説明

医用画像出力装置及び医用画像出力方法

【課題】出力されたフィルムの仕分け作業を容易にする。
【解決手段】出力対象の医用画像及びその出力指示情報が通信部54を介して入力されると、制御部51は入力された医用画像の付帯情報を参照し、医用画像が撮影された患者を判別する。次いで、出力指示情報に基づいて一患者について複数の医用画像のフィルム出力が指示されているか否かを判別し、複数の場合は各医用画像の入力順と逆の順番に出力順を設定し、設定された出力順で各医用画像及びその付帯情報を所定の出力フォーマットに従って配置した出力用画像データ(形成される像は正立像)を生成する。一方、単数のフィルム出力が指示されている場合、制御部51は医用画像及びその付帯情報を反転して配置した出力用画像データ(形成される像は鏡像)を生成する。露光部57及び現像部58は出力用画像データに基づいて画像形成を行い、画像形成されたフィルムは排出部59によりトレイ上に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の医用画像をフィルムに形成して出力する医用画像出力装置及び医用画像出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、検査撮影により得られた医用画像を医用画像出力装置によりフィルムに出力し、このフィルムを読影医が観察することにより診断が行われる。従来から、読影作業の効率化を図るためのフィルム出力方法として、複数患者の医用画像を出力する際には患者毎に連続出力されるように医用画像の出力順を入れ替えてフィルム出力する方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。また、フィルムは支持体上に感光材料を含有する乳剤が塗布されて形成されており、その材質によっては支持体側の面又は乳剤層が塗布された乳剤面に光沢が発生することがあるため、読影医の好みに応じて選択されたフィルム面で読影を行うことができるように医用画像を反転してその正立像又は鏡像のフィルム出力を行うことができる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−114903号公報
【特許文献2】特許第2844281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、1台の医用画像出力装置を複数の読影医が共用することが多く、複数の読影医からの指示によるフィルム出力が一時期に集中した場合、医用画像出力装置のトレイ上には先に出力されたものから順にフィルムが蓄積されていくため、トレイ上のフィルム群には各読影医が出力したものが混在し、この中から自身が出力したものを仕分ける作業は手間がかかる。通常、フィルムには医用画像とともに、その付帯情報として医用画像が撮影された患者の患者氏名、患者ID(患者を個々に識別にするために付与された識別情報)、その一患者分の医用画像の読影順及び総出力数が出力されることが多い。よって、この付帯情報により各読影医は蓄積されたフィルム群の中から自身が出力したものを検索することができるが、逐一患者氏名等を確認しなければならず煩雑である。
【0004】
特にCT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)等の検査撮影の場合、CR(Computed Radiography)の場合に比較して撮影枚数がかなり多いため、そのようなCTやMRIにより得られた医用画像のフィルム出力の間に枚数が少ないCRの医用画像がまぎれてしまった場合にはその仕分け作業が困難である。
【0005】
また、医用画像出力装置では、通常医用画像が入力された順にフィルム出力が行われ、トレイ上には先に出力されたフィルムの上に後に出力されたフィルムが重ねられていくので、図10(a)に示す構成の医用画像出力装置でフィルム出力された場合、トレイ上に排出されたフィルムをA方向から見ると、図10(b)に示すように各フィルムに形成された医用画像のフィルムの上からの並び順(以下、これをフィルム順という)は読影順と逆となる。シャーカステンにフィルムを並べて観察する際には図10(c)に示すように読影順に左から右へ並べることが多く、図10(b)に示すような出力形態でフィルムが出力された場合には一旦フィルムの順番を入れ替える等の操作が必要となってくる。しかしながら、前述したようにCTやMRIの場合には撮影枚数が多いため、フィルム順を入れ替える操作はかなり煩雑な作業となってしまう。
