説明

医療・介護品質マネージメントシステム、その方法及びプログラム

【課題】人手やコストをかけずに、ISO9001で要求される文書記録・評価の手段として、簡易かつ簡便に医療・介護プランを自動作成し、出力するシステム、方法、プログラムを提供する。
【解決手段】複数の医療・介護の名称、および、医療・介護の各々に関連する各要素の情報を含む医療・介護マスターテーブルが格納されている記憶手段(110)と、少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力手段(120)と、医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、評価対象医療・介護に関連する各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段(130)と、内訳データを編集して、医療・介護プランとして出力する医療・介護プラン出力手段(150)とを含むことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム(100)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療・介護の病院、機関、会社などを対象とした医療・介護品質マネージメントシステム、その方法及びプログラムに関し、特に、ISO9001を対象とする品質マネージメントシステム、その方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ISO9001とは、品質マネージメントシステムの国際規格であり、国際標準化機構(International Organization for Standardization)により1987年に制定されたものである。この規格は日本規格協会ウェブサイト(非特許文献1)に詳細が記述されている。また、ISO9001は、当初は製造業や建設業を対象とした規格であったが、2000年からは医療や介護産業を含むサービス業まで広く適用できるように改定され、医療・介護事業所での実施も求められている。
【非特許文献1】日本規格協会ウェブサイト(http://www.jsa.or.jp/default.asp)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、この規格に準拠(登録審査、維持審査、更新審査に合格)するためには、事業活動のすべてを網羅して、サービスや製品に対する品質を担保するための文書を記録しなければならないが、手作業でも、コンピュータを用いるにしても、手際よく、定量的に処理する方法を模索しているのが現状である。このような状況において、企業が独自に当該規格連の書類を整えその登録を受けることは非常に困難であり、一般的には、専門の規格認証取得コンサルタントに依頼して書類を作成してもらう必要があった。さらに、この規格は一定の周期で維持審査や更新審査があり、規格で要求される文書を作成し続ける必要もある。
【0004】
ところで、ISO9001を医療行為や介護サービスに適用するとき、その範囲には全ての医療・介護の行為やサービスが含まれるが、その種類や膨大で、簡単にシステムを構築するのは困難であり、ISO9001で厳格に要求される「文書化」と「評価記録」を実行することはかえって業務の非効率化を引き起こす。さらに、医療や介護の現場での品質低下は患者の生命や生活の質にかかわるために、結果は重大である。
【0005】
上述した諸問題に鑑みて、本発明は、医療・介護事業所を対象とした品質マネージメントシステムであって、より詳細には、人手やコストをかけずに、ISO9001で要求される文書記録・評価の手段として、簡易かつ簡便に医療・介護プラン(いわゆるクリニックプラン、ケアプランなど)を自動作成し、さらには、医療や介護に関連するリスク評価データを自動生成し、このデータを盛り込んだ医療・介護プラン(即ち、ISO9001の記録文書、および、危険源評価書として使用できる文書)を出力するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルが格納されている記憶手段と、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力手段と、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記内訳データを編集して(所定のレイアウト情報などに従って、例えば、要素を時系列に配置したガントチャート形式で編集する)、医療・介護プランとして(表示手段、印刷手段などに)出力する医療・介護プラン出力手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、評価対象医療・介護の簡易な情報を提供するだけで、医療・介護マスターテーブルのデータを利用することによって、その医療・介護に関連する各要素を含む医療・介護プランを労力や人手をかけずに自動的に生成することが可能となる。対象医療・介護に関する属性情報(数値や必要な処置項目など)が与えられてなくても、対象医療・介護を標準的な患者や症状の医療・介護と仮定して、これに含まれる各要素に対する標準的なデータの項目や数値を使用して数値や項目の情報を付加することもできる。このような医療・介護プランは患者や病院の職員が利用できると同時に、ISO9001の記録文書として利用することが可能である。このように本発明によれば、ISOコンサルタントなどの助けを得ずに簡易かつ自動的にISO9001認証の取得・維持に必要な文書を作成することが可能となる。
【0007】
また、第2の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記マスター情報に含まれる複数の要素は、各要素別に前提要素情報(即ち、時間的、空間的、論的な前後関係)が規定され、
