説明

医療器具用バルーン

本発明は、体内導管に配置することができる医療器具に関する。本発明は、より詳しくは、狭窄した通路を広げ、治療薬を投与し、内部人工器官を配送し、または他の医療処置を行う治療を行うためのバルーンと、そのようなバルーンを使用したカテーテルとに関する。バルーンカテーテルは、細長いカテーテルシャフトの遠位端部に隣接して配設された拡張可能なバルーンを含むことができる。バルーンは新規の吸収性生体材料で製作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内導管に配置することができる医療器具に関する。より詳しくは、本発明は狭窄した通路を広げ、治療薬を投与し、内部人工器官を配送し、または他の医療処置を実施する治療を行うためのバルーンとそのようなバルーンを使用したカテーテルとに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは医療処置におけるその有用性でよく知られている。一般的に、バルーンカテーテルは、中空のカテーテルシャフトの外部のまわりに、少なくとも一方端部で固定されたバルーンを有する。バルーンの中空内部はシャフトの中空内部と流体流動する関係にある。加圧下の流体を、シャフトを通じてバルーン内部に供給して、閉塞に対抗してバルーンを拡張することができる。
【0003】
現在、カテーテルのバルーンは軟性バルーン、準軟性バルーン、または非軟性バルーンに分類することができる。軟度とは、バルーンの基準圧力から定格破裂圧力までの直径の拡大度と定義することができる。非軟性バルーンは、準軟性バルーンよりも直径の拡大が小さく、準軟性バルーンは軟性バルーンよりも直径の拡大が小さい。
【0004】
軟性バルーンは、バルーン内で圧力が上昇するにつれて拡大し、伸張し、ポリエチレンまたはポリオレフィンコポリマーなどの材料から製造されている。ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミドなどの材料から製造された非軟性バルーンは、バルーンの内部圧力がバルーンを完全に膨張させるのに必要な圧力を超えて上昇しても、実質的に所定直径のままである。
【0005】
軟性バルーンの材料はある程度の柔らかさをバルーンにもたらすが、これはバルーンが例えば血管などを最小限度の損傷しか残さずに通過するのを助ける。知られている軟性バルーンの材料は、医療器具用バルーンで一般的に用いられる厚みで良好な耐摩耗耐破裂性を示すこともできる。しかしながら、既に述べたように、これらのバルーンは、圧力が上昇すると所望直径のままではなくなる。このような軟性バルーンはまた、大きな拡張力を実現するのに充分なフープ強度を欠いている。
【0006】
圧力上昇とは関係なく、所定直径のままである非軟性バルーンが望まれる場合が多い。一般的な非軟性バルーンの材料は、軟性バルーンと同じ程度の柔らかさおよび耐摩耗性を呈示さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの治療条件にとって、柔らかさと、耐摩耗破裂性と、フープ強度と、バルーン内の内部圧力が上昇しても所定直径を維持する能力との特徴の組み合わせを呈示する拡張バルーンを有することが望ましいことになる。本明細書で述べるバルーンはこの必要に対処するために開発された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって、細長いカテーテルシャフトの遠位端部に隣接して配設された拡張可能なバルーンを有するバルーンカテーテルが提供される。バルーンは、新規の吸収性の生体材料で製作することができる。吸収性の生体材料は、組織適合性材料および/または哺乳動物で自然に生じる成分分子を含むことができる。一構成では、生体材料は4−ヒドロキシ酪酸塩、3−ヒドロキシ酪酸塩、または4−ヒドロキシ酪酸塩と3−ヒドロキシ酪酸塩の混合物から選択される材料であることができる。
【0009】
他の構成では、近位端部と遠位端部を有する細長い管状部材を含むバルーンカテーテルが提供される。管状部材の近位端部にはハブが取り付けられ、細長い管状部材の遠位端部に隣接して生合成バルーンが配設されている。生合成バルーンは生合成ポリエステルまたは他の適切な生合成材料から製作することができ、準軟性であることができる。
【0010】
いくつかの実施形態についての上記概要は、本発明のここに開示する各実施形態を述べることも、あらゆる実装例を述べることも目的としていない。本図面およびこれらに従った詳しい説明は、これらの実施形態を例証するものである。本発明のこれらおよび他の特徴が、以下の説明およびここに添付する請求項からより完全に明らかとなり、あるいはこれらを以下に述べる通りの本発明の実践によって習得することができる。
【0011】
