説明

医用画像処理装置

【課題】核磁気共鳴撮像で発見された画像上の乳房領域の病変領域を、X線マンモグラフィや超音波撮像の際に同一病変を画像上で容易に発見しやすくすることである。
【解決手段】磁場印加部は、静磁場空間中に配置される被検体に対し励起用磁場を印加する。NMR信号受信部は、被検体から検出されるNMR信号を受信する。ボリュームデータ発生部は、NMR信号受信部の出力に基づいて、被検体の胸部を対象とした3次元ボリュームデータを発生する。MPR画像発生部は、3次元ボリュームデータから、被検体の右の乳房領域を対象とし鉛直方向に切断された第一の断面の右乳房に関するMPR画像と、被検体の左の乳房領域を対象とし鉛直方向に切断された第二の断面の左乳房に関するMPR画像とを発生する。MPR画像表示部は、右乳房に関するMPR画像と、左乳房に関するMPR画像とを左右に並べて配置し同時表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乳房領域を表示する医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳がんの発見には、X線マンモグラフィや超音波画像診断装置が用いられてきた。しかし、近年になり、被検体の胸部に対して、核磁気共鳴撮像が行われるようになってきた。特に、米国でハイリスクの患者に対し、最初の診断モダリティとして、核磁気共鳴撮像が推奨されるようになり、その後、X線マンモグラフィや超音波撮像を行う場合がある。また、X線マンモグラフィや超音波画像診断装置では、乳房領域の表現に関して、ABCC’DEという表現方法がある。又は、乳房領域の表現に関して、乳頭を中心として病変を、時計の針の位置を使って領域を示す方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集 「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、p176〜177
【非特許文献2】Pascal A. Baltzer,M.D.;Matthias Dizel.M.D. et al.syngo BreVis-Efficient and Standardized Workflow for Breast MRI
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、核磁気共鳴イメージング装置では、X線マンモグラフィや超音波画像診断装置において見られるようなABCC’DEといった表現や、乳頭を中心として、病変を時計の針の位置を使って領域を示す表現は存在しない。また、乳房MRI撮像において標準的な領域表現は存在しない。さらに、核磁気共鳴撮像により得られた被検体の病変領域が、乳房領域が区分された複数の部分領域のうちどの部分領域に存在するかを示す技術は存在しない。
【0005】
目的は、核磁気共鳴撮像で発見された画像上の乳房領域の病変領域を、X線マンモグラフィや超音波撮像の際に同一病変を画像上で容易に発見しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、静磁場空間中に配置される被検体に対し励起用磁場を印加する磁場印加部と、
前記被検体から検出されるNMR信号を受信するNMR信号受信部と、
前記NMR信号受信部の出力に基づいて、前記被検体の胸部を対象としたボリュームデータを発生するボリュームデータ発生部と、
前記ボリュームデータから、前記被検体の右の乳房領域を対象とし鉛直方向に切断された第一の断面の右乳房に関するMPR画像と、前記被検体の左の乳房領域を対象とし鉛直方向に切断された第二の断面の左乳房に関するMPR画像とを発生するMPR画像発生部と、
前記右乳房に関するMPR画像と、前記左乳房に関するMPR画像とを左右に並べて配置し同時表示するMPR画像表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本実施形態に係る核磁気共鳴イメージング装置のブロック図である。
【図1B】図1Aの画像解析部88のブロックをより詳細に示した図である。
【図2】領域分割面と正中線と境界線と乳頭領域区分線とにより区分された14個の部分領域の位置を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る乳房内の病変領域特定に関する処理手順を示すフローチャートである。
【図4】X線マンモグラフィや超音波画像診断装置で慣用的に用いられる区分された乳房の領域表示を示す図である。
【図5A】従来における女性に対して用いられる乳房撮像の流れを示したフローチャートである。
【図5B】従来における乳がんの危険性が高い女性患者に対して用いられる乳房撮像の流れを示したフローチャートである。
