医療不具合事象対策支援システム及びプログラム
【課題】医療不具合事象の対策会議の参加者に対し、情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供する。
【解決手段】医療不具合事象対策支援システム1は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録し、登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定し、特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得し、特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、上記取得された権限情報を一時的に付与した後に、各参加者に対策会議への参加を通知する。
【解決手段】医療不具合事象対策支援システム1は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録し、登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定し、特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得し、特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、上記取得された権限情報を一時的に付与した後に、各参加者に対策会議への参加を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療不具合事象対策支援システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療不具合事象の発生を防ぐために、インシデントレポートを分析して医療の改善に役立てることがある。例えば下記の特許文献1には、電子カルテの情報を基にして分析した要因情報を提示することで、分析者を支援することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−108815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療不具合事象の発生を防ぐためには、インシデントレポートだけでなく、医療システムで管理される医事、看護、薬剤等の各システムの情報を利用して改善活動を検討することが望ましい。しかしながら、医療システムには高いセキュリティが課せられているため、各システムから情報を取得するためにはそれぞれの管理者に情報取得を依頼する必要があり、医療不具合事象の対策を検討する対策会議の参加者に必要な情報を迅速に提供できていなかった。
【0005】
本発明の目的の一つは、医療不具合事象の対策会議の参加者に対し、情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる医療不具合事象対策支援システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含むことを特徴とする医療不具合事象対策支援システムである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記選定された参加者にはそれぞれ対応する医療システムが定められ、前記付与手段は、前記取得手段により取得された権限情報を、前記参加者に対応した医療システムに応じて前記参加者に選択的に付与することを特徴とする請求項1に記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記対策会議の報告文書が登録された場合に、前記付与手段により付与された権限情報を解除する手段をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記医療不具合事象の内容には、当該医療不具合事象の影響度を含み、前記登録手段に登録された電子文書に基づき、医療不具合事象を影響度と頻度に関して集計した結果を表示手段に表示させる手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含むことを特徴とする医療不具合事象対策支援システムである。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び6に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者に対し、情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者であっても情報を取得できる医療システムが限定されるため情報の漏洩が防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者が医療システムから情報を取得できる期間が限られるため情報の漏洩が防止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、医療不具合事象の影響度と頻度に応じた状態を確認できるため見落としの防止や判断の精度向上が期待できる。
【0017】
請求項5及び7に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者が自ら医療システムから情報を取得する必要なく、各参加者に対して情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る医療管理システムのシステム構成図である。
【図2】インシデントレポートの一例を示す図である。
【図3】影響度の一例を示す図である。
【図4】インシデントレポートの分析例を示す図である。
【図5】閾値テーブルの一例を示す図である。
【図6】対策会議情報登録画面の一例を示す図である。
【図7】権限情報テーブルの一例を示す図である。
【図8】医療不具合事象対策支援システムにおける処理のフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システムを含む医療管理システムのシステム構成図である。
【図10】第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システムにおける処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0020】
図1には、本実施形態に係る医療管理システム1のシステム構成図を示した。図1に示されるように、医療管理システム1は、医療不具合事象対策支援システム10と、複数の医療システム5とを含む。
【0021】
