医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラム
【課題】診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしていない不良画像を撮影技師が即座に認識することができるようにし、不良画像の見逃しの防止、患者負担の低減を図る。
【解決手段】医用画像撮影システム100によれば、FPD9は、人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成し、撮影用コンソール5に送信する。撮影用コンソール5の制御部51は、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定し、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、表示部54に警告を表示させる。
【解決手段】医用画像撮影システム100によれば、FPD9は、人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成し、撮影用コンソール5に送信する。撮影用コンソール5の制御部51は、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定し、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、表示部54に警告を表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の診断対象である特定部位を被写体として放射線撮影を行い、静止画像のデジタル医用画像を生成する医用画像撮影システムが知られている。
【0003】
放射線撮影においては、撮影により得られた医用画像が、例えば、被写体のポジショニングが不適切で特定部位が欠損している画像、被写体に体動がある画像、放射線照射量が不足している画像等の、診断用の医用画像としての基準を満たしていない画像(診断に不適切な不良画像)である場合には、再撮影が必要となる。そして、再撮影が必要であるか否かの判断は、早期に行えるようにすることが好ましい。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、FPD(Flat Panel Detector)で撮影された医用画像の縮小画像を医用画像に先行してコンソールに転送し、コンソールにおいて縮小画像をプレビュー画像として早期に表示することで、撮影された医用画像がポジショニングミスや体動などが発生している再撮影が必要な不良画像であるか否かの確認を早期に行うことが可能な放射線画像生成システムが記載されている。
【0005】
また、放射線撮影により得られた医用画像を解析することにより、診断上不適切な画像に警告を行うシステムが提案されている。
例えば、特許文献2には、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果に基づいて警告を行うと同時に拡大表示を行うことで、体動画像の見逃しを防止する医用画像撮影システムが記載されている。
また、特許文献3には、撮影により得られた画像データのポジショニングの良否を判定し、判定結果に基づいて警告を行う放射線画像読取システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−214057号公報
【特許文献2】特許第4539186号公報
【特許文献3】特開平4−364834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシステムでは、撮影後、直ちにプレビュー画像の確認を行えるため、撮影後ポジショニングを解除せずにそのまま画像を確認し、診断に不適切な不良画像であればポジショニングを微調整するだけで再撮影を行うことが可能である。しかし、重症患者は撮影の間にポジショニングを維持するだけで苦痛であり、撮影後なるべく早く医用画像の良否を判断し、ポジショニング状態から解放させることが望まれている。
【0008】
また、重症患者では撮影室まで移動することが困難であるため、回診車によりベッドサイドで撮影が行われる。この場合、持ち運び可能なコンソールで医用画像の確認が行われるが、持ち運びの簡便さのため画面が小さいので、画像確認が据え置き型のコンソールと比較して難しく、更に、プレビュー画像では解像度や画質において診断用の医用画像と比較して劣るため、ポジショニングミスや体動などによる再撮影が必要な画像を見逃す場合があった。また、これらを見逃すリスクを下げるためにプレビュー画像の確認をより注意して行った場合、確認に要する時間が増えるため、患者がポジショニングを維持する負担が大きかった。
【0009】
一方、特許文献2、3に記載のように、診断用の医用画像を解析して診断に不適切な画像を警告する場合、診断用の医用画像をコンソールで取得して表示するまでに時間を要する。そのため、患者のポジショニング負担を軽減するため、撮影後、一旦ポジショニングを解除して医用画像を確認する必要があった。コンソールでの医用画像の取得完了後の警告により医用画像の不良に気づいた場合には、再度ポジショニング作業を行う必要があり、撮影技師、患者とも負担が大きく問題であった。
【0010】
本発明の課題は、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしていない不良画像を撮影技師が即座に認識することができるようにし、不良画像の見逃しの防止、患者負担の低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像撮影システムは、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像を縮小してプレビュー画像を生成するプレビュー画像生成手段と、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記プレビュー画像に画像処理を施す画像処理手段を有し、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像又は前記画像処理手段により画像処理されたプレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が、前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された画像処理装置であって、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える。
【0015】
請求項5に記載の発明のプログラムは、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された医用画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記プレビュー画像を表示する表示手段、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に前記表示手段に警告を表示させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしていない不良画像を撮影技師が即座に認識することが可能となるので、不良画像の見逃しの防止、患者負担の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る医用画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図2】撮影用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影用コンソールの制御部により実行される医用画像生成処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例であるポジショニング判定処理を示すフローチャートである。
【図5A】照射野の境界線に接する部分領域を説明するための図である。
【図5B】特徴量が算出される小領域を説明するための図である。
【図6】ポジショニング判定に用いる各特徴量を軸とした空間に、予め肺野の欠損があるか否かが既知の複数の画像(サンプル画像)から算出された特徴量をプロットしたグラフである。
【図7】下端判定器の作成過程を模式的に示す図である。
【図8】ポジショニング警告画面の一例を示す図である。
【図9】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である体動判定処理を示すフローチャートである。
【図10A】静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図10B】横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図10C】横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図11】横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。
【図12】医用画像から抽出された肺野領域の一例を示す図である。
【図13】レスポンスの最大値又は積分値を算出する帯域を説明するための図である。
【図14】図9のステップS303において抽出されるエッジを含まない局所領域の一例を示す図である。
【図15】縦方向、横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図16】斜め方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図17】体動特徴量の算出手法を説明するための図である。
【図18A】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第1ステップ)。
【図18B】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第2ステップ)。
【図18C】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第3ステップ)。
【図19】体動警告画面の一例を示す図である。
【図20】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である線量判定処理を示すフローチャートである。
【図21】線量警告画面の一例を示す図である。
【図22】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である画像処理条件判定処理を示すフローチャートである。
【図23】画像処理警告画面の一例を示す図である。
【図24】移動が困難な患者用の医用画像撮影システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る医用画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0019】
(医用画像撮影システムの構成)
まず、本実施の形態における医用画像撮影システム100の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る医用画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。医用画像撮影システム100は、患者の身体の特定部位(即ち、診断対象部位(撮影部位))を被写体として放射線を照射して被写体の静止画像を生成するシステムである。図1では、医用画像撮影システム100が撮影室Rm内に構築されている場合が示されている。
【0020】
撮影室Rmには、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が備えられている。撮影室Rmには前室Raと撮影実施室Rbが設けられ、前室Raに撮影用コンソール5及び操作卓6が備えられることで、撮影技師等の操作者の被曝を防止するようになっている。
【0021】
以下、撮影室Rm内の各装置について説明する。
ブッキー装置1は、立位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置1は、FPD9を保持するための保持部12aと、保持部12aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター12bとを有する。コネクター12bは、保持部12aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置1は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、保持部12aを垂直方向又は水平方向に移動させるためのフットスイッチ等を備える。
【0022】
ブッキー装置2は、臥位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置2は、FPD9を保持するための保持部22aと、保持部22aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター22bとを有する。コネクター22bは、保持部22aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置2は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、被写体を載置するための被写体台26を備える。
【0023】
放射線源3は、例えば、撮影室Rmの天井から吊り下げられており、撮影時には操作卓6からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9に対して放射線(X線)を照射することができるようになっている。また、放射線源3は、操作卓6からの指示に従って放射線を1回照射し、静止画像の撮影を行う。
【0024】
撮影用コンソール5は、FPD9から送信された医用画像の縮小画像(プレビュー画像)に補正処理や画像処理を施して表示したり、FPD9から送信された医用画像に補正処理や画像処理を施して診断用の医用画像を生成し表示したりするための医用画像処理装置である。また、撮影用コンソール5は、LAN(Local Area Network)を介してHIS/RIS(Hospital Information System/ Radiology Information System)7、診断用コンソール8、サーバー装置10等に接続されており、HIS/RIS7から送信された撮影オーダー情報の一覧を表示するとともに、指定された撮影オーダー情報と医用画像とを対応付けてサーバー装置10に送信する。
【0025】
図2に、撮影用コンソール5の要部構成例を示す。図2に示すように、撮影用コンソール5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信I/F55、ネットワーク通信部56等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0026】
制御部51は、CPU、RAM等により構成される。制御部51のCPUは、記憶部52に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部51は、所定時間毎にネットワーク通信部56を介してHIS/RIS7に問い合わせを行い、新たにHIS/RIS7で登録された撮影オーダー情報を取得する。
また、例えば、制御部51は、図3に示す医用画像生成処理の撮影用コンソール側処理を実行することにより、画像判定手段、画像処理手段、制御手段としての機能を実現する。
【0027】
記憶部52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。
記憶部52には、各種のプログラム及びデータが記憶されている。
例えば、記憶部52には、各種のプログラムが記憶されているほか、医用画像の画像データを部位毎の診断に適した画質に調整するための画像処理パラメーター(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)等が記憶されている。
【0028】
また、記憶部52には、FPD9の特性情報が記憶されている。ここで、特性情報とは、FPD9の検出素子やシンチレータパネルの特性等である。
また、記憶部52には、所定時間毎にHIS/RIS7から送信される撮影オーダー情報が記憶される。