【図6】図1のMPR画像表示部85により発生されるアキシャル断面に関するMPR画像を示す図である。
【図7】図1のMPR画像表示部85により発生されるコロナル断面に関するMPR画像を示す図である。
【図8】図1のMPR画像表示部85により発生されるサジタル断面に関するMPR画像を示す図である。
【図9】左右の乳房領域を対象としたコロナル断面の位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。なお本実施形態に係る医用画像処理装置とは、核磁気共鳴イメージング装置、ワークステーションなどを指す。以下の説明に置いて、医用画像処理装置を核磁気共鳴イメージング装置とする。
【0009】
まず、本実施形態に係る核磁気共鳴イメージング装置の構成について説明する。図1Aは、本実施形態に係る核磁気共鳴イメージング装置の構成を説明するための図である。図1Aに示すように、本実施形態に係る核磁気共鳴イメージング装置100は、架台部10と、磁場印加部20と、送信部30と、NMR信号受信部40と、シーケンス制御部50と、寝台部60と、寝台制御部70と、コンソール80とを有する。
【0010】
架台部10は、静磁場中に置かれた被検体Pに高周波磁場を照射することにより、被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を検出する装置であり、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、送信用RF(Radio Frequency)コイル13と、受信用RFコイル14とを有する。
【0011】
静磁場磁石11は、中空の円筒形状に形成されており、内部の空間に一様な静磁場を発生させる磁石であり、例えば、永久磁石や超電導磁石などが用いられる。
【0012】
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石11の内側に配置される。傾斜磁場コイル12は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されている。前述の3つのコイルは、後述する磁場印加部20から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とされる。
【0013】
また、傾斜磁場コイル12によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
送信用RFコイル13は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、後述する送信部30から高周波パルスが供給されることにより高周波磁場を発生させる。
【0015】
受信用RFコイル14は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、送信用RFコイル13によって発生した高周波磁場の影響で被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。
【0016】
磁場印加部20は、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。送信部30は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用RFコイル13に送信する。受信部40は、受信用RFコイル14から出力される磁気共鳴信号をデジタル化することによって生データを発生する。
【0017】
シーケンス制御部50は、コンソール80から送信されるシーケンス情報に基づいて、磁場印加部20、送信部30及びNMR信号受信部40を駆動することによって、被検体Pをスキャンする際の制御を行う。そして、シーケンス制御部50は、被検体Pのスキャンを行った結果、NMR信号受信部40から生データが送信されると、その生データをコンソール80へ転送する。
【0018】
なお、「シーケンス情報」とは、磁場印加部20が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さ、電源を供給するタイミング、送信部30が送信用RFコイル13に送信する高周波パルスの強さ、高周波パルスを送信するタイミング、及び受信部40がNMR信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
【0019】
寝台部60は、被検体Pが戴置される天板61を備え、後述する寝台制御部70による制御のもと、天板61を、被検体Pが戴置された状態で傾斜磁場コイル12の空洞(撮像口)内へ挿入される。通常、この寝台部60は、長手方向が静磁場磁石11の中心軸と並行になるように設置される。ここで、被検体Pは、例えば、天板61に戴置された被検体Pには乳房撮像用の受信用RFコイル14が装着される。
