説明

医療システム及び医療システムの管理方法

【課題】看護師等に負担をかけることなく、医療処方情報に取り違い等が発生しない医療システム等を提供すること。
【解決手段】医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置10と、医療処方情報に対応した薬剤を配置するための配置部と、その薬剤に関する薬剤情報と、を有する薬剤配置部30と、医療従事者が有する医療従事者用装置90と、患者が有する患者用装置50と、患者の治療に使用される医療機器70と、を有し、医療従事者用装置を所持した医療従事者が、医療処方情報装置、薬剤配置部及び医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、患者用装置又は患者用装置を装着している患者と接触することで、患者用装置と自動的に通信することができる医療システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、患者等の治療に用いる医療機器等を有する医療システム及び医療システムの管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の治療のために用いられる輸液ポンプ等の医療機器に、薬剤を装填し動作させるときは、担当する看護師等は、各患者のための薬剤の種類や医療機器の具体的な動作等が記載されている「カルテ」を参照する。
このとき、カルテが紙で保管されていると、取り扱いが不便等となることに鑑み、コンピュータを用いた電子カルテが提案されている。また、このような電子カルテのデータも通信等で、電子データとして取得し、この電子データを電子カルテに反映させるシステム等が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―22969公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際に現場で輸液ポンプ等を操作する看護師等が、このような電子カルテのデータを取得するには、コンピュータを操作する必要がある。
また、看護師等は患者の処置等で多忙であるため、かかる操作を強いることは負担となり、特に操作間違い等で誤ったデータ等を取得するおそれがあるという問題もあった。
さらに、看護師等が患者毎の薬剤を配置する薬剤トレーを取り扱う際に、自己が処置等をしようとしている患者の薬剤トレーであるかを確認する必要があり、このことも、看護師等に負担を強いていた。
【0005】
そこで、本発明は、看護師等の医療従事者等に負担をかけることなく、且つ、カルテデータ等の医療処方情報に取り違い等が発生しない医療システム及び医療システムの管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明にあっては、医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、前記医療処方情報に対応した薬剤を配置するための配置部と、その薬剤に関する薬剤情報と、を有する薬剤配置部と、医療従事者が有する医療従事者用装置と、患者が有する患者用装置と、患者の治療に使用される医療機器と、を有する医療システムであって、少なくとも、前記医療従事者用装置を所持した医療従事者が、前記医療処方情報装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、前記患者用装置又は前記患者用装置を装着している患者と接触することで、前記患者用装置と自動的に通信することができる構成となっていることを特徴とする医療システムにより達成される。
【0007】
前記構成によれば、医療従事者用装置を所持した医療従事者が、医療処方情報装置、前記薬剤配置部及び医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、患者用装置又は患者用装置を装着している患者と接触することで、患者用装置と自動的に通信することができる構成となっている。
したがって、看護師等の医療従事者は、医療従事者用装置を所持した状態で、電子カルテ等の医療処方情報装置に触れるだけで、医療処方情報を取得することができる。このため、従来のように看護師等がコンピュータ等を操作する必要がないので、看護師等の負担が軽減されることとなる。
また、看護師等は、医療処方情報を自己の医療従事者用装置に自動的に取得できるので、コンピュータ等の操作間違い等に起因するカルテデータ等の医療処方情報の取得間違い等を未然に防止することができる。
【0008】
さらに、看護師等は、薬剤配置部に触れるだけで、薬剤トレー等の薬剤配置部と通信でき、当該薬剤トレー等が自己の処置等をしようとしている患者の薬剤トレーであるかを確認することができる。