【0029】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0030】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
なお、表示部54の画面上に、透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル(図示せず)を形成し、表示部54と入力部53とが一体に構成されるタッチスクリーンとしてもよい。この場合、タッチパネルは、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号が操作信号として制御部51に出力されるように構成される。なお、表示部54は、一般的なPC(Personal Computer)
に用いられるモニターよりも高精細のものであってもよい。
【0031】
通信I/F55は、ブッキー装置1、ブッキー装置2、放射線源3、FPD9とアクセスポイントAPを介して接続し、無線、または有線によりデータ送受信を行うためのインターフェースである。本実施の形態において、通信I/F55はアクセスポイントAPを介して必要に応じてFPD9に対してポーリング信号を送信する。
【0032】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0033】
操作卓6は、撮影室内の放射線源3に接続され、放射線源3への放射線照射指示や放射線照射条件の設定等を入力するための入力装置である。本実施の形態において、操作卓6は、撮影部位に対応付けて撮影条件(放射線照射条件及び画像読取条件)が記憶された記憶装置を有し、選択された撮影部位に応じた放射線照射条件を放射線源3に設定する。放射線照射条件は、例えば、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種、SID(Source to Image−receptor Distance)等である。
【0034】
HIS/RIS7は、問診結果等に基づくオペレータによる登録操作に応じて撮影オーダー情報を生成する。撮影オーダー情報は、例えば患者の氏名、性別、年齢、身長、体重等の患者情報や、撮影部位、撮影方向、体位(立位、臥位)、撮影方法等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダー情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
【0035】
診断用コンソール8は、サーバー装置10から医用画像を取得し、取得した画像を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
【0036】
FPD9は、制御部、検出部、記憶部、コネクター、バッテリー、無線通信部等を備えて構成される放射線検出器である。
FPD9の検出部は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源3から照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサーにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
【0037】
FPD9の制御部は、記憶部に記憶されている画像読取条件に基づいて検出部のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部に蓄積された電気信号を読み取ることにより、医用画像(静止画像)の画像データを生成する。そして、制御部は、生成した医用画像に縮小処理を施してプレビュー画像を生成し、生成したプレビュー画像及び医用画像の画像データをコネクター及びブッキー装置1又は2を介して撮影用コンソール5に出力する。即ち、FPD9は、医用画像生成手段、プレビュー画像生成手段として機能するものである。なお、生成された静止画像を構成する各画素は、検出部の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値と呼称する)を示す。
FPD9のコネクターは、ブッキー装置1、2側のコネクターと接続し、ブッキー装置1又は2とのデータ送受信を行う。また、FPD9のコネクターは、ブッキー装置1又は2のコネクターから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリーを充電する構成としても良い。
なお、FPD9は、ブッキーに装填されない単体使用時には、バッテリー駆動及び無線通信する構成であり、ブッキー装置1又は2に装填時には、コネクター接続により、バッテリー/無線方式から、有線/電力供給方式に切り替えることができる。従い、複数の患者を連続的に静止画撮影する場合に於いても、バッテリー切れを気にする必要がなくなる。
【0038】
サーバー装置10は、撮影用コンソール5から送信された医用画像の画像データや読影レポートを撮影オーダー情報に対応付けて記憶するデータベースを備える。また、サーバー装置10は、診断用コンソール8からの要求に応じてデータベースから医用画像を読み出して診断用コンソール8に送信する。
【0039】
(撮影動作)
次に、医用画像撮影システム100における撮影動作について説明する。
図3に、医用画像撮影システム100において実行される医用画像生成処理の流れを示す。
【0040】
まず、撮影技師等の操作者は、撮影用コンソール5の入力部53を操作して撮影オーダー情報の一覧が表示された撮影オーダーリスト画面を表示部54に表示させる。そして、入力部53を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報を指定する(ステップS1)。
【0041】
次いで、操作者は、FPD9をブッキー装置1又はブッキー装置2に装着し、ブッキー装置や放射線源3の向きを調整して被写体のポジショニングを行う。また、操作卓6により、撮影部位に基づき放射線照射条件を設定し、放射線照射指示を行う。放射線源3においては、操作卓6からの放射線照射指示が受信されると、設定された放射線照射条件で放射線照射が行われる(ステップS2)。
【0042】
FPD9においては、放射線源3より放射線が照射されると、照射された放射線量に応じたエネルギーが各検出素子により電荷量として蓄積され、各検出素子に蓄積された電荷が読み取られることにより医用画像の画像データ(RAWデータ)が生成され、記憶部に記憶される(ステップS3)。
【0043】
次いで、FPD9においては、制御部により、記憶部に記憶されている医用画像に縮小処理が施され、プレビュー画像が生成される(ステップS4)。プレビュー画像は、医用画像の画像サイズを縮小させたものである。具体的には、医用画像を所定の間引き率で間引くことにより、所定の画素間隔毎の画素で構成されたプレビュー画像が生成される。生成されたプレビュー画像の画像データは、ブッキー装置を介して、或いは無線通信により撮影用コンソール5に送信される(ステップS5)。続いて、記憶部に記憶されている医用画像の画像データがブッキー装置を介して、或いは無線通信により撮影用コンソール5に送信される(ステップS6)。撮影用コンソール5において、通信I/F55を介して受信されたプレビュー画像及び医用画像の画像データは記憶部52に記憶される。
【0044】
撮影用コンソール5においては、通信I/F55を介してプレビュー画像の画像データが受信されると、プレビュー画像に対して補正処理・画像処理が施される(ステップS7)。ステップS7においては、記憶部52に記憶されたFPD9の特性情報に基づいて、上述のダーク画像を用いたオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の補正処理が必要に応じて行われる。また、画像処理としては、撮影部位に応じた階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等が行われる。
なお、FPD9が複数存在する場合には、各FPD9の識別IDに対応付けて特性情報を記憶部52に記憶しておき、使用されているブッキー装置を介してFPD9から識別IDを取得し、取得した識別IDに対応する特性情報に基づいて補正処理や画像処理を行うようにすればよい。
【0045】
次いで、表示部54にプレビュー画像が表示された画像確認画面が表示される(ステップS8)。ステップS8で表示される画像確認画面は、プレビュー画像が表示された画面であり、特に図示しないが、ここでは、図8に示すポジショニング警告画面541における拡大表示枠541aやマーク541bが表示されていない画面である。その他の画面レイアウトや表示されるボタンは、ポジショニング警告画面541と同様である。
【0046】
ここで、医師の診断に適した画像であるか否かは、例えば、ポジショニングの良否、体動の有無、放射線照射線量の良否、画像処理条件の良否等に基づいて判定される。しかし、プレビュー画像は解像度や画質において診断用の医用画像と比較して劣るため、ポジショニング不良や体動等により再撮影が必要な画像を見逃してしまう場合がある。これらの見逃しのリスクを下げるために画像の確認をより一層注意して行った場合には、確認に要する時間が増えるため、患者がポジショニングを維持する時間が増えてしまい、負担が大きくなる。
【0047】
そこで、ステップS9においては、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たす画像(診断用の医用画像としての基準を満たしている画像)であるか否かを判定する画像判定処理が実行される(ステップS9)。ここで、ステップS9における画像判定処理としては、以下に説明するポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理の何れかまたはこれらを組み合わせた処理が実行される。なお、以下の各処理の説明では、一実施形態として、肺野を被写体としたプレビュー画像を用いた場合について説明するが、他の撮影部位においても同様の手法により画像判定を行うことができる。
【0048】
まず、ポジショニング判定処理について説明する。図4に、ポジショニング判定処理のフローチャートを示す。ポジショニング判定処理は、プレビュー画像に基づいて、撮影された医用画像において特定部位の欠損が生じているか否かを判断し、特定部位の欠損が生じている場合は、ポジショニング不良であると判定し、警告を行う処理である。ポジショニング判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0049】
先ず、プレビュー画像内の照射野の範囲を認識する処理が行われる(ステップS201)。この処理では、撮影時にマスキングにより放射線源3からFPD9の撮像面まで放射線が到達しなかった部分を検出して、プレビュー画像中からこの検出された部分を除外した残りの部分を照射野として設定する。この照射野の設定処理は、例えば、画像の輪郭から内側に連続して画素の信号値がほぼ最小(即ち、放射線量が最小)の領域を検出して除外するなどの方法で行うことができる。
【0050】
次いで、特定された照射野が複数の小領域に分割され、これらの分割された複数の小領域のうち、照射野の境界(照射野と照射野外との境界)から所定の範囲にある部分領域に含まれる各小領域から予め指定された特徴量を抽出する処理が行われる(ステップS202)。ステップS202の処理では、具体的には、図5Aに示すように、例えば、照射野が10×10のマトリックス状に配置された小領域に分割される。そして、照射野の上下の境界線からそれぞれ2行、および、左右の境界線からそれぞれ2列の4つの部分領域(図5Aの上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4)において、各部分領域内に含まれる各小領域の信号値から特徴量を抽出する。具体的には、図5Aの下端領域R2には、図5Bに示す1〜20の小領域が含まれるので、20の特徴量を算出する。算出結果は、各小領域の位置と特徴量を示すデータ配列として保持される。上端領域R1、左端領域R3、右端領域R4についても同様である。ステップS202において算出される特徴量をここではデータ配列特徴量と呼ぶ。
【0051】
ここで、境界線に接する部分領域を一行または一列のみではなく複数の行または列に分割してデータを取得することにより、複雑な画像パターンの場合にも正確に画像判定を行うことができる。例えば、肺野の下端の更に下部にガスが写りこんでいる場合、肺野の下端に水が溜まっている場合、肺野の下端付近にカテーテルが挿入されている場合などが考えられるが、これらのケースについても、複数行および複数列の小領域のデータに基づいて学習させた判定器51aを用いることにより、適切に判定を行うことができる。
【0052】
ステップS202の処理で抽出される特徴量は、例えば、各小領域内の各画素が有する信号値のうちの最大値(即ち、測定された放射線強度が最大のもの)である。また、他の特徴量としては、各小領域内での信号値の一次微分量の最大値、また、特に、一次微分量のうち照射野の境界線に平行な成分の各小領域内における最大値、および、この一次微分量の最大値をとる座標値を利用することができる。或いは、更に、特徴量として、輝度値のパワースペクトルを用いることができる。特に、照射野の境界線に平行な方向のパワースペクトル密度や、極大値を取る周波数(波長)の値が利用可能である。
【0053】
上記の特徴量の抽出が行われると、抽出された特徴量を利用して、境界線ごとにポジショニング判定が行われる(ステップS203)。ステップS203におけるポジショニング判定は、判定器51aを用いて各境界線により被写体が欠損していないか否かを判定するものである。図5Aの例では、上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、および、右端領域R4からステップS202で算出された特徴量が取得され、これらのデータが制御部51の判定器51aに入力され、判定器51aにおいて、肺野が各境界線からはみ出して欠損している部分があるかどうかの判定が行われる。
【0054】
このポジショニング判定に用いられる判定器51aは、所定の学習アルゴリズムを用いて予め学習させたものであり、学習結果に基づいて、肺野が各境界線からはみ出して欠損している部分があるかどうかの判定を行うものである。
【0055】
ここで、学習アルゴリズムによる学習と判定の一般的概念について説明する。ここでは、説明を簡単にするため、2つの特徴量を用いて判定を行う場合を例にとり説明する。
図6は、ポジショニング判定に用いる各特徴量を軸とした空間に、予め肺野の欠損があるか否かが既知の複数の画像(サンプル画像)から算出された特徴量をプロットしたグラフである。学習アルゴリズムでは、図6に示すように、複数のサンプル画像から算出された特徴量の分布から、どのような境界線を描けば肺野の欠損のない画像と肺野の欠損のある画像を区別できるかを学習し、特徴量が境界線のどちら側に位置するかによって欠損のない画像であるか欠損のある画像であるかを判定する判定器を作成するものである。そして、作成された判定器に判定対象の画像から算出された特徴量を入力することで、判定器において肺野の欠損のある画像かない画像かを判定する。
【0056】
判定器51aの学習に用いる学習アルゴリズムとしては、特に限られないが、例えば、アダブースト(AdaBoost)が利用される。アダブーストは、予め被写体の欠損があるか否かが既知の画像から抽出された複数の特徴量のデータ配列をそれぞれ多数用意し、被写体の欠損を判別する識別器を重み付けして組み合わせることで最適な判定器を作るアルゴリズムである。
【0057】
ここで、学習による判定器51aの作成及びステップS203における判定について、アダブーストを用いた場合を例にとり説明する。
ステップS203においては、上下左右の照射野外との境界線ごとにポジショニング判定が行われる。そこで、判定器51aは、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器の4種類の判定器により構成される。
【0058】
(1)判定器51aの作成においては、まず、肺野が欠損している画像と肺野が欠損していない画像をサンプル画像として複数用意する。
(2)次いで、全サンプル画像からステップS202と同様の特徴量を算出する。例えば、図5Aに示す上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4内の4つの部分領域のそれぞれに含まれる各小領域の信号値の特徴量(例えば、最大信号値)を算出する。
【0059】
