説明

医用画像診断支援システム

【課題】医用画像に関する医療情報を自動出力するとともに、医用画像の読影に不慣れな者が、より理解しやすい医療情報を提供する。
【解決手段】医用画像に含まれる関心領域の特徴量と医療情報とが、互いに関連付けられて格納される医療情報格納手段と、前記医療情報を提供するために参照される参照医用画像が入力される画像入力手段と、前記参照医用画像に含まれる前記関心領域を抽出する関心領域抽出手段と、前記関心領域を計測して前記特徴量を算出する特徴量算出手段と、前記特徴量算出手段が算出した前記特徴量に基づいて前記医療情報格納手段を検索し、前記医療情報を抽出する医療情報検索手段と、前記医療情報検索手段が抽出した前記医療情報を出力する処理結果出力手段と、を備えることを特徴とする医用画像診断支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT装置や磁気共鳴画像(以下「MRI」と記載する。)装置が撮影した医用画像に基づいて診断レポートを出力する技術がある。
【0003】
特許文献1には、医用画像を読影した医師が、診断所見及びその診断所見に関係する病変部位の位置を入力し、診断所見と病変部位とを関連付けた診断レポートを出力する診断レポート出力装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−296451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の診断レポート出力装置では、診断所見及び病変部位を医師が手入力するため、その入力作業が煩雑であった。また、診断レポートにX線CT装置やMRI装置が撮影した医用画像を添付しても、その診断レポートを見る者、例えば患者や健康診断の受診者が、医用画像を読影することは困難であった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、医用画像に関する医療情報を自動出力する技術を提供することを目的とする。更に、医用画像の読影に不慣れな者が、より理解しやすい医療情報の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にかかる医用画像診断支援システムは、医用画像に含まれる関心領域の特徴量と医療情報とが、互いに関連付けられて格納される医療情報格納手段と、前記医療情報を提供するために参照される参照医用画像が入力される画像入力手段と、前記参照医用画像に含まれる前記関心領域を抽出する関心領域抽出手段と、前記関心領域を計測して前記特徴量を算出する特徴量算出手段と、前記特徴量算出手段が算出した前記特徴量に基づいて前記医療情報格納手段を検索し、前記医療情報を抽出する医療情報検索手段と、前記医療情報検索手段が抽出した前記医療情報を出力する処理結果出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
より好ましくは、前記参照医用画像を画像処理し、前記関心領域と前記関心領域ではない領域とを区別して表示した処理結果画像を生成する画像処理手段を、更に備え、前記処理結果出力手段は、前記処理結果画像を出力する。
【0008】
更に好ましくは、前記処理結果出力手段は、前記参照医用画像と前記処理結果画像とのうちの少なくとも一つと、前記医療情報検索手段が抽出した前記医療情報と、が記載された報告書を作成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医用画像に関する医療情報を自動出力する技術を提供することができる。更に、医用画像の読影に不慣れな者が、より理解しやすい医療情報を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像診断支援システムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0011】
図1は、本発明を適用した医用画像診断支援システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
医用画像診断支援システム1は、被検体を撮影して得られる医用画像データを分析し、その分析結果に応じた医療情報を表示した画像分析結果報告書を出力する報告書作成端末装置10と、画像分析結果報告書に記載される医療情報と、医用画像データと、被検体情報とが格納されたデータベース(以下「DB」と記載する。)サーバ20と、被検体を撮影して医用画像データを生成するX線CT装置、MRI装置、超音波画像装置、陽電子放出型CT装置等の医用画像撮影装置30とを備える。上記の各構成要素は、構内ネットワーク、インターネット、電話回線網、及び無線通信網等含む通信ネットワーク50に接続される。また、情報端末装置、例えば、端末装置90、携帯電話91、及びPDA(Personal Digital Assistance)92は、通信ネットワーク50を介して報告書作成端末装置10に接続される。
【0013】
