説明

医用画像診断装置、医用画像表示装置及び制御プログラム

【課題】疾患領域から収集された画像データを重点的に表示する
【解決手段】被検体から収集したボリュームデータに基づいて異なる複数の画像断面における画像データの生成と表示を行なう医用画像診断装置100は、前記ボリュームデータに対して設定した前記画像断面における画像データを生成する画像データ生成部6と、前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患領域を検出する疾患領域検出部7と、前記ボリュームデータの疾患領域に対し所定形状の関心領域を設定する関心領域設定部8と、前記関心領域と交わる前記画像断面において生成された画像データを重点的に表示するための表示データを生成する表示データ生成部9と、前記表示データを表示する表示部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体の疾患領域から収集された画像データを重点的に観察することが可能な医用画像診断装置、医用画像表示装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置、MRI装置、X線CT装置及び核医学イメージング装置などを用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
上述のX線診断装置やX線CT装置は、臓器や腫瘍等の輪郭を描出することによって診断を行なう、所謂、形態診断を目的としているのに対し、核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた放射性同位元素又はその標識化合物から放射されるγ線を体外から計測し、その線量分布を画像化することにより被検体に対する機能診断を可能としている。
【0004】
そして、上述の核医学イメージング装置として、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET(Positron Emission Computed Tomography)装置)等が臨床の場で使用されており、例えば、PET装置は、陽電子(ポジトロン)を放出する核種によって標識した放射性同位元素を被検体に投与し、この陽電子が電子と結合して消滅する際に被検体の周囲に配置したリング状の検出器によって検出される一対のγ線情報を再構成処理することにより画像データの生成を行なっている。
【0005】
又、近年では、形態画像データの収集を可能とするX線CT装置やMRI装置等の形態画像診断装置と機能画像データの収集を可能とするPET装置やSPECT装置等の機能画像診断装置を一体化した医用画像診断装置が新たに開発され、このような医用画像診断装置を用いることにより被検体の全身領域における形態画像データ及び機能画像データを効率よく収集することが可能となった。
【0006】
しかしながら、このような医用画像診断装置の実用化により被検体に対する一回の検査において極めて多くの画像データが収集され、又、画像データの生成における高分解能技術の発展に伴い、これら画像データの読影を担当する医師等の負担は増大の一途にある。そして、このような問題点を改善するために、画像データに示された腫瘍等の疾患部を自動的に検出し、診断(画像読影)に要する時間を短縮することが可能な診断支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−29481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動検出された腫瘍等の疾患部の画像データに基づいて当該被検体に対する画像診断を行なう上述の方法により診断効率の大幅な改善が期待される。しかしながら、種々の大きさや形状を有した疾患部を確実に検出することは現在の画像処理技術では不可能であるため、疾患部を見落とすリスクを常に考慮しなくてはならないという問題点を有していた。
【0009】
本開示は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体から収集された多くの画像データを用いて診断を行なう際、前記画像データあるいはこの画像データの生成に用いられた画像情報に基づいて自動検出した疾患領域を重点的に表示することにより、読影に要する時間を短縮すると共に当該疾患領域に対する見落としリスクを低減することが可能な医用画像診断装置、医用画像表示装置及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の医用画像診断装置は、被検体から収集したボリュームデータに基づいて異なる複数の画像断面における画像データの生成と表示を行なう医用画像診断装置において、前記ボリュームデータに対して設定した前記画像断面における画像データを生成する画像データ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患領域を検出する疾患領域検出手段と、前記ボリュームデータの疾患領域に対し所定形状の関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記関心領域と交わる前記画像断面において生成された画像データを重点的に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段と、前記表示データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える形態画像情報収集部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える機能画像情報収集部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態の機能画像情報収集部が備える検出器モジュールを説明するための図。
【図5】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える画像断面形成部によって形成される画像断面の具体例を説明するための図。
【図6】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える疾患領域検出部の具体的な構成を示すブロック図。
【図7】第1の実施形態の疾患領域検出部において生成されるプロファイルデータの具体例を示す図。
【図8】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える表示データ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図9】第1の実施形態の表示データ生成部において生成される表示データの具体例を示す図。
【図10】第1の実施形態の医用画像診断装置が備える注目データ領域設定部によって設定された注目データ収集領域を説明するための図。
【図11】第1の実施形態の医用画像診断装置が備えるX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図。
【図12】第1の実施形態における表示データの生成/表示手順を示すフローチャート。
【図13】第2の実施形態における医用画像表示装置の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態の医用画像診断装置では、先ず、被検体に対するX線CT撮影及びPET撮影によって3次元の形態画像情報(形態ボリュームデータ)及び機能画像情報(機能ボリュームデータ)を収集し、更に、上述の形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータに対し体軸方向に垂直な複数の画像断面を形成して各々の画像断面における形態画像データ及び機能画像データを生成する。次いで、機能ボリュームデータのボクセル値を処理して得られるSUVデータのSUV値に基づいて疾患候補領域を検出し、この疾患候補領域におけるSUVデータのプロファイルデータに基づいて疾患領域を検出する。そして、前記疾患領域を囲むように設定された所定形状の関心領域と交わる画像断面にて収集された画像データを重点的に表示する。例えば、スライスマーカで示される表示断面を体軸方向へ順次移動させながらこの表示断面に対応する画像断面において生成された形態画像データ及び機能画像データを時系列的に表示するシネ表示モードが選択された場合、上述の関心領域と交わる画像断面にて収集された画像データの表示速度(単位時間内に表示される画像データの数)を、他の画像断面にて収集された画像データの表示速度より遅くなるように形態画像データ及び機能画像データの表示速度を制御する。
【0014】
尚、以下の実施形態では、X線CT撮影によって形態ボリュームデータを収集する形態画像情報収集部と、PET撮影によって機能ボリュームデータを収集する機能画像情報収集部とを有する医用画像診断装置について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば、形態画像情報収集部は、MRI撮影によって形態ボリュームデータを収集してもよく、又、機能画像情報収集部は、SPECT撮影によって機能ボリュームデータを収集してもよい。
【0015】
又、上述のボリュームデータに基づいて被検体の体軸方向に垂直な複数の画像断面(アキシャル断面)における2次元の形態画像データ及び機能画像データを生成する場合について述べるが、体軸方向に平行な画像断面(コロナル断面あるいはサジタル断面)や任意の画像断面における形態画像データ及び機能画像データであっても構わない。
