医療器具を保管するためのカセット
【課題】清潔な滅菌状態で医療器具を最適に保管することが可能な医療器具用のカセットを提供する。
【解決手段】本発明に係る医療器具(28)用のカセット(10a)は、少なくとも1つのトレイ(14a)と、カバー(12a)とを含み、トレイ(14a)は、剛性基礎構造体(23a)と、この剛性基礎構造体に固定された、医療器具(28)を保持するための保持手段(24a)とを含む。保持手段(24a)は、医療器具(28)を保持するための切欠き部(26a)を有し、成形、溶接、又は接着により剛性基礎構造体(23a)に間隙を有することなく固定されている。
【解決手段】本発明に係る医療器具(28)用のカセット(10a)は、少なくとも1つのトレイ(14a)と、カバー(12a)とを含み、トレイ(14a)は、剛性基礎構造体(23a)と、この剛性基礎構造体に固定された、医療器具(28)を保持するための保持手段(24a)とを含む。保持手段(24a)は、医療器具(28)を保持するための切欠き部(26a)を有し、成形、溶接、又は接着により剛性基礎構造体(23a)に間隙を有することなく固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載したような、医療器具を保管するためのカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具を保管するためのカセットは、医療器具を保管、整理、提示、及び殺菌するための周知のシステムである。これらのカセットの大部分は、医療器具が収容される少なくとも1つのトレイと、トレイを閉じるためのカバーを含んでいる。
【0003】
このようなカセットは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された手術器具用収容器は、分離可能な蓋体とベース部を有しており、ベース部には、器具保持用トレイが着脱可能に挿入されている。器具保持用トレイには、弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットが固定されている。弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットは、外科処置用器具のシャンク部を収容するように設けられており、外科処置用器具は、弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットとの間の摩擦係合によって、これらの要素に着脱可能に保持される。
【0004】
特許文献2には、別のカセットが開示されている。特許文献2に記載された器具用トレイは、医療器具の保管、輸送、及び殺菌のためのトレイと任意に選択されるカバーとを含んでいる。トレイとカバーの表面に沿って複数の支持部材が交互に配置され、各支持部材には、医療器具を受容するための様々な寸法のノッチ付き受容部が含まれる。支持部材は弾性材料からなり、医療器具を着脱可能に収容することができる。
【0005】
このようなカセットの他の例は、例えば、特許文献3〜9に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5525314号明細書
【特許文献2】米国特許第5384103号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005047099号明細書
【特許文献4】米国特許第5979643号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0119737号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/053597号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5346667号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/071180号パンフレット
【特許文献9】国際公開第00/57810号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの先行技術のカセットにおいて、弾性の器具保持部は、トレイの対応する開口部に嵌め込まれることにより、トレイのベース部に固定されている。この場合、液体、細菌、汚れ等がベース部と弾性材料との間の間隙に入り込むことにより、医療器具の滅菌性が悪化するおそれがある。
【0008】
したがって、本発明は、清潔な滅菌状態で医療器具を最適に保管することが可能な医療器具用のカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、請求項1に従うカセットにより解決される。好適な実施形態は、従属請求項に記載された特徴を備えている。
【0010】
本発明に係る医療器具用のカセットは、少なくとも1つのトレイと、カバーとを含んでおり、トレイは、その剛性基礎構造体に固定された保持手段を備えている。この保持手段は、医療器具を保持するための少なくとも1つの切欠き部を含む。本発明に係るカセットにおいて、保持手段は、成形、溶接、又は接着によって、トレイの剛性基礎構造体に間隙を有することなく固定されている。これによって、医療器具を、先行技術におけるカセットよりも長期にわたって清潔な滅菌状態で保管することができる。
【0011】
特に好適な実施形態では、トレイの剛性基礎構造体は、トレイのトレイ底部に対して隆起するソケット底部を有するソケットを備えており、保持手段は、ソケット底部の頂部に固定されている。その結果、保持手段とトレイの剛性基礎構造体との接続部は、トレイ底部よりも高い位置に配置されることになり、少量の望ましくない液体がトレイ内に流入した場合でも、接続部は液面より高い位置にあり、液体とは接触しない。
【0012】
別の好適な実施形態において、ソケット底部とトレイ底部との間の全てのエッジ部及びコーナー部は、これらの領域への混入物の付着を回避し、また、洗浄処理を容易にするために、丸み付けられている。
【0013】
本発明の特に好適な実施形態は、模式的な図面とともに、以下に説明される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医療器具を、長期にわたって清潔な滅菌状態で保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における医療器具を収容するためのカセットを示す透視図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるカセットを、第1トレイと下方の第2トレイが見えるように展開して示す透視図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるカセットを、左からカバー(裏向き)、第2トレイ、第1トレイの順に並べて見た透視図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるカセットを、第1トレイを第2トレイ上にセットしてカバーを外した状態で見た透視図である。