【0006】
本発明の課題は、出力されたフィルムの仕分け作業を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
患者の医用画像をフィルムに出力する医用画像出力装置において、
前記医用画像及びその付帯情報をフィルム出力する出力手段と、
医用画像を複数出力する場合と単数出力する場合とで、フィルムの出力形態が異なるように、医用画像及び付帯情報を正立像又は鏡像に反転する反転処理を実行し、当該反転された医用画像及び付帯情報を前記出力手段によりフィルム出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医用画像出力装置において、
前記出力制御手段は、一患者分の医用画像を複数出力する場合、出力されたフィルムに形成された医用画像が正立像となるように見たときに、それらフィルム上に形成された医用画像の順番が読影順と一致するように、医用画像の出力順を入れ替える入替処理を実行し、当該入れ替えられた出力順で前記出力手段によりフィルム出力させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の医用画像出力装置において、
前記フィルムは、その両面における光沢の程度が略一致であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像出力装置において、
前記光沢の程度が略一致のフィルムは、略透明な支持体上に感光層を有する熱現像用フィルムであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
患者の医用画像及びその付帯情報をフィルムに出力する医用画像出力方法であって、
医用画像を複数出力する場合と単数出力する場合とで、フィルムの出力形態が異なるように、医用画像及び付帯情報を正立像又は鏡像に反転する反転処理を実行する工程と、
前記反転された医用画像及び付帯情報を出力手段によりフィルム出力する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、5に記載の発明によれば、複数出力と単数出力とでフィルムの出力形態を異なるものとするので、オペレータはフィルムの出力形態の差異により複数出力されたフィルム群と単数出力されたフィルムを容易に仕分けることができる。また、医用画像とともにその付帯情報を反転することにより出力形態を異なるようにするので、フィルム上の付帯情報の出力位置等により、容易に複数出力と単数出力との境界を見分けることができ、仕分け作業の作業効率が良い。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、複数出力の場合はフィルム上に形成された医用画像が正立像で、かつそれらフィルムが読影順に重ねられた状態で出力されるので、オペレータは出力されたフィルムを取り出してそのまま上から順に1枚づつシャーカステンに並べるだけで読影順に正立像の医用画像を並べることができ、作業の効率化を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、フィルムはその両面における光沢の程度が略一致のものを使用する。医用画像を反転した場合、画像が形成された面が必ずしも読影を行う面になるとは限らないが、光沢差が少ないフィルムを使用することにより読影医に違和感を与えることがない。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、光沢の程度が略一致のフィルムとして熱現像用のフィルムを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態では、一患者についての医用画像を複数出力する場合と、単数出力する場合とで、フィルムの出力形態が異なるように医用画像及びその付帯情報の反転処理を制御し、かつ複数出力する場合には、その複数出力されたフィルム上に形成された医用画像が正立像となるように見たときにそれらフィルム順が各医用画像の読影順と一致するように、医用画像の出力順を入れ替える入替処理を制御する例を説明する。
【0017】