本発明の上記および他の利点および特徴をさらに明確化するために、添付図面に示している本発明の特定の実施形態を参照することによって、本発明のより詳しい説明をここに掲げる。言うまでもなく、これらの図面は本発明の典型的な実施形態しか表しておらず、したがって本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。本発明を、添付図面を使用することによってさらに具体的かつ詳細にここに記述し、説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は一般に、医療処置中に使用可能なバルーンカテーテルなどの医療器具に関する。医療器具には、柔軟でありながら、所望の内部圧力が掛けられても所望の引張強度を呈示する拡張可能なバルーン部材が含まれ得る。本発明によるバルーンカテーテルは、狭窄した通路を広げ、治療薬を投与し、または他の医療処置を実施する治療を行うなどの医療処置で利用することができる。
【0013】
本明細書では、1つの医療器具の特定の例示的実施形態について述べるが、その記述は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして見なされるべきではない。本発明に対する様々な修正形態を、当業者は、添付請求項によって定義される本発明の真の精神および範囲から逸脱せずになすことができる。ここで、より良く理解するために、同様の構成要素を様々な図面の全てにわたって同様の参照符号によって示していることに留意されたい。さらに、以下の詳しい説明は図面を参照して読まれたいが、図面では、類似の要素には異なった図面でも同じ数字を付けている。これらの図面は必ずしも原寸に比例しておらず、例示的な実施形態を表すものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0014】
限定する目的ではなく例示する目的で、次に図1Aを参照すると、参照符号10によって識別するバルーンカテーテルの例示的な実施形態が示してある。バルーンカテーテル10は近位端部12と遠位端部14を含むことができ、患者の血管系の入り組んだ解剖学的構造を通して任意の体内導管内に位置決めされるのに充分に柔軟であることができる。示している構成では、バルーンカテーテル10は、近位端部22および遠位端部24と、バルーンカテーテル10および細長い管状部材20の近位端部12に取り付けられたハブ30と、バルーンカテーテル10の遠位端部14に向けて細長い管状部材20に取り付けられたバルーン40とを有する細長い管状部材、即ちカテーテルシャフト20を含むことができる。
【0015】
最初に細長い管状部材20を見ると、少なくとも1つの膨張管腔26(図1B)および少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28(図1B)が近位端部22から遠位端部24に向かって延在している。少なくとも1つの膨張管腔26が近位端部22から延在し、バルーン40の近傍で終端して、少なくとも1つの膨張管腔26がバルーン40の内部チャンバ42と流体連通するようになる。示す構成では、細長い管状部材20の一部分が、バルーン40の内部チャンバ42と少なくとも1つの膨張管腔26とのいずれとも連通する少なくとも1つのポート44を含む。このようにして、少なくとも1つの膨張管腔26内に向けられた流体は、少なくとも1つのポート44へと流れ、これを通ってバルーン40を展開または拡張させる。同様に、バルーン40の内部チャンバ42内から流体を少なくとも1つのポート44を通して引き出して、バルーン40を脱展開または収縮させ、あるいはバルーン40内の流体の圧力を低下させることができる。
【0016】
細長い管状部材20は、生体適合性材料または生体適合性材料で被覆した非生体適合性材料で製作することができる。例えば、限定するものとしてではなく、細長い管状部材20は、少なくとも部分的には合成材料、プラスチック、複合物、これらの組み合わせ、医療用等級合成材料またはプラスチックなどの材料で製作することができる。典型的な材料には、以下に限定するわけではないが、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および他のフルオロポリマー、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、他の生体適合性材料が挙げられる。細長い管状部材20はまた、少なくとも部分的には、以下に限定するわけではないが、ステンレススチール、または以下に限定するわけではないがニチノールなどの形状記憶合金などの金属材料からも製作することができる。
【0017】