【0016】
(装置の構成)
本実施形態における医用画像診断装置の構成につき図1乃至図11を用いて説明する。尚、図1は、本実施形態における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図3は、この医用画像診断装置が備える形態画像情報収集部及び機能画像情報収集部の具体的な構成を示すブロック図である。又、図6及び図8は、前記医用画像診断装置が備える疾患領域検出部及び表示データ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す本実施形態の医用画像診断装置100は、回転架台部のX線発生部21から放射され被検体150を透過したX線を投影データ生成部22により検出して投影データを生成し、この投影データに基づいて形態ボリュームデータを生成する形態画像情報収集部(X線CT撮影部)2と、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射される1対のγ線の検出方向及び検出位置を検出して投影データを生成し、この投影データに基づいて機能ボリュームデータを生成する機能画像情報収集部(PET撮影部)3と、形態画像情報収集部2及び機能画像情報収集部3において生成されたボリュームデータを保存するボリュームデータ記憶部4と、上述の形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータに対し被検体150の体軸方向(図1のz軸方向)に垂直な複数の画像断面(アキシャル断面)を形成する画像断面形成部5と、ボリュームデータ記憶部4から読み出した形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータの前記画像断面におけるボクセルに基づいて被検体150の体軸方向に垂直な複数の形態画像データ及び機能画像データを生成し、更に、上述の機能ボリュームデータに基づいて被検体150の正面方向及び側面方向におけるMIP(最大値投影:maximum intensity projection)画像データを生成する画像データ生成部6を備えている。
【0018】
又、医用画像診断装置100は、ボリュームデータ記憶部4から供給される機能ボリュームデータに基づいて被検体150の疾患領域を検出する疾患領域検出部7と、疾患領域を囲む所定サイズの関心領域を上述の機能ボリュームデータ及び形態ボリュームデータに対して設定する関心領域設定部8と、画像データ生成部6において生成された形態画像データ、機能画像データ及びMIP画像データに機能画像データのサムネールデータや疾患領域検出部7において算出された後述のSUV値及びプロファイルデータの半値幅FWHM(full width at half maximum)等を付加して表示データを生成する表示データ生成部9と、表示データ生成部9において生成された上述の表示データを表示する表示部10と、関心領域設定部8において設定された関心領域の位置情報と画像断面形成部5において形成された画像断面の位置情報に基づいて当該疾患領域の診断に有効な形態画像データ及び機能画像データが収集される領域を注目データ収集領域として設定する注目データ領域設定部11と、注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データと注目データ収集領域以外の領域において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度を制御する表示速度制御部12を備え、更に、図示しない寝台に据え付けられ被検体150を載置する天板13と、形態画像情報収集部2を有するX線CT架台部及び機能画像情報収集部3を有するPET架台部(何れも図示せず)を体軸方向へ移動させることによりその検査対象部位を各々の撮影野に配置する移動機構部14と、被検体情報の入力、撮影条件やボリュームデータ収集条件の設定、画像データ生成条件及び表示データ生成条件の設定、表示データ表示条件の設定、各種指示信号の入力等を行なう入力部15と、医用画像診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部16を備えている。
【0019】
次に、医用画像診断装置100が備える上述の各ユニットの構成と機能につき更に詳しく説明する。
【0020】
図1に示した形態画像情報収集部2は、図2に示すように、X線発生部21、投影データ生成部22、回転架台部23、固定架台部24及び形態ボリュームデータ生成部25を備え、X線発生部21は、被検体150に対してX線を照射するX線管211と、X線管211の陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生する高電圧発生器212と、X線管211から放射されたX線の照射範囲を設定するX線絞り器213と、回転架台部23のX線管211に対し上述の高電圧を供給するスリップリング214を備えている。 X線管211は、X線を発生する真空管であり、高電圧発生器212から供給される高電圧によって加速した電子をタングステンターゲットに衝突させてX線を放射する。一方、X線絞り器213は、X線管211と被検体150の間に設けられ、X線管211から放射されたX線を所定の撮影領域に絞り込む機能と被検体150に対するX線の照射強度分布を設定する機能を有している。例えば、X線管211から放射されたX線ビームを撮影領域に対応したコーンビーム状あるいはファンビーム状のX線ビームに成形する。
【0021】
次に、投影データ生成部22は、被検体150を透過したX線を検出するX線検出器221と、X線検出器221から出力された複数チャンネルの検出信号に対し電流/電圧変換やA/D変換等の信号処理を行なうデータ収集ユニット(以下、DAS(Data Acquisition System)ユニットと呼ぶ。)222と、DASユニット222の出力信号に対してパラレル/シリアル変換、電気/光/電気変換及びシリアル/パラレル変換を行なうデータ伝送回路223を備えている。
【0022】
投影データ生成部22のX線検出器221は、例えば、2次元配列された図示しない複数個のX線検出素子を備え、このX線検出素子の各々は、X線を光に変換するシンチレータと光を電気信号に変換するフォトダイオードによって構成されている。そして、これらのX線検出素子は、X線管211の焦点を中心とした円弧に沿って回転架台部23に取り付けられている。
【0023】
一方、DASユニット222は、X線検出器221の検出信号に対して電流/電圧変換やA/D変換等を行なう。そして、データ伝送回路223は、図示しないパラレル/シリアル変換器と電気/光/電気変換器とシリアル/パラレル変換器を有し、DASユニット222から出力された検出信号は、回転架台部23に取り付けられたパラレル/シリアル変換器において時系列的な1チャンネルの投影データに変換され、電気/光/電気変換器を用いた光通信により固定架台部24に取り付けられたシリアル/パラレル変換器に供給される。
【0024】
次いで、1チャンネルの投影データは、シリアル/パラレル変換器において複数チャンネルの投影データに変換され、形態ボリュームデータ生成部25が備える図示しない投影データ記憶部に保存される。
【0025】
尚、上述のデータ伝送方法は、回転架台部23に設けられた投影データ生成部22と固定架台部24の外部に設けられた形態ボリュームデータ生成部25との間の信号伝送が可能であれば他の方法に替えることが可能であり、例えば、既に述べたスリップリング等のデバイスを使用しても構わない。この場合、X線発生部21のX線管211及びX線絞り器213と上述の投影データ生成部22のX線検出器221及びDASユニット222は、被検体150を挟むように対向して回転架台部23に装着される。
【0026】
形態ボリュームデータ生成部25は、図示しない投影データ記憶部、再構成処理部及びデータ処理部を備え、投影データ記憶部には、投影データ生成部22において生成された投影データが回転架台部23の回転角度情報等を付帯情報として保存される。一方、再構成処理部は、投影データ記憶部から読み出した上述の投影データを再構成処理して形態ボリュームデータを生成し、データ処理部は、得られた形態ボリュームデータに対し補間処理等のデータ処理を行なう。そして、データ処理後の形態ボリュームデータは、図1に示したボリュームデータ記憶部4の形態ボリュームデータ記憶部41に保存される。
【0027】
次に、図1の機能画像情報収集部3は、図3に示すように、被検体150の周囲において同心円状に配列され、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射される1対のγ線を検出する検出器モジュール31と、検出されたγ線とノイズとの弁別、γ線の検出時刻や検出位置の計測、同時計測された1対のγ線の検出位置等に基づく検出方向の計測を行ない、更に、所定期間におけるγ線のカウント値をγ線検出位置及びγ線検出方向に対応させて累積演算することにより投影データを生成する検出データ処理部32と、得られた投影データを再構成処理することによって機能ボリュームデータを生成する機能ボリュームデータ生成部33を備えている。
【0028】