【図5】、本発明の第2実施形態における、トレイをカバー内にスライドさせる方式のカセットを示す透視図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるカセットを、裏側から見た透視図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるカセットを、トレイをカバーから部分的に引き出して見た透視図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるカセットを、トレイとカバーを並べて見た透視図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるカセットを、第1及び第2トレイ上にカバーをした状態で見た透視図である。
【図10】本発明の第3実施形態におけるカセットの側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるカセットの別の側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態におけるカセットを、上からカバー、第1トレイ、及び第2トレイの順に展開して示す透視図である。
【図13】本発明の第3実施実施形態におけるカセットのカバーを裏向きに示す透視図である。
【図14】本発明の第3実施形態におけるカセットの第1トレイを示す透視図である。
【図15】本発明の第3実施形態におけるカセットの第2トレイを示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態におけるカセット10aは、図1に示すように、第1トレイ14aの上部に配置されるカバー12aを含み、第1トレイ14aは、第2トレイ16aの上部に配置されている。このように、第1トレイ14aは、サンドイッチ状の構成によりカセット10a内に組み込まれており、カセット10aは、略直方体の形状を有している。ここで、参照符号中の拡張部分「a」は、第1実施形態の構成要素であることを示す。後述する2つの実施形態において、同様の機能及び/又は構成を有する要素には、対応する拡張部分にそれぞれ「b」及び「c」が付される。
【0017】
第2トレイ16aは、その長手方向の両側にバネ性の留め具18aを備えており、カセット10aが閉じた状態において、留め具18aは、カバー12aの適合する窪み部20aと係合する。留め具18aが弾性を有し、かつ鋭角に曲げられた形状を有しているため、第1及び第2トレイ14a,16aに対してカバー12aを容易に着脱することができる。カセット10aを閉じるには、留め具18aをカバー12aの方向に偏位させ、窪み部20aに嵌めこむ。また、留め具18aをカバー12aから引き離すことによって、カバー12a及び第1トレイ14aを、第2トレイ16aから完全に持ち上げることができる。
【0018】
カバー12aの窪み部20からカバー12aの頂面まで、好ましくは傾斜しつつ延びる遷移部に、複数の細長い開口部からなるカバー穿孔22aが形成されている。このカバー穿孔22aによって、殺菌媒体をカバー穿孔22aを通じてカセット10a内に流すことが可能になる。
【0019】
カセット10aのカバー12a、第1トレイ14a、及び第2トレイ16aは、好ましくは硬質プラスチック又は金属からなる剛性基礎構造体23aを含む。
【0020】
図2〜図4に示すように、第1トレイ14aは、保持手段24aを備えており、保持手段24aは、ドリル、ドライバー、及び/又はレンチのような医療器具28を保持するための切欠き部26aを有している。保持手段24aは、成形、溶接、又は接着により、第1トレイ14aの剛性基礎構造体23aに間隙を有することなく固定されている。これは、カセット10aの使用者が直接識別することができる特徴である。保持手段24aと剛性基礎構造体23aとが間隙を有することなく接続されていることにより、保持手段と剛性基礎構造体との間に細菌、液体等が入ることはできない。
【0021】
図2〜図4において第1トレイ14aの右側には、比較的長尺の医療器具28のための2つの櫛状の保持手段24aが配置されている。この2つの保持手段24aは、同一の構造を有し、略四辺形及び/又は円形の断面を有する切欠き部26aを含んでいる。2つの保持手段24aは、所定の距離だけ離隔しつつ互いに平行に配置され、これによって、医療器具28の軸部を保持することができる。
【0022】
医療器具28を保持手段24aで確実に保持するために、切欠き部26aの大きさは、医療器具28の軸部の直径よりも僅かに小さい。保持手段24aは、好ましくは医療器具28の殺菌処理に対して耐性を有する医療用(medical grade)弾性プラスチック材料からなる。
【0023】
弾性を有する保持手段24aが変形することにより、医療器具28を切欠き部26aに嵌めこむことができる。医療器具28は、完全に嵌めこまれた位置において、弾性を有する保持手段24aの無負荷状態における形状及び/又は医療器具28と保持手段24aとの間の摩擦により、切欠き部26aに着脱可能に保持される。
【0024】
図4に示すように、櫛状の保持手段24aは、剛性基礎構造体23aのソケット29a上に固定されている。ソケット29aは、第1トレイ14aのトレイ底部32aに対して隆起するソケット底部30aと、第1トレイ14aの側壁36aから突出するソケット側部34aからなる。ソケット底部30aの隆起高さ及びソケット側部34aの突出長さにより、保持手段24aと剛性基礎構造体23aとの間の接続部は、トレイ底部32a及び側壁36aの表面から離隔しており、これによって、接続部と細菌及び望ましくない液体等との接触が回避される。したがって、医療器具28は、清潔性及び滅菌性に関してより良好な状態で保管される。
【0025】
剛性基礎構造体23aのソケット29aには、ソケット底部30a及び/又はソケット側部34aから延びる剛性の突出部が更に組み込まれていてもよい。
【0026】
このような更なる突出部は、特に、医療器具28の最適な係合及び収容を達成するために、弾性保持手段24aの高さ及び/又は厚みを増大する必要がある場合に、保持手段24aの剛性を増大させるために好適なものである。
【0027】
このようなソケット29aに更なる剛性の突出部を組み込む実施形態は、直径及び断面積の大きい医療器具28を保持するために、特に有利なものである。
【0028】
第1トレイ14aの、横方向に並べて配列された3つの内部壁38aには、櫛状の保持手段24aよりも小型に構成された単一器具用の保持手段24aが組み込まれており、ドリル等のような比較的小さい医療器具28用に使用される。これらの保持手段24aは、内部壁の切欠き部40aに間隙を有することなく固定されており、内部壁38aの頂部側及び1つの側部側が開いている。内部壁の切欠き部40a中に配置された保持手段24aは、切欠き部40aの弾性の内張り(liner)をなすものである。内部壁の頂部側が開いていることによって、医療器具28を単一器具用の保持手段24aに上方から嵌め込むことができる。また、全ての単一器具用の保持手段24aについて、内部壁38aの同一の側部側が開いているため、医療器具28は、全て同一の方向を向くように保持される。
【0029】
単一器具用の保持手段24aも、ソケット29aの上部及び側部に形成されている。したがって、医療器具28、及び保持手段24aとソケット29a(特に、ソケット底部30a及びソケット側部34a)との接続部は、トレイ底部32a及び側壁36aの表面とは接触しない。