なお、フィルムは材質によっては支持体面又は画像形成面である乳剤面に光沢が発生することがあり、読影医によって光沢の程度が大きい方が好まれたり、少ない面が好まれたりと様々である。本発明では、出力するフィルム枚数が複数か単数かによってフィルムの出力形態が異なるように医用画像及びその付帯情報が反転された鏡像又は反転されない正立像がフィルム出力されるため、必ずしも画像形成面側から読影が行われるとは限らず、支持体面側から読影が行われる場合もある。つまり、フィルムの両面に光沢差があると読影医の好みに応じた光沢を有する面から読影を行うことができるとは限らず、読影医の要望に応えられない場合もある。従って、両面で光沢の差が少ないフィルムを使用する場合に本発明を適用すると、支持体面又は画像形成面の何れから読影を行ってもフィルムの光沢の程度は略一致であるので、光沢の有無に拘わらずそのフィルムの出力形態を自由に制御することができる。本実施形態では、そのような光沢の程度が略一致のフィルムとして、熱現像用のフィルムを使用して医用画像の出力を行う乾式の医用画像出力装置(いわゆるドライイメージャ)を例に説明する。
【0018】
まず、構成を説明する。
図1に、本実施の形態における医用画像出力装置50を示す。
医用画像出力装置50は、医用画像のデータに基づいてフィルム上に医用画像を形成しして出力するものであり、装置本体の上部にトレイ61が設置された上部タイプの医用画像出力装置である。
【0019】
図1に示すように、医用画像出力装置50は、感光性及び感熱性の記録材料(以下、感光感熱材料という)からなるフィルム1を収容し、供給するフィルム収容部55、フィルム1にレーザ光を照射して露光を行い、医用画像の潜像を形成する露光部57、露光後のフィルム1を加熱し、露光により形成された潜像を可視化する(現像する)現像部58、現像され、排出されたフィルム1を保持及び蓄積するトレイ61から構成されている。
【0020】
フィルム1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体上に感光感熱材料を含有する乳剤が塗布されて、感光層が形成されたものである。なお、感光層の上面にさらに保護層を設けることとしてもよい。
【0021】
フィルム1上に医用画像を形成する際には、感光層が形成された乳剤面に露光が行われる、つまり乳剤面に常に医用画像が形成される(以下、医用画像が形成された感光層側の面を画像形成面という)。よって、医用画像出力装置50の場合、フィルム1が装置内部を約1周した後、反転して排出されるようにその搬送経路が構成されているため、フィルム1の画像形成面が上となってトレイ61上に排出される。
【0022】
以下、図2を参照して医用画像出力装置50の内部構成について説明する。
図2に示すように、医用画像出力装置50は、制御部51、記憶部52、画像メモリ53、通信部54、フィルム収容部55、搬送機構56、露光部57、現像部58、排出部59から構成されている。
【0023】
制御部51は、記憶部52に記憶された各種制御プログラムや本発明に係るフィルム出力処理プログラムを読み出し、当該制御プログラムに従って各部の動作を集中制御する。
【0024】
フィルム出力処理では、出力対象の医用画像及びその出力指示情報が通信部54を介して入力されると、入力された医用画像のヘッダ領域に書き込まれた付帯情報を参照し、医用画像が撮影された患者を判別する。医用画像には、通常、撮影された患者に関する患者情報(例えば患者氏名や患者ID等)や撮影に関する撮影情報(例えば撮影条件や医用画像を生成したモダリティのモダリティID等)等、医用画像に関する各種情報が付帯情報として付帯されている。本実施形態では、医用画像のヘッダ領域に上記医用画像に関する各種情報が書き込まれて付帯されていることとする。また、出力指示情報とは医用画像のフィルム出力に関する指示情報をいい、フィルムサイズや医用画像の拡大率(又は縮小率)等の指定情報、同一患者分の医用画像をまとめて出力する場合にはその患者ID及び連続出力する各医用画像の画像ID、それら医用画像について指定された読影順の情報が含まれる。
【0025】
次いで、出力指示情報に基づいて一患者について複数の医用画像のフィルム出力が指示されているか否かを判別し、複数の場合は各医用画像の入力順と逆の順番に出力順を設定し、設定された出力順で各医用画像及びその付帯情報を正立像対応の出力フォーマットに従って配置した出力用画像データ(形成される像は正立像)を生成し、当該出力用画像データに基づいて各部により画像形成を行わせる。一方、一患者について単数の医用画像のフィルム出力が指示されている場合は、医用画像及びその付帯情報を反転して鏡像対応の出力フォーマットに従って配置した出力用画像データ(形成される像は鏡像)を生成し、当該出力用画像データに基づいて各部により画像形成を行わせる。すなわち、制御部51とフィルム出力処理プログラムとの協働により出力制御手段を実現することができる。