複数個からなる検出器モジュール31(31−1乃至31−Nm)は、天板13に載置された状態で機能画像情報収集部3の撮影野に配置された被検体150の周囲において同心円状に配列され、被検体150から放射されたγ線は、これらの検出器モジュール31によって一旦可視光に変換された後電気信号(検出信号)に変換される。
【0029】
図4は、検出器モジュール31の具体的な構成を示したものであり、検出器モジュール31−1乃至31−Nmの各々は、被検体150から放射されるγ線を検出して可視光に変換する短冊状のシンチレータ311と、シンチレータ311によって変換された可視光を電気信号に変換すると共に変換した微弱な電気信号を増幅する光電子増倍管312と、シンチレータ311から出力された可視光を光電子増倍管312へ伝達するライトガイド313を有している。
【0030】
シンチレータ311は、ビスマスジャーマネイド(BGO:(BiGe12))、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、フッ化バリウム(BaF)等の材料が用いられ、特に、機能画像情報収集部3の検出器モジュール31には、単位体積当たりのγ線光電吸収率が高いビスマスジャーマネイドや応答速度の速いフッ化バリウムが好適である。
【0031】
光電子増倍管312は、例えば、数百個からなる光子を10〜1010個の電子に増幅し、出力段である陽極にその電子を収集して電気信号に変換するものであり図示しない光電陰極と電子増倍器を備えている。光電陰極には、その波長特性がシンチレータ311の発光波長に略均しい多アルカリ物質あるいは酸素やセシウムで活性化したバイアルカリ物質が用いられ、入射光子数に対する発生光電子数は通常20%乃至30%である。一方、電子増倍器は、2次電子放出現象に基づき、電子の伝搬経路に沿って配置された多段の電極と増幅された電子を収集する陽極とから構成されている。そして、管電圧が200V乃至300Vの場合の1段当たりの増幅率は約5倍であるため、上述の10の増幅率を得るためには10段程度の電極が設けられる。
【0032】
ライトガイド313は、シンチレータ311と光電子増倍管312を光学的にカップリングするためのものであり、シンチレータ311から出力された可視光を効率よく光電子増倍管312へ伝達するために光透過性に優れたプラスチック材が用いられる。
【0033】
図3へ戻って、機能画像情報収集部3の検出データ処理部32は、上述の検出器モジュール31−1乃至31−Nmの各々に接続されているNmチャンネルのデータ処理ユニット321−1乃至321−Nmと、これらのデータ処理ユニット321から出力されたγ線の検出位置情報に基づいてγ線の検出方向を計測する検出方向計測部322と、所定期間における検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線検出方向に対応させて順次累積加算することによりPET撮影モードの投影データを生成する投影データ生成部323を備えている。
【0034】
尚、ここでは、被検体150に投与された放射性同位元素Sから放射される1対のγ線が検出器モジュール31−a及び31−bによって検出された場合を想定し、検出器モジュール31−a及び31−bに接続されているデータ処理ユニット321−a及び321−bのみを示している。
【0035】
検出データ処理部32のデータ処理ユニット321−a及び321−bは、検出器モジュール31−a及び31−bの光電子増倍管312から供給された複数チャンネルの検出信号を加算合成する信号合成部331と、信号合成部331において合成された検出信号を用いてγ線に起因する検出信号とノイズとの弁別を各々の波高値に基づいて行なう信号弁別部332と、信号合成部331から出力された合成後の検出信号を矩形波に整形する波形整形部333と、信号弁別部332において弁別された検出信号に対応するγ線の検出時刻を波形整形部333から供給された矩形波のフロントエッジ等に基づいて計測する検出時刻計測部334と、信号弁別部332において弁別された検出信号に対応するγ線の検出位置を検出器モジュール31−a及び31−bの光電子増倍管312から供給された複数チャンネルの検出信号に基づいて計測する検出位置計測部335を備えている。尚、データ処理ユニット321を構成する各ユニットの具体的な構成と機能については、特開2007−107995号公報等において記載されているため詳細な説明は省略する。
【0036】
次に、検出データ処理部32の検出方向計測部322は、データ処理ユニット321−1乃至321−Nmの各々に設けられた検出時刻計測部334から供給されるγ線の検出時刻及び検出位置計測部335から供給されるγ線の検出位置の情報に基づき、被検体150の体内から放射されるγ線の検出方向を計測する。
【0037】
一方、投影データ生成部323は、累積演算機能を有する図示しない記憶回路を備え、検出方向計測部322から供給された検出信号のカウント値を上述のγ線の検出位置及び検出方向に対応させて前記記憶回路に保存する。そして、例えば、検出器モジュール31−aと検出器モジュール31−bによるγ線の検出が所定期間において行なわれる度に、検出信号のカウント値は、検出位置及び検出方向に対応した前記記憶回路のアドレスにおいて累積加算される。
【0038】
更に、検出器モジュール31−a及び検出器モジュール31−bと異なる他の検出器モジュール31において1対のγ線が検出された場合においても、γ線の検出位置と検出方向を上述と同様の方法によって計測し、検出信号のカウント値をγ線の検出位置及び検出方向に対応した前記記憶回路のアドレスにおいて累積加算する。即ち、所定期間内において順次検出されるγ線のカウント値は、検出位置及び検出方向に対応した記憶回路のアドレスにおいて累積加算され投影データが生成される。
【0039】
機能ボリュームデータ生成部33は、図示しない投影データ記憶部、再構成処理部及びデータ処理部を備え、投影データ記憶部には、検出データ処理部32の投影データ生成部323において生成された投影データが検出位置や検出方向等を付帯情報として保存される。一方、再構成処理部は、投影データ記憶部から読み出した上述の投影データを再構成処理して機能ボリュームデータを生成し、データ処理部は、得られた機能ボリュームデータに対し補間処理等のデータ処理を行なう。そして、データ処理後の機能ボリュームデータは、図1に示したボリュームデータ記憶部4の機能ボリュームデータ記憶部42に保存される。
【0040】
次に、図1の画像断面形成部5は、入力部15において設定された画像データ生成条件に基づいて複数の画像断面を形成する。図5は、被検体150の体軸方向(z軸方向)に垂直なN個の画像断面(アキシャル断面)S1乃至SNを示したものであり、画像断面形成部5は、入力部15からシステム制御部16を介して供給された画像データ生成条件に含まれている画像断面(アキシャル断面)の選択情報、アキシャル断面S1の位置座標Z1、画像断面数N及び画像断面間隔d等に基づいて被検体150に対する画像断面(アキシャル断面S1乃至SN)が形成される。
【0041】
尚、本実施形態では、被検体150から収集された形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータの各々に対し上述のアキシャル断面S1乃至SNを設定してN枚の形態画像データ及び機能画像データを生成する場合について述べるが、既に述べたように、画像断面はアキシャル断面に限定されるものではなく、例えば、体軸方向に平行な複数のコロナル断面(冠状断面)あるいはサジタル断面(矢状断面)を画像断面として選択しても構わない。
【0042】
次に、画像データ生成部6は、図1に示すように形態画像データ生成部61、機能画像データ生成部62及びMIP画像データ生成部63を備えている。そして、形態画像データ生成部61は、ボリュームデータ記憶部4の形態ボリュームデータ記憶部41から読み出した形態ボリュームデータに画像断面形成部5から供給されるアキシャル断面S1乃至SNを設定し、これらのアキシャル断面に存在する形態ボリュームデータのボクセルを抽出することによってN個の形態画像データを生成する。同様にして、機能画像データ生成部62は、機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータにアキシャル断面S1乃至SNを設定することによってN個の機能画像データを生成する。
【0043】
一方、MIP画像データ生成部63は、上述の機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータを被検体150の正面方向(図5のy方向)及び側面方向(図5のx方向)に垂直な投影面に最大値投影(即ち、投影面に垂直な複数からなる投影軸の各々において配列された複数のボクセルの中から最大ボクセル値を有するボクセルを選択し前記投影面に投影)することによって正面方向及び側面方向におけるMIP画像データを生成する。
【0044】
次に、疾患領域検出部7の具体的な構成と機能につき図6のブロック図を用いて説明する。この疾患領域検出部7は、図6に示すように、SUVデータ生成部711、フィルタリング処理部712及びSUV比較部713を有する疾患候補領域検出部71と、領域中心検出部721、プロファイルデータ生成部722及びFWHM比較部723を有する疾患領域判定部72を備えている。
【0045】
