説明

医用画像表示装置および医用画像表示プログラム

【課題】心臓周辺に付着した脂肪を医用画像に表示させること。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像表示装置は、医用画像発生装置により発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する記憶部と、前記記憶された画像データに基づいて、前記心臓の運動機能に関する機能指標を計算する機能指標計算部と、前記記憶された画像データから前記心臓の冠状動脈の領域を抽出する冠状動脈抽出部と、前記記憶された画像データから前記心臓に付着した脂肪の領域を抽出する脂肪領域抽出部と、前記機能指標の空間分布と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域とを位置整合して合成したブルズアイ画像を発生する合成画像発生部と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ブルズアイ画像上に特定臓器および特定臓器に付着した物質の形態に関するブルズアイモデルを合成する機能を有する医用画像表示装置および医用画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の研究者は、心臓周囲の脂肪が心筋梗塞の危険度を上昇させることを指摘している。具体的には、複数の研究者は、心臓周囲の脂肪から産生される炎症性サイトカイン(炎症性蛋白質)に冠状動脈が持続的に暴露されると、アテローム性動脈硬化の進展(冠状動脈内におけるプラークの生成、冠状動脈の石灰化など)が加速することを指摘している。
【0003】
心臓周囲の脂肪は、医用画像表示装置により可視化される。具体的には、医用画像表示装置は、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)装置(以下X線CT装置と呼ぶ)、核磁気イメージング(Magnetic Resonance Imaging)装置(MRI装置と呼ぶ)、X線診断装置、および超音波診断装置などを用いて収集された3次元画像データ、またはマルチスライスの画像データなどに基づいて、2次元スライス画像、または断面変換(Multi−Plannar Reconstruction:以下MPRと呼ぶ)によるMPR画像、またはボリュームレンダリング(Volume Rendering:以下VRと呼ぶ)によるVR画像などの医用画像から脂肪領域を閾値判定により抽出することで、心臓周囲の脂肪を表示する。閾値は、例えばX線CT装置により収集された画像における各画素のCT値に対して、−140HU(Hounsfield Unit)乃至40HUの範囲のCT値である。医用画像表示装置は、抽出した脂肪領域を単色で表示する。
【0004】
上述の2次元スライス画像、MPR画像、VR画像における脂肪領域の単色表示は、脂肪の多く蓄積している箇所、心臓全体に対する脂肪組織の分布、冠状動脈に付着している脂肪組織など、脂肪が心臓全体にどれだけ蓄積されているかを定性的に評価する目安となる。
【0005】
しかしながら、冠状動脈の周囲にどの程度の厚みで脂肪が蓄積されているか、また脂肪組織の分布による動脈硬化への影響の違いなどを明瞭に示すことができないため、定量的に脂肪分布を表示できていない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−181041号公報
【特許文献2】特開2008−253753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
目的は、心臓周辺に付着した脂肪を医用画像に表示させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る医用画像観察装置は、医用画像発生装置により発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する記憶部と、前記記憶された画像データに基づいて、前記心臓の運動機能に関する機能指標を計算する機能指標計算部と、前記記憶された画像データから前記心臓の冠状動脈の領域を抽出する冠状動脈抽出部と、前記記憶された画像データから前記心臓に付着した脂肪の領域を抽出する脂肪領域抽出部と、前記機能指標の空間分布と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域とを位置整合して合成したブルズアイ画像を発生する合成画像発生部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る医用画像表示装置の構成の一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係り、心臓に付着した脂肪の分布を医用画像表示装置に表示させるための手順を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係り、機能指標の空間分布を極座標で表現するブルズアイマップと冠状動脈の形態を極座標で表現する第1のブルズアイモデルと脂肪の形態を極座標で表現する第2のブルズアイモデルとを、左心室および右心室ごとに示す図である。
【図4】第1の実施形態に係り、ブルズアイマップに第1のブルズアイモデルと第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を、2次元画像に機能指標と冠状動脈の領域と脂肪の領域と蓄積指標とを合成した合成画像とともに、表示される一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る医用画像表示装置の構成の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係り、発生されたブルズアイ画像における脂肪の分布パターンと対応表とに従って、発生されたブルズアイ画像を保存するための手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係り、ブルズアイ画像および合成画像の脂肪分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表の一例を、ブルズアイ画像の脂肪の分布パターンを決定するためのテンプレートの一例とともに示す図である。
【図8】第2の実施形態に係り、発生されたブルズアイ画像における脂肪の分布パターンと対応表とに従って発生されたブルズアイ画像の脂肪分布タイプを決定し、決定された脂肪分布タイプに対応するブルズアイ画像を、発生されたブルズアイ画像とともに表示するための手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、脂肪の蓄積厚の計算手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像表示装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、第1の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る医用画像表示装置の構成の一例を示す図である。
【0012】