次いで、上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4のそれぞれについて、上記算出された特徴量を用いて下記の(3)〜(4)を実行することにより、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器を作成する。
図7(a)〜(d)は、下端判定器の作成過程を模式的に示す図である。図7(a)〜(d)は、特徴量1を縦軸に、特徴量2を横軸として作成した2次元特徴量分布である。ここでは、説明をわかりやすくするために、2つの特徴量を用いて2次元で表現して説明するが、実際はデータ配列特徴量が20あるので、20個の軸をもつ20次元の特徴量空間となる。以下の説明では、図7(a)〜(d)に示す下端判定器の作成過程を模式的に示す図を参照しながら説明するが、上端判定器、左端判定器、右端判定器についても同様の作成過程となる。
【0060】
(3)まず、Decision Stampを用いて複数の弱識別器を作成する。弱識別器は、ある特徴量が予め設定した閾値を超えるか否かで肺野の欠損の有無を判定する識別器であり、各特徴量毎に、閾値を変えたものを複数作成する。
例えば、図7(a)に示すように、特徴量1に対して閾値がd1、d2、d3の3つの弱識別器を作成し、特徴量2に対して閾値がD1、D2、D3の3つの弱識別器を作成する。
【0061】
(4)次いで、肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器を選択する。例えば、図7(b)に示すように、弱識別器D2は、円Aで囲まれた3つの画像を除く14の画像について正しく判定できており、正しく判定できた画像の割合(画像数)が最も多い(寄与度が高い)。そこで、弱識別器D2を肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器として選択する。
(5)次いで、判定に失敗した画像の特徴量に重みを付けて、肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器を選択する。失敗した画像に重み付けることで、先の弱識別器D2で判定に失敗した画像を精度良く判定できる弱識別器を選択することができる。例えば、図7(c)に示すように、図7(b)において判定を失敗した画像(円Aで囲まれた点に対応する画像)の重み付けを重くし、それ以外の重み付けを軽くすると、弱識別器d2の寄与度が最も高くなる。その結果、弱識別器d2が選択される。
(6)上記(5)を失敗画像がなくなるまで繰り返し、各過程で選択された弱識別器を組み合せて判定器を作成する。図7(d)においては、弱識別器D2と弱識別器d2を組み合わせて判定器を作成する。ただし、各弱識別器の寄与度は異なるため、各弱識別器の正答率(正しく判定できた画像の全体画像に占める割合)等に基づいて弱識別器に重み付けを行う。
【0062】
ステップS203においては、上記学習により作成された各判定器(上、下、左、右の4つの判定器)からなる判定器51aを用いて、撮影された医用画像の上、下、左、右の各肺野端に肺野の欠損があるか否かを判定する。具体的には、ステップS202において上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4のそれぞれから算出された特徴量を、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器のそれぞれに入力すると、判定器51aは、上・下・左・右の照射野外との境界における肺野の欠損の有無を判定する。
【0063】
なお、その他の学習アルゴリズムとしては、例えば、サポートベクタマシンやニューラルネットワークを用いたもの、或いは、K-最近傍識別器が利用可能である。また、判別分析のような統計的手法を適用してもよい(参考文献:C.M. Bishop, “Pattern Recognition and Machine Learning”, Springer-Verlag, New Ed版(2006))。
一方、サポートベクタマシンは、ステップS202の処理で抽出される複数の特徴量の組み合わせ(特徴ベクトル)により示されるデータ点を高次元空間に写像し、写像された高次元空間において、特定部位の欠損がある画像と欠損がない画像とに最も明確に、即ち、最大のマージンを有するように線形分離する分離面を求める統計的アルゴリズムである。
【0064】
ポジショニング判定の結果、撮影された医用画像が特定部位の欠損がある画像である(ポジショニング不良である)と判定されると(ステップS204;YES)、表示部54にポジショニング警告画面541が表示される(ステップS205)。
図8に、ポジショニング警告画面541の一例を示す。図8に示すように、ポジショニング警告画面541においては、プレビュー画像PV上に、画像の欠損のある部分を示す枠541bが重畳表示されているとともに、警告があることを示すマーク541bが表示されている。また、ポジショニング警告画面541には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を診断用の医用画像としてサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
ポジショニング判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0065】
次に、体動判定処理について説明する。図9に、体動判定処理のフローチャートを示す。体動判定処理は、プレビュー画像に基づいて、撮影された医用画像に被写体の体動が存在していないか否かを判定し、被写体の体動が存在していると判定した場合に警告を行う処理である。体動判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0066】
ここで、まず、図9に示す体動判定処理のアルゴリズムの概要について図10A〜図10C、図11を参照して説明する。
図10A〜図10Cは、医用画像における空間周波数応答(レスポンス)を模式的に示す図である。
図10A〜図10Cの各図において、横軸は、横方向の空間周波数の帯域を示す軸であり、縦軸は、縦方向の空間周波数の帯域を示す軸である。両軸とも、中央が最も低い周波数帯域となっており、原点(中心)から遠くなるほど高い空間周波数の帯域であることを示している。図10A〜図10Cにおいては、各空間周波数の帯域のレスポンスの強さを濃淡で示しており、レスポンスが強いほど濃い濃度で示している。
【0067】
図10Aは、静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。図10Aに示すように、静止画像では、高空間周波数のレスポンスは、平均的に各方向で同程度である。
図10Bは、横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。体動画像では、体動方向の空間周波数のレスポンスが弱められ、方向によってレスポンスの強さが変わる。横方向に体動がある場合には、図10Bに示すように、横方向の空間周波数のレスポンスが弱くなる。
図10Cは、横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。また、図11は、横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。図10Cに示すように、エッジを含む画像では、エッジと垂直方向に強い高空間周波数が発生し、方向によってレスポンスの強さが変わる。また、図11に示すように、エッジを含む画像では、エッジを含まない画像に比べ、高周空間周波数帯域のレスポンスが大きい。
図9に示す体動判定処理のアルゴリズムでは、これらの静止画像、体動画像、エッジ画像における空間周波数のレスポンスの特徴に基づいて、体動の有無を判定する。
【0068】
体動判定処理においては、まず、体動判定処理の対象となるプレビュー画像が複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割される(ステップS301)。処理対象の医用画像を小領域に分割することで、この医用画像に含まれる被写体領域である肺野内の領域も小領域に分割される。
【0069】
次いで、肺野内の領域(肺野領域)が抽出される(ステップS302)。
胸部を撮影した静止画像の信号値のヒストグラムには大きく分けて3つのピークが現れる。高信号域に現れるのは被写体を透過せずに直接X線が検出された直接X線領域であり、低信号側に現れるのはX線の透過率が低い心臓、骨等の体幹部領域である。それらの間に現れるのが肺を透過した肺野領域である。そこで、ステップS302においては、処理対象のプレビュー画像の信号値のヒストグラムから判別分析等によって体幹部領域と肺野領域の閾値(低信号側の閾値1)、直接X線領域との閾値(高信号側の閾値2)をそれぞれ求め、閾値1と閾値2の間の信号値をもつ領域を肺野領域として抽出する。図12に、ステップS302において抽出された肺野領域の一例を示す。太い点線で囲まれた領域Lが肺野領域である。
なお、結果的に抽出した肺野内の領域が複数の小領域に分割されればよく、例えば、ステップS301とステップS302を逆の順序で行い、肺野内の領域を先に抽出し、抽出した肺野内の領域を複数の小領域に分割することとしてもよい。
【0070】
次いで、抽出された肺野領域から、エッジを含まない局所領域が抽出される(ステップS303)。
肋骨などのエッジを含む領域では、上述のように、高空間周波数成分が多く含まれる。そこで、ステップS303においては、まず、肺野領域内の各小領域について、予め定められた帯域の高空間周波数成分のみを抽出するハイパスフィルタを通過させることにより高空間周波数成分を抽出する。次いで、抽出された高空間周波数成分におけるナイキスト周波数fNとfN−Δf(Δfは予め定められた値)の間の帯域(図11、図13参照)のレスポンスの最大値又は積分値を算出し、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値より大きい場合に、その小領域にエッジが含まれると判定する。ここでは、エッジを含まない領域を抽出するので、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値以下の小領域がエッジを含まない局所領域として抽出される。図14に、ステップS303において抽出された、エッジを含まない局所領域を示す。図中の小領域Pが、抽出された局所領域である。図14では小領域Pの一部のみを指し示しているが、同じ線種・サイズの矩形で囲まれた小領域が小領域Pである。なお、エッジ検出は、他の手法(例えば、プレビュー画像の垂直プロファイルや水平プロファイルを用いる手法)を用いることとしてもよい。
【0071】
次いで、抽出された各局所領域において、方向毎の高空間周波数成分のレスポンスを表す指標値が算出される(ステップS304)。
縦方向に対する高空間周波数成分については、図15に示すように、横方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2(Δfwは予め定められた値)の間と、縦方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfb(Δfbは予め定められた値)の間に囲まれた各帯域(図15に示すAhに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を縦方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rhとして算出する。
横方向に対する高空間周波数成分については、図15に示すように、縦方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2の間と、横方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfbの間に囲まれた各帯域(図15に示すAwに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rwとして算出する。
ここでは、積分値を使用する。また、ここでは、縦横の2方向の帯域に限って説明しているが、図16に示す斜め2方向Au、Adを更に追加した4方向の帯域でレスポンスの指標値を算出してもよい。
【0072】
次いで、各局所領域について算出されたレスポンスの指標値に基づいて、体動特徴量が算出され、算出された体動特徴量に基づいて、撮影された医用画像における被写体の体動の有無が判定される(ステップS305)。
ステップS305においては、図17に示すように、まず、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスRh、Rwについて、方向毎に平均値Rh´、Rw´を算出する。次いで、算出されたRh´、Rw´の差分値の絶対値|R´h−R´w|を体動特徴量として算出し、この体動特徴量が予め定められた閾値より大きい場合に、数値が小さい方向(図17では横方向)の体動があると判定される。また、斜め2方向を追加した4方向の場合には、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスの指標について、方向毎に平均値を算出し、縦方向と横方向の平均値の差分値の絶対値と、斜め方向の平均値の差分値の絶対値を算出し、大きいほうの値を体動特徴量とする。
【0073】
体動判定の結果、撮影された医用画像に被写体の体動があると判断されると(ステップS306;YES)、エッジを含まない局所領域の位置情報及び高空間周波数成分に基づいて、体動部分を拡大表示するための拡大領域が決定される(ステップS307)。
図18A〜図18Cに、ステップS307における拡大領域の決定過程を示す。図18Aに示すように、まず、肺野領域内に所定の大きさの複数の拡大候補領域(図18Aでは領域1と領域2)を設定する。次いで、図18Bに示すように、各拡大候補領域内の局所領域から算出した体動特徴量の合計をそれぞれ取得する。そして、図18Cに示すように、体動特徴量の合計が最も大きい拡大候補領域(図18A、図18Bの領域2)を拡大領域として決定する。
【0074】
次いで、決定された拡大領域が拡大表示された体動警告画面542が表示部54に表示される(ステップS308)。
図19に、体動警告画面542の一例を示す。体動警告画面542においては、プレビュー画像上に、上記決定された拡大領域を示す枠542aが重畳表示されるとともに、上記拡大領域が拡大された拡大画像及び「体動の恐れがあります」等の警告メッセージが表示された画面542bがポップアップ表示される。また、体動警告画面542には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、プレビュー画像に対応する医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、プレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
体動判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0075】
次に、線量判定処理について説明する。図20に、線量判定処理のフローチャートを示す。線量判定処理は、医用画像の撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えているか否かを判定し、超えていない(線量不足である)と判定した場合に、警告を行う処理である。線量判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。この線量判定処理は、補正処理・画像処理が施されていないプレビュー画像に基づいて行われる。
【0076】
まず、記憶部52に記憶されている、補正処理・画像処理の施されていないプレビュー画像が読み出され、関心領域が設定される(ステップS401)。胸部正面を撮影した画像では、肺野を含む矩形領域が関心領域として設定される。例えば、上述した手法により肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の外側を囲む矩形領域が関心領域として設定される。
【0077】
次いで、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、又は最小値が算出される(ステップS402)。
次いで、算出された平均値、最大値又は最小値が、予め各値に設定された閾値と比較され、閾値を超えている場合、放射線照射量が予め定められた基準を超えていると判定される。算出された平均値、最大値又は最小値が、予め各値に設定された閾値以下である場合、放射線照射量が予め定められた基準を超えていない、即ち、線量不足であると判定される(ステップS403)。