【0020】
寝台制御部70は、寝台部60を駆動して、天板61を長手方向及び上下方向へ移動する。
【0021】
コンソール80は、核磁気共鳴イメージング装置100の全体制御、データ収集、及び画像再構成などを行い、インターフェース部81、記憶装置83、入力部84、MPR画像表示部85、ボリュームデータ発生部86とを有する。
【0022】
インターフェース部81は、シーケンス制御部50との間でやり取りされる各種信号の入出力を制御する。例えば、インターフェース部81は、シーケンス制御部50に対してシーケンス情報を送信する。また、インターフェース部81は、シーケンス制御部50から生データを受信する。
【0023】
なお、インターフェース部81によって受信された生データは、傾斜磁場コイル12によって発生したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場GrによってSE(Slice Encode)方向、PE(phase Encode)方向及びRO(Read out)方向における空間周波数の情報が対応付けられたk空間データとして、記憶装置83に格納される。
【0024】
また、インターフェース部81は、後述する入力部84を介して入力された寝台移動要求を寝台制御部70に送信する。また、寝台制御部70は、受信した寝台移動要求に基づいて、寝台部60を駆動させる。
【0025】
記憶装置83は、インターフェース部81から転送されたk空間データや、データ処理部82によって発生されたボリュームデータなどを被検体Pごとに記憶する。
【0026】
ボリュームデータ発生部86は、NMR信号受信部40の出力に基づいて、被検体の胸部を対象としたボリュームデータを発生する。
【0027】
MPR画像発生部87は、ボリュームデータから、被検体の乳房領域を対象としたMPR画像を発生する。
【0028】
画像解析部88は、領域分割面を表示したり、病変領域を特定したりする。画像解析部88の詳しい内容については後述する。
【0029】
入力部84は、ユーザーから各種指示や情報入力を受け付けるためのマウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切り替えスイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを有する。
【0030】
MPR画像表示部85は、ユーザーによって参照されるモニタであり、磁気共鳴画像など各種情報をユーザーに表示したり、入力部84を介してユーザーからコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0031】
以下、この主たる特徴について図1Aとともに、図1B〜図9を用いて説明する。なお、図1Bは、本実施例に係る画像解析部88をより詳細に示した図である。図2は、領域分割面と正中線と境界線と乳頭領域区分線により区分された14個の部分領域の位置を示した図である。図3はボリュームデータが記憶装置83に記憶されてから、病変領域が属する部分領域を特定するまでのフロー図である。図4は、臨床において用いられる乳房の領域表示を示す図である。図5Aは、女性に対して用いられる乳房撮像のフローチャートである。図5Bは、従来の乳房撮像における、乳がんのリスクが高い女性に対して用いられる乳房撮像のフローチャートである。図6〜図8は、図1のMPR画像発生部87により発生されたコロナル断面、アキシャル断面、及びサジタル断面のMPR画像である。図9は、左右の乳房領域を対象としたコロナル断面の位置を示した図である。
【0032】
図1Bは、画像解析部88をさらに詳細に示した図である。図1Bは、乳頭領域特定部821、乳房領域特定部822、乳房領域区分部823、及び領域分割面決定部824、病変領域特定部825、及びメモリ部826、正中線特定部827、及び境界線特定部828とを有する。乳頭領域特定部821は、ボリュームデータから、乳頭領域を閾値処理により特定する。乳頭領域検出部822は、ボリュームデータ発生部86において発生されたボリュームデータに基づいて被検体の乳頭領域を検出する。乳房領域特定部822は、ボリュームデータから、左右の乳房領域を閾値処理により特定する。乳房領域区分部823は、検出された乳頭領域に基づいて乳房領域を複数の部分領域に区分するとともに、特定された乳房領域に基づいて胸部の領域を乳房領域と乳房領域以外の乳房外領域とに区分する。