石灰化領域R2内において重心位置J2の周辺の他の複数点を非線形移動量情報に基づいて移動させるようにする。
【0033】
合成補間データ生成部8eは、非石灰化領域R1の補間データである非特徴領域補間データと石灰化領域R2の補間データである特徴領域補間データを三次元合成し、合成補間データを生成する(図3中のステップS5)。これにより、高時間分解能4Dレンダリングを実現するための補正ボリュームデータとして、合成補間データが生成される。
【0034】
画像生成部8fは、合成補間データ生成部8eにより生成された合成補間データを用いて撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する(図3中のステップS6)。これにより、高時間分解能4Dレンダリングが実現される。
【0035】
ここで、通常、大動脈弁本体と石灰化領域とを区別せずに一律に非線形位置合わせに基づく補正処理を実施すると、三次元動画像上では石灰化部分の変形が引き起こされてしまう。ところが、実際には、大動脈弁本体は時間の変化に応じて変形するが、石灰化部分は時間の変化に応じて変形しない。そこで、大動脈弁本体と石灰化領域とを別々の補間処理により高時間分解能化し、それらを合成することにより正確な高時間分解能動画再生を行うことによって、弁口面積の変化に対する石灰化部分の影響を正確に診断することを可能にすることができる。
【0036】
図2に戻り、画像処理部8は、さらに、補間処理の対象とする対象範囲を決定する対象範囲決定部8gと、対象範囲を決定するための変化量閾値を設定する変化量閾値設定部8hと、対象範囲を決定するための対象領域を設定する対象領域設定部8iと、対象範囲を決定するための対象時間を設定する対象時間設定部8jとを備えている。
【0037】
対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ群D1から補間処理の対象とする対象範囲を決定する。この対象範囲決定部8gは、各種の決定方法(例えば、いくつかの決定方法の組み合わせ)に基づいて対象範囲の決定を行う。このとき、対象範囲の決定に用いる情報は、変化量閾値設定部8h、対象領域設定部8i及び対象時間設定部8jのいずれかから取得される。
【0038】
ここで、対象範囲の決定方法には、図6に示すように、VOI(Volume Of Interest:興味領域)の決定とTOI(Time Of Interest:興味時間)の決定があり、それらの決定方法の各々に自動決定と手動決定とが存在する。
【0039】
VOIの自動決定では、「1.変化の大きい領域の特定を行う」。例えば、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせの結果、移動量が予め指定された閾値より大きいボクセル群の領域を特定して処理対象とする。
【0040】
また、VOIの手動決定では、「2.ROI(Region Of Interest:関心領域)の描画を行う」。例えば、三次元画像に3DのROIを描いて対象領域を指定して処理対象とする。
【0041】
さらに、VOIの手動決定では、「3.オブジェクトの指定を行う」。例えば、予め作成しておいた区分オブジェクト(Segmentation Object)から処理対象を指定する。
【0042】
また、TOIの自動決定では、「4.変化の大きい時間帯の特定を行う」。例えば、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせの結果、ボリュームデータ(例えば、VOI)内の平均移動量が予め指定された閾値より大きい時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0043】
さらに、TOIの自動決定では、「5.画像内特定箇所の画素値変化に基づく興味時間帯の決定を行う」。例えば、ボリュームデータ内の特定箇所の画素値の変化量から興味時間帯を特定し、その特定した時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0044】
加えて、TOIの自動決定では、「6.非画像情報に基づく興味時間帯の決定を行う」。例えば、心電波形などの非画像情報の値(例えば、波形値など)の特徴から興味時間帯を特定し、その特定した時間帯のボリュームデータ群を処理対象とする。
【0045】
また、TOIの手動決定では、「7.開始及び終了時間の指定を行う」。例えば、Time Density Curveなどの上で、開始時間及び終了時間を示すバーなどのUI(ユーザインタフェース)により興味時間帯を指定して処理対象とする。
【0046】
これらの決定方法は組み合わされて用いられる。ただし、このとき、各決定手法の処理順を最適化することで、無駄な計算処理を減らし、トータルの処理時間を短縮することができる。例えば、VOIの手動決定とTOIの自動決定を組み合わせる場合には、VOIの手動決定を先に行った方が良く、逆に、VOIの自動決定とTOIの手動決定を組み合わせる場合には、TOIの手動決定を先に行った方が良い。
【0047】
このような対象範囲の決定に用いる情報を設定する手段としては、例えば、各決定方法に対応する設定画像が表示部4に表示され、操作者は操作部5を入力操作してその設定画像に対して各種入力を行う。この各種入力に応じて、変化量閾値設定部8h、対象領域設定部8i及び対象時間設定部8jは各種データの設定を行う。この各種データに基づき、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ群D1から補間処理の対象範囲を決定する。
【0048】
ここで、前述の設定画像の一例としては、図7に示すような設定画像G1が挙げられる。この設定画像G1には、オブジェクト(例えば、大動脈弁本体とその周辺など)を示す三次元画像G1aが含まれており、さらに、変化量閾値を入力する入力スペース(入力欄)11、空間上の範囲を指定するためのROI描画ボタン12、オブジェクトを選択するためのオブジェクト選択ボタン13、時間上の範囲を指定するための開始バー14や終了バー15などが設けられている。