本実施形態において、医療システム5には、例えば医療事務を管理する医事システム5A、患者の電子カルテを管理する電子カルテシステム5B、患者の看護情報を管理する看護システム5C、患者の手術情報を管理する手術システム5D、医療機器や備品等を管理する物品管理システム5E、医薬品を管理する薬剤システム5F、及び文書を管理する文書管理システム5G等を含む。個人情報保護や情報漏洩を防止する観点から、上記の各医療システム5の認証処理は独立しており、例えば医事システム5Aへのアクセス権を有していても、手術システム5D等の他の医療システム5へのアクセスは許可されない。
【0022】
医療不具合事象対策支援システム10は、発生した医療不具合事象(ヒヤリ・ハットを含む)について記述したインシデントレポートの登録を受け付け、受け付けたインシデントレポートの解析結果に基づいて対策が必要と判定された医療不具合事象の対策会議の開催を支援するシステムである。以下、医療不具合事象対策支援システム10の詳細について説明する。
【0023】
図1に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、入力部12、表示部14、インシデントレポート登録部16、情報分析部18、対策会議要否判定部20、対策会議開催依頼登録部22、参加者選定部24、権限情報保持部26、権限情報取得部28、権限情報付与部30、通知部32、及び権限情報解除部34を含む。医療不具合事象対策支援システム10は、1台のコンピュータを用いて構成されることとしてもよいし、複数台のコンピュータがそれぞれ機能を分担することで構成されることとしてもよい。また、上記の各部の機能は、CPU等の制御手段、メモリ等の記憶手段、外部デバイスとデータを送受信する入出力手段等を備えたコンピュータが、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されたプログラムを読み込み実行することで実現されるものとしてよい。なお、プログラムは情報記憶媒体によってコンピュータに供給されることとしてもよいし、インターネット等のデータ通信手段を介して供給されることとしてもよい。
【0024】
入力部12は、キーボードやマウス等の入力デバイスからユーザーの操作入力を受け付けるものである。
【0025】
表示部14は、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置を含み構成され、ユーザーインターフェース画面を表示するものである。
【0026】
インシデントレポート登録部16は、医療不具合事象の内容を記述したインシデントレポートを登録するものである。インシデントレポート登録部16は、予め作成されたインシデントレポートの入力を受け付けて登録することとしてもよいし、入力部12で受け付けたユーザーの操作に応じて編集したインシデントレポートを登録することとしてもよい。
【0027】
図2には、インシデントレポートの一例を示した。図2に示されるように、インシデントレポートには、インシデント(医療不具合事象)の発生日時、発生場所、インシデントが起きた患者に関する患者情報、インシデントの対応者、発生場面、影響度、発生内容、発生要因、改善策等の情報が含まれる。ここで、インシデントとは、患者の診療やケアにおける本来のあるべき姿から外れた行為や事態の発生を意味し、訪問者や医療従事者に対して傷害の発生した事例や傷害をもたらす可能性があったと考えられる状況も含むものである。また、影響度とは、インシデントの影響を数値化したものである。
【0028】
図3には、影響度の一例を示した。図3に示されるように、影響度は例えばレベル0〜レベル5までの多段階に設けられ、レベル毎に傷害の持続性、傷害の程度、内容の説明が関連づけられている。なお、本実施形態ではレベルの数値が上がるに応じて影響度が大きくなることとしている。そして、インシデントレポートに記述される影響度は、例えば図3に示す影響度の表を参照してユーザーが該当する数値を入力することとしてよい。
【0029】
情報分析部18は、インシデントレポート登録部16に登録されたインシデントレポートを集計することにより発生したインシデントの情報を分析するものである。例えば、情報分析部18は、インシデントレポートの「発生内容」、「発生場所」、「影響度」をキーとした集計を行うことで、どの程度の影響度の事故が、どこでどの程度発生しているのかを解析する。なお、情報分析部18は、インシデントレポートを集計する際に、解析対象とするインシデントの発生日時について期間を設けることとしてもよい。
【0030】
図4には、情報分析部18によるインシデントレポートの分析例を示した。図4に示される分析結果表示テーブルは、横軸を「発生内容」、縦軸を「発生場所」として構成される表の各セルに「影響度」、「積算」、「今日」の各項目の値を格納している。「積算」の欄には、「発生内容」、「発生場所」、「影響度」により特定されるインシデントが今まで何回発生したかが格納され、「今日」の欄には、上記特定されるインシデントが今日何回発生したかが格納される。なお、情報分析部18により生成された分析結果表示テーブルは表示部14に表示されることとしてよい。図4に示した例において、「東病棟」の「6F」において、「薬剤」に関し影響度「1」のインシデントが積算「5」発生し、今日のところは「1」発生していることを示している。また、分析結果表示テーブルにおいて、その頻度(積算数)が閾値を超えているセルや、その影響度が閾値を超えるインシデントが発生していることを示すセル等は、強調表示することとしてよい。図4に示した例では、例えば積算数が7以上のインシデント、及び影響度が4以上のインシデントが今日において発生している場合にそれぞれ強調表示することとしている。
【0031】
対策会議要否判定部20は、情報分析部18による分析結果に基づいて、発生したインシデントのうち対策会議の開催が必要か否かを判定するものである。例えば、対策会議要否判定部20は、情報分析部18において生成された分析結果表示テーブルにおいて、「影響度」が閾値を超えるインシデントが発生した場合や、「影響度」が閾値を超えなくとも、その頻度が閾値を超えているインシデントがある場合に当該インシデントを対策会議の対象と判定することとしてよい。
【0032】
図5には、対策会議要否判定部20において用いられる閾値テーブルの一例を示した。図5に示されるように、閾値テーブルには、インシデントの「発生内容」、「発生場所」、「影響度」毎に集計した頻度に関する閾値が格納されている。例えば、「薬剤」に係るインシデントが「東病棟」、「6F」にて発生し、その影響度が「1」のものが1月に5件以上あった場合には、対策会議要と判定することとする。なお、影響度が閾値以上(例えば4以上)のインシデントは頻度にかかわらず対策会議要と判定することとしている。もちろん、図5に示した閾値テーブルの内容は一例であり、各インシデントに設定される閾値は上記内容に限定されるものではない。