疾患候補領域検出部71のSUVデータ生成部711は、機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータのボクセル値(放射性同位元素の放射能濃度)に被検体150の体重/放射性同位元素の投与量を乗算することにより、上述の体重や投与量に影響されず定量的な評価が可能な指標値SUV(standardized uptake value)を有する3次元のSUVデータを生成する。
【0046】
フィルタリング処理部712は、SUVデータ生成部711から出力されたSUVデータに対しノイズ除去や平滑化を目的としたフィルタリング処理を必要に応じて行ない、SUV比較部713は、フィルタリング処理後のSUVデータのボクセル値と所定の閾値α(例えば、α=4.0)とを比較することにより多くの放射性同位元素が集積した1つあるいは複数の疾患候補領域を検出する。
【0047】
一方、疾患領域判定部72の領域中心検出部721は、SUV比較部713によって検出された疾患候補領域の各々における重心あるいは中心を算出することによって疾患候補領域の中心を検出する。次いで、プロファイルデータ生成部722は、領域中心検出部721によって検出された疾患候補領域の中心を原点とし、例えば、図5の直交座標系x−y−zに平行な直交座標系X−Y−Zをフィルタリング処理後のSUVデータに対して設定する。そして、各々の軸上に存在するSUVデータのボクセル値に基づいてX軸方向乃至Z軸方向におけるプロファイルデータを生成する。
【0048】
図7は、上述のプロファイルデータ生成部722によって生成されたX軸方向におけるプロファイルデータPfxを示したものであり、横軸は疾患候補領域の中心Xoを含むX軸方向の座標を、縦軸はX軸上に存在するSUVデータのボクセル値を夫々示している。又、閾値αより大きな値を有するプロファイルデータPfxの範囲は、SUV比較部713によって検出された疾患候補領域の幅を示している。同様にして、Y軸方向におけるプロファイルデータPfy及びZ軸方向におけるプロファイルデータPfzがプロファイルデータ生成部722によって生成される。
【0049】
次に、FWHM比較部723は、プロファイルデータ生成部722において生成された、例えば、X軸方向におけるプロファイルデータPfx(図7参照)の最大値Dmxを検出し、Dhx=Dmx/2の値を有するプロファイルデータPfxの半値幅FWHMx(full width at half maximum)を計測する。次いで、得られた半値幅FWHMxと所定の閾値(下限値)β1(例えば、β1=5mm)及び閾値(上限値)β2(例えば、β2=20mm)とを比較する。同様にして、Y軸方向におけるプロファイルデータPfyの半値幅FWHMy及びZ軸方向におけるプロファイルデータPfzの半値幅FWHMzの各々と上述の閾値β1及び閾値β2とを比較する。
【0050】
そして、半値幅FWHMx乃至半値幅FWHMzの何れもが閾値β1より大きく閾値β2より小さい場合、当該疾患候補領域は、真の疾患を有する疾患領域と判定する。一方、FWHMが閾値β1より小さい場合、疾患候補領域はノイズ領域と見なされ、FWHMが閾値β2より大きい場合、疾患候補領域は、連続的なSUV分布を有する正常臓器の一部として見なされる。
【0051】
尚、半値幅FWHMx乃至半値幅FWHMzの何れかが、閾値β1より小さい場合あるいは閾値β2より大きい場合、上述の直交座標系X−Y−Zを疾患候補領域の中心(Xo、Yo、Zo)の周囲で所定方向へ所定角度だけ回転させることによって新たな直交座標系を形成し、この新しい直交座標系において生成されたプロファイルデータの半値幅FWHM(FWHMx乃至FWHMz)と閾値β1及び閾値β2とを比較する。そして、半値幅FWHMの何れもがβ1<FWHM<β2となるまで直交座標系の更新及び更新された直交座標系における半値幅FWHMと閾値β1及び閾値β2との比較を所定回数繰り返し、更新された全ての直交座標系においても半値幅FWHMの何れかがFWHM<β1あるいはFWHM>β2となった場合、当該疾患候補領域は非疾患領域と判定する。
【0052】
尚、ここでは、プロファイルデータの半値幅FWHMx乃至半値幅FWHMzの何れもが閾値β1より大きく閾値β2より小さくなるまで直交座標系の更新を繰り返す方法について述べたが、疾患領域の判定は上述の方法に限定されない。例えば、図6に示した疾患領域判定部72のプロファイルデータ生成部722は、領域中心検出部721によって検出された疾患候補領域の重心を中心として放射状に形成された複数方向(例えば、6方向〜12方向)においてプロファイルデータを生成し、FWHM比較部723は、これらプロファイルデータの半値幅と閾値β1及び閾値β2とを比較する。そして、閾値β1より大きくβ2より小さな半値幅を有するプロファイルデータの数が予め設定されたNxより多い場合、当該疾患候補領域は疾患領域と判定し、Nxより小さい場合には非疾患領域と判定してもよい。
【0053】
次に、図1に示した関心領域設定部8は、疾患領域判定部72から供給された疾患領域の判定結果を受信する。そして、SUV比較部713において検出された1つあるいは複数の疾患候補領域の中に真の疾患を有する疾患領域が存在する場合、この判定結果と、入力部15からシステム制御部16を介して供給される関心領域条件(例えば、関心領域の形状及び大きさ)と、疾患領域判定部72から供給される疾患候補領域の中心位置情報に基づき、形態ボリュームデータ記憶部41に保存されている形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータ記憶部42に保存されている機能ボリュームデータの疾患領域に対し所定の形状と大きさを有した3次元の関心領域を設定する。
【0054】
この場合、例えば、疾患領域と判定された疾患候補領域の中心(ホットスポット)と所定の形状及び大きさを有した関心領域の中心とが一致するように関心領域の設定が行なわれる。そして、疾患領域に対して関心領域の位置や大きさが好適でない場合、手動による関心領域の更新が入力部15の入力デバイスを用いて行なわれる。
【0055】
次に、図1に示した表示データ生成部9の具体的な構成と機能につき図8のブロック図を用いて説明する。この表示データ生成部9は、データ記憶部91、サムネールデータ生成部92、スライスマーカ生成部93及びデータ合成部94を備えている。
【0056】
データ記憶部91は、画像データ生成部6の機能画像データ生成部62において生成された画像断面S1乃至SNの機能画像データを保存する機能画像データ記憶部911、形態画像データ生成部61において生成された前記画像断面における形態画像データを保存する形態画像データ記憶部912、MIP画像データ生成部63において生成された被検体150の正面方向及び側面方向におけるMIP画像データを保存するMIP画像データ記憶部913、疾患領域判定部72のFWHM比較部723において計測されたプロファイルデータの半値幅FWHMを保存するFWHM記憶部914、更には、疾患候補領域検出部71のSUVデータ生成部711において算出された機能ボリュームデータのSUV値を保存するSUV記憶部915を有している。
【0057】
サムネールデータ生成部92は、スライスマーカ生成部93から供給されるスライスマーカの位置情報と機能画像データ記憶部911から読み出した画像断面S1乃至SNにおける機能画像データを受信し、前記スライスマーカを基準とした所定範囲における複数の機能画像データを縮小処理することによりサムネールデータを生成する。一方、スライスマーカ生成部93は、固定表示モードにおいて入力部15が設定する表示断面に対応したスライスマーカ、あるいは、シネ表示モードにおいて後述の表示速度制御部12から供給される表示速度制御信号の表示速度に対応した移動速度を有するスライスマーカを生成する。
【0058】
そして、データ合成部94は、スライスマーカ生成部93から供給されるスライスマーカの位置情報を受信し、このスライスマーカと一致した画像断面における機能画像データ及び形態画像データをデータ記憶部91の機能画像データ記憶部911及び形態画像データ記憶部912から所定の読み出し速度で読み出す。次いで、上述の機能画像データ及び形態画像データと、MIP画像データ記憶部913から読み出した被検体150の正面方向及び側面方向におけるMIP画像データと、サムネールデータ生成部92において生成されたサムネールデータを合成し、更に、FWHM記憶部914及びSUV記憶部915から読み出した前記スライスマーカと交わる関心領域の半値幅FWHM及びSUV値を上述の画像データに付加することによって表示データを生成する。
【0059】
尚、スライスマーカによって示される表示断面を体軸方向へ順次移動させることにより、画像断面S1乃至SNあるいはその一部の画像断面において予め収集された形態画像データ及び機能画像データを時系列的に表示する、所謂、シネ表示モードにおいて、データ合成部94は、後述の表示速度制御部12から供給される表示速度制御信号の表示速度に対応した読み出し速度でデータ記憶部91に対する機能画像データ及び形態画像データの読み出しを行なうことにより、疾患領域を有する関心領域と交わる画像断面において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度は、他の画像断面において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度より遅く設定される。そして、このような表示速度の制御により、医用画像診断装置100を操作する医療従事者(以下では、操作者と呼ぶ)は、疾患領域及びその周辺領域から得られた形態画像データ及び機能画像データの読影を正確に行なうことが可能となる。
