説明

医用画像診断装置、医用画像表示装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム

【課題】生体組織の内壁を表示するときに、外壁が隆起する隆起部を同時に表示することが可能な医用画像診断装置、医用画像表示装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】内壁抽出手段は医用画像データを基に生体組織の内壁を抽出する。外壁抽出手段は医用画像データを基に生体組織の外壁を抽出する。第1隆起部算出手段は抽出された生体組織の内壁を基に生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の存在を含む情報を求める。第2隆起部算出手段は抽出された生体組織の外壁を基に生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の存在を含む情報を求める。表示制御手段は第1隆起部算出手段により求められた第1隆起部の情報及び第2隆起部算出手段により求められた第2隆起部の情報を生体組織の画像に重ねて表示手段に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、生体組織を撮影することにより生体組織の3次元の医用画像データを取得する医用画像診断装置、医用画像表示装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の医用画像データを基に、生体組織の壁面を表示する医用画像を処理するためのアプリケーションがある(例えば特許文献1)。このアプリケーションを用いることにより、例えば、管状の形態を有する生体組織の内壁の凹凸を観察することが可能となる。
【0003】
このアプリケーションの一例としては、生体組織の管内に設定された芯線に沿って移動しながら、管内の壁面形状の観察ができるフライスルー画像、また、管状組織を所定断面に沿って断面にした断層像を生成し、断層像に表される特定組織の境界を設定し、特定組織を境界に沿って展開することで、管状組織の内壁を一望することが可能となる展開像フィレビュー、さらに、例えば170度の広角で管内の壁面形状を観察することができるフィッシュアイビュー等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−72400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、冠動脈の血管内壁に形成されるプラークは、血管の内腔を狭窄させるように内向きに隆起する場合と、血管の径を大きくするように外向きに隆起する場合とがある。内向きに隆起するネガティブリモデリング(Negative Remodeling)を第1隆起部という場合がある。また、外向きに隆起するポジティブリモデリング(Positive Remodeling)を第2隆起部という場合がある。さらに、内向き及び外向きにそれぞれ隆起するモデリングを第3隆起部という場合がある。
【0006】
したがって、前述のアプリケーションを用いて血管内を観察したとき、血管内壁に対し凸となって現れる第1隆起部を発見することが可能であるが、血管内壁に対し凸となって現れない第2隆起部は、血管内の観察だけでは、見逃してしまうという問題点があった。
【0007】
第2隆起部はソフトプラークの場合が多く、急性疾患を起こすことが多いため、疾患の早期発見、早期治療が必要である。また、プラークが形成し始める初期に生じることが多いので、確実に見つけ出すことにより、疾患の早期発見、早期治療を実現することが可能となる。
【0008】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、生体組織の内壁を表示するときに、外壁が隆起する隆起部を同時に表示することが可能な医用画像診断装置、医用画像表示装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施形態の医用画像診断装置は、画像取得手段、内壁抽出手段、外壁抽出手段、第1隆起部算出手段、第2隆起部算出手段、及び表示制御手段を有し、画像取得手段は内壁及び外壁を有する生体組織を撮影することにより生体組織の3次元の医用画像データを取得する。内壁抽出手段は前記医用画像データを基に、前記生体組織の内壁を抽出する。外壁抽出手段は前記医用画像データを基に、前記生体組織の外壁を抽出する。第1隆起部算出手段は前記抽出された前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の存在を含む情報を求める。第2隆起部算出手段は前記抽出された前記生体組織の外壁を基に、前記生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の存在を含む情報を求める。表示制御手段は前記第1隆起部算出手段により求められた前記第1隆起部の情報及び前記第2隆起部算出手段により求められた前記第2隆起部の情報を前記生体組織の画像に重ねて表示手段に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画像生成手段の構成を示すブロック図である。
【図3】第1隆起部が生じた管状部の斜視図である。
【図4】第2隆起部が生じた管状部の斜視図である。
【図5】第1隆起部及び第2隆起部が生じた管状部の斜視図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図であって、各段階を色分けすることにより作成される第1色を説明するための図である。
【図7】管状部の展開画像に重ねて表示される第1隆起部の平面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線断面図であって、各段階を色分けすることにより作成される第2色を説明するための図である。
【図9】管状部の展開画像に重ねて表示される第2隆起部の平面図である。
【図10】図5のX−X線断面図であって、作成される第3色を説明するための図である。
【図11】管状部の展開画像に重ねて表示される第1隆起部及び第2隆起部の範囲を示す平面図である。
【図12】医用画像表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態に係る医用画像診断装置において、第1隆起部及び第2隆起部を同時に表示するときの表示態様の一例を示す図である。
【図14】第1隆起部及び第2隆起部を同時に表示するときの表示態様の他の例を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像を展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。
【図16】図15に示す展開画像上の生体組織の成分の領域を色分けしたときの表示態様の一例を示す図である。
【図17】第4実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像を展開画像及びMPR画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。
【図18】第5実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像を展開画像、MPR画像及びビュー画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。
