説明

医療介入中の脈管構造を記録する方法及び装置

医療介入中に脈管構造を記録するための方法及び装置は、装置ランドマーク5の近傍に供給される造影剤6の注入を検出しS1、装置ランドマーク5の近傍を所定の時間監視しS3、その監視された装置ランドマーク5の近傍に基づいて時間−コントラスト曲線を発生しS3a、時定数曲線を分析しS4a、時定数曲線に基づいて視認性最適値として最良の瞬間を判定するS4b、というステップ又は要素を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療介入中の脈管構造を記録する方法及び装置に関し、特に、心臓狭窄症の治療を行うためカテーテル検査室におけるPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty;経皮経管冠動脈形成)のための画像形成システムに用いられることの可能な医療介入中の脈管構造を記録するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PTCA中の最もデリケートな段階の1つは、目標の傷又は病変(狭窄症)を通じてガイドワイヤ先端を通すことである。この箇所における血管壁は、大抵は起伏があり、定義上、その処置は限定される。したがって、狭窄症通過は、当該医療介入のうち最も時間のかかる(そしてこれに伴い最も適用量の生じる)部分の1つということになる。
【0003】
かかる狭窄症通過段階が難しい理由の1つは、殆ど盲目的にかつ動いている目標に対して行われるという点からきている。殆どの場合、医師は、専ら、その狭窄症はどんなものか、また、その狭窄症内におけるワイヤ先端の厳密な位置はどこかを見つけ出そうとしながら当該ワイヤ先端を確認する。この過程において、医師は、血管写像において視認可能な狭窄症と現在の先端位置を心の中で位置合わせしようとするか、又は造影剤を少しの量だけ注入することが可能である。
【0004】
血管写像との比較に際し存在する第1のアプローチは、特に心臓の呼吸動作のために、難しく、全ての種類の不正確さに縛られる。
【0005】
造影剤注入に絡む第2のアプローチは、残念ながら非常に一時的なものであり、当該状況を一見するだけのものである。また、これは、心臓の呼吸動作により難しくなる。
【0006】
第3の方策は、或る種の心臓ロードマッピング技術を用いることにあると考えられる。この種の方策は、現在の医療介入システムにはまだ存在しておらず、実現が難しいものである。
【0007】
基本的な医療介入処置の説明は、 'Algorithmic Solutions for Life Device - Two-Vessel Match', J. Bredno, B. Martin-Leung, K. Eck, in the proceedings of SPIE, Volume 5370-Medical Imaging 2004: Imaging Processing, J. Michael Fitzpatrick, Milan Sonka, Editors, May 2004, Pages 1486-1497で見るつけることができる。したがって、カテーテルは、アクセス場所における脈管系に挿入された後、治療の必要な脈管構造に大きな血管に沿って前進させられる。造影剤は、カテーテルを介して注入され、カテーテル検査室X線機器は、造影剤が充填されたときに血管を示す血管写像シーケンスを記録する。診断用血管写像取込は、撮像装置の幾何学的構造を変化させながら繰り返されることが可能である。診断及び医療介入計画は、このような診断用血管写像に基づいている。医療介入中、病状のある脈管構造、例えば、冠動脈、神経血管動脈瘤又は前部静脈奇形に、柔軟性のある、一部又は全部が放射状の不透過なガイドワイヤが前進させられる。蛍光透視法の少量のX線監視は、ガイドワイヤを視覚化し、ガイドワイヤを前進させながら医療介入者の視覚と手の協調関係を可能にする。位置付けられるとき、ガイドワイヤは、医療介入デバイス、例えば、膨張及びステント運搬のためのバルーン、動脈瘤凝固のための取り外し可能なコイルを移送するレールとして機能する。当該医療介入デバイスの移送及び配備も、蛍光透視法により制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、医療介入の状況を改善し、現在の狭窄症通過状況を監視するための快適な方法を提供することとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、独立請求項の主題により達成されるものであり、その実施例は、従属請求項において具体化される。