【0030】
第1トレイ14aの内部は、櫛状の保持手段24a及び内部壁38aによって、6つの区画39aに分けられる。これらの区画39aの全てのエッジ部及びコーナー部は、望ましくない混入物の付着及び洗浄処理の複雑化を避けるために、少なくとも底部側が丸み付けられている。特に、ソケット底部30aとトレイ底部32aの間の全てのエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられている。
【0031】
カバー12に加えて、図3及び4に示すように、第1トレイ14aのトレイ底部32aと第2トレイ16aのトレイ底部32aも、底部穿孔を含んでおり、これによって、カセット10aを閉じた状態においても、殺菌媒体を循環させることができる。
【0032】
第2トレイ16aも、内部壁38aを備えている。これらの内部壁38aによって5つの区画39aが区分され、これらの区画は、殺菌された医療器具28又は使用済みの医療器具28を保管するために使用できる。
【0033】
更に、カバー12の頂部の内面44aは、図3に示すように、例えば外科処置の間の医療器具28の保持及び/又は機材の保管のために、リップ部46a、ボウル状の窪み部48a、及び4つの止まり穴50aを含んでいる。
【0034】
図5〜図8に、本発明の第2実施形態におけるカセット10bを示す。カセット10bは、スライド式スリーブとして構成されたカバー12bを含む。カバー12bは、その頂部及び底部にカバー穿孔22bを含み、このカバー穿孔も、殺菌媒体のための換気口として機能する。カバー12bは、例えば図8に示すように、カセット10bの開閉を容易にするために、湾状の凹部52bを備えている。
【0035】
カバー12bの底部は、対角コーナー部に設けられた4つの脚部54bを含む。図6にも示されているように、カバー12bの底部側の内面には、カセット10bのスライド式の開閉を容易にするために、2本のレール56bが形成されている。
【0036】
トレイ14bは、カセット10bのカバー12b内に収容され、上述した第1の実施形態におけるカセット10aの第1トレイ14aと同様の要素を含んでいる。本実施形態のカセット10bも、櫛状の保持手段24bと、内部壁38bの切欠き部40b内に組み込まれた単一器具用の保持手段24bを備えている。トレイ14b内には、櫛状の保持手段24bと内部壁39bにより、7つの区画39bが形成されている。
【0037】
保持手段24bは、カセット10aに関連させて説明した保持手段24aと同様に構成される。また、本実施形態においても、トレイ14bの内部のエッジ部及びコーナー部、特に、ソケット底部30bとトレイ底部32bとの間のエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられている。
【0038】
加えて、トレイ14bは、多くのピン58bを備えた区画を含んでおり、この区画も、医療器具28または機材の保管及び保持のために使用される。
【0039】
図5〜図8に示すように、カバー12bは、トレイ14bを完全に閉じる(図5、図6)ことも、部分的に閉じる(図7)ことも可能であり、トレイ14bから完全に分離することも可能である(図8)。
【0040】
図9〜図15に、本発明の第3実施形態におけるカセット10cを示す。カセット10cも、各エッジ部が丸み付けられた略直方体の形状を有する。カバー12cは、下方の第1トレイ14cを閉じ、第1トレイ14cは、第2トレイ16cの上部に配置される。カバー12cは、留め具18cによって、第1トレイ14c及び第2トレイ16cに対してロックされる。留め具18cは、第2トレイ16c(例えば、図12及び図15参照)の窪み部20cに係合する。また、本実施形態において、留め具18cのチルト機構によって、第1及び第2トレイ14c,16cに対してカバー12cを容易に着脱することができる。また、本実施形態でも、カバー1cは、下方のトレイ14c,16cから完全に分離することができる。
【0041】
カバー12cは、その頂部の外周領域に配列されたカバー穿孔22cを備えている。カバー穿孔22cは、カセット10a,10bに関連させて上述した機能と同等の機能を有する。
【0042】
図12のカセット10cの展開透視図に示すように、第1トレイ14cは、厚板状に形成され、多くの収容穴60cを有している。これらの収容穴60c内には、弾性グロメット62cが固定されている。グロメット62cは、略円筒形をなして中央に開口部を有し、この開口部に、医療器具28、特にドリルのシャフトが、摩擦止めにより着脱可能に係合される。医療器具28のシャフトが殺菌媒体と接触できるようにするため、グロメット52cの中央の開口部は、この開口部を囲んで放射状に配列された複数の突出部を備えていてもよい。グロメット62cは、第1トレイ14cの頂部側を向いた外端部の面位置が、第1トレイ14cの頂面と同面となるように、第1トレイ14cの剛性基礎構造体中の収容穴60c内に配置されることが好ましい。グロメット62cは、好ましくは、殺菌処理に対して耐性を有することが保証された弾性プラスチック材料からなるものである。
【0043】
例えば図14に示すように、第1トレイ14cの頂面には、医療器具28の識別、及び、これらの医療器具が特定の順序で使用される医療処置手順の案内に役立つ、線、記号、数字、及び文字からなる情報が印刷されていてもよい。
【0044】
第1トレイ14cを第2トレイ16cから容易に持ち上げるために、第1及び第2トレイ14c,16cには、それぞれの幅広の側部に、互いに整合する切欠き部を備えており、それによって、グリップ用凹部66cが形成される。
【0045】
第1トレイ14cとは異なり、第2トレイ16cは、箱状に形成されている。第2トレイ16cは、第1及び第2の実施形態における櫛状の保持手段24a,24bと同様の2つの櫛状の保持手段24cを含む。第3実施形態においても、第2トレイ16cの剛性基礎構造体23cには、トレイ底部32cに対して隆起するソケット底部30cを有するソケット29cが形成される。櫛状の保持手段24cは、このソケット底部30cの頂部上に固定される。但し、第1及び第2実施形態とは異なり、カセット10cは、ソケット側部を含まない。
【0046】
第2トレイ16cの2つの櫛状の保持手段24cも、医療器具28のために、略四辺形及び/又は円形の断面を有する切欠き部26cを備えている。また、第2トレイ16cの中央部付近に、1つの医療器具28のみを収容するための1つの切欠き部26cを備えた保持手段24cが設けられ、この保持手段24cも、ソケット底部30cの頂部上に固定されている。
【0047】
更に、第2トレイ16cには、2つのサブカセット68cが収容され、これらのサブカセットには、ネジ、拡張部品、及び他の小型の機材が保管される。サブカセット68cは、カセット10a,10b,10cと同様の構成を有するものであってもよい。図示された実施形態では、サブカセット68cのサブカバー70cは透明材料からなり、サブカバー上に収容物に関する情報を印刷することもできる。
【0048】
あるいは、第2トレイ16cの関連する収容スペースは、例えば、ガイド手術等で使用するための医療器具を配置するために好適な保持手段のような、様々な種類の別の保持手段を収容するために使用することができる。