医療・介護プラン出力手段が、前記内訳データに含まれる各要素の前提要素情報に従って前記内訳データを編集して、医療・介護プランとして出力する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記記憶手段が、医療・介護に関連する各要素別の発生要因およびそれに関連付けられた発生状況を含む危険情報が規定されているリスク評価マスターテーブルをさらに格納し、
前記医療・介護品質マネージメントシステムが、
前記生成された内訳データに基づき、前記リスク評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含むリスク評価データを前記演算手段を使用して生成するリスク評価データ生成手段と、
前記リスク評価データに基づき、前記医療・介護プラン(即ち、時系列に編集された危険源評価書として使用できる医療・介護プラン)を編集するように、前記医療・介護プラン出力手段を制御する編集制御手段と、
をさらに含むことを特徴とする。
本発明によれば、医療・介護のリスク評価書(危険源評価書)として使用できる医療・介護プランを簡易かつ自動的に作成することが可能となる。
【0009】
また、第4の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記評価対象医療・介護の情報が、対象者属性情報、および/または、処置・サービス属性情報をも含み、
前記内訳データ生成手段が、前記対象者属性情報、および/または、前記処置・サービス属性情報にも基づき、前記内訳データを前記演算手段を使用して生成する(即ち、属性情報に基づき要素を追加したり、各要素の一部に対しては、属性情報に含まれる数値情報、または、この数値情報から導き出された数値をも含む内訳データを生成する。)、
ことを特徴とする。
例えば、医療や介護サービスでは、患者、被介護者などの対象者の年齢、性別、体重などの対象者属性情報、さらには、医療に関する処置や行為、また、介護に関する行為やサービスの属性情報としては、入院可能期間、緊急レベル、想定輸血量、想定薬剤(麻酔、点滴)の種類や数、その量、検査項目(CT,MRIなど)、検査回数、その頻度、リハビリにおける筋肉トレーニングメニュー、日常生活訓練・食事・入浴・機能訓練などの回数やメニューなどがり、これらの様々な処置・サービス属性情報に基づき、医療・介護の各要素やその細目が決定される。本発明によれば、これら属性情報やこれから導き出された要素や数値を含む内訳データを生成することが可能であるため、与えられた属性情報を利用することによって、より詳細かつ適切なクリニック・介護プランを作成することが可能となる。
【0010】
また、第5の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記評価対象医療・介護の情報が、対象者属性情報、および/または、処置・サービス属性情報をも含み、
前記リスク評価データ生成手段が、前記対象者属性情報、および/または、前記処置・サービス属性情報にも基づき、前記リスク評価データを前記演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、与えられた属性情報を利用することによって、より詳細かつ適切なリスク評価データを作成することが可能となる。
【0011】
また、第6の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記入力された評価対象医療・介護に関連する実際の各要素を含む実績データを入力する入力手段をさらに含み、
前記記憶手段に格納されている医療・介護マスターテーブルを、前記入力された実績データに基づき(例えば、実績数値をサンプル母集団に入れて再計算して要素に含まれる細目数値を更新したり、要素を入れ替えたり、追加の要素を入れたりなど)更新する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、その医療・介護事業所で行われる作業要素の実績に基づきテーブルをカスタマイズすることができるため、実績データを集めるほどより実用的な医療・介護プランを作成することが可能となる。
【0012】
また、第7の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記入力された評価対象医療・介護をしたときの実際の事故、或いは、実際に経験したヒヤリハット事例を含むリスク実績データを入力する入力手段をさらに含み、
前記記憶手段に格納されているリスク評価マスターテーブルを、前記入力されたリスク実績データに基づき(例えば、実績数値をこの実績データをサンプル母集団に入れて再計算したり、追加の危険有害要因を入れたりなど)更新する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、その医療・介護事業所で行われる作業要素を実施したときの事故経験やヒヤリハット経験の実績に基づきテーブルをカスタマイズすることができるため、実績データを集めるほどより実用的なリスク評価を実施することが可能となる。
【0013】
また、第8の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記リスク評価マスターテーブルの危険源情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられており、
前記リスク評価データ生成手段が、前記発生可能性の数値情報、および前記結果重大性の数値情報を含む前記リスク評価データを作成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、危険源がもたらすリスクを数値情報によって定量的に評価することが可能となる、
【0014】
また、第9の発明による医療・介護品質マネージメントシステムは、