【0060】
次に、上述の表示データ生成部9によって生成される表示データの具体例につき図9を用いて説明する。図9(a)は、被検体150の正面方向において生成されたMIP画像データ(a−1)及び側面方向において生成されたMIP画像データ(a−2)であり、これらのMIP画像データには、スライスマーカ生成部93によって生成された体軸方向への移動が可能なスライスマーカSMが重畳されている。一方、図9(b)は、上述のスライスマーカSMを中心とした連続する複数の画像断面において生成された機能画像データのサムネールデータであり、関心領域と交わる画像断面において収集された機能画像データのサムネールデータには関心領域を示す矩形枠が付加され、更に、スライスマーカSMに対応する画像断面にて収集された機能画像データのサムネールデータは太枠によって囲まれている。
【0061】
又、図9(c)は、スライスマーカSMに対応する画像断面において収集された形態画像データ(c−1)及び機能画像データ(c−2)であり、この機能画像データの右下部には、例えば、スライスマーカSMが配置された関心領域ROにおける半値幅FWHMやSUV値(図9(d)参照)等が示されている。尚、上述の表示データを構成するMIP画像データ、形態画像データ及び機能画像データ、サムネールデータの各々には、疾患領域検出部7によって検出された疾患領域の中心を示すホットスポットHPと関心領域設定部8によって設定された関心領域ROが重畳表示されている。
【0062】
そして、表示モードの選択においてシネ表示モードが入力部15によって選択された場合、MIP画像データに重畳されたスライスマーカは体軸方向へ所定の速度で移動し、このスライスマーカと一致した画像断面における形態画像データ及び機能画像データに基づいて表示データが生成される。この場合、後述の表示速度制御部12から供給される表示速度制御信号に基づき、関心領域を有した領域(後述の注目データ収集領域)におけるスライスマーカの移動速度は、関心領域を有さない領域(非注目データ収集領域)における移動速度より遅く設定される。そして、上述の表示速度制御信号の表示速度(即ち、スライスマーカの移動速度)に対応した読み出し速度で形態画像データ及び機能画像データをデータ記憶部91から読み出すことにより、注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度は、非注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度より遅く設定される。
【0063】
一方、固定表示モードの選択とMIP画像データに対するスライスマーカの位置設定が入力部15において行なわれた場合、図9(c)に示すような前記スライスマーカに対応する画像断面にて収集された形態画像データ(c−1)及び機能画像データ(c−2)が関心領域RO、ホットスポットHP、SUV値及びFWHMと共に表示され、更に、図9(b)に示すような前記画像断面の位置に太枠が付加された機能画像データのサムネールデータが表示される。又、入力部15によってスライスマーカの位置が更新されたならば、更新後のスライスマーカに対応した形態画像データ、機能画像データ及びサムネールデータ等に基づいて新たな表示データが生成される。
【0064】
図1へ戻って、表示部10は、図示しない変換処理部とモニタを備え、変換処理部は、表示データ生成部9のデータ合成部94から供給される上述の表示データに対しD/A変換やTVフォーマット変換等の変換処理を行なってモニタに表示する。尚、表示データ生成部9によって生成され表示部10において表示された表示データを観察した操作者は、入力部15の入力デバイスを用いて前記表示データのMIP画像データ、形態画像データ及び機能画像データに示された関心領域の追加/削除や位置及び大きさの修正を必要に応じて行なうことが可能である。そして変更された関心領域に基づく表示データの収集と表示が再度行なわれる。
【0065】
次に、図1に示した注目データ領域設定部11は、図9(a)に示したスライスマーカSMを体軸方向へ順次移動させることにより画像断面S1乃至SNあるいはその一部において生成された形態画像データ及び機能画像データをシネ表示する際、関心領域設定部8が疾患領域に対して設定した関心領域の位置情報と画像断面形成部5が被検体150の体軸方向に対し間隔dで形成した画像断面S1乃至SNの位置情報とに基づき、当該関心領域によって囲まれた疾患領域の診断に有効な形態画像データ及び機能画像データの収集領域を注目データ収集領域として設定する。
【0066】
図10は、注目データ領域設定部11によって設定された注目データ収集領域を説明するための図であり、Z1乃至ZNは、図5において既に示したように被検体150の体軸方向(Z軸方向)に間隔dで形成された画像断面S1乃至SNの位置座標である。そして、画像断面S1乃至SNの1部である画像断面Sa1乃至SaMが被検体150の疾患領域を囲むように設定された3次元の関心領域ROと交わる場合、これらの画像断面Sa1乃至SaMを有する領域を注目データ収集領域として、又、注目データ収集領域以外の領域を非注目データ収集領域として設定する。
【0067】
次に、図1の表示速度制御部12は、注目データ領域設定部11から供給される注目データ収集領域及び非注目データ収集領域の領域情報と、表示データ生成部9のスライスマーカ生成部93から供給されるスライスマーカの位置情報を受信する。そして、スライスマーカが注目データ収集領域に存在する場合には、このスライスマーカに対応した画像断面における形態画像データ及び機能画像データを第1の表示速度SP1で表示し、スライスマーカが非注目データ収集領域に存在する場合には、このスライスマーカに対応した画像断面における形態画像データ及び機能画像データを前記第1の表示速度SP1より速い第2の表示速度SP2で表示するための表示制御信号を生成する。そして、得られた表示制御信号を表示データ生成部9のスライスマーカ生成部93及びデータ合成部94へ供給する。
【0068】
一方、移動機構部14は、図示しない架台回転部、架台移動部及び移動機構制御部を備え、架台回転部は、移動機構制御部から供給される架台回転制御信号に従ってX線管211及びX線検出器221が搭載された形態画像情報収集部2の回転架台部23を高速回転させる。
【0069】
架台移動部は、移動機構制御部から供給された架台移動制御信号に従い、形態画像情報収集部2を有するX線CT架台部及び機能画像情報収集部3を有するPET架台部を床面に設けられたガイドレールに沿って被検体150の体軸方向へ移動させる。
【0070】
移動機構制御部は、入力部15からシステム制御部16を介して供給される撮影条件やボリュームデータ収集条件等に基づいて生成した架台回転制御信号を架台回転部へ供給し、架台移動制御信号を架台移動部へ供給する。
【0071】
図11は、移動機構部14の架台移動部によって移動するX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図であり、この図11に示すように検査室の床面130には被検体150を載置する天板13を有した寝台131が据え付けられ、天板13の体軸方向(z方向)にガイドレール132が配設されている。そして、被検体150の検査対象部位が形態画像情報収集部2の撮影野及び機能画像情報収集部3の撮影野に配置されるように形態画像情報収集部2を有するX線CT架台部133及び機能画像情報収集部3を有するPET架台部134をガイドレール132に沿って体軸方向へ移動させることにより撮影位置の調整が行なわれる。
【0072】
次に、図1の入力部15は、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部10と組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、投与薬剤情報の入力、表示モードの選択、表示速度SP1及びSP2の設定、撮影条件及びボリュームデータ収集条件の設定、画像データ生成条件及び表示データ生成条件の設定、表示データ表示条件の設定、関心領域条件の設定、閾値α、閾値β1及び閾値β2の設定、各種指示信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。特に、上述の閾値は、機能画像情報収集部3の性能、放射性同位元素の投与量、放射性同位元素が投与されてからボリュームデータが収集されるまでの時間、再構成処理法、被検体150の検査対象部位等に基づいて設定される。
【0073】
一方、システム制御部16は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部15から供給される上述の入力情報、選択情報及び設定情報は、記憶回路に保存される。そして、CPUは、記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像診断装置100に備えられた各ユニットを統括的に制御し、形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータの生成、形態画像データ及び機能画像データの生成、これらの画像データに基づく表示データの生成、注目データ収集領域及び非注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データに対する表示速度制御等を実行させる。