【図19】第6実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。
【図20】第7実施形態に係る医用画像診断装置において、展開画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
この医用画像診断装置の実施形態について各図を参照して説明する。
【0012】
〔構成〕
図1は、医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、撮影手段11は通信手段12を介して医用画像表示装置と接続されている。
【0013】
撮影手段11は、モダリティと称され、被検体に対して検査を行って3次元の医用画像データ(デジタルデータ)を生成する装置である。モダリティとしては、従来から用いられている任意の装置、たとえばX線CT(Computer Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置などが適用される。
【0014】
X線CT装置は、被検体を放射線で走査し、被検体を透過した放射線を検出してコンピュータ処理を施すことにより被検体の内部画像(断層像や3次元画像)を再構成する。MRI装置は、核磁気共鳴現象を利用して被検体の内部画像を再構成する。超音波診断装置は、被検体に超音波を照射し、その反響状態を解析して体内を画像化する。なお、これらの装置は従来から広く使用されているものであり、詳細な説明は省略する。
【0015】
通信手段12は、LAN(Local area network)を介してデータ通信を行う。通信手段12は、LANカード等の通信デバイスを含んで構成される。
【0016】
〔医用画像表示装置〕
医用画像表示装置は、制御手段13、記憶手段14、データ変換手段15、画像生成手段16、画像合成手段17、操作手段18、表示制御手段21、及び表示手段22を有している。なお、画像処理装置は、一例として、上記の制御手段13、記憶手段14、データ変換手段15、画像生成手段16、画像合成手段17、操作手段18により構成される。
【0017】
記憶手段14は、各種の情報を記憶する。特に、記憶手段14は、通信手段12がサーバ(図示省略)から受信した医用画像データ及び付帯情報を記憶する。制御手段13は、情報を記憶手段14に記憶させる処理、記憶手段14に記憶された情報を読み出す処理を実行する。記憶手段14は、ハードディスクドライブ等の書き込み可能な記憶装置を含んで構成される。
【0018】
データ変換手段15は、医用画像データをモノクロ画像データに変換する。モノクロ画像データは、所定の階調範囲(たとえば、0〜255)の輝度値で表現された階調画像データであることが多い。
【0019】
操作手段18は、オペレータが表示手段22を操作したり、各種の情報を入力したりするために用いられる。操作手段18は、マウス、キーボード、ジョイスティック、トラックボール、専用のコントロールパネル等の任意の操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。
【0020】
図2は、画像生成手段16の構成を示すブロック図である。図2に示すように、画像生成手段16は、展開画像生成手段161、内壁抽出手段162、外壁抽出手段163、正常内壁推定手段164、正常外壁推定手段165、第1隆起部算出手段166、第2隆起部算出手段167、及びカラーマッピング手段168を有する。
【0021】
画像生成手段16は、上記モダリティにより撮影された被検体の画像データを基に所望の画像を生成するものである。ここでは、X線CT装置により撮影された3次元の医用画像データを基に、生体組織の展開画像及び、展開画像上に病変部の画像を生成する画像生成手段16について説明する。さらに、冠動脈等のように組織が管状に形成される管状部を生体組織の一例として説明する。被検体に造影剤を投与して行われるX線撮影では、管状部内を流れる造影剤、管状部(病変部を含む)、胸腔毎に取得されるCT値が異なる(投影データ)。画像生成手段16は、このCT値を基に生体組織の画像データを生成する。これにより、生成された画像データから生体組織を抽出することが可能となる。
【0022】
図3〜図5は病変部が生じた管状部1の部分斜視図である。図3〜図5に示すように、管状部1にはプラークが堆積する病変部が局所に存在する。ここで、管状部1の内壁2が内方向に隆起する病変部を第1隆起部Nという。また、管状部1の外壁3が外方向に隆起する病変部を第2隆起部Pという。さらに、第1隆起部N及び第2隆起部Pの両方を有する病変部を第3隆起部Bという。
【0023】
展開画像生成手段161は、管状部1の所定断面に沿った断層像に対し境界を設定し、管状部1の所定断面に沿った断層像データに対し、所定位置に視点を設定し、その視点から境界に向けた視線方向に沿ってボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことで、管状部1を境界に沿って展開した展開画像を生成する。制御手段13は、生成された展開画像を記憶手段14に記憶させる。
【0024】
内壁抽出手段162は、医用画像データ(管状部1の近傍画像、管状部1の始点、管状部1の芯線4)を基に、管状部1の内壁2を抽出する。ここで、病変部が生じている箇所において、病変部の内壁が「生体組織の内壁」に相当する。
【0025】
次に、管状部1の近傍画像抽出、管状部1の始点検出、及び管状部1の芯線4の抽出について説明する。ここで、芯線4とは、管状部1の各横断面の中心4aを通る線に相当する(図3〜図5参照)。
【0026】
例えば、制御手段13は、操作手段18による指定を受けて、表示手段22に表示された管状部1の近傍画像を抽出し、抽出した管状部1の近傍画像を記憶手段14に記憶させる(管状部1の近傍画像抽出)。
【0027】
例えば、制御手段13は、操作手段18による操作を受けて、表示手段22に管状部1の近傍画像を表示させるとともに、表示された管状部1の始点を指定し、指定した始点を記憶手段14に記憶させる(管状部1の始点検出)。なお、抽出された管状部1を基に始点を求める所定のアプリケーションを用いてもよい。
【0028】
例えば、画像生成手段16は、所定のアプリケーションを実行して、管状部1の芯線4を抽出する。制御手段13は、抽出した管状部1の芯線4を記憶手段14に記憶させる(管状部1の芯線4の抽出)。
【0029】
以上により、診断対象である管状部1の画像を抽出する。なお、上述する管状部1の近傍抽出〜管状部1の芯線4の抽出は、左冠動脈、右冠動脈のように診断対象が2つあるとき、診断対象毎に行う。
【0030】
内壁抽出手段162は、管状部1の画像を基に、例えば、平滑化フィルタ及び鮮鋭化フィルタを交互に掛け合わせることにより、管状部1の内壁2の境界を抽出する。なお、実際の壁であるから狭窄等も含まれる。制御手段13は、抽出された管状部1の内壁(第1隆起部Nの内壁を含む)2を第1隆起部Nの情報として記憶手段14に記憶させる。
【0031】
外壁抽出手段163は、管状部1の近傍画像、及び内壁抽出手段162により抽出された管状部1の内壁2を基に、平滑化フィルタ及び鮮鋭化フィルタを交互に掛け合わせることにより管状部1の外壁3を抽出する。制御手段13は、抽出された管状部1の外壁(第2隆起部Pを含む)3を第2隆起部Pの情報として記憶手段14に記憶させる。