医用画像表示装置1は、被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する記憶部3、マルチスライスまたは3次元の画像データに基づいて断面変換処理またはレンダリング処理により2次元画像を発生する2次元画像発生部5、断面変換処理により発生された被検体の心臓の拡張末期と収縮末期とにおける同じスライスの心筋領域の変動に基づいて、心筋の収縮機能に関する機能指標を計算する機能指標計算部7、計算された機能指標の空間分布を極座標で表現するブルズアイマップを発生するブルズアイマップ発生部9、断面変換処理により発生された複数のスライス画像から心臓の冠状動脈の領域を閾値判定により抽出し、マルチスライスまたは3次元の画像データから心臓に付着した脂肪の領域を閾値判定により抽出する領域抽出部11、抽出された冠状動脈に関する疾患の程度を表す疾患指標を計算する疾患指標計算部13、冠状動脈の領域に基づいた冠状動脈の形態と疾患指標の空間分布とを極座標で表現する第1のブルズアイモデルを発生する第1ブルズアイモデル発生部15、抽出された脂肪の領域における脂肪の蓄積厚を表す蓄積指標を計算する蓄積指標計算部17、抽出された脂肪の領域に基づいた脂肪の形態と蓄積指標の空間分布とを極座標で表現する第2のブルズアイモデルを発生する第2ブルズアイモデル発生部19、ブルズアイマップに第1のブルズアイモデルと第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を発生する合成画像発生部21、ブルズアイ画像を2次元画像とともに表示する表示部23、操作者の指示を入力する入力部25、ネットワークと入力部25とを接続するインターフェース部27、本医用画像表示装置1を制御する制御部29とを有する。なお、領域抽出部11は、断面変換処理により発生された複数のスライス画像から心臓の冠状動脈の領域を閾値判定により抽出する冠状動脈抽出部と、マルチスライスまたは3次元の画像データから心臓に付着した脂肪の領域を閾値判定により抽出する脂肪領域抽出部とを有していてもよい。また、合成画像発生部21は、機能指標の空間分布と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域とを位置整合して合成したブルズアイ画像を発生してもよい。
【0013】
以下、各構成要素について詳述する。
記憶部3は、図示していない医用画像発生装置で発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する。具体的には、記憶部3は、ネットワークおよび後述するインターフェース部27を介して受信された上記画像データを記憶する。以下の説明の便宜上、記憶部3に記憶されたマルチスライスまたは3次元の画像データは、被検体の心臓の拡張末期と収縮末期との2種類の画像データであるとする。なお、記憶部3は、図示していない医用画像保管装置から受信した画像データを記憶してもよい。記憶部3は、さらに、後述するブルズアイ画像、合成画像、本医用画像表示装置1の制御プログラム、ブルズアイマップとブルズアイモデルとのテンプレート、ブルズアイマップとブルズアイモデルとを発生させるためのプログラム、機能指標と疾患指標と蓄積指標それぞれを計算するためのプログラム、断面変換処理により所定の間隔で発生された複数のスライス画像と所定の間隔、複数のスライス画像から冠状動脈の領域を抽出するための閾値、マルチスライスまたは3次元の画像データから脂肪の領域を抽出するための閾値、後述するブルズアイマップ発生部9により発生されたブルズアイマップ、後述する第1ブルズアイモデル発生部15により発生された第1のブルズアイモデル、後述する第2のブルズアイモデル発生部19により発生された第2のブルズアイモデル、被検体の心臓の運動機能に応じた機能指標の色情報、冠状動脈の疾患の程度に応じた疾患指標の色情報、冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域と脂肪の蓄積厚とに応じた蓄積指標の色情報、ブルズアイマップに第1のブルズアイモデルと第2のブルズアイモデルとを合成するためのプログラム、発生された医用画像(例えば、後述するVR画像やMPR画像など)に機能指標と冠状動脈の領域と脂肪の領域と蓄積指標とを合成するためのプログラムなども記憶する。
【0014】
以下、説明の便宜上、マルチスライスまたは3次元の画像データは、X線CT装置により取得された画像データとする。なお、マルチスライスまたは3次元の画像データは、
MRI装置、X線診断装置、および超音波診断装置などで取得された画像データでもよい。
【0015】
2次元画像発生部5は、後述する入力部25を介した操作者の指示に従って、マルチスライスまたは3次元の画像データに基づいて、断面変換処理またはレンダリング処理により2次元画像を発生する。まず、断面変換処理について説明する。2次元画像発生部5における断面変換処理は、被検体の心臓の拡張末期及び収縮末期それぞれのマルチスライスまたは3次元の画像データから、心尖部から心基部まで心軸に沿って一定間隔で且つこの心軸に直交する複数のスライスにそれぞれ対応する複数のスライス画像(以下、短軸像と呼ぶ)を発生する。上記一定間隔は、予め記憶部3に記憶された所定の間隔である。後述の同心円の数に対応する短軸像のスライス枚数は、入力部25を介して操作者により設定される。なお、この所定の間隔は、入力部25を介して操作者により適宜変更可能である。また心軸は、左心室の心軸または右心室の心軸それぞれに対して決定されてもよい。なお、2次元画像発生部5における断面変換処理は、入力部25を介した操作者の指示に従って、被検体の心臓の任意の断面に関する2次元画像を発生してもよい。
【0016】
次にレンダリング処理について説明する。2次元画像発生部5におけるレンダリング処理は、マルチスライスまたは3次元の画像データに対して3次元画像処理を行うことで2次元画像を発生する。3次元画像処理としては、レイキャスティング法によるボリュームレンダリング(VR)、サーフェスレンダリング(Surface Rendering以下SRと呼ぶ)、最大値投影(Maximum Intensity Projection:以下MIPと呼ぶ)、および最小値投影(Minimum Intencity Prijection:以下MinIPと呼ぶ)等がある。VRには、陰影つきVR(Shaded VR)および並列VR(Parallel VR)等がある。2次元画像発生部5は、これらの処理を用いてレンダリング画像を発生する。以下、2次元画像発生部5のレンダリング処理により発生されるレンダリング画像は、レイキャスティング法により発生されたVR画像であるものとする。
【0017】
以下レイキャスティング法について簡単に説明する。3次元の画像データは、複数のボクセルデータから構成される。ボクセルは、輝度値をボクセルデータとして有している。2次元画像発生部5は、ボクセルそれぞれの輝度値を用いて、当該ボクセルそれぞれの不透明度を決定する。入力部25を介して操作者により視線方向が設定されると、同時に視線方向に垂直な投影面も設定される。続いて、2次元画像発生部5は、投影面内の画素それぞれを通り、視線方向に平行な複数のレイを決定する。2次元画像発生部5は、3次元の画像データをある一つのレイが貫くとき、隣接する8個のボクセルそれぞれの輝度値と不透明度とに基づいて、線形補間により計算された輝度値xと不透明度αとを有するレイ上のセルを決定する。2次元画像発生部5は、投影面内のk番目の画素を通るレイLk上のセルPkの輝度値xkと不透明度αkとに基づいて、輝度値の積算を行う。具体的には、投影面からレイに沿ったi番目のセルPk(i)を通過した積算輝度値Ikout(i)は、次の式から計算することができる。
