説明

医用画像生成システム

【課題】撮影時に鉛マーカの付け忘れや取り違えがあった場合に、医用画像上のマーカ画像の編集を可能とし、誤ったままのマーカ画像が含まれる医用画像を保存、出力することを防止する。
【解決手段】本発明に係るコントローラーによれば、医用画像を表示するための画像表示欄331aと、患者情報を表示するための患者情報表示欄331bと、撮影条件情報(左右の乳房の区別及び撮影方向)を表示するための撮影条件情報表示欄331cと、医用画像上のマーカ画像を編集するためのボタンB1〜B7と、表示された医用画像の確定を指示するための確定ボタンB8と、表示された医用画像のデータの破棄を指示するためのNGボタンB9が設けられた画像確認画面331が表示され、画像確認画面331からの操作に基づいて、医用画像上のマーカ画像が修正、付加又は削除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影して医用画像を生成する医用画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を用いて撮影された画像は、診断のための医用画像として広く用いられている。例えば、特許文献1には、放射線撮影により放射線画像が記録された輝尽性蛍光体シートを読取り部の所定位置にセットし、この輝尽性蛍光体シートに記録された放射線画像を読取り部により読み取って、得られた画像データを処理部に入力し、入力された撮影条件に基づいて当該画像データに画像処理を施すとともに撮影条件に対応して予めデータベースに格納されている出力形式情報に基づいて出力イメージを構成してフィルム出力する技術が開示されている。
【0003】
ところで、乳房の診断においては、左右の画像や異なる撮影方向による画像の比較読影により診断が行なわれるため、乳房撮影を行う場合、一人の患者に対して、左乳房の上下方向(CC(Cranio-Caudal)−L(左))、左乳房の斜位方向(MLO(Medio-Lateral Oblique)−L)、右乳房の上下方向(CC−R(右))、右乳房の斜位方向(MLO−R)と、異なる撮影条件で複数回撮影を行うことが一般的である。
【0004】
そのため、持ち運び可能な輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を用いて乳房撮影を行う場合には、実際に撮影を行った撮影条件と、画像データに対して入力する撮影条件との相違がないようにしなければならない。
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、画像データに対して処理部で入力された撮影条件に基づいて撮影部位及び撮影方向を判断しているため、実際に撮影を行った撮影条件と、画像データに対応付ける撮影条件との相違が発生しても、気付かない可能性がある。
【0006】
そこで、従来、撮影条件の取り違えを防止するため、乳房画像の撮影の際には、被写体とともに左右の区別や撮影方向を示す鉛マーカを撮影することが行われている。これにより、実際に撮影を行ったときの撮影条件や撮影した乳房の左右の区別等、撮影時の情報を付与するマーカ画像を画像上に表示することが可能となるので、好ましい。
【特許文献1】特開2002−158862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、鉛マーカを忘れて撮影を行ったり、誤った鉛マーカを撮影してしまったりした場合、従来、これを編集することはできなかった。
【0008】
本発明の課題は、撮影時に鉛マーカの付け忘れや取り違えがあった場合に、医用画像上のマーカ画像の編集を可能とし、誤ったままのマーカ画像が含まれる医用画像を保存、出力することを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
被写体とともに撮影時の情報を付与するためのマーカを撮影し、被写体画像及び撮影時の情報を示すマーカ画像を含む医用画像を生成する医用画像生成システムにおいて、
前記マーカ画像を編集するマーカ画像編集手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記マーカ画像編集手段は、前記マーカ画像の一部又は全部を修正することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記マーカ画像編集手段は、前記マーカ画像の一部又は全部を、前記医用画像上の被写体画像領域外及びマーカ画像領域外の濃度と同一の濃度に変換することにより、前記マーカ画像の一部又は全部を削除することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記マーカ画像編集手段は、前記医用画像にマーカ画像が含まれていない場合に、前記医用画像の被写体領域外に新たなマーカ画像を付加することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、
前記マーカ画像が編集された医用画像のデータを保存する保存手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、