細長い部材20は、少なくとも1つの膨張管腔26と少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28などの1つまたは複数の管腔を有する押出成形管状部材から製作することができる。これらの管腔26と28は、押出成形プロセス中に形成することができる。あるいは、管腔26と28を別個の管状部材で製作し、これらを少なくとも1つの膨張管腔26と少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28とを作り出すように相互に位置決めすることもできる。管腔26と28の相対的な配向および位置は、細長い部材の特定の構成に応じて変化させることができる。例えば、一構成では、少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28は、少なくとも1つの膨張管腔26内にある。他の構成では、少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28を、少なくとも1つの膨張管腔26の外側に配設することができる。さらに他の構成では、少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28はバルーン40を通って延在するのに対し、少なくとも1つの膨張管腔26はバルーン40の近位端部または近位部分で、またはこれより遠位側で終端して、内部チャンバ42と連通する。
【0018】
ここでは管状構造体である細長い管状部材20について述べているが、細長い管状部材20を、一層の材料より多い層の材料で製作できることを、図1Cを参照して理解されたい。例えば、簡略化するために膨張管腔とガイドワイヤ管腔との識別を除いて、内側管状部材20aと、内側管状部材20aのまわりに配設された補強部材または補強層20bと、補強部材または補強層20bのまわりに配設された外側管状部材20cとを配置することができる。補強部材または補強層20bは、格子状構造、網状構成、または細長い管状部材に強度および所望の剛度をもたらす他の構造または構成を有することができる。内側管状部材20aと、補強部材または補強層20bと、外側管状部材20cとのそれぞれは、本明細書で述べた材料と類似のもので製作することができる。さらに、補強部材または補強層20bと、細長い管状部材20の他の部分とは、合金から構成される形状記憶合金(「SMA」)、ポリマーから構成される形状記憶プラスチック(「SMP」)、または形状記憶金属(「SMM」)などの形状記憶材料から製作することができる。
【0019】
SMAの主なタイプとしては、銅−亜鉛−アルミニウム、銅−アルミニウム−ニッケル、ニチノールとして知られているニッケル−チタニウム(「NiTi」)合金、エルジロイとして知られているコバルト−クロム−ニッケル合金またはコバルト−クロム−ニッケル−モリブデン合金などが挙げられる。しかしながら他のタイプのSMAも使用することができる。一般的に、ニチノール合金およびエルジロイ合金は、よりコスト高である可能性があるが、銅を主体としたSMAと比較して、優れた機械的特性を有する。SMPの例としては、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール、オリゴ(ρ−ジオキサノン)ジオールなどの生分解可能なポリマーと、ポリノーボレン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン、ポリウレタン主体の材料、ビニルアセテート−ポリエステル主体の化合物、未だ確定されていない他のものなどの生分解不可能なポリマーなどが挙げられる。このように、任意のSMPを本発明によって使用することができる。
【0020】
図1Aに戻ると、ハブ30は、管状部材20の近位端部22に隣接して配設されている。ハブ30は、少なくとも1つの膨張管腔26(図1B)と少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28(図1B)と連通する少なくとも1つの管腔を含むことができる。例えば、図1Aで点線によって示しているように、ハブ30の管腔32は、細長い管状部材20の膨張管腔26(図1B)と流体連通しているのに対し、第2管腔34は、管状部材20のガイドワイヤ管腔28(図1B)に関連している。ハブ30は、様々な医療器具が解放可能に、かつ/またはこれに密閉可能に取り付けられるのを可能にする多数の異なった構成を有することが考えられる。例えば、ハブ30は、注射器などの医療器具の密閉式の取り付けをし易くする少なくとも1つのルアー式ロック取付具または他の類似の構造体を含むことができる。他の様々な構造および構成が可能であり、本明細書に含む教示を踏まえれば、これらは当業者の知るところである。
【0021】