報告書作成端末装置10は、各構成要素の動作を制御する中央処理装置(以下「CPU」と記載する。)11と、医用画像診断支援システム1の制御プログラムが格納される主メモリ12と、医用画像データ、CAD(Computer Aided diagnosis)プログラム、医用画像診断支援プログラム等が格納される磁気ディスク13と、表示用データを一時記憶する表示メモリ14と、この表示メモリ14からの表示用データに基づいて画像を表示するディスプレイ15と、ジョイスティック、タッチパネル、トラックボール、マウス等を含むポインティングデバイス16及びポインティングデバイスコントローラ17、各種パラメータ設定用のキーやスイッチを備えたキーボード18と、画像分析結果報告書を印刷するプリンタ19とを備え、上記各構成要素は、共通バスにより互いに接続される。この実施の形態では、主メモリ12以外の記憶装置として、磁気ディスク13のみが接続されているが、これ以外にFDD、外付けハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、光磁気ディスク(MO)ドライブ、ZIPドライブ、PDドライブ、DVDドライブ等が接続されても良い。
【0014】
図2は、DBサーバ20に格納された医療情報DB21、医用画像DB22及び被検体情報DB23の構造を示す模式図である。
【0015】
医療情報DB21には、内臓脂肪面積の多少に応じた医療情報が格納された肥満情報テーブル、肺野領域の病巣候補陰影の位置及び大きさに応じた医療情報が格納された病巣候補陰影情報テーブル、及び肺野領域に対する肺気腫領域の割合に応じた医療情報が格納された肺気腫情報テーブルが格納される。
【0016】
医用画像DB22には、各被検体に固有の被検体IDと、その被検体を撮影して得られた医用画像データとが、互いに関連付けられて格納される。
【0017】
被検体情報DB23には、被検体IDと、被検体の氏名、住所、メールアドレス等とが、互いに関連付けて格納される。
【0018】
以下、図3乃至6に基づいて、図1の医用画像診断支援システム1の動作例について説明する。
【0019】
図3は、図1の医用画像診断支援システム1が、被検体の臍位置における腹部断面上の内臓脂肪面積を特徴量として算出し、この内臓脂肪面積に基づいて画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。図4は、図3の一工程である処理結果確認において表示される画面表示の例を示す模式図である。図5は、図3の一工程である報告書データ生成処理を詳述したフローチャートである。図6は、図3のメインフローによって出力される画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。以下、図3のメインフローの詳細をステップ順に説明する。
【0020】
(ステップS30)
まず、報告書作成端末装置10のディスプレイ15に、図示はしないものの被検体IDの入力を受付ける画面が表示される。そこで、画像分析結果報告書を作成する操作者は、被検体IDを入力する。すると、被検体IDと関連付けて医用画像DB22に格納された医用画像データが、報告書作成端末装置10の主メモリ12又は磁気ディスク13に入力される。医用画像データは、医用画像DB22に予め格納しておき、この医用画像DB22から読み出してもよいし、報告書端末装置10が、通信ネットワーク50を介して医用画像撮影装置30から受信してもよい。このステップS30で入力される医用画像データは、被検体の臍位置における全腹腔領域を断層撮影して得られた腹部断層画像データである。
【0021】
(ステップS31)
入力された医用画像データに基づいて体脂肪計測処理を行う。この体脂肪計測処理では、被検体の臍位置の腹部断面における内臓脂肪面積を特徴量として算出する。また、皮下脂肪面積及びウエスト周囲径も計測する。
【0022】
具体的には、操作者は、医用画像データに基づいて図4の原画像41をディスプレイ15に表示する。操作者は、原画像41を見ながら内臓脂肪領域と皮下脂肪領域とを判断し、各領域をマウス16により指定することにより、内臓脂肪領域及び皮下脂肪領域を抽出する。そして、抽出された各領域のデータに基づいて、被検体の臍位置における内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、及びウエスト周囲径の各実測値を演算する。また、適宜の画像分析処理を用いて内臓脂肪領域及び皮下脂肪領域を自動抽出し、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、及びウエスト周囲径の実測値を自動演算させてもよい。
【0023】
(ステップS32)
ステップS31の体脂肪計測処理の結果を確認する。ディスプレイ15には、原画像41と、体脂肪計測処理後の処理結果画像42とが並べて表示される。この処理結果画像42は、内臓脂肪領域及び皮下脂肪領域の表示色を、他の領域、例えば腹膜領域、筋肉領域、脊髄領域等の表示色と変えることにより、内臓脂肪領域及び皮下脂肪領域を特徴的に表示する。更に、内臓脂肪領域及び皮下脂肪領域の各表示色を変えて、内臓脂肪領域と皮下脂肪領域とを区別させてもよい。