【0010】
本発明の模範的実施例によれば、医療介入の間に脈管構造を記録するための方法は、装置ランドマークの近傍に供給される造影剤の注入を検出すること、前記装置ランドマークの近傍を所定時間にわたり監視すること、前記装置ランドマークの当該監視された近傍に基づいて時間−コントラスト曲線を発生すること、前記時間−コントラスト曲線を分析すること、及び前記時間−コントラスト曲線に基づいて視認性最適値として最良の瞬間を判定すること、を有する。
【0011】
したがって、この方法は、装置ランドマークの周囲に達する造影剤の1回分が最適な視覚化状態を生み出して直ぐに、装置ランドマーク、例えばガイドワイヤ先端又は狭窄症バルーンマーカの画像を自動的に取り込み強調することができる。最良の瞬間のこの自動的な取り込みと強調は、狭窄症通過時間において有利な特徴である。これは、最も弱い造影剤の注入の多くを形成し、例えば、取り込み時点における例えば先端の形態の装置ランドマークの厳密な箇所と一緒に例えば狭窄症の構造の動きのない最適な視界を提供する。したがって、或る種のスナップ写真は、当該医療介入をどのように進めるかを判定するために医師を助けることになる貴重な情報要素を当該医師にもたらすことになる。実際のところ、この方法を、全ての種類のマーカやカテーテルに用いることができ、或いは動脈瘤のような解剖学的ランドマークにさえ用いることができる。さらに、本方法は、心臓の呼吸動作の問題も解決するものである。
【0012】
本発明の模範的実施例によれば、本方法は、さらに、最良の時点で装置ランドマークの近傍を視覚化することを有する。
【0013】
したがって、医師又はユーザにとって、装置ランドマークの近傍を視覚化させることができ、そのとき当該近傍を、医療介入に対して関心領域として理解するのが良い。
【0014】
本発明の模範的実施例によれば、当該装置ランドマークは、ガイドワイヤ先端又は狭窄症バルーンマーカである。
【0015】
したがって、本方法は、例えばステントを実現するためのガイドワイヤ先端を用いた装置や、狭窄症バルーンによって狭窄症の医療介入及び治療をなすための装置と共に適用可能である。
【0016】
本発明の模範的実施例によれば、本方法はさらに、常に当該装置ランドマークを検出し位置特定することを有する。
【0017】
高X線吸収特性及び限定された長さを有する例えばガイドワイヤ先端部などの装置ランドマークを用いるとき、当該検出プロセスは、とても簡単であり、従来の隆起強調及び閾値化技術とともに行われるようにしてもよい。このアプローチは、隆起トラッキング技術により支持されることもできる。
【0018】
本発明の模範的実施例によれば、本方法は、さらに、造影剤注入の検出に関するラン(run)を監視することを有する。
【0019】
したがって、現在の蛍光透視法の行程の各フレームにおいて先端部のような装置ランドマークの分割を提供することができる。
【0020】
本発明の模範的実施例によれば、本方法は、さらに、ブール指標(Boolean indicator)として検出の結果を計算することを有する。
【0021】
したがって、造影剤が注入されているか否かについての明示を持つことができる。なお、起こりうる造影剤注入の検出のためにランを監視してもよく、この検出タスクのために、監視されることの可能な電気注射器コマンドのように、非画像ベースの装置が絡むようにしてもよく、また純粋に画像ベースの技術も可能である。当該ランに沿う平均の隆起性の比較的急激な増加は、この検出を達成する平均的方法である。
【0022】
本発明の模範的実施例によれば、本方法は、装置ランドマークの周りの中間調の値を監視することをさらに有する。
【0023】
造影剤注入の検出は、監視を起動させる。造影剤が注入カテーテルを通じて生成されると、例えばガイドワイヤ先端部などの装置ランドマークの近傍に素早く達する。装置ランドマークの連続的分割は、造影剤を探し分析するところの領域の幾何学的形状配置を提供する。装置ランドマーク上及びその周辺における中間調の値を監視することによって、幾つかの時間−強度又は時間−コントラストの曲線の生成又は発生が可能であり、例えば、時間についての先端部における平均の中間調のための1つの曲線と、装置ランドマークの両側における平均についての1つの曲線である。
【0024】
本発明の典型的実施例によれば、本方法はさらに、装置ランドマーク及びその周囲の視認性指標(visibility index)を計算することを有する。
【0025】