前記記憶手段が、前記医療・介護の各要素に関連する設備(MRI、CT、PETなどの検査装置、手術室、検査室、入院ベッド、特殊な手術器具(ガンマナイフなど)、介護器具など)、人員(執刀医師、麻酔科医師、看護士、検査技師、介護士など)の少なくとも1つのスケジュール情報を含むスケジュールマスターテーブルが格納されており、
医療・介護プラン出力手段が、前記スケジュールマスターテーブルを参照して、前記医療・介護プラン編集する、
ことを特徴とする。
例えば、医療現場などでは、検査装置、空きベッド、執刀医師、麻酔科医師などのスケジュールによって、クリニックプランの具体的な日時が左右されることになるが、本発明によれば、これらのスケジュールに応じた、より実用的である具体的な日時が設定されたクリニックプランや介護プランなどを簡易かつ自動的に作成することが可能となる。
【0015】
上述したように本発明の解決手段をシステム(装置)として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現され得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。なお、下記のプログラムや方法の各ステップは、データの処理においては必要に応じて、CPU、DSPなどの演算処理装置を使用するものであり入力したデータや加工・生成したデータなどを磁気テープ、HDD、メモリなどの記憶装置に格納するものである。
【0016】
例えば、本発明を方法として実現させると、本発明による医療・介護の品質マネージメント方法は、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力ステップと、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記内訳データを編集して医療・介護プランとして出力する医療・介護プラン出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0017】
また、例えば、本発明をプログラムとして実現させると、本発明による医療・介護の品質マネージメント方法をコンピュータに実行させるための品質マネージメントプログラムは、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力ステップと、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記内訳データを編集して医療・介護プランとして(表示手段、印刷装置、記憶手段などに)出力する医療・介護プラン出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する
図1は、本発明による医療・介護品質マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。図に示すように、本発明による医療・介護品質マネージメントシステム100は、記憶手段110、入力手段120、内訳データ生成手段130、リスク評価データ生成手段140、医療・介護プラン出力手段150、編集制御手段160、受信手段170、及び更新手段180を具える。
【0019】
この品質マネージメントシステム100は、インターネット、WAN、LAN、有線・無線電話回線網などのネットワーク200を介して端末122、PDA、携帯機器、携帯電話などの外部システム210と接続されている。また、端末122の一部は本システム100に直接ローカル或いはLAN(図示しない)で接続されている。
【0020】
記憶手段(装置)110は、医療・介護マスターテーブル112と、リスクマスターテーブル114とを格納している。さらに、記憶手段110は、スケジュールマスターテーブル116をも含む。
【0021】
入力手段120は、ローカル接続された、或いはネットワークを介して接続された端末122を介して評価対象医療・介護の名称(およびその属性情報)を入力する。
【0022】
内訳データ生成手段130は、記憶手段110に格納されている医療・介護マスターテーブル112を参照して、前記入力された評価対象医療・介護の名称(およびその属性情報)に基づき、前記評価対象医療・介護に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段(例えばMPU、CPUなどで図示せず。)を使用して生成する。
【0023】
リスク評価データ生成手段140は、前記生成された内訳データに基づき、リスクマスターテーブル114を参照して、発生要因(危険有害要因)データおよび発生状況(事故型分類)データを含むリスク評価データを前記演算手段を使用して生成する。即ち、内訳データに含まれる情報と合致する情報がリスク評価データの項目に含まれる場合は、その項目を抽出し、さらにこの項目に関連付けられている発生状況(事故型分類)データの項目も抽出してリスク評価データとする。
【0024】
医療・介護プラン出力手段150は、内訳データを編集して医療・介護プラン(書)として端末122に出力したり、或いは、エクセルなどの表計算アプリケーションに準拠したファイルとして出力したり、さらにはプリンタ(図示せず)に印刷したりする。
【0025】
編集制御手段160は、リスク評価データに基づき、医療・介護プランを編集するように、医療・介護プラン出力手段を制御する。従って、この手段によってリスク評価データを含む医療・介護プランが出力され、これはリスク評価書として使用できる。或いは、リスク評価書形式としても出力させることができる。
【0026】
受信手段170は、外部システム210から、医師、看護士、検査機器などの空きスケジュールの情報をネットワーク200を介して受信する。
更新手段180は、実際に発生した事故に基づき、記憶手段110に格納されているリスクマスターテーブル114を更新したり、実際の医療・介護の作業工程に基づき、医療・介護マスターテーブルに要素を追加したり更新したりする。
【0027】