【0024】
(ステップS33)
ステップS31で行った体脂肪計測結果に基づき、報告書データを生成する。この報告書データ生成処理を図5及び図6に従って詳述する。
【0025】
(ステップS500)
報告書データ生成処理を開始すると、所定の書式の報告書フォーマット60が磁気ディスク13から読み出される。
【0026】
(ステップS501)
報告書フォーマット60の所定欄に、報告書作成日付が自動入力される。
【0027】
(ステップS502)
被検体の氏名等の被検体情報が、報告書フォーマット60の所定欄に自動入力される。被検体情報は、医用画像データに被検体情報が含まれている場合には、医用画像データから取得しても良い。また、医用画像データに含まれる被検体IDに基づいて被検体情報DB23を検索し、被検体情報を取得しても良い。
【0028】
(ステップS503)
報告書フォーマット60の所定欄に、処理結果画像42が入力される。
【0029】
(ステップS504)
報告書フォーマット60の所定欄61に、ステップS31の計測結果、すなわち内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、ウエスト周囲径等の物理量が入力される。入力される物理量は、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、ウエスト周囲径の全てを入力する必要はなく、操作者が適宜選択してもよい。
【0030】
(ステップS505)
報告書作成端末装置10は、ステップS31で計測した内臓脂肪面積が、100cm2 未満であるか否かを判定する。そして、100cm2 未満であれば、医療情報DB21の肥満情報テーブルから「異常なし用のコメント」を取得し、報告書フォーマットの所定欄62に「異常なし用のコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS34へ進む。
【0031】
(ステップS506)
報告書作成端末装置10は、ステップS31で計測した内臓脂肪面積が、100cm2 以上150cm2 未満であるか否かを判定する。そして、内臓脂肪面積がこの範囲にあれば、肥満情報テーブルから「軽度肥満用のコメント」を取得し、報告書フォーマット60の所定欄62に「軽度肥満用のコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS34へ進む。内臓脂肪面積が100cm2 以上150cm2 未満でなければ、ステップS507へ進む。
【0032】
(ステップS507)
報告書作成端末装置10は、ステップS31で計測した内臓脂肪面積が、150cm2 以上200cm2 未満であるか否かを判定する。そして、内臓脂肪面積範囲にあれば、肥満情報テーブルから「中等度肥満用のコメント」を取得し、報告書フォーマット60の所定欄62に「中等度肥満用のコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS34へ進む。内臓脂肪面積が150cm2 以上200cm2 未満でなければ、ステップS508へ進む。
【0033】
(ステップS508)
このステップでは、ステップS31で計測した内臓脂肪面積が、200cm2 以上の場合の処理を示す。報告書作成端末装置10は、肥満情報テーブルから「高度肥満用のコメント」を取得し、報告書フォーマット60の所定欄62に「高度肥満用のコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS34へ進む。
【0034】
(ステップS34)
報告書作成端末装置10は、ステップS33で作成した報告書データをプリンタ19により印刷し、画像分析結果報告書を出力する。図6は、印刷された報告書60−(a)及び報告書60−(a)に追加事項を記載した報告書60−(b)の例を示す。
【0035】
報告書60−(a)には、図4の処理結果画像42が印刷される。また、ステップS31で計測した内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、ウエスト周囲径が、所定欄61に記載される。さらに、医療情報が所定欄62に記載される。報告書60−(a)記載される医療情報は、内臓脂肪面積が250cm2 である場合に対応した「高度肥満用コメント」である。
【0036】
また報告書60−(b)には、報告書60−(a)の記載内容に加えて、処理結果画像42に含まれる内臓脂肪領域を示す矢印、内臓脂肪に関する詳細な解説、生活改善提案などの追加事項63が記載される。追加事項は、医療情報DB21に格納しておき、報告書作成端末装置10が医療情報DB21を検索し、出力する。
【0037】
本実施の形態における内臓脂肪面積の各閾値は、上記の値に限定されず、他の値を用いても良い。例えば、内臓脂肪面積の閾値を性別によって変えたり、また臍位置における腹部断面の総面積に占める内臓脂肪面積の割合のように他のパラメータを用いたりしてもよい。
【0038】