【0026】
記憶部52は、磁気的又は光学的記録媒体、半導体メモリ等から構成され、各種制御プログラムや処理中に使用されるパラメータ、処理結果等のデータを記憶する。
【0027】
画像メモリ53は、通信部54を介して入力された出力対象の医用画像のデータを記憶する。
【0028】
通信部54は、NIC(Network Interface Card)、モデム等の通信用インターフェイスからなり、通信ネットワーク上の各装置とデータ通信を行う。例えば、通信部54は撮影された医用画像をデータベース化して保存、管理する画像サーバと通信ネットワークを介して通信を行い、出力対象の医用画像のデータを受信する。或いは、CR、CT、MRI等の各種モダリティと通信を行い、各モダリティで撮影された医用画像のデータを受信する。受信された医用画像のデータは画像メモリ53に出力する。
【0029】
フィルム収容部55は、未露光のフィルム1を重ねて収容したトレイ及びトレイからフィルム1をピックアップして搬送経路に送り出すピックアップ機構を備え、制御部11からの指示に応じて当該トレイに収容されたフィルム1を搬送経路に送り出す。
【0030】
搬送機構56は、フィルム1の搬送経路沿いに複数の搬送ローラ対を備え、フィルム収容部55から搬送経路上に送り出されたフィルム1を露光部57、現像部58、排出部59に所定の速度で順次搬送する。
【0031】
露光部57は、フィルム1上に照射するレーザ光を発振するレーザ発振器、レーザ発振器から発振されるレーザ光の光量を可視化すべき医用画像のデータに従って変更させる光量変調部、レーザ光をフィルム1上で走査させるポリゴンミラー及び精密送り機構、レーザ光を集光する集光レンズやfθレンズ等の光学系等から構成されている。
【0032】
フィルム1がフィルム収容部55から露光部57に搬送されると、レーザ発振器からレーザ光が発振されるとともに光量変調部に医用画像のデータが入力され、光量変調部では医用画像のデータに従ってレーザ光の変調が行われる。変調されたレーザ光が所定の速度で回転するポリゴンミラーに入光すると、レーザ光は反射によりフィルム1の搬送方向と直交する方向に所定の周期で走査される。この走査方向を主走査方向という。一方でフィルム1は精密送り機構により搬送方向に所定の速度で搬送されるのでフィルム1の全面にレーザ光が走査されることとなる。このフィルム1の搬送方向における走査方向を上記主走査方向に対して副走査方向という。
【0033】
現像部58は、露光部57により露光されたフィルム1を加熱するヒートローラ、ヒートローラ上にフィルム1を密着させるための対向ローラ等から構成されている。ヒートローラはヒータを内蔵し、円筒状に形成されてその外周にフィルム1を所定の熱現像時間、所定の最低熱現像温度以上に維持することによって、露光によりフィルム1上に形成された潜像を可視画像として形成する。
【0034】
排出部59は、トレイ61や図示しないフィルム送り機構を備えて構成され、現像部58において熱現像されたフィルム1を搬送し、トレイ61に排出する。トレイ61に排出されたフィルム1は先にフィルム出力されたフィルム1の上に順次蓄積されていく。
すなわち、露光部57、現像部58、排出部59により出力手段を実現することができる。
【0035】
次に、上記医用画像出力装置50における動作について説明する。
図3は、医用画像出力装置50により実行されるフィルム出力処理を説明するフローチャートである。
【0036】
図3に示すフィルム出力処理では、まず出力対象の医用画像の入力が待機され、通信部54を介して医用画像のデータ及び出力指示情報が入力されたか否かが判別される(ステップS1)。そして、医用画像及び出力指示情報が入力されたと判別されると(ステップS1;Y)、当該入力された医用画像のヘッダ領域から当該医用画像の付帯情報が読み出され、読み出された付帯情報に含まれる患者IDの情報に基づいて医用画像が撮影された患者が判別される(ステップS2)。
【0037】