この点、従来は、看護師等の目視等でのみ確認していたので、従来に比べ、格段と看護師等の負担を軽減させることができる。
また、看護師等の医療従事者は、医療従事者用装置を所持した状態で、患者又は患者用装置に触れるだけで、患者確認等の通信を行うことができ、さらに、輸液ポンプ等の医療機器に触れるだけで、例えば、医療機器の動作に必要な医療処方情報を送信できるので、看護師等の負担を著しく軽減させることができる。
さらに、前記構成は、医療従事者、患者、医療処方情報装置及び医療機器の間に新たなシステムを構築させる必要がないため、看護師等の医療従事者の負担を低コストで軽減することもできる。
【0009】
好ましくは、前記医療従事者用装置と前記医療処方情報装置、前記患者用装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器との間の通信は、医療従事者若しくは前記医療従事者及び患者の身体を介して行われることを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、通信が所謂、人体通信で行われるので、例えば、看護師等の医療従事者が医療処方情報装置等の筐体等に触れるだけで、通信が実行され、触れている手等を医療処方情報装置等の筐体等から離すだけで通信が終了する。
したがって、医療従事者等にとって極めて容易且つ簡単に通信を実行することができる。
【0011】
好ましくは、前記医療従事者用装置が前記医療処方情報装置と通信することで、前記医療処方情報を取得し、前記医療従事者用装置は、取得した前記医療処方情報から特定の患者の前記医療処方情報を特定し、前記医療従事者用装置は、前記薬剤配置部と通信することで、前記医療従事者用装置が特定した前記医療処方情報と当該薬剤配置部の前記薬剤情報とが対応しているか否かを判断し、前記医療従事者用装置は、前記特定の患者の前記患者用装置と通信をすることで、前記特定の患者の確認を行うと共に、前記医療機器と通信を行うことで、前記医療処方情報を前記医療機器に送信する構成となっていることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、医療従事者用装置は、薬剤配置部と通信することで、選択した薬剤配置部が正しいか否かの確認ができるとともに、特定の患者の患者用装置と通信をすることで、特定の患者の確認を行うことができる。また、医療従事者用装置は、医療機器と通信を行うことで、医療処方情報を医療機器に送信できる構成ともなっている。
このため、看護師等の医療従事者は、極めて簡単且つ容易に,薬剤配置部及び患者を確認でき、さらに医療機器への必要な情報の提供も行うことができる。
【0013】
好ましくは、前記医療処方情報装置では、前記医療処方情報に前記医療従事者の識別情報が関連付けられて記憶されていることを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、医療処方情報装置では、医療処方情報に医療従事者の識別情報が関連付けられて記憶されている。このため、例えば、看護師端末等の医療従事者用装置が、医療従事者の識別情報である例えば、例えば、看護師識別情報等を医療処方情報装置に送信することで、医療処方情報装置は、当該看護師識別情報と関連ある医療処方情報を選択して看護師端末に送信することができる。
このため、看護師端末等の医療従事者用装置は、必要な医療処方情報を自動的に間違いなく取得することができる。
【0015】
好ましくは、前記医療従事者用装置が、前記医療従事者の前記識別情報を前記医療機器に送信し、前記医療機器が当該医療従事者用装置の医療従事者の操作を許可した後、許可された医療従事者の前記医療従事者用装置が、許可した前記医療機器に前記医療処方情報を送信する構成となっていることを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、医療機器が当該医療従事者用装置の医療従事者の操作を許可した後、許可された医療従事者の医療従事者用装置が、許可した医療機器に医療処方情報を送信する構成となっている。
このため、当該医療機器の操作権限のない者が、当該医療機器を操作することを、効果的に防ぐことができる。
【0017】