【0032】
正常内壁推定手段164は、内壁抽出手段162により抽出された管状部1の内壁2を基に、図4及び図5で想像線により示す隆起前の内壁2の形状である正常内壁2aを推定する。たとえば、正常内壁推定手段164は、管状部1の内方向に凸である第1隆起部Nでは、その第1隆起部Nの周囲(隆起前の領域)同士を滑らかな面で補間することにより、正常内壁2aを推定する。なお、正常内壁推定手段164は、芯線4から外方向に所定長さ離間した円弧状の領域を正常内壁2aとして推定してもよい。制御手段13は、推定された正常内壁2aを記憶手段14に記憶させる。
【0033】
正常外壁推定手段165は、外壁抽出手段163により抽出された管状部1の外壁3を基に、図4及び図5で想像線により示す隆起前の外壁3の形状である正常外壁3aを推定する。正常内壁2aを推定する場合と同様に、たとえば、正常外壁推定手段165は、管状部1の外方向に凸である第2隆起部Pでは、その第2隆起部Pの周囲(隆起前の領域)同士を滑らかな面で補間することにより、正常外壁3aを推定する。また、同様に、正常外壁推定手段165は、芯線4から外方向に所定長さ離間した円弧状の領域を正常外壁3aとして推定してもよい。制御手段13は、推定された正常外壁3aを記憶手段14に記憶させる。
【0034】
第1隆起部算出手段166は、記憶手段14から読み出された第1隆起部Nの内壁及び正常内壁2aを基に、第1隆起部Nが正常内壁2aから隆起する高さである第1厚さT1を求める。制御手段13は、求められた第1厚さT1を第1隆起部Nの情報として記憶手段14に記憶させる。第1厚さT1が0より大きいとき、その情報(T1>0)は第1隆起部Nが存在することを示す情報となる。
【0035】
第2隆起部算出手段167は、記憶手段14から読み出された第2隆起部Pの内壁及び正常外壁3aを基に、第2隆起部Pが正常外壁3aから隆起する高さである第2厚さT2を求める。制御手段13は、求められた第2厚さT2を第2隆起部Pの情報として記憶手段14に記憶させる。第2厚さT2が0より大きいとき、その情報(T2>0)は第2隆起部Pが存在することを示す情報となる。
【0036】
カラーマッピング手段168は、第1厚さT1に対する第1色、及び第2厚さT2に対する第2色を作成する。カラーマッピング手段168は、色の番号(0〜15)と実際の色の対応を定義する表(カラーマップ)を有し、例えば、カラーマッピング手段168は、第1色(例えば青)に色番号1を割り当て、第2色(例えば赤)に色番号2を割り当てる。例えば、カラーマッピング手段168は、第1色(例えば青)に色番号1を割り当て、第2色(例えば赤)に色番号2を割り当てる。制御手段13は、割り当てられた色番号を管状部1の領域を表す画素(ピクセル)に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0037】
カラーマッピング手段168は、第1厚さT1の厚さ方向を例えば2[mm]毎に段階的に分け、各段階の領域を色分けすることにより第1色を作成する。
【0038】
図6は図3のVI−VI線断面図であって、各段階を色分けすることにより作成される第1色を説明するための図である。図6に示すように、例えば、カラーマッピング手段168は、第1隆起部Nの各段階の領域に対し、第1色(青)の彩度が厚さ方向に高くなるような色(N1〜N3)の色番号を割り当る。制御手段13、割り当てられた色番号を第1隆起部Nの各段階の領域を表す画素に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0039】
画像合成手段17は、記憶手段14から読み出された管状部1の展開画像と、記憶手段14から読み出された第1隆起部Nの情報とを合成した画像を作成する。制御手段13は、合成された画像を記憶手段14に記憶させる。表示制御手段21は、合成された画像を表示手段22に表示させる。
【0040】
図7は管状部1の展開画像に重ねて表示される第1隆起部Nの平面図である。図7に示すように、表示手段22に表示される第1隆起部Nは、彩度を段階的に異ならせた第1色(N1〜N3)で色づけされる。
【0041】
カラーマッピング手段168は、第1厚さT1の厚さ方向を例えば2[mm]毎に段階的に分け、各段階の領域を色分けすることにより第1色を作成する。段階的に異ならせた第1色で第1隆起部Nを色づけすることにより第1隆起部Nの高さを表すことが可能となる。なお、第1隆起部Nの高さを等高線により表してもよい。
【0042】
図8は図4のVIII−VIII線断面図であって、各段階を色分けすることにより作成される第2色を説明するための図である。図8に示すように、例えば、カラーマッピング手段168は、第2隆起部Pの各段階の領域に対し、第2色(赤)の彩度が厚さ方向に高くなるような色(P1〜P6)の色番号を割り当る。制御手段13は、割り当てられた色番号を第2隆起部Pの各段階の領域を表す画素に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0043】
画像合成手段17は、記憶手段14から読み出された管状部1の展開画像と、記憶手段14から読み出された第2隆起部Pの情報とを合成した画像を作成する。制御手段13は、合成された画像を記憶手段14に記憶させる。表示制御手段21は、合成された画像を表示手段22に表示させる。
【0044】
図9は、管状部1の展開画像に重ねて表示される第2隆起部Pの平面図である。図9に示すように、表示手段22に表示される第2隆起部Pは、彩度を段階的に異ならせた第2色(P1〜P6)で色づけされる。それにより、第2隆起部Pの高さを表すことが可能となる。なお、第2隆起部Pの高さを等高線により表してもよい。
【0045】
以上に、管状部1の展開画像に重ねて表示される第1隆起部N及び第2隆起部Pのいずれか一方を説明した。
【0046】
しかし、管状部1に第2隆起部Pが生じた後に、第1隆起部Nが生じことが一般的であることから、実際には、第1隆起部Nのみが表示されることは少なく、第1隆起部Nが表示されると、第2隆起部Pも共に表示されることが多い。第1隆起部N及び第2隆起部Pの両者を同時に表示させると、両者を混同して相互に視認し難くなるおそれがある。
【0047】
図10は、図5のX−X線断面図であって、作成される第3色を説明するための図である。図10に示すように、管状部1に第3隆起部B(第1隆起部N及び第2隆起部P)が生じている。なお、カラーマッピング手段168は、第1厚さT1が0より大きいとき(T1>0)、かつ、第2厚さT2が0より大きいとき(T2>0)、第3隆起部Bが生じていることを判断する。
【0048】
カラーマッピング手段168は、第3隆起部Bが生じている領域に対する第3色を作成する。カラーマッピング手段168は、第3色(例えば紫)に色番号3を割り当てる。制御手段13は、割り当てられた色番号を管状部1の領域を表す画素(ピクセル)に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0049】
画像合成手段17は、記憶手段14から読み出された管状部1の展開画像と、記憶手段14から読み出された第3隆起部Bの情報とを合成した画像を作成する。制御手段13は、合成された画像を記憶手段14に記憶させる。表示制御手段21は、合成された画像を表示手段22に表示させる。
【0050】