【0049】
第2トレイ16cは、第2トレイ16a,16bと同様に、底部穿孔42cを含んでおり、これによって、カセット10cの内部へ殺菌媒体を流すことができる。
【0050】
カセット10a,10b,10cの剛性基礎構造体23a,23b,23cは、標準的な殺菌処理に対して耐性を有する医療用硬質プラスチック材料からなる。保持手段24a,24b,24c及びグロメット62cは、医療器具28の挿入及び除去のために変形可能な、弾性プラスチック材料からなる。保持手段24a,24b,24cは、成形、溶接、又は接着によって、トレイ14a,14b,14cの剛性基礎構造体23a,23b,23cに間隙を有することなく固定される。好ましくは、カセット10a,10b,10cは、保持手段24a,24b,24c及び/又はグロメット62cとともに、二色射出成形法によって製造される。加えて、上述した全てのカセット10a,10b,10c、特に、トレイ14a,14b,14c,16a,16b,16c及びカバー12a,12b,12cは、滑りやすい表面上に配置された場合にこれらの要素が滑ることを回避するために、耐滑手段を備えていてもよい。この耐滑手段は、カセット10a,10b,10cの要素の各外面に配置されたプラスチック材料、特に、軟質プラスチック材料からなる。耐滑手段は、完全な外層として形成するものであってもよく、または、カセット10a,10b,10c及びその要素の他の領域よりも突出する領域として形成するものであってもよい。
【0051】
以上、特定の実施形態において説明された特徴は、他の実施形態に関して開示された特徴と組み合わせることも可能である。加えて、保持手段24a,24b,24cの形状、大きさ、及び構成は、各医療器具28及び医療上の特定の用途に適合させることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10a,10b,10c:カセット、12a,12b,12c:カバー、14a,14b,14c,16a,16c:トレイ、23a,23b,23c:剛性基礎構造体、24a,24b,24c:保持手段、26a,26b,26c,40a,40b:切欠き部、28:医療器具、29a,29b,29c:ソケット、30a,30b,30c:ソケット底部、32a,32b,32c:トレイ底部
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載したような、医療器具を保管するためのカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具を保管するためのカセットは、医療器具を保管、整理、提示、及び殺菌するための周知のシステムである。これらのカセットの大部分は、医療器具が収容される少なくとも1つのトレイと、トレイを閉じるためのカバーを含んでいる。
【0003】
このようなカセットは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された手術器具用収容器は、分離可能な蓋体とベース部を有しており、ベース部には、器具保持用トレイが着脱可能に挿入されている。器具保持用トレイには、弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットが固定されている。弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットは、外科処置用器具のシャンク部を収容するように設けられており、外科処置用器具は、弾性グロメット及び弾性フィンガーブラケットとの間の摩擦係合によって、これらの要素に着脱可能に保持される。
【0004】
特許文献2には、別のカセットが開示されている。特許文献2に記載された器具用トレイは、医療器具の保管、輸送、及び殺菌のためのトレイと任意に選択されるカバーとを含んでいる。トレイとカバーの表面に沿って複数の支持部材が交互に配置され、各支持部材には、医療器具を受容するための様々な寸法のノッチ付き受容部が含まれる。支持部材は弾性材料からなり、医療器具を着脱可能に収容することができる。
【0005】
このようなカセットの他の例は、例えば、特許文献3〜9に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5525314号明細書
【特許文献2】米国特許第5384103号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005047099号明細書
【特許文献4】米国特許第5979643号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0119737号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/053597号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5346667号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/071180号パンフレット
【特許文献9】国際公開第00/57810号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの先行技術のカセットにおいて、弾性の器具保持部は、トレイの対応する開口部に嵌め込まれることにより、トレイのベース部に固定されている。この場合、液体、細菌、汚れ等がベース部と弾性材料との間の間隙に入り込むことにより、医療器具の滅菌性が悪化するおそれがある。
【0008】
したがって、本発明は、清潔な滅菌状態で医療器具を最適に保管することが可能な医療器具用のカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、請求項1に従うカセットにより解決される。好適な実施形態は、従属請求項に記載された特徴を備えている。
【0010】
本発明に係る医療器具用のカセットは、少なくとも1つのトレイと、カバーとを含んでおり、トレイは、その剛性基礎構造体に固定された保持手段を備えている。この保持手段は、医療器具を保持するための少なくとも1つの切欠き部を含む。本発明に係るカセットにおいて、保持手段は、成形、溶接、又は接着によって、トレイの剛性基礎構造体に間隙を有することなく固定されている。これによって、医療器具を、先行技術におけるカセットよりも長期にわたって清潔な滅菌状態で保管することができる。
【0011】
特に好適な実施形態では、トレイの剛性基礎構造体は、トレイのトレイ底部に対して隆起するソケット底部を有するソケットを備えており、保持手段は、ソケット底部の頂部に固定されている。その結果、保持手段とトレイの剛性基礎構造体との接続部は、トレイ底部よりも高い位置に配置されることになり、少量の望ましくない液体がトレイ内に流入した場合でも、接続部は液面より高い位置にあり、液体とは接触しない。
【0012】
別の好適な実施形態において、ソケット底部とトレイ底部との間の全てのエッジ部及びコーナー部は、これらの領域への混入物の付着を回避し、また、洗浄処理を容易にするために、丸み付けられている。