次いで、医用画像とともに入力された出力指示情報が参照され、一患者分の医用画像が全て入力されたか否かが判別される(ステップS3)。一患者について複数の医用画像の連続出力が指示されており(以下、複数の医用画像を連続出力することを複数出力という)、まだ出力指示された全ての医用画像が入力されていない場合には(ステップS3;N)、ステップS1の処理に戻り、次の医用画像の入力が待機される。
【0038】
一方、一患者について一の医用画像、つまり単数でフィルム出力が指示されており(以下、単数の医用画像を出力することを単数出力という)、一患者分の医用画像の入力された場合、或いは一患者について複数出力が指示されており、その指示された全ての医用画像が入力された場合(ステップS3;Y)、入力された一患者分の医用画像は複数出力が指示されたのか、単数出力が指示されたのかが判別される(ステップS4)。
【0039】
まず、単数出力が指示されている場合について説明する。
単数出力が指示されている場合(ステップS4;単数)、入力された一の医用画像が反転された鏡像の画像データが生成される(ステップS5)。次いで、所定の出力フォーマットに従って露光処理及び現像処理によりフィルムへの画像形成が行われる。出力フォーマットは、図4(a)に示す正立像対応のものと図4(b)に示す鏡像対応のものがある。図4(a)、(b)に示すように、各フォーマットでは医用画像が形成される画像エリア1a及びその医用画像に関する付帯情報のテキストが形成される付帯情報エリア1bが設定されており、各フォーマットの画像エリア1a、付帯情報エリア1bの位置は互いに鏡像関係を有している。つまり、画像エリア1aはフィルム1の中央部分に位置するため、正立像対応と鏡像対応とで位置に変化はないが、付帯情報エリア1bについては正立像対応の出力フォーマットではフィルム1の右下に、鏡像対応の出力フォーマットではフィルム1の左下に位置することとなり、鏡像関係となっている。単数出力の場合、画像形成時には、図4(b)の鏡像対応の出力フォーマットが適用され、生成された医用画像の鏡像の画像データに基づいて、フィルム1において画像エリア1aに対応する位置に医用画像の鏡像が画像形成されるとともに、付帯情報エリア1bに対応する位置(フィルム1の右下)に患者ID、患者氏名、読影順/総出力数を示す数字が画像形成される(ステップS6)。そして、画像が形成されたフィルム1がトレイ61上に排出されると、本処理を終了する。
【0040】
次に、一患者分の医用画像を複数出力する場合について説明する。
一患者分の医用画像の複数出力が指示されている場合(ステップS4;複数)、入力された一患者分の複数の医用画像についてそれらの入力順と逆の順番に出力順nが設定される(ステップS7)。次いで、出力順nが初期値であるn=1に設定され(ステップS8)、設定された出力順nの医用画像のデータが画像メモリ53から読み出される。次いで、正立像対応の出力フォーマット(図4(a)参照)に従って露光処理及び現像処理によりフィルムへの画像形成が行われる。まず、読み出された医用画像の画像データに基づいて、フィルム1において出力フォーマットで規定された画像エリア1aに対応する位置に医用画像の正立像が画像形成されるとともに、同じく出力フォーマットで規定された付帯情報エリア1bに対応する位置(フィルム1の右下)に患者ID、患者氏名、読影順/総出力数を示す数字が画像形成される(ステップS9)。
【0041】
そして、画像形成されたフィルム1がトレイ61上に排出されると、一患者分の医用画像全てについてフィルム出力が終了したか否かが判別され(ステップS10)、まだ全ての医用画像についてフィルム出力が終了していない場合(ステップS10;N)、出力順nのパラメータが1だけインクリメントされ(ステップS11)、ステップS9の処理に戻る。すなわち、全てのフィルム出力が終了するまで順次出力順nのパラメータが繰り上げられ、繰り上げられた出力順nの出力用画像データのフィルム出力が行われる。
【0042】
そして、全ての出力用画像データのフィルム出力が終了すると(ステップS10;Y)、次の患者の医用画像が入力されているか否かが判別され(ステップS12)、次の患者分の医用画像が既に入力されている場合(ステップS12;Y)、ステップS1の処理に戻ってステップS1〜S10の処理を繰り返す。一方、次の患者分の医用画像が入力されていない場合(ステップS12;N)、本処理を終了する。
【0043】
以上のフィルム出力処理により出力されたフィルムの一例を、図5に示す。