図2は、本発明による医療・介護品質マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。図に示すように、ステップS10では、医師やケアマネージャーなどが対象医療・介護の情報および患者用プランか否かの情報を入力する。ステップS12では、本システムは、入力された情報に基づき、医療・介護マスターテーブルにアクセスして対応する要素を抽出して内訳データを作成する。ステップS14では、入力データが患者用プランか否かを判定する。患者用プランの場合には、ステップS16に進み、患者用の医療・介護プランを出力して処理を終了する。そうでない場合、即ち、病院・介護事業所用の医療・介護プランの場合は、ステップS18に進み、対象の医療・介護に含まれる各要素に関連するリスク評価データを作成する。ステップS20では、このリスク評価データを含むように医療・介護プランを編集して出力して処理を終える。なお、作成された内訳データやリスク評価データは、一旦、記憶装置に格納しておく。
【0028】
図3は、リスクマスターテーブルのツリー構造インターフェイス(医療用)を示す図である。図に示すように、ツリー構造部Trのルートには「医療行為」と「介護行為」があり、例えばルート「医療行為」は、内科、外科、小児科などのように分野別の子要素を持つ。そして、内科はさらにその子要素として「点滴」B1、「ガーゼ交換」B2などを持つ。ここで点滴B1をクリックすると、リスクテーブル部Rtの要素としてガーゼ交換リスクRt1が表示される。同様に、点滴B2をクリックしても点滴リスクRt2が表示される。リスクテーブルには、発生状況(事故型分類)、発生要因(危険有害要因)、重大性、発生の可能性、作業頻度、評価値、ランク、防止対策、作業を行う者の項目があり、それぞれ、文章、数値、記号、ランキング記号などの情報を持つ。また、リスクテーブルはイラストなどの図式表示部があり、理解し易いユーザインターフェイスとなっている。このツリー構造インターフェイスは、編集可能であり編集を所望する箇所をクリックして情報を修正したり、イラストを差し替えたりすることが可能である。本願発明によるシステムはこのリスクテーブルをマスターとして参照してリスク評価データを作成する。
【0029】
図4は、本発明によるシステムで出力した医療・介護リスク評価書の一例(医療用)を示す図である。図に示すように、この場合には点滴とガーゼ交換に対しての医療リスクが集計されて表示されている。この医療・介護リスク評価書は、医療行為を受ける側(即ち患者や介護を受ける者)のリスク評価書として使用することもできるが、看護士、介護者、医師などの労働者側の労働安全のリスク評価書としても使用できる。例えば、図に示した搬送時のつまずきは、看護士のけがにもなり得るし、搬送されている患者のけがになり得る。また、この医療・介護リスク評価書は、ISO9001の教育用資料としてもそのまま利用することが可能である。
【0030】
図5は、本発明によるシステムで使用するインターフェイスで用いるツールボックスを示す図である。本システムで使用するインターフェイス(例えば、リスクマスターテーブルのツリー構造インターフェイス)の図式表示部にこのツールボックスのイラストを選択して貼り付けることができる。
【0031】
下に本発明によるシステムで使用する要素別に前提要素情報を規定した表の一例を示す。表に示すように、前提要素情報パターン1では、「abcdef」という1つのクリティカルパスの順序しか生成することができない。前提要素情報パターン2の場合には、2つの順序パターンを生成することが可能であり、パターン3の場合には5つの順序パターンを生成することが可能である。これら生成した順序パターンをラウンドロビン方式で順番に選択してプランを作成しても良いが、後述するように医師や設備などのスケジュール情報に基づき最も効率的な順序パターンを選択することが好適である。
【0032】
【表1】

【0033】
下の表は、本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例を示す表である。この表は、通常の虫垂切除手術に関する医療プランであり、本システムは、虫垂切除手術という名称だけの対象医療・介護情報に基づき、当該手術に関連する術前検査や手術などの要素を抽出して、それらの前後関係に基づき医療プランを作成する。表に示すように、手術の一般的な一連の医療行為の要素としては、少なくとも1回の術前検査、麻酔や消毒などの複数の術前処置、手術、点滴や抜糸などの複数の術後処置、経過観察などの診察、少なくとも1回の術後検査から構成される。通常は、各要素は前記のような時間的前後関係を持つクリティカルパスを形成するため、各要素で前後を入れ替えることはできない。しかしながら、例えば、要素「術前検査」はさらに詳細には血液検査、CTに分かれているが、これらは通常は順番を前後させても問題がないので、CTなどの希少な検査機器のスケジューリングがうまく機能するようにCTと血液検査の順序や日時を決定する事が好適である。
【0034】
【表2】

【0035】
プラン作成の際には、スケジュールマスターテーブルを参照して、執刀医、麻酔医、CTなどの人的、設備的な資源の空きスケジュールに基づき、実際の日時スケジュールが記載された医療・介護プランを本システムが自動で作成することが可能である。また、この医療プランが確定した場合には、この医療プランで消費される人的、設備的な資源が当該日時には割り振り済みである情報をスケジュールマスターテーブルに登録する。
【0036】
下の表にスケジュールマスターテーブルの一例を示す。表に示すように、人員や設備別に、空き(利用可能資源であることを示す)、割り振り済み、休日などのスケジュール情報が規定される。また、既に資源が割り振られた場合には、該当する項目に割り振り先のプラン番号を記入しておくことが好適である。
【0037】
【表3】

【0038】