Ikout(i)=Ikin(i)×(1−αk(i))+xk(i)×αk(i)
ここで、Ikin(i)は投影面からレイLkに沿ったi番目のセルPk(i)に入射する積算輝度値、αk(i)はセルPk(i)における不透明度、xk(i)はセルPk(i)における輝度値を表す。なお、積算輝度値Ikout(i)は、セルPk(i+1)に入射する積算輝度値Ikin(i+1)である。
【0018】
2次元画像発生部5は、ある一つのレイ上における複数のセルについて、輝度値の積算とともに不透明度の積算を行う。この積算は、レイが3次元の画像データ外に達した場合もしくは積算された不透明度が1に達した場合に、このレイについての計算を終了する。このとき、積算輝度値をこのレイに対応付けられた投影面の画素の値とする。同様にして、他のレイ上における複数のセルについて、輝度値の積算および不透明度の積算が行われる。2次元画像発生部5は、投影面内の画素全てについて積算輝度値を取得すると、投影面内における画素値(積算輝度値)に基づいて、VR画像を発生する。
【0019】
機能指標計算部7は、心臓の収縮機能を定量化する複数の機能指標を計算する。複数の機能指標は、拡張末期と収縮末期とにおける同じスライスどうしの心筋領域の変動に基づいて、心軸を中心として放射状に所定の角度で分割された分割区域ごとに計算される。なお、上記所定の角度または分割領域は、入力部25を介して操作者により設定されてもよい。心臓の収縮機能を定量化した機能指標は、例えば、拡張末期の左心室(右心室)の心軸から左心室(右心室)の心筋外壁までの距離から、収縮末期の左心室(右心室)の心軸から左心室(右心室)の心筋外壁までの距離を引き算して得られる容積半径変化(Wall Motion)、収縮末期の左心室(右心室)心筋の壁厚から拡張末期の左心室(右心室)心筋の壁厚を引き算した厚さの差を、拡張末期の左心室(右心室)心筋の壁厚で割り算(正規化)して得られる左心室(右心室)心筋壁厚変化率(Wall Thickening)、拡張末期の左心室(右心室)心筋内径の二乗から収縮末期の左心室(右心室)心筋内径の二乗を引き算して得られる容積変化を、収縮末期の左心室(右心室)心筋内径の二乗で割り算して得られる容積変化率(Rerional Ejection Fraction)等がある。これらの機能指標は、入力部25を介して操作者により選択される。
【0020】
機能指標計算部7は、計算された機能指標に、被検体の心臓の運動機能に応じた色情報を付加する。なお、機能指標計算部7は、計算された機能指標に、被検体の心臓の運動機能に応じた濃淡情報を付加してもよい。
【0021】
ブルズアイマップ発生部9は、機能指標計算部7で計算された機能指標の空間分布を、記憶部3に記憶されたブルズアイマップのテンプレート上にプロットする。このプロットにより、ブルズアイマップが発生される。具体的には、ブルズアイマップ発生部9は、機能指標に付加された色情報または濃淡情報を、ブルズアイマップのテンプレート上に書き込む。換言すると、ブルズアイマップとは、機能指標の空間分布が心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系に座標変換された画像である。
【0022】
領域抽出部11は、例えばCT値に対する閾値処理(階調処理)等により、複数の短軸像から冠状動脈の領域を、マルチスライスまたは3次元の画像データから冠状動脈に付着した脂肪領域(以下、冠動脈付着脂肪領域と呼ぶ)と冠状動脈に付着せずに心臓に付着した脂肪領域(以下、心臓付着脂肪領域と呼ぶ)とを抽出する。なお、領域抽出部11は、例えばCT値に対する閾値処理(階調処理)等により、複数の短軸像から冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とを、閾値処理(階調処理)により抽出してもよい。また、短軸像から冠状動脈を抽出するための閾値と、マルチスライスまたは3次元の画像データから冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域を抽出するための閾値とは、入力部25を介して操作者により設定可能である。なお、領域抽出部11は、断面変換処理により発生された複数のスライス画像から心臓の冠状動脈の領域を閾値判定により抽出する冠状動脈抽出部と、マルチスライスまたは3次元の画像データから心臓に付着した脂肪の領域を閾値判定により抽出する脂肪領域抽出部とを有していてもよい。
【0023】
疾患指標計算部13は、領域抽出部11で抽出された冠状動脈の領域に基づいて、冠状動脈のプラークの石灰化の程度、または粥状プラークの程度などに関する冠状動脈の異常部位を計算する。具体的には、疾患指標計算部13は、冠状動脈を含む画像データから画素値に基づいて血管の内壁面の位置を特定する。疾患指標計算部13は、特定された内壁面の位置と、特定された内壁面の位置から血管壁側に向かっての画素値の変化点の位置と、特定された内壁面の位置から血管壁側に向かっての画素値の連続性とに基づいて、冠状動脈の外壁面の位置を特定する。疾患指標計算部13は、特定された冠状動脈の内壁面の位置と特定された冠状動脈の外壁面の位置とに基づいて、冠状動脈のプラークの石灰化の程度、または粥状プラークの領域などに関する冠状動脈の疾患指標(例えば狭窄率など)を計算する。疾患指標計算部13は、計算された疾患指標に、冠状動脈の疾患の程度に応じた色情報を付加する。なお、疾患指標計算部13は、計算された疾患指標に、冠状動脈の疾患の程度に応じた濃淡情報を付加してもよい。
【0024】
第1ブルズアイモデル発生部15は、領域抽出部11で抽出された冠状動脈の領域に基づいた冠状動脈の形態と疾患指標の空間分布とを極座標で表現する第1のブルズアイモデルを発生する。具体的には、第1ブルズアイモデル発生部15は、マルチスライスまたは3次元の画像データから抽出された冠状動脈の領域の位置(心軸周りの角度)をスライスごとに計算する。第1ブルズアイモデル発生部15は、計算されたスライスごとの冠状動脈の領域の位置を、心尖部から心基部に向かっておよび心基部から心尖部に向かって、最も近い点どうしを直線で連結する。第1ブルズアイモデル発生部15は、連結された冠状動脈のモデルに対して、上記短軸像と同じ間隔で同じ枚数のスライスを設定する。第1ブルズアイモデル発生部15は、設定された複数のスライスそれぞれに対して、冠状動脈の領域の位置(心軸周りの角度)を計算する。第1ブルズアイモデル発生部15は、記憶部3に記憶されたブルズアイマップのテンプレートと同じ様式のブルズアイモデルのテンプレートのスライス番号に対応する同心円上の外縁上であって、計算された角度に対応する位置に、点(以下、動脈点と呼ぶ)をプロットする。
【0025】