上記目的は、本発明にあっては、医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、前記医療処方情報に対応した薬剤を配置するための配置部と、その薬剤に関する薬剤情報と、を有する薬剤配置部と、医療従事者が有する医療従事者用装置と、患者が有する患者用装置と、患者の治療に使用される医療機器と、を有する医療システムの管理方法であって、少なくとも、前記医療従事者用装置を所持した医療従事者が、前記医療処方情報装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、前記患者用装置又は前記患者用装置を装着している患者と接触することで、前記患者用装置と自動的に通信することができる構成となっていることを特徴とする医療システムの管理方法により達成される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、看護師等の医療従事者等に負担をかけることなく、且つ、カルテデータ等の医療処方情報に取り違い等が発生しない医療システム及び医療システムの管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の医療システムを示す概略図である。
【図2】看護師端末と電子カルテ装置を例とした人体通信の概略説明図である。
【図3】図1の電子カルテ装置及び看護師端末の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図4】図1の薬剤トレー及び患者端末の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図5】図1の輸液ポンプの主な構成を示す概略ブロック図である。
【図6】図1の看護師端末が、電子カルテ装置からオーダー情報(薬剤等処方データ)を取得等する工程を示す概略フローチャートである。
【図7】薬剤トレー選択工程を示す概略フローチャートである。
【図8】看護師甲による患者確認工程を示す概略フローチャートである。
【図9】輸液ポンプ接続工程を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
図1は、本発明の医療システム1を示す概略図である。医療システム1は、図1に示すように、患者のための医療処方情報である例えば、薬剤等処方データ(オーダー情報)を含む電子カルテを蓄積する電子カルテ装置10(医療処方情報装置の一例)を有している。
この電子カルテは、例えば、患者の識別番号毎に電子カルテ装置10内に蓄積され、電子カルテ装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等となっている。
【0022】
また、図1の医療システム1は、上述のオーダー情報に従い、当該患者に処方すべき薬剤等を配置する薬剤配置部である例えば、薬剤トレー30を有している。
この薬剤トレー30は、実際に薬剤のケース等を配置する配置部である例えば、トレー本体(図示せず)を有すると共に、トレー本体に載置される薬剤等の薬剤情報である例えば、オーダー情報を記憶する構成になっている。
【0023】
また、図1の医療システム1は、患者が所持する患者用装置である例えば、患者端末50を有すると共に、患者の治療に用いる医療機器である例えば、輸液ポンプ70を有している。
この輸液ポンプ70は、患者等の側の点滴等に配置され、薬液等の点滴液を患者等へ供給する際、制御することが可能な構成となっている。
具体的には、輸液ポンプ70は、弾力が高く自己拡張性のある輸液チューブを使用し、これを機械に挟み込んでローラーで押すことにより予め設定された薬液を患者に提供する構成となっている。
【0024】
さらに、図1の医療システム1は、患者の処置等を行う医療従事者である例えば、看護師が所持する医療従事者用装置である例えば、看護師端末90も備えている。
このうち、患者端末50及び看護師端末90は、それぞれ、人が所持するため例えば、腕時計型となっており、患者や看護師は、その腕に配置することが可能な構成となっている。
なお、これら患者端末50及び看護師端末90は、腕時計型に限らず、携帯電話型、B5(A4)ノート型、メガネ型、アクセサリー型(ネックレス、ピアス)、ペン型、ベルト型、ベルト装着型(歩数計、活動量計等)等であってもよい。
【0025】
そして、これら電子カルテ装置10、薬剤トレー30、患者端末50、輸液ポンプ70及び看護師端末90は、それぞれ、電子カルテ側通信装置11、薬剤トレー側通信装置31、患者側通信装置51、輸液ポンプ側通信装置71及び看護師側通信装置91を有し、相互に通信可能な構成となり、この通信は、所謂、人体通信方式となっている。
これら各通信装置は、それぞれ、送信機能と受信機能を共に有してもよく、また、それぞれの役割に応じて、いずれか一方のみの機能を有する構成としてもよい。
【0026】
この人体通信方式は、人の体に微弱な電流等を流すことで行われる通信であり、専用の装置を装着した人が他の同様の装置を装着した人等に触れることで通信が可能となる方式である。また、人体通信方式は、通信に際し、電流を流す場合と電界を発生させる場合があり、それぞれ、電流方式、電界方式と呼ばれる。