【0013】
本発明の特に好適な実施形態は、模式的な図面とともに、以下に説明される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医療器具を、長期にわたって清潔な滅菌状態で保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における医療器具を収容するためのカセットを示す透視図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるカセットを、第1トレイと下方の第2トレイが見えるように展開して示す透視図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるカセットを、左からカバー(裏向き)、第2トレイ、第1トレイの順に並べて見た透視図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるカセットを、第1トレイを第2トレイ上にセットしてカバーを外した状態で見た透視図である。
【図5】、本発明の第2実施形態における、トレイをカバー内にスライドさせる方式のカセットを示す透視図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるカセットを、裏側から見た透視図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるカセットを、トレイをカバーから部分的に引き出して見た透視図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるカセットを、トレイとカバーを並べて見た透視図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるカセットを、第1及び第2トレイ上にカバーをした状態で見た透視図である。
【図10】本発明の第3実施形態におけるカセットの側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるカセットの別の側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態におけるカセットを、上からカバー、第1トレイ、及び第2トレイの順に展開して示す透視図である。
【図13】本発明の第3実施実施形態におけるカセットのカバーを裏向きに示す透視図である。
【図14】本発明の第3実施形態におけるカセットの第1トレイを示す透視図である。
【図15】本発明の第3実施形態におけるカセットの第2トレイを示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態におけるカセット10aは、図1に示すように、第1トレイ14aの上部に配置されるカバー12aを含み、第1トレイ14aは、第2トレイ16aの上部に配置されている。このように、第1トレイ14aは、サンドイッチ状の構成によりカセット10a内に組み込まれており、カセット10aは、略直方体の形状を有している。ここで、参照符号中の拡張部分「a」は、第1実施形態の構成要素であることを示す。後述する2つの実施形態において、同様の機能及び/又は構成を有する要素には、対応する拡張部分にそれぞれ「b」及び「c」が付される。
【0017】
第2トレイ16aは、その長手方向の両側にバネ性の留め具18aを備えており、カセット10aが閉じた状態において、留め具18aは、カバー12aの適合する窪み部20aと係合する。留め具18aが弾性を有し、かつ鋭角に曲げられた形状を有しているため、第1及び第2トレイ14a,16aに対してカバー12aを容易に着脱することができる。カセット10aを閉じるには、留め具18aをカバー12aの方向に偏位させ、窪み部20aに嵌めこむ。また、留め具18aをカバー12aから引き離すことによって、カバー12a及び第1トレイ14aを、第2トレイ16aから完全に持ち上げることができる。
【0018】
カバー12aの窪み部20からカバー12aの頂面まで、好ましくは傾斜しつつ延びる遷移部に、複数の細長い開口部からなるカバー穿孔22aが形成されている。このカバー穿孔22aによって、殺菌媒体をカバー穿孔22aを通じてカセット10a内に流すことが可能になる。
【0019】
カセット10aのカバー12a、第1トレイ14a、及び第2トレイ16aは、好ましくは硬質プラスチック又は金属からなる剛性基礎構造体23aを含む。
【0020】
図2〜図4に示すように、第1トレイ14aは、保持手段24aを備えており、保持手段24aは、ドリル、ドライバー、及び/又はレンチのような医療器具28を保持するための切欠き部26aを有している。保持手段24aは、成形、溶接、又は接着により、第1トレイ14aの剛性基礎構造体23aに間隙を有することなく固定されている。これは、カセット10aの使用者が直接識別することができる特徴である。保持手段24aと剛性基礎構造体23aとが間隙を有することなく接続されていることにより、保持手段と剛性基礎構造体との間に細菌、液体等が入ることはできない。
【0021】
図2〜図4において第1トレイ14aの右側には、比較的長尺の医療器具28のための2つの櫛状の保持手段24aが配置されている。この2つの保持手段24aは、同一の構造を有し、略四辺形及び/又は円形の断面を有する切欠き部26aを含んでいる。2つの保持手段24aは、所定の距離だけ離隔しつつ互いに平行に配置され、これによって、医療器具28の軸部を保持することができる。
【0022】
医療器具28を保持手段24aで確実に保持するために、切欠き部26aの大きさは、医療器具28の軸部の直径よりも僅かに小さい。保持手段24aは、好ましくは医療器具28の殺菌処理に対して耐性を有する医療用(medical grade)弾性プラスチック材料からなる。
【0023】
弾性を有する保持手段24aが変形することにより、医療器具28を切欠き部26aに嵌めこむことができる。医療器具28は、完全に嵌めこまれた位置において、弾性を有する保持手段24aの無負荷状態における形状及び/又は医療器具28と保持手段24aとの間の摩擦により、切欠き部26aに着脱可能に保持される。
【0024】
図4に示すように、櫛状の保持手段24aは、剛性基礎構造体23aのソケット29a上に固定されている。ソケット29aは、第1トレイ14aのトレイ底部32aに対して隆起するソケット底部30aと、第1トレイ14aの側壁36aから突出するソケット側部34aからなる。ソケット底部30aの隆起高さ及びソケット側部34aの突出長さにより、保持手段24aと剛性基礎構造体23aとの間の接続部は、トレイ底部32a及び側壁36aの表面から離隔しており、これによって、接続部と細菌及び望ましくない液体等との接触が回避される。したがって、医療器具28は、清潔性及び滅菌性に関してより良好な状態で保管される。
【0025】
剛性基礎構造体23aのソケット29aには、ソケット底部30a及び/又はソケット側部34aから延びる剛性の突出部が更に組み込まれていてもよい。
【0026】
このような更なる突出部は、特に、医療器具28の最適な係合及び収容を達成するために、弾性保持手段24aの高さ及び/又は厚みを増大する必要がある場合に、保持手段24aの剛性を増大させるために好適なものである。