第1ブルズアイモデル発生部15は、円中心(心尖部)側から外側(心基部)に向かって、各同心円を挟んで最も近い動脈点どうしを直線で連結する。第1ブルズアイモデル発生部15は、外側(心基部)から円中心(心尖部)側に向かって、各同心円を挟んで最も近い動脈点どうしを直線で連結する。このように両方向から動脈点を連結することにより冠状動脈の分岐にも対応した冠状動脈に関するブルズアイモデルが発生される。なお、この連結処理は、入力部25を介した操作者の指示により実行されてもよい。第1ブルズアイモデル発生部15は、冠状動脈の位置に付帯している疾患指標の空間分布を、上記冠状動脈の形態に関するブルズアイモデルを発生する処理と同じ処理で、冠状動脈に関するブルズアイモデルに重ねる。これにより、第1ブルズアイモデル発生部15は、第1のブルズアイモデルを発生する。加えて、第1のブルズアイモデル発生部15は、疾患指標に付加された色情報または濃淡情報を、冠状動脈の形態を表現したブルズアイマップ上に書き込む。なお、第1のブルズアイモデルは、冠状動脈の形態を表現したものであってもよい。換言すると、第1のブルズアイモデルとは、冠状動脈の形態と疾患指標の空間分布とが心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系に座標変換された画像である。
【0026】
蓄積指標計算部17は、領域抽出部11で抽出された冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とに基づいて、脂肪の蓄積指標を計算する。脂肪の蓄積指標とは、例えば、脂肪の厚み(蓄積厚)および脂肪の体積などである。以下、脂肪の蓄積指標として、脂肪の蓄積厚の計算過程の一例について説明する。図9は、脂肪の蓄積厚の計算手順の一例を示すフローチャートである。蓄積指標計算部17は、2次元画像発生部5で発生された複数の短軸像を読み込む(ステップS11)。蓄積指標計算部17は、複数の短軸像それぞれについて、以下の処理を実行する。蓄積指標計算部17は、心軸を中心として放射状に所定の角度で、短軸像を複数の分割区域に分割する(ステップS12)。蓄積指標計算部17は、複数の分割区域各々に対して、脂肪の蓄積厚を計算する。具体的には、蓄積指標計算部17は、分割区域内の冠動脈付着脂肪領域または心臓付着脂肪領域におけるピクセルの数をカウントする(ステップS13)。なお、脂肪の蓄積厚は、分割区域内の冠動脈付着脂肪領域または心臓付着脂肪領域における半径方向に沿った長さとしてもよい。全ての分割区域に対してカウントが終了するまで、ステップS11の処理からステップS13までの処理が繰り返される(ステップS14)。一つの短軸像に対して上記処理が終了すると、他の短軸像について、ステップS11の処理からステップS14までの処理が繰り返される。この繰り返しは、複数の短軸像全てにわたって実行される。
【0027】
以下説明を簡便にするため、蓄積指標計算部17における分割区域の数と機能指標計算部7における分割区域の数とは等しいものとする。なお、機能指標計算部7における分割区域の数と、蓄積指標計算部17における分割区域の数とは異なってもよい。また、蓄積指標計算部17における分割区域は、入力部25を介して操作者により設定されることも可能である。
【0028】
蓄積指標計算部17は、2次元画像発生部5で発生された表示画像に合成するための蓄積指標を計算する。例えば、2次元画像発生部5で発生された2次元画像がレンダリング処理により発生されたVR画像である場合、蓄積指標計算部17は、入力部25を介して設定された視線方向に平行な複数のレイに沿った蓄積厚を計算する。また、2次元画像発生部5で発生された2次元画像が断面変換処理によって発生された被検体の心臓を含む任意の断面画像である場合、蓄積指標計算部17は、この任意の断面画像における脂肪の蓄積厚を計算する。なお、脂肪の蓄積厚は、心臓及び冠状動脈の外壁に対する法線方向に沿ったボクセルの数としてもよい。
【0029】
蓄積指標計算部17は、予め設定された所定の厚みに対応する閾値に基づいて、冠動脈付着脂肪領域を少なくとも2種類に分類する。例えば、この2種類の分類は、冠状動脈の外部に対して厚く蓄積した脂肪の領域と、冠状動脈の外部に対して薄く蓄積した脂肪の領域との分類に対応する。冠動脈付着脂肪領域を多種類に分類することは、冠状動脈の外部に蓄積した脂肪の領域を、厚みに応じて分類することに対応する。また、蓄積指標計算部17は、所定の画素値を閾値として、上記所定の厚み以上の厚みを有する冠動脈付着脂肪領域に含まれるボクセル、またはピクセルの画素値を分類する。これにより、冠状動脈の外部に蓄積した脂肪の領域に含まれる脂肪の性質をボクセル、またはピクセルごとに表示させることが可能となる。なお、上記所定の厚みおよび所定の画素値は、入力部25を介して操作者により設定可能である。
【0030】
蓄積指標計算部17は、マルチスライスまたは3次元の画像データより抽出した冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域それぞれに対して、ボクセルの数をカウントする。冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域それぞれの脂肪の体積は、カウントされたボクセルの数により決定される。なお、蓄積指標計算部17は、脂肪の体積を、マルチスライスまたは3次元の画像データより抽出した冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域それぞれに対して、求積法などにより計算してもよい。蓄積指標計算部17は、計算された蓄積指標に、冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域と脂肪の蓄積厚とに応じた色情報を付加する。なお、蓄積指標計算部17は、計算された蓄積指標に、冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域と脂肪の蓄積厚に応じた濃淡情報を付加してもよい。
【0031】
第2ブルズアイモデル発生部19は、領域抽出部11で抽出された冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とに基づいたそれぞれの脂肪の形態と蓄積指標の空間分布とを極座標で表現する第2のブルズアイモデルを発生する。具体的には、第2ブルズアイモデル発生部19は、マルチスライスまたは3次元の画像データに対して、上記短軸像と同じ間隔で同じ枚数のスライスを設定する。第2ブルズアイモデル発生部19は、設定された複数のスライスそれぞれに対して、脂肪の領域の位置(心軸周りの角度)を計算する。第2ブルズアイモデル発生部19は、記憶部3に記憶されたブルズアイマップのテンプレートと同じ様式のブルズアイモデルのテンプレートのスライス番号に対応する同心円上の外縁上であって、計算された角度に対応する位置に、蓄積指標をプロットする。このプロットにより、脂肪の形態と蓄積指標の空間分布を極座標で表現した第2のブルズアイモデルが発生される。第2のブルズアイモデルは、冠動脈付着脂肪領域と脂肪の蓄積厚に応じた心臓付着脂肪領域と蓄積指標とを表現するモデルである。加えて、第2のブルズアイモデル発生部19は、蓄積指標に付加された色情報または濃淡情報を、第2のブルズアイモデル上に書き込む。なお、第2ブルズアイモデル発生部19は、脂肪の蓄積厚に応じた冠動脈付着脂肪領域の分類と関係なく、被検体の心臓及び冠状動脈に付着したあらゆる脂肪の領域を表現することも可能である。換言すると、第2のブルズアイモデルとは、上記脂肪の形態と蓄積指標の空間分布とが心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系に座標変換された画像である。
