医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラム
【課題】静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を精度良く判定できるようにする。
【解決手段】医用画像撮影システムによれば、撮影用コンソールの制御部は、被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する。そして、抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を出力手段により出力させる。
【解決手段】医用画像撮影システムによれば、撮影用コンソールの制御部は、被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する。そして、抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を出力手段により出力させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、診断対象の部位を被写体として撮影することにより静止画像のデジタル医用画像を生成し、この生成した医用画像に基づいて画像診断が行われている。
【0003】
医用画像の撮影時に被写体の体動が存在すると、医用画像に被写体ぶれが生じ、人体構造がわずかにぼけて画像化されるモーションアーチファクトが生じる。モーションアーチファクトが生じた画像は診断用としては不適切であるので、モーションアーチファクトが生じた医用画像は再撮影を行わなければならない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を判定することにより、モーションアーチファクトの発生した医用画像を診断に供することを未然に防ぎ、撮影業務の効率を向上させる技術が記載されている。この特許文献1においては、医用画像の高空間周波数成分を抽出し、抽出した高空間周波数成分に基づいて体動の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4539186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、肺野を被写体として胸部正面を撮影した医用画像では、撮影時の放射線曝射中に呼吸による体動でモーションアーチファクトが発生する場合がある。この場合、被写体の肋骨は静止したままで画像化され、被写体の肺野内の血管にモーションアーチファクトが発生する。
【0007】
このような医用画像において、体動の有無を判定するためには、モーションアーチファクトが発生している肺野内の血管領域の高空間周波数成分を抽出する必要がある。このとき、高空間周波数成分を抽出する領域に肋骨のエッジが含まれていると、エッジ部分は高空間周波数成分を多く含むため、抽出した高空間周波数に基づいて体動の有無を正しく判定することができないという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を精度良く判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像撮影システムは、
被写体を撮影して静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記領域抽出手段は、前記被写体領域を複数の小領域に分割し、当該複数の小領域の中からエッジを含まない複数の局所領域を抽出し、
前記体動判定手段は、前記領域抽出手段により抽出された複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記体動判定手段は、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記出力手段は、前記画像生成手段により生成された医用画像を表示出力する表示手段であり、
前記制御手段は、前記体動判定手段により体動があると判定された場合に、前記領域抽出手段により抽出された局所領域の位置情報及び前記局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて前記医用画像から拡大表示する領域を決定し、当該決定された領域を前記表示手段に拡大表示させる。
【0013】
請求項5に記載の発明の医用画像処理装置は、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える。
【0014】
請求項6に記載の発明のプログラムは、
コンピュータを、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて被写体の体動の有無を判定する体動判定手段、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を精度良く判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る医用画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図2】撮影用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS8において実行される体動判定処理を示すフローチャートである。
【図5A】静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図5B】横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図5C】横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図6】横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。
【図7】医用画像から抽出された肺野領域の一例を示す図である。
【図8】レスポンスの最大値又は積分値を算出する帯域を説明するための図である。
【図9】図4のステップS103において抽出されるエッジを含まない局所領域の一例を示す図である。
【図10】縦方向、横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図11】斜め方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図12】体動特徴量の算出手法を説明するための図である。
【図13A】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第1ステップ)。
【図13B】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第2ステップ)。
【図13C】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第3ステップ)。
【図14】体動警告画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る医用画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0018】
(医用画像撮影システムの構成)
まず、本実施の形態における医用画像撮影システム100の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る医用画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。医用画像撮影システム100は、患者の身体の一部である被写体(即ち、患者の撮影部位)に放射線を照射して被写体の静止画像を撮影するシステムである。図1では、医用画像撮影システム100が撮影室R1内に構築されている場合が示されている。
【0019】
撮影室R1には、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が備えられている。撮影室R1には前室Raと撮影実施室Rbが設けられ、前室Raに撮影用コンソール5及び操作卓6が備えられることで、撮影技師等の操作者の被曝を防止するようになっている。
【0020】
以下、撮影室R1内の各装置について説明する。
ブッキー装置1は、立位での撮影時にFPD(Flat Panel Detector)9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置1は、FPD9を保持するための保持部12aと、保持部12aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター12bとを有する。コネクター12bは、保持部12aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置1は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、保持部12aを垂直方向又は水平方向に移動させるためのフットスイッチ等を備える。
【0021】
ブッキー装置2は、臥位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置2は、FPD9を保持するための保持部22aと、保持部22aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター22bとを有する。コネクター22bは、保持部22aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置2は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、被写体を載置するための被写体台26を備える。