【0049】
この設定画像G1では、操作者が操作部5のキーボードなどを入力操作して入力スペース11に数値を入力すると、変化量閾値設定部8hはその数値を対象範囲の決定に用いる変化量閾値として設定する。なお、変化量とは、ボリュームデータ間の組織(物質)の移動量である。
【0050】
また、操作者が操作部5のマウスなどを入力操作してROI描画ボタン12をクリックすると、ROI描画が許可される。その後、操作者は操作部5のマウスなどを入力操作して三次元画像G1aにROI12aを描画する。これに応じて、対象領域設定部8iはそのROI12aを処理対象の空間領域として設定する。
【0051】
また、操作者が操作部5のマウスなどを入力操作してオブジェクト選択ボタン13をクリックすると、大動脈弁や左房室弁、右房室弁などのオブジェクト名が並ぶサブフレームが表示される。操作者はそのサブフレーム中のオブジェクト名から所望のオブジェクト名をクリックして、処理対象とするオブジェクトを選択する。これに応じて、対象領域設定部8iは、選択されたオブジェクトを処理対象の空間領域として設定する。
【0052】
また、操作者は操作部5のマウスなどを入力操作して開始バー14や終了バー15をスライド移動させ、時間範囲を示す開始時間と終了時間を指定する。これに応じて、対象時間設定部8jは、指定された開始時間と終了時間に基づいて処理対象の時間帯を設定する。
【0053】
ここで、通常、高時間分解能4Dレンダリング技術では、多量のボリュームデータを補間計算により生成し、その多量のボリュームデータをレンダリング処理する。このため、膨大な計算処理時間がかかってしまい、これは無駄な計算処理によって引き起こされている。すなわち、実際に高時間分解能で観察(あるいは解析)したい範囲は、全ボリュームデータの中でごく限られた対象領域や時間帯のみであり、その他の領域に対するボリュームデータ補間及びレンダリング処理は無駄に計算時間及びメモリ使用量を増加させる原因となっている。
【0054】
例えば、診断において、高時間分解能で観察あるいは解析したい範囲は、動き(変化)の大きい箇所や時間帯、また、観察あるいは解析対象となる病変部を中心としたVOI内、あるいは、非画像情報(例えば、心電波形など)や画像内の特定箇所の画素値の変化に基づくTOI内などである。
【0055】
そこで、前述のように特定の興味範囲(VOIやTOIなど)のみに高時間分解能処理を適用することによって、計算処理時間及びメモリ使用量を減らし、診断者が待ち時間なく快適に興味範囲を観察あるいは解析することを可能にする。また、観察対象である興味範囲のみを高時間分解能で表示することによって、診断者が興味範囲に集中して観察することができるようになる。
【0056】
なお、前述の画像処理部8の各部は、電気回路などのハードウエアで構成されていても良く、あるいは、これらの機能を実行するプログラムなどのソフトウエアで構成されていても良い。また、それらの両方の組合せにより構成されていても良い。
【0057】
次に、前述の医用画像処理装置1が行う画像処理及び表示処理について第1ないし第3の実施例で説明する。なお、処理に用いる各種データは必要に応じて記憶部6に一時的あるいは長期的に保存される。
【0058】
(第1の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第1の決定方法と第4の決定方法(図6参照)を組み合わせた第1の実施例について図8及び図9を参照して説明する。なお、図9では、一例として、撮像ボリュームデータはPhase(フェーズ)1からPhase4まで存在している。
【0059】
図8に示すように、変化量閾値の決定が行われる(ステップS11)。このステップS11では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて、変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定される。例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。
【0060】
前述のステップS11が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS12)。このステップS12では、図9に示すように、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0061】
前述のステップS12が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS13)。このステップS13では、撮像ボリュームデータ群D1から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図9に示すように、前述のステップS12で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS11に応じて設定された変化量閾値より移動量が大きいボクセル群の領域をVOI21として、同じく移動量が大きい時間帯をTOI22として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。なお、図9では、TOI22はPhase2からPhase3の間である。
【0062】
前述のステップS13が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS14)。このステップS14では、図9に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS12で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0063】
前述のステップS14が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS15)。このステップS15では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図9に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0064】