なお、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、最小値のそれぞれを、予め各値に設定された閾値と比較し、何れかが閾値以下である場合に線量不足と判定することとしてもよい。
【0078】
線量不足と判定された場合(ステップS404;YES)、表示部54に線量警告画面543が表示される(ステップS405)。
図21に、線量警告画面543の一例を示す。線量警告画面543においては、プレビュー画像上に、上記設定された関心領域を示す枠543aが重畳表示されるとともに、異常があることを示すマーク543b及び「線量異常」のメッセージ543cが表示される。また、線量警告画面543には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3が表示されている。出力ボタンB1は、表示されている医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されている医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
線量判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0079】
次に、画像処理条件判定処理について説明する。図22に、画像処理条件判定処理のフローチャートを示す。画像処理条件判定処理は、プレビュー画像に施された画像処理条件に基づいて、撮影された医用画像に施される画像処理の画像処理条件が適正であるか否かを判定し、適正ではないと判定した場合に警告を行う処理である。画像処理条件判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0080】
まず、プレビュー画像に関心領域が設定される(ステップS501)。胸部正面を撮影した画像では、肺野を含む矩形領域が関心領域として設定される。例えば、上述の手法により肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の外側を囲む矩形領域が関心領域として設定される。
【0081】
次いで、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、最小値が算出される(ステップS502)。
次いで、算出した平均値、最大値、最小値が、それぞれ予め各値に設定された閾値と比較され、比較結果に基づいて、撮影された医用画像に施される画像処理の画像処理条件が適正であるか否かが判定される(ステップS503)。
ここでは、主として階調処理の画像処理条件が適正であるか否かについて判定される。算出された平均値や最大値が予め定められた閾値より大きい場合は、例えば、肺野信号が黒くつぶれているので、画像処理条件が適正ではないと判定される。算出された最小値が予め定められた閾値より小さい場合は、心臓領域が白く飛んでいるので、画像処理条件が適正ではないと判定される。
【0082】
画像処理条件が適正ではないと判定された場合(ステップS504;YES)、表示部54に画像処理警告画面544が表示される(ステップS505)。
図23に、画像処理警告画面544の一例を示す。画像処理警告画面544においては、プレビュー画像上に、画像処理条件が適正ではないことを示すマーク544a及び「画像処理」が適正ではないことを示すメッセージ544bが表示される。また、画像処理警告画面544には、出力ボタンB1と再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
画像処理条件判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0083】
なお、上記のポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理を組み合わせて画像判定を行った場合、警告画面は一つの画面に統合されて表示されることが好ましい。即ち、各警告画面に表示すべき枠やマーク、画面等を一つの警告画面上に表示することが好ましい。
【0084】
図3のステップS10において、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されたか否かが判断される。入力部53により再撮影ボタンB2が押下されたと判断されると(ステップS10;YES)、処理対象となっているプレビュー画像及びこれに対応する医用画像が記憶部52から削除され(ステップS11)、処理はステップS2に戻る。一方、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されず(ステップS10;NO)、ビューアーボタンB3が押下される等により診断用の医用画像の表示が指示されると(ステップS12;YES)、記憶部52に記憶されている医用画像が読み出されて補正処理及び画像処理が施されることにより診断用の医用画像が生成され(ステップS13)、表示部54に診断用の医用画像が表示される(ステップS14)。補正処理、画像処理はプレビュー画像と略同様の処理(略同様の画像処理条件での処理)が施される。そして、出力ボタンB1が押下されると(ステップS15;YES)、ネットワーク通信部56により診断用医用画像の画像データがステップS1において指定された撮影オーダー情報と対応付けてサーバー装置10に送信され(ステップS16)、医用画像生成処理は終了する。サーバー装置10においては、受信された医用画像の画像データが撮影オーダー情報と対応付けてデータベースに保存される。
【0085】
このように、撮影用コンソール5は、撮影された医用画像の縮小画像であるプレビュー画像を用いて、医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしている画像(診断に適した画像)であるか否かを判定し、満たしていないと判定した場合、その旨を警告する警告画面を表示部54に表示する。従って、診断用として不適切な不良画像が撮影された場合には撮影後直ちに警告されるので、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、不良画像が撮影された場合の警告が直ちに警告されるため、従来のように撮影技師が目視で確認する場合に比べて短時間ですむため、患者がポジショニングを維持する時間は短くてすむ。また、画像判定処理に係る時間にポジショニングを一旦解除する必要もないため、再撮影となった場合でもポジショニングや撮影条件の微調整をすればよく、撮影技師及び患者の負担を大幅に低減することができる。
また、プレビュー画像において確認すべき箇所を強調して表示したり、拡大表示したりすることで、小さいコンソールかつ解像度や画質の悪いプレビュー画像であっても、確認作業が容易になり、確認に要する時間や作業負担を大幅に低減することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態においては、本発明を撮影室Rm内に据え付けられた医用画像撮影システム100に適用した場合を例にとり説明したが、以下のように、移動が困難な患者用の医用画像撮影システム200に適用することもできる。
【0087】
医用画像撮影システム200は、図24に示すように、回診車7Pごと病室Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ9Pを、例えばベッドBに寝ている患者Hの身体の特定部位とベッドBとの間に差し込む等した状態で、ポータブルの放射線源3Pから放射線を照射して撮影を行い、医用画像を生成するシステムである。
【0088】
図24に示すように、医用画像撮影システム200は、ポータブルの放射線源3Pと、操作卓6Pとが回診車7Pに搭載されており、また、回診車7Pに設けられたアクセスポイントAP1により、持ち運び可能なコンソール5PとFPDカセッテ9Pが無線接続することができるようになっている。
【0089】
放射線源3Pは、操作卓6P、コンソール5P、FPD9Pは、それぞれ持運び可能な構成となっている点(例えば、小型化されている等)を除いては、上述の放射線源3、操作卓6、撮影用コンソール5、FPD9と基本的に同様の構成及び機能を有しており、これらの装置間で図3に示す医用画像生成処理を実行することが可能である。
【0090】
即ち、回診先において、まず、撮影技師等の操作者は、コンソール5Pの入力部を操作して撮影オーダー情報の一覧を表示する撮影オーダーリスト画面を表示部に表示させる。そして、入力部を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報を指定する。
【0091】
次いで、操作者は、FPD9PをベッドBに寝ている患者Hの身体の特定部位とベッドBとの間に差し込み、放射線源3Pの位置や向きを調整して被写体のポジショニングを行う。また、操作卓6Pにより、撮影部位に基づき放射線照射条件を設定し、放射線照射指示を行う。放射線源3Pにおいては、操作卓6Pからの放射線照射指示が受信されると、設定された放射線照射条件で放射線照射が行われる。
【0092】
FPD9Pにおいては、放射線源3Pより放射線が照射されると、照射された放射線量に応じたエネルギーが各検出素子により電荷量として蓄積され、各検出素子に蓄積された電荷が読み取られることにより医用画像の画像データ(RAWデータ)が生成され、記憶部に記憶される。
【0093】
次いで、FPD9Pにおいては、制御部により、記憶部に記憶されている医用画像から縮小画像(プレビュー画像)が生成される。生成されたプレビュー画像の画像データは、無線通信によりコンソール5Pに送信される。続いて、記憶部に記憶されている医用画像の画像データが無線通信によりコンソール5Pに送信される。
【0094】
コンソール5Pにおいては、プレビュー画像及び医用画像の画像データが受信されると、受信されたプレビュー画像及び医用画像の画像データが記憶部に記憶される。そして、プレビュー画像に対して補正処理・画像処理が施される。補正処理及び画像処理の内容は上述したとおりである。
【0095】
次いで、コンソール5Pの表示部にプレビュー画像が表示された画像確認画面が表示される。また、プレビュー画像が解析され、撮影された医用画像の診断用の医用画像としての良否を判定する画像判定処理が実行される。画像判定処理としては、上述のように、ポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理の何れかまたはこれらを組み合わせた処理が実行される。そして、診断用に適した医用画像ではないと判定された場合、その判定結果を示す警告画面がコンソール5Pの表示部に表示される。コンソール5Pに表示される警告画面は、図8、図19、図21、図23に表示したような画面であり、画像に欠損のある部分や体動のある部分を強調表示したり、拡大表示したりすることが可能である。
【0096】
ここで、持ち運び可能なコンソールは、持ち運びの簡便さのため画面が小さいので、従来、画像確認が据え置き型のコンソールと比較しても難しいというがあった。
これに対して、コンソール5Pは、撮影された医用画像の縮小画像であるプレビュー画像を用いて、医用画像が診断に適した画像であるか否かを判定し、診断に適した医用画像ではないと判定された場合、その判定結果を示す警告画面を表示部に表示する。従って、回診用の小さい画面であっても、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、不良画像が撮影された場合の警告が直ちに警告されるため、従来のように撮影技師が目視で確認する場合に比べて短時間ですむ。そのため、重症な患者がポジショニングを維持する時間を短縮することができる。また、画像判定処理の待ち時間が短くポジショニングを一旦解除する必要もないため、再撮影となった場合でもポジショニングや撮影条件の微調整をすればよく、撮影技師及び患者の負担を大幅に低減することができる。
また、プレビュー画像において確認すべき箇所を強調して表示したり、拡大表示したりすることで、小さいコンソールかつ解像度や画質の悪いプレビュー画像であっても、確認作業が容易になり、確認に要する時間や作業負担を大幅に低減することができる。
【0097】
コンソール5Pにおいて入力部から再撮影が指示されると、処理対象となっているプレビュー画像及びこれに対応する医用画像が記憶部52から削除される。なお、再撮影が指示されない場合は、コンソール5Pにおいて医用画像に補正処理や画像処理を施して表示し、サーバー装置10に送信してもよいし、コンソール5P等に医用画像の画像データを転送し、コンソール5P等において医用画像に補正処理や画像処理を施して表示し、サーバー装置10に送信することとしてもよい。
【0098】
以上説明したように、医用画像撮影システム100によれば、FPD9により人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成し、撮影用コンソール5に送信する。撮影用コンソール5の制御部51は、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定し、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、表示部54に警告を表示させる。
従って、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてない不良画像が撮影された場合には、撮影後直ちに警告されるので、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、患者がポジショニングを維持する時間が短くてすみ、患者の負担を低減することができる。
【0099】
具体的には、撮影された医用画像が、特定部位の欠損がない画像であるか否か、被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定することができる。
【0100】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態においては、医用画像の縮小をFPD側において行うこととして説明したが、撮影用コンソール5側において行うこととしてもよい。
また、上記実施の形態においては、FPDを用いて医用画像を生成する医用画像撮影システムを例にとり説明したが、医用画像を生成する手段としてはこれに限定されず、例えば、CRを用いることとしてもよい。
【0101】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0102】
その他、医用画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0103】
100 医用画像撮影システム
1 ブッキー装置
2 ブッキー装置
3 放射線源
5 撮影用コンソール
51 制御部
52 記憶部
53 入力部
54 表示部
55 通信I/F
56 ネットワーク通信部
57 バス
6 操作卓
7 HIS/RIS
8 診断用コンソール
9 FPD
10 サーバー装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影システム、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の診断対象である特定部位を被写体として放射線撮影を行い、静止画像のデジタル医用画像を生成する医用画像撮影システムが知られている。
【0003】
放射線撮影においては、撮影により得られた医用画像が、例えば、被写体のポジショニングが不適切で特定部位が欠損している画像、被写体に体動がある画像、放射線照射量が不足している画像等の、診断用の医用画像としての基準を満たしていない画像(診断に不適切な不良画像)である場合には、再撮影が必要となる。そして、再撮影が必要であるか否かの判断は、早期に行えるようにすることが好ましい。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、FPD(Flat Panel Detector)で撮影された医用画像の縮小画像を医用画像に先行してコンソールに転送し、コンソールにおいて縮小画像をプレビュー画像として早期に表示することで、撮影された医用画像がポジショニングミスや体動などが発生している再撮影が必要な不良画像であるか否かの確認を早期に行うことが可能な放射線画像生成システムが記載されている。
【0005】
また、放射線撮影により得られた医用画像を解析することにより、診断上不適切な画像に警告を行うシステムが提案されている。