領域分割面決定部824は、検出された乳頭領域の位置に基づいて、左乳頭領域を通りアキシャル面に平行な第一の領域分割面と、左乳頭領域を通りサジタル面に平行な第二の領域分割面と、右乳頭領域を通りアキシャル面に平行な第三の領域分割面と、右乳頭領域を通りサジタル面に平行な第四の領域分割面とを決定する。病変領域特定部825は、ボリュームデータを対象として、被検体の病変領域を特定する。メモリ部826は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備える構成をもつ記憶装置である。メモリ部826は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)のデータを記憶したり、CPUのワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする。正中線特定部827は、乳頭領域特定部821において特定された乳頭領域の位置に基づいて被検体の中心を通る正中線の位置を特定する。境界線特定部828は、閾値処理により被検体と被検体以外とを区別するための境界線を特定する。
【0033】
以下図3を用いて病変領域が属する部分領域を特定するためのフローチャートの詳細を説明する。
【0034】
S11では、NMR信号受信部40の出力に基づいてボリュームデータ発生部86により発生された、被検体の胸部を対象としたボリュームデータを記憶装置83に記憶する。
【0035】
S12では、乳房領域特定部822において、ボリュームデータを対象とした閾値処理により図8における左右2つの乳房領域(A,B,C,D)が特定される。一例として、領域拡張法などの方法を用いる。領域拡張法とは、操作者により肺野領域内に指定された出発点となる画素(シード点)を与え、それに隣接する画素を濃度値の類似性に基づいて順次統合しながら入力画像内のある領域を抽出する処理である。
【0036】
S13では、乳頭領域特定部821において、ボリュームデータを対象として図3における左右2つの乳頭領域E及びJが特定される。
【0037】
S14では、正中線特定部827において、S13で特定された乳頭領域の例えば重心の位置に基づいて、図3における正中線111の位置が特定される。
【0038】
S15では、境界線特定部828において、図3における被検体と被検体外との境界線120及び121が閾値処理により特定される。
【0039】
S16では、領域分割面決定部824において、S12で特定された左右の乳房領域内を対象として、図3に示されるような乳頭領域の重心の位置で交差する、アキシャル面に平行な第三の領域分割面117及び第一の領域分割面119の位置と、サジタル面に平行な第四の領域分割面116及び第二の領域分割面118の位置とが決定される。第一の領域分割面119の位置と第三の領域分割面117の位置は、左右の乳頭領域の例えば重心の位置に基づいて、左右それぞれ独立に決定される。同様に、第二の領域分割面118の位置と第四の領域分割面116の位置についても左右の乳頭領域の例えば重心の位置に基づいて、左右それぞれ独立に決定される。その後、ユーザーが、マウスやキーボード等の入力デバイスに領域分割面を微調整するための情報を入力することにより、領域分割面の位置が微調整され、最終的な領域分割面の位置が決定される。
【0040】
S17では、乳房領域区分部823において、S16において決定された領域分割面に基づいて、右乳房領域を、乳頭領域を除く4つの部分領域(図2におけるA,B,C,D)に区分するとともに、左乳房領域を、乳頭領域を除く4つの部分領域(図2におけるA,B,C,D)に区分する。同時に、S12において特定された乳房領域に基づいて胸部の領域を乳房領域(図2におけるA,B,C,D,E)と乳房領域以外の乳房外領域(図2におけるC’)とに区分する。さらに、S13により特定された乳頭領域区分線(図2における113及び115)により、乳輪領域Eと、その他の領域(A,B,C,C’,D)とが区分される。さらに、乳輪領域Eと乳頭領域E’を形状に基づいて区別する。S17における以上の処理により、乳房領域が14個の部分領域(図2におけるA,B,C,C’,D,E,E’)に区分される。Aは、乳房領域における内側上部、Bは、乳房領域における内側下部、Cは、乳房領域における外側上部、Dは乳房領域における外側下部、Eは乳輪領域である、E’は乳頭領域である。また、C’は、被検体の腋付近におけるリンパ節が集中している領域を示す。
【0041】
S18では、病変領域特定部825において、ボリュームデータから閾値処理により病変領域を特定する。複数の病変領域が存在する場合においても、複数の病変領域それぞれについて病変領域を特定する。
【0042】