このように、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0065】
(第2の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第2又は第3の決定方法と第4の決定方法(図6参照)を組み合わせた第2の実施例について図10及び図11を参照して説明する。なお、図11でも、図9と同様に、一例として、撮像ボリュームデータはPhase1からPhase4まで存在している。
【0066】
図10に示すように、撮像ボリュームデータ上のVOIの指定及び変化量閾値の決定が行われる(ステップS21)。このステップS21では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて、VOIが対象領域設定部8iにより設定され、さらに、変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定される。
【0067】
例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中のROI描画ボタン12を押下し、三次元画像G1aにROI12aを描画すると、あるいは、オブジェクト選択ボタン13を押下してオブジェクト選択を実行すると、ROI12a又は選択されたオブジェクトが処理対象の空間領域として設定される。これにより、例えば、図11に示すように、Phase1の撮像ボリュームデータにVOI21が設定される。
また、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。
【0068】
前述のステップS21が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS22)。このステップS22では、前述の第1の実施例と同様、図11に示すように、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0069】
前述のステップS22が完了すると、他の撮像ボリュームデータ上のVOI位置の算出が行われる(ステップS23)。このステップS23では、前述のステップS21で設定されたVOI位置に基づいて、図11に示すように、Phase1の以外の撮像ボリュームデータ、すなわちPhase2からPhase4の撮像ボリュームデータ上のVOI位置も設定される。
【0070】
前述のステップS23が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS24)。このステップS24では、撮像ボリュームデータ群D1から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図11に示すように、前述のステップS22で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS21に応じて設定された変化量閾値よりVOI21内の移動量が大きい時間帯をTOI22として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。なお、図11では、TOI22はPhase2からPhase3の間である。
【0071】
前述のステップS24が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS25)。このステップS25では、図11に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、前述の第1の実施例と同様、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS22で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0072】
前述のステップS25が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS26)。このステップS26では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図11に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0073】
このように、前述の第1の実施例と同様、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0074】
(第3の実施例)
対象範囲の決定方法として前述の第1の決定方法と第7の決定方法(図6参照)を組み合わせた第3の実施例について図12及び図13を参照して説明する。なお、図13でも、図9及び図11と同様に、一例として、撮像ボリュームデータはPhase1からPhase4まで存在している。
【0075】
図12に示すように、変化量閾値の決定及びTOIの指定が行われる(ステップS31)。このステップS31では、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて変化量閾値が変化量閾値設定部8hにより設定され、さらに、TOIが対象時間設定部8jにより設定される。
【0076】
例えば、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1(図7参照)中の入力スペース11に数値を入力すると、その数値が変化量閾値として設定される。また、操作者が操作部5を操作し、設定画像G1中の開始バー14や終了バー15をスライド移動させ、開始時間(開始点)と終了時間(終了点)を指定すると、その時間帯がTOI22として設定される。これにより、例えば、図13に示すように、Phase2からPhase3の間の時間帯がTOI22として設定される。
【0077】