例えば、特許文献2には、静止画像の医用画像における撮影時の被写体の体動の有無を判定し、判定結果に基づいて警告を行うと同時に拡大表示を行うことで、体動画像の見逃しを防止する医用画像撮影システムが記載されている。
また、特許文献3には、撮影により得られた画像データのポジショニングの良否を判定し、判定結果に基づいて警告を行う放射線画像読取システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−214057号公報
【特許文献2】特許第4539186号公報
【特許文献3】特開平4−364834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシステムでは、撮影後、直ちにプレビュー画像の確認を行えるため、撮影後ポジショニングを解除せずにそのまま画像を確認し、診断に不適切な不良画像であればポジショニングを微調整するだけで再撮影を行うことが可能である。しかし、重症患者は撮影の間にポジショニングを維持するだけで苦痛であり、撮影後なるべく早く医用画像の良否を判断し、ポジショニング状態から解放させることが望まれている。
【0008】
また、重症患者では撮影室まで移動することが困難であるため、回診車によりベッドサイドで撮影が行われる。この場合、持ち運び可能なコンソールで医用画像の確認が行われるが、持ち運びの簡便さのため画面が小さいので、画像確認が据え置き型のコンソールと比較して難しく、更に、プレビュー画像では解像度や画質において診断用の医用画像と比較して劣るため、ポジショニングミスや体動などによる再撮影が必要な画像を見逃す場合があった。また、これらを見逃すリスクを下げるためにプレビュー画像の確認をより注意して行った場合、確認に要する時間が増えるため、患者がポジショニングを維持する負担が大きかった。
【0009】
一方、特許文献2、3に記載のように、診断用の医用画像を解析して診断に不適切な画像を警告する場合、診断用の医用画像をコンソールで取得して表示するまでに時間を要する。そのため、患者のポジショニング負担を軽減するため、撮影後、一旦ポジショニングを解除して医用画像を確認する必要があった。コンソールでの医用画像の取得完了後の警告により医用画像の不良に気づいた場合には、再度ポジショニング作業を行う必要があり、撮影技師、患者とも負担が大きく問題であった。
【0010】
本発明の課題は、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしていない不良画像を撮影技師が即座に認識することができるようにし、不良画像の見逃しの防止、患者負担の低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像撮影システムは、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像を縮小してプレビュー画像を生成するプレビュー画像生成手段と、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記プレビュー画像に画像処理を施す画像処理手段を有し、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像又は前記画像処理手段により画像処理されたプレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が、前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された画像処理装置であって、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える。
【0015】
請求項5に記載の発明のプログラムは、
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された医用画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記プレビュー画像を表示する表示手段、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に前記表示手段に警告を表示させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしていない不良画像を撮影技師が即座に認識することが可能となるので、不良画像の見逃しの防止、患者負担の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る医用画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図2】撮影用コンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮影用コンソールの制御部により実行される医用画像生成処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例であるポジショニング判定処理を示すフローチャートである。
【図5A】照射野の境界線に接する部分領域を説明するための図である。
【図5B】特徴量が算出される小領域を説明するための図である。
【図6】ポジショニング判定に用いる各特徴量を軸とした空間に、予め肺野の欠損があるか否かが既知の複数の画像(サンプル画像)から算出された特徴量をプロットしたグラフである。
【図7】下端判定器の作成過程を模式的に示す図である。
【図8】ポジショニング警告画面の一例を示す図である。
【図9】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である体動判定処理を示すフローチャートである。
【図10A】静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図10B】横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図10C】横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。
【図11】横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。
【図12】医用画像から抽出された肺野領域の一例を示す図である。
【図13】レスポンスの最大値又は積分値を算出する帯域を説明するための図である。
【図14】図9のステップS303において抽出されるエッジを含まない局所領域の一例を示す図である。
【図15】縦方向、横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図16】斜め方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標の算出対象となる帯域を説明するための図である。
【図17】体動特徴量の算出手法を説明するための図である。
【図18A】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第1ステップ)。
【図18B】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第2ステップ)。
【図18C】体動警告画面に拡大表示する拡大領域の決定過程を示す図である(第3ステップ)。
【図19】体動警告画面の一例を示す図である。
【図20】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である線量判定処理を示すフローチャートである。
【図21】線量警告画面の一例を示す図である。
【図22】図3のステップS9において実行される画像判定処理の一例である画像処理条件判定処理を示すフローチャートである。
【図23】画像処理警告画面の一例を示す図である。
【図24】移動が困難な患者用の医用画像撮影システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る医用画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0019】
(医用画像撮影システムの構成)
まず、本実施の形態における医用画像撮影システム100の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る医用画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。医用画像撮影システム100は、患者の身体の特定部位(即ち、診断対象部位(撮影部位))を被写体として放射線を照射して被写体の静止画像を生成するシステムである。図1では、医用画像撮影システム100が撮影室Rm内に構築されている場合が示されている。
【0020】
撮影室Rmには、例えば、立位撮影用のブッキー装置1と、臥位撮影用のブッキー装置2と、放射線源3と、撮影用コンソール5と、操作卓6と、アクセスポイントAPと、が備えられている。撮影室Rmには前室Raと撮影実施室Rbが設けられ、前室Raに撮影用コンソール5及び操作卓6が備えられることで、撮影技師等の操作者の被曝を防止するようになっている。
【0021】
以下、撮影室Rm内の各装置について説明する。
ブッキー装置1は、立位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置1は、FPD9を保持するための保持部12aと、保持部12aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター12bとを有する。コネクター12bは、保持部12aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置1は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、保持部12aを垂直方向又は水平方向に移動させるためのフットスイッチ等を備える。
【0022】
ブッキー装置2は、臥位での撮影時にFPD9を保持して撮影を行うための装置である。ブッキー装置2は、FPD9を保持するための保持部22aと、保持部22aに装着されたFPD9のコネクターを接続するためのコネクター22bとを有する。コネクター22bは、保持部22aに装着されたFPD9との間でデータ送受信を行ったり、FPD9に電力を供給したりする。また、ブッキー装置2は、アクセスポイントAPを介して撮影用コンソール5等の外部機器と通信ケーブルを介してデータ送受信を行うためのインターフェースや、被写体を載置するための被写体台26を備える。
【0023】
放射線源3は、例えば、撮影室Rmの天井から吊り下げられており、撮影時には操作卓6からの指示に基づいて起動され、図示しない駆動機構によりにより所定の位置、向きに調整されるようになっている。そして、放射線の照射方向を変えることで、立位用のブッキー装置1又は臥位用のブッキー装置2に装着されたFPD9に対して放射線(X線)を照射することができるようになっている。また、放射線源3は、操作卓6からの指示に従って放射線を1回照射し、静止画像の撮影を行う。
【0024】
撮影用コンソール5は、FPD9から送信された医用画像の縮小画像(プレビュー画像)に補正処理や画像処理を施して表示したり、FPD9から送信された医用画像に補正処理や画像処理を施して診断用の医用画像を生成し表示したりするための医用画像処理装置である。また、撮影用コンソール5は、LAN(Local Area Network)を介してHIS/RIS(Hospital Information System/ Radiology Information System)7、診断用コンソール8、サーバー装置10等に接続されており、HIS/RIS7から送信された撮影オーダー情報の一覧を表示するとともに、指定された撮影オーダー情報と医用画像とを対応付けてサーバー装置10に送信する。
【0025】
図2に、撮影用コンソール5の要部構成例を示す。図2に示すように、撮影用コンソール5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信I/F55、ネットワーク通信部56等を備えて構成されており、各部はバス57により接続されている。
【0026】
制御部51は、CPU、RAM等により構成される。制御部51のCPUは、記憶部52に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
例えば、制御部51は、所定時間毎にネットワーク通信部56を介してHIS/RIS7に問い合わせを行い、新たにHIS/RIS7で登録された撮影オーダー情報を取得する。
また、例えば、制御部51は、図3に示す医用画像生成処理の撮影用コンソール側処理を実行することにより、画像判定手段、画像処理手段、制御手段としての機能を実現する。
【0027】
記憶部52は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。
記憶部52には、各種のプログラム及びデータが記憶されている。
例えば、記憶部52には、各種のプログラムが記憶されているほか、医用画像の画像データを部位毎の診断に適した画質に調整するための画像処理パラメーター(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)等が記憶されている。
【0028】
また、記憶部52には、FPD9の特性情報が記憶されている。ここで、特性情報とは、FPD9の検出素子やシンチレータパネルの特性等である。
また、記憶部52には、所定時間毎にHIS/RIS7から送信される撮影オーダー情報が記憶される。
【0029】
入力部53は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。
【0030】
表示部54は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
なお、表示部54の画面上に、透明電極を格子状に配置した感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネル(図示せず)を形成し、表示部54と入力部53とが一体に構成されるタッチスクリーンとしてもよい。この場合、タッチパネルは、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号が操作信号として制御部51に出力されるように構成される。なお、表示部54は、一般的なPC(Personal Computer)
に用いられるモニターよりも高精細のものであってもよい。
【0031】
通信I/F55は、ブッキー装置1、ブッキー装置2、放射線源3、FPD9とアクセスポイントAPを介して接続し、無線、または有線によりデータ送受信を行うためのインターフェースである。本実施の形態において、通信I/F55はアクセスポイントAPを介して必要に応じてFPD9に対してポーリング信号を送信する。
【0032】
ネットワーク通信部56は、ネットワークインターフェース等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0033】
操作卓6は、撮影室内の放射線源3に接続され、放射線源3への放射線照射指示や放射線照射条件の設定等を入力するための入力装置である。本実施の形態において、操作卓6は、撮影部位に対応付けて撮影条件(放射線照射条件及び画像読取条件)が記憶された記憶装置を有し、選択された撮影部位に応じた放射線照射条件を放射線源3に設定する。放射線照射条件は、例えば、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルタ種、SID(Source to Image−receptor Distance)等である。
【0034】
HIS/RIS7は、問診結果等に基づくオペレータによる登録操作に応じて撮影オーダー情報を生成する。撮影オーダー情報は、例えば患者の氏名、性別、年齢、身長、体重等の患者情報や、撮影部位、撮影方向、体位(立位、臥位)、撮影方法等の撮影予約に関する情報等を含んでいる。なお、撮影オーダー情報はここに例示したものに限定されず、これ以外の情報を含んでいてもよいし、上記に例示した情報のうちの一部でもよい。
【0035】
診断用コンソール8は、サーバー装置10から医用画像を取得し、取得した画像を表示して医師が読影診断するためのコンピュータ装置である。
【0036】
FPD9は、制御部、検出部、記憶部、コネクター、バッテリー、無線通信部等を備えて構成される放射線検出器である。