【0074】
(表示データの生成/表示手順)
次に、本実施形態の形態画像情報収集部2及び機能画像情報収集部3によって生成されボリュームデータ記憶部4に予め保存された形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータを用いて行なわれる表示データの生成/表示手順につき図12のフローチャートに沿って説明する。但し、ここでは、表示モードとしてシネ表示モードが選択された場合について述べる。
【0075】
表示データの生成に先立ち、医用画像診断装置100の操作者は、入力部15において被検体情報を入力した後、シネ表示モードの選択、注目データ収集領域及び非注目データ収集領域に対する表示速度の設定、画像データ生成条件及び表示データ生成条件の設定、表示データ表示条件の設定、関心領域条件の設定、閾値α、閾値β1及び閾値β2等の設定を行なう(図12のステップS1)。そして、これらの入力情報、選択情報及び設定情報は、システム制御部16の記憶回路に保存される。
【0076】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、入力部15において表示データ生成開始指示信号を入力し、この指示信号が、システム制御部16へ供給されることにより表示データの生成が開始される(図12のステップS2)。
【0077】
即ち、システム制御部16を介して上述の表示データ生成開始指示信号を受信した疾患領域検出部7の疾患候補領域検出部71は、機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータのボクセル値に被検体150の体重/放射性同位元素の投与量を乗算することによって3次元のSUVデータを生成し、得られたSUVデータに対しノイズ除去や平滑化を目的としたフィルタリング処理を行なう。そして、フィルタリング処理されたSUVデータのボクセル値と閾値αとを比較することにより1つあるいは複数の疾患候補領域を検出する。
【0078】
一方、疾患領域検出部7の疾患領域判定部72は、疾患候補領域検出部71によって検出された疾患候補領域の中心を原点とした直交座標X−Y−Zをフィルタリング処理後のSUVデータに対して設定し、各々の軸上に存在するSUVデータのボクセル値を抽出することによってX軸方向乃至Z軸方向におけるプロファイルデータを生成する。次いで、前記プロファイルデータの半値幅FWHMと所定の閾値(下限値)β1及び閾値(上限値)β2とを比較することにより前記疾患候補領域の中から真の疾患を有する疾患領域を検出する(図12のステップS3)。
【0079】
次に、関心領域設定部8は、入力部15からシステム制御部16を介して供給された関心領域条件と、上述の疾患領域判定部72から供給された疾患領域の中心位置情報(ホットスポット位置情報)に基づき、形態ボリュームデータ記憶部41に保存されている形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータ記憶部42に保存されている機能ボリュームデータの疾患領域に対し所定の形状と大きさを有した3次元の関心領域を設定する(図12のステップS4)。
【0080】
一方、画像断面形成部5は、上述のステップS1において初期設定された画像データ生成条件に基づいて、例えば、被検体150の体軸方向(z軸方向)に垂直なN個の画像断面(アキシャル断面)S1乃至SNを形成する(図12のステップS5)。
【0081】
画像断面形成部5による画像断面の形成が終了したならば、画像データ生成部6の形態画像データ生成部61は、ボリュームデータ記憶部4の形態ボリュームデータ記憶部41から読み出した形態ボリュームデータに画像断面形成部5から供給された画像断面S1乃至SNを設定し、これらの画像断面に存在する形態ボリュームデータのボクセルを抽出することによって生成したN個の形態画像データを表示データ生成部9の形態画像データ記憶部912に保存する。同様にして、機能画像データ生成部62は、機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータに画像断面S1乃至SNを設定することによって生成したN個の機能画像データを表示データ生成部9の機能画像データ記憶部911に保存し、MIP画像データ生成部63は、機能ボリュームデータ記憶部42から読み出した機能ボリュームデータを被検体150の正面方向及び側面方向に垂直な投影面に最大値投影することによって生成した正面方向及び側面方向におけるMIP画像データを表示データ生成部9のMIP画像データ記憶部913に保存する(図12のステップS6)。
【0082】
一方、注目データ領域設定部11は、関心領域設定部8が疾患領域に対して設定した関心領域の位置情報と画像断面形成部5が被検体150の体軸方向に対し間隔dで形成した画像断面(アキシャル断面)S1乃至SNの位置情報とに基づき、当該関心領域によって囲まれた疾患領域の診断に有効な形態画像データ及び機能画像データの収集領域を注目データ収集領域に設定し、注目データ収集領域以外の領域を非注目データ収集領域に設定する(図12のステップS7)。
【0083】
そして、表示速度制御部12は、注目データ領域設定部11から供給された注目データ収集領域及び非注目データ収集領域の領域情報と、表示データ生成部9のスライスマーカ生成部93から供給されたスライスマーカの位置情報を受信する。そして、スライスマーカが注目データ収集領域に存在する場合には、このスライスマーカに対応した画像断面における形態画像データ及び機能画像データを第1の表示速度SP1で表示し、スライスマーカが非注目データ収集領域に存在する場合には、このスライスマーカに対応した画像断面における形態画像データ及び機能画像データを前記第1の表示速度SP1より速い第2の表示速度SP2で表示するための表示制御信号を生成して表示データ生成部9のスライスマーカ生成部93及びデータ合成部94へ供給する(図12のステップS8)。
【0084】
次に、表示データ生成部9のスライスマーカ生成部93は、表示速度制御部12から供給される表示速度制御信号に対応した移動速度を有するスライスマーカを生成し、サムネールデータ生成部92は、スライスマーカ生成部93から供給されたスライスマーカの位置情報を基準として機能画像データ記憶部911から読み出した所定範囲の機能画像データを縮小処理することによりサムネールデータを生成する。
【0085】
次いで、データ合成部94は、スライスマーカ生成部93から供給されたスライスマーカの位置情報を受信し、このスライスマーカと一致した画像断面における機能画像データ及び形態画像データを表示速度制御部12から供給された表示速度制御信号の表示速度に対応する読み出し速度で機能画像データ記憶部911及び形態画像データ記憶部912から読み出す。そして、上述の機能画像データ及び形態画像データと、MIP画像データ記憶部913から読み出した正面方向及び側面方向におけるMIP画像データと、上述のサムネールデータ生成部92において生成されたサムネールデータとを合成し、更に、疾患領域検出部7において計測されたプロファイルデータの半値幅FWHMや機能ボリュームデータのSUV値等を付加することによって表示データを生成する。そして、得られた表示データは表示部10のモニタに表示される(図12のステップS9)。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態における医用画像表示装置は、別途設置されたX線CT装置等の形態画像情報収集装置やPET装置等の機能画像情報収集装置において予め収集され、ネットワーク等を介して供給された形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータに対し複数の画像断面を形成して各々の画像断面における形態画像データ及び機能画像データを生成する。次いで、機能ボリュームデータのボクセル値を処理して得られるSUVデータのSUV値に基づいて疾患候補領域を検出し、この疾患候補領域におけるSUVデータのプロファイルデータに基づいて疾患領域を検出する。そして、前記疾患領域を囲むように設定された所定形状の関心領域と交わる画像断面にて収集された形態画像データ及び機能画像データを重点的に表示する。
【0087】
尚、本実施形態における医用画像表示装置の全体構成を示す図13のブロック図において、図1に示した医用画像診断装置100のユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0088】
即ち、図13に示す本実施形態の医用画像表示装置200は、X線CT装置やMRI装置等の医用画像診断装置によって予め収集された3次元の形態画像情報(形態ボリュームデータ)を保管する形態ボリュームデータ保管部171とPET装置やSPECT装置等の医用画像診断装置によって予め収集された3次元の機能画像情報(機能ボリュームデータ)を保管する機能ボリュームデータ保管部172を有するボリュームデータ保管部17と、上述の形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータに対して複数の画像断面を形成する画像断面形成部5と、ボリュームデータ記憶部4から読み出した形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータの前記画像断面におけるボクセルに基づいて複数の形態画像データ及び機能画像データを生成し、更に、この機能ボリュームデータに基づいて被検体150の正面方向及び側面方向におけるMIP画像データを生成する画像データ生成部6と、ボリュームデータ記憶部4から供給される機能ボリュームデータに基づいて被検体150の疾患領域を検出する疾患領域検出部7と、疾患領域を囲む所定サイズの関心領域を上述の機能ボリュームデータ及び形態ボリュームデータに対して設定する関心領域設定部8を備えている。