次に、図7乃至10に基づいて、図1の医用画像診断支援システム1を用いて、病巣候補陰影を抽出し、その病巣候補陰影の位置及び大きさに応じた医療情報を掲載する画像分析結果報告書を作成する処理について説明する。
【0039】
図7は、医用画像診断支援システム1が、病巣候補陰影を抽出し、その病巣候補陰影の物理量、例えば長径を特徴量として算出し、さらに病巣候補陰影の位置に基づいて分類した後、病巣候補陰影の位置及び長径に応じた医療情報が記載された画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。図8は、図7のメインフローの一工程である処理結果確認において表示される画面表示の例を示す模式図である。図9は、図7の一工程である報告書データ生成処理を詳述したフローチャートである。図10は、図7のメインフローによって出力される画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。以下、図7のメインフローの詳細をステップ順に説明する。
【0040】
(ステップS70)
ステップS30と同様、報告書作成端末装置10に、報告書を作成するために参照する医用画像データが入力される。このステップS70で入力される医用画像データは、被検体の胸部を断層撮影して得られた胸部断層画像データである。
【0041】
(ステップS71)
入力された医用画像データの各領域の短径、長径、円形度、重心等の物理量を演算する適宜の画像解析処理を行い、対象臓器領域、例えば、右肺野、左肺野、縦隔等の認識処理を行う。更に、認識された対象臓器領域の辺縁情報を抽出する。
【0042】
(ステップS72)
医用画像データに基づいて、画素値(以下「CT値」と記載する。)、重心方向等の特徴量を演算する適宜の画像解析処理を行い、病巣候補陰影を抽出する。さらに、抽出した病巣候補陰影の位置情報とCT値、長径、短径、面積等の実測値を計測する。病巣候補陰影が存在しない場合は、位置情報及びCT値、長径、短径、面積はゼロとなる。
【0043】
(ステップS73)
操作者は、ステップS72の病巣候補陰影抽出処理の結果を確認する。図8は、この処理結果を確認する際の画面表示例である。図8のディスプレイ15には、原画像81と、この原画像81にステップS72で抽出された病巣候補陰影の長径及び位置情報に応じた丸印83が付加された処理結果画像82とが表示される。
【0044】
(ステップS74)
ステップS72で検出された病巣候補陰影の位置情報及び長径に基づき、報告書データを生成する。この報告書データ生成処理を図9及び図10に従って詳述する。
【0045】
(ステップS900乃至ステップS902)
ステップS500乃至ステップS502と同様、所定の書式の報告書フォーマット100が磁気ディスク13から読み出され、報告書作成日付及び被検体情報が入力される。
【0046】
(ステップS903)
報告書フォーマット100の所定欄103に対象臓器辺縁画像及び病巣候補陰影画像が入力される。報告書作成端末装置10は、ステップS71で抽出された対象臓器辺縁情報及びステップS72で抽出された病巣候補陰影の位置情報等に基づいて、対象臓器の輪郭線及び病巣候補陰影画像が描かれたスケッチ画101を生成する。このスケッチ画101には、病巣候補陰影画像を囲む丸印102も描画される。このスケッチ画101及び丸印102が、所定欄103に入力される。なお、このスケッチ画101も、関心領域である病巣候補陰影画像が特徴的に表示された処理結果画像の一種である。
【0047】
(ステップS904)
報告書フォーマット100の所定欄104に、ステップS72で計測された病巣候補陰影の物理量、例えば短径、長径、面積、CT値などが入力される。
【0048】
(ステップS905)
ステップS72において抽出した病巣候補陰影の位置情報及び長径に基づいて、病巣候補陰影の有無を判定する。位置情報及び長径がゼロであれば、病巣候補陰影が無いと判定し、医療情報DB21の病巣候補陰影情報テーブルから「異常なし用のコメント」を取得し、報告書フォーマット100の所定欄105に「異常なしのコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS75へ進む。位置情報及び長径がゼロでなければ、病巣候補陰影が有ると判定し、ステップS906へ進む。
【0049】
(ステップS906)
報告書作成端末装置10は、ステップS72で抽出した病巣候補陰影の位置情報に基づいて、その病巣候補陰影の存在位置を判定する。そして、存在位置が縦隔付近か、末梢付近かによって病巣候補陰影を分類する。そして、存在位置が縦隔付近であればステップS907へ、存在位置が末梢付近であればステップS908へ進む。なお、病巣候補陰影は、上記の存在位置に代えて、右上肺野、左下肺野等の他の領域に基づいて分類してもよい。
【0050】
(ステップS907)