図5は、患者“山田”、“田中”、“鈴木”の順に医用画像のフィルム出力が指示され、患者“山田”について3枚の医用画像E、F、Gの複数出力、患者“田中”について1枚の医用画像Jの単数出力、患者“鈴木”について5枚の医用画像K、・・・の複数出力が指示された場合における、トレイ上に排出され、蓄積されたフィルム群をそのフィルム順に並べた状態を示す図である。なお、図5において、黒枠で囲まれるフィルムは画像形成面から見た図であることを示す。また、医用画像を示すE〜G、J、K及び付帯情報のテキストが実線で示されている場合は正立像、点線で示されている場合は鏡像であることを示している。
【0044】
図5に示すように、複数出力又は単数出力の何れにおいてもフィルムは画像形成面が上となるように排出されるが、複数出力された各フィルムの医用画像は正立像でフィルム出力されており、単数出力されたフィルムの医用画像は鏡像でフィルム出力されている。医用画像の付帯情報についても同様の出力形態でフィルム出力されているため、複数出力の場合はそのテキストが正立像であり、その位置はフィルムの右下であるが、単数出力の場合はそのテキストが鏡像であり、その位置はフィルムの左下である。また、複数出力された各フィルムはそのフィルム順と読影順が一致している。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、複数出力の場合はトレイ61上に排出されたフィルムをその上方から見たときにフィルム上に形成された像が正立像となるように、逆に単数出力の場合はフィルム上に形成された像が鏡像となるようにフィルム出力することにより、複数出力と単数出力とでフィルムの出力形態を異なるものとするので、オペレータがトレイ61上に蓄積されたフィルム群を取り出してその付帯情報の出力位置を確認することにより容易に判別することができる。例えば、図5に示したフィルム群の場合、トレイ61から取り出したときは図6に示すように蓄積されている。よって、オペレータはフィルムの下端部分をめくりながら付帯情報の位置を確認し、複数出力した場合は付帯情報が右下に位置するフィルムを、単数出力した場合は付帯情報が左下に位置するフィルムを見つけて取り出せばよい。この場合、文字認識(テキストの文字等が反転しているか否か)ではなく、パターン認識(テキストが左に位置するか右に位置するか)でよいので、より検索が容易となる。
【0046】
従って、CT、MRI等の出力枚数が多い中にCR等の出力枚数が少ないものが紛れ込んだ場合であっても、フィルム群の中から容易に所望のフィルムを取り出すことができ、フィルムの仕分け作業を容易にすることができる。
【0047】
通常、医用におけるデジタル画像と通信に関する標準規格であるDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した医用画像出力装置では、患者ID等の付帯情報をオーバーレイする機能を備えているので、本発明を適用すれば、ことなる複数メーカの医用画像出力装置が混在する場合であっても、患者が切り替わる毎に切り替わったことを示すマーカをフィルム上に画像形成する等の特別な処理を行うことなく、設定のみで各患者のフィルムを容易に判別することができる。
【0048】
また、本発明を適用した場合、画像形成面が必ずしも読影を行う面になるとは限らず、支持体面側から読影を行う場合もあり得るが、例えばコニカミノルタ社製SD−P、富士写真フィルム社製DI−HL、DI−AL等の熱現像用フィルムは、従来のウェット処理用(化学処理液を使用する湿式の医用画像出力装置用)のフィルムに比べ、一般的にその両面における光沢差が少なく、画像形成面又は支持体面の何れから読影を行うことになっても読影医に違和感を与えない。
【0049】
また、複数出力の場合、フィルム順と読影順とが一致するように各医用画像の出力順が入れ替えられるので、フィルムをシャーカステンに並べる際にはフィルムを裏返す、順番を入れ替える等の特別なフィルム操作をすることなく、上から順にフィルムを取り出してシャーカステンに並べることができ、作業の効率化を図ることができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、複数出力の場合は正立像で、単数出力の場合は鏡像となるように出力制御したが、その逆(複数出力の場合は鏡像で、単数出力の場合は正立像)となうように出力制御してもよく、その出力形態が異なるのであればその出力形態の内容は特に限定しない。
【0051】