FPD9の検出部は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源3から照射されて少なくとも被写体を透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子が二次元状に配列されている。検出素子は、フォトダイオード等の半導体イメージセンサーにより構成される。各検出素子は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部に接続され、スイッチング部により電気信号の蓄積及び読み出しが制御される。
【0037】
FPD9の制御部は、記憶部に記憶されている画像読取条件に基づいて検出部のスイッチング部を制御して、各検出素子に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、検出部に蓄積された電気信号を読み取ることにより、医用画像(静止画像)の画像データを生成する。そして、制御部は、生成した医用画像に縮小処理を施してプレビュー画像を生成し、生成したプレビュー画像及び医用画像の画像データをコネクター及びブッキー装置1又は2を介して撮影用コンソール5に出力する。即ち、FPD9は、医用画像生成手段、プレビュー画像生成手段として機能するものである。なお、生成された静止画像を構成する各画素は、検出部の各検出素子のそれぞれから出力された信号値(ここでは、濃度値と呼称する)を示す。
FPD9のコネクターは、ブッキー装置1、2側のコネクターと接続し、ブッキー装置1又は2とのデータ送受信を行う。また、FPD9のコネクターは、ブッキー装置1又は2のコネクターから供給される電力を各機能部へ供給する。なお、バッテリーを充電する構成としても良い。
なお、FPD9は、ブッキーに装填されない単体使用時には、バッテリー駆動及び無線通信する構成であり、ブッキー装置1又は2に装填時には、コネクター接続により、バッテリー/無線方式から、有線/電力供給方式に切り替えることができる。従い、複数の患者を連続的に静止画撮影する場合に於いても、バッテリー切れを気にする必要がなくなる。
【0038】
サーバー装置10は、撮影用コンソール5から送信された医用画像の画像データや読影レポートを撮影オーダー情報に対応付けて記憶するデータベースを備える。また、サーバー装置10は、診断用コンソール8からの要求に応じてデータベースから医用画像を読み出して診断用コンソール8に送信する。
【0039】
(撮影動作)
次に、医用画像撮影システム100における撮影動作について説明する。
図3に、医用画像撮影システム100において実行される医用画像生成処理の流れを示す。
【0040】
まず、撮影技師等の操作者は、撮影用コンソール5の入力部53を操作して撮影オーダー情報の一覧が表示された撮影オーダーリスト画面を表示部54に表示させる。そして、入力部53を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報を指定する(ステップS1)。
【0041】
次いで、操作者は、FPD9をブッキー装置1又はブッキー装置2に装着し、ブッキー装置や放射線源3の向きを調整して被写体のポジショニングを行う。また、操作卓6により、撮影部位に基づき放射線照射条件を設定し、放射線照射指示を行う。放射線源3においては、操作卓6からの放射線照射指示が受信されると、設定された放射線照射条件で放射線照射が行われる(ステップS2)。
【0042】
FPD9においては、放射線源3より放射線が照射されると、照射された放射線量に応じたエネルギーが各検出素子により電荷量として蓄積され、各検出素子に蓄積された電荷が読み取られることにより医用画像の画像データ(RAWデータ)が生成され、記憶部に記憶される(ステップS3)。
【0043】
次いで、FPD9においては、制御部により、記憶部に記憶されている医用画像に縮小処理が施され、プレビュー画像が生成される(ステップS4)。プレビュー画像は、医用画像の画像サイズを縮小させたものである。具体的には、医用画像を所定の間引き率で間引くことにより、所定の画素間隔毎の画素で構成されたプレビュー画像が生成される。生成されたプレビュー画像の画像データは、ブッキー装置を介して、或いは無線通信により撮影用コンソール5に送信される(ステップS5)。続いて、記憶部に記憶されている医用画像の画像データがブッキー装置を介して、或いは無線通信により撮影用コンソール5に送信される(ステップS6)。撮影用コンソール5において、通信I/F55を介して受信されたプレビュー画像及び医用画像の画像データは記憶部52に記憶される。
【0044】
撮影用コンソール5においては、通信I/F55を介してプレビュー画像の画像データが受信されると、プレビュー画像に対して補正処理・画像処理が施される(ステップS7)。ステップS7においては、記憶部52に記憶されたFPD9の特性情報に基づいて、上述のダーク画像を用いたオフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、ラグ(残像)補正処理等の補正処理が必要に応じて行われる。また、画像処理としては、撮影部位に応じた階調処理、周波数強調処理や粒状抑制処理等が行われる。
なお、FPD9が複数存在する場合には、各FPD9の識別IDに対応付けて特性情報を記憶部52に記憶しておき、使用されているブッキー装置を介してFPD9から識別IDを取得し、取得した識別IDに対応する特性情報に基づいて補正処理や画像処理を行うようにすればよい。
【0045】
次いで、表示部54にプレビュー画像が表示された画像確認画面が表示される(ステップS8)。ステップS8で表示される画像確認画面は、プレビュー画像が表示された画面であり、特に図示しないが、ここでは、図8に示すポジショニング警告画面541における拡大表示枠541aやマーク541bが表示されていない画面である。その他の画面レイアウトや表示されるボタンは、ポジショニング警告画面541と同様である。
【0046】
ここで、医師の診断に適した画像であるか否かは、例えば、ポジショニングの良否、体動の有無、放射線照射線量の良否、画像処理条件の良否等に基づいて判定される。しかし、プレビュー画像は解像度や画質において診断用の医用画像と比較して劣るため、ポジショニング不良や体動等により再撮影が必要な画像を見逃してしまう場合がある。これらの見逃しのリスクを下げるために画像の確認をより一層注意して行った場合には、確認に要する時間が増えるため、患者がポジショニングを維持する時間が増えてしまい、負担が大きくなる。
【0047】
そこで、ステップS9においては、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たす画像(診断用の医用画像としての基準を満たしている画像)であるか否かを判定する画像判定処理が実行される(ステップS9)。ここで、ステップS9における画像判定処理としては、以下に説明するポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理の何れかまたはこれらを組み合わせた処理が実行される。なお、以下の各処理の説明では、一実施形態として、肺野を被写体としたプレビュー画像を用いた場合について説明するが、他の撮影部位においても同様の手法により画像判定を行うことができる。
【0048】
まず、ポジショニング判定処理について説明する。図4に、ポジショニング判定処理のフローチャートを示す。ポジショニング判定処理は、プレビュー画像に基づいて、撮影された医用画像において特定部位の欠損が生じているか否かを判断し、特定部位の欠損が生じている場合は、ポジショニング不良であると判定し、警告を行う処理である。ポジショニング判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0049】
先ず、プレビュー画像内の照射野の範囲を認識する処理が行われる(ステップS201)。この処理では、撮影時にマスキングにより放射線源3からFPD9の撮像面まで放射線が到達しなかった部分を検出して、プレビュー画像中からこの検出された部分を除外した残りの部分を照射野として設定する。この照射野の設定処理は、例えば、画像の輪郭から内側に連続して画素の信号値がほぼ最小(即ち、放射線量が最小)の領域を検出して除外するなどの方法で行うことができる。
【0050】
次いで、特定された照射野が複数の小領域に分割され、これらの分割された複数の小領域のうち、照射野の境界(照射野と照射野外との境界)から所定の範囲にある部分領域に含まれる各小領域から予め指定された特徴量を抽出する処理が行われる(ステップS202)。ステップS202の処理では、具体的には、図5Aに示すように、例えば、照射野が10×10のマトリックス状に配置された小領域に分割される。そして、照射野の上下の境界線からそれぞれ2行、および、左右の境界線からそれぞれ2列の4つの部分領域(図5Aの上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4)において、各部分領域内に含まれる各小領域の信号値から特徴量を抽出する。具体的には、図5Aの下端領域R2には、図5Bに示す1〜20の小領域が含まれるので、20の特徴量を算出する。算出結果は、各小領域の位置と特徴量を示すデータ配列として保持される。上端領域R1、左端領域R3、右端領域R4についても同様である。ステップS202において算出される特徴量をここではデータ配列特徴量と呼ぶ。
【0051】
ここで、境界線に接する部分領域を一行または一列のみではなく複数の行または列に分割してデータを取得することにより、複雑な画像パターンの場合にも正確に画像判定を行うことができる。例えば、肺野の下端の更に下部にガスが写りこんでいる場合、肺野の下端に水が溜まっている場合、肺野の下端付近にカテーテルが挿入されている場合などが考えられるが、これらのケースについても、複数行および複数列の小領域のデータに基づいて学習させた判定器51aを用いることにより、適切に判定を行うことができる。
【0052】
ステップS202の処理で抽出される特徴量は、例えば、各小領域内の各画素が有する信号値のうちの最大値(即ち、測定された放射線強度が最大のもの)である。また、他の特徴量としては、各小領域内での信号値の一次微分量の最大値、また、特に、一次微分量のうち照射野の境界線に平行な成分の各小領域内における最大値、および、この一次微分量の最大値をとる座標値を利用することができる。或いは、更に、特徴量として、輝度値のパワースペクトルを用いることができる。特に、照射野の境界線に平行な方向のパワースペクトル密度や、極大値を取る周波数(波長)の値が利用可能である。
【0053】
上記の特徴量の抽出が行われると、抽出された特徴量を利用して、境界線ごとにポジショニング判定が行われる(ステップS203)。ステップS203におけるポジショニング判定は、判定器51aを用いて各境界線により被写体が欠損していないか否かを判定するものである。図5Aの例では、上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、および、右端領域R4からステップS202で算出された特徴量が取得され、これらのデータが制御部51の判定器51aに入力され、判定器51aにおいて、肺野が各境界線からはみ出して欠損している部分があるかどうかの判定が行われる。
【0054】
このポジショニング判定に用いられる判定器51aは、所定の学習アルゴリズムを用いて予め学習させたものであり、学習結果に基づいて、肺野が各境界線からはみ出して欠損している部分があるかどうかの判定を行うものである。
【0055】
ここで、学習アルゴリズムによる学習と判定の一般的概念について説明する。ここでは、説明を簡単にするため、2つの特徴量を用いて判定を行う場合を例にとり説明する。
図6は、ポジショニング判定に用いる各特徴量を軸とした空間に、予め肺野の欠損があるか否かが既知の複数の画像(サンプル画像)から算出された特徴量をプロットしたグラフである。学習アルゴリズムでは、図6に示すように、複数のサンプル画像から算出された特徴量の分布から、どのような境界線を描けば肺野の欠損のない画像と肺野の欠損のある画像を区別できるかを学習し、特徴量が境界線のどちら側に位置するかによって欠損のない画像であるか欠損のある画像であるかを判定する判定器を作成するものである。そして、作成された判定器に判定対象の画像から算出された特徴量を入力することで、判定器において肺野の欠損のある画像かない画像かを判定する。
【0056】
判定器51aの学習に用いる学習アルゴリズムとしては、特に限られないが、例えば、アダブースト(AdaBoost)が利用される。アダブーストは、予め被写体の欠損があるか否かが既知の画像から抽出された複数の特徴量のデータ配列をそれぞれ多数用意し、被写体の欠損を判別する識別器を重み付けして組み合わせることで最適な判定器を作るアルゴリズムである。
【0057】
ここで、学習による判定器51aの作成及びステップS203における判定について、アダブーストを用いた場合を例にとり説明する。
ステップS203においては、上下左右の照射野外との境界線ごとにポジショニング判定が行われる。そこで、判定器51aは、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器の4種類の判定器により構成される。
【0058】
(1)判定器51aの作成においては、まず、肺野が欠損している画像と肺野が欠損していない画像をサンプル画像として複数用意する。
(2)次いで、全サンプル画像からステップS202と同様の特徴量を算出する。例えば、図5Aに示す上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4内の4つの部分領域のそれぞれに含まれる各小領域の信号値の特徴量(例えば、最大信号値)を算出する。
【0059】
次いで、上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4のそれぞれについて、上記算出された特徴量を用いて下記の(3)〜(4)を実行することにより、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器を作成する。
図7(a)〜(d)は、下端判定器の作成過程を模式的に示す図である。図7(a)〜(d)は、特徴量1を縦軸に、特徴量2を横軸として作成した2次元特徴量分布である。ここでは、説明をわかりやすくするために、2つの特徴量を用いて2次元で表現して説明するが、実際はデータ配列特徴量が20あるので、20個の軸をもつ20次元の特徴量空間となる。以下の説明では、図7(a)〜(d)に示す下端判定器の作成過程を模式的に示す図を参照しながら説明するが、上端判定器、左端判定器、右端判定器についても同様の作成過程となる。
【0060】
(3)まず、Decision Stampを用いて複数の弱識別器を作成する。弱識別器は、ある特徴量が予め設定した閾値を超えるか否かで肺野の欠損の有無を判定する識別器であり、各特徴量毎に、閾値を変えたものを複数作成する。
例えば、図7(a)に示すように、特徴量1に対して閾値がd1、d2、d3の3つの弱識別器を作成し、特徴量2に対して閾値がD1、D2、D3の3つの弱識別器を作成する。
【0061】
(4)次いで、肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器を選択する。例えば、図7(b)に示すように、弱識別器D2は、円Aで囲まれた3つの画像を除く14の画像について正しく判定できており、正しく判定できた画像の割合(画像数)が最も多い(寄与度が高い)。そこで、弱識別器D2を肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器として選択する。
(5)次いで、判定に失敗した画像の特徴量に重みを付けて、肺野の欠損の有無の判定に最も寄与する弱識別器を選択する。失敗した画像に重み付けることで、先の弱識別器D2で判定に失敗した画像を精度良く判定できる弱識別器を選択することができる。例えば、図7(c)に示すように、図7(b)において判定を失敗した画像(円Aで囲まれた点に対応する画像)の重み付けを重くし、それ以外の重み付けを軽くすると、弱識別器d2の寄与度が最も高くなる。その結果、弱識別器d2が選択される。
(6)上記(5)を失敗画像がなくなるまで繰り返し、各過程で選択された弱識別器を組み合せて判定器を作成する。図7(d)においては、弱識別器D2と弱識別器d2を組み合わせて判定器を作成する。ただし、各弱識別器の寄与度は異なるため、各弱識別器の正答率(正しく判定できた画像の全体画像に占める割合)等に基づいて弱識別器に重み付けを行う。
【0062】