報告書作成端末装置10は、病巣候補陰影の長径に基づいて病巣候補陰影の大きさを判定する。長径が10mm以上であれば、病巣候補陰影情報テーブルから「A専用のコメント(縦隔付近に位置する長径が10mm以上の病巣候補陰影に対応したコメント)」を抽出し、報告書フォーマット100の所定欄105に入力する。長径が10mm未満であれば、病巣候補陰影情報テーブルから「B専用のコメント(縦隔付近に位置する長径が10mm未満の病巣候補陰影に対応したコメント)」を抽出し、報告書フォーマット100の所定欄105に入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS75へ進む。
【0051】
(ステップS908)
報告書作成端末装置10は、病巣候補陰影の長径に基づいて病巣候補陰影の大きさを判定する。長径が10mm以上であれば、病巣候補陰影情報テーブルから「C専用のコメント(末梢付近に位置する長径が10mm以上の病巣候補陰影に対応したコメント)」を抽出し、報告書フォーマット100の所定欄105に入力する。長径が10mm未満であれば、病巣候補陰影情報テーブルから「D専用のコメント(末梢付近に位置する長径が10mm未満の病巣候補陰影に対応したコメント)」を抽出し、報告書フォーマット100の所定欄105に入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS75へ進む。
【0052】
(ステップS75)
報告書作成端末装置10は、ステップS74で作成した報告書データに基づいて、画像分析結果報告書をプリンタ19により印刷し出力する。図10は、印刷された画像分析結果報告書の例を示す。
【0053】
図10の画像分析結果報告書の所定欄103には、ステップS903で作成したスケッチ画101が記載される。また、所定欄104には、ステップS72で計測された病巣候補陰影の面積、長径、及び短径の実測値と平均CT値が記載される。更に、所定欄105には、医療情報が記載される。画像分析結果報告書に記載される医療情報は、末梢付近に位置する長径が10mm未満の病巣候補陰影に対応した「D専用のコメント」である。
【0054】
図10の画像分析結果報告書には、複数のスケッチ画101を記載したが、病巣候補陰影の存在位置が含まれるスケッチ画のみを記載してもよい。また、上記の実施の形態では、病巣候補陰影の長径の閾値を10mmとしたが、閾値は上記の値に限定されず、他の値を用いても良い。また、上記の実施の形態では、特徴量として病巣候補陰影の長径を算出したが、医用画像データ毎に病巣候補陰影の面積を算出し、その面積の最大値を病巣候補陰影の特徴量としてもよい。また、操作者が適宜、閾値や、病巣候補陰影の存在位置を判定する条件を設定変更したり、それにあった医療情報(コメント)を入力したりできるよう構成されても良い。
【0055】
次に、図11乃至14に基づいて、図1の医用画像診断支援システム1を用いて、医用画像データに基づいて低濃度吸収値領域(Low attenuation area、以下「LAA」と記載する。)の体積と肺野領域の体積とを計測し、肺野領域の体積に占める全LAA領域の体積の割合を特徴量として算出し、その特徴量に応じた医療情報を掲載した画像分析結果報告書を作成する処理について説明する。
【0056】
図11は、医用画像診断支援システム1が、医用画像データの入力を受付けた後、LAAを抽出して特徴量を算出し、画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。図12は、図11の一工程である処理結果確認において表示される画面表示の例を示す模式図である。図13は、図11の一工程である報告書データ生成処理を詳述したフローチャートである。図14は、図11のメインフローによって出力される画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。以下、図11のメインフローの詳細をステップ順に説明する。
【0057】
(ステップS110乃至ステップS111)
ステップS70、S71と同様、報告書作成端末装置10に、画像分析結果報告書を作成するために参照される医用画像データが入力される。この医用画像データは、被検体の胸部を連続して断層撮影した複数のスライスを含む胸部断層画像データである。次に、医用画像データの各領域の短径、長径、円形度、重心等の物理量を演算する適宜の画像解析処理を行い、対象臓器領域の認識処理を行う。更に、認識された対象臓器領域の辺縁情報を抽出する。
【0058】
(ステップS112)
入力された医用画像データに基づいて、LAAの抽出処理を行う。一般に、肺気腫領域ではLAAが特徴的に認められるため、LAAを抽出することにより、肺気腫の部位を推定することができる。
【0059】
具体的には、CT値等に基づいて適宜の画像解析処理を行い、LAAを自動抽出させてもよいし、操作者がマニュアルで抽出しても良い。LAAを自動抽出させた結果に基づいて以下の各処理を行った場合には、肺気腫の疑いがある旨の画像分析結果報告書が作成される。
【0060】
本実施の形態では、操作者が、原画像121をディスプレイ15に表示させ、その原画像121を見ながら肺気腫であると診断した領域の辺縁をマウス16を用いて指示することにより、肺気腫領域を抽出し、肺気腫に関する画像分析結果報告書を作成する。
【0061】