【0022】
放射線源3は、例えば、撮影室R1の天井から吊り下げられており、撮影時には撮影用コンソール5からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9に対して放射線(X線)を照射することができるようになっている。また、放射線源3は、操作卓6からの放射線照射指示に従って放射線を1回照射し、静止画像の撮影を行う。
【0023】
撮影用コンソール5は、放射線源3やFPD9を制御することにより撮影を制御するとともに、撮影により生成された医用画像に画像処理を施し確認用に表示するための医用画像処理装置である。撮影用コンソール5は、LAN(Local Area Network)を介してHIS/RIS(Hospital Information System/ Radiology Information System)7、診断用コンソール8、サーバー装置10等に接続されており、HIS/RIS7から送信された撮影オーダー情報に基づいて、放射線源3及びFPD9を起動させる等の制御をして撮影を行わせる。
【0024】
図2に、撮影用コンソール5の要部構成例を示す。図2に示すように、撮影用コンソール5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信I/F55、ネットワーク通信部56等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0025】
制御部51は、CPU、RAM等により構成される。制御部51のCPUは、記憶部52に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部51は、所定時間毎にネットワーク通信部56を介してHIS/RIS7に問い合わせを行い、新たにHIS/RIS7で登録された撮影オーダー情報を取得する。
また、例えば、制御部51は、後述する撮影制御処理を実行し、HIS/RIS7から取得した撮影オーダー情報に基づいて、撮影用コンソール5は放射線源3及びFPD9を制御して撮影を行わせる。そして、制御部51は、撮影により取得された医用画像の被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出し、抽出された局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を表示部54に表示させる。即ち、制御部51は、領域抽出手段、体動判定手段、制御手段としての機能を実現する。
【0026】
記憶部52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。
記憶部52には、各種のプログラム及びデータが記憶されている。
例えば、記憶部52には、上述の撮影制御処理を実行するための各種のプログラムが記憶されているほか、医用画像の画像データを部位毎の診断に適した画質に調整するための画像処理パラメーター(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)等が記憶されている。
【0027】
また、記憶部52には、撮影部位に対応付けて撮影条件(放射線照射条件及び画像読取条件)が記憶されている。放射線照射条件は、例えば、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種、SID(Source to Image−receptor Distance)等である。
また、記憶部52には、FPD9の特性情報が記憶されている。ここで、特性情報とは、FPD9の検出素子やシンチレータパネルの特性等である。
また、記憶部52には、所定時間毎にHIS/RIS7から送信される撮影オーダー情報が記憶される。
【0028】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0029】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
なお、表示部54の画面上に、透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル(図示せず)を形成し、表示部54と入力部53とが一体に構成されるタッチスクリーンとしてもよい。この場合、タッチパネルは、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号が操作信号として制御部51に出力されるように構成される。なお、表示部54は、一般的なPC(Personal Computer)
に用いられるモニターよりも高精細のものであってもよい。
【0030】
通信I/F55は、ブッキー装置1、ブッキー装置2、放射線源3、FPD9とアクセスポイントAPを介して接続し、無線、または有線によりデータ送受信を行うためのインターフェースである。本実施の形態において、通信I/F55はアクセスポイントAPを介して必要に応じてFPD9に対してポーリング信号を送信する。
【0031】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0032】
操作卓6は、撮影室内の放射線源に接続され、放射線照射指示を入力するための入力装置である。
【0033】
HIS/RIS7は、問診結果等に基づくオペレータによる登録操作に応じて撮影オーダー情報を生成する。撮影オーダー情報は、例えば被写体となる患者の氏名、性別、年齢、身長、体重等の患者情報や、撮影部位、撮影方向、体位(立位、臥位)、撮影方法等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダー情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
【0034】
診断用コンソール8は、サーバー装置10から医用画像を取得し、取得した画像を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
【0035】
FPD9は、制御部、検出部、記憶部、コネクター、バッテリー、無線通信部等を備えて構成される放射線検出器である。
FPD9の検出部は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源3から照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサーにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
【0036】
FPD9の制御部は、撮影用コンソールから入力された画像読取条件に基づいて検出部のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像)を生成する。そして、制御部は、生成した画像データをコネクター及びブッキー装置1又は2を介して撮影用コンソール5に出力する。なお、生成された静止画像を構成する各画素は、検出部の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値と呼称する)を示す。
FPD9のコネクターは、ブッキー装置1、2側のコネクターと接続し、ブッキー装置1又は2とのデータ送受信を行う。また、FPD9のコネクターは、ブッキー装置1又は2のコネクターから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリーを充電する構成としても良い。
また、FPD9は、ブッキーに装填されない単体使用時には、バッテリー駆動及び無線通信する構成であり、ブッキー装置1又は2に装填時には、コネクター接続により、バッテリー/無線方式から、有線/電力供給方式に切り替えることができる。従い、複数の患者を連続的に静止画撮影する場合に於いても、バッテリー切れを気にする必要がなくなる。
【0037】
サーバー装置10は、撮影用コンソール5から送信された医用画像の画像データや読影レポートを撮影オーダー情報に対応付けて記憶するデータベースを備える。また、サーバー装置10は、診断用コンソール8からの要求に応じてデータベースから医用画像を読み出して診断用コンソール8に送信する。
【0038】
(撮影動作)
次に、医用画像撮影システム100における撮影動作について説明する。
図3に、撮影用コンソール5において実行される撮影制御処理の流れを示す。図3の撮影制御処理は、撮影用コンソール5の制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0039】
まず、撮影技師等の操作者は、ブッキー装置1又はブッキー装置2にFPD9をセットする。次いで、撮影用コンソール5の入力部53を操作して撮影オーダー情報の一覧を表示する撮影オーダーリスト画面を表示部54に表示させる。そして、入力部53を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報と撮影に使用するブッキーIDを指定する。
【0040】