【0032】
合成画像発生部21は、ブルズアイマップ発生部9で発生されたブルズアイマップに、第1ブルズアイモデル発生部15で発生された第1のブルズアイモデルと第2ブルズアイモデル発生部19で発生された第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を発生する。合成画像発生部21は、入力部25を介した操作者の指示により2次元画像発生部5で発生された被検体の心臓を含む断面変換画像(MPR画像)、または入力部25を介した操作者の指示により2次元画像発生部5で発生されたVR画像に、機能指標計算部7で計算された機能指標と、疾患指標計算部13で計算された疾患指標と、領域抽出部11で抽出された冠動脈の領域、冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域と、蓄積指標計算部17で計算された蓄積指標とを合成する。合成画像発生部21は、被検体の心臓の運動機能に応じた機能指標の色情報、冠状動脈の疾患の程度に応じた疾患指標の色情報、および冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域と脂肪の蓄積厚とに応じた蓄積指標の色情報を、ブルズアイ画像および合成画像に付加する。なお、合成画像発生部21は、機能指標の空間分布と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域とを位置整合して合成したブルズアイ画像を発生してもよい。
【0033】
表示部23は、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像を、合成画像発生部21で発生された合成画像と蓄積指標計算部17で計算された脂肪の体積とともに表示する。
【0034】
入力部25は、後述するインターフェース部27に接続され操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本医用画像表示装置1に取り込む。入力部25は、図示しないが、各種設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部25は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を制御部29に出力する。なお、入力部25は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部25は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部29に出力する。
【0035】
インターフェース部27は、入力部25、ネットワーク、図示していない外部記憶装置、図示していない医用画像発生装置、図示していない医用画像保管装置等に関するインターフェースである。本医用画像表示装置1によって表示されたブルズアイ画像および合成画像等は、インターフェース部27によって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0036】
制御部29は、本医用画像表示装置1の中枢として機能する。制御部29は、図示しないCPUと記憶回路とを備える。制御部29は、インターフェース部27を介して入力部25から送られてくる操作者の指示や画像処理の条件などの情報を一時的に記憶した後、これらの情報に基づいて表示の制御などを行う。制御部29は、ブルズアイマップとブルズアイモデルとを発生させるためのプログラム、断面変換処理やレンダリング処理に関するプログラム、機能指標と疾患指標と蓄積指標それぞれを計算するためのプログラム、合成画像の発生・表示等を実行するための制御プログラムを、記憶部3から読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・処理等を実行する。
【0037】
(脂肪領域表示機能)
脂肪領域表示機能とは、領域抽出部11で抽出された冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とに含まれる脂肪の蓄積厚に関する蓄積指標を、脂肪の形態とともに表示部23に表示させる機能である。以下、脂肪領域表示機能に従う処理(以下脂肪領域表示処理と呼ぶ)を説明する。
【0038】
図2は、脂肪領域表示処理の手順を示すフローチャートである。
被検体の心臓を含む領域に関するマルチスライスまたは3次元の画像データが、記憶部3から読み出される(ステップSa1)。被検体の心臓の心軸と、被検体の心臓の心尖部から心基部までの心軸に沿った一定間隔とが、入力部25を介して操作者により決定される。読み出された画像データに基づいて、断面変換処理により、心軸に直交する複数のスライスに関する複数の短軸像が、心尖部から心基部まで一定間隔で発生される。複数の短軸像は、被検体の心臓の拡張末期と収縮末期それぞれについて発生される。拡張末期における複数の短軸像と収縮末期における複数の短軸像とにおける同じスライスどうしの心筋領域の変動に基づいて、心臓の運動機能に関する機能指標が、心軸周りの多方向について計算される(ステップSa2)。心軸周りの多方向は、心軸を中心として放射状に所定の角度で分割された分割区域の数に一致する複数の放射方向である。所定の角度または分割領域の数は、入力部25を介して操作者により予め設定される。心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系(記憶部3に記憶されたブルズアイマップのテンプレート)に、計算された機能指標をプロットさせることにより、ブルズアイマップが発生される(ステップSa3)。具体的には、機能指標に付加された色情報または濃淡情報が、ブルズアイマップのテンプレートに書き込まれる。
【0039】
冠状動脈の領域と冠動脈脂肪付着領域と心臓付着脂肪領域とが、閾値処理(階調処理)により、読み出された画像データから抽出される(ステップSa4)。抽出された冠状動脈の領域に基づいて、冠状動脈に関する疾患指標が計算される(ステップSa5)。計算された疾患指標の空間分布と抽出された冠状動脈の形態とが、上記心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系(記憶部3に記憶されたブルズアイモデルのテンプレート)に、プロットされることにより、第1のブルズアイマモデルが発生される(ステップSa6)。具体的には、ブルズアイモデルのテンプレートにプロットされた冠状動脈上に、疾患指標に付加された色情報または濃淡情報が書き込まれる。
【0040】
抽出された冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とにおける脂肪の蓄積厚を示す蓄積指標と脂肪の体積とが計算される(ステップSa7)。計算された蓄積指標の空間分布と抽出された冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域との形態とが、上記心軸周りの角度と心尖部または心基部からの距離(スライス番号)とで定義される極座標系(記憶部3に記憶されたブルズアイモデルのテンプレート)に、プロットされることにより、第2のブルズアイマモデルが発生される(ステップSa8)。具体的には、ブルズアイモデルのテンプレートにプロットされた冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域上に、蓄積指標に付加された色情報または濃淡情報が書き込まれる。