また、上記実施形態では、装置本体の上部にトレイ61が設置され、画像形成面が上となるようにフィルムを出力する上部タイプの医用画像出力装置50の例を説明したが、複数出力と単数出力とでフィルムの出力形態を異なるようにすることができるのであればこれに限らない。
【0052】
例えば、図7に示すように、装置本体の側面にトレイが設置され、画像形成面が下となるようにフィルムを出力する側面タイプの医用画像出力装置60においても、本発明を適用可能である。この医用画像出力装置60の構成の場合、トレイ61上に排出されたフィルム1をその上方向(A方向)から見ると、オペレータ側に支持体面が位置するため、フィルム1に形成された医用画像は鏡像となっている。よって、単数出力が指示された場合は通常通り、医用画像及びその付帯情報の正立像をフィルム1上に形成して出力し、複数出力が指示された場合には医用画像及びその付帯情報を反転した鏡像をフィルム1上に形成するとともにそれら各医用画像の入力順と逆の順番に出力順を設定する。これにより、トレイ61上に蓄積されたフィルム群をA方向から見たときには、複数出力された一患者分の各フィルム1は正立像、単数出力された一患者分のフィルム1は鏡像となっており、出力形態が異なっている。従って、複数患者分の医用画像が形成されたフィルム1がトレイ61上に蓄積された場合でも、オペレータはそのフィルム群の中から所望のフィルムを容易に判別することができる。
【0053】
また、図8に示すように、複数トレイ61〜63が設置され、ソータ機能を有している場合でも本発明を適用可能である。この場合、患者が切り替わる毎にフィルムを排出するトレイ61〜63を切り替え、同一患者について出力されたフィルム内において、例えばCTの医用画像で複数出力されたものと、CRの医用画像で単数出力されたものとでフィルムの出力形態を切り替えてフィルムを仕分けることにより、オペレータのフィルムの仕分け作業を軽減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、医用画像出力装置50において出力制御を行うこととしていたが、これに限らず、例えば図9に示すように上部タイプの医用画像出力装置50や側面タイプの医用画像出力装置60が混在する医用画像出力システム100において制御装置20が出力制御を行うこととしてもよい。この場合、制御装置20において予め各医用画像出力装置50、60の出力形態の特性(画像形成面が上下何れの方向に向けて排出されるか、トレイ上に排出されたフィルムをその上方から見たときの像は正立像か鏡像か等)を示す出力形態情報を記憶させておき、出力対象の医用画像を医用画像出力装置50又は60に提供する際に、各医用画像出力装置50又は60の出力形態情報に基づいて、単数出力及び複数出力の出力形態がそれぞれ異なるものとなるように、医用画像及びその付帯情報の反転処理の有無、医用画像の出力順の設定を行う。そして、その設定情報を出力指示情報として出力対象の医用画像とともに医用画像出力装置50又は60に送信し、フィルム出力を行わせる。
【0055】
また、上記実施形態では、複数出力と単数出力の場合とで出力形態が異なるように出力制御することとしたが、これに限らず患者が切り替わる毎に出力形態を切り替えることとしてもよいし、患者単位ではなく、フィルム出力の指示単位で切り替えることとしてもよい。例えば、フィルム出力の指示は読影医毎になされるので、フィルム出力の指示単位毎にその出力形態を切り替えることにより、多数のフィルムが出力された場合でも各読影医が自身で出力を指示したフィルム群を一見して判別することができる。
【0056】
また、図9に示す医用画像出力システム100の場合、読影端末30においてフィルム出力の指示操作がなされ、制御装置20ではその指示操作に応じてフィルムの出力を医用画像出力装置50又は60に指示する構成なので、読影端末30においてフィルム出力の指示操作が為されたときに読影医の認証を行い、フィルム出力の指示情報とともに当該認証された読影医の情報を制御装置20に送信することにより、制御装置20では読影医が切り替わる毎にフィルムの出力形態を切り替えるように出力制御することとしてもよい。これにより、医用画像出力装置50又は60では出力されたフィルムが読影医毎に出力形態が異なるので各読影医は自身が出力を指示したフィルム群を一見して判別することができる。
【0057】