前記編集された医用画像のデータと当該医用画像に関する撮影付帯情報とを対応付ける対応付け手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像生成システムは、輝尽性蛍光体プレートを有するカセッテを用いて撮影を行い、前記カセッテの輝尽性蛍光体プレートに記録された画像を読み取って医用画像を取得する読取装置と、前記読取装置により取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記マーカ画像編集手段を有することを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像生成システムは、カセッテ型のフラットパネルディテクタを用いて撮影を行い、前記フラットパネルディテクタにより取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置を備え、
前記制御装置は、前記マーカ画像編集手段を有することを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明において、
前記マーカ画像編集手段は、オペレータを識別するためのオペレータ識別情報を入力するためのオペレータ識別情報入力手段を有し、前記入力されたオペレータ識別情報が許可されたオペレータ識別情報であるときに、前記編集を可能とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、被写体とともに撮影時の情報を付与するためのマーカを撮影し、被写体画像及び撮影時の情報を示すマーカ画像を含む医用画像を生成する医用画像生成システムにおいて、マーカ画像を編集するマーカ画像編集手段を備えている。従って、マーカを忘れて撮影を行ったり、誤ったマーカを撮影してしまったりした場合に、医用画像に含まれるマーカ画像を編集することが可能となり、誤ったままのマーカ画像が含まれる医用画像が保存、出力することを防止することが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、誤ったマーカを撮影してしまった場合に、医用画像に含まれる、誤った情報を示すマーカ画像を正しい情報を示すマーカ画像に修正することが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、誤ったマーカを撮影してしまった場合に、医用画像に含まれる、誤った情報を示すマーカ画像を削除することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、マーカを置き忘れて撮影を行ってしまった場合に、記医用画像の被写体領域外に新たなマーカ画像を付加することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、編集後の正しい情報を示すマーカ画像を含む医用画像のデータを保存することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、編集後の正しい情報を示すマーカ画像を含む医用画像のデータと撮影付帯情報とを対応付けることが可能となる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体プレートを有するカセッテを用いて撮影を行い、カセッテの輝尽性蛍光体プレートに記録された画像を読み取って医用画像を取得する読取装置と、読取装置により取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置とを備えた医用画像生成システムにおける制御装置において、医用画像に含まれるマーカ画像の編集を行うことが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、カセッテ型のフラットパネルディテクタを用いて撮影を行い、フラットパネルディテクタにより取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置を備えた医用画像生成システムにおける制御装置において、医用画像に含まれるマーカ画像の編集を行うことが可能となる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、許可されたオペレータ以外の者がむやみにマーカ画像の編集を行うことを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図を参照して本実施の形態について説明する。
まず、構成について説明する。
【0028】
図1に、本実施の形態における医用画像生成システム100の全体構成を示す。図1に示すように、医用画像生成システム100は、撮影装置1、読取装置(以下、リーダーと称する)2、制御装置(以下、コントローラーと称する)3、プリンタ4、画像DB5aを有する画像サーバ5等を備えて構成され、リーダー2、コントローラー3、プリンタ4、画像サーバ5はネットワークNを介して、相互にデータが送受信可能なように接続されている。なお、各装置の台数は特に限定されない。また、ネットワークNには、ビューア、HIS(Hospital Information System;病院情報システム)/RIS(Radiology Information System;放射線情報科情報システム)等の外部装置やシステムが接続された構成としてもよい。