これら時間−強度又は時間−コントラスト曲線が分析され、装置ランドマーク及びその周辺及び近傍それぞれの視認性指標が計算され、この指標が最適な値に達するところの時点がいわゆる最良の瞬間を決定する。
【0026】
本発明の典型的実施例によれば、本方法はさらに、装置ランドマークを隠す直前又は直後の時点、或いは最大の造影剤濃度の時点で、瞬間として、装置ランドマークを隠す造影剤の注入を検出する時の最良の瞬間を判定することを有する。
【0027】
普通は、2つの状況が起こりうる。第1の状況において、大量の造影剤が注入される。この場合、当該装置ランドマークは、或る段階で造影剤により完全に隠されることになり、当該最良の瞬間は、造影剤が流れ出るときに、この状況が起こる少し前か又は少し後である。第2の状況においては、限られた量の造影剤だけしか注入されない。この場合、当該先端部の周辺の最大造影剤濃度は、当該先端部を明確に視認可能なままとし、また、狭窄症のために最良の視認性も生み出す。換言すれば、大量の造影剤を注入するとき、血管、脈管構造又は狭窄症だけは、それぞれ視認可能であり、造影剤を注入しないときは、装置ランドマーク、例えば当該先端部だけが視認可能となる。したがって、血管、脈管構造又は狭窄症それぞれと先端部などの装置ランドマークとの組み合わせが最適な視認性にあるときが最良の瞬間に対応する。
【0028】
本発明の模範的実施例によれば、本方法は、さらに、装置ランドマークと傷又は病変とが背景上最適なコントラスト相関を有する場合の視認性最適値を判定することを有する。
【0029】
したがって、最良の瞬間は、装置ランドマークと傷又は病変との双方が当該背景に対して明確に浮き出る状況の或る視認性最適値に対応する。なお、最適コントラスト相関は、背景における装置ランドマークと傷又は病変、例えばガイドワイヤの先端と狭窄症の明確な視認性に関する最適値を意味し、この最適値は、背景における装置ランドマークか又は傷若しくは病変のどちらかの最大コントラストに限定されず、背景において同時に装置ランドマークや傷又は病変の最良の視認性を可能にする最適値とすることもできる。
【0030】
本発明の模範的実施例によれば、当該方法は、傷又は病変とともに当該装置ランドマークの近傍を視覚化することをさらに有する。
【0031】
したがって、装置ランドマークと傷又は病変の互いの幾何学的形状配置、例えば、ガイドワイヤ先端部と狭窄症の位置を意味する、当該医療介入の関心領域についての表示を、当該医療介入者が得ることができる。
【0032】
本発明の典型的実施例によれば、本方法は、拡大又は縮小された関心領域の視覚化をさらに有する。
【0033】
これにより、かなり明確な視覚化が提供される。なお、勿論ではあるが、全ての種類の空間的かつ時間的フィルタを、ヒストグラム操作と共に適用可能である。
【0034】
本発明の典型的実施例によれば、本方法はさらに、副モニタに視覚化情報を表示することを有する。
【0035】
したがって、例えば、傷又は病変及び装置ランドマーク(例えば先端部の加わった狭窄症)の強調されズームされた視界は、専用のモニタに表示可能であり、この視界は、新しい造影剤パフが注入されこれによりその視界を更新するまで保持されるのが普通となる。
【0036】
なお、説明する方法は、全面的に自動的なものであり、手動の対話動作を必要としない。
【0037】
また、上述した本発明の模範的実施例は、装置、プログラム製品及びコンピュータ読取可能媒体にも当てはまる。
【0038】
ガイドワイヤ先端部のような装置ランドマーク及び狭窄症のような傷又は病変の最適な視覚化の可能性を提供し、これと同時に、装置ランドマークの近傍における低又は高造影剤濃度が原因の劣悪な視覚化を回避することは、本発明の要旨とみなすことができる。また、それは視覚化を最適化するので、本発明は、必要な造影剤の量を減らす作用を有する。この造影剤低減は、コスト削減の理由にも、また、過剰な造影剤は、腎臓への悪影響を有しうるので患者の健康のためにも、どちらにも重要である。
【0039】
本発明のこれらの態様及びその他の態様は、以下に説明する実施例に基づいて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下、本発明の模範的実施例を次の図面に基づいて説明する。
【図1】注入前の血管、ガイドワイヤ及び先端部の幾何学的形状配置を示す図。
【図2】造影剤注入が始まったものの最適な瞬間が未だ来ない状態を示す図。
【図3】最適な瞬間が検出される状態を示す図。
【図4】最適な瞬間における狭窄症及び先端部を示す図3の点線の四角の拡大図。