前述のステップS31が完了すると、撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせが行われる(ステップS32)。このステップS32では、図13に示すように、TOI22内の撮像ボリュームデータ間の非線形位置合わせ、すなわち各ボクセルの移動量の算出が行われ、その結果である非線形移動量情報が取得される。
【0078】
前述のステップS32が完了すると、対象範囲の決定が行われる(ステップS33)。このステップS33では、TOI22内の撮像ボリュームデータ群から処理の対象となる対象範囲が対象範囲決定部8gにより決定される。具体的には、図13に示すように、前述のステップS32で取得された非線形移動量情報に基づいて、前述のステップS31に応じて設定された変化量閾値よりTOI22内の移動量が大きいボクセル群の領域をVOI21として特定し、それらのVOI21及びTOI22を処理対象の対象範囲と決定する。
【0079】
前述のステップS33が完了すると、対象範囲内の撮像ボリュームデータ間の補間データ作成及び時系列の三次元画像の生成が行われる(ステップS34)。このステップS34では、図13に示すように、対象範囲内の撮像ボリュームデータに対し、前述の補間処理(図3参照)が行われる。ただし、前述の第1及び第2の実施例と同様、図3に示すステップS1の処理は前述のステップS32で実行されているため省略される。これにより、対象範囲内の補間ボリュームデータ、すなわち特徴領域補間データ及び非特徴領域補間データが生成され、それらのデータが三次元合成されて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像が生成される(図3参照)。
【0080】
前述のステップS34が完了すると、4Dレンダリング再生(あるいは解析)が行われる(ステップS35)。このステップS35では、前述の三次元動画像が表示される。具体的には、図13に示すように、Phase1からPhase2の間、補間データが存在せず、Phase1での三次元画像が表示され続ける。その後、Phase2からPhase3の間では、補間データ(合成補間データ)が存在しており、対象範囲内では補間データに基づく三次元画像が表示され、その対象範囲以外ではPhase2での三次元画像が表示される。その後、Phase3からPhase4の間では、補間データが存在せず、Phase3での三次元画像が表示され続ける。
【0081】
このように、前述の第1及び第2の実施例と同様、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)と特徴領域(例えば、石灰化領域R2)との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において特徴部分(例えば、石灰化部分)が変形することが無くなるので、特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。また、特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0082】
前述の第1から第3の実施例のような処理が診断内容に応じて実行される。例えば、VOIを指定するような空間上の範囲限定は、大動脈弁の診断時に心筋の動きが観察不要であるため、大動脈弁領域のみを高時間分解能で再生するために実行される。また、変化量の大きい領域を特定するような空間上の範囲限定は、大動脈や肺静脈などがほとんど動かないため、心臓領域のみを高時間分解能で再生するために実行される。変化量の大きい時間帯を特定するような時間上の範囲限定は、造影時間外の観察が不要であるため、血管造影時間帯のみを高時間分解能で再生するために実行される。
【0083】
このように限定された時間及び空間範囲、すなわち対象範囲のみを高時間分解能表示すれば良いので、補正計算のための処理時間を大幅に短縮することが可能となり、診断効率が向上する。また、4D再生中にリアルタイムにレンダリングすることが可能となり、再生中に画像表示条件をインクラクティブに変更して観察することもできる。さらに、低線量又は低時間分解能で撮像したデータに対しても、関心範囲のみを高時間分解能表示することにより、低線量又は低時間分解能でも十分な時間分解能の4D再生又は解析が可能となる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る医用画像処理装置1によれば、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域(例えば、石灰化領域R2)を設定する領域設定部8bと、それ以外の非特徴領域(例えば、非石灰化領域R1)における撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部8cと、特徴領域における撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部8dと、非特徴領域補間データ及び特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部8eと、合成補間データ及び複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部8fとを備える。このため、時系列に並ぶ撮像ボリュームデータ群D1において非変形の特徴領域と非特徴領域との区分が実行され、非特徴領域に対しては非線形位置合わせにより補正処理が実行され、特徴領域に対しては線形位置合わせによる補間処理が実行される。これにより、三次元動画像において非変形の特徴部分が変形することが無くなるので、非変形の特徴部分及びその周囲への影響の正確な診断を可能にすることができる。
【0085】
また、特徴領域補間データ生成部8dは、特徴領域の重心位置を非線形位置合わせにより移動させ、特徴領域自体を線形位置合わせにより移動させて、特徴領域補間データを生成する。これにより、特徴領域の正確な移動を実現しつつ、特徴領域の形状が変形することを確実に防止することができる。
【0086】