【0041】
図3は、機能指標の空間分布を極座標で表現するブルズアイマップと冠状動脈の形態を極座標で表現する第1のブルズアイモデルと脂肪の形態を極座標で表現する第2のブルズアイモデルとを、左心室および右心室ごとに示す図である。図3におけるブルズアイマップは、心筋の動きに関するブルズアイマップと、収縮率に関するブルズアイマップとが示されている。
【0042】
第1のブルズアイモデルと第2のブルズアイモデルとが、心軸周りの角度を合わせてブルズアイマップに合成され、ブルズアイ画像が発生される(ステップSa9)。上記被検体の心臓を含むレンダリング画像または断面画像が、読み出された画像データに基づいて発生される(ステップSa10)。なお、ステップSa10は、ステップSa1以降であれば、どのステップで発生されてもよい。また、ステップSa10で発生される画像は、上記短軸像であってもよい。機能指標と冠状動脈の領域と冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域と蓄積指標とが、ステップSa10で発生されたレンダリング画像または断面画像に合成され、合成画像が発生される(ステップSa11)。ブルズアイ画像が、合成画像と脂肪の体積とともに表示部23に表示される(ステップSa12)。
【0043】
図4は、ブルズアイマップに第1のブルズアイモデルと第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を、合成画像と脂肪の体積とともに、表示する一例を示す図である。図4のAは、冠状動脈を示している。図4のBは、冠動脈脂肪付着領域を示している。図4のCは、冠動脈付着脂肪領域の体積を示している。図4のDは、心臓付着脂肪領域を示している。冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とにおける濃淡は、脂肪の蓄積厚を示している。機能指標を極座標で表現したブルズアイマップにおける濃淡は、心筋の動きの大きさを示している。図4のEは、冠状動脈の疾患の程度を示す疾患指標を表現した一例である。
【0044】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本医用画像表示装置によれば、機能指標の分布を極座標で表現するブルズアイマップに、冠状動脈の形態と疾患指標の分布とを極座標で表現する第1のブルズアイモデルと、冠状動脈に付着した脂肪の形態と冠状動脈に付着せずに心臓に付着した脂肪の形態と脂肪の蓄積厚の分布とを極座標で表現した第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を発生する。さらに、VR画像または断面画像に、機能指標と冠状動脈の形態と疾患指標と冠状動脈に付着した脂肪の形態と冠状動脈に付着せずに心臓に付着した脂肪の形態と脂肪の蓄積厚の分布とを合成することにより合成画像を発生する。ブルズアイ画像は、合成画像と冠動脈付着脂肪領域および心臓付着脂肪領域それぞれの脂肪の体積とともに表示される。これにより、冠状動脈の周囲に蓄積された脂肪の厚みを定量的にかつ明瞭に表示させることができる。読影医等は、本医用画像表示装置による表示で、冠状動脈を取り囲む脂肪の厚さを容易に把握できるようになる。また、読影医等は、冠動脈付着脂肪領域と冠状動脈内の石灰化または粥状プラークとの位置関係を容易に把握できるようになる。この結果、読影医等は、将来的なプラークの生成、プラークの成長の程度などを予測できるようになる。また、本医用画像表示装置による表示は、心筋梗塞の治療方針および心筋梗塞の治療の要否判定などの基準となる有用な情報を、読影医等に提供できる。
【0045】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して、第2の実施形態を説明する。
第1の実施形態との相違は、第1の実施形態で発生されたブルズアイ画像における脂肪の分布パターンを決定し、決定された脂肪の分布パターンと予め記憶部3に記憶された脂肪分布パターンと脂肪の分布パターンのタイプ(以下脂肪分布タイプと呼ぶ)との対応表とに基づいて、発生されたブルズアイ画像と脂肪分布タイプとを関連付けて記憶部3に記憶させる点である。
【0046】
図5は、第2の実施形態に係る医用画像表示装置の構成を示している。
以下、第2の実施形態と第1の実施形態との構成要素において、異なる動作を行う構成要素および脂肪分布パターン決定部31について説明する。
【0047】
記憶部3は、ブルズアイ画像における脂肪の分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表を記憶する。なお、記憶部3は、第2のブルズアイモデルにおける脂肪の分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表、または合成画像における脂肪の分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表をさらに記憶してもよい。なお、前記脂肪分布タイプは、症例であってもよい。
【0048】
脂肪分布パターン決定部31は、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像に基づいて、脂肪の分布パターンを決定する。なお、脂肪分布パターン決定部31は、第2ブルズアイモデル発生部19で発生された第2のブルズアイマップに基づいて、脂肪の分布パターンを決定してもよい。また、脂肪分布パターン決定部31は、合成画像発生部21で発生された合成画像に基づいて、脂肪の分布パターンを決定してもよい。
【0049】
制御部29は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪の分布パターンと、記憶部3に記憶された対応表とに基づいて、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像における脂肪分布タイプを決定する。制御部29は、決定されたブルズアイ画像における脂肪分布タイプとこのブルズアイ画像とを関連付けて、決定されたブルズアイ画像を脂肪の体積とともに記憶部3に記憶させる。なお、制御部29は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪分布パターンと、記憶部3に記憶された対応表とに基づいて、合成画像発生部21で発生された第2のブルズアイモデルにおける脂肪分布タイプを決定してもよい。制御部29は、決定された第2のブルズアイモデルにおける脂肪分布タイプとこの第2のブルズアイモデルとを関連付けて、第2のブルズアイモデルを記憶部3に記憶させてもよい。また、制御部29は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪の分布パターンと、記憶部3に記憶された対応表とに基づいて、合成画像発生部21で発生された合成画像における脂肪分布タイプを決定してもよい。制御部29は、決定された合成画像における脂肪分布タイプとこの合成画像とを関連付けて、合成画像を記憶部3に記憶させてもよい。