図1Aを引き続き参照すると、バルーン40を、管状部材20のまわりで径方向に、管状部材20の遠方端部24に隣接して配設することができる。バルーン40は、これが非軟性の特徴、軟性の特徴、またはそれらの任意の組み合わせを呈示するような形で製作することができる。バルーン40は近位部分46、中間部分48、および遠位部分50を含むことができる。近位部分46と中間部分48との間には肩部52が配設され、中間部分48と遠位端部50との間には肩部54が配設されている。近位部分46と遠位部分50は、バルーン40が管状部材20の外側面に取り付けられて、バルーン40の内部チャンバ42を作り出すのを可能にする取り付け用部分としての働きをする。近位部分46と遠位部分50が管状部材20に取り付けられている状態で、内部チャンバ42は、細長い管状部材20の膨張管腔26(図1B)と流体連通している。
【0022】
バルーン40の近位部分46と遠位部分50、または別個の部分を使用して、バルーンを細長い管状部材20に取り付けることができる。バルーン40の取り付けは、接着剤、溶接ボンド、スエージ加工、または他の知られている他の取り付け方法を用いることによって行うことができる。場合によっては、放射線不透過性のマーカバンドなどのバンド60を利用して、バルーン40の近位部分46および/または遠位部分50を細長い管状部材20に取り付けることができ、またはこれを上述のプロセスと組み合わせて使用することができる。追加の放射線不透過性マーカまたはマーカバンドを、細長い管状部材20の外側面に、その長さに沿った、バルーン40の内部チャンバ42の中を含む任意の位置で固定することができる。
【0023】
マーカバンドは、放射線不透過性を促進または提供する材料で製作することができる。こうした材料としては、以下に限定するわけではないが、プラチナ、プラチナの合金、金、またはそれらの組み合わせ、金属、合金、プラスチック、ポリマー、合成材料、それらの組み合わせ、または適切な放射線不透過性の識別特性をもたらす他の材料が挙げられる。あるいは、バルーン40および/または細長い管状部材20を含むカテーテル10の部分を、以下に限定するわけではないが、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、二酸化チタン、またはそれらの組み合わせなどの適切な放射線不透過性材料で被覆して、放射線不透過性をもたらすことができる。
【0024】
バルーン40は、様々な吸収性の生体材料で製作することができる。このような材料の1つは生合成ポリエステルであるが、これは有利に組織適合性であり、哺乳動物で自然に発生する成分分子で製作されている。生合成ポリエステルは、医療器具用バルーンに望ましい特徴を呈示する。例えば、生合成ポリエステルは極めて柔軟であり、しかも超高分子量ポリエチレンと同様の引張強度を呈示する。これらの特徴によって、蛇行を経ても容易に追跡されることが可能な、許容可能なほどに高い破裂圧力を有するバルーンが提供される。
【0025】
実例となる生合成ポリエステルが、(4−ヒドロキシ酪酸塩)から構成されるTephaFLEXと、(3−ヒドロキシ酪酸塩)から構成されるTephELASTという商標名の下のTephaから入手可能である。このように、バルーンカテーテルのバルーンは、上述のポリエステル、これらのポリエステルの組み合わせまたは混合物で製作することができ、それらは単体でも、あるいは他の材料または他の生体吸収性材料との組み合わせでも可能である。生合成ポリエステル材料は、米国特許第6495152号明細書に開示されているプロセスに従ったバイオリアクタで製作することができる。上記特許明細書の全体は参照により本明細書に組み込まれる。これらの材料は、例えば、以下に限定するわけではないが、押出成形と、射出または浸漬などによる鋳型成形と、製織または編組などの繊維加工と、形成加工とを含むいくつかのやり方で後処理することができる。ここで適している場合のある形成加工とは、材料シートの圧延および溶接、または管形状への真空成形である。上述の材料に加えて、バルーン40は、ポリ−L−ラクチド−コ−グリコリド、ポリ−dL−ラクチド−コ−グリコリド、ポリエステルアミド、キトサン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリエチレングリコール(PEG)で製作することもできるが、これらはごく一部である。
【0026】