【0089】
又、医用画像表示装置200は、画像データ生成部6において生成された形態画像データ、機能画像データ及びMIP画像データに機能画像データのサムネールデータや疾患領域検出部7において算出されたSUV値及びプロファイルデータの半値幅FWHM等を付加して表示データを生成する表示データ生成部9と、表示データ生成部9において生成された上述の表示データを表示する表示部10と、関心領域設定部8において設定された関心領域の位置情報と画像断面形成部5において形成された画像断面の位置情報に基づいて当該疾患領域の診断に有効な形態画像データ及び機能画像データが収集される注目データ収集領域を設定する注目データ領域設定部11と、注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データと注目データ収集領域以外の領域において収集された形態画像データ及び機能画像データの表示速度を制御する表示速度制御部12を備え、更に、被検体情報の入力、画像データ生成条件及び表示データ生成条件の設定、表示データ表示条件の設定、各種指示信号の入力等を行なう入力部15aと、医用画像表示装置200が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部16aを備えている。
【0090】
そして、入力部15aは、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部10と組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、表示モードの選択、表示速度SP1及びSP2の設定、画像データ生成条件及び表示データ生成条件の設定、表示データ表示条件の設定、関心領域条件の設定、閾値α、閾値β1及び閾値β2の設定、各種指示信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。特に、閾値α、閾値β1及び閾値β2は、機能ボリュームデータを生成した医用画像診断装置の性能、機能ボリュームデータ生成時における放射性同位元素の投与量、放射性同位元素が投与されてからボリュームデータが収集されるまでの時間、再構成処理法、検査対象部位等に基づいて設定される。
【0091】
一方、システム制御部16aは、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部15aから供給される上述の入力情報、選択情報及び設定情報は、記憶回路に保存される。そして、CPUは、記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像表示装置200に備えられた各ユニットを統括的に制御し、形態画像データ及び機能画像データの生成、これらの画像データに基づく表示データの生成、注目データ収集領域及び非注目データ収集領域において収集された形態画像データ及び機能画像データに対する表示速度制御等を実行させる。
【0092】
尚、本実施形態における表示データの生成/表示手順は、図12に示した第1の実施形態における表示データの生成/表示手順と同様であるため説明は省略する。
【0093】
以上述べた第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、被検体から収集された多くの形態画像データ及び機能画像データを用いて疾患領域の診断を行なう際、これらの画像データの生成に用いられた3次元の画像情報(ボリュームデータ)に基づいて自動検出した疾患領域を重点的に表示することにより、読影に要する時間を短縮すると共に当該疾患領域に対する見落としリスクを低減することが可能となる。
【0094】
特に、上述の疾患領域に対して設定された関心領域と交わる画像断面にて収集された画像データの表示速度を、他の画像断面にて収集された画像データの表示速度より遅くなるように画像データの表示速度を制御することにより、全ての画像データの読影に多くの時間を費やすことなく疾患領域に対する観察をより詳細に行なうことができる。
【0095】
又、上述の関心領域を中心として一覧表示されたサムネールデータに基づいて所望の形態画像データ及び機能画像データを選択することができるため、これらの画像データを短時間で抽出することが可能となり、読影に要する時間は大幅に短縮される。
【0096】
更に、上述のボリュームデータに基づいて生成されたMIP画像データの前記関心領域に対してスライスマーカを手動的あるいは自動的に設定することにより、このスライスマーカの位置を中心としたサムネールデータと前記スライスマーカに対応した画像断面における形態画像データ及び機能画像データが自動的に表示されるため、効率のよい画像診断が可能となり、読影における操作者の負担が軽減される。
【0097】
又、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、画像データの画素値と所定の閾値とを比較することによって疾患候補領域を検出し、疾患候補領域における画素値のプロファイルデータの領域幅と所定の閾値とを比較することによって疾患領域の判定を行なっているため、真の疾患領域を正確かつ短時間で自動検出することが可能となる。
【0098】
一方、上述の第2の実施形態によれば、別途設置された医用画像診断装置からネットワーク等を介して供給された被検体のボリュームデータに基づいて形態画像データ及び機能画像データの生成と表示を行なうことができるため、医用画像表示装置の操作者は、時間や場所の制約をあまり受けることなく当該被検体の診断に有効な画像情報を容易に得ることができる。
【0099】
以上、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の第1の実施形態では、X線CT撮影によって形態ボリュームデータを収集する形態画像情報収集部2と、PET撮影によって機能ボリュームデータを収集する機能画像情報収集部3とを有する医用画像診断装置100について述べたが、形態画像情報収集部2は、MRI撮影によって形態ボリュームデータを収集してもよく、又、機能画像情報収集部3は、SPECT撮影によって機能ボリュームデータを収集してもよい。但し、SPECT撮影によって収集されたボリュームデータを用いて疾患領域の検出を行なう場合、散乱線補正や減弱補正されたボリュームデータを用いることが望ましい。
【0100】
又、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態では、形態ボリュームデータ及び機能ボリュームデータに基づいて被検体150の体軸方向に垂直な複数の画像断面(アキシャル断面)における2次元の形態画像データ及び機能画像データを生成する場合について述べたが、体軸方向に平行な画像断面(コロナル断面あるいはサジタル断面)や任意の画像断面における形態画像データ及び機能画像データであっても構わない。
【0101】
又、同一の画像断面において収集された形態画像データ及び機能画像データと、表示断面を示すスライスマーカが付加されたMIP画像データと、関心領域の画像データを中心とするサムネールデータを用いて表示データを生成する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、シネ表示モードの表示データにおけるサムネールデータは必ずしも必要としない。又、形態画像データあるいは機能画像データの何れかを用いて表示データを生成してもよい。
【0102】
更に、機能ボリュームデータのボクセル値やSUV値に基づいて疾患候補領域や疾患領域を検出する場合について述べたが、形態ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患候補領域や疾患領域の検出を行なってもよい。
【0103】
又、上述の実施形態では、プロファイルデータの半値幅FWHMx乃至半値幅FWHMzの何れもが閾値β1より大きく閾値β2より小さくなるまで直交座標系の更新を繰り返す方法について述べたが、疾患領域の判定は上述の方法に限定されない。例えば、図6に示した疾患領域判定部72のプロファイルデータ生成部722は、領域中心検出部721によって検出された疾患候補領域の重心を中心として放射状に形成された複数方向(例えば、6方向〜12方向)においてプロファイルデータを生成し、FWHM比較部723は、これらプロファイルデータの半値幅と閾値β1及び閾値β2とを比較する。そして、閾値β1より大きくβ2より小さな半値幅を有するプロファイルデータの数が予め設定されたNxより多い場合、当該疾患候補領域は疾患領域と判定し、Nxより小さい場合には非疾患領域と判定する。このような方法によっても疾患領域の判定は可能である。
【0104】