【0033】
対策会議開催依頼登録部22は、対策会議要否判定部20により対策会議が必要と判定された場合に、当該必要と判定された対策会議に関する情報を登録するものである。対策会議開催依頼登録部22は、対策会議に関する情報が入力される対策会議情報登録画面を表示し、対策会議情報登録画面に入力された情報に基づいて、開催対象の対策会議の情報を登録することとしてよい。具体的には、対策会議開催依頼登録部22は、対策会議要否判定部20により対策会議要と判定されたインシデントについて記述したインシデントレポートのうち、ユーザーにより選択されたものを関連付けて登録することとしてよい。
【0034】
図6には、対策会議情報登録画面の一例を示した。図6に示されるように、対策会議情報登録画面には、対策会議要と判定されたインシデントレポートのリストと、当該リストのうち選択されたインシデントレポートの内容が表示される。そして、対策会議情報登録画面において、ユーザーは必要と判断したインシデントレポートを「報告書登録」ボタンを押下することで選択し、全ての選択を終えると、「対策会議依頼」のボタンを押下することとする。こうすることで、対象のインシデントレポートを対策会議に関連付けた対策会議情報が生成される。
【0035】
参加者選定部24は、対策会議開催依頼登録部22により登録された対策会議への参加者を選定するものである。参加者選定部24は、予め定められた対策会議の委員を選定することとしてもよいし、発生したインシデントについて予め定められた医療システム5(医事システム5A、電子カルテシステム5B等)の担当者を選定することとしてもよい。なお、選定された各参加者にはそれぞれ担当する医療システム5を予め関連づけておくこととしてよい。
【0036】
権限情報保持部26は、インシデントに対応付けて必要とする医療システム5のアクセス権を定めた権限情報テーブルを保持するものである。
【0037】
図7には、権限情報テーブルの一例を示した。図7に示した権限情報テーブルでは、インシデントの発生場所と発生内容とに応じて必要な医療システム5のアクセス権が格納されている。例えば、図7に示された例では、発生場所が「東病棟」の「6F外科」であり、発生内容が「薬剤」である場合に、必要なアクセス権は「電子カルテ」、「看護システム」、「薬剤システム」、「外科システム」であると定められている。
【0038】
権限情報取得部28は、対策会議開催依頼登録部22により登録された対策会議に対応付けられたインシデントレポートが示すインシデントに基づいて、権限情報保持部26に保持されるアクセス権から必要な医療システム5のアクセス権を取得するものである。具体的には、権限情報取得部28は、対策会議に対応付けられたインシデントレポートにおいて共通するインシデントの発生場所と発生内容とに関して権限情報テーブルに格納されるアクセス権情報を参照して取得することとしてよい。
【0039】
権限情報付与部30は、権限情報取得部28により取得されたアクセス権情報を、参加者選定部24により選定された参加者に一時的に付与するものである。具体的には、権限情報付与部30は、権限情報取得部28により取得された1又は複数の医療システム5のアクセス権を、各医療システム5に関連づけられた参加者に付与することとしてよい。このようにすることで、たとえ対策会議に選定された参加者であろうと、担当外の医療システム5にはアクセスが許されない。
【0040】
通知部32は、権限情報付与部30によりアクセス権が付与された対策会議への各参加者に、対策会議への参加を通知するものである。本実施形態では、通知部32は、対策会議に関して生成された対策会議情報を各参加者に通知することとする。そして、対策会議への参加者はそれぞれに付与されたアクセス権に基づき、自らが担当する医療システム5から必要な情報を取得した上で対策会議を行うこととする。その後、対策会議への参加者は対策会議の成果を報告文書としてまとめて、例えば文書管理システム5Gに登録することとしてよい。
【0041】
権限情報解除部34は、権限情報付与部30により対策会議への参加者に付与されたアクセス権を解除するものである。権限情報解除部34は、予め定められた期間が経過した場合にアクセス権を解除してもよいし、対策会議の終了に応じてアクセス権を解除することとしてもよい。後者の場合であれば、権限情報解除部34は、例えば文書管理システム5Gへの報告文書の登録があった場合に、各参加者に付与したアクセス権を解除するようにしてもよい。
【0042】
図8には、医療不具合事象対策支援システム10における処理のフローチャートを示した。図8に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートの登録を受け付け(S101)、登録されたインシデントレポートを集計し分析する(S102)。医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートを分析した結果を表示し(S103)、影響度が高いインシデントが発生している場合(S104:Y)、又は所与の期間における発生頻度が閾値を超えるインシデントがある場合には(S105:Y)、当該インシデントを対策会議の対象に選択する(S106)。
【0043】
次に、医療不具合事象対策支援システム10は、上記選択したインシデントに関する情報を登録する対策会議情報登録画面を表示し(S107)、当該表示した対策会議情報登録画面への情報登録を受け付ける(S108)。医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議への参加者を選定すると共に(S109)、対策会議の対象とするインシデントに基づいて必要なアクセス権を取得し(S110)、選定した参加者に上記取得したアクセス権を付与して(S111)、各参加者に対策会議への参加を通知する(S112)。
【0044】
医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議を経て発行された報告書の登録を受け付け(S113)、対策会議の参加者に付与したアクセス権を解除し(S114)、処理を終了する。
【0045】
上記の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10では、対策が必要と判断されたインシデントに関して必要なアクセス権を一時的に対策会議の参加者に付与することで、各参加者は通知を受けた時点で必要な情報へのアクセスが許可されつつも、情報へのアクセスが許される期間が限られるため情報の漏洩が発生しにくい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9には、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10を含む医療管理システム1のシステム構成図を示した。