本発明によって、上述の材料を、図2の参照符号70で示すバルーン吹き込みプロセスを使用してバルーン40に形成することができる。例えば、以下に限定するわけではないが、プロセス70は、ブロック72で表す生合成ポリエスエルの全体に管状部材を形成することを含むことができる。これは、押出成形、圧延、浸漬成形、または他の処理技法によって実行することができる。形成された後は、この全体に管状部材を、ブロック74で表すように、バルーン形成機械のバルーン用鋳型内に配置または挿入することができる。バルーン形成機械の鋳型に配設され、鋳型が閉鎖されると、ブロック76で表すように、管状部材の内側管腔に加圧することができ、管状部材の両端部に力を掛けてバルーン40を形成することができる。バルーン形成の後に鋳型を減圧することができ、バルーン40を鋳型から取り外すことができる。場合によっては、プロセス70中に鋳型を加熱して材料をさらに鋳型に一致させることができる。本発明のバルーンを、他の知られている技法、例えば浸漬形成、吹き付け被覆/成形、回転成形、また巻き付け成形技法であって、材料シートがマンドレルのまわりに巻き付けられ、この材料が最終直径に吹き込まれ、または最終直径に成形され、これによって巻き付けられた材料を一緒に融合する巻き付け成形技術などを使用して製作できることもさらに考えられる。上述の製作技術は例示的なものと見なすべきである。本発明の範囲から逸脱せずに、本明細書で述べていない他の方法および技法によってバルーンを製作できることが考えられる。
【0027】
引き続き図1Aを参照すると、細長い管状部材20の遠位端部24に取り付けられているのが先部16である。この先部16はカテーテル10の遠位端部14を形成することができ、場合によっては管状部材20の材料とは異なった材料で製作することができる。先部16を管状部材20の特性よりも柔軟なまたは曲げ易い特性を有するように製作して、これによって医療器具10に、組織を傷つけない先部をもたらすことができる。例えば、一構成では、先部16は、遠位端部で組織を傷つけない部分として終端する柔軟なコイルによって取り囲まれたコア、例えばはんだボール、または先部16の組織を傷つけない遠位端部を形成する他の機構などを含むことができる。他の構成では、少なくとも1つのガイドワイヤ管腔28は先部16を通過し、先部16は柔軟なまたは曲げ易い特性を有する。より一般的には、組織を傷つけない先部が柔軟であり場合によっては形状付けが可能である限り、組織を傷つけない先部16は、様々な他の構成を有することができる。さらに、組織を傷つけない先部16は放射線不透過性であることができて、医師または臨床医が、蛍光透視装置またはX線装置などの適切な装置を使用して先部16の位置を観察できるようにしながら、カテーテル10を操縦可能に位置決めすることを可能にする。したがって先部16は、本明細書で述べた、または本明細書に含まれる教示を踏まえた当業者に他の形で知られる放射線不透過性材料または被覆で製作することができる。
【0028】
本明細書で述べたバルーンカテーテル10は、単体で使用することも、図3に示すようにバルーン40のまわりに径方向に配設することができる内部人工器官80と組み合わせて使用することもできる。ステントなどの内部人工器官80は、バルーン40を膨張させることによって、圧着された外形から拡張された外形に拡張することができる。図3で示すように、中間部分48の部分は、内部人工器官80の周囲縁部から外向きに拡張することができる。内部人工器官80は、内部人工器官上または内部人工器官内に配設された有益な薬剤または薬物を含むことができる。例えば、治療薬、調合薬、および放射線治療を内部人工器官80上または内部人工器官内に配設することができ、あるいはこれらが内部人工器官の一部を形成することができる。
【0029】
このような薬物または有益な薬剤としては、以下に限定するわけではないが、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板薬、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を阻止する薬剤、平滑筋増殖の阻止剤、抗生物質、増殖因子阻害剤、または細胞粘着阻害剤、ならびに抗新生物薬、抗有糸分裂薬、抗繊維素剤、抗酸化物質、内皮細胞の回復を促進する薬剤、抗アレルギー剤、放射線不透過性剤、有益な遺伝子を有するウィルスベクター、遺伝子、siRNA、アンチセンス化合物、オレゴヌクレオチド、細胞浸透促進剤、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切な有益な薬剤の他の例が、「Tetrazole−containing rapamycin analogs with shortened half−lives」という名称の米国特許第6015815号明細書および米国特許第6329386号明細書に記述されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
次に図4を参照すると、本発明のバルーンカテーテルの代替的形態を示してある。バルーンカテーテル110は本明細書で述べたバルーンカテーテル10と類似しているが、バルーン140はバルーンカテーテル10(図1A)のバルーン40(図1A)とは異なっている。このようなことから、バルーンカテーテル10の記述は、バルーンカテーテル110の記述にも当てはまり、同様の構造物は同様の参照符号で識別する。