【0029】
ネットワークNは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット等の様々な回線形態を適用可能である。なお、病院等の医療機関内で許可されるのであれば、無線通信や赤外線通信であってもよいが、重要な患者情報を含むため、送受信される情報は暗号化することが好ましい。また、病院内の通信方式としては、一般的に、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格が用いられており、上述したネットワークN上の各装置間の通信では、DICOM MWM(Modality Worklist Management)やDICOM MPPS(Modality Performed Procedure Step)が用いられる。
【0030】
撮影装置1は、放射線源16を有し、被写体Mに放射線を照射して撮影する。カセッテ17は、放射線エネルギーを蓄積する輝尽性蛍光体シート18を備える放射線画像変換プレートが内蔵された持ち運び可能な放射線画像変換媒体であり、放射線源16からの照射放射線量に対する被写体Mの放射線透過率分布に従った放射線量を内設された輝尽性蛍光体シート18の輝尽性蛍光体層に蓄積し、この輝尽性蛍光体層に被写体Mの放射線画像情報を記録する。
【0031】
リーダー2は、装填されたカセッテ17に記録された被写体の放射線画像情報を読み取り、医用画像データを生成する画像生成装置であり、装填されたカセッテ17の輝尽性蛍光体シート18に励起光を照射し、これによりシートから発光される輝尽光を光電変換し、得られた画像信号をA/D変換して、医用画像データを生成する。
【0032】
コントローラー3は、本発明の制御装置であり、患者情報、撮影部位情報及び撮影方向情報等の撮影オーダ情報の入力、リーダー2により読み取られた医用画像データに基づく画像の表示、読み取られた医用画像データへの画像処理、読み取られた医用画像データに含まれるマーカ画像データの編集、読み取られた医用画像データと撮影オーダ情報を含む撮影付帯情報との対応付け等を行う。
【0033】
以下、図2を参照して、コントローラー3の内部構成について説明する。
図2に示すように、コントローラー3は、CPU31、操作部32、表示部33、RAM34、記憶部35、通信制御部36、バーコードリーダ37等を備えて構成され、各部はバス38により接続されている。
【0034】
CPU31は、記憶部35のプログラム記憶部351に記憶されているシステムプログラムを読み出し、RAM34内に形成されたワークエリアに展開し、該システムプログラムに従って各部を制御する。また、CPU31は、記憶部35のプログラム記憶部351に記憶されている乳房画像生成処理プログラムを始めとする各種処理プログラム、各種アプリケーションプログラムを読み出してワークエリアに展開し、後述する乳房画像生成処理を始めとする各種処理を実行する。
【0035】
操作部32は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号をCPU31に出力する。また、操作部32は、表示部33の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号をCPU31に出力する。
【0036】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT等のモニタにより構成され、CPU31から入力される表示信号の指示に従って、画像確認画面331(図6参照)を始めとする表示画面を表示する。
【0037】
RAM34は、CPU31により実行制御される各種処理において、記憶部35から読み出されたCPU31で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等の一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0038】
記憶部35は、HDD(Hard Disc Drive)や不揮発性の半導体メモリ等により構成されている。記憶部35は、図3に示すように、プログラム記憶部351、撮影付帯情報記憶部352、画像データ記憶部353、パラメータ記憶部354を有して構成されている。
【0039】
プログラム記憶部351は、CPU31で実行されるシステムプログラム、当該システムプログラムに対応する、乳房画像生成処理プログラム、各種画像処理プログラムを始めとする各種処理プログラム、各種アプリケーションプログラム等を記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0040】
撮影付帯情報記憶部352は、入力された撮影オーダ情報とその撮影オーダ情報に基づく撮影において使用するカセッテ17に付与された、カセッテ17を識別するためのカセッテIDとを対応付けて撮影付帯情報として記憶する。ここで、撮影オーダ情報とは、医用画像の撮影予約情報であり、少なくとも、患者情報、撮影条件(撮影部位、撮影方向、撮影部位が乳房の場合の左右の区別)情報が含まれる。
画像データ記憶部353は、リーダー2から入力された医用画像データをカセッテIDにより撮影付帯情報と対応付けて記憶する。