【0047】
図9に示されるように、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10は、入力部12、表示部14、インシデントレポート登録部16、情報分析部18、対策会議要否判定部20、対策会議開催依頼登録部22、参加者選定部24、権限情報保持部26、権限情報取得部28、通知部32、情報収集部36、及び提供情報作成部38を含む。第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10に関し、第1の実施形態と共通の符号を有する機能ブロックは機能が共通しているため説明を省略する。以下、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10において、第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0048】
情報収集部36は、権限情報取得部28により取得されたアクセス権を用いて、対応する医療システム5から対策会議の対象とするインシデントに関連する情報を収集するものである。情報収集部36は、対策会議の対象とするインシデントに関連する情報を、インシデントに係る患者ID、インシデントの発生時刻等のキーに基づいて収集することとしてよい。
【0049】
提供情報作成部38は、情報収集部36により収集された情報をまとめて対策会議の参加者に提供する情報群(情報セット)を作成するものである。
【0050】
通知部32は、参加者選定部24により選定された各参加者に対策会議への参加を通知すると共に、各参加者に提供情報作成部38により作成された情報群を提供することとする。
【0051】
図10には、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10における処理のフローチャートを示した。図10に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートの登録を受け付け(S201)、登録されたインシデントレポートを集計し分析する(S202)。医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートを分析した結果を表示し(S203)、影響度が高いインシデントが発生している場合(S204:Y)、又は所与の期間における発生頻度が閾値を超えるインシデントがある場合には(S205:Y)、当該インシデントを対策会議の対象に選択する(S206)。
【0052】
次に、医療不具合事象対策支援システム10は、上記選択したインシデントに関する情報を登録する対策会議情報登録画面を表示し(S207)、当該表示した対策会議情報登録画面への情報登録を受け付ける(S208)。医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議への参加者を選定すると共に(S209)、対策会議の対象とするインシデントに基づいて必要なアクセス権を取得する(S210)。
【0053】
医療不具合事象対策支援システム10は、上記取得したアクセス権を用いて、対象の各医療システム5から情報を収集し(S211)、当該収集した情報に基づいて各参加者に提供する情報群を作成する(S212)。そして、医療不具合事象対策支援システム10は、各参加者に対策会議への参加を、上記作成した情報群と共に通知する(S213)。そして、医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議を経て発行された報告書の登録を受け付けて(S214)、処理を終了する。
【0054】
第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10では、対策会議の参加者が医療システム5にアクセスして情報を取得する必要がないため、情報の漏洩が発生しにくい。
【0055】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば対策会議の対象とするインシデントは、表示された分析結果表示テーブルに基づいてユーザーが選択することとしても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1 医療管理システム、5 医療システム、5A 医事システム、5B 電子カルテシステム、5C 看護システム、5D 手術システム、5E 物品管理システム、5F 薬剤システム、5G 文書管理システム、10 医療不具合事象対策支援システム、12 入力部、14 表示部、16 インシデントレポート登録部、18 情報分析部、20 対策会議要否判定部、22 対策会議開催依頼登録部、24 参加者選定部、26 権限情報保持部、28 権限情報取得部、30 権限情報付与部、32 通知部、34 権限情報解除部、36 情報収集部、38 提供情報作成部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療不具合事象対策支援システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療不具合事象の発生を防ぐために、インシデントレポートを分析して医療の改善に役立てることがある。例えば下記の特許文献1には、電子カルテの情報を基にして分析した要因情報を提示することで、分析者を支援することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−108815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療不具合事象の発生を防ぐためには、インシデントレポートだけでなく、医療システムで管理される医事、看護、薬剤等の各システムの情報を利用して改善活動を検討することが望ましい。しかしながら、医療システムには高いセキュリティが課せられているため、各システムから情報を取得するためにはそれぞれの管理者に情報取得を依頼する必要があり、医療不具合事象の対策を検討する対策会議の参加者に必要な情報を迅速に提供できていなかった。
【0005】