また、時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータから、領域設定部8b、特徴領域補間データ生成部8d及び非特徴領域補間データ生成部8cによる処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部8gを設けることによって、その特定の対象範囲のみに補間処理が行われるので、処理時間及びメモリ使用量を減らすことができる。
【0087】
また、対象範囲決定部8gは対象範囲として空間領域を決定する。これにより、空間上の範囲限定により処理時間の短縮を実現することができる。
【0088】
また、対象範囲決定部8gは処理対象として時間帯を決定する。これにより、時間上の範囲限定により処理時間の短縮を実現することができる。
【0089】
また、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい領域を空間領域として決定する。これにより、変化の大きい箇所を診断したい場合にその箇所を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。さらに、空間領域の自動決定により診断効率を向上させることができる。
【0090】
また、対象範囲決定部8gは、撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい時間帯を前述の時間帯として決定する。これにより、変化の大きい箇所を診断したい場合にその箇所を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。さらに、時間帯の自動決定により診断効率を向上させることができる。
【0091】
また、対象範囲決定部8gは、複数の撮像ボリュームデータ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて時間帯を決定することも可能である。これにより、例えば、造影剤による血管造影時間帯のみを診断したい場合、その時間帯を確実に補間処理の対象範囲とすることができる。
【0092】
また、対象範囲決定部8gは、複数の撮像ボリュームデータと別の時系列の画像データ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて時間帯を決定することも可能である。これにより、例えば、撮像ボリュームデータに限らず、他の様々な医用画像データからも時間帯を決定することができる。
【0093】
また、対象範囲決定部8gは、時系列の非画像データの値の変化に基づいて時間帯を決定する。これにより、例えば、非画像データとして心電波形から時間帯を決定することができる。
【0094】
また、対象範囲決定部8gは、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて対象範囲として空間領域を決定する。これにより、診断者は所望の空間領域を対象範囲として設定することが可能となるので、所望の空間領域内の箇所を確実に診断することができる。
【0095】
また、対象範囲決定部8gは、操作部5に対する操作者の入力操作に応じて処理対象として時間帯を決定する。これにより、診断者は所望の時間帯を対象範囲として設定することが可能となるので、所望の時間帯内の箇所を確実に診断することができる。
【0096】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 医用画像処理装置
5 操作部
8b 領域区分部
8c 非特徴領域補間データ生成部
8d 特徴領域補間データ生成部
8e 合成補間データ生成部
8f 画像生成部
8g 対象範囲決定部
D1 撮像ボリュームデータ群
R1 非石灰化領域
J1 非石灰化領域の重心位置
R2 石灰化領域
J2 石灰化領域の重心位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部と、
前記特徴領域における前記撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部と、
前記特徴領域以外の領域である非特徴領域における前記撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部と、
前記特徴領域補間データ及び前記非特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部と、
前記合成補間データ及び前記複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記特徴領域補間データ生成部は、前記特徴領域の重心位置を非線形位置合わせにより移動させ、前記特徴領域自体を線形位置合わせにより移動させて、前記特徴領域補間データを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の撮像ボリュームデータから、前記領域設定部、前記特徴領域補間データ生成部及び前記非特徴領域補間データ生成部による処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記対象範囲決定部は、前記対象範囲として空間領域を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記対象範囲決定部は、前記処理対象として時間帯を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記対象範囲決定部は、前記撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい領域を前記空間領域として決定することを特徴とする請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記対象範囲決定部は、前記撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい時間帯を前記時間帯として決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記対象範囲決定部は、前記複数の撮像ボリュームデータ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記対象範囲決定部は、前記複数の撮像ボリュームデータと別の時系列の画像データ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記対象範囲決定部は、時系列の非画像データの値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記操作者により入力操作される操作部を備え、