【0041】
パラメータ記憶部354は、撮影部位情報に対応付けて画像処理パラメータ(階調処理に用いる階調曲線を定義したルックアップテーブル、周波数処理の強調度等)を記憶する。
【0042】
通信制御部36は、LANアダプタやルータやTA(Terminal Adapter)等を備え、ネットワークNに接続された各装置との間の通信を制御する。
【0043】
バーコードリーダ37は、カセッテ17上に表示されたバーコードの表すカセッテIDを読み取ってCPU31に出力する。
【0044】
プリンタ4は、例えば、光熱銀塩方式のプリンタであり、コントローラー3又は画像サーバ5から出力された画像処理済みの医用画像データに基づいて、記録媒体(ここでは、フィルムとする)上に医用画像を可視像として再生したハードコピーを出力する。
画像サーバ5は、保存手段としての画像DB5aを備え、コントローラー3から出力された画像処理済みの医用画像データを撮影付帯情報と対応付けて画像DB5aに保存する。
【0045】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
図4に、コントローラー3のCPU31により実行される乳房画像生成処理を示す。本処理は、乳房画像を生成する際に、CPU31とプログラム記憶部351に記憶されている乳房画像生成処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理によって実現される。
【0046】
まず、表示部33に図示しない撮影オーダ情報入力用の画面が表示され、この画面から患者情報、撮影条件等の撮影オーダ情報が入力され、入力確定が指示されると(ステップS1)、入力された各撮影オーダ情報を識別するための識別情報(ここでは撮影ID)が発行され、撮影付帯情報記憶部352に、撮影IDと入力された撮影オーダ情報が対応付けて記憶される(ステップS2)。なお、ネットワークNを介してRIS/HIS等が接続されている場合は、RIS/HIS等から撮影オーダ情報を受信することにより入力してもよい。
【0047】
次いで、撮影に使用するカセッテ17に表示されたバーコードがバーコードリーダ37により読み取られてカセッテIDが入力されると、入力された撮影オーダ情報に読み取られたカセッテIDが対応付けられ、撮影付帯情報として撮影付帯情報記憶部352に記憶される(ステップS3)。図5に、撮影付帯情報記憶部352のデータ格納例を示す。
【0048】
ここで、撮影装置1において、ステップS3で記憶された撮影付帯情報に含まれる撮影条件及びカセッテIDに基づき、当該撮影付帯情報に含まれるカセッテIDを有するカセッテ17を用いて被写体M(ここでは乳房)が放射線撮影され、被写体Mを透過した放射量に基づく放射線画像情報がカセッテ17の輝尽性蛍光体シート18に潜像として記録される。撮影を行う際には、左右の乳房や撮影方向の取り違えをなくすため、乳房の左右の区別(L、R)や撮影方向(MLO、CC)等の撮影時の情報を付与するための鉛マーカを被写体Mとともに配置して撮影が行われ、輝尽性蛍光体シート18には、被写体及びマーカの画像がともに記録される。
【0049】
潜像が記録されたカセッテ17がリーダー2に装填されると、装填されたカセッテ17に表示されているバーコードの読み取り及びカセッテ17に記録された放射線画像の読み取りが行われる。リーダー2により読み取って得られた医用画像データ及びカセッテIDは通信制御部36を介してコントローラー3に送信される。
【0050】
通信制御部36を介してリーダー2から医用画像データ及びカセッテIDが入力されると、当該医用画像データがカセッテIDにより撮影付帯情報と対応付けられて画像データ記憶部353に記憶され(ステップS4)、記憶部35のプログラム記憶部351に記憶された各種画像処理プログラムが読み出され、当該医用画像データに画像処理が施される(ステップS5)。
【0051】
画像処理は、例えば、階調処理、周波数処理等、入力された医用画像データを診断に適した医用画像とするための処理であり、当該医用画像データの撮影付帯情報に含まれる撮影部位情報に対応する画像処理パラメータがパラメータ記憶部354から読み出され、読み出された画像処理パラメータに基づいて、画像処理が施される。
【0052】
また、医用画像データが解析され、被写体領域が認識され、被写体領域外の領域を所定の濃度、例えば、被写体領域における最小濃度値より高濃度の値となる値に変換する濃度補正処理が施される。ここで、鉛はX線吸収性が非常に高く、X線を透過させないので、鉛マーカを撮影して得られた画像情報(マーカ画像)は他の被写体領域外の濃度と比べて極端に低い濃度値となる。そこで、所定の濃度閾値を設け、濃度補正を行う際には、マーカ画像を残すため、被写体領域外のうちその濃度閾値以上の領域について、濃度補正が行われる。これにより、医用画像上の被写体領域以外の領域及びマーカ画像領域以外の領域の濃度が均一に補正される。
【0053】
被写体領域の認識は、例えば、医用画像データを解析し、被写体の輪郭線を抽出する等により行う。例えば、医用画像データの濃度データを適当な閾値を用いて2値化し、「0」と「1」の境界を追跡して輪郭線とし、この輪郭線及び撮影部位、撮影方向に応じて被写体領域を決定する。或いは、人体領域又は人体内部の所定の解剖学的構造に対応する領域の輪郭線抽出方法(日本乳癌検診学会誌,Vol.17,No.1,pp87-102,1998、特開昭63−240832号公報)を用いて被写体領域を決定するようにしてもよい。