【図5】関心領域における造影剤濃度を示す図。
【図6】本発明の方法の典型的実施例のフローチャート。
【図7】第1のモードにおける造影剤濃度を示す図。
【図8】第2のモードにおける造影剤濃度を示す図。
【図9】最良の瞬間の判定を示す図。
【図10】本発明の模範的実施例による装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、注入カテーテル1が挿入される血管又は一般的には脈管構造の幾何学的形状配置を示している。ガイドワイヤ先端部5は、冠状動脈4における狭窄症3を検査して治療するためにガイドワイヤ2により導かれる。なお、冠状動脈4は、実際は視認することはできない。ガイドワイヤ先端部5は、より暗い部分として描かれ、共通のX線検査により検出可能なものとして構成可能であり、ガイドワイヤは、X線に対して不透過なものとすることができる。したがって、ガイドワイヤ5の位置は、X線により検出可能であり、狭窄症3を描くのは難しい。何故なら、冠状動脈は、概してX線に対して視認できないからである。したがって、造影剤は、脈管構造、特に狭窄症3を含む冠状動脈のコントラストを高めるために注入カテーテルを介して供給されるようにすることができる。
【0042】
図2は、造影剤注入が始まった脈管構造における状態を示している。この造影剤は、限定された伝搬速度を有するので、コントラストは時間とともに増加する。
【0043】
図2に示される例において、造影剤6は、とりわけガイドワイヤに沿って伝搬するが、目下においてはガイドワイヤ先端部に到達していないので、ガイドワイヤ先端部5及び狭窄症3の近傍におけるコントラストは、目下のところX線によるさらなる検査のためには十分ではない。
【0044】
所定の時間後のさらに伝搬された状態では、当該造影剤は、図3に示されるように、ガイドワイヤに沿ってさらに伝搬する。なお、造影剤6は、ガイドワイヤなしで他の血管に沿っても伝搬する。何故なら、造影剤の伝搬は、ガイドワイヤの存在に関係しないからである。
【0045】
図3に示される状態では、造影剤6は、ガイドワイヤ先端部5及び狭窄症3に達している。なお、造影剤6の濃度は、当該位置において分布を有するものであり、物理的には、ブール状態(Boolean state)を構成するものではない。したがって、図2、図3及び図4における造影剤6の伝搬は、一種の閾値を示しているだけであるので、その図は造影剤の閾値濃度についての情報を含むものである。造影剤の伝搬のために、当該勾配の前部は時間とともに連続的に増加するので、最適な瞬間を検出することができ、その際、造影剤の濃度は、X線の補助による検査又は医療介入のために最適なものとなる。
【0046】
典型的な実施例によれば、記録された画像を分析することにより、当該最適な瞬間を判定するため、複数の画像を所定の範囲の時間にわたり記録することができる。したがって、この図はリアルタイムではないものとすることができるが、最適な瞬間の判定及び狭窄症の幾何学的形状配置の最適な描写を可能にする。なお、狭窄症の幾何学的形状配置、特に血管壁の形状は、概してそれほど大きくは変化しないので、リアルタイムでない描写は、本発明の方法に対して欠点を構成しない。
【0047】
図4は、図3の狭窄症の拡大図を示している。特定の閾値として図2、図3及び図4に示されるように造影剤の伝搬を解釈するとき、図4に示される状態は、狭窄症3の中のガイドワイヤ先端部5が最適な瞬間に近くなっている状態である。何故なら、造影剤6の濃度は、例えば、ガイドワイヤ先端部5の全体の状況における最小の閾値を超えるからである。
【0048】
図5は、ガイドワイヤ5に近い形状又は距離dにわたる造影剤6の濃度Cの分布を示している。この濃度は、図5に描かれる特定の瞬間において、造影剤の濃度が血管又は狭窄症の視覚化を可能にする特定の閾値10を越えるように時間とともに増加する。この瞬間において、当該濃度は、最大レベルの濃度が装置ランドマーク例えば先端部5を隠すものとなるところの濃度Cの関心領域における最大レベル11に達しなかった。当該関心領域は、この模範的実施例において先端部の領域とみなされる。言い換えれば、この模範的実施例において、当該先端部の領域において当該濃度が閾値10を越えるときに最良の瞬間が生じるが、最大又は隠れレベル11を下回ったままである。
【0049】
図6は、本発明の方法の模範的実施例を示しており、一方の側Aにおいて背景タスクが挙げられており、他方の側Bにおいて様相が挙げられており、これらは注入により起動される。
【0050】