電流方式の場合は、人体の表面に数百マイクロアンペアの電流を流すことで通信を行う。実施の形態では、電流方式の人体通信方式を例に以下、説明する。
【0027】
図2は、看護師端末90と電子カルテ装置10を例とした人体通信の概略説明図である。人体通信は、看護師端末90と電子カルテ装置10だけでなく、図1に示すように、看護師端末90と薬剤トレー30、患者端末50及び輸液ポンプ70との間でも行うことができるが、図2では、看護師端末90と電子カルテ装置10を例に、本実施の形態における人体通信を説明する。
【0028】
図2に示すように、看護師端末90を有する看護師甲が、電子カルテ装置10であるPCの筐体等に接触すると、看護師甲の腕に配置されている看護師端末90の看護師側通信装置91は、看護師甲の人体及び電子カルテ装置10の筐体等を介して、電子カルテ装置10の電子カルテ側通信装置11と電気的に通信可能となる。
【0029】
すなわち、図2の電流Eは、看護師端末90から看護師甲の人体上を流れ、電子カルテ装置10の電子カルテ側通信装置11に到達することになり、この電流の流れにより、通信が可能となる。
また、本実施の形態では、看護師側通信装置91は、看護師甲が電子カルテ装置10に触れるだけで、電子カルテ側通信装置11と通信可能となり、逆に、看護師甲が電子カルテ装置10から手等を離すことで、通信が終了する。
【0030】
この点、従来は、看護師が電子カルテ装置であるPCを操作して、患者の薬剤等処方データ(カルテ)を取得していたため、操作が煩雑で、操作間違い等が発生するおそれがあった。
本実施の形態では、図2に示すように、看護師甲が電子カルテ装置10に触れるだけで通信をし、例えば、患者のカルテ情報の取得等をすることができるので、看護師等に負担がかからず、カルテの取り違い等も生じない構成となっている。
【0031】
図1に示す、電子カルテ装置10、薬剤トレー30、患者端末50、輸液ポンプ70及び看護師端末90は、それぞれ、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、バスを介して接続されている。
【0032】
図3は、図1の電子カルテ装置10及び看護師端末90の主な構成を示す概略ブロック図である。
図3に示すように、電子カルテ装置10は、電子カルテ制御部12を有する。また、電子カルテ装置10は、上述の電子カルテ側通信装置11、情報を入力するための電子カルテ入力装置13及び情報を表示するための電子カルテ表示装置14等を有し、これらは、電子カルテ制御部12で制御されている。
なお、図3の電子カルテ装置10の記憶部や処理部等については、後述する。
【0033】
図3に示すように、看護師端末90は、看護師端末制御部92を有する。また、看護師端末90は、上述の看護師側通信装置91、看護師端末入力装置93、看護師端末表示装置94等を有し、これらは、看護師端末制御部92で制御されている。
なお、図3の看護師端末90の記憶部等については、後述する。
【0034】
図4は、図1の薬剤トレー30及び患者端末50の主な構成を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、薬剤トレー30は、薬剤トレー制御部32を有する。また、薬剤トレー30は、上述の薬剤トレー通信装置31及び薬剤トレー入力装置33等を有し、これらは、薬剤トレー制御部32で制御されている。
なお、図4の薬剤トレー30の記憶部や処理部等については、後述する。
【0035】
また、図4に示すように、患者端末50は、患者端末制御部52を有する。また、患者端末50は、上述の患者側通信装置51を有し、これは、患者端末制御部52で制御されている。
なお、図4の患者端末50の記憶部や処理部等については、後述する。
【0036】
図5は、図1の輸液ポンプ70の主な構成を示す概略ブロック図である。図5に示すように、輸液ポンプ70は、輸液ポンプ制御部72を有している。また、輸液ポンプ70は、上述の輸液ポンプ側通信装置71、輸液ポンプ入力装置73、輸液ポンプ表示装置74そして、輸液ポンプ本来の機能を発揮する部分である輸液ポンプ本体75を有し、これらは、輸液ポンプ制御部72で制御されている。
なお、図5の輸液ポンプ70の記憶部や処理部等については、後述する。
【0037】
図6乃至図9は、本実施の形態にかかる医療システム1の主な動作等を示す概略フローチャートである。
本実施の形態では、看護師甲が図1に示す看護師端末90を所持し、電子カルテ装置10から自己の担当の患者のオーダー情報(薬剤等処方データ)を取得し、その後、薬剤トレー30を、当該患者の元に運び、患者を確認して、輸液ポンプ70を動作させるという一連の動作を例に以下、説明する。
また、この例を説明するにあたり、図6乃至図9のフローチャートに沿って説明すると共に、図1乃至図5の記憶部や処理部等についても説明する。