【0054】
画像処理後、表示部33の表示画面上には、画像確認画面331(図6参照)が表示され、画像処理済みの医用画像及び撮影付帯情報が表示され(ステップS6)、マーカ画像編集処理が実行される(ステップS7)。上記ステップS6、7により、マーカ画像編集手段が実現される。
【0055】
図6に、画像確認画面331の一例を示す。図6に示すように、画像確認画面331には、リーダー2から読み取られ、画像処理された医用画像を表示するための画像表示欄331aと、当該医用画像に対応する撮影付帯情報のうち、患者情報を表示するための患者情報表示欄331bと、当該医用画像に対応する撮影付帯情報のうち、撮影方向及び左右の乳房の区別を示す撮影条件情報を表示するための撮影条件情報表示欄331cと、医用画像上のマーカ画像を編集するためのボタンB1〜B7と、表示された医用画像の確定を指示するための確定ボタンB8と、表示された医用画像のデータの破棄を指示するためのNGボタンB9が設けられている。
【0056】
図6の画像表示欄331aには、医用画像上に、被写体画像Oとともに撮影方向(MLO)を示すマーカ画像及び左右の区別(R)を示すマーカ画像の組み合わせから構成されるマーカ画像Aが形成されている例を示している。マーカ画像は、撮影時に撮影方向のみを示す鉛マーカを被写体Mとともに撮影した場合は、撮影方向を示すマーカ画像のみが医用画像上に形成され、左右の区別のみを示す鉛マーカを撮影した場合は、左右の区別を示すマーカ画像が医用画像上に形成される。
【0057】
図6に示すボタンB1〜B7のうち、ボタンB1は、医用画像上に「MLO」を示すマーカ画像を付加するためのボタンである。ボタンB2は、医用画像上に「CC」を示すマーカ画像を付加するためのボタンである。ボタンB3は、医用画像上に「L」を示すマーカ画像を付加するためのボタンである。ボタンB4は、医用画像上に「R」を示すマーカ画像を付加するためのボタンである。ボタンB5は、医用画像上に表示された「CC」を示すマーカ画像を、「MLO」を示すマーカ画像に修正するためのボタンである。ボタンB6は、医用画像上に表示された「MLO」を示すマーカ画像を、「CC」を示すマーカ画像に修正するためのボタンである。ボタンB7は、指定された領域内のマーカ画像を削除するためのボタンである。
【0058】
ここで、図6に示すように、画像確認画面331には、撮影方向を示すマーカ画像を修正するためのボタンB5、B6が設けられているが、左右の区別を示すマーカ画像を修正するためのボタンは設けられていない。撮影方向を示すマーカ画像の撮影方向の間違いは、被写体画像を目視することにより撮影技師が判別することが可能である。しかしながら、左右の区別を示すマーカ画像の間違いは、被写体画像を観察しても容易に判別することは不可能である。従って、撮影付帯情報が示す左右の区別とマーカ画像が示す左右の区別が一致していない場合、被写体画像からどちらの情報が正しいかを確認することができないため、本実施の形態では、左右の区別を示すマーカ画像の修正は不可能とし、単純に撮影付帯情報に合わせてマーカ画像を変更してしまうことを防止し、撮影技師等のオペレータに左右の取り違えの可能性があることを認識させる。
【0059】
図7に、図4のステップS7において、CPU31により実行されるマーカ画像編集処理を示す。本処理は、CPU31とプログラム記憶部351に記憶されているマーカ画像編集処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理によって実現される。
【0060】
まず、表示部33に表示された画像確認画面331上に、オペレータ識別情報(ここでは、オペレータIDとする)を入力するためのオペレータ識別情報入力手段としてのオペレータID入力画面(図示せず)がオーバーレイ表示される(ステップS101)。このオペレータID入力画面から入力されたオペレータIDが許可されたIDである場合は、処理はステップS104に移行する。入力されたオペレータIDが許可されたIDでない場合は(ステップS102;NO)、表示部33に編集不可である旨が表示され(ステップS103)、処理は図4のステップS8に移行する。
【0061】
ステップS104において、操作部32により、画像確認画面331の画像表示欄331aに表示された医用画像上の、マーカ画像を付加したい領域が指定され、ボタンB1〜B4の何れかが押下されることによりマーカ画像の付加が指示されると(ステップ104;YES)、押下されたボタンに応じたマーカ画像が医用画像上の指定された領域に付加される(ステップS105)。
【0062】
操作部32により、画像確認画面331の画像表示欄331aに表示された医用画像上の修正すべきマーカ画像領域が指定され、ボタンB5又はB6の何れかの押下により修正後のマーカ画像の文字が指定されてマーカ画像の修正が指示されると(ステップS106;YES)、医用画像上の指定された領域に存在するマーカ画像の濃度が被写体領域外の他の濃度と同一の濃度に変換された後、押下されたボタンに応じたマーカ画像が医用画像上の指定された領域に付加され、マーカ画像が修正される(ステップS107)。操作部32のマウス等の操作により付加又は修正されたマーカ画像の位置調整が入力されると、入力に応じてマーカ画像の位置が調整される(ステップS108)。