蛍光透視ランFにおいて、造影剤注入検出S1は、背景タスクとして行われ、また、先端分割S2も行われる。先端部S3の周りのコントラスト測定は、注入により起動されて行われ、その後に最良の瞬間の計算S4、強調及びズームS5、並びに専用モニタにおける表示S6が続く。
【0051】
背景タスクとして、ガイドワイヤ先端部は、検出されS1、特に、例えば先端分割又は先端位置特定S2の間に持続的に検出されS1a、位置づけられる。その非常に高いX線吸収特性及びその限定された長さのために、この検出処理は、非常に簡単であり、従来の隆起強調及び閾値化技術で行われるようにすることができる。このアプローチは、隆起トラッキング技術によっても支持されうる。いずれにせよ、この背景タスクは、現在の蛍光透視ランCの各フレームにおいて当該先端部の分割をなすことである。
【0052】
他の背景タスクとして、造影剤注入検出S1が行われる。同時に、このランは、起こりうる造影剤注入の検出のために監視S3される。勿論、非画像ベースの装置を、この検出タスク、明確に言えば、電気注射器コマンド監視のために係わらせるようにすることができるが、このことが実用的でないことが分かれば、純粋な画像ベースの技術に頼るかもしれない。当該ランに沿う平均的な隆起性の比較的急峻な増加は、この検出を達成する代表的方法である。このステップの出力は、現在の蛍光透視ランの画像毎に、簡単な注入ブール指標S1aである。さらに、先端部分割S2を行ってもよい。
【0053】
注入により起動させられて、先端部の周りの造影剤測定S3が行われる。造影剤の検出は、当該処置の残りを起動する。注入カテーテルを通じてコントラストが生成されると、その先端部近傍に達し、当該先端部は、ステント又はカテーテルバルーンにおけるマーカとして何らかのランドマークともなりうる。当該先端部の連続的な分割は、コントラストが探され分析される領域の幾何学的形状配置を提供するものである。普通は、当該先端部の周囲及び直上の中間調の値は監視S3aされ、これにより、幾つかの時間−強度曲線又は時間−コントラスト曲線、例えば、時間tに沿う当該先端部上の平均的中間調のための第1の曲線と、当該先端部の両側の平均のための第2の曲線とを生成S3aする。この第1の曲線及び第2の曲線の組み合わせは、先端部上周辺コントラスト曲線Caの判定を導く。同様に、血管の両側における、すなわち、先端部から或る距離をおいたところでの中間調の平均の第3の曲線を判定することができる。第2の曲線及び第3の曲線の組み合わせは、血管上周辺コントラスト曲線Cbの判定を導く。コントラストは、当該強度として解釈されることもある。先端部の近傍は、当該医療介入の関連した領域と解釈可能である。
【0054】
その後、最良の瞬間の判定S4が行われる。上述した時間−コントラスト曲線又は時間−強度曲線は、分析S4aされ、先端部又はランドマーク及びその周囲の視認性指標が計算される。特に、この時間依存型の指標は、図9におけるコントラスト曲線Ca及びCbの組み合わせから推定可能であり、これはCa×Cbとして示され、先端部及び血管の双方の視認性指標を構成する。この指標が最適値に達する瞬間が、いわゆる最良の瞬間を判定S4bする。これは、時間TbにおいてCa×Cbの最大値として示される図9にある。通常は、2つの状況が生じる可能性があり、これは時間tにおける所定の位置例えば当該先端部上の濃度Cとして図7及び図8に描かれている。第1状況において、大量の造影剤が注入される。この場合、当該先端部は、或る段階では造影剤により完全に隠れてしまうことになり、最良の瞬間12は、造影剤が流れ出るときにおいて、この状況が起きる少し前13又は少し後14のどちらかである。第2の状況では、限られた量の造影剤だけが注入される。この場合、先端部又はランドマークの周囲の最大の造影剤濃度15が、先端部又はランドマークを明確に視認可能なままとする。例えば、当該濃度は、最大の視認性レベル11を下回ったままであり、また、狭窄症3の最良の視認性も生み出す。換言すれば、過剰に多い造影剤の存在において、すなわち造影剤濃度が高い場合、血管、脈管構造又は狭窄症だけが視認可能である。何故なら、高濃度の造影剤が先端部又はランドマークを隠すからである。造影剤がない場合、装置ランドマーク又は先端部だけが視認可能となる一方、図5に描かれているように、造影剤のない状況のために、血管、脈管構造又は狭窄症を確認することができない。したがって、2つのケースの間の最適値は、最良の瞬間に対応する。両方の状況において、最良の瞬間は、或る視認性最適値に対応するものであり、その際、先端部及び傷又は病変の双方が背景に対して明確に現れるので、最適なコントラスト相関が利用可能となる。