本発明の目的の一つは、医療不具合事象の対策会議の参加者に対し、情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる医療不具合事象対策支援システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含むことを特徴とする医療不具合事象対策支援システムである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記選定された参加者にはそれぞれ対応する医療システムが定められ、前記付与手段は、前記取得手段により取得された権限情報を、前記参加者に対応した医療システムに応じて前記参加者に選択的に付与することを特徴とする請求項1に記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記対策会議の報告文書が登録された場合に、前記付与手段により付与された権限情報を解除する手段をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記医療不具合事象の内容には、当該医療不具合事象の影響度を含み、前記登録手段に登録された電子文書に基づき、医療不具合事象を影響度と頻度に関して集計した結果を表示手段に表示させる手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療不具合事象対策支援システムである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含むことを特徴とする医療不具合事象対策支援システムである。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び6に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者に対し、情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者であっても情報を取得できる医療システムが限定されるため情報の漏洩が防止できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者が医療システムから情報を取得できる期間が限られるため情報の漏洩が防止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、医療不具合事象の影響度と頻度に応じた状態を確認できるため見落としの防止や判断の精度向上が期待できる。
【0017】
請求項5及び7に記載の発明によれば、医療不具合事象の対策会議への参加者が自ら医療システムから情報を取得する必要なく、各参加者に対して情報の漏洩を防ぎつつ必要な情報を迅速に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る医療管理システムのシステム構成図である。
【図2】インシデントレポートの一例を示す図である。
【図3】影響度の一例を示す図である。
【図4】インシデントレポートの分析例を示す図である。
【図5】閾値テーブルの一例を示す図である。
【図6】対策会議情報登録画面の一例を示す図である。
【図7】権限情報テーブルの一例を示す図である。
【図8】医療不具合事象対策支援システムにおける処理のフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システムを含む医療管理システムのシステム構成図である。
【図10】第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システムにおける処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0020】
図1には、本実施形態に係る医療管理システム1のシステム構成図を示した。図1に示されるように、医療管理システム1は、医療不具合事象対策支援システム10と、複数の医療システム5とを含む。
【0021】
本実施形態において、医療システム5には、例えば医療事務を管理する医事システム5A、患者の電子カルテを管理する電子カルテシステム5B、患者の看護情報を管理する看護システム5C、患者の手術情報を管理する手術システム5D、医療機器や備品等を管理する物品管理システム5E、医薬品を管理する薬剤システム5F、及び文書を管理する文書管理システム5G等を含む。個人情報保護や情報漏洩を防止する観点から、上記の各医療システム5の認証処理は独立しており、例えば医事システム5Aへのアクセス権を有していても、手術システム5D等の他の医療システム5へのアクセスは許可されない。
【0022】
医療不具合事象対策支援システム10は、発生した医療不具合事象(ヒヤリ・ハットを含む)について記述したインシデントレポートの登録を受け付け、受け付けたインシデントレポートの解析結果に基づいて対策が必要と判定された医療不具合事象の対策会議の開催を支援するシステムである。以下、医療不具合事象対策支援システム10の詳細について説明する。
【0023】
図1に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、入力部12、表示部14、インシデントレポート登録部16、情報分析部18、対策会議要否判定部20、対策会議開催依頼登録部22、参加者選定部24、権限情報保持部26、権限情報取得部28、権限情報付与部30、通知部32、及び権限情報解除部34を含む。医療不具合事象対策支援システム10は、1台のコンピュータを用いて構成されることとしてもよいし、複数台のコンピュータがそれぞれ機能を分担することで構成されることとしてもよい。また、上記の各部の機能は、CPU等の制御手段、メモリ等の記憶手段、外部デバイスとデータを送受信する入出力手段等を備えたコンピュータが、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されたプログラムを読み込み実行することで実現されるものとしてよい。なお、プログラムは情報記憶媒体によってコンピュータに供給されることとしてもよいし、インターネット等のデータ通信手段を介して供給されることとしてもよい。
【0024】
入力部12は、キーボードやマウス等の入力デバイスからユーザーの操作入力を受け付けるものである。
【0025】
表示部14は、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置を含み構成され、ユーザーインターフェース画面を表示するものである。
【0026】
インシデントレポート登録部16は、医療不具合事象の内容を記述したインシデントレポートを登録するものである。インシデントレポート登録部16は、予め作成されたインシデントレポートの入力を受け付けて登録することとしてもよいし、入力部12で受け付けたユーザーの操作に応じて編集したインシデントレポートを登録することとしてもよい。
【0027】
図2には、インシデントレポートの一例を示した。図2に示されるように、インシデントレポートには、インシデント(医療不具合事象)の発生日時、発生場所、インシデントが起きた患者に関する患者情報、インシデントの対応者、発生場面、影響度、発生内容、発生要因、改善策等の情報が含まれる。ここで、インシデントとは、患者の診療やケアにおける本来のあるべき姿から外れた行為や事態の発生を意味し、訪問者や医療従事者に対して傷害の発生した事例や傷害をもたらす可能性があったと考えられる状況も含むものである。また、影響度とは、インシデントの影響を数値化したものである。