この肺気腫領域の抽出は、連続する複数のスライス毎に撮影された原画像121のうち、肺野領域を含む全ての原画像121について行う。そして、原画像121毎に計測した肺野領域の面積及び肺気腫領域の面積を積分し、肺野領域の体積及び肺気腫領域の体積を演算する。その後、肺野領域の体積に占める肺気腫領域の体積の割合を算出する。
【0062】
(ステップS113)
操作者は、ステップS112の肺気腫領域抽出処理の結果を確認する。図12は、この処理結果を確認する際の画面表示例である。図12のディスプレイ15には、原画像121と、ステップS112で抽出された肺気腫領域123の表示色を他の肺野領域と変えた処理結果画像122とが表示される。
【0063】
(ステップS114)
ステップS112で算出された肺気腫領域の割合に応じた報告書データを生成する。この報告書データ生成処理を図13及び図14に従って詳述する。
【0064】
(ステップS1300乃至ステップS1320)
ステップS500乃至ステップS502と同様、所定の書式の報告書フォーマット140が磁気ディスク13から読み出され、報告書作成日付及び被検体情報が入力される。
【0065】
(ステップS1330)
報告書フォーマット140の所定欄143に、対象臓器辺縁画像及び肺気腫領域画像が入力される。ステップS111で抽出された対象臓器辺縁情報に基づいて対象臓器の輪郭線を描画したスケッチ画141を入力する。そのスケッチ画141には、ステップS112で抽出された肺気腫領域画像142も描画される。このスケッチ画141も、関心領域、すなわち肺気腫領域が他の領域と区別して表示された処理結果画像の一種である。
【0066】
(ステップS1340)
報告書フォーマット140の所定欄144にステップS112で抽出された肺気腫領域の割合及び物理量等が入力される。
【0067】
(ステップS1350)
報告書作成端末装置10は、肺気腫の有無を判定する。ステップS112において算出した肺気腫領域の割合がゼロであれば、医療情報DB21の肺気腫情報テーブルから「異常なし用のコメント」を取得し、報告書フォーマット140の所定欄145に「異常なしのコメント」を入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS115へ進む。割合がゼロでなければ、ステップS1360へ進む。
【0068】
(ステップS1360)
報告書作成端末装置10は、ステップS112で検出した肺気腫領域の割合が0%よりも大きく20%未満であれば、肺気腫情報テーブルから「軽度肺気腫用のコメント」を抽出し、報告書フォーマット140の所定欄145に入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS115へ進む。割合が0%よりも大きく20%未満の範囲になければステップS1370へ進む。
【0069】
(ステップS1370)
報告書作成端末装置10は、肺気腫領域の割合が20%以上50%未満であれば、肺気腫情報テーブルから「中等度肺気腫用のコメント」を抽出し、報告書フォーマット140の所定欄145に入力する。その後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS115へ進む。割合が20%以上50%未満の範囲になければ、ステップS1380へ進む。
【0070】
(ステップS1380)
報告書作成端末装置10は、肺気腫領域の割合が50%以上であれば、肺気腫情報テーブルから「高度肺気腫用のコメント」を抽出し、報告書フォーマット140の所定欄145に入力した後、報告書データ生成処理を終了し、ステップS115へ進む。
【0071】
(ステップS115)
報告書作成端末装置10は、ステップS114で作成した報告書データに基づいて、画像分析結果報告書をプリンタ19により印刷し出力する。図14は、印刷された画像分析結果報告書の例を示す。
【0072】
図14の画像分析結果報告書の所定欄143には、ステップS1330で入力された対象臓器のスケッチ画141が記載される。スケッチ画141には、肺気腫領域画像142が描画される。肺気腫領域画像142の表示色は、他の領域と変えて特徴的に表示される。また所定欄144には、ステップS112で計測した物理量、例えば、肺野領域の体積、CT値、肺気腫領域の体積、の他、肺野領域の体積に占める肺気腫領域の体積の割合が記載される。更に、所定欄145には、医療情報が記載される。図14の画像分析結果報告書に記載される医療情報は、肺野領域に占める肺気腫領域の割合が10%の場合に応じた「軽度肺気腫用コメント」である。
【0073】
図14の画像分析結果報告書には、複数のスケッチ画を記載したが、肺気腫領域が含まれるスケッチ画のみを記載してもよい。また、肺気腫領域の割合を示す各閾値は、操作者が適宜変更したり、それに応じた医療情報を入力したりできるよう構成されても良い。
【0074】