【0055】
図9は、最良の瞬間の測定をさらに示している。この図において、先端上周囲コントラスト曲線Caは、血管上周囲コントラスト曲線Cbと一緒に表わされている。図9は、造影剤が先端部の周囲に存在しないときにCaが最大になることを示している。造影剤が先端部の周囲に達するとき、その先端部のコントラストは低下する。対照的に、当該血管上周辺コントラストは、血管がそこでは透明なので、造影剤がないときにはゼロに等しい。造影剤が当該先端部に近い血管に達したとき、血管のコントラストは増加する。ここで、例として、図9は、Ca掛けるCbの積として時間依存型の視認性指標の計算を示している。図9は、この指標曲線の最大値を見つけて、最良の瞬間を判定することができることを明確に示している。但し、Ca及びCbの積Ca×Cbは一例に過ぎない。勿論、Ca及びCbの双方が高いときにはこの積は高いだけである。したがって、これは、本発明の目的に合致し、先端部と血管との双方の視認性を最大化する。但し、他の組み合わせも可能である。
【0056】
その後、強調及びズーム段階S5が行われ、傷又は病変は、装置ランドマーク又は先端部と一緒に最良の瞬間で部分的に視覚化される。但し、この視覚化をさらに優れたものとするために多くの強調技術を含ませることができる。勿論、関心領域においてズームすることはできるが、ヒストグラム操作と一緒に全ての種類の空間的かつ時間的フィルタを適用することができる。
【0057】
最後に、副画面又は他の適切な表示媒体に対する自動的表示S6が行われる。したがって、装置ランドマーク又は先端部を加えた傷又は病変の強調されズームされた視界が専用のモニタに表示可能である。この視界は、通常、新しい造影剤パフが注入されて当該視界が更新されるまで保持されることになる。
【0058】
図10は、本発明の模範的実施例による装置20を示しており、これには、装置ランドマークの近傍に供給される造影剤の注入を検出するよう適合させられた検出器21と、装置ランドマークの近傍を所定の時間監視するよう適合させられた監視ユニット22と、装置ランドマークの当該監視させられた近傍に基づいて時定数曲線を発生するように適合させられた発生ユニット23と、時定数曲線を分析するよう適合させられた分析ユニット24と、時定数曲線に基づいて視認性最適値として最良の瞬間を判定するよう適合させられた判定ユニット25と、が含まれる。
【0059】
説明する方法は、全体的に自動的なものであり、手動の対話動作を必要としない。
【0060】
なお、他の状況も、本発明の方法から利益を得ることができる。これは、他の装置、マーカ、カテーテル、コイルなどの他、他の種類の解剖組織上のランドマーク、例えば動脈瘤を含むことができる。より一般的には、同一とみなしうる関心領域は、先端部又はランドマークの場合におけるが如く自動的に、或いは手動で選択された領域の場合におけるが如く提供される指標によっても、判定されることになる。そして、造影剤注入の検出により起動されて、当該領域内での視認性測定値が計算され、当該最良の瞬間が判定可能となる。そして、最良の瞬間の最適な視界が計算されることになる。
【0061】
造影剤注入は、画像ベースのものとすることができ、又は、例えば、電気造影剤注射器の場合における外部指標から得られるものとすることができる。関心領域の判定は、検出、トラッキング、相関などにより数多くの異なる方法で達成可能である。様々な判断基準を、最良の瞬間の計算のために想定されることができる。静止画だけでなく、最良の瞬間の周辺の短い強調されたランも表示可能である。その場合、動き補償技術を動きの問題を解消するために適用することもできる。心臓だけでなく、脈管及び神経の医療介入を目的とすることができる。
【0062】
これは、全てのX線医療介入に拡張可能であるが、磁気共鳴映像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、超音波画像診断(U/S)のような、何かしらの種類の造影剤に依拠する他のモダリティにも拡張可能である。
【0063】
なお、本発明は、ステントを設定するときに狭窄症医療介入過程にも、バルーンの治療にも適用可能である。
【0064】
また、本発明からは、他の状況も利益を得ることができる。このことは、マーカ、カテーテル、コイルなどの他の装置や、他の種類の解剖組織上のランドマーク例えば動脈瘤を含むことができる。
【0065】
「有する」なる文言は、他の要素又はステップを排除せず、単数表現は複数を排除しない。また、異なる実施例に関連して説明された要素を組み合わせることもできる。
【0066】