図11は管状部1の展開画像に重ねて表示される第3隆起部Bの平面図である。図11に示すように、表示手段22に表示される第3隆起部Bの範囲が第3色(紫)で色づけされる。なお、カラーマッピング手段168は、第3隆起部Bの厚さT3に応じて、第3色の彩度を高くすることにより第3隆起部Bを色づけしてもよい。
厚さT3は次の式から求めることができる。
T3=T1+T2 (1)
なお上式(1)の右辺に管状部1の壁部の厚さ(予め定められた厚さ)tを加えてもよい。
【0051】
〔動作〕
次に、X線CT装置により撮影された3次元の医用画像データを基に、管状部1の展開画像及び、展開画像上に病変部の画像を生成し、生成された各画像を表示させる医用画像診断装置の動作について図12を参照して説明する。図12は画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0052】
(CT画像の取得:ステップS1)
図12に示すように、X線CT装置により撮影され、サーバ(図示省略)に保存された被検体の3次元の医用画像データが通信手段12を介して記憶手段14に記憶される。
【0053】
(管状部の近傍画像の抽出:ステップS2)
操作手段18による指定を受けて、制御手段13は、表示手段22に表示された管状部1の近傍画像を抽出する。
【0054】
(管状部の始点検出:ステップS3)
次に、操作手段18による操作を受けて、抽出された管状部1の近傍画像の始点を指定する。
【0055】
(管状部の芯線抽出:ステップS4)
次に、画像生成手段16は、管状部1の芯線4を抽出する。管状部1の中心4aの座標(xg,yg)は、例えば、次の式から求めることができる。
xg=Sy/A (2)
yg=Sx/A (3)
ここで、Sxはx軸に関する断面一次モーメント、Syはy軸に関する断面一次モーメント、Aは管状部(病変部及び腔を含む)1の全断面積をいう。
【0056】
(管状部の内壁抽出:ステップS5)
次に、内壁抽出手段162は、管状部1の画像を基に、管状部1の内壁2を抽出する。このときの内壁2には、冠動脈の内壁ではなく実際の壁であるから管状部1の内方向に隆起する第1隆起部Nの内壁も含まれる。
【0057】
(管状部の外壁抽出:ステップS6)
次に、外壁抽出手段163は、管状部1の画像を基に、管状部1の外壁3を抽出する。このときの外壁3は、第2隆起部Pにより管状部1の外方向に隆起する外壁3も含まれる。
【0058】
(正常内壁推定、及び正常外壁推定:ステップS7)
次に、正常内壁推定手段164は、実際の壁である管状部1の内壁2を基に隆起前の内壁2の形状である正常内壁2aを推定する。また、正常外壁推定手段165は、管状部1の外壁3を基に、隆起前の外壁3の形状である正常外壁3aを推定する。
【0059】
(第1厚さの算出:ステップS8)
第1隆起部算出手段166は、第1隆起部Nの内壁2及び正常内壁2aを基に、第1隆起部Nの高さである第1厚さT1を求める。
【0060】
(第1厚さのカラーマッピング:ステップS9)
カラーマッピング手段168は、第1厚さT1に対する第1色(例えば青)を作成する。例えば、カラーマッピング手段168は、第1隆起部Nの領域を表す各画素に対し第1色の色番号を割り当て、制御手段13は、色番号を各画素に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0061】
(第2厚さの算出:ステップS10)
第2隆起部算出手段167は、第2隆起部Pの外壁3及び正常外壁3aを基に、第2隆起部P高さである第2厚さT2を求める。
【0062】
(第2厚さのカラーマッピング:ステップS11)
カラーマッピング手段168は、第2厚さT2に対する第2色(例えば赤)を作成する。例えば、カラーマッピング手段168は、第2隆起部Pの領域を表す各画素に対し第2色の色番号を割り当て、制御手段13は、色番号を各画素に対応させて記憶手段14に記憶させる。
【0063】
(展開画像生成:ステップS13)
前記ステップS1〜S11に平行して、展開画像生成手段161は、管状部1の画像データを基に、管状部1を展開した展開画像を生成する。
【0064】
(画像の合成表示:ステップS12)
画像合成手段17は、管状部1の展開画像に第1隆起部Nの情報及び第2隆起部Pの情報を重ねて表示する。
【0065】
ここで、第1隆起部Nの情報とは、第1隆起部Nの画像、第1隆起部Nが管状部1に存在していることの情報(存在情報)、並びに、第1厚さT1及びその厚さT1の程度を示す情報を含む。同じく、第2隆起部Pの情報とは、第2隆起部Pの画像、第2隆起部Pが管状部1に存在していることの情報(存在情報)、並びに、第2厚さT2及びその厚さT2の程度を示す情報を含む。
【0066】
なお、画像処理プログラムは、一例として上記ステップS1からステップS12の処理をコンピュータに実行させるように構成されるものである。
【0067】
[第2の実施形態]
管状部1の画像に第1隆起部N及び第2隆起部Pを同時に表示させるとき、第1隆起部N及び第2隆起部Pの両方が生じていることを表すために第3隆起部Bの範囲を第3色(紫)で色づけ、また、第3隆起部Bの厚さT3に応じて第3色の彩度を高くすることにより第3隆起部Bの範囲を色づけするようにしたが、第1隆起部N及び第2隆起部Pを区別することが困難であるため、第1隆起部N及び第2隆起部Pの各病変部の進行状態を判断し難い。
【0068】
次に、第2の実施形態に係る医用画像診断装置について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態の構成と同じものについては同一番号を付してその説明を省略する。
【0069】
図13は第1隆起部N及び第2隆起部Pを同時に表示するときの表示態様の一例を示す図である。図13に示すように、管状部1の壁を芯線4に沿って断面にした断層像(管状部1の画像)に第1色(例えば青)により示された第1隆起部N、及び、第2色(例えば赤)により示された第2隆起部Pが重ねて表示される。
【0070】
管状部1のどこの断層像を作成するかは、操作手段18による表示手段22上での操作を受けて、制御手段13が管状部1の位置を指定し、指定された位置を受けて、画像生成手段16がその位置で管状部1を断面にした断層像を作成する。
【0071】
画像生成手段16は、管状部1の画像として断層像を作成し、その断層像に対する第1隆起部N及び第2隆起部Pを作成し、断層像と第1隆起部N及び第2隆起部Pとを合成する。表示制御手段21は、表示手段22に合成した画像を表示させる。なお、第1色、第2色は、段階的に彩色が異なるようにしてもよい。
【0072】
以上のように、断層像に第1隆起部N及び第2隆起部Pを重ねて表示させることにより、第1隆起部N及び第2隆起部Pの各病変部の進行状況を容易に視認することが可能となる。
【0073】
さらに、操作手段18による操作を受けて、制御手段13が断層像を作成するときの断面を変更し、変更された断面を受けて画像生成手段16が管状部1の断層像、第1隆起部N及び第2隆起部Pを作成し、表示制御手段21が表示手段22に、断層像に第1隆起部N及び第2隆起部Pを重ねて表示させる。それにより、各病変部の進行状況を別の角度から観察することととなり、病変部の進行状況をより正確に視認することが可能となる。
【0074】
図14は第1隆起部N及び第2隆起部Pを同時に表示するときの表示態様の他の例を示す図である。図14に示すように、管状部1の壁を芯線4と直交する方向で断面にした断層像(管状部1の画像)に第1色(例えば青)により示された第1隆起部N、及び、第2色(例えば赤)により示されたれた第2隆起部Pが重ねて表示される。なお、第1色、第2色は、段階的に彩色が異なるようにしてもよい。