また、モダリティ10が切り替わる毎にフィルムの出力形態を切り替えることとしてもよい。モダリティ10において医用画像が生成された際には当該医用画像を生成したモダリティ10のモダリティID(各モダリティを個別に識別するための情報)が付帯される。よって、制御装置20において出力指示された医用画像に付帯されたモダリティIDからそのモダリティ種を判別し、モダリティが切り替わる毎にフィルムの出力形態が切り替わるように出力制御する。CTやMRI等のモダリティにより生成された医用画像は複数出力されることが多く、CR等のモダリティにより生成された医用画像は単数出力されることが多いので、モダリティ毎に出力形態を切り替えることにより、多数出力されたフィルム群の中からモダリティ別にフィルム群を判別することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態における医用画像出力装置50(上部タイプ)を示す図である。
【図2】医用画像出力装置50の内部構成を示す図である。
【図3】医用画像出力装置50により実行されるフィルム出力処理を説明するフローチャートである。
【図4】医用画像とその付帯情報の出力フォーマット例を示す図である。
【図5】フィルム出力処理により出力されたフィルム群の一例を示す図である。
【図6】出力されたフィルムが重ねて蓄積されたフィルム群を示す図である。
【図7】他の実施形態における医用画像出力装置60(側面タイプ)を示す図である。
【図8】(a)複数トレイ61〜63が設置された医用画像出力装置50を示す図であり、(b)複数トレイ61〜63が設置された医用画像出力装置60を示す図である。
【図9】本発明を適用した医用画像出力システム100を示す図である。
【図10】(a)従来の医用画像出力装置を示す図であり、(b)、(c)はそのフィルムの出力形態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
50 医用画像出力装置(上部タイプ)
51 制御部
52 記憶部
53 画像メモリ
54 通信部
55 フィルム収容部
56 搬送機構
57 露光部
58 現像部
59 排出部
61〜63 トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の医用画像をフィルムに出力する医用画像出力装置において、
前記医用画像及びその付帯情報をフィルム出力する出力手段と、
医用画像を複数出力する場合と単数出力する場合とで、フィルムの出力形態が異なるように、医用画像及び付帯情報を正立像又は鏡像に反転する反転処理を実行し、当該反転された医用画像及び付帯情報を前記出力手段によりフィルム出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする医用画像出力装置。
【請求項2】
前記出力制御手段は、一患者分の医用画像を複数出力する場合、出力されたフィルムに形成された医用画像が正立像となるように見たときに、それらフィルム上に形成された医用画像の順番が読影順と一致するように、医用画像の出力順を入れ替える入替処理を実行し、当該入れ替えられた出力順で前記出力手段によりフィルム出力させることを特徴とする請求項1に記載の医用画像出力装置。
【請求項3】
前記フィルムは、その両面における光沢の程度が略一致であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像出力装置。
【請求項4】
前記光沢の程度が略一致のフィルムは、略透明な支持体上に感光層を有する熱現像用フィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像出力装置。
【請求項5】
患者の医用画像及びその付帯情報をフィルムに出力する医用画像出力方法であって、
医用画像を複数出力する場合と単数出力する場合とで、フィルムの出力形態が異なるように、医用画像及び付帯情報を正立像又は鏡像に反転する反転処理を実行する工程と、
前記反転された医用画像及び付帯情報を出力手段によりフィルム出力する工程と、
を含むことを特徴とする医用画像出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−6793(P2006−6793A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191184(P2004−191184)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】