撮影用コンソール5においては、入力部53により撮影対象の撮影オーダー情報及びブッキーIDが指定されると(ステップS1)、放射線源3及びFPD9が起動され、使用されるブッキー装置に応じて放射線源3の向き及び位置が調整される。撮影技師により被写体に応じてFPD9やブッキー装置の位置等が調整されると、それに応じて放射線源3の向き及び位置が調整される(ステップS2)。また、記憶部52から撮影する部位に応じた放射線照射条件及び画像読取条件が読み出され、放射線源3に放射線照射条件が設定されるとともに、ブッキー装置を介してFPD9に画像読取条件が設定される(ステップS3)。撮影準備が整った時点で、技師は操作卓6を操作して放射線照射指示を入力する。
【0041】
操作卓6からの放射線照射指示が入力されると(ステップS4;YES)、撮影に使用される放射線源3及びFPD9が制御され、被写体の撮影が行われる(ステップS5)。具体的には、ステップS3で設定された条件で被写体の静止画像である医用画像及びオフセット補正用の1または数枚のダーク画像が撮影される。撮影により生成された医用画像及びダーク画像の画像データは、FPD9からブッキー装置を介して撮影用コンソール5に入力され、記憶部52に記憶される。
【0042】
次いで、撮影により得られた医用画像に対して補正処理や画像処理が行われ(ステップS6)、処理はステップS7に移行する。ステップS6においては、記憶部52に記憶されたFPD9の特性情報に基づいて、上述のダーク画像を用いたオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の補正処理が必要に応じて行われる。また、画像処理としては、撮影部位に応じた階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等が行われる。
なお、FPD9が複数存在する場合には、各FPD9の識別IDに対応付けて特性情報を記憶部52に記憶しておき、使用されているブッキー装置を介してFPD9から識別IDを取得し、取得した識別IDに対応する特性情報に基づいて補正処理や画像処理を行うようにすればよい。
補正処理及び画像処理済みの医用画像は、記憶部52に記憶される。
【0043】
次いで、補正処理及び画像処理済みの医用画像が表示された画像確認画面が表示部54に表示されるとともに(ステップS7)、体動判定処理が実行される(ステップS8)。画像確認画面は、補正処理及び画像処理済みの医用画像が表示された画面であり、特に図示しないが、ここでは、図14に示す体動警告画面541における拡大表示枠541aとポップアップ画面541bが表示されていない画面である。その他の画面レイアウトや表示されるボタンは、体動警告画面541と同様である。
【0044】
以下、図4のステップS8において実行される体動判定処理の一例について詳細に説明する。ここでは、一実施形態として、胸部正面を撮影した医用画像から撮影時の被写体の体動の有無を判定する処理について説明する。
【0045】
図4に、ステップS8において撮影用コンソール5において実行される体動判定処理の流れを示す。図4に示す体動判定処理は、撮影用コンソール5の制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0046】
ここで、まず、図4に示す体動判定処理のアルゴリズムの概要について図5A〜図5C、図6を参照して説明する。
図5A〜図5Cは、医用画像における空間周波数応答(レスポンス)を模式的に示す図である。
図5A〜図5Cの各図において、横軸は、横方向の空間周波数の帯域を示す軸であり、縦軸は、縦方向の空間周波数の帯域を示す軸である。両軸とも、中央が最も低い周波数帯域となっており、原点(中心)から遠くなるほど高い空間周波数の帯域であることを示している。図5A〜図5Cにおいては、各空間周波数の帯域のレスポンスの強さを濃淡で示しており、レスポンスが強いほど濃い濃度で示している。
【0047】
図5Aは、静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。図5Aに示すように、静止画像では、高空間周波数のレスポンスは、平均的に各方向で同程度である。
図5Bは、横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。体動画像では、体動方向の空間周波数のレスポンスが弱められ、方向によってレスポンスの強さが変わる。横方向に体動がある場合には、図5Bに示すように、横方向の空間周波数のレスポンスが弱くなる。
図5Cは、横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。また、図6は、横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。図5Cに示すように、エッジを含む画像では、エッジと垂直方向に強い高空間周波数が発生し、方向によってレスポンスの強さが変わる。また、図6に示すように、エッジを含む画像では、エッジを含まない画像に比べ、高周空間周波数帯域のレスポンスが大きい。
図4に示す体動判定処理のアルゴリズムでは、これらの静止画像、体動画像、エッジ画像における空間周波数のレスポンスの特徴に基づいて、体動の有無を判定する。
【0048】
体動判定処理においては、まず、体動判定処理の対象となる医用画像(ステップS6における補正処理及び画像処理後の医用画像)が複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割される(ステップS101)。処理対象の医用画像を小領域に分割することで、この医用画像に含まれる被写体領域である肺野内の領域も小領域に分割される。
【0049】
次いで、肺野内の領域が抽出される(ステップS102)。
胸部を撮影した静止画像の信号値のヒストグラムには大きく分けて3つのピークが現れる。高信号域に現れるのは被写体を透過せずに直接X線が検出された直接X線領域であり、低信号側に現れるのはX線の透過率が低い心臓、骨等の体幹部領域である。それらの間に現れるのが肺を透過した肺野領域である。そこで、ステップS102においては、処理対象の医用画像の信号値のヒストグラムから判別分析等によって体幹部領域と肺野領域の閾値(低信号側の閾値1)、直接X線領域との閾値(高信号側の閾値2)をそれぞれ求め、閾値1と閾値2の間の信号値をもつ領域を肺野領域として抽出する。図7に、ステップS102において抽出された肺野領域の一例を示す。太い点線で囲まれた領域Lが肺野領域である。
なお、肺野内の領域を先に抽出し、抽出した肺野内の領域を複数の小領域に分割することとしてもよい。
【0050】
次いで、抽出された肺野領域から、エッジを含まない局所領域が抽出される(ステップS103)。
肋骨などのエッジを含む領域では、上述のように、高空間周波数成分が多く含まれる。そこで、ステップS103においては、まず、肺野領域内の各小領域について、予め定められた帯域の高空間周波数成分のみを抽出するハイパスフィルタを通過させることにより高空間周波数成分を抽出する。次いで、抽出された高空間周波数成分におけるナイキスト周波数fNとfN−Δf(Δfは予め定められた値)の間の帯域(図6、図8参照)のレスポンスの最大値又は積分値を算出し、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値より大きい場合に、その小領域にエッジが含まれると判定する。ここでは、エッジを含まない領域を抽出するので、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値以下の小領域がエッジを含まない局所領域として抽出される。図9に、ステップS103において抽出された、エッジを含まない局所領域を示す。図中の小領域Pが、抽出された局所領域である。図12では小領域Pの一部のみを指し示しているが、同じ線種・サイズの矩形で囲まれた小領域が小領域Pである。なお、エッジ検出は、他の手法(例えば、医用画像の垂直プロファイルや水平プロファイルを用いる手法)を用いることとしてもよい。
【0051】
次いで、抽出された各局所領域において、方向毎の高空間周波数成分のレスポンスを表す指標値が算出される(ステップS104)。
縦方向に対する高空間周波数成分については、図10に示すように、横方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2(Δfwは予め定められた値)の間と、縦方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfb(Δfbは予め定められた値)の間に囲まれた各帯域(図10に示すAhに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を縦方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rhとして算出する。
横方向に対する高空間周波数成分については、図10に示すように、縦方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2の間と、横方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfbの間に囲まれた各帯域(図10に示すAwに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rwとして算出する。
ここでは、積分値を使用する。また、ここでは、縦横の2方向の帯域に限って説明しているが、図11に示す斜め2方向Au、Adを更に追加した4方向の帯域でレスポンスの指標値を算出してもよい。
【0052】
次いで、各局所領域について算出されたレスポンスの指標値に基づいて、体動特徴量が算出され、算出された体動特徴量に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無が判定される(ステップS105)。