【0075】
なお、上記実施形態では、管状部1の画像に第1隆起部N及び第2隆起部Pを同時に表示させたが、共に平面上に表示する表示態様では、第1隆起部N及び第2隆起部Pを区別するのが困難なため、第1隆起部N及び第2隆起部Pの各病変部の進行状況が判断し難い。
【0076】
そこで、画像合成手段17は、管状部1の画像に第1隆起部Nの画像を重ねた合成画像、並びに、管状部1の画像に第2隆起部Pの画像を重ねて合成画像の両方を作成し、表示制御手段21が表示手段22に両方の合成画像を切り替えて表示させる。それにより、第1隆起部N及び第2隆起部Pの各病変部の進行状況を判断し易くすることが可能となる。
【0077】
また、実施形態では、画像生成手段16は、第1隆起部Nが存在するときの情報(T1>0)及び、第2隆起部Pが存在するときの情報(T2>0)を基に、第1隆起部Nの存在を識別するための第1識別標識及び、第2隆起部Pの存在を識別するための第2識別標識を作成し、表示制御手段21が表示手段に、管状部1の画像に第1識別標識及び第2識別標識を重ねて表示させる。それにより、第1隆起部N及び第2隆起部Pを区別することが可能となる。
【0078】
さらに、表示制御手段21は、管状部1の画像に第1厚さT1を表す情報(例えば数値)及び第1厚さT1の程度を表す情報(例えばN1、N2、N3…)、並びに、第2厚さT2を表す情報(例えば数値)及び第2厚さT2の程度を表す情報(例えばP1、P2、P3…)を重ねて表示させてもよい。第1隆起部Nの第1厚さT1と第2隆起部Pの第2厚さT2とが例えば2[mm]/3[mm]のように対比して表示され、または第1厚さT1の程度と第2厚さT2の程度とが例えば、N3/P5のように対比して表示されるので、病変部の進行状況を判断し易くなる。
【0079】
[第3実施形態]
前記第1及び第2実施形態では、生体組織の内壁を表示させるときに、外壁が隆起する隆起部を生体組織の画像に同時に表示させるものを示した。これに対し、以下の実施形態では、その成分の領域が色分けされた生体組織の画像を表示させるものを示す。それにより、石灰成分あるいは脂質成分となった生体組織を容易に視認することで、病変部を確実に見つけ出すことができる。そのため、疾患の早期発見、早期治療を実現することが可能となる。
【0080】
生体組織の画像の例としては、断面画像、展開画像、MPR画像、ビュー画像、及び、外壁展開画像のいずれか一つ、または、これらの画像が組み合わされたものを挙げることができる。なお、断面画像、展開画像、MPR画像、ビュー画像、及び、外壁展開画像の詳細については後述する。
【0081】
次に、第3実施形態に係る医用画像診断装置について図15を参照して説明する。図15は断面画像を展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。なお、第3実施形態が前記実施形態と異なる構成につて主に説明し、前記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0082】
第3実施形態において、画像生成手段16は、断面画像作成手段171及び色分け手段172を有している。
【0083】
断面画像作成手段171は、3次元の医用画像データに基づいて、生体組織を指定された位置(予め定められた位置を含む)で断面にしたときの画像を作成する。なお、3次元の医用画像データを、3次元データまたはボリュームデータという場合がある。その断面の位置は、3次元の医用画像データに基づいて指定された3次元座標により定まる。
【0084】
展開画像生成手段161は、3次元の医用画像データを基に管状部1の内壁2を平面状に展開した展開画像を生成する(前述)。展開画像の一例は、3次元の医用画像データを基に、管状部1の中心軸から半径方向に沿って行った投影処理の値を、中心軸の回りの円周方向の角度を横軸とし、中心軸上の位置を縦軸として分布した画像である。なお、中心軸上の位置は、3次元の医用画像データに基づいて指定される3次元座標で定まる。
【0085】
色分け手段172は、断面画像作成手段171により作成された断面画像において、生体組織の成分(例えば、カルシウム、脂肪)を輝度値を基に分類(判別)し、その成分の領域を分類毎に色分けする。例えば、生体組織のカルシウム成分の領域及び脂肪成分の領域は、”白”及び”黄”の異なる色により区別可能に表示される。
【0086】
表示制御手段21は、生体組織の成分の領域が色分けされた断面画像と共に、展開画像を表示させる(図15参照)。
【0087】
さらに、表示制御手段21は、操作手段(入力部)18の操作により、展開画像上に断面の位置を指定可能に表示させる。展開画像上で指定された位置(中心軸上の位置)と、断面の位置は、3次元座標で対応付けられている。したがって、断面画像生成手段171は、展開画像上で指定された位置を受けて、その位置に対応付けられた断面の位置で生成情報を断面にしたときの断面画像を作成する。
【0088】
表示制御手段21は、展開画像、展開画像上で指定された位置、その位置に対応する断面の位置で生体情報を断面にしたときの断面画像を表示させる(図15参照)。
【0089】
図15に、断面画像を”S”、展開画像を”D”、カルシウム成分の領域を”C”、脂肪成分の領域を”F”でそれぞれ示す。さらに、図15に、展開画像上に表された、指定された位置を”A”、管状部1の中心軸を”L0”、中心軸L0に沿った線を”L1”、位置Aを通り、線L1と直交する線を”L2”で示す。なお、中心軸L0を芯線4という場合がある。
【0090】
〔変形例〕
次に、第3実施形態の変形例について図16を参照して説明する。図16は、図15に示す展開画像上の生体組織の成分の領域を色分けしたときの表示態様の一例を示す図である。
【0091】
前記実施形態では、色分け手段172が断面画像上の生体組織の成分の領域を分類毎に色分けしたが、この変形例では、色分け手段172が、さらに、展開画像上の生体組織の成分の領域を分類毎に色分けする。
【0092】
展開画像上での色分けについては、前述する断面画像上での色分けと同様に、同じ成分の領域は同じ色にすることが好ましい(例えば、カルシウム成分の領域を”白”、脂肪成分の領域を”黄”)。それにより、断面画像と展開画像とを対比することで、生体組織の成分(例えば、石灰成分及び/または脂質成分)を容易に視認することが可能となる。図16に、断面画像”S”と同様の色分けがされた展開画像”D”を示す。
【0093】
[第4実施形態]
前記第3実施形態においては、断面画像を共に表示させる生体組織の画像として、展開画像を示した。これに対して、この第4実施形態では、さらにMPR(Multi Planar Reconstruction)画像を表示させるものを示す。なお、展開画像に代えてMPR画像を表示させてもよい。
【0094】
次に、第4実施形態に係る医用画像診断装置について図17を参照して説明する。図17は、第4実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像を展開画像及びMPR画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。なお、第4実施形態が前記実施形態と異なる構成につて主に説明し、前記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0095】