【0038】
図6は、図1の看護師端末90が、電子カルテ装置10からオーダー情報を取得等する工程を示す概略フローチャートである。
先ず、看護師甲は、図1の看護師端末90を腕等に装着して、電子カルテ装置10の筐体等に、その手等を触れる。
すると、図2に示す、看護師側通信端末91と電子カルテ側通信装置11との間に、人体通信が行われ、看護師端末90から電子カルテ装置10に、オーダー情報取得要求を送信する。
なお、この際、看護師端末90は、図3の看護師識別番号記憶部95内に記憶されている自己の看護師識別番号(医療従事者の識別情報の一例)を電子カルテ装置10へ送信する。
次いで、ST1で、電子カルテ装置10は、看護師端末90からオーダー情報取得要求が送信されたか否かを判断する。
【0039】
ST1で、電子カルテ装置10が看護師端末90からのオーダー情報取得要求を受信したと判断した場合は、ST2へ進む。ST2では、図3の電子カルテ装置10のオーダー情報検索決定処理部(プログラム)15が、オーダー情報記憶部16を参照して、当該看護師端末90の看護師の看護師識別番号と関連付いているオーダー情報が存在するか否かを探す。
ところで、図3の電子カルテ装置10のオーダー情報記憶部16内では、患者毎の薬剤等処方データであるオーダー情報が、担当看護師の看護師識別番号と関連付けて記憶されている。
このため、ST2で、電子カルテ装置10は、アクセスしてきた当該看護師の看護師識別番号から、当該看護師が担当する患者のオーダー情報が存在するか否かを容易に判断することができる。
【0040】
なお、「オーダー情報」には、処方された薬剤名、医師識別番号、患者識別番号、看護師識別番号等が含まれている。さらには、オーダー情報として処方する年・月・日、必要に応じては時刻も含まれているとより好ましい。そうすることで、院内におけるヒューマンエラーをより低減することができる。
ST2で、図3のオーダー情報記憶部16内に、当該看護師識別番号と関連付けられているオーダー情報があった場合は、ST3へ進む。
ST3では、電子カルテ装置10が、看護師端末90に、当該看護師識別番号と関連付けられている患者のオーダー情報を送信する。
次いで、ST4へ進み、当該看護師識別番号と関連付けられていない患者のオーダー情報が存在するか否かを確認する。
したがって、看護師甲は、自己が担当する患者のオーダー情報のみを効率的に、自己の看護師端末90に取得することができる。また、このオーダー情報は自動的に且つ間違いなく送信されるので、極めて信頼性の高い情報となる。
【0041】
なお、本実施の形態では、当該看護師識別番号と関連付けられている患者のオーダー情報を送信するとしているが、アクセスした日又はその前日のオーダー情報に限り、送信する構成としてもよい。
【0042】
一方、ST2で、図3のオーダー情報記録部16には、当該看護師の看護師識別番号と関連付けられているオーダー情報が存在しない場合及びST4で、当該看護師識別番号と関連付けられていないオーダー情報が存在する場合は、ST5へ進む。
すなわち、電子カルテ装置10は、図3のオーダー情報記憶部16内のオーダー情報のうち、いずれの看護師識別番号とも関連付けられていないオーダー情報を選択し、看護師端末90へ送信する。
したがって、看護師甲は、自己が担当する患者のオーダー情報に近い情報を、選択して看護師端末90に取得することができることになり、自己の担当の患者のオーダー情報を探し易くなる。これは、看護師甲の負担を権限させることができる。
【0043】
次いで、ST6へ進む。ST6では、看護師端末90が、電子カルテ装置10から送信されたオーダー情報を図3のオーダー情報記憶部96に記憶すると共に、図3の看護師端末表示装置94に表示する。
このとき、当該看護師の識別番号と関連付けられているオーダー情報と、関連付けられていないオーダー情報は、看護師端末表示装置94に区別して表示される。
次いで、ST7へ進む。ST7では、図3の看護師端末90のオーダー情報選択処理部(プログラム)97が動作し、看護師甲が図3の看護師端末入力装置93で、看護師端末表示装置94に表示されているオーダー情報から特定の患者のオーダー情報を選択したか否かを判断する。
【0044】
ST7で、看護師端末入力装置93で、オーダー情報が選択されると、ST8へ進む。ST8では、看護師端末入力装置93で選択された選択オーダー情報(処方された薬剤名、医師識別番号、患者識別番号、看護師識別番号等)が,図3の看護師端末90の選択済みオーダー情報記憶部98に記憶される。
【0045】
以上で、図6の工程が終了するが、この図6の工程では、看護師端末90が、電子カルテ装置10から簡易且つ正確に、所望の患者のオーダー情報を迅速に取得することができる。