前記対象範囲決定部は、前記操作部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記対象範囲として空間領域を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記操作者により入力操作される操作部を備え、
前記対象範囲決定部は、前記操作部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記処理対象として時間帯を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータから処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部と、
前記対象範囲内の撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部と、
備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項1】
時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータに対して特徴領域を設定する領域設定部と、
前記特徴領域における前記撮像ボリュームデータ間の特徴領域補間データを線形位置合わせにより生成する特徴領域補間データ生成部と、
前記特徴領域以外の領域である非特徴領域における前記撮像ボリュームデータ間の非特徴領域補間データを非線形位置合わせにより生成する非特徴領域補間データ生成部と、
前記特徴領域補間データ及び前記非特徴領域補間データを三次元合成して合成補間データを生成する合成補間データ生成部と、
前記合成補間データ及び前記複数の撮像ボリュームデータを用いて、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記特徴領域補間データ生成部は、前記特徴領域の重心位置を非線形位置合わせにより移動させ、前記特徴領域自体を線形位置合わせにより移動させて、前記特徴領域補間データを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の撮像ボリュームデータから、前記領域設定部、前記特徴領域補間データ生成部及び前記非特徴領域補間データ生成部による処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記対象範囲決定部は、前記対象範囲として空間領域を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記対象範囲決定部は、前記処理対象として時間帯を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記対象範囲決定部は、前記撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい領域を前記空間領域として決定することを特徴とする請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記対象範囲決定部は、前記撮像ボリュームデータ間の変化量が閾値より大きい時間帯を前記時間帯として決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記対象範囲決定部は、前記複数の撮像ボリュームデータ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記対象範囲決定部は、前記複数の撮像ボリュームデータと別の時系列の画像データ内の特定の組織の画素値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記対象範囲決定部は、時系列の非画像データの値の変化に基づいて前記時間帯を決定することを特徴とする請求項5記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記操作者により入力操作される操作部を備え、
前記対象範囲決定部は、前記操作部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記対象範囲として空間領域を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記操作者により入力操作される操作部を備え、
前記対象範囲決定部は、前記操作部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記処理対象として時間帯を決定することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
時系列に撮像された複数の撮像ボリュームデータから処理の対象となる対象範囲を決定する対象範囲決定部と、
前記対象範囲内の撮像ボリュームデータ間に新たなボリュームデータを補間し、三次元画像が時系列に並ぶ三次元動画像を生成する画像生成部と、
備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−106870(P2013−106870A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255822(P2011−255822)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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