ステップS105においては、図12に示すように、まず、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスRh、Rwについて、方向毎に平均値Rh´、Rw´を算出する。次いで、算出されたRh´、Rw´の差分値の絶対値|R´h−R´w|を体動特徴量として算出し、この体動特徴量が予め定められた閾値より大きい場合に、数値が小さい方向(図12では横方向)の体動があると判定される。また、斜め2方向を追加した4方向の場合には、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスの指標について、方向毎に平均値を算出し、縦方向と横方向の平均値の差分値の絶対値と、斜め方向の平均値の差分値の絶対値を算出して比較し、大きいほうの値を体動特徴量とする。体動有無の判定が終了すると、処理は図3のステップS9に移行する。
【0053】
図3のステップS9においては、体動判定処理の判定結果に基づいて、被写体に体動があるか否かが判断される。被写体に体動がないと判断されると(ステップS9;NO)、処理はステップS12に移行する。
一方、被写体に体動があると判断されると(ステップS9;YES)、体動判定処理において抽出されたエッジを含まない局所領域の位置情報及び高空間周波数成分に基づいて、体動部分を拡大表示するための拡大領域が決定される(ステップS10)。
図13A〜図13Cに、図3のステップS10における拡大領域の決定過程を示す。図13Aに示すように、まず、肺野領域内に所定の大きさの複数の拡大候補領域(図13Aでは領域1と領域2)を設定する。次いで、図13Bに示すように、各拡大候補領域内の局所領域から算出した体動特徴量の合計をそれぞれ取得する。そして、図13Cに示すように、体動特徴量の合計が最も大きい拡大候補領域(図13A、図13Bの領域2)を拡大領域として決定する。
【0054】
次いで、決定された拡大領域が拡大表示された体動警告画面541が表示部54に表示される(ステップS11)。
図14に、体動警告画面541の一例を示す。体動警告画面541においては、撮影により取得された医用画像(画像処理済み)上に、上記決定された拡大領域を示す枠541aが重畳表示されるとともに、上記拡大領域が拡大された拡大画像及び「体動の恐れがあります」等の警告メッセージが表示された画面541bがポップアップ表示される。また、体動警告画面541には、出力ボタンB1と再撮影ボタンB2とが表示されている。出力ボタンB1は、表示されている医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されている医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。
【0055】
ステップS12において、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されると(ステップS12;YES)、記憶部52に記憶されている画像処理済みの医用画像が削除され(ステップS13)、処理はステップS2に戻る。一方、入力部53により再撮影ボタンが押下されず(ステップS12;NO)、出力ボタンB1が押下されると(ステップS14;YES)、ネットワーク通信部56により画像処理済みの医用画像の画像データがステップS1において指定された撮影オーダー情報と対応付けてサーバー装置10に送信され(ステップS15)、撮影制御処理は終了する。サーバー装置10においては、受信された医用画像の画像データが撮影オーダー情報と対応付けてデータベースに保存される。
【0056】
以上説明したように、医用画像撮影システム100によれば、撮影用コンソール5の制御部51は、被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する。そして、抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を出力手段により出力させる。
従って、構造物のエッジ部の影響のない領域を用いて被写体の体動の有無の判定を行うので、体動の有無を精度良く判定することが可能となる。
【0057】
また、複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定することで、一つの局所領域から抽出した高空間周波数成分を用いる場合に比べてノイズや局所領域自体の影響を受けにくく、体動の有無の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0058】
また、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定することで、体動の方向を特定することができ、体動の有無の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0059】
また、制御部51は、体動があると判定された場合に、上記抽出された局所領域の位置情報及び局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて医用画像から拡大表示する領域を決定し、決定された領域を表示部54に拡大表示する。従って、操作者が容易に画像上で体動を確認することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態においては、FPD9により得られた医用画像を確認のために表示部54に表示したり、体動判定処理を行ったりすることとして説明したが、FPD9により医用画像に間引き処理を行い、間引きされた医用画像を確認のために表示部54に表示したり、体動判定処理を行ったりすることとしてもよい。このようにすれば、FPD9からのデータ転送時間や画像処理時間、体動判定時間等を減少させることができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、撮影部位が胸部正面の場合を例にとり体動判定処理について説明したが、他の撮影部位においても、ステップS102において抽出する関心領域が撮影部位に応じて異なるほかは、上述の体動判定処理と同様の手法を用いることができる。
【0062】
また、上記実施の形態においては、被写体に体動が存在すると判定したときの警告(判定結果)を出力する出力手段として、表示部54に表示出力することとして説明したが、例えば、音声出力装置等から出力することとしてもよい。また、上記実施の形態においては、被写体に体動が存在すると判定した場合にその判定結果である警告を出力する場合を例にとり説明したが、被写体に体動が存在しないと判定した場合においても、その旨を表示部54に表示することとしてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態においては、FPDを用いて医用画像を生成する医用画像撮影システムを例にとり説明したが、医用画像を生成する手段としてはこれに限定されず、例えば、CRを用いることとしてもよい。
【0064】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0065】
その他、医用画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 医用画像撮影システム
1 ブッキー装置
2 ブッキー装置
3 放射線源
5 撮影用コンソール
51 制御部
52 記憶部
53 入力部
54 表示部
55 通信I/F
56 ネットワーク通信部
57 バス
6 操作卓
7 HIS/RIS
8 診断用コンソール
9 FPD
10 サーバー装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、診断対象の部位を被写体として撮影することにより静止画像のデジタル医用画像を生成し、この生成した医用画像に基づいて画像診断が行われている。
【0003】
医用画像の撮影時に被写体の体動が存在すると、医用画像に被写体ぶれが生じ、人体構造がわずかにぼけて画像化されるモーションアーチファクトが生じる。モーションアーチファクトが生じた画像は診断用としては不適切であるので、モーションアーチファクトが生じた医用画像は再撮影を行わなければならない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を判定することにより、モーションアーチファクトの発生した医用画像を診断に供することを未然に防ぎ、撮影業務の効率を向上させる技術が記載されている。この特許文献1においては、医用画像の高空間周波数成分を抽出し、抽出した高空間周波数成分に基づいて体動の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4539186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、肺野を被写体として胸部正面を撮影した医用画像では、撮影時の放射線曝射中に呼吸による体動でモーションアーチファクトが発生する場合がある。この場合、被写体の肋骨は静止したままで画像化され、被写体の肺野内の血管にモーションアーチファクトが発生する。
【0007】
このような医用画像において、体動の有無を判定するためには、モーションアーチファクトが発生している肺野内の血管領域の高空間周波数成分を抽出する必要がある。このとき、高空間周波数成分を抽出する領域に肋骨のエッジが含まれていると、エッジ部分は高空間周波数成分を多く含むため、抽出した高空間周波数に基づいて体動の有無を正しく判定することができないという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を精度良く判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像撮影システムは、