また、従来は、電子カルテ装置からオーダー情報を取得するには、コンピュータの操作をマスターする必要があり、看護師に負担を強いていた。この点、本実施の形態では、看護師は、電子カルテ装置10に接触するだけで、必要なオーダー情報を取得することができるので、極めて使い易い医療システム1となっている。
【0046】
図7は、薬剤トレー選択工程を示す概略フローチャートである。
図6の工程で、自己が担当する所望の患者のオーダー情報を自己の看護師端末90に取得した看護師甲は、次に、この患者のために処方された薬剤等を配置した薬剤トレー30を取りに行く。このときに、看護師甲の看護師端末90と薬剤トレー30との間には、以下の通信等が行われる。
【0047】
先ず、看護師端末90を所持した看護師甲が、薬剤トレー30に接触する。すると、ST11で、薬剤トレー30の薬剤トレー側通信装置31と看護師側通信装置91は人体通信で、通信状態となる。このとき、看護師端末90が、図4の薬剤トレー30の当該薬剤トレー用オーダー情報記憶部36内のオーダー情報を取得し、図3の看護師端末90の看護師側薬剤トレー用オーダー情報記憶部100に記憶する。
【0048】
次いで、ST12へ進む。ST12では、図3の看護師端末90のオーダー情報判断処理部(プログラム)99が動作し、図3の看護師側薬剤トレー用オーダー情報記憶部100の「オーダー情報」と、図3の看護師端末90の選択済みオーダー情報記憶部98の「オーダー情報」を比較し、一致するか否か判断する。
【0049】
すなわち、図4の薬剤トレー30の当該薬剤トレー用オーダー情報記録部36には、当該薬剤トレー30に載置すべき薬剤等(特定の患者の薬剤等)のオーダー情報が記憶されている。したがって、看護師端末90は、オーダー情報判断処理部(プログラム)99により、薬剤トレー30の「オーダー情報」と一致するかを精度良く判断することができる。また、看護師端末90が判断することで、薬剤トレー30の仕組みを簡易なものとすることができる。
【0050】
ST12で、看護師端末90の「オーダー情報」と薬剤トレー30の「オーダー情報」が一致する場合、ST13へ進む。ST13では、図3の看護師端末90の看護師端末表示装置94に「オーダー情報」を表示し、一致していることを看護師甲に報知する。
一方、ST12で、「オーダー情報」が一致しない場合は、ST14へ進む。ST14では、図3の看護師端末90の看護師端末表示装置94に、オーダー情報が相違する旨の表示が成される。
以上で、図7の工程は終了する。これにより、看護師甲は、自己が選択した薬剤トレー30が間違いであることを知り、正しい薬剤トレー30を選択することができる。
【0051】
このように、図7の工程では、看護師甲が薬剤トレー30に接触するだけで、当該薬剤トレー30が正しいか否かが分かるので、従来ありがちであった、看護師等による薬剤トレー30の取り違いを未然に効果的に防止することができる。
また、従来は、薬剤トレー30を、看護師等の目視等でのみ確認していたので、本実施の形態では、従来に比べ、格段と看護師等の負担を軽減させることができる。
【0052】
図8は、看護師甲による患者確認工程を示す概略フローチャートである。
図7の薬剤トレー選択工程で、自己の選択した患者のオーダー情報の薬剤トレー30を選択した看護師甲は、この薬剤トレー30を持って、患者のベッド等へ行くことになる。
このとき、看護師甲は、患者と以下の通信が行われる。なお、患者は、上述のように、例えば、腕時計型の図1の患者端末50を腕に付けている。
【0053】
先ず、患者の元に来た看護師甲は、看護師端末90を付けている状態で、患者又は患者端末91に接触する。すると、上述のように、人体通信によって、看護師端末90と患者端末50が通信状態となる。
この通信が開始されると、図8のST21に示すように、看護師端末90は、図4の患者端末50の患者識別番号記憶部53内に記憶されている「患者識別番号」を取得したか否かを判断する。
【0054】
ST21で、看護師端末90が「患者識別番号」を取得した場合は、ST22へ進む。ST22では、図3の看護師端末90のオーダー情報判断処理部(プログラム)99が動作し、図3の選択済みオーダー情報記憶部98内のオーダー情報の「患者識別番号」を参照し、一致するか否かを判断する。
【0055】
ST22で「患者識別番号」が一致した場合は、ST23へ進み、図3の看護師端末表示装置94に一致した旨の表示をする。
一方、ST22で「患者識別番号」が一致しない場合は、ST24へ進み、図3の看護師端末表示装置94に不一致の旨の表示をする。
以上で図8の患者確認工程は終了する。ST24では、看護師甲は、自己が選択した患者が間違いであることを知り、患者の元へ薬剤トレー30を持参することができる。