【0028】
図3には、影響度の一例を示した。図3に示されるように、影響度は例えばレベル0〜レベル5までの多段階に設けられ、レベル毎に傷害の持続性、傷害の程度、内容の説明が関連づけられている。なお、本実施形態ではレベルの数値が上がるに応じて影響度が大きくなることとしている。そして、インシデントレポートに記述される影響度は、例えば図3に示す影響度の表を参照してユーザーが該当する数値を入力することとしてよい。
【0029】
情報分析部18は、インシデントレポート登録部16に登録されたインシデントレポートを集計することにより発生したインシデントの情報を分析するものである。例えば、情報分析部18は、インシデントレポートの「発生内容」、「発生場所」、「影響度」をキーとした集計を行うことで、どの程度の影響度の事故が、どこでどの程度発生しているのかを解析する。なお、情報分析部18は、インシデントレポートを集計する際に、解析対象とするインシデントの発生日時について期間を設けることとしてもよい。
【0030】
図4には、情報分析部18によるインシデントレポートの分析例を示した。図4に示される分析結果表示テーブルは、横軸を「発生内容」、縦軸を「発生場所」として構成される表の各セルに「影響度」、「積算」、「今日」の各項目の値を格納している。「積算」の欄には、「発生内容」、「発生場所」、「影響度」により特定されるインシデントが今まで何回発生したかが格納され、「今日」の欄には、上記特定されるインシデントが今日何回発生したかが格納される。なお、情報分析部18により生成された分析結果表示テーブルは表示部14に表示されることとしてよい。図4に示した例において、「東病棟」の「6F」において、「薬剤」に関し影響度「1」のインシデントが積算「5」発生し、今日のところは「1」発生していることを示している。また、分析結果表示テーブルにおいて、その頻度(積算数)が閾値を超えているセルや、その影響度が閾値を超えるインシデントが発生していることを示すセル等は、強調表示することとしてよい。図4に示した例では、例えば積算数が7以上のインシデント、及び影響度が4以上のインシデントが今日において発生している場合にそれぞれ強調表示することとしている。
【0031】
対策会議要否判定部20は、情報分析部18による分析結果に基づいて、発生したインシデントのうち対策会議の開催が必要か否かを判定するものである。例えば、対策会議要否判定部20は、情報分析部18において生成された分析結果表示テーブルにおいて、「影響度」が閾値を超えるインシデントが発生した場合や、「影響度」が閾値を超えなくとも、その頻度が閾値を超えているインシデントがある場合に当該インシデントを対策会議の対象と判定することとしてよい。
【0032】
図5には、対策会議要否判定部20において用いられる閾値テーブルの一例を示した。図5に示されるように、閾値テーブルには、インシデントの「発生内容」、「発生場所」、「影響度」毎に集計した頻度に関する閾値が格納されている。例えば、「薬剤」に係るインシデントが「東病棟」、「6F」にて発生し、その影響度が「1」のものが1月に5件以上あった場合には、対策会議要と判定することとする。なお、影響度が閾値以上(例えば4以上)のインシデントは頻度にかかわらず対策会議要と判定することとしている。もちろん、図5に示した閾値テーブルの内容は一例であり、各インシデントに設定される閾値は上記内容に限定されるものではない。
【0033】
対策会議開催依頼登録部22は、対策会議要否判定部20により対策会議が必要と判定された場合に、当該必要と判定された対策会議に関する情報を登録するものである。対策会議開催依頼登録部22は、対策会議に関する情報が入力される対策会議情報登録画面を表示し、対策会議情報登録画面に入力された情報に基づいて、開催対象の対策会議の情報を登録することとしてよい。具体的には、対策会議開催依頼登録部22は、対策会議要否判定部20により対策会議要と判定されたインシデントについて記述したインシデントレポートのうち、ユーザーにより選択されたものを関連付けて登録することとしてよい。
【0034】
図6には、対策会議情報登録画面の一例を示した。図6に示されるように、対策会議情報登録画面には、対策会議要と判定されたインシデントレポートのリストと、当該リストのうち選択されたインシデントレポートの内容が表示される。そして、対策会議情報登録画面において、ユーザーは必要と判断したインシデントレポートを「報告書登録」ボタンを押下することで選択し、全ての選択を終えると、「対策会議依頼」のボタンを押下することとする。こうすることで、対象のインシデントレポートを対策会議に関連付けた対策会議情報が生成される。
【0035】
参加者選定部24は、対策会議開催依頼登録部22により登録された対策会議への参加者を選定するものである。参加者選定部24は、予め定められた対策会議の委員を選定することとしてもよいし、発生したインシデントについて予め定められた医療システム5(医事システム5A、電子カルテシステム5B等)の担当者を選定することとしてもよい。なお、選定された各参加者にはそれぞれ担当する医療システム5を予め関連づけておくこととしてよい。
【0036】
権限情報保持部26は、インシデントに対応付けて必要とする医療システム5のアクセス権を定めた権限情報テーブルを保持するものである。
【0037】
図7には、権限情報テーブルの一例を示した。図7に示した権限情報テーブルでは、インシデントの発生場所と発生内容とに応じて必要な医療システム5のアクセス権が格納されている。例えば、図7に示された例では、発生場所が「東病棟」の「6F外科」であり、発生内容が「薬剤」である場合に、必要なアクセス権は「電子カルテ」、「看護システム」、「薬剤システム」、「外科システム」であると定められている。
【0038】
権限情報取得部28は、対策会議開催依頼登録部22により登録された対策会議に対応付けられたインシデントレポートが示すインシデントに基づいて、権限情報保持部26に保持されるアクセス権から必要な医療システム5のアクセス権を取得するものである。具体的には、権限情報取得部28は、対策会議に対応付けられたインシデントレポートにおいて共通するインシデントの発生場所と発生内容とに関して権限情報テーブルに格納されるアクセス権情報を参照して取得することとしてよい。
【0039】