ステップS203においては、上記学習により作成された各判定器(上、下、左、右の4つの判定器)からなる判定器51aを用いて、撮影された医用画像の上、下、左、右の各肺野端に肺野の欠損があるか否かを判定する。具体的には、ステップS202において上端領域R1、下端領域R2、左端領域R3、右端領域R4のそれぞれから算出された特徴量を、上端判定器、下端判定器、左端判定器、右端判定器のそれぞれに入力すると、判定器51aは、上・下・左・右の照射野外との境界における肺野の欠損の有無を判定する。
【0063】
なお、その他の学習アルゴリズムとしては、例えば、サポートベクタマシンやニューラルネットワークを用いたもの、或いは、K-最近傍識別器が利用可能である。また、判別分析のような統計的手法を適用してもよい(参考文献:C.M. Bishop, “Pattern Recognition and Machine Learning”, Springer-Verlag, New Ed版(2006))。
一方、サポートベクタマシンは、ステップS202の処理で抽出される複数の特徴量の組み合わせ(特徴ベクトル)により示されるデータ点を高次元空間に写像し、写像された高次元空間において、特定部位の欠損がある画像と欠損がない画像とに最も明確に、即ち、最大のマージンを有するように線形分離する分離面を求める統計的アルゴリズムである。
【0064】
ポジショニング判定の結果、撮影された医用画像が特定部位の欠損がある画像である(ポジショニング不良である)と判定されると(ステップS204;YES)、表示部54にポジショニング警告画面541が表示される(ステップS205)。
図8に、ポジショニング警告画面541の一例を示す。図8に示すように、ポジショニング警告画面541においては、プレビュー画像PV上に、画像の欠損のある部分を示す枠541bが重畳表示されているとともに、警告があることを示すマーク541bが表示されている。また、ポジショニング警告画面541には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を診断用の医用画像としてサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
ポジショニング判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0065】
次に、体動判定処理について説明する。図9に、体動判定処理のフローチャートを示す。体動判定処理は、プレビュー画像に基づいて、撮影された医用画像に被写体の体動が存在していないか否かを判定し、被写体の体動が存在していると判定した場合に警告を行う処理である。体動判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0066】
ここで、まず、図9に示す体動判定処理のアルゴリズムの概要について図10A〜図10C、図11を参照して説明する。
図10A〜図10Cは、医用画像における空間周波数応答(レスポンス)を模式的に示す図である。
図10A〜図10Cの各図において、横軸は、横方向の空間周波数の帯域を示す軸であり、縦軸は、縦方向の空間周波数の帯域を示す軸である。両軸とも、中央が最も低い周波数帯域となっており、原点(中心)から遠くなるほど高い空間周波数の帯域であることを示している。図10A〜図10Cにおいては、各空間周波数の帯域のレスポンスの強さを濃淡で示しており、レスポンスが強いほど濃い濃度で示している。
【0067】
図10Aは、静止画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。図10Aに示すように、静止画像では、高空間周波数のレスポンスは、平均的に各方向で同程度である。
図10Bは、横方向に体動のある静止画像(体動画像)における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。体動画像では、体動方向の空間周波数のレスポンスが弱められ、方向によってレスポンスの強さが変わる。横方向に体動がある場合には、図10Bに示すように、横方向の空間周波数のレスポンスが弱くなる。
図10Cは、横方向のエッジを含む画像における空間周波数のレスポンスを模式的に示す図である。また、図11は、横方向のエッジを含む画像とエッジを含まない画像における縦方向の空間周波数とレスポンスの関係を示す図である。図10Cに示すように、エッジを含む画像では、エッジと垂直方向に強い高空間周波数が発生し、方向によってレスポンスの強さが変わる。また、図11に示すように、エッジを含む画像では、エッジを含まない画像に比べ、高周空間周波数帯域のレスポンスが大きい。
図9に示す体動判定処理のアルゴリズムでは、これらの静止画像、体動画像、エッジ画像における空間周波数のレスポンスの特徴に基づいて、体動の有無を判定する。
【0068】
体動判定処理においては、まず、体動判定処理の対象となるプレビュー画像が複数の小領域(例えば、2mm×2mmの矩形領域)に分割される(ステップS301)。処理対象の医用画像を小領域に分割することで、この医用画像に含まれる被写体領域である肺野内の領域も小領域に分割される。
【0069】
次いで、肺野内の領域(肺野領域)が抽出される(ステップS302)。
胸部を撮影した静止画像の信号値のヒストグラムには大きく分けて3つのピークが現れる。高信号域に現れるのは被写体を透過せずに直接X線が検出された直接X線領域であり、低信号側に現れるのはX線の透過率が低い心臓、骨等の体幹部領域である。それらの間に現れるのが肺を透過した肺野領域である。そこで、ステップS302においては、処理対象のプレビュー画像の信号値のヒストグラムから判別分析等によって体幹部領域と肺野領域の閾値(低信号側の閾値1)、直接X線領域との閾値(高信号側の閾値2)をそれぞれ求め、閾値1と閾値2の間の信号値をもつ領域を肺野領域として抽出する。図12に、ステップS302において抽出された肺野領域の一例を示す。太い点線で囲まれた領域Lが肺野領域である。
なお、結果的に抽出した肺野内の領域が複数の小領域に分割されればよく、例えば、ステップS301とステップS302を逆の順序で行い、肺野内の領域を先に抽出し、抽出した肺野内の領域を複数の小領域に分割することとしてもよい。
【0070】
次いで、抽出された肺野領域から、エッジを含まない局所領域が抽出される(ステップS303)。
肋骨などのエッジを含む領域では、上述のように、高空間周波数成分が多く含まれる。そこで、ステップS303においては、まず、肺野領域内の各小領域について、予め定められた帯域の高空間周波数成分のみを抽出するハイパスフィルタを通過させることにより高空間周波数成分を抽出する。次いで、抽出された高空間周波数成分におけるナイキスト周波数fNとfN−Δf(Δfは予め定められた値)の間の帯域(図11、図13参照)のレスポンスの最大値又は積分値を算出し、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値より大きい場合に、その小領域にエッジが含まれると判定する。ここでは、エッジを含まない領域を抽出するので、算出した最大値又は積分値の何れかと、予め各値に設定された閾値とを比較し、閾値以下の小領域がエッジを含まない局所領域として抽出される。図14に、ステップS303において抽出された、エッジを含まない局所領域を示す。図中の小領域Pが、抽出された局所領域である。図14では小領域Pの一部のみを指し示しているが、同じ線種・サイズの矩形で囲まれた小領域が小領域Pである。なお、エッジ検出は、他の手法(例えば、プレビュー画像の垂直プロファイルや水平プロファイルを用いる手法)を用いることとしてもよい。
【0071】
次いで、抽出された各局所領域において、方向毎の高空間周波数成分のレスポンスを表す指標値が算出される(ステップS304)。
縦方向に対する高空間周波数成分については、図15に示すように、横方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2(Δfwは予め定められた値)の間と、縦方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfb(Δfbは予め定められた値)の間に囲まれた各帯域(図15に示すAhに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を縦方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rhとして算出する。
横方向に対する高空間周波数成分については、図15に示すように、縦方向の空間周波数における−Δfw/2とΔfw/2の間と、横方向の空間周波数におけるナイキスト周波数fNとfN−Δfbの間に囲まれた各帯域(図15に示すAwに含まれる帯域)のレスポンスを取得し、その最大値又は積分値を横方向の高空間周波数成分のレスポンスの指標Rwとして算出する。
ここでは、積分値を使用する。また、ここでは、縦横の2方向の帯域に限って説明しているが、図16に示す斜め2方向Au、Adを更に追加した4方向の帯域でレスポンスの指標値を算出してもよい。
【0072】
次いで、各局所領域について算出されたレスポンスの指標値に基づいて、体動特徴量が算出され、算出された体動特徴量に基づいて、撮影された医用画像における被写体の体動の有無が判定される(ステップS305)。
ステップS305においては、図17に示すように、まず、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスRh、Rwについて、方向毎に平均値Rh´、Rw´を算出する。次いで、算出されたRh´、Rw´の差分値の絶対値|R´h−R´w|を体動特徴量として算出し、この体動特徴量が予め定められた閾値より大きい場合に、数値が小さい方向(図17では横方向)の体動があると判定される。また、斜め2方向を追加した4方向の場合には、各局所領域について算出された方向毎のレスポンスの指標について、方向毎に平均値を算出し、縦方向と横方向の平均値の差分値の絶対値と、斜め方向の平均値の差分値の絶対値を算出し、大きいほうの値を体動特徴量とする。
【0073】
体動判定の結果、撮影された医用画像に被写体の体動があると判断されると(ステップS306;YES)、エッジを含まない局所領域の位置情報及び高空間周波数成分に基づいて、体動部分を拡大表示するための拡大領域が決定される(ステップS307)。
図18A〜図18Cに、ステップS307における拡大領域の決定過程を示す。図18Aに示すように、まず、肺野領域内に所定の大きさの複数の拡大候補領域(図18Aでは領域1と領域2)を設定する。次いで、図18Bに示すように、各拡大候補領域内の局所領域から算出した体動特徴量の合計をそれぞれ取得する。そして、図18Cに示すように、体動特徴量の合計が最も大きい拡大候補領域(図18A、図18Bの領域2)を拡大領域として決定する。
【0074】
次いで、決定された拡大領域が拡大表示された体動警告画面542が表示部54に表示される(ステップS308)。
図19に、体動警告画面542の一例を示す。体動警告画面542においては、プレビュー画像上に、上記決定された拡大領域を示す枠542aが重畳表示されるとともに、上記拡大領域が拡大された拡大画像及び「体動の恐れがあります」等の警告メッセージが表示された画面542bがポップアップ表示される。また、体動警告画面542には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、プレビュー画像に対応する医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、プレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
体動判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0075】
次に、線量判定処理について説明する。図20に、線量判定処理のフローチャートを示す。線量判定処理は、医用画像の撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えているか否かを判定し、超えていない(線量不足である)と判定した場合に、警告を行う処理である。線量判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。この線量判定処理は、補正処理・画像処理が施されていないプレビュー画像に基づいて行われる。
【0076】
まず、記憶部52に記憶されている、補正処理・画像処理の施されていないプレビュー画像が読み出され、関心領域が設定される(ステップS401)。胸部正面を撮影した画像では、肺野を含む矩形領域が関心領域として設定される。例えば、上述した手法により肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の外側を囲む矩形領域が関心領域として設定される。
【0077】
次いで、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、又は最小値が算出される(ステップS402)。
次いで、算出された平均値、最大値又は最小値が、予め各値に設定された閾値と比較され、閾値を超えている場合、放射線照射量が予め定められた基準を超えていると判定される。算出された平均値、最大値又は最小値が、予め各値に設定された閾値以下である場合、放射線照射量が予め定められた基準を超えていない、即ち、線量不足であると判定される(ステップS403)。
なお、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、最小値のそれぞれを、予め各値に設定された閾値と比較し、何れかが閾値以下である場合に線量不足と判定することとしてもよい。
【0078】
線量不足と判定された場合(ステップS404;YES)、表示部54に線量警告画面543が表示される(ステップS405)。
図21に、線量警告画面543の一例を示す。線量警告画面543においては、プレビュー画像上に、上記設定された関心領域を示す枠543aが重畳表示されるとともに、異常があることを示すマーク543b及び「線量異常」のメッセージ543cが表示される。また、線量警告画面543には、出力ボタンB1と、再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3が表示されている。出力ボタンB1は、表示されている医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されている医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
線量判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0079】
次に、画像処理条件判定処理について説明する。図22に、画像処理条件判定処理のフローチャートを示す。画像処理条件判定処理は、プレビュー画像に施された画像処理条件に基づいて、撮影された医用画像に施される画像処理の画像処理条件が適正であるか否かを判定し、適正ではないと判定した場合に警告を行う処理である。画像処理条件判定処理は、制御部51と記憶部52に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0080】
まず、プレビュー画像に関心領域が設定される(ステップS501)。胸部正面を撮影した画像では、肺野を含む矩形領域が関心領域として設定される。例えば、上述の手法により肺野領域を抽出し、抽出した肺野領域の外側を囲む矩形領域が関心領域として設定される。
【0081】
次いで、関心領域内の画素の信号値の平均値、最大値、最小値が算出される(ステップS502)。
次いで、算出した平均値、最大値、最小値が、それぞれ予め各値に設定された閾値と比較され、比較結果に基づいて、撮影された医用画像に施される画像処理の画像処理条件が適正であるか否かが判定される(ステップS503)。
ここでは、主として階調処理の画像処理条件が適正であるか否かについて判定される。算出された平均値や最大値が予め定められた閾値より大きい場合は、例えば、肺野信号が黒くつぶれているので、画像処理条件が適正ではないと判定される。算出された最小値が予め定められた閾値より小さい場合は、心臓領域が白く飛んでいるので、画像処理条件が適正ではないと判定される。
【0082】
画像処理条件が適正ではないと判定された場合(ステップS504;YES)、表示部54に画像処理警告画面544が表示される(ステップS505)。