【0027】
このようなソケット29aに更なる剛性の突出部を組み込む実施形態は、直径及び断面積の大きい医療器具28を保持するために、特に有利なものである。
【0028】
第1トレイ14aの、横方向に並べて配列された3つの内部壁38aには、櫛状の保持手段24aよりも小型に構成された単一器具用の保持手段24aが組み込まれており、ドリル等のような比較的小さい医療器具28用に使用される。これらの保持手段24aは、内部壁の切欠き部40aに間隙を有することなく固定されており、内部壁38aの頂部側及び1つの側部側が開いている。内部壁の切欠き部40a中に配置された保持手段24aは、切欠き部40aの弾性の内張り(liner)をなすものである。内部壁の頂部側が開いていることによって、医療器具28を単一器具用の保持手段24aに上方から嵌め込むことができる。また、全ての単一器具用の保持手段24aについて、内部壁38aの同一の側部側が開いているため、医療器具28は、全て同一の方向を向くように保持される。
【0029】
単一器具用の保持手段24aも、ソケット29aの上部及び側部に形成されている。したがって、医療器具28、及び保持手段24aとソケット29a(特に、ソケット底部30a及びソケット側部34a)との接続部は、トレイ底部32a及び側壁36aの表面とは接触しない。
【0030】
第1トレイ14aの内部は、櫛状の保持手段24a及び内部壁38aによって、6つの区画39aに分けられる。これらの区画39aの全てのエッジ部及びコーナー部は、望ましくない混入物の付着及び洗浄処理の複雑化を避けるために、少なくとも底部側が丸み付けられている。特に、ソケット底部30aとトレイ底部32aの間の全てのエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられている。
【0031】
カバー12に加えて、図3及び4に示すように、第1トレイ14aのトレイ底部32aと第2トレイ16aのトレイ底部32aも、底部穿孔を含んでおり、これによって、カセット10aを閉じた状態においても、殺菌媒体を循環させることができる。
【0032】
第2トレイ16aも、内部壁38aを備えている。これらの内部壁38aによって5つの区画39aが区分され、これらの区画は、殺菌された医療器具28又は使用済みの医療器具28を保管するために使用できる。
【0033】
更に、カバー12の頂部の内面44aは、図3に示すように、例えば外科処置の間の医療器具28の保持及び/又は機材の保管のために、リップ部46a、ボウル状の窪み部48a、及び4つの止まり穴50aを含んでいる。
【0034】
図5〜図8に、本発明の第2実施形態におけるカセット10bを示す。カセット10bは、スライド式スリーブとして構成されたカバー12bを含む。カバー12bは、その頂部及び底部にカバー穿孔22bを含み、このカバー穿孔も、殺菌媒体のための換気口として機能する。カバー12bは、例えば図8に示すように、カセット10bの開閉を容易にするために、湾状の凹部52bを備えている。
【0035】
カバー12bの底部は、対角コーナー部に設けられた4つの脚部54bを含む。図6にも示されているように、カバー12bの底部側の内面には、カセット10bのスライド式の開閉を容易にするために、2本のレール56bが形成されている。
【0036】
トレイ14bは、カセット10bのカバー12b内に収容され、上述した第1の実施形態におけるカセット10aの第1トレイ14aと同様の要素を含んでいる。本実施形態のカセット10bも、櫛状の保持手段24bと、内部壁38bの切欠き部40b内に組み込まれた単一器具用の保持手段24bを備えている。トレイ14b内には、櫛状の保持手段24bと内部壁39bにより、7つの区画39bが形成されている。
【0037】
保持手段24bは、カセット10aに関連させて説明した保持手段24aと同様に構成される。また、本実施形態においても、トレイ14bの内部のエッジ部及びコーナー部、特に、ソケット底部30bとトレイ底部32bとの間のエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられている。
【0038】
加えて、トレイ14bは、多くのピン58bを備えた区画を含んでおり、この区画も、医療器具28または機材の保管及び保持のために使用される。
【0039】
図5〜図8に示すように、カバー12bは、トレイ14bを完全に閉じる(図5、図6)ことも、部分的に閉じる(図7)ことも可能であり、トレイ14bから完全に分離することも可能である(図8)。
【0040】
図9〜図15に、本発明の第3実施形態におけるカセット10cを示す。カセット10cも、各エッジ部が丸み付けられた略直方体の形状を有する。カバー12cは、下方の第1トレイ14cを閉じ、第1トレイ14cは、第2トレイ16cの上部に配置される。カバー12cは、留め具18cによって、第1トレイ14c及び第2トレイ16cに対してロックされる。留め具18cは、第2トレイ16c(例えば、図12及び図15参照)の窪み部20cに係合する。また、本実施形態において、留め具18cのチルト機構によって、第1及び第2トレイ14c,16cに対してカバー12cを容易に着脱することができる。また、本実施形態でも、カバー1cは、下方のトレイ14c,16cから完全に分離することができる。
【0041】
カバー12cは、その頂部の外周領域に配列されたカバー穿孔22cを備えている。カバー穿孔22cは、カセット10a,10bに関連させて上述した機能と同等の機能を有する。
【0042】
図12のカセット10cの展開透視図に示すように、第1トレイ14cは、厚板状に形成され、多くの収容穴60cを有している。これらの収容穴60c内には、弾性グロメット62cが固定されている。グロメット62cは、略円筒形をなして中央に開口部を有し、この開口部に、医療器具28、特にドリルのシャフトが、摩擦止めにより着脱可能に係合される。医療器具28のシャフトが殺菌媒体と接触できるようにするため、グロメット52cの中央の開口部は、この開口部を囲んで放射状に配列された複数の突出部を備えていてもよい。グロメット62cは、第1トレイ14cの頂部側を向いた外端部の面位置が、第1トレイ14cの頂面と同面となるように、第1トレイ14cの剛性基礎構造体中の収容穴60c内に配置されることが好ましい。グロメット62cは、好ましくは、殺菌処理に対して耐性を有することが保証された弾性プラスチック材料からなるものである。
【0043】
例えば図14に示すように、第1トレイ14cの頂面には、医療器具28の識別、及び、これらの医療器具が特定の順序で使用される医療処置手順の案内に役立つ、線、記号、数字、及び文字からなる情報が印刷されていてもよい。
【0044】
第1トレイ14cを第2トレイ16cから容易に持ち上げるために、第1及び第2トレイ14c,16cには、それぞれの幅広の側部に、互いに整合する切欠き部を備えており、それによって、グリップ用凹部66cが形成される。
【0045】
第1トレイ14cとは異なり、第2トレイ16cは、箱状に形成されている。第2トレイ16cは、第1及び第2の実施形態における櫛状の保持手段24a,24bと同様の2つの櫛状の保持手段24cを含む。第3実施形態においても、第2トレイ16cの剛性基礎構造体23cには、トレイ底部32cに対して隆起するソケット底部30cを有するソケット29cが形成される。櫛状の保持手段24cは、このソケット底部30cの頂部上に固定される。但し、第1及び第2実施形態とは異なり、カセット10cは、ソケット側部を含まない。