【0050】
(ブルズアイ画像関連記憶機能)
ブルズアイ画像関連記憶機能とは、脂肪分布パターン決定部31で決定されたブルズアイ画像の脂肪の分布パターンと記憶部3に記憶された対応表とに基づいて、脂肪分布タイプを決定し、発生されたブルズアイ画像と脂肪分布タイプとを関連付けて記憶部3に記憶させる機能である。
【0051】
以下、ブルズアイ画像関連記憶機能に従う処理(以下ブルズアイ画像関連記憶処理と呼ぶ)を説明する。
【0052】
図6は、ブルズアイ画像関連記憶処理の手順を示すフローチャートである。
合成画像発生部19で発生されたブルズアイ画像における蓄積指標と冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とに基づいて、このブルズアイ画像の脂肪の分布パターンが決定される(ステップSb1)。記憶部3から脂肪の分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表が読み出される(ステップSb2)。読み出された対応表と決定された脂肪分布パターンとに基づいて、発生されたブルズアイ画像と脂肪分布タイプとを関連付けて、このブルズアイ画像が記憶部3に記憶される(ステップSb3)。
【0053】
図7は、ブルズアイ画像および合成画像の脂肪分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表の一例を、ブルズアイ画像の脂肪の分布パターンを決定するためのテンプレートの一例とともに示す図である。ブルズアイ画像の脂肪の分布パターンを決定するためのテンプレートにおける1乃至16の数字は、ブルズアイ画像または第2のブルズアイモデルにおける脂肪が分布している領域を特定するための数字である。ブルズアイ画像または第2のブルズアイモデル上の脂肪がどの数字に対応する領域に分布しているかによって、脂肪の分布パターンが決定される。
【0054】
(第1の変形例)
第2の実施形態との相違は、脂肪分布タイプそれぞれに対応したブルズアイ画像をさらに記憶し、第2に実施形態で決定された脂肪の分布パターンと対応表とに基づいて、記憶部3から読み出されたブルズアイ画像を、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像とともに表示する点である。
【0055】
第1の変形例に係る医用画像表示装置の構成は、第2の実施形態と同じである。
以下、第1の変形例と第2の実施形態との構成要素において、異なる動作を行う構成要素ついて説明する。
【0056】
記憶部3は、対応表における脂肪分布タイプそれぞれに対応したブルズアイ画像とこのブルズアイ画像の所見情報とを記憶する。なお、記憶部3は、対応表における脂肪分布タイプに対応した第2のブルズアイモデル、合成画像、第2のブルズアイモデルの所見情報、および合成画像の所見情報を記憶してもよい。なお、上記所見情報は、症例であってもよい。
【0057】
制御部29は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪の分布パターンと、記憶部3に記憶された対応表とに基づいて、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像における脂肪分布タイプを決定する。制御部29は、脂肪分布タイプに対応したブルズアイ画像およびこのブルズアイ画像の所見情報を、記憶部3から読み出す。なお、制御部29は、脂肪分布タイプに対応した第2のブルズアイモデル、合成画像、第2のブルズアイモデルの所見情報、および合成画像の所見情報を,記憶部3から読み出してもよい。
【0058】
合成画像発生部21は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪の分布パターンを有するブルズアイ画像と、記憶部3から読み出されたブルズアイ画像およびこのブルズアイ画像の所見情報とを合成した画像を発生する。なお、合成画像発生部21は、脂肪分布パターン決定部31で決定された脂肪の分布パターンを有するブルズアイ画像と、記憶部3から読み出された第2のブルズアイモデル、合成画像、第2のブルズアイマップの所見情報、および合成画像の所見情報とを合成した画像を発生してもよい。
【0059】
表示部23は、合成画像発生部21で発生された画像を表示する。
【0060】
(ブルズアイ画像比較表示機能)
ブルズアイ画像比較表示機能とは、第2に実施形態で決定された脂肪の分布パターンと対応表とに基づいて、記憶部3から読み出されたブルズアイ画像を、合成画像発生部21で発生されたブルズアイ画像とともに表示する機能である。
【0061】
以下、ブルズアイ画像比較表示機能に従う処理(以下ブルズアイ画像比較表示処理と呼ぶ)を説明する。
【0062】
図8は、ブルズアイ画像比較表示処理の手順を示すフローチャートである。
合成画像発生部19で発生されたブルズアイ画像における蓄積指標と冠動脈付着脂肪領域と心臓付着脂肪領域とに基づいて、この発生されたブルズアイ画像の脂肪の分布パターンが決定される(ステップSc1)。記憶部3から脂肪の分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表が読み出される(ステップSc2)。決定された脂肪分布パターンと読み出された対応表とに基づいて、発生されたブルズアイ画像の脂肪分布タイプが決定される(ステップSc3)。決定された脂肪分布タイプに対応するブルズアイ画像が、記憶部3から読み出される(ステップSc4)。読み出されたブルズアイ画像は、合成画像発生部19で発生されたブルズアイ画像とともに表示部23で表示される(ステップSc5)。
【0063】
第2の実施形態及び第1の変形例の効果をまとめると以下の通りである。
本医用画像表示装置によれば、合成画像発生部で発生されたブルズアイ画像における脂肪の分布パターンを決定し、決定された脂肪の分布パターンと予め記憶部に記憶された脂肪分布パターンと脂肪分布タイプとの対応表とに基づいて、発生されたブルズアイ画像と脂肪分布タイプとを関連付けて記憶部に記憶する。発生されたブルズアイ画像が、脂肪の分布パターンに従って複数の脂肪分布タイプに分類され、記憶部に記憶されることで、ブルズアイ画像のデータベース化が可能となる。
【0064】
加えて、本医用画像表示装置によれば、脂肪分布タイプそれぞれに対応したブルズアイ画像をさらに記憶し、脂肪分布パターン決定部で決定された脂肪の分布パターンと上記対応表とに基づいて、記憶部から読み出されたブルズアイ画像を、合成画像発生部で発生されたブルズアイ画像とともに表示する。これにより、読影医等は、治療方針および治療の要否判定の基準としての過去のブルズアイ画像と、新たに発生されたブルズアイ画像とを比較することができ、検査効率などが向上する。
【0065】