【0063】
一方、操作部32により、画像確認画面331の画像表示欄331aに表示された医用画像上の削除したいマーカ領域が指定され、ボタンB7が押下されることによりマーカ画像の削除が指示されると(ステップS109;YES)、医用画像上の指定された領域に存在するマーカ画像の濃度が被写体領域外と同一の濃度に変換されることによりマーカ画像が削除される(ステップS110)。
【0064】
画像確認画面331から確定ボタンB8が押下されて表示された医用画像の確定が指示されるか又はNGボタンB9が押下されて表示された医用画像の破棄が指示されるまで、操作部32の操作信号に基づいてステップS104〜S110の処理が実行される。確定ボタンB8又はNGボタンB9が押下され、表示された医用画像の確定又は破棄が指示されると(ステップS111;YES)、処理は図4のステップS8に移行する。
【0065】
図4のステップS8において、操作部32からの指示が医用画像の確定である場合は(ステップS8;YES)、対応付け手段としてのステップS9において、処理済みの医用画像データが撮影付帯情報と対応付けられ、通信制御部36を介して画像サーバ5に送信され、撮影付帯情報と対応付けて画像DB5aに保存され(ステップS9)、本処理は終了する。操作部32からの指示が医用画像の確定ではない場合、即ち、医用画像の破棄である場合は(ステップS8;NO)、画像データ記憶部353に記憶された当該医用画像のデータが消去され(ステップS10)、処理は図4のステップS3に戻る。
【0066】
画像DB5aに保存された医用画像データは、読み出してプリンタ4に送信することにより、正しくマーカ画像が表示された医用画像をフィルム上に記録して出力することが可能となる。なお、医用画像データをコントローラー3から直接プリンタ4に送信して医用画像をフィルム上に記録して出力するようにしてもよい。
【0067】
以上説明したように、コントローラー3によれば、被写体とともに撮影された、乳房の左右の区別や撮影方向を示す鉛マーカのマーカ画像を編集することが可能であるので、マーカの付け忘れや取り違え時に、誤ったままのマーカ画像で保存又は出力することを防止することが可能となる。
【0068】
なお、上記実施の形態における記述内容は、本発明に係る医用画像生成システム100の好適な一例でありこれに限定されるものではない。
【0069】
例えば、上記実施の形態においては、本発明を、カセッテを用いるCR装置を備えた医用画像生成システム100に適用した場合を例にとり説明したが、これに限定されず、例えば、図8に示すFPD(flat panel detector)等の放射線検出器を用いた医用画像生成システム200等においても適用することが可能である。
【0070】
図8に示すように、医用画像生成システム200は、撮影装置6、コントローラー3、プリンタ4、画像サーバ5等を備えて構成され、コントローラー3、プリンタ4及び画像サーバ5がネットワークNを介して、相互にデータが送受信可能なように接続されている。また、コントローラー3は、図2に示す構成に、クレードル3aと接続するためのI/Fを有しており、クレードル3aにカセッテ67が装填されることにより、カセッテ67とデータが送受信可能に接続される。なお、各装置の台数は特に限定されない。また、ネットワークNには、ビューア、HIS/RIS等の外部装置やシステムが接続された構成としてもよい。
【0071】
撮影装置6は、放射線源66を有し、被写体Mに放射線を照射して撮影する。カセッテ67は、被写体を透過した放射線像を検出するFPDを搭載したカセッテ型撮影装置であり、被写体Mを透過した放射線像を撮影して可視光に変換し、この可視光を光電変換して電気信号として検出し、検出された電気信号をデジタル変換して医用画像データを取得する。カセッテ67には、カセッテを識別するためのカセッテIDを示すバーコードが表示されている。
【0072】
上記医用画像生成システム200において、コントローラー3は、図4に示す乳房画像生成処理を実行し、クレードル3aを介してカセッテ67から医用画像データが入力され、バーコードリーダ37によりカセッテ67のカセッテIDが読み取られると、当該医用画像データがカセッテIDにより撮影付帯情報と対応付けられて画像データ記憶部353に記憶され、当該医用画像データに画像処理、マーカ編集処理が施され、処理済みの医用画像データが撮影付帯情報と対応付けられて画像サーバの画像DB5aに保存される。
【0073】
また、本発明は、上記カセッテやFPDを利用するものに限らず、立位/臥位専用タイプのシステム等の任意の医用画像生成システムに適用することができる。
【0074】
また、上記実施の形態において、画像確認画面331には、1枚ずつ医用画像としての乳房画像を表示させ、マーカ編集を行うこととしたが、診断時のように、左右の2枚の乳房画像を胸壁側を併せるようにして並べて表示し、各乳房画像についての撮影付帯情報を併せて表示して、マーカ編集を行うようにしてもよい。
【0075】