【0046】
第2トレイ16cの2つの櫛状の保持手段24cも、医療器具28のために、略四辺形及び/又は円形の断面を有する切欠き部26cを備えている。また、第2トレイ16cの中央部付近に、1つの医療器具28のみを収容するための1つの切欠き部26cを備えた保持手段24cが設けられ、この保持手段24cも、ソケット底部30cの頂部上に固定されている。
【0047】
更に、第2トレイ16cには、2つのサブカセット68cが収容され、これらのサブカセットには、ネジ、拡張部品、及び他の小型の機材が保管される。サブカセット68cは、カセット10a,10b,10cと同様の構成を有するものであってもよい。図示された実施形態では、サブカセット68cのサブカバー70cは透明材料からなり、サブカバー上に収容物に関する情報を印刷することもできる。
【0048】
あるいは、第2トレイ16cの関連する収容スペースは、例えば、ガイド手術等で使用するための医療器具を配置するために好適な保持手段のような、様々な種類の別の保持手段を収容するために使用することができる。
【0049】
第2トレイ16cは、第2トレイ16a,16bと同様に、底部穿孔42cを含んでおり、これによって、カセット10cの内部へ殺菌媒体を流すことができる。
【0050】
カセット10a,10b,10cの剛性基礎構造体23a,23b,23cは、標準的な殺菌処理に対して耐性を有する医療用硬質プラスチック材料からなる。保持手段24a,24b,24c及びグロメット62cは、医療器具28の挿入及び除去のために変形可能な、弾性プラスチック材料からなる。保持手段24a,24b,24cは、成形、溶接、又は接着によって、トレイ14a,14b,14cの剛性基礎構造体23a,23b,23cに間隙を有することなく固定される。好ましくは、カセット10a,10b,10cは、保持手段24a,24b,24c及び/又はグロメット62cとともに、二色射出成形法によって製造される。加えて、上述した全てのカセット10a,10b,10c、特に、トレイ14a,14b,14c,16a,16b,16c及びカバー12a,12b,12cは、滑りやすい表面上に配置された場合にこれらの要素が滑ることを回避するために、耐滑手段を備えていてもよい。この耐滑手段は、カセット10a,10b,10cの要素の各外面に配置されたプラスチック材料、特に、軟質プラスチック材料からなる。耐滑手段は、完全な外層として形成するものであってもよく、または、カセット10a,10b,10c及びその要素の他の領域よりも突出する領域として形成するものであってもよい。
【0051】
以上、特定の実施形態において説明された特徴は、他の実施形態に関して開示された特徴と組み合わせることも可能である。加えて、保持手段24a,24b,24cの形状、大きさ、及び構成は、各医療器具28及び医療上の特定の用途に適合させることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10a,10b,10c:カセット、12a,12b,12c:カバー、14a,14b,14c,16a,16c:トレイ、23a,23b,23c:剛性基礎構造体、24a,24b,24c:保持手段、26a,26b,26c,40a,40b:切欠き部、28:医療器具、29a,29b,29c:ソケット、30a,30b,30c:ソケット底部、32a,32b,32c:トレイ底部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトレイ(14a,14b,14c,16c)と、カバー(12a,12b,12c)とを含み、前記トレイ(14a,14b,14c,16c)は、剛性基礎構造体(23a,23b,23c)と、該剛性基礎構造体に固定された、医療器具(28)を保持するための保持手段(24a,24b,24c)とを含んでおり、前記保持手段(24a,24b,24c)は、前記医療器具(28)を保持するための切欠き部(26a,26b,26c)を有している医療器具(28)用のカセットであって、前記保持手段(24a,24b,24c)は、成形、溶接、又は接着により前記トレイ(14a,14b,14c,16c)の前記剛性基礎構造体(23a,23b,23c)に間隙を有することなく固定されていることを特徴とするカセット。
【請求項2】
前記トレイ(14a,14b,16c)の前記剛性基礎構造体(23a,23b,23c)には、トレイ底部(32a,32b,32c)に対して隆起するソケット底部(30a,30b,30c)を有するソケット(29a,29b,29c)が形成され、前記保持手段(24a,24b,24c)は、前記ソケット底部(30a,30b,30c)の頂部上に間隙を有することなく固定されることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記ソケット底部(30a,30b,30c)と前記トレイ底部(32a,32b,30c)との間のエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられていることを特徴とする請求項2に記載のカセット。
【請求項4】
前記剛性基礎構造体(23a,23b)の前記ソケット(29a,29b)は、前記トレイ(14a,14b)の側壁(36a,36b)から突出するソケット側部(34a,34b)を含み、前記保持手段(24a,24b)は、前記ソケット側部(34a,34b)に間隙を有することなく固定されることを特徴とする請求項2または3に記載のカセット。
【請求項5】
前記保持手段(24a,24b)は、前記トレイ(14a,14b)の内部壁(38a,38b)の一面側に組み込まれていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項6】
前記切欠き部(26a,26b,26c)の断面は、略四辺形及び/又は円形であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項7】
弾性グロメット(62c)が、前記剛性基礎構造体に、好ましくは、間隙を有することなく、及び/又は、前記弾性グロメット(62c)の外端部の面位置が前記トレイ(14c)の頂面と同面となるように、固定されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項8】
前記トレイ(14a,14b,14c,16a,16c)及び/又はカバー(12a,12b,12c)は、殺菌媒体の循環を可能にする穿孔(22a,22b,22c,42a,42b,42c)を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項9】
前記保持手段(24a,24b,24c)は、殺菌処理に対して耐性を有する弾性プラスチック材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項10】