【0056】
このように、図8の患者確認工程では、看護師甲が患者又は患者端末50に接触するだけで、当該患者が正しいか否かが分かるので、看護師等による患者の取り違いを未然に効果的に防止することができる。
【0057】
図9は、輸液ポンプ接続工程を示す概略フローチャートである。
図6で、電子カルテ装置10からオーダー情報を取得した看護師端末90は、図3に示すように、選択済みオーダー情報記憶部98に、オーダー情報を有し、このオーダー情報には、輸液ポンプ70で使用される薬剤情報等のデータが含まれている。
そこで、上述の図8で、患者が間違いでないことを確認した看護師甲は、患者のベッド等の側に配置されている輸液ポンプ70に点滴の準備を行う。
このとき、看護師端末90を所持する看護師甲が、輸液ポンプ70の筐体等に接触すると、上述のように、人体通信により、看護師側通信装置91と輸液ポンプ側通信装置71との間が通信状態となる(図5参照)。
【0058】
ST31では、輸液ポンプ70が、看護師端末90の看護師識別番号記憶部95内の看護師識別番号を受信したか否かを判断する。
ST31で、看護師識別番号を取得すると、ST32へ進む。ST32では、図5の輸液ポンプ70の看護師識別番号判定処理部(プログラム)76が動作し、受信した看護師識別番号と、図5の看護師識別番号一覧情報記憶部77内に記憶されている看護師識別番号を比較し、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれているか否かを判断する。
【0059】
この看護師識別番号一覧情報記憶部77には、輸液ポンプ70を操作する権限を有する看護師の看護師識別番号が登録されている。
したがって、ST32で、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれている場合は、権限を有する者であると判断することができる。
【0060】
このように、本実施の形態では、輸液ポンプ70の操作権限がない者による輸液ポンプ70の操作を未然に防止し、事故等の発生を未然に防止することができる構成となっている。
【0061】
ST32で、受信した看護師識別番号が、看護師識別番号一覧情報記憶部77の看護師識別番号に含まれている場合は、ST33へ進む。ST33では、輸液ポンプ70が看護師端末90に、オーダー情報の送信を要求する。
そして、ST34で、看護師端末90が、図3の選択済みオーダー情報記憶部98内のオーダー情報を、輸液ポンプ70へ送信する。
【0062】
次いで、ST35へ進む。ST35では、図5の患者識別番号判定処理部(プログラム)78が動作し、ST35で受信したオーダー情報の「患者識別番号」が、図5の輸液ポンプ70の既登録患者識別番号記憶部79内の「患者識別番号」と一致するか否かを判断する。
【0063】
この既登録患者識別番号記憶部79は、当該輸液ポンプ70を使用する患者の「患者識別番号」が記憶されている。したがって、ST35で、「患者識別番号」の比較をし、一致した場合は、正しい患者のオーダー情報と判断する。
そして、ST35で、「患者識別番号」が一致した場合は、図5の輸液ポンプ本体95が動作し、送信されたオーダー情報に従い、輸液ポンプ70が動作することになる。
【0064】
以上で、輸液ポンプ接続工程が終了する。このように、図9の輸液ポンプ接続工程では、看護師甲が輸液ポンプ70に接触するだけで、当該看護師が輸液ポンプ70の操作権限があるか否かを判断できる。
さらに、看護師甲の看護師端末90の有する「オーダー情報」の患者情報が、当該輸液ポンプ70を使用する患者情報と一致するか否かも判断できるので、看護師甲が間違って、当該患者とは異なる患者用の輸液ポンプ70に、輸液ポンプ70の動作情報等である「オーダー情報」を提供するという事態の発生を未然に防ぐことができる。
また、看護師甲は、輸液ポンプ70に接触するだけで、輸液ポンプ70に「オーダー情報」を送信できるので、看護師甲等の負担を著しく軽減することができる。
【0065】
このように、本実施の形態にかかる医療システム1では、看護師等に負担をかけることなく、且つ、カルテデータ等のオーダー情報の取り違い等が発生しない医療システムとなる。