この実施形態では、画像生成手段16はMPR画像生成手段173を有している。MPR画像生成手段173は、操作手段(入力部)18の操作による断面の位置の指定を受けて、3次元の医用画像データに基づいて、生体組織の複数の断面を表したMPR画像を作成する。
【0096】
色分け手段172は、さらに、MPR画像上の生体組織の成分を輝度値を基に分類(判別)し、その成分の領域を分類毎に色分けする。
【0097】
MPR画像上での色分けについては、前述する断面画像及び/または展開画像上での色分けと同様にすることが好ましい(例えば、カルシウム成分の領域を”白”、脂肪成分の領域を”黄”)。それにより、生体組織の成分をMPR画像と断面画像および/または展開画像とで対比することが容易となって、石灰成分あるいは脂質成分となった生体組織を容易に視認することが可能となる。
【0098】
図17に、断面の位置”A”で中心軸に沿って管状部1を断面にしたときのMPR画像”M”を示す。さらに、図17に、MPR画像上に表された管状部1の中心軸を”L0”、中心軸L0に沿った線を”L1”、線L1と直交する線を”L2”で示す。
【0099】
[第5実施形態]
前記第4実施形態では、断面画像を共に表示させる生体組織の画像として、展開画像及びMPR画像を示した。これに対して、この第5実施形態では、展開画像及びMPR画像と併せてビュー画像を表示させるものを示す。なお、ビュー画像を展開画像及び/またはMPR画像に代えて表示させてもよい。
【0100】
次に、第5実施形態に係る医用画像診断装置について図18を参照して説明する。図18は、第5実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像を展開画像、MPR画像及びビュー画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。なお、第5実施形態が前記実施形態と異なる構成につて主に説明し、前記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0101】
この実施形態では、画像生成手段16はビュー画像生成手段174を有している。ビュー画像生成手段174は、3次元の医用画像データを基に、視点から管状部1を見たときの管状部1の外側を示すビュー画像を作成する。また、視点を管状部1内において、管状部1の内側を示すビュー画像を作成してもよい。
【0102】
ビュー画像の作成には、公知の技術(例えば、特開2006−346177号公報)を用いる。同公報には、MPR画像データに基づいて、所定モード(フライスルーモード)における複数の視点を設定する手段と、設定された視点情報に基づき壁情報ボリュームデータをレンダリング処理してフライスルー画像データを生成する手段とが示されている。このフライスルー画像の生成する技術を用いて、ビュー画像を作成することが可能である。なお、視点及び視野範囲はユーザが指定可能であり、制御手段13は、ユーザによる操作手段(入力部)18の操作を受けて、視点及び視野範囲を記憶手段14に記憶させる。
【0103】
ここで、視点について図18を参照して説明する。図18に、断面画像を”S”、展開画像を”D”、MPR画像を”M”、ビュー画像を”V”、管状部1の中心軸を”L0”、視点を”VP”で示す。また、断面画像Sにおいて、最上位置を原点”0”とし、原点0から時計回りの角度を”θ”とし、中心軸L0から視点VPまでの距離を”R”とする。さらに、展開画像Dにおいて、中心軸L0に沿った縦軸に原点0からの距離(P)をとり、横軸に原点0から時計方向への回転角(θ)をとり、視点VPの移動(線L1上の位置では”Q1”から”Q2”への移動)を矢印で示す。さらに、MPR画像Mにおいて、視点VPの移動(中心軸L0上の位置では”Q1”から”Q2”への移動)を矢印で示す。
【0104】
断面画像S上の視点VPの位置は、中心軸L0回りの回転角度θ、及び中心軸L0からの距離Rで表される。これに対して、展開画像D上の視点VPの位置は、中心軸L0上の位置Q(原点0からの距離)、及び原点0からの回転角度θで表される。さらに、MPR画像M上の視点VPの位置は、中心軸L0上の位置Q、及び、高さH(線L2からの距離)で表される。なお、H=R*cosθで表される。
【0105】
したがって、展開画像D上の視点VP及びMPR画像M上の視点VPの各位置は、共にP、θ及びRで表すことができる。すなわち、展開画像D上の視点VPの位置の式をf(P、θ、R)とすると、その式にP、θ及びRを代入することで、展開画像D上の視点VPの位置を求めることができる。これは、展開画像D上の視点VPの位置からf(P、θ、R)を用いてP、θ及びRを導き出すことができるということである。
【0106】
また、MPR画像M上の視点VPの位置の式をg(P、θ、R)とすると、その式にP、θ及びRを代入することで、MPR画像M上の視点VPの位置を求めることができる。これは、MPR画像M上の視点VPの位置からg(P、θ、R)を用いてP、θ及びRを導き出すことができるということである。
【0107】
すなわち、展開画像D上の視点VPの位置からMPR画像M上の視点VPの位置を求めることができる。また、MPR画像M上の視点VPの位置から展開画像D上の視点VPの位置を求めることができる。
【0108】
表示制御手段21は、操作手段(入力部)18の操作を受けて、視点を移動可能にMPR画像上に表示させる。
【0109】
さらに、表示制御手段21は、視点を展開画像上に表示させるとともに、展開画像上の視点をMPR画像上の視点と連動させて表示させる。
したがって、表示制御手段21は、操作手段(入力部)18の操作を受けて、展開画像及びMPR画像の一方の視点を移動させると、その視点位置を受けて、他方の画像上の視点を移動して表示させることができる。
【0110】
さらに、表示制御手段21は、ビュー画像(図18に”V”で示す)において管状部1の外壁3の凹部及び/または凸部を含む形態を表示させる。このとき、表示制御手段21は、凹部と凸部とを区別可能に表示させる。凹部と凸部(図18に”U”で示す)を、互いに異なる色で区別してもよく、互いに異なる影やハッチングで区別してもよい。なお、管状部1の内壁2において凹部とは推定された正常内壁2aから凹んだ部位をいい、凸部とは正常内壁2aから隆起した部位をいい、凹部及び凸部は共に、医用画像の3次元データを基に判断される。さらに、管状部1の外壁3において凹部とは推定された正常外壁3aから凹んだ部位をいい、凸部とは正常外壁3aから隆起した部位をいい、凹部及び凸部は共に、医用画像の3次元データを基に判断される。
【0111】
[第6実施形態]
前記第5実施形態では、断面画像を共に表示させる生体組織の画像として、展開画像、MPR画像及びビュー画像を示した。これに対して、第6実施形態では、MPR画像及び外壁展開画像を表示させるものを示す。なお、外壁展開画像をMPR画像に代えて表示させてもよく、展開画像及び/またはビュー画像と併せて表示させてもよい。
【0112】
次に、第6実施形態に係る医用画像診断装置について図19を参照して説明する。図19は、第6実施形態に係る医用画像診断装置において、断面画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。なお、第6実施形態が前記実施形態と異なる構成につて主に説明し、前記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0113】