【0031】
引き続き図4を参照すると、バルーン140は管状部材120に取り付けられている。近位部分46と遠位部分50が取付用部分としての働きをするバルーン40(図1)とは異なり、バルーン140は肩部152と154によって管状部材120に取り付けることができ、これによって上述の近位部分と遠位部分が無くなっている。肩部152と154にギャザーを寄せ、以下に限定するわけではないがマーカバンド160などのバンドを肩部152と154のそれぞれの一部分にこれを圧着することによって管状部材120に取り付けることができる。肩部152と154の取り付けは、もっぱら圧着によって、あるいは接着剤、レーザ処理、白色光、溶融、上述の任意のもの同士の組み合わせ、または膨張バルーンを管状部材に取り付けるための他の方法を使用することによって行うことができる。
【0032】
バルーン140が近位部分と遠位部分を有していない状態で、バルーン140を管状部材120に取り付けることついて述べたが、言うまでもなく、バルーン140を管状部材120に取り付けるプロセスを、バルーン40(図1A)を管状部材20(図1A)に取り付けることで実践することもできる。例えば、肩部52と54(図1A)を使用してバルーン40(図1A)を取り付けた後に、近位部分46と遠位部分50をバルーン40(図1A)から切り離し、または他のやり方で取り除くことができる。言うまでもなく、近位部分46と遠位部分50を様々な他の技法または方法によって取り除くことができる。例えば、近位部分46と遠位部分50を、熱処理または化学処理、薄切り、スコアリング、レーザ切断、ウォータジェット切断、これらの組み合わせ、またはバルーンの一部分をバルーンの残りの部分から分離する他の技法を使用して取り除くことができる。
【0033】
図示している構成では、膨張された状態では、バルーン140の両端は丸くなり、バルーン140にソーセージ様の肩部152と154を形成する。このタイプの特徴は、バルーン140の肩部分の剛度を軽減し、それによってバルーン140の柔軟度および適合度を高めるという点で望ましい。さらに、図4を参照すると、内部人工器官80がバルーン140に取り付けられるとき、バルーン140の丸み付き肩部152は内部人工器官80を越えて突き出すことがなく、内部人工器官80が実質的にバルーン140の中間部分148に載るようになる。このことは、バルーンカテーテル110のバルーン140の全体の大きさを縮小し、バルーンカテーテル110が患者の入り組んだ解剖学的構造を通ってより容易に案内されるのを可能にする。さらに、バルーン膨張中およびステント配置中のバルーンの一部と血管壁の接触が解消され、これによって血管の解離および/または血管壁/バルーンの接触から生じる刺激の可能性を解消し、または実質的に低下させる。
【0034】
本発明を特定の材料およびプロセスを参照して以上に示し、述べたが、これを、いかなる形においても限定するものと見なすべきではなく、本発明の範囲から逸脱することなく当業者が本発明を修正できることが考えられる。したがって、本発明を、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実施することができる。ここに述べた実施形態は、あらゆる点で例示的なものにすぎず、限定するものではないと考えられる。したがって、本発明の範囲は、上述の説明によってではなく添付する特許請求の範囲によって明示されている。特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入る変更は全てこれらの特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明によるバルーンカテーテルの例示的実施形態の平面図である。
【図1B】図1Aのバルーンカテーテルの一部分の横断面図である。
【図1C】図1Aのバルーンカテーテルのカテーテルシャフトの代替的構成の横断面図である。
【図2】図1Aのバルーンカテーテルに関連付けられた製造プロセスのフローチャート概略図である。
【図3】図1Aのバルーンカテーテルに従ったバルーンのまわりで径方向に配設された内部人工器官を示す平面図である。
【図4】バルーンのカテーテルシャフトへの代替的な取り付けを示す代替的バルーンカテーテルの平面図である。
【図5】代替的取り付け方法にしたがって、図4の拡張されたバルーンのまわりで径方向に配設された内部人工器官を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルであって、
近位端部と遠位端部を有する細長いシャフトと、
遠位端部に隣接して配設された生体吸収性のバルーンとを備える、バルーンカテーテル。
【請求項2】