権限情報付与部30は、権限情報取得部28により取得されたアクセス権情報を、参加者選定部24により選定された参加者に一時的に付与するものである。具体的には、権限情報付与部30は、権限情報取得部28により取得された1又は複数の医療システム5のアクセス権を、各医療システム5に関連づけられた参加者に付与することとしてよい。このようにすることで、たとえ対策会議に選定された参加者であろうと、担当外の医療システム5にはアクセスが許されない。
【0040】
通知部32は、権限情報付与部30によりアクセス権が付与された対策会議への各参加者に、対策会議への参加を通知するものである。本実施形態では、通知部32は、対策会議に関して生成された対策会議情報を各参加者に通知することとする。そして、対策会議への参加者はそれぞれに付与されたアクセス権に基づき、自らが担当する医療システム5から必要な情報を取得した上で対策会議を行うこととする。その後、対策会議への参加者は対策会議の成果を報告文書としてまとめて、例えば文書管理システム5Gに登録することとしてよい。
【0041】
権限情報解除部34は、権限情報付与部30により対策会議への参加者に付与されたアクセス権を解除するものである。権限情報解除部34は、予め定められた期間が経過した場合にアクセス権を解除してもよいし、対策会議の終了に応じてアクセス権を解除することとしてもよい。後者の場合であれば、権限情報解除部34は、例えば文書管理システム5Gへの報告文書の登録があった場合に、各参加者に付与したアクセス権を解除するようにしてもよい。
【0042】
図8には、医療不具合事象対策支援システム10における処理のフローチャートを示した。図8に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートの登録を受け付け(S101)、登録されたインシデントレポートを集計し分析する(S102)。医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートを分析した結果を表示し(S103)、影響度が高いインシデントが発生している場合(S104:Y)、又は所与の期間における発生頻度が閾値を超えるインシデントがある場合には(S105:Y)、当該インシデントを対策会議の対象に選択する(S106)。
【0043】
次に、医療不具合事象対策支援システム10は、上記選択したインシデントに関する情報を登録する対策会議情報登録画面を表示し(S107)、当該表示した対策会議情報登録画面への情報登録を受け付ける(S108)。医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議への参加者を選定すると共に(S109)、対策会議の対象とするインシデントに基づいて必要なアクセス権を取得し(S110)、選定した参加者に上記取得したアクセス権を付与して(S111)、各参加者に対策会議への参加を通知する(S112)。
【0044】
医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議を経て発行された報告書の登録を受け付け(S113)、対策会議の参加者に付与したアクセス権を解除し(S114)、処理を終了する。
【0045】
上記の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10では、対策が必要と判断されたインシデントに関して必要なアクセス権を一時的に対策会議の参加者に付与することで、各参加者は通知を受けた時点で必要な情報へのアクセスが許可されつつも、情報へのアクセスが許される期間が限られるため情報の漏洩が発生しにくい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9には、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10を含む医療管理システム1のシステム構成図を示した。
【0047】
図9に示されるように、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10は、入力部12、表示部14、インシデントレポート登録部16、情報分析部18、対策会議要否判定部20、対策会議開催依頼登録部22、参加者選定部24、権限情報保持部26、権限情報取得部28、通知部32、情報収集部36、及び提供情報作成部38を含む。第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10に関し、第1の実施形態と共通の符号を有する機能ブロックは機能が共通しているため説明を省略する。以下、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10において、第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0048】
情報収集部36は、権限情報取得部28により取得されたアクセス権を用いて、対応する医療システム5から対策会議の対象とするインシデントに関連する情報を収集するものである。情報収集部36は、対策会議の対象とするインシデントに関連する情報を、インシデントに係る患者ID、インシデントの発生時刻等のキーに基づいて収集することとしてよい。
【0049】
提供情報作成部38は、情報収集部36により収集された情報をまとめて対策会議の参加者に提供する情報群(情報セット)を作成するものである。
【0050】
通知部32は、参加者選定部24により選定された各参加者に対策会議への参加を通知すると共に、各参加者に提供情報作成部38により作成された情報群を提供することとする。
【0051】
図10には、第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10における処理のフローチャートを示した。図10に示されるように、医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートの登録を受け付け(S201)、登録されたインシデントレポートを集計し分析する(S202)。医療不具合事象対策支援システム10は、インシデントレポートを分析した結果を表示し(S203)、影響度が高いインシデントが発生している場合(S204:Y)、又は所与の期間における発生頻度が閾値を超えるインシデントがある場合には(S205:Y)、当該インシデントを対策会議の対象に選択する(S206)。
【0052】
次に、医療不具合事象対策支援システム10は、上記選択したインシデントに関する情報を登録する対策会議情報登録画面を表示し(S207)、当該表示した対策会議情報登録画面への情報登録を受け付ける(S208)。医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議への参加者を選定すると共に(S209)、対策会議の対象とするインシデントに基づいて必要なアクセス権を取得する(S210)。
【0053】