また、本システムでは、例えば、麻酔や点滴を伴う医療行為の場合には、対象者属性情報として、性別、体重、年齢などがあれば、これらの情報に基づき、必要な麻酔薬剤量、点滴量、回数、頻度が規定されたマップを参照して医療・介護プランに含ませることも可能である。例えば、男女別で小児、子供、成人など規定したマップを用意しておき、これら患者属性情報に基づきマップを参照して各要素での詳細を決定することができる。また、医療処置(行為)の他の属性情報に基づき、例えば、対象部位別に規定されたマップや重傷度別に規定されたマップなどを参照して、各要素で必要とされる属性情報(数値、頻度、薬剤の種類など)を本システムは自動的に医療。介護プランに含ませることも可能である。
【0039】
図6および図7は、本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(医療用)を示す図である。図に示すように、これはそれぞれ患者用および病院用のクリニックプランであり、同時に、ISO9001での記録文書として使用できる。また、図7に示すように、発生可能性があるリスクはチェックボックスが表示されており、実際に事故が起こった場合にはこれらのチェックボックスをクリックしてチェックを追加して簡易に事故報告ができる。また、新たな事故をこの表に追加する編集機能を具える。
【0040】
図8は、医療の現場において経験した事故・ヒヤリハットを集計した図である。本システムは、これら実際の事故、或いは、実際に経験したヒヤリハット事例を含むリスク実績データを入力する入力手段を含むため、この図のような集計表を実績データとして出力したり、入力されたリスク実績データに基づきリスク評価マスターテーブルを更新したりすること可能である。
また、図9は、本システムによって虫垂切除入院に関して集計された事故(リスク)の集計内訳を示す図である。
【0041】
上記説明や参照図面は医療行為を対象としたものであるが、本発明は介護行為に対しても同様に適用可能である。図10は、リスクマスターテーブルのツリー構造インターフェイス(介護用)を示す図である。図11および図12は、本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(介護結用)を示す図である。図に示すように、これはそれぞれ患者用および介護事業所用のケアプランであり、同時に、ISO9001での記録文書として使用できる。図13は、介護の現場において経験した事故・ヒヤリハットを集計した図である。図14は、本発明によるシステムで出力した医療・介護リスク評価書の一例(医療用)を示す図である。このように、本発明は介護用に用いることが可能である。
【0042】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることを留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の部材、手段、ステップなどを1つに組み合わせたり或いは分割したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による医療・介護品質マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による医療・介護品質マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。
【図3】リスクマスターテーブルのツリー構造インターフェイス(医療用)を示す図である。
【図4】本発明によるシステムで出力した医療・介護リスク評価書の一例(医療用)を示す図である。
【図5】本発明によるシステムで使用するインターフェイスで用いるツールボックスを示す図である。
【図6】本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(医療用)を示す図である。
【図7】本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(医療用)を示す図である。
【図8】医療・介護の現場において経験した事故・ヒヤリハットを集計した図である。
【図9】本システムによって虫垂切除入院に関して集計された事故(リスク)の集計内訳を示す図である。
【図10】リスクマスターテーブルのツリー構造インターフェイス(介護用)を示す図である。
【図11】本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(介護結用)を示す図である。
【図12】本発明によるシステムで出力した医療・介護プランの一例(介護結用)を示す図である。
【図13】介護の現場において経験した事故・ヒヤリハットを集計した図である。
【図14】本発明によるシステムで出力した医療・介護リスク評価書の一例(医療用)を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
100 労働安全衛生マネージメントシステム
110 記憶手段
112 歩掛マスターテーブル
114 危険源評価マスターテーブル
116 建設積算データテーブル
120 入力手段
122 端末
125 内訳データ生成手段
130 危険源評価データ生成手段
135 出力手段
140 受信手段
145 更新手段
200 ネットワーク
250 外部システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療・介護品質マネージメントシステムであって、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルが格納されている記憶手段と、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力手段と、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記内訳データを編集して医療・介護プランとして出力する医療・介護プラン出力手段と、
を含むことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記マスター情報に含まれる複数の要素は、各要素別に前提要素情報が規定され、