被写体を撮影して静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記領域抽出手段は、前記被写体領域を複数の小領域に分割し、当該複数の小領域の中からエッジを含まない複数の局所領域を抽出し、
前記体動判定手段は、前記領域抽出手段により抽出された複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記体動判定手段は、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記出力手段は、前記画像生成手段により生成された医用画像を表示出力する表示手段であり、
前記制御手段は、前記体動判定手段により体動があると判定された場合に、前記領域抽出手段により抽出された局所領域の位置情報及び前記局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて前記医用画像から拡大表示する領域を決定し、当該決定された領域を前記表示手段に拡大表示させる。
【0013】
請求項5に記載の発明の医用画像処理装置は、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える。
【0014】
請求項6に記載の発明のプログラムは、
コンピュータを、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて被写体の体動の有無を判定する体動判定手段、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を精度良く判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る医用画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図2】撮影用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS8において実行される体動判定処理を示すフローチャートである。
【図5A】静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図5B】横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図5C】横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図6】横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。
【図7】医用画像から抽出された肺野領域の一例を示す図である。
【図8】レスポンスの最大値又は積分値を算出する帯域を説明するための図である。
【図9】図4のステップS103において抽出されるエッジを含まない局所領域の一例を示す図である。
【図10】縦方向、横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図11】斜め方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図12】体動特徴量の算出手法を説明するための図である。
【図13A】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第1ステップ)。
【図13B】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第2ステップ)。
【図13C】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第3ステップ)。
【図14】体動警告画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る医用画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0018】
(医用画像撮影システムの構成)
まず、本実施の形態における医用画像撮影システム100の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る医用画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。医用画像撮影システム100は、患者の身体の一部である被写体(即ち、患者の撮影部位)に放射線を照射して被写体の静止画像を撮影するシステムである。図1では、医用画像撮影システム100が撮影室R1内に構築されている場合が示されている。
【0019】
撮影室R1には、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が備えられている。撮影室R1には前室Raと撮影実施室Rbが設けられ、前室Raに撮影用コンソール5及び操作卓6が備えられることで、撮影技師等の操作者の被曝を防止するようになっている。
【0020】
以下、撮影室R1内の各装置について説明する。
ブッキー装置1は、立位での撮影時にFPD(Flat Panel Detector)9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置1は、FPD9を保持するための保持部12aと、保持部12aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター12bとを有する。コネクター12bは、保持部12aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置1は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、保持部12aを垂直方向又は水平方向に移動させるためのフットスイッチ等を備える。
【0021】
ブッキー装置2は、臥位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置2は、FPD9を保持するための保持部22aと、保持部22aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター22bとを有する。コネクター22bは、保持部22aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置2は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、被写体を載置するための被写体台26を備える。
【0022】
放射線源3は、例えば、撮影室R1の天井から吊り下げられており、撮影時には撮影用コンソール5からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9に対して放射線(X線)を照射することができるようになっている。また、放射線源3は、操作卓6からの放射線照射指示に従って放射線を1回照射し、静止画像の撮影を行う。
【0023】
撮影用コンソール5は、放射線源3やFPD9を制御することにより撮影を制御するとともに、撮影により生成された医用画像に画像処理を施し確認用に表示するための医用画像処理装置である。撮影用コンソール5は、LAN(Local Area Network)を介してHIS/RIS(Hospital Information System/ Radiology Information System)7、診断用コンソール8、サーバー装置10等に接続されており、HIS/RIS7から送信された撮影オーダー情報に基づいて、放射線源3及びFPD9を起動させる等の制御をして撮影を行わせる。
【0024】
図2に、撮影用コンソール5の要部構成例を示す。図2に示すように、撮影用コンソール5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信I/F55、ネットワーク通信部56等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0025】
制御部51は、CPU、RAM等により構成される。制御部51のCPUは、記憶部52に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部51は、所定時間毎にネットワーク通信部56を介してHIS/RIS7に問い合わせを行い、新たにHIS/RIS7で登録された撮影オーダー情報を取得する。
また、例えば、制御部51は、後述する撮影制御処理を実行し、HIS/RIS7から取得した撮影オーダー情報に基づいて、撮影用コンソール5は放射線源3及びFPD9を制御して撮影を行わせる。そして、制御部51は、撮影により取得された医用画像の被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出し、抽出された局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を表示部54に表示させる。即ち、制御部51は、領域抽出手段、体動判定手段、制御手段としての機能を実現する。
【0026】
記憶部52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。