医療不具合事象対策支援システム10は、上記取得したアクセス権を用いて、対象の各医療システム5から情報を収集し(S211)、当該収集した情報に基づいて各参加者に提供する情報群を作成する(S212)。そして、医療不具合事象対策支援システム10は、各参加者に対策会議への参加を、上記作成した情報群と共に通知する(S213)。そして、医療不具合事象対策支援システム10は、対策会議を経て発行された報告書の登録を受け付けて(S214)、処理を終了する。
【0054】
第2の実施形態に係る医療不具合事象対策支援システム10では、対策会議の参加者が医療システム5にアクセスして情報を取得する必要がないため、情報の漏洩が発生しにくい。
【0055】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば対策会議の対象とするインシデントは、表示された分析結果表示テーブルに基づいてユーザーが選択することとしても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1 医療管理システム、5 医療システム、5A 医事システム、5B 電子カルテシステム、5C 看護システム、5D 手術システム、5E 物品管理システム、5F 薬剤システム、5G 文書管理システム、10 医療不具合事象対策支援システム、12 入力部、14 表示部、16 インシデントレポート登録部、18 情報分析部、20 対策会議要否判定部、22 対策会議開催依頼登録部、24 参加者選定部、26 権限情報保持部、28 権限情報取得部、30 権限情報付与部、32 通知部、34 権限情報解除部、36 情報収集部、38 提供情報作成部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、
前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含む
ことを特徴とする医療不具合事象対策支援システム。
【請求項2】
前記選定された参加者にはそれぞれ対応する医療システムが定められ、
前記付与手段は、前記取得手段により取得された権限情報を、前記参加者に対応した医療システムに応じて前記参加者に選択的に付与する
ことを特徴とする請求項1に記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項3】
前記対策会議の報告文書が登録された場合に、前記付与手段により付与された権限情報を解除する手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項4】
前記医療不具合事象の内容には、当該医療不具合事象の影響度を含み、
前記登録手段に登録された電子文書に基づき、医療不具合事象を影響度と頻度に関して集計した結果を表示手段に表示させる手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項5】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含む
ことを特徴とする医療不具合事象対策支援システム。
【請求項6】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、
前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項7】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項1】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、
前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含む
ことを特徴とする医療不具合事象対策支援システム。
【請求項2】
前記選定された参加者にはそれぞれ対応する医療システムが定められ、
前記付与手段は、前記取得手段により取得された権限情報を、前記参加者に対応した医療システムに応じて前記参加者に選択的に付与する
ことを特徴とする請求項1に記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項3】
前記対策会議の報告文書が登録された場合に、前記付与手段により付与された権限情報を解除する手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項4】
前記医療不具合事象の内容には、当該医療不具合事象の影響度を含み、
前記登録手段に登録された電子文書に基づき、医療不具合事象を影響度と頻度に関して集計した結果を表示手段に表示させる手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療不具合事象対策支援システム。
【請求項5】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段と、を含む
ことを特徴とする医療不具合事象対策支援システム。
【請求項6】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記取得手段により取得された権限情報を一時的に付与する付与手段と、
前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項7】
それぞれ医療不具合事象の内容を記述した電子文書を登録する登録手段と、
前記登録手段に登録された電子文書を集計した結果、予め定められた条件を満足する医療不具合事象を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象について予め定められた1又は複数の医療システムからの情報取得を許可する権限情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した権限情報に基づいて、前記1又は複数の医療システムから情報を収集する情報収集手段と、
前記特定手段により特定された医療不具合事象の対策会議に選定された参加者に、前記情報収集手段により収集された情報を提供すると共に、前記参加者に前記対策会議への参加を通知する通知手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−192086(P2011−192086A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58498(P2010−58498)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
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