前記トレイ(16c)は、前記医療器具(28)及び/又は機材を保持するためのサブカセット(68c)を収容し、前記サブカセット(68c)は、前記カセット(10a,10b,10c)と略同一の構成を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項11】
前記トレイ(14c)の頂面に、前記医療器具(28)の識別、及び、これらの前記医療器具(28)が特定の順序で使用される医療処置手順の案内に役立つ、線、記号、数字、及び文字からなる情報が印刷されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項12】
前記カセット(10a,10b,10c)、及び/又は前記保持手段(24a,24b,24c)、及び/又は、前記弾性グロメット(62c)を備えている場合には、前記弾性グロメット(62c)は、二色射出成形法により製造されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項13】
前記カセット(10a,10b,10c)、特に、前記トレイ(14a,14b,14c,16a,16b,16c)及び/又は前記カバー(12a,12b,12c)は、プラスチック材料、特に軟質プラスチック材料を含む耐滑手段を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項1】
少なくとも1つのトレイ(14a,14b,14c,16c)と、カバー(12a,12b,12c)とを含み、前記トレイ(14a,14b,14c,16c)は、剛性基礎構造体(23a,23b,23c)と、該剛性基礎構造体に固定された、医療器具(28)を保持するための保持手段(24a,24b,24c)とを含んでおり、前記保持手段(24a,24b,24c)は、前記医療器具(28)を保持するための切欠き部(26a,26b,26c)を有している医療器具(28)用のカセットであって、前記保持手段(24a,24b,24c)は、成形、溶接、又は接着により前記トレイ(14a,14b,14c,16c)の前記剛性基礎構造体(23a,23b,23c)に間隙を有することなく固定されていることを特徴とするカセット。
【請求項2】
前記トレイ(14a,14b,16c)の前記剛性基礎構造体(23a,23b,23c)には、トレイ底部(32a,32b,32c)に対して隆起するソケット底部(30a,30b,30c)を有するソケット(29a,29b,29c)が形成され、前記保持手段(24a,24b,24c)は、前記ソケット底部(30a,30b,30c)の頂部上に間隙を有することなく固定されることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記ソケット底部(30a,30b,30c)と前記トレイ底部(32a,32b,30c)との間のエッジ部及びコーナー部は、丸み付けられていることを特徴とする請求項2に記載のカセット。
【請求項4】
前記剛性基礎構造体(23a,23b)の前記ソケット(29a,29b)は、前記トレイ(14a,14b)の側壁(36a,36b)から突出するソケット側部(34a,34b)を含み、前記保持手段(24a,24b)は、前記ソケット側部(34a,34b)に間隙を有することなく固定されることを特徴とする請求項2または3に記載のカセット。
【請求項5】
前記保持手段(24a,24b)は、前記トレイ(14a,14b)の内部壁(38a,38b)の一面側に組み込まれていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項6】
前記切欠き部(26a,26b,26c)の断面は、略四辺形及び/又は円形であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項7】
弾性グロメット(62c)が、前記剛性基礎構造体に、好ましくは、間隙を有することなく、及び/又は、前記弾性グロメット(62c)の外端部の面位置が前記トレイ(14c)の頂面と同面となるように、固定されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項8】
前記トレイ(14a,14b,14c,16a,16c)及び/又はカバー(12a,12b,12c)は、殺菌媒体の循環を可能にする穿孔(22a,22b,22c,42a,42b,42c)を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項9】
前記保持手段(24a,24b,24c)は、殺菌処理に対して耐性を有する弾性プラスチック材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項10】
前記トレイ(16c)は、前記医療器具(28)及び/又は機材を保持するためのサブカセット(68c)を収容し、前記サブカセット(68c)は、前記カセット(10a,10b,10c)と略同一の構成を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項11】
前記トレイ(14c)の頂面に、前記医療器具(28)の識別、及び、これらの前記医療器具(28)が特定の順序で使用される医療処置手順の案内に役立つ、線、記号、数字、及び文字からなる情報が印刷されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項12】
前記カセット(10a,10b,10c)、及び/又は前記保持手段(24a,24b,24c)、及び/又は、前記弾性グロメット(62c)を備えている場合には、前記弾性グロメット(62c)は、二色射出成形法により製造されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のカセット。
【請求項13】
前記カセット(10a,10b,10c)、特に、前記トレイ(14a,14b,14c,16a,16b,16c)及び/又は前記カバー(12a,12b,12c)は、プラスチック材料、特に軟質プラスチック材料を含む耐滑手段を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のカセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−63889(P2010−63889A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207012(P2009−207012)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(505104836)シュトラウマン・ホールディング・アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】STRAUMANN HOLDING AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(505104836)シュトラウマン・ホールディング・アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】STRAUMANN HOLDING AG
【Fターム(参考)】
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