この実施形態では、画像生成手段16は外壁展開画像生成手段175を有している。外壁展開画像生成手段175は、管状部1の外壁3を断面画像の外側に開いたように(中心軸L0とする放射方向に延ばされたように)表される外壁展開画像を生成する。なお、延ばされる長さは、視野範囲内に入る外壁3の部分の長さである。
【0114】
表示制御手段21は、断面画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させる。表示制御手段21は、外壁展開画像において、管状部1の外壁3の凹部及び/または凸部を含む形態を表示させる。このとき、表示制御手段21は、凹部と凸部(図18に”U”で示す)とを区別可能に表示させる。凹部と凸部を、互いに異なる色で区別してもよく、互いに異なる影やハッチングで区別してもよい。なお、外壁展開画像においても、ビュー画像と同様に、管状部1の内壁2において凹部とは推定された正常内壁2aから凹んだ部位をいい、凸部とは正常内壁2aから隆起した部位をいい、凹部及び凸部は共に、医用画像の3次元データを基に判断される。さらに、管状部1の外壁3において凹部とは推定された正常外壁3aから凹んだ部位をいい、凸部とは正常外壁3aから隆起した部位をいい、凹部及び凸部は共に、医用画像の3次元データを基に判断される。
【0115】
図19に、外壁展開画像”OD”を示す。外壁展開画像を表示させたことにより、内壁2の生体組織を視認する中で、外壁3に生じた病変部(図19に”U”で示す部位に相当)を見つけ出すことができる。
【0116】
[第7実施形態]
前記第6実施形態では、断面画像と共にMPR画像及び外壁展開画像を表示させるものを示した。これに対して、この第7実施形態では、展開画像と共にMPR画像及び外壁展開画像を表示させるものを示す。
【0117】
次に、第7実施形態に係る医用画像診断装置について図20を参照して説明する。図20は、第7実施形態に係る医用画像診断装置において、展開画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させたときの表示態様の一例を示す図である。なお、第7実施形態が前記実施形態と異なる構成について主に説明し、前記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0118】
図20に示すように、表示制御手段21は、展開画像をMPR画像及び外壁展開画像と共に表示させる。展開画像及び外壁展開画像を表示させることにより、管状部1の内壁2及び外壁3の各生体組織を同時に確認することが可能となる。それにより、内壁2または外壁3の一方に生じた病変部を基に、その病変部が生じた一方の壁とは反対側の壁に病変部が生じているかどうかを、他方の生体組織が同時に見ることにより、容易に確認することが可能となる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1 管状部 2 内壁 3 外壁 4 芯線 4a 図心
N 第1隆起部 P 第2隆起部 B 第3隆起部
11 撮影手段 12 通信手段 13 制御手段 14 記憶手段
15 データ変換手段 16 画像生成手段 17 画像合成手段
18 操作手段
21 表示制御手段 22 表示手段
161 展開画像生成手段 162 内壁抽出手段
163 外壁抽出手段 164 正常内壁推定手段 165 正常外壁推定手段
166 第1隆起部算出手段 167 第2隆起部算出手段
168 カラーマッピング手段
171 断面画像生成手段 172 色分け手段 173 MPR画像生成手段
174 ビュー画像生成手段 175 外壁展開画像生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁及び外壁を有する生体組織を撮影することにより生体組織の3次元の医用画像データを取得する画像取得手段と、
前記医用画像データを基に、前記生体組織の内壁を抽出する内壁抽出手段と、
前記医用画像データを基に、前記生体組織の外壁を抽出する外壁抽出手段と、
前記抽出された前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の存在を含む情報を求める第1隆起部算出手段と、
前記抽出された前記生体組織の外壁を基に、前記生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の存在を含む情報を求める第2隆起部算出手段と、
前記第1隆起部算出手段により求められた前記第1隆起部の情報及び前記第2隆起部算出手段により求められた前記第2隆起部の情報を前記生体組織の画像に重ねて表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有する
ことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記第1隆起部及び前記第2隆起部の各情報を区別可能に表示させることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記抽出された生体組織の内壁を基に、隆起前の内壁の形状である正常内壁を推定する正常内壁推定手段と、
前記抽出された生体組織の外壁を基に、隆起前の外壁の形状である正常外壁を推定する正常外壁推定手段と、
をさらに有し、
第1隆起部算出部は、前記第1隆起部が前記正常内壁から隆起する高さである第1厚さを求め、
前記第2隆起部算出部は、前記第2隆起部が前記正常外壁から隆起する高さである第2厚さを求め、
前記表示制御手段は、前記求められた前記第1厚さを前記第1隆起部の情報として表示させ、前記求められた前記第2厚さを前記第2隆起部の情報として表示させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記第1厚さに対する第1色、及び、前記第1色とは異なる、前記第2厚さに対応する第2色を作成するカラーマッピング手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記第1色及び前記第2色により、前記第1隆起部及び前記第2隆起部の各情報を表示させることを特徴とする請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記カラーマッピング手段は、前記第1厚さの厚さ方向を段階的に分け、各段階を色分けすることにより前記第1色を作成するとともに、前記第2厚さの厚さ方向を段階的に分け、各段階を色分けすることにより前記第2色を作成することを特徴とする請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記内壁抽出手段は、管状部を含む前記生体組織の内壁を抽出し、
前記外壁抽出手段は、管状部を含む前記生体組織の外壁を抽出し、
前記表示制御手段は、前記管状部の内壁の画像に重ねて前記第2隆起部の情報を表示させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記医用画像データを基に、前記生体組織を指定された位置で断面にしたときの断面画像を作成する断面画像生成手段と、
前記作成された断面画像において、前記生体組織の成分を分類し、前記分類ごとに色分けする色分け手段と、
をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記色分け手段により前記色分けされた前記断面画像を表示させる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記管状部の内壁を平面状に展開した展開画像を生成する展開画像生成手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記生成された前記展開画像を表示させるとともに、入力部の操作により前記展開画像上に前記位置を指定可能に表示させ、
前記断面画像生成手段は、前記指定を受けて、前記指定された前記位置で前記生体組織を断面にしたときの前記断面画像を作成し、
前記表示制御手段は、前記作成された前記展開画像を前記断面画像と共に表示させる
ことを特徴とする請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記色分け手段は、前記展開画像において、前記生体組織の成分を分類し、前記分類毎に色分けし、
前記表示制御手段は、前記色分けされた前記展開画像を表示させる
ことを特徴とする請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記医用画像データを基に、前記生体組織の複数の断面を表したMPR画像を作成するMPR画像生成手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記MPR画像を、前記断面画像及び前記展開画像と共に表示させる
ことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記色分け手段は、前記MPR画像において、前記生体組織の成分を分類し、前記分類毎に色分けし、
前記表示制御手段は、前記色分けされた前記MPR画像を表示させる
ことを特徴とする請求項10に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
さらに、前記表示制御手段は、前記医用画像データに基づいて指定された視点を前記MPR画像上に表示させる
ことを特徴とする請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
さらに、前記表示制御手段は、入力部の操作を受けて、前記視点を移動可能に表示させる
ことを特徴とする請求項12に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
さらに、前記表示制御手段は、前記視点を前記展開画像上に表示させるとともに、前記展開画像上の前記視点を前記MPR画像上の前記視点と連動させて表示させる
ことを特徴とする請求項13に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記管状部の外壁を前記断面画像の外側に開いたように表される外壁展開画像を生成する外壁展開画像生成手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記生成された外壁展開画像を、前記断面画像及び前記MPR画像と共に表示させる
ことを特徴とする請求項7から請求項14のいずれかに記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
さらに、前記表示制御手段は、前記外壁展開画像において前記管状部の外壁の凹部及び/または凸部を含む形態を表示させるとともに、前記凹部及び前記凸部を区別可能に表示させる
ことを特徴とする請求項15に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
前記医用画像データを基に、指定された視点から前記管状部を見たときの前記管状部の外側を示すビュー画像を作成するビュー画像生成手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記作成されたビュー画像を、前記断面画像、前記展開画像、及びMPR画像と共に表示させる
ことを特徴とする請求項7から請求項16のいずれかに記載の医用画像診断装置。
【請求項18】
さらに、前記表示制御手段は、前記ビュー画像において前記管状部の外壁の凹部及び/または凸部を含む形態を表示させるとともに、前記凹部及び前記凸部を区別可能に表示させる
ことを特徴とする請求項17に記載の医用画像診断装置。
【請求項19】
外部から取得される、内壁及び外壁を有する生体組織の3次元の医用画像データを基に、前記生体組織の内壁を抽出する内壁抽出手段と、
前記医用画像データを基に、前記生体組織の外壁を抽出する外壁抽出手段と、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の情報を求める第1隆起部算出手段と、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の情報を求める第2隆起部算出手段と、
前記第1隆起部算出手段により求められた前記第1隆起部の情報及び前記第2隆起部算出手段により求められた前記第2隆起部の情報を前記生体組織の画像に重ねて表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有する
ことを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項20】
外部から取得される、内壁及び外壁を有する生体組織の3次元の医用画像データを基に、前記生体組織の内壁を抽出する内壁抽出手段と、
前記医用画像データを基に、前記生体組織の外壁を抽出する外壁抽出手段と、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の情報を求める第1隆起部算出手段と、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の情報を求める第2隆起部算出手段と、
前記第1隆起部の情報及び前記第2隆起部の情報を関連付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
を有する
ことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項21】
外部から取得される、内壁及び外壁を有する生体組織の3次元の医用画像データを基に、前記生体組織の内壁を抽出するステップと、
前記医用画像データを基に、前記生体組織の外壁を抽出するステップと、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の内壁が内側に隆起する第1隆起部の情報を求める第1隆起部算出ステップと、
前記生体組織の内壁を基に、前記生体組織の外壁が外側に隆起する第2隆起部の情報を求める第2隆起部算出ステップと、
前記第1隆起部の情報及び前記第2隆起部の情報を関連付けて記憶手段に記憶させる記憶制御ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−196437(P2012−196437A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52409(P2012−52409)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】