バルーンが、4−ヒドロキシ酪酸塩および3−ヒドロキシ酪酸塩からなる群より選択される材料で製作されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
バルーンが、4−ヒドロキシ酪酸塩と3−ヒドロキシ酪酸塩の混合物で製作されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
膨張管腔をさらに備え、膨張管腔がバルーンの内部およびシャフトの近位端部と流体連通している、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
シャフトの近位端部に関連付けられたハブをさらに備え、膨張管腔に関連付けられた少なくとも1つの管腔を含む、請求項4に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
バルーンが準軟性である、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
バルーンが組織適合性材料で製作されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
バルーンが哺乳動物で自然に生じる成分分子で製作されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
バルーンカテーテルであって、
近位端部と遠位端部を有する細長い管状部材と、
管状部材の近位端部に取り付けられたハブと、
遠位端部に隣接して配設された生合成バルーンとを備える、バルーンカテーテル。
【請求項10】
バルーンが、4−ヒドロキシ酪酸塩および3−ヒドロキシ酪酸塩からなる群より選択される材料で製作されている、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
バルーンが、4−ヒドロキシ酪酸塩と3−ヒドロキシ酪酸塩の混合物で製作されている、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
バルーンが4−ヒドロキシ酪酸塩から製作され、準軟性である、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
バルーンが3−ヒドロキシ酪酸塩から製作され、準軟性である、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
バルーンが近位部分と遠位部分を備え、近位部分と遠位部分が管状部材に取り付けられている、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
バルーンが近位部分と遠位部分を備え、近位部分と遠位部分のそれぞれが一緒にギャザーを寄せられ、管状部材に取り付けられている、請求項9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
バルーンが丸みの付いた肩部を備える、請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
バルーンカテーテルであって、
近位端部と、遠位端部と、近位端部から遠位端部に向かって延在する少なくとも1つの膨張管腔とを有する細長い管状部材と、
管状部材の近位端部に取り付けられ、少なくとも1つの膨張管腔と流体連通しているハブと、
遠位端部に隣接して配設され、少なくとも1つの膨張管腔と流体連通した、生合成ポリエステルで製作されたバルーンとを備える、バルーンカテーテル。
【請求項18】
バルーンが、4−ヒドロキシ酪酸塩、3−ヒドロキシ酪酸塩、および4−ヒドロキシ酪酸塩と3−ヒドロキシ酪酸塩の混合物で製作されている、請求項17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
細長い管状部材の遠位端部から近位端部に向かって延在する少なくとも1つのガイドワイヤ管腔をさらに備える、請求項17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
細長い管状部材の遠位端部から延在する曲げ易い先部をさらに備える、請求項17に記載のバルーンカテーテル。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−501062(P2009−501062A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521495(P2008−521495)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/026714
【国際公開番号】WO2007/008784
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】