S19では、記憶装置83において、少なくとも1つの被検体の病変領域それぞれが属する、複数の部分領域と乳房外領域とのうちいずれかの領域を特定する情報をボリュームデータに関連付けて記憶する。複数の病変領域が存在する場合でも、複数の病変領域それぞれについて、病変領域が属する部分領域を特定する情報をボリュームデータに関連付けて記憶する。病変領域が複数の部分領域にまたがっている場合、一例として、病変領域と部分領域とが重なる面積に基づいて、病変領域が属する部分領域を特定する。
【0043】
図4は、右乳房領域と、乳房領域周辺のリンパ節とを示す図である。図4に示されるように、右乳房領域は大きくA,B,C,C’,D,Eの6つに分けられる。図4のAは、乳房領域における内側上部、Bは、乳房領域における内側下部、Cは、乳房領域における外側上部、Dは、乳房領域における外側下部、Eは、乳輪領域を表す。また、C’は、被検体の腋付近におけるリンパ節が集中している領域を示す。左乳房の場合、A、B、C、及びDの各符号は、被検体の正中線を軸として左右対称となる。各領域における乳がん発生頻度は、おおよそ、A領域25%、B領域10%、C及びC’領域50%そしてD領域10%である。特にC’領域は多数のリンパ節を有する部位であり、乳がん発生頻度が高いことが一般的に知られている。
【0044】
図5Aは、従来における乳がんのリスクが高い女性に対して用いられる乳房撮像の流れである。まず、X線マンモグラフィ―や超音波画像診断装置で撮像する。次に、ユーザーが画像を見て、病変領域がないと判断した場合には、乳房撮像を終了する。良性のガンを発見した場合には、医者は患者の体内に存在するガンの経過を観察する。ガンが良性であるか疑わしい場合には、その後、核磁気共鳴撮像を行う。
【0045】
図5Bは、乳がんのリスクが高い女性に対して用いられる乳房撮像の流れである。乳がんリスクの高い女性に対して核磁気共鳴イメージング装置を用いて年に一度撮像するように推奨されている。従って、初めに核磁気共鳴イメージング装置を用いて撮像を行う。次に、ユーザーが、核磁気共鳴イメージング装置で撮像して得られた画像を見て、患部がないか、あるいは、ガンが存在するが良性のガンであると判断した場合には、医者は患者の体内に存在するガンの経過を観察する。ガンが良性であるか疑わしい場合には、血液検査などの生体検査を行う。このように、核磁気共鳴イメージング装置での撮像後、さらに患部を精密に検査するため、X線マンモグラフィや超音波撮像を行うという臨床ニーズが生じてきた。
【0046】
図6〜図8は、コロナル断面、サジタル断面、アキシャル断面に関するMPR画像である。図6は、アキシャル断面におけるMPR画像である。右乳頭領域100の重心、及び左乳頭領域101の重心を通るように第二の領域分割面102、及び103が表示される。図7は、コロナル断面におけるMPR画像である。右の乳頭領域106の重心、及び左の乳頭領域107の重心を通過するように領域分割面104、105、107、108が表示される。また、図7の右乳房と、左乳房は、左右独立にMPR処理され、左右並べて配置された合成画像である。図8は、サジタル断面におけるMPR画像である。乳頭領域110の重心を通過するように、領域分割面109が表示される。
【0047】
図9は、左右の乳房領域を対象としたコロナル断面の位置を模式的に示した図である。図9に示されるように、左右それぞれ独立に、コロナル方向に関して異なる深さを有するコロナル断面のMPR画像が発生される。その後、図6、及び図7に示されるような2枚のコロナル断面のMPR画像を合成したMPR画像が発生される。
【0048】
以上、本発明の効果として、核磁気共鳴イメージング装置により撮影された3次元画像における乳房の病変領域の特定が容易にできるようになる。また、核磁気共鳴イメージング装置により撮影された3次元画像と、X線マンモグラフィ―装置や超音波画像診断装置の画像とを比較する際、同一の病変領域の特定が容易にできるようになる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
10…架台部、11…静磁場磁石、12…傾斜磁場コイル、13…送信用RFコイル、14…受信用RFコイル、20…傾斜磁場電源、30…送信部、40…受信部、50…シーケンス制御部、60…寝台部、61…天板、62…第二表示部、63…刺激発生装置、64…刺激発生装置用コンソール、70…寝台制御部、80…コンソール、81…インターフェース部、82…データ処理部、83…記憶装置、84…入力部、85…表示部、86…ボリュームデータ発生部、87…MPR画像発生部、88…画像解析部、100…MRI装置、100…右乳頭領域、101…左乳頭領域、102…第二の領域分割面、103…第四の領域分割面、104…第四の領域分割面、105a…第三の領域分割面、105b…第一の領域分割面、108…第二の