また、請求項における参照符号は、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療介入の間に脈管構造を記録するための方法であって、
装置ランドマークの近傍に供給される造影剤の注入を検出すること、
前記装置ランドマークの近傍を所定時間にわたり監視すること、
前記装置ランドマークの当該監視された近傍に基づいて時間−コントラスト曲線を発生すること、
前記時間−コントラスト曲線を分析すること、及び
前記時間−コントラスト曲線に基づいて視認性最適値として最良の瞬間を判定すること、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマークの近傍を前記最良の瞬間において視覚化することをさらに有する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマークは、ガイドワイヤ先端部又は狭窄症バルーンマークである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、持続的に前記装置ランドマークを検出し位置特定することをさらに有する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、造影剤注入の検出に関するランを監視することをさらに有する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、ブール指標として検出の結果を出力することをさらに有する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマークの周辺における中間調の値を監視することをさらに有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマーク及びその周囲の視認性指標を計算することをさらに有する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマークを隠す直前又は直後の時、或いは最大造影剤濃度の時の瞬間として前記装置ランドマークを隠す造影剤の注入を検出するときに前記最良の瞬間を判定することをさらに有する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマーク及び傷又は病変が当該背景に対して最適なコントラスト相関を有する場合に前記視認性最適値を判定することをさらに有する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記装置ランドマークの近傍を傷又は病変と一緒に視覚化することをさらに有する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、当該ズームされた関心領域の視覚化をさらに有する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、副モニタに視覚化情報を表示することをさらに有する方法。
【請求項14】
プロセッサにより実行されているときに、請求項1に記載の方法を実行するよう適合させられているプログラム要素。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能媒体。
【請求項16】
医療介入の間に脈管構造を記録するための装置であって、
装置ランドマークの近傍に供給される造影剤の注入を検出するよう適合させられた検出ユニットと、
前記装置ランドマークの近傍を所定の時間にわたり監視するよう適合させられた監視ユニットと、
前記装置ランドマークの当該監視された近傍に基づいて時定数曲線を発生するよう適合させられた発生ユニットと、
前記時定数曲線を分析するよう適合させられた分析ユニットと、
前記時定数曲線に基づいて視認性最適値として最良の瞬間を判定するよう適合させられた判定ユニットと、
を有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−519002(P2010−519002A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551293(P2009−551293)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050646
【国際公開番号】WO2008/104909
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】