更に、上記実施の形態においては、鉛マーカを配置して乳房撮影を行って、乳房画像に付与されたマーカ画像を編集する場合を例にとり説明したが、マーカを配置して他の部位を撮影した場合に医用画像上に形成されたマーカ画像を編集する場合についても本発明を適用することが可能である。
【0076】
その他、医用画像生成システム100、200を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る医用画像生成システム100の全体構成を示す図である。
【図2】図1のコントローラー3の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図2の記憶部35の構成例を示す図である。
【図4】図2のCPU31により実行される乳房画像生成処理を示すフローチャートである。
【図5】図3の撮影付帯情報記憶部352のデータ格納例を示す図である。
【図6】画像確認画面331の一例を示す図である。
【図7】図2のCPU31により実行されるマーカ画像編集処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る医用画像生成システム200の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
100、200 医用画像生成システム
1 撮影装置
16 放射線源
17 カセッテ
18 輝尽性蛍光体シート
2 リーダー
3 コントローラー
31 CPU
32 操作部
33 表示部
34 RAM
35 記憶部
351 プログラム記憶部
352 撮影付帯情報記憶部
353 画像データ記憶部
354 パラメータ記憶部
36 通信制御部
37 バーコードリーダ
38 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体とともに撮影時の情報を付与するためのマーカを撮影し、被写体画像及び撮影時の情報を示すマーカ画像を含む医用画像を生成する医用画像生成システムにおいて、
前記マーカ画像を編集するマーカ画像編集手段を備えたことを特徴とする医用画像生成システム。
【請求項2】
前記マーカ画像編集手段は、前記マーカ画像の一部又は全部を修正することを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成システム。
【請求項3】
前記マーカ画像編集手段は、前記マーカ画像の一部又は全部を、前記医用画像上の被写体画像領域外及びマーカ画像領域外の濃度と同一の濃度に変換することにより、前記マーカ画像の一部又は全部を削除することを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像生成システム。
【請求項4】
前記マーカ画像編集手段は、前記医用画像にマーカ画像が含まれていない場合に、前記医用画像の被写体領域外に新たなマーカ画像を付加することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像生成システム。
【請求項5】
前記マーカ画像が編集された医用画像のデータを保存する保存手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の医用画像生成システム。
【請求項6】
前記編集された医用画像のデータと当該医用画像に関する撮影付帯情報とを対応付ける対応付け手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の医用画像生成システム。
【請求項7】
前記医用画像生成システムは、輝尽性蛍光体プレートを有するカセッテを用いて撮影を行い、前記カセッテの輝尽性蛍光体プレートに記録された画像を読み取って医用画像を取得する読取装置と、前記読取装置により取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記マーカ画像編集手段を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の医用画像生成システム。
【請求項8】
前記医用画像生成システムは、カセッテ型のフラットパネルディテクタを用いて撮影を行い、前記フラットパネルディテクタにより取得された医用画像に所定の処理を施す制御装置を備え、
前記制御装置は、前記マーカ画像編集手段を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の医用画像生成システム。
【請求項9】
前記マーカ画像編集手段は、オペレータを識別するためのオペレータ識別情報を入力するためのオペレータ識別情報入力手段を有し、前記入力されたオペレータ識別情報が許可されたオペレータ識別情報であるときに、前記編集を可能とすることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の医用画像生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−15053(P2006−15053A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197979(P2004−197979)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】