領域分割面、109…アキシャル面に平行な領域分割面、101、106、110…乳頭領域、111…正中線、112…右乳房領域区分線、113…右乳輪領域区分線、114…左乳房領域区分線、115…左乳輪領域区分線、116…第四の領域分割面、117…第三の領域分割面、118…第二の領域分割面、119…第一の領域分割面、120…右胸部を対象として被検体と被検体以外とを区別する境界線、121…左胸部を対象として被検体被検体以外とを区別する境界線、122…右乳房を対象としたコロナル断面のMPR画像、123…乳房を対象としたコロナル断面のMPR画像、821…乳頭領域特定部、822…乳房領域特定部、823…乳房領域区分部、824…領域分割線決定部、825…病変領域特定部、826…メモリ部、827…正中線特定部、828…境界線特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の胸部を対象としたボリュームデータを記憶するボリュームデータ記憶部と、
前記ボリュームデータから、第一のMPR処理により、前記被検体の右の乳房領域を対象とし第一の冠状断面の右乳房に関する第一MPR画像を発生し、第二のMPR処理により、前記被検体の左の乳房領域を対象とした前記第一の冠状断面とは独立した第二の冠状断面の左乳房に関する第二MPR画像とを発生するMPR画像発生部と、
前記右乳房に関するMPR画像と、前記左乳房に関するMPR画像とを左右に並べて配置し同時表示するMPR画像表示部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
被検体の胸部を対象としたボリュームデータを記憶するボリュームデータ記憶部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体の乳頭領域を特定する乳頭領域特定部と、
前記ボリュームデータから、乳房領域を閾値処理により特定する乳房領域特定部と、
前記特定された乳頭領域に基づいて前記乳房領域を複数の部分領域に区分するとともに、前記特定された乳房領域に基づいて前記胸部の領域を前記乳房領域と前記乳房領域以外の乳房外領域とに区分する乳房領域区分部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項3】
ボリュームデータを対象として、少なくとも1つの被検体の病変領域を特定する病変領域特定部と、
前記少なくとも1つの被検体の病変領域それぞれが属する、前記複数の部分領域と前記乳房外領域とのうちいずれかの領域を特定する情報を、前記ボリュームデータに関連付けて記憶する病変領域記憶部と、
をさらに備える請求項2記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
被検体の胸部を対象としたボリュームデータを記憶するボリュームデータ記憶部と、
前記ボリュームデータから、MPR処理により前記被検体の左右の乳房領域を対象とした所定の断面の画像を発生するMPR画像発生部と、
前記ボリュームデータに基づいて、被検体の乳頭領域を特定する乳頭領域特定部と、
前記ボリュームデータから、前記乳房領域を閾値処理により特定する乳房領域特定部と、
前記特定された乳頭領域の位置に基づいて、前記検出された左右の乳頭領域を通り、体軸と交差する第一の区分面と、前記第一の区分面に直交し前記左の乳頭領域を通る第二の区分面と、前記第一の区分面に直交し前記右の乳頭領域を通る第三の区分面とを決定する領域区分面決定部と、
前記領域区分面を、前記所定の断面の画像上に表示する表示部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項5】
前記所定の断面の画像は、前記サジタル断面に関するMPR画像、前記コロナル断面に関するMPR画像、及び前記アキシャル断面に関するMPR画像であり、
前記表示部は、前記サジタル断面に関するMPR画像、前記コロナル断面に関するMPR画像、及び前記アキシャル断面に関するMPR画像とを前記領域区分面と共に同時に表示する請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記ボリュームデータは、核磁気共鳴イメージング装置で撮影された画像である請求項1、2及び4記載の医用画像処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85560(P2013−85560A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225699(P2011−225699)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】