図23に、画像処理警告画面544の一例を示す。画像処理警告画面544においては、プレビュー画像上に、画像処理条件が適正ではないことを示すマーク544a及び「画像処理」が適正ではないことを示すメッセージ544bが表示される。また、画像処理警告画面544には、出力ボタンB1と再撮影ボタンB2と、ビューアーボタンB3と、が表示されている。出力ボタンB1は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像をサーバー装置10に出力し保存することを指示するためのボタンである。再撮影ボタンB2は、表示されているプレビュー画像に対応する医用画像を破棄して再撮影を行うことを指示するためのボタンである。ビューアーボタンB3は、プレビュー画像に対応する医用画像に補正処理・画像処理を施して診断用の医用画像を生成することを指示するためのボタンである。
画像処理条件判定処理後、他の画像判定処理が実行されるか、又は、図3のステップS10に移行する。
【0083】
なお、上記のポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理を組み合わせて画像判定を行った場合、警告画面は一つの画面に統合されて表示されることが好ましい。即ち、各警告画面に表示すべき枠やマーク、画面等を一つの警告画面上に表示することが好ましい。
【0084】
図3のステップS10において、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されたか否かが判断される。入力部53により再撮影ボタンB2が押下されたと判断されると(ステップS10;YES)、処理対象となっているプレビュー画像及びこれに対応する医用画像が記憶部52から削除され(ステップS11)、処理はステップS2に戻る。一方、入力部53により再撮影ボタンB2が押下されず(ステップS10;NO)、ビューアーボタンB3が押下される等により診断用の医用画像の表示が指示されると(ステップS12;YES)、記憶部52に記憶されている医用画像が読み出されて補正処理及び画像処理が施されることにより診断用の医用画像が生成され(ステップS13)、表示部54に診断用の医用画像が表示される(ステップS14)。補正処理、画像処理はプレビュー画像と略同様の処理(略同様の画像処理条件での処理)が施される。そして、出力ボタンB1が押下されると(ステップS15;YES)、ネットワーク通信部56により診断用医用画像の画像データがステップS1において指定された撮影オーダー情報と対応付けてサーバー装置10に送信され(ステップS16)、医用画像生成処理は終了する。サーバー装置10においては、受信された医用画像の画像データが撮影オーダー情報と対応付けてデータベースに保存される。
【0085】
このように、撮影用コンソール5は、撮影された医用画像の縮小画像であるプレビュー画像を用いて、医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしている画像(診断に適した画像)であるか否かを判定し、満たしていないと判定した場合、その旨を警告する警告画面を表示部54に表示する。従って、診断用として不適切な不良画像が撮影された場合には撮影後直ちに警告されるので、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、不良画像が撮影された場合の警告が直ちに警告されるため、従来のように撮影技師が目視で確認する場合に比べて短時間ですむため、患者がポジショニングを維持する時間は短くてすむ。また、画像判定処理に係る時間にポジショニングを一旦解除する必要もないため、再撮影となった場合でもポジショニングや撮影条件の微調整をすればよく、撮影技師及び患者の負担を大幅に低減することができる。
また、プレビュー画像において確認すべき箇所を強調して表示したり、拡大表示したりすることで、小さいコンソールかつ解像度や画質の悪いプレビュー画像であっても、確認作業が容易になり、確認に要する時間や作業負担を大幅に低減することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態においては、本発明を撮影室Rm内に据え付けられた医用画像撮影システム100に適用した場合を例にとり説明したが、以下のように、移動が困難な患者用の医用画像撮影システム200に適用することもできる。
【0087】
医用画像撮影システム200は、図24に示すように、回診車7Pごと病室Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ9Pを、例えばベッドBに寝ている患者Hの身体の特定部位とベッドBとの間に差し込む等した状態で、ポータブルの放射線源3Pから放射線を照射して撮影を行い、医用画像を生成するシステムである。
【0088】
図24に示すように、医用画像撮影システム200は、ポータブルの放射線源3Pと、操作卓6Pとが回診車7Pに搭載されており、また、回診車7Pに設けられたアクセスポイントAP1により、持ち運び可能なコンソール5PとFPDカセッテ9Pが無線接続することができるようになっている。
【0089】
放射線源3Pは、操作卓6P、コンソール5P、FPD9Pは、それぞれ持運び可能な構成となっている点(例えば、小型化されている等)を除いては、上述の放射線源3、操作卓6、撮影用コンソール5、FPD9と基本的に同様の構成及び機能を有しており、これらの装置間で図3に示す医用画像生成処理を実行することが可能である。
【0090】
即ち、回診先において、まず、撮影技師等の操作者は、コンソール5Pの入力部を操作して撮影オーダー情報の一覧を表示する撮影オーダーリスト画面を表示部に表示させる。そして、入力部を操作することにより撮影オーダーリスト画面から撮影対象の撮影オーダー情報を指定する。
【0091】
次いで、操作者は、FPD9PをベッドBに寝ている患者Hの身体の特定部位とベッドBとの間に差し込み、放射線源3Pの位置や向きを調整して被写体のポジショニングを行う。また、操作卓6Pにより、撮影部位に基づき放射線照射条件を設定し、放射線照射指示を行う。放射線源3Pにおいては、操作卓6Pからの放射線照射指示が受信されると、設定された放射線照射条件で放射線照射が行われる。
【0092】
FPD9Pにおいては、放射線源3Pより放射線が照射されると、照射された放射線量に応じたエネルギーが各検出素子により電荷量として蓄積され、各検出素子に蓄積された電荷が読み取られることにより医用画像の画像データ(RAWデータ)が生成され、記憶部に記憶される。
【0093】
次いで、FPD9Pにおいては、制御部により、記憶部に記憶されている医用画像から縮小画像(プレビュー画像)が生成される。生成されたプレビュー画像の画像データは、無線通信によりコンソール5Pに送信される。続いて、記憶部に記憶されている医用画像の画像データが無線通信によりコンソール5Pに送信される。
【0094】
コンソール5Pにおいては、プレビュー画像及び医用画像の画像データが受信されると、受信されたプレビュー画像及び医用画像の画像データが記憶部に記憶される。そして、プレビュー画像に対して補正処理・画像処理が施される。補正処理及び画像処理の内容は上述したとおりである。
【0095】
次いで、コンソール5Pの表示部にプレビュー画像が表示された画像確認画面が表示される。また、プレビュー画像が解析され、撮影された医用画像の診断用の医用画像としての良否を判定する画像判定処理が実行される。画像判定処理としては、上述のように、ポジショニング判定処理、体動判定処理、線量判定処理、画像処理条件判定処理の何れかまたはこれらを組み合わせた処理が実行される。そして、診断用に適した医用画像ではないと判定された場合、その判定結果を示す警告画面がコンソール5Pの表示部に表示される。コンソール5Pに表示される警告画面は、図8、図19、図21、図23に表示したような画面であり、画像に欠損のある部分や体動のある部分を強調表示したり、拡大表示したりすることが可能である。
【0096】
ここで、持ち運び可能なコンソールは、持ち運びの簡便さのため画面が小さいので、従来、画像確認が据え置き型のコンソールと比較しても難しいというがあった。
これに対して、コンソール5Pは、撮影された医用画像の縮小画像であるプレビュー画像を用いて、医用画像が診断に適した画像であるか否かを判定し、診断に適した医用画像ではないと判定された場合、その判定結果を示す警告画面を表示部に表示する。従って、回診用の小さい画面であっても、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、不良画像が撮影された場合の警告が直ちに警告されるため、従来のように撮影技師が目視で確認する場合に比べて短時間ですむ。そのため、重症な患者がポジショニングを維持する時間を短縮することができる。また、画像判定処理の待ち時間が短くポジショニングを一旦解除する必要もないため、再撮影となった場合でもポジショニングや撮影条件の微調整をすればよく、撮影技師及び患者の負担を大幅に低減することができる。
また、プレビュー画像において確認すべき箇所を強調して表示したり、拡大表示したりすることで、小さいコンソールかつ解像度や画質の悪いプレビュー画像であっても、確認作業が容易になり、確認に要する時間や作業負担を大幅に低減することができる。
【0097】
コンソール5Pにおいて入力部から再撮影が指示されると、処理対象となっているプレビュー画像及びこれに対応する医用画像が記憶部52から削除される。なお、再撮影が指示されない場合は、コンソール5Pにおいて医用画像に補正処理や画像処理を施して表示し、サーバー装置10に送信してもよいし、コンソール5P等に医用画像の画像データを転送し、コンソール5P等において医用画像に補正処理や画像処理を施して表示し、サーバー装置10に送信することとしてもよい。
【0098】
以上説明したように、医用画像撮影システム100によれば、FPD9により人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成し、撮影用コンソール5に送信する。撮影用コンソール5の制御部51は、プレビュー画像を解析することにより、撮影された医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定し、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、表示部54に警告を表示させる。
従って、診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてない不良画像が撮影された場合には、撮影後直ちに警告されるので、撮影技師が診断用として不適切な不良画像を即座に認識することができ、不良画像の見逃しを防止することができる。また、患者がポジショニングを維持する時間が短くてすみ、患者の負担を低減することができる。
【0099】
具体的には、撮影された医用画像が、特定部位の欠損がない画像であるか否か、被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定することができる。
【0100】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施の形態においては、医用画像の縮小をFPD側において行うこととして説明したが、撮影用コンソール5側において行うこととしてもよい。
また、上記実施の形態においては、FPDを用いて医用画像を生成する医用画像撮影システムを例にとり説明したが、医用画像を生成する手段としてはこれに限定されず、例えば、CRを用いることとしてもよい。
【0101】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0102】
その他、医用画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0103】
100 医用画像撮影システム
1 ブッキー装置
2 ブッキー装置
3 放射線源
5 撮影用コンソール
51 制御部
52 記憶部
53 入力部
54 表示部
55 通信I/F
56 ネットワーク通信部
57 バス
6 操作卓
7 HIS/RIS
8 診断用コンソール
9 FPD
10 サーバー装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像を縮小してプレビュー画像を生成するプレビュー画像生成手段と、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える医用画像撮影システム。
【請求項2】
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項3】
前記プレビュー画像に画像処理を施す画像処理手段を有し、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像又は前記画像処理手段により画像処理されたプレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が、前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項4】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された画像処理装置であって、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項5】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された医用画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記プレビュー画像を表示する表示手段、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に前記表示手段に警告を表示させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像を生成する画像生成手段と、
前記医用画像を縮小してプレビュー画像を生成するプレビュー画像生成手段と、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たすか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える医用画像撮影システム。
【請求項2】
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項3】
前記プレビュー画像に画像処理を施す画像処理手段を有し、
前記画像判定手段は、前記プレビュー画像又は前記画像処理手段により画像処理されたプレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が、前記特定部位の欠損がない画像であるか否か、前記被写体に体動が存在しない画像であるか否か、撮影時の放射線照射量が予め定められた基準を超えている画像であるか否か、画像処理条件が適正な画像であるか否か、の少なくとも一つを判定する請求項1に記載の医用画像撮影システム。
【請求項4】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された画像処理装置であって、
前記プレビュー画像を表示する表示手段と、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に、前記表示手段に警告を表示させる制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項5】
人体の特定部位を被写体として撮影することにより静止画像である医用画像及びこの医用画像を縮小したプレビュー画像を生成する画像生成手段とデータ送受信可能に接続された医用画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記プレビュー画像を表示する表示手段、
前記プレビュー画像を解析することにより、前記医用画像が予め定められた基準を満たす画像であるか否かを判定する画像判定手段、
前記画像判定手段により前記医用画像が診断用の医用画像として予め定められた基準を満たしてないと判断された場合に前記表示手段に警告を表示させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−102851(P2013−102851A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247361(P2011−247361)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]