医療・介護プラン出力手段が、前記内訳データに含まれる各要素の前提要素情報に従って前記内訳データを編集して、医療・介護プランとして出力する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段が、医療・介護に関連する各要素別の発生要因およびそれに関連付けられた発生状況を含む危険情報が規定されているリスク評価マスターテーブルをさらに格納し、
前記医療・介護品質マネージメントシステムが、
前記生成された内訳データに基づき、前記リスク評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含むリスク評価データを前記演算手段を使用して生成するリスク評価データ生成手段と、
前記リスク評価データに基づき、前記医療・介護プランを編集するように、前記医療・介護プラン出力手段を制御する編集制御手段と、
をさらに含むことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象医療・介護の情報が、対象者属性情報、および/または、処置・サービス属性情報をも含み、
前記内訳データ生成手段が、前記対象者属性情報、および/または、前記処置・サービス属性情報にも基づき、前記内訳データを前記演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項5】
請求項3に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象医療・介護の情報が、対象者属性情報、および/または、処置・サービス属性情報をも含み、
リスク評価データ生成手段が、前記対象者属性情報、および/または、前記処置・サービス属性情報にも基づき、前記リスク評価データを前記演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記入力された評価対象医療・介護に関連する実際の各要素を含む実績データを入力する入力手段をさらに含み、
前記記憶手段に格納されている医療・介護マスターテーブルを、前記入力された実績データに基づき更新する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項7】
請求項3または5に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記入力された評価対象医療・介護をしたときの実際の事故、或いは、実際に経験したヒヤリハット事例を含むリスク実績データを入力する入力手段をさらに含み、
前記記憶手段に格納されているリスク評価マスターテーブルを、前記入力されたリスク実績データに基づき更新する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項8】
請求項3,5,7のいずれか1項に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記リスク評価マスターテーブルの危険源情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられ、
前記リスク評価データ生成手段が、前記発生可能性の数値情報および前記結果重大性の数値情報を含む前記リスク評価データを作成する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療・介護品質マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段が、前記医療・介護の各要素に関連する設備および人員の少なくとも1つのスケジュール情報を含むスケジュールマスターテーブルを格納し、
医療・介護プラン出力手段が、前記スケジュールマスターテーブルを参照して、前記医療・介護プラン編集する、
ことを特徴とする医療・介護品質マネージメントシステム。
【請求項10】
医療・介護の品質マネージメント方法であって、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力ステップと、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記内訳データを編集して医療・介護プランとして出力する医療・介護プラン出力ステップと、
を含むことを特徴とする医療・介護の品質マネージメント方法。
【請求項11】
医療・介護の品質マネージメント方法をコンピュータに実行させるための品質マネージメントプログラムであって、
複数の医療・介護の名称、および、前記医療・介護の各々に関連する複数の要素からなるマスター情報を含む医療・介護マスターテーブルを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも医療・介護名称を含む評価対象医療・介護の情報を入力する入力ステップと、
前記医療・介護マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象医療・介護の情報に基づき、前記評価対象医療・介護に関連する複数の要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記内訳データを編集して医療・介護プランとして出力する医療・介護プラン出力ステップと、
を含むことを特徴とする医療・介護の品質マネージメントプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−207034(P2007−207034A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26163(P2006−26163)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(501263809)株式会社コンピュータシステム研究所 (26)