一方、体内に投与された放射性同位元素量の時間的推移が疾患領域に対する重要な判断基準になるため、異なる2つの時相(例えば、放射性同位元素が投与されてから1時間後の早期相及び2時間後の遅延相)において収集した画像データを比較する、所謂、遅延スキャン法の導入により疾患領域の診断を行なう方法が近年行なわれるようになった。このような場合、良好な画像情報を有する早期層の機能ボリュームデータに基づいて関心領域やホットスポットの位置情報を検出し、これらの位置情報を遅延層の機能ボリュームデータに設定してもよい。このような方法により、遅延層の画像データにおける疾患領域の見落としリスクを防止することができる。
【0105】
又、上述の実施形態では、シンチレータを検出器とした機能画像情報収集部(PET撮影部)3について述べたが、CdTe等の半導体を検出器として用いてもよい。このような半導体検出器を用いることにより消滅ガンマ線を直接電気信号へ変換することが可能となるためエネルギー分解能を向上させることができる。
【0106】
尚、本実施形態に係る医用画像診断装置100あるいは医用画像表示装置200に含まれる各ユニットは、例えば、CPU、RAM、磁気記憶装置、入力装置、表示装置等で構成されるコンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、医用画像診断装置100を制御するシステム制御部16あるいは医用画像表示装置200を制御するシステム制御部16aは、上記のコンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータ読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0107】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
2…形態画像情報収集部
21…X線発生部
22…投影データ生成部
25…形態ボリュームデータ生成部
3…機能画像情報収集部
31…検出器モジュール
32…検出データ処理部
33…形態ボリュームデータ生成部
4…ボリュームデータ記憶部
41…形態ボリュームデータ記憶部
42…機能ボリュームデータ記憶部
5…画像断面形成部
6…画像データ生成部
61…形態画像データ生成部
62…機能画像データ生成部
63…MIP画像データ生成部
7…疾患領域検出部
8…関心領域設定部
9…表示データ生成部
10…表示部
11…注目データ領域設定部
12…表示速度制御部
13…天板
14…移動機構部
15、15a…入力部
16、16a…システム制御部
100…医用画像診断装置
200…医用画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から収集したボリュームデータに基づいて異なる複数の画像断面における画像データの生成と表示を行なう医用画像診断装置において、
前記ボリュームデータに対して設定した前記画像断面における画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患領域を検出する疾患領域検出手段と、
前記ボリュームデータの疾患領域に対し所定形状の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記関心領域と交わる前記画像断面において生成された画像データを重点的に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段と、
前記表示データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記関心領域と交わる画像断面において生成された前記画像データの表示速度が他の画像断面において生成された前記画像データの表示速度より遅くなるように各々の画像データに対する表示速度を制御する表示速度制御手段を備え、前記表示データ生成手段は、前記表示速度制御手段から供給される表示速度制御信号に基づいて前記表示データを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
ボリュームデータ記憶手段を備え、前記表示データ生成手段は、前記ボリュームデータ記憶手段に保存されている前記ボリュームデータの前記画像断面におけるボクセルを前記表示速度に対応した読み出し速度で読み出すことにより前記表示データを生成することを特徴とする請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記ボリュームデータに基づいてMIP(maximum intensity projection)画像データを生成するMIP画像データ生成手段と、表示される画像断面の位置を示すスライスマーカを生成するスライスマーカ生成手段を備え、前記表示データ生成手段は、前記表示速度に対応した移動速度で所定方向へ移動する前記スライスマーカが重畳された前記MIP画像データと、前記スライスマーカによって示された前記画像断面における前記画像データに基づいて前記表示データを生成することを特徴とする請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記ボリュームデータに基づいてMIP画像データを生成するMIP画像データ生成手段と、表示される画像断面の位置を示すスライスマーカを生成するスライスマーカ生成手段と、前記スライスマーカによって示された前記画像断面を中心とする複数の画像断面における前記画像データに基づいてサムネールデータを生成するサムネールデータ生成手段を備え、前記表示データ生成手段は、前記スライスマーカが重畳されたMIP画像データと、このスライスマーカによって示された前記画像断面における前記画像データと、前記サムネールデータに基づいて前記表示データを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記疾患領域検出手段は、前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患部の候補領域を検出する疾患候補領域検出手段と、前記候補領域におけるボクセル値のプロファイルデータに基づいて疾患領域の判定を行なう疾患領域判定手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記表示データ生成手段は、前記表示データに対し少なくとも前記プロファイルデータの半値幅情報を付加することを特徴とする請求項6記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記画像データ生成手段は、形態画像情報収集手段あるいは機能画像情報収集手段の少なくとも何れかによって収集された前記ボリュームデータに基づいて前記画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記疾患領域検出手段は、機能画像情報収集手段によって収集された前記ボリュームデータあるいは前記ボリュームデータのボクセル値を処理して得られる3次元のSUV(standardized uptake value)データに基づいて前記疾患領域を検出することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記形態画像情報収集手段は、X線CT撮影手段あるいはMRI撮影手段の何れかであり、前記機能画像情報収集手段は、PET撮影手段あるいはSPECT撮影手段の何れかであることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載した医用画像診断装置。
【請求項11】
医用画像診断装置によって予め収集された被検体のボリュームデータに基づいて異なる複数の画像断面における画像データの生成と表示を行なう医用画像表示装置において、
前記ボリュームデータに対して設定した前記画像断面における画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患領域を検出する疾患領域検出手段と、
前記ボリュームデータの疾患領域に対し所定形状の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記関心領域と交わる前記画像断面において生成された画像データを重点的に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段と、
前記表示データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項12】
被検体から収集したボリュームデータに基づいて異なる複数の画像断面における画像データの生成と表示を行なう医用画像診断装置に対し、
前記ボリュームデータに対して設定した前記画像断面における画像データを生成する画像データ生成機能と、
前記ボリュームデータのボクセル値に基づいて疾患領域を検出する疾患領域検出機能と、
前記ボリュームデータの疾患領域に対し所定形状の関心領域を設定する関心領域設定機能と、
前記関心領域と交わる前記画像断面において生成された画像データを重点的に表示するための表示データを生成する表示データ生成機能と、
前記表示データを表示する表示機能を
実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−85622(P2013−85622A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227210(P2011−227210)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】