本医用画像表示装置による表示は、心筋梗塞の治療方針および心筋梗塞の治療の要否判定などの基準となる有用な情報を、読影医等に提供できる。また、読影医等は、本医用画像表示装置による表示画像を観察することで、心臓および冠動脈に付着した脂肪の状況を定量的に把握することができる。なお、各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…医用画像表示装置、3…記憶部、5…2次元画像発生部、7…機能指標計算部、9…ブルズアイマップ発生部、11…領域抽出部、13…疾患指標計算部、15…第1ブルズアイモデル発生部、17…蓄積指標計算部、19…第2ブルズアイモデル発生部、21…合成画像発生部、23…表示部、25…入力部、27…インターフェース部、29…制御部、31…脂肪分布パターン決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像発生装置により発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶された画像データに基づいて、前記心臓の運動機能に関する機能指標を計算する機能指標計算部と、
前記記憶された画像データから前記心臓の冠状動脈の領域を抽出する冠状動脈抽出部と、
前記記憶された画像データから前記心臓に付着した脂肪の領域を抽出する脂肪領域抽出部と、
前記機能指標の空間分布と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域とを位置整合して合成したブルズアイ画像を発生する合成画像発生部と、
を具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
医用画像発生装置により発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶された画像データに基づいて、前記心臓の運動機能に関する機能指標を計算する機能指標計算部と、
前記計算された機能指標の空間分布を極座標で表現するブルズアイマップを発生するブルズアイマップ発生部と、
前記記憶された画像データから前記心臓の冠状動脈の領域と前記心臓に付着した脂肪の領域とをそれぞれ抽出する領域抽出部と、
前記抽出された冠状動脈の領域に基づいて、前記冠状動脈の形態を極座標で表現する第1のブルズアイモデルを発生する第1ブルズアイモデル発生部と、
前記抽出された脂肪の領域における脂肪の蓄積厚を表す蓄積指標を計算する蓄積指標計算部と、
前記計算された蓄積指標の空間分布と前記脂肪の領域に基づいた脂肪の形態との少なくとも一方を極座標で表現する第2のブルズアイモデルを発生する第2ブルズアイモデル発生部と、
前記ブルズアイマップに前記第1のブルズアイモデルと前記第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を発生する合成画像発生部と、
前記発生されたブルズアイ画像を表示する表示部と、
を具備することを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項3】
前記記憶されたマルチスライスまたは3次元の画像データに基づいて、2次元画像を発生する2次元画像発生部とをさらに具備し、
前記合成画像発生部は、前記発生された2次元画像に、前記機能指標と前記冠状動脈の領域と前記脂肪の領域と前記蓄積指標とのうち少なくとも一つを合成した合成画像を発生し、
前記表示部は、前記合成画像を前記ブルズアイ画像とともに表示すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記蓄積指標計算部は、前記計算された蓄積指標に、前記蓄積厚に応じた色情報を付加すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記機能指標計算部は、前記計算された機能指標に、前記運動機能に応じた色情報を付加すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記抽出された冠状動脈に関する疾患の程度を表す疾患指標を計算する疾患指標計算部とをさらに具備し、
前記第1ブルズアイモデル発生部は、前記第1のブルズアイモデルに、前記計算された疾患指標の空間分布を前記極座標でさらに付加すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
前記疾患指標計算部は、前記計算された疾患指標に、前記疾患の程度に応じた色情報を付加すること、
を特徴とする請求項6記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
前記蓄積指標計算部は、前記抽出された脂肪の領域に基づいて、脂肪の体積を計算し、
前記表示部は、前記計算された脂肪の体積を、前記ブルズアイ画像とともに表示すること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項9】
前記発生されたブルズアイ画像における前記脂肪の領域と前記蓄積指標とに基づいて、脂肪の分布パターンを決定する脂肪分布パターン決定部とをさらに具備し、
前記記憶部は、前記脂肪の分布パターンと前記脂肪の分布パターンのタイプとの対応表とをさらに記憶し、
前記発生されたブルズアイ画像は、前記対応表と前記決定された脂肪の分布パターンとに基づいて、前記ブルズアイ画像における脂肪の分布パターンのタイプが決定され、前記決定されたタイプに関連付けて前記記憶部に記憶されること、
を特徴とする請求項2記載の医用画像表示装置。
【請求項10】
前記記憶部は、前記脂肪の分布パターンのタイプそれぞれに対応したブルズアイ画像をさらに記憶し、
前記表示部は、前記決定された脂肪の分布パターンと前記対応表とに基づいて前記記憶部から読み出されたブルズアイ画像を、前記合成画像発生部で発生されたブルズアイ画像とともに表示すること、
を特徴とする請求項9記載の医用画像表示装置。
【請求項11】
コンピュータに、
医用画像発生装置により発生された被検体の心臓を含むマルチスライスまたは3次元の画像データを記憶させる記憶機能と、
前記記憶された画像データに基づいて、前記心臓の運動機能に関する機能指標を計算させる機能指標計算機能と、
前記計算された機能指標の空間分布を極座標で表現するブルズアイマップを発生させるブルズアイマップ発生機能と、
前記記憶された画像データから前記心臓の冠状動脈の領域と前記心臓に付着した脂肪の領域とをそれぞれ抽出させる領域抽出機能と、
前記抽出された冠状動脈の領域に基づいて、前記冠状動脈の形態を極座標で表現する第1のブルズアイモデルを発生させる第1ブルズアイモデル発生機能と、
前記抽出された脂肪の領域における脂肪の蓄積厚を表す蓄積指標を計算させる蓄積指標計算機能と、
前記計算された蓄積指標の空間分布と前記脂肪の領域に基づいた脂肪の形態との少なくとも一方を極座標で表現する第2のブルズアイモデルを発生させる第2ブルズアイモデル発生機能と、
前記ブルズアイマップに前記第1のブルズアイモデルと前記第2のブルズアイモデルとを合成したブルズアイ画像を発生させる合成画像発生機能と、
前記発生されたブルズアイ画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする医用画像表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81196(P2012−81196A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231826(P2010−231826)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】