記憶部52には、各種のプログラム及びデータが記憶されている。
例えば、記憶部52には、上述の撮影制御処理を実行するための各種のプログラムが記憶されているほか、医用画像の画像データを部位毎の診断に適した画質に調整するための画像処理パラメーター(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)等が記憶されている。
【0027】
また、記憶部52には、撮影部位に対応付けて撮影条件(放射線照射条件及び画像読取条件)が記憶されている。放射線照射条件は、例えば、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種、SID(Source to Image−receptor Distance)等である。
また、記憶部52には、FPD9の特性情報が記憶されている。ここで、特性情報とは、FPD9の検出素子やシンチレータパネルの特性等である。
また、記憶部52には、所定時間毎にHIS/RIS7から送信される撮影オーダー情報が記憶される。
【0028】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0029】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
なお、表示部54の画面上に、透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル(図示せず)を形成し、表示部54と入力部53とが一体に構成されるタッチスクリーンとしてもよい。この場合、タッチパネルは、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号が操作信号として制御部51に出力されるように構成される。なお、表示部54は、一般的なPC(Personal Computer)
に用いられるモニターよりも高精細のものであってもよい。
【0030】
通信I/F55は、ブッキー装置1、ブッキー装置2、放射線源3、FPD9とアクセスポイントAPを介して接続し、無線、または有線によりデータ送受信を行うためのインターフェースである。本実施の形態において、通信I/F55はアクセスポイントAPを介して必要に応じてFPD9に対してポーリング信号を送信する。
【0031】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0032】
操作卓6は、撮影室内の放射線源に接続され、放射線照射指示を入力するための入力装置である。
【0033】
HIS/RIS7は、問診結果等に基づくオペレータによる登録操作に応じて撮影オーダー情報を生成する。撮影オーダー情報は、例えば被写体となる患者の氏名、性別、年齢、身長、体重等の患者情報や、撮影部位、撮影方向、体位(立位、臥位)、撮影方法等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダー情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
【0034】
診断用コンソール8は、サーバー装置10から医用画像を取得し、取得した画像を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
【0035】
FPD9は、制御部、検出部、記憶部、コネクター、バッテリー、無線通信部等を備えて構成される放射線検出器である。
FPD9の検出部は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源3から照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサーにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
【0036】
FPD9の制御部は、撮影用コンソールから入力された画像読取条件に基づいて検出部のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(静止画像)を生成する。そして、制御部は、生成した画像データをコネクター及びブッキー装置1又は2を介して撮影用コンソール5に出力する。なお、生成された静止画像を構成する各画素は、検出部の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値と呼称する)を示す。
FPD9のコネクターは、ブッキー装置1、2側のコネクターと接続し、ブッキー装置1又は2とのデータ送受信を行う。また、FPD9のコネクターは、ブッキー装置1又は2のコネクターから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリーを充電する構成としても良い。
また、FPD9は、ブッキーに装填されない単体使用時には、バッテリー駆動及び無線通信する構成であり、ブッキー装置1又は2に装填時には、コネクター接続により、バッテリー/無線方式から、有線/電力供給方式に切り替えることができる。従い、複数の患者を連続的に静止画撮影する場合に於いても、バッテリー切れを気にする必要がなくなる。
【0037】
サーバー装置10は、撮影用コンソール5から送信された医用画像の画像データや読影レポートを撮影オーダー情報に対応付けて記憶するデータベースを備える。また、サーバー装置10は、診断用コンソール8からの要求に応じてデータベースから医用画像を読み出して診断用コンソール8に送信する。
【0038】
(撮影動作)
次に、医用画像撮影システム100における撮影動作について説明する。
図3に、撮影用コンソール5において実行される撮影制御処理の流れを示す。図3の撮影制御処理は、撮影用コンソール5の制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0039】
まず、撮影技師等の操作者は、ブッキー装置1又はブッキー装置2にFPD9をセットする。次いで、撮影用コンソール5の入力部53を操作して撮影オーダー情報の一覧を表示する撮影オーダーリスト画面を表示部54に表示させる。そして、入力部53を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報と撮影に使用するブッキーIDを指定する。
【0040】
撮影用コンソール5においては、入力部53により撮影対象の撮影オーダー情報及びブッキーIDが指定されると(ステップS1)、放射線源3及びFPD9が起動され、使用されるブッキー装置に応じて放射線源3の向き及び位置が調整される。撮影技師により被写体に応じてFPD9やブッキー装置の位置等が調整されると、それに応じて放射線源3の向き及び位置が調整される(ステップS2)。また、記憶部52から撮影する部位に応じた放射線照射条件及び画像読取条件が読み出され、放射線源3に放射線照射条件が設定されるとともに、ブッキー装置を介してFPD9に画像読取条件が設定される(ステップS3)。撮影準備が整った時点で、技師は操作卓6を操作して放射線照射指示を入力する。
【0041】
操作卓6からの放射線照射指示が入力されると(ステップS4;YES)、撮影に使用される放射線源3及びFPD9が制御され、被写体の撮影が行われる(ステップS5)。具体的には、ステップS3で設定された条件で被写体の静止画像である医用画像及びオフセット補正用の1または数枚のダーク画像が撮影される。撮影により生成された医用画像及びダーク画像の画像データは、FPD9からブッキー装置を介して撮影用コンソール5に入力され、記憶部52に記憶される。
【0042】
次いで、撮影により得られた医用画像に対して補正処理や画像処理が行われ(ステップS6)、処理はステップS7に移行する。ステップS6においては、記憶部52に記憶されたFPD9の特性情報に基づいて、上述のダーク画像を用いたオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の補正処理が必要に応じて行われる。また、画像処理としては、撮影部位に応じた階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等が行われる。
なお、FPD9が複数存在する場合には、各FPD9の識別IDに対応付けて特性情報を記憶部52に記憶しておき、使用されているブッキー装置を介してFPD9から識別IDを取得し、取得した識別IDに対応する特性情報に基づいて補正処理や画像処理を行うようにすればよい。
補正処理及び画像処理済みの医用画像は、記憶部52に記憶される。
【0043】
次いで、補正処理及び画像処理済みの医用画像が表示された画像確認画面が表示部54に表示されるとともに(ステップS7)、体動判定処理が実行される(ステップS8)。画像確認画面は、補正処理及び画像処理済みの医用画像が表示された画面であり、特に図示しないが、ここでは、図14に示す体動警告画面541における拡大表示枠541aとポップアップ画面541bが表示されていない画面である。その他の画面レイアウトや表示されるボタンは、体動警告画面541と同様である。
【0044】
以下、図4のステップS8において実行される体動判定処理の一例について詳細に説明する。ここでは、一実施形態として、胸部正面を撮影した医用画像から撮影時の被写体の体動の有無を判定する処理について説明する。
【0045】
図4に、ステップS8において撮影用コンソール5において実行される体動判定処理の流れを示す。図4に示す体動判定処理は、撮影用コンソール5の制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0046】