上記の実施の形態では、報告書に内臓脂肪領域を特徴的に表示した処理結果画像や対象臓器の輪郭線と病巣候補陰影画像又は肺気腫領域が描画されたスケッチ画を記載したが、参照医用画像を記載してもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態では、画像分析結果報告書をプリンタ19で印刷したが、報告書データを被検体が操作する情報端末装置、例えば端末装置90や、携帯電話91及びPDA92等の携帯端末装置に通信ネットワーク50を介して送信してもよい。この場合、情報端末装置は、情報端末装置の表示領域の大きさやメモリ容量等に応じて、参照医用画像データ、対象臓器のスケッチ画を含む処理結果画像、特徴量、及びコメント等のうち、一つ又は複数を選択して受信したり、表示したりするようにしてもよい。
【0076】
さらに、上記の実施の形態では、医用画像診断支援システム1が、体脂肪量、病巣候補陰影、及び肺気腫領域に関する医療情報を提供するとしたが、医療情報はその他の条件に応じて提供されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明に係る医用画像診断支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、DBサーバに格納された各DBの構成を示す模式図である。
【図3】図3は、体脂肪に関する画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。
【図4】図4は、体脂肪計測処理後に表示される画面表示の例を示す模式図である。
【図5】図5は、図3の一工程である報告書データ生成処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、体脂肪に関する画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、病巣候補陰影に関する画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。
【図8】図8は、病巣候補陰影抽出処理後に表示される画面表示の例を示す模式図である。
【図9】図9は、図7の一工程である報告書データ生成処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、病巣候補陰影に関する画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。
【図11】図11は、肺気腫に関する画像分析結果報告書を出力する動作を示すメインフローチャートである。
【図12】図12は、低濃度吸収値領域抽出処理後に表示される画面表示の例を示す模式図である。
【図13】図13は、図11の一工程である報告書データ生成処理を示すフローチャートである。
【図14】図14は、肺気腫に関する画像分析結果報告書の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
1…医用画像診断支援システム、10…報告書作成端末装置、11…CPU、12…主メモリ、13…磁気ディスク、14…表示メモリ、15…ディスプレイ、16…ポインティングデバイス、17…ポインティングデバイスコントローラ、18…キーボード、19…プリンタ、20…DBサーバ、21…医療情報DB、22…医用画像DB、23…被検体情報DB、30…医用画像撮影装置、50…通信ネットワーク、90…端末装置、91…携帯電話、92…PDA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像に含まれる関心領域の特徴量と医療情報とが、互いに関連付けられて格納される医療情報格納手段と、
前記医療情報を提供するために参照される参照医用画像が入力される画像入力手段と、
前記参照医用画像に含まれる前記関心領域を抽出する関心領域抽出手段と、
前記関心領域を計測して前記特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段が算出した前記特徴量に基づいて前記医療情報格納手段を検索し、前記医療情報を抽出する医療情報検索手段と、
前記医療情報検索手段が抽出した前記医療情報を出力する処理結果出力手段と、
を備えることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項2】
前記参照医用画像を画像処理し、前記関心領域と前記関心領域ではない領域とを区別して表示した処理結果画像を生成する画像処理手段を、更に備え、
前記処理結果出力手段は、前記処理結果画像を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断支援システム。
【請求項3】
前記処理結果出力手段は、前記参照医用画像と前記処理結果画像とのうちの少なくとも一つと、前記医療情報検索手段が抽出した前記医療情報と、が記載された報告書を作成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−34337(P2006−34337A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214424(P2004−214424)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】