【0066】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。本実施の形態では、医療機器として輸液ポンプ70を例に説明したが、医療機器には、輸液ポンプ70のみならず、シリンジポンプ等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・医療システム、10・・・電子カルテ装置、11・・・電子カルテ側通信装置、12・・・電子カルテ制御部、13・・・電子カルテ入力装置、14・・・電子カルテ表示装置、15・・・オーダー情報検索決定処理部(プログラム)、16・・・オーダー情報記憶部、30・・・薬剤トレー、31・・・薬剤トレー側通信装置、32・・・薬剤トレー制御部、33・・・薬剤トレー入力装置、36・・・当該薬剤トレー用オーダー情報記録部、50・・・患者端末、51・・・患者側通信装置、52・・・患者端末制御部、53・・・患者識別番号記憶部、70・・・輸液ポンプ、71・・・輸液ポンプ側通信装置、72・・・輸液ポンプ制御部、73・・・輸液ポンプ入力装置、74・・・輸液ポンプ表示装置、75・・・輸液ポンプ本体、76・・・看護師識別番号判定処理部(プログラム)、77・・・看護師識別番号一覧情報記憶部、78・・・患者識別番号判定処理部(プログラム)、79・・・既登録患者識別番号記憶部、90・・・看護師端末、91・・・看護師側通信端末、92・・・看護師端末制御部、93・・・看護師端末入力装置、94・・・看護師端末表示装置、95・・・看護師識別番号記憶部、96・・・オーダー情報記憶部、97・・・オーダー情報選択処理部(プログラム)、98・・・選択済みオーダー情報記憶部、99・・・オーダー情報判断処理部(プログラム)、100・・・看護師側薬剤トレー用オーダー情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、
前記医療処方情報に対応した薬剤を配置するための配置部と、その薬剤に関する薬剤情報と、を有する薬剤配置部と、
医療従事者が有する医療従事者用装置と、
患者が有する患者用装置と、患者の治療に使用される医療機器と、を有する医療システムであって、
少なくとも、前記医療従事者用装置を所持した医療従事者が、前記医療処方情報装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、前記患者用装置又は前記患者用装置を装着している患者と接触することで、前記患者用装置と自動的に通信することができる構成となっていることを特徴とする医療システム。
【請求項2】
前記医療従事者用装置と前記医療処方情報装置、前記患者用装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器との間の通信は、医療従事者若しくは前記医療従事者及び患者の身体を介して行われることを特徴とする請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記医療従事者用装置が前記医療処方情報装置と通信することで、前記医療処方情報を取得し、
前記医療従事者用装置は、取得した前記医療処方情報から特定の患者の前記医療処方情報を特定し、
前記医療従事者用装置は、前記薬剤配置部と通信することで、前記医療従事者用装置が特定した前記医療処方情報と当該薬剤配置部の前記薬剤情報とが対応しているか否かを判断し、
前記医療従事者用装置は、前記特定の患者の前記患者用装置と通信をすることで、前記特定の患者の確認を行うと共に、前記医療機器と通信を行うことで、前記医療処方情報を前記医療機器に送信する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記医療処方情報装置では、前記医療処方情報に前記医療従事者の識別情報が関連付けられて記憶されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項5】
前記医療従事者用装置が、前記医療従事者の前記識別情報を前記医療機器に送信し、前記医療機器が当該医療従事者用装置の医療従事者の操作を許可した後、許可された医療従事者の前記医療従事者用装置が、許可した前記医療機器に前記医療処方情報を送信する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項6】
医療処方情報を蓄積する医療処方情報装置と、
前記医療処方情報に対応した薬剤を配置するための配置部と、その薬剤に関する薬剤情報と、を有する薬剤配置部と、
医療従事者が有する医療従事者用装置と、
患者が有する患者用装置と、
患者の治療に使用される医療機器と、を有する医療システムの管理方法であって、
少なくとも、前記医療従事者用装置を所持した医療従事者が、前記医療処方情報装置、前記薬剤配置部及び前記医療機器と接触することで、自動的に、それぞれと通信することができると共に、前記患者用装置又は前記患者用装置を装着している患者と接触することで、前記患者用装置と自動的に通信することができる構成となっていることを特徴とする医療システムの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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