ここで、まず、図4に示す体動判定処理のアルゴリズムの概要について図5A〜図5C、図6を参照して説明する。
図5A〜図5Cは、医用画像における空間周波数応答(レスポンス)を模式的に示す図である。
図5A〜図5Cの各図において、横軸は、横方向の空間周波数の帯域を示す軸であり、縦軸は、縦方向の空間周波数の帯域を示す軸である。両軸とも、中央が最も低い周波数帯域となっており、原点(中心)から遠くなるほど高い空間周波数の帯域であることを示している。図5A〜図5Cにおいては、各空間周波数の帯域のレスポンスの強さを濃淡で示しており、レスポンスが強いほど濃い濃度で示している。
【0047】
図5Aは、静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。図5Aに示すように、静止画像では、高空間周波数のレスポンスは、平均的に各方向で同程度である。
図5Bは、横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。体動画像では、体動方向の空間周波数のレスポンスが弱められ、方向によってレスポンスの強さが変わる。横方向に体動がある場合には、図5Bに示すように、横方向の空間周波数のレスポンスが弱くなる。
図5Cは、横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。また、図6は、横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。図5Cに示すように、エッジを含む画像では、エッジと垂直方向に強い高空間周波数が発生し、方向によってレスポンスの強さが変わる。また、図6に示すように、エッジを含む画像では、エッジを含まない画像に比べ、高周空間周波数帯域のレスポンスが大きい。
図4に示す体動判定処理のアルゴリズムでは、これらの静止画像、体動画像、エッジ画像における空間周波数のレスポンスの特徴に基づいて、体動の有無を判定する。
【0048】
体動判定処理においては、まず、体動判定処理の対象となる医用画像(ステップS6における補正処理及び画像処理後の医用画像)が複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割される(ステップS101)。処理対象の医用画像を小領域に分割することで、この医用画像に含まれる被写体領域である肺野内の領域も小領域に分割される。
【0049】
次いで、肺野内の領域が抽出される(ステップS102)。
胸部を撮影した静止画像の信号値のヒストグラムには大きく分けて3つのピークが現れる。高信号域に現れるのは被写体を透過せずに直接X線が検出された直接X線領域であり、低信号側に現れるのはX線の透過率が低い心臓、骨等の体幹部領域である。それらの間に現れるのが肺を透過した肺野領域である。そこで、ステップS102においては、処理対象の医用画像の信号値のヒストグラムから判別分析等によって体幹部領域と肺野領域の閾値(低信号側の閾値1)、直接X線領域との閾値(高信号側の閾値2)をそれぞれ求め、閾値1と閾値2の間の信号値をもつ領域を肺野領域として抽出する。図7に、ステップS102において抽出された肺野領域の一例を示す。太い点線で囲まれた領域Lが肺野領域である。
なお、肺野内の領域を先に抽出し、抽出した肺野内の領域を複数の小領域に分割することとしてもよい。
【0050】
次いで、抽出された肺野領域から、エッジを含まない局所領域が抽出される(ステップS103)。
肋骨などのエッジを含む領域では、上述のように、高空間周波数成分が多く含まれる。そこで、ステップS103においては、まず、肺野領域内の各小領域について、予め定められた帯域の高空間周波数成分のみを抽出するハイパスフィルタを通過させることにより高空間周波数成分を抽出する。次いで、抽出された高空間周波数成分におけるナイキスト周波数fNとfN−Δf(Δfは予め定められた値)の間の帯域(図6、図8参照)のレスポンスの最大値又は積分値を算出し、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値より大きい場合に、その小領域にエッジが含まれると判定する。ここでは、エッジを含まない領域を抽出するので、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値以下の小領域がエッジを含まない局所領域として抽出される。図9に、ステップS103において抽出された、エッジを含まない局所領域を示す。図中の小領域Pが、抽出された局所領域である。図12では小領域Pの一部のみを指し示しているが、同じ線種・サイズの矩形で囲まれた小領域が小領域Pである。なお、エッジ検出は、他の手法(例えば、医用画像の垂直プロファイルや水平プロファイルを用いる手法)を用いることとしてもよい。
【0051】
次いで、抽出された各局所領域において、方向毎の高空間周波数成分のレスポンスを表す指標値が算出される(ステップS104)。
縦方向に対する高空間周波数成分については、図10に示すように、横方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2(Δfwは予め定められた値)の間と、縦方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfb(Δfbは予め定められた値)の間に囲まれた各帯域(図10に示すAhに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を縦方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rhとして算出する。
横方向に対する高空間周波数成分については、図10に示すように、縦方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2の間と、横方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfbの間に囲まれた各帯域(図10に示すAwに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rwとして算出する。
ここでは、積分値を使用する。また、ここでは、縦横の2方向の帯域に限って説明しているが、図11に示す斜め2方向Au、Adを更に追加した4方向の帯域でレスポンスの指標値を算出してもよい。
【0052】
次いで、各局所領域について算出されたレスポンスの指標値に基づいて、体動特徴量が算出され、算出された体動特徴量に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無が判定される(ステップS105)。
ステップS105においては、図12に示すように、まず、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスRh、Rwについて、方向毎に平均値Rh´、Rw´を算出する。次いで、算出されたRh´、Rw´の差分値の絶対値|R´h−R´w|を体動特徴量として算出し、この体動特徴量が予め定められた閾値より大きい場合に、数値が小さい方向(図12では横方向)の体動があると判定される。また、斜め2方向を追加した4方向の場合には、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスの指標について、方向毎に平均値を算出し、縦方向と横方向の平均値の差分値の絶対値と、斜め方向の平均値の差分値の絶対値を算出して比較し、大きいほうの値を体動特徴量とする。体動有無の判定が終了すると、処理は図3のステップS9に移行する。
【0053】
図3のステップS9においては、体動判定処理の判定結果に基づいて、被写体に体動があるか否かが判断される。被写体に体動がないと判断されると(ステップS9;NO)、処理はステップS12に移行する。
一方、被写体に体動があると判断されると(ステップS9;YES)、体動判定処理において抽出されたエッジを含まない局所領域の位置情報及び高空間周波数成分に基づいて、体動部分を拡大表示するための拡大領域が決定される(ステップS10)。
図13A〜図13Cに、図3のステップS10における拡大領域の決定過程を示す。図13Aに示すように、まず、肺野領域内に所定の大きさの複数の拡大候補領域(図13Aでは領域1と領域2)を設定する。次いで、図13Bに示すように、各拡大候補領域内の局所領域から算出した体動特徴量の合計をそれぞれ取得する。そして、図13Cに示すように、体動特徴量の合計が最も大きい拡大候補領域(図13A、図13Bの領域2)を拡大領域として決定する。
【0054】
次いで、決定された拡大領域が拡大表示された体動警告画面541が表示部54に表示される(ステップS11)。
図14に、体動警告画面541の一例を示す。体動警告画面541においては、撮影により取得された医用画像(画像処理済み)上に、上記決定された拡大領域を示す枠541aが重畳表示されるとともに、上記拡大領域が拡大された拡大画像及び「体動の恐れがあります」等の警告メッセージが表示された画面541bがポップアップ表示される。また、体動警告画面541には、出力ボタンB1と再撮影ボタンB2とが表示されている。出力ボタンB1は、表示されている医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されている医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。
【0055】
ステップS12において、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されると(ステップS12;YES)、記憶部52に記憶されている画像処理済みの医用画像が削除され(ステップS13)、処理はステップS2に戻る。一方、入力部53により再撮影ボタンが押下されず(ステップS12;NO)、出力ボタンB1が押下されると(ステップS14;YES)、ネットワーク通信部56により画像処理済みの医用画像の画像データがステップS1において指定された撮影オーダー情報と対応付けてサーバー装置10に送信され(ステップS15)、撮影制御処理は終了する。サーバー装置10においては、受信された医用画像の画像データが撮影オーダー情報と対応付けてデータベースに保存される。
【0056】
以上説明したように、医用画像撮影システム100によれば、撮影用コンソール5の制御部51は、被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する。そして、抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果を出力手段により出力させる。
従って、構造物のエッジ部の影響のない領域を用いて被写体の体動の有無の判定を行うので、体動の有無を精度良く判定することが可能となる。
【0057】
また、複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定することで、一つの局所領域から抽出した高空間周波数成分を用いる場合に比べてノイズや局所領域自体の影響を受けにくく、体動の有無の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0058】
また、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定することで、体動の方向を特定することができ、体動の有無の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0059】
また、制御部51は、体動があると判定された場合に、上記抽出された局所領域の位置情報及び局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて医用画像から拡大表示する領域を決定し、決定された領域を表示部54に拡大表示する。従って、操作者が容易に画像上で体動を確認することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態においては、FPD9により得られた医用画像を確認のために表示部54に表示したり、体動判定処理を行ったりすることとして説明したが、FPD9により医用画像に間引き処理を行い、間引きされた医用画像を確認のために表示部54に表示したり、体動判定処理を行ったりすることとしてもよい。このようにすれば、FPD9からのデータ転送時間や画像処理時間、体動判定時間等を減少させることができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、撮影部位が胸部正面の場合を例にとり体動判定処理について説明したが、他の撮影部位においても、ステップS102において抽出する関心領域が撮影部位に応じて異なるほかは、上述の体動判定処理と同様の手法を用いることができる。
【0062】
また、上記実施の形態においては、被写体に体動が存在すると判定したときの警告(判定結果)を出力する出力手段として、表示部54に表示出力することとして説明したが、例えば、音声出力装置等から出力することとしてもよい。また、上記実施の形態においては、被写体に体動が存在すると判定した場合にその判定結果である警告を出力する場合を例にとり説明したが、被写体に体動が存在しないと判定した場合においても、その旨を表示部54に表示することとしてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態においては、FPDを用いて医用画像を生成する医用画像撮影システムを例にとり説明したが、医用画像を生成する手段としてはこれに限定されず、例えば、CRを用いることとしてもよい。
【0064】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0065】
その他、医用画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 医用画像撮影システム
1 ブッキー装置
2 ブッキー装置
3 放射線源
5 撮影用コンソール
51 制御部
52 記憶部
53 入力部
54 表示部
55 通信I/F
56 ネットワーク通信部
57 バス
6 操作卓
7 HIS/RIS
8 診断用コンソール
9 FPD
10 サーバー装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える医用画像撮影システム。
【請求項2】
前記領域抽出手段は、前記被写体領域を複数の小領域に分割し、当該複数の小領域の中からエッジを含まない複数の局所領域を抽出し、
前記体動判定手段は、前記領域抽出手段により抽出された複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項3】
前記体動判定手段は、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する請求項1又は2に記載の医用画像撮影システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記画像生成手段により生成された医用画像を表示出力する表示手段であり、
前記制御手段は、前記体動判定手段により体動があると判定された場合に、前記領域抽出手段により抽出された局所領域の位置情報及び前記局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて前記医用画像から拡大表示する領域を決定し、当該決定された領域を前記表示手段に拡大表示させる請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像撮影システム。
【請求項5】
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて被写体の体動の有無を判定する体動判定手段、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
被写体を撮影して静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジを含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える医用画像撮影システム。
【請求項2】
前記領域抽出手段は、前記被写体領域を複数の小領域に分割し、当該複数の小領域の中からエッジを含まない複数の局所領域を抽出し、
前記体動判定手段は、前記領域抽出手段により抽出された複数の局所領域のそれぞれから高空間周波数成分を抽出し、当該複数の局所領域から抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項3】
前記体動判定手段は、複数の方向に対する高空間周波数成分を抽出し、当該抽出された複数の方向に対する高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する請求項1又は2に記載の医用画像撮影システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記画像生成手段により生成された医用画像を表示出力する表示手段であり、
前記制御手段は、前記体動判定手段により体動があると判定された場合に、前記領域抽出手段により抽出された局所領域の位置情報及び前記局所領域から抽出された高周波数成分に基づいて前記医用画像から拡大表示する領域を決定し、当該決定された領域を前記表示手段に拡大表示させる請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像撮影システム。
【請求項5】
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段と、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて、撮影時の被写体の体動の有無を判定する体動判定手段と、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
被写体を撮影することにより取得された静止画像である医用画像から被写体領域を抽出し、当該被写体領域からエッジによる高空間周波数成分を含まない局所領域を抽出する領域抽出手段、
前記領域抽出手段により抽出された局所領域から高空間周波数成分を抽出し、当該抽出した高空間周波数成分に基づいて被写体の体動の有無を判定する体動判定手段、
前記体動判定手段による判定結果を出力手段により出力させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【公開番号】特開2013−102850(P2013−102850A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247358(P2011−247358)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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