説明

医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】 第13改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器 の試験項目をすべて満足し、かつ、薬剤や薬液の保存容器として必要な耐蒸気滅菌性(耐熱性、剛性)、透明性、ガスバリヤー性を保持する成形品用のポリプロピレン系樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (A)金属チタン含有量が1ppm以下で、かつMFRが0.5〜70g/10分のポリプロピレン系重合体に、(B)特定の有機アルカリ金属塩0.025〜0.15重量%と(C)特定の一般式で表される環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩0.025〜0.15重量%と(D)特定の一般式で表される複合水酸化物塩化合物0.01〜0.10重量%を特定の関係式を満たすように配合してなる医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用途向け薬剤、薬液保存容器のうち、特に、第13改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目をすべて満足する成形体を製造するのに好適なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性プロピレン系重合体はその優れた安全衛生性や成形加工性、力学特性、ガスバリヤー性の特徴を生かし、各種の医療器具に使用されている。特に近年、高レベルの安全衛生性が求められる薬剤や薬液の保存容器としてアンプルやバイアルの代替容器用材としての活用が散見されるようになってきた。これらの保存容器には、蒸気滅菌時の耐熱性、耐失透性、耐添加剤抽出性、水蒸気や酸素のガスバリヤー性が維持されることや、使用添加剤が保存薬剤、薬液に相互作用を及ぼさないこと、が必要であり、具体的には第13改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目をすべて満足することが必須要件である。
【0003】
従来、これらの性能を満足させるために、ポリプロピレン単独重合体やエチレンとのランダム共重合体と核剤や中和剤を種々組み合わせて、キーとなる性能の最適化が試みられてきた。しかしながら、例えばソルビトール系透明核剤を用いた場合には、耐添加剤抽出性や局方試験を満足せずこれらの用途には不適であり、アルミ系や有機リン酸系剛性核剤を添加したものは、透明性の発現が十分でなかったり、また添加量を増やすと局方試験の強熱残分や紫外線吸収スペクトルに満足すべき結果が得られなかった。一方、容器の基材となる結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、剛性や耐熱性、ガスバリヤー性の点ではポリプロピレン単独重合体が、透明性や耐衝撃性の点ではエチレンとのランダム共重合体が好ましいが、剛性核剤との組み合わせにおいては、該局方試験をすべて満足する条件下では、薬剤、薬液の保存容器として満足できる耐熱性や透明性、ガスバリヤー性が得られていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、第13改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器 の試験項目をすべて満足し、かつ、薬剤や薬液の保存容器として必要な耐蒸気滅菌性(耐熱性、剛性)、透明性、ガスバリヤー性を保持する成形品用のポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、特定のチタン含有量およびメルトフローレートを有する結晶性ポリプロピレンに、特定の有機アルカリ金属塩及び環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩からなる造核剤及び特定の複合水酸化物塩化合物系中和剤を特定量添加することにより、日本薬局方の試験項目を満足する成形体を製造するのに好適なポリプロピレン系樹脂組成物を見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)金属チタン含有量が1ppm以下であり、かつ、メルトフローレートが0.5〜70g/10分であるポリプロピレン単独重合体またはエチレン含有量が3重量%以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体に、(B)アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩0.025〜0.15重量%、(C)一般式(I):
【化1】

(ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、XはMが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)により表される環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩の少なくとも一種0.025〜0.15重量%、および(D)一般式(II)および/または一般式(III):
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (II)
(ただし、xは0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。)、
〔AlLi(OH)X・mHO (III)
(ただし、Xは無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下の数である。)で表される複合水酸化物塩化合物、0.01〜0.10重量%を下記式(1)の関係を満たすように配合してなる医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
b≦0.046−0.083a (1)
(ただし、aは樹脂組成物中の(B)の有機アルカリ金属塩と(C)の環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩(I)の濃度の和(重量%)であり、bは樹脂組成物中の(II)および/または(III)の濃度(重量%)である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物は、第13改正 日本薬局方一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器 の試験項目をすべて満足し、かつ、薬剤や薬液の保存容器として必要な耐蒸気滅菌性(耐熱性、剛性)、透明性、ガスバリヤー性を保持している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.(A)ポリプロピレン系樹脂
(1)本発明に用いられる結晶性ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート0.5〜70g/10分、好ましくは5〜40g/10分を有するものであり、ポリプロピレン単独重合体ないしはエチレンとのランダム共重合体である。共重合体の場合は、エチレン含有量は3.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下であることが必要である。メルトフローレートが0.5未満では成形加工性の低下をきたし注射剤容器として満足できる成形体が得られない。また、70以上では機械的強度の低下が著しく実用上の問題が生じる。一方、エチレン含有量が3.0重量%を超えると保存容器の蒸気減菌時に透明性の低下や変形が起こり、また水蒸気や酸素のガスバリヤー性の低下をきたし、保存薬剤や薬液に悪影響を及ぼす。
【0009】
(2)該樹脂中に含まれる金属チタンは1ppm以下であることが必要である。これを達成するためには、重合時にMg担持型の高活性触媒を用いたり、また重合後に脱触工程を設け、ポリマー中の該金属成分を低減させることができる。ポリマー中に該成分が1ppmを超えると透明性の発現が十分でなかったり、また、局方試験項目の強熱残分項目を満足しなくなる。
【0010】
(3)プロピレンの単独重合体とエチレンとのランダム共重合体の製造方法プロピレン(共)重合体の製造方法は、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0011】
また、プロピレン(共)重合体の重合反応は、気相、液相のいずれで行ってもよい。例えば液相で重合する場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られる(共)重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、二段で行ってもよい。
【0012】
また、あらかじめ前記プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体を製造しておいて、これを所定割合にて機械的混合を行ってもよい。
【0013】
2.(B)及び(C)造核剤
本発明の組成物に配合する造核剤は、(B)成分である有機アルカリ金属塩並びに(C)成分である環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩である。(B)成分は、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩である。
【0014】
(B)成分の各アルカリ金属塩化合物を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0015】
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
上記アルカリ金属β−ジケトナートを構成するβ−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ピバロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ベンゾイルアセトン、ピバロイルベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0017】
また、上記アルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩を構成するβ−ケト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ラウリル等が挙げられる。
【0018】
上記(B)成分であるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート又はアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩は各々上記アルカリ金属とカルボン酸、β−ジケトン化合物又はβ−ケト酢酸エステルとの塩であり、従来周知の方法で製造することができる。また、これら(B)成分の各アルカリ金属塩化合物の中でも、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン酸塩、特に、リチウムの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、とりわけ炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸塩が好ましい。
【0019】
本発明で用いられる(C)成分は一般式(I):
【化1】

(ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは周期律表第III族又は第IV族の金属原子を示し、XはMが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)により表される環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩である。
【0020】
環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩において、R1で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル等が挙げられ、R2又はR3で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル,t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、t−ドデシル等が挙げられる。
【0021】
また、Mで示される周期律表第III族又は第IV族の金属原子としては、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム等が挙げられ、特にアルミニウムが好ましい。
【0022】
したがって、(C)成分としては、例えば次に示す化合物が挙げられる。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
(C)成分は、例えば、酸性環状有機リン酸エステルのアルカリ金属塩と多価金属ハロゲン化合物あるいは酸化多価金属ハロゲン化物と反応させ、その後必要に応じて加水分解する方法、酸性環状有機リン酸エステルと多価金属アルコキサイドを反応させ、その後必要に応じて加水分解する方法等により容易に製造することができる。
【0030】
また、(C)成分は、その粒径についても特に制限をうけず、例えば、平均粒径0.01〜50ミクロンのものを用いることができるが、均一な分散を図るためには、平均粒径が10ミクロン以下、特に3ミクロン以下の微粒子に粉砕して用いることが好ましい。
【0031】
3.(D)中和剤
本発明の組成物に配合する(D)中和剤としては、一般式(II):
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (II)
(ただし、xは0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。)、および/または一般式(III):
〔AlLi(OH)X・mHO (III)
(ただし、Xは無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下の数である。)で表される複合水酸化物塩化合物を用いる。
【0032】
4.組成物の組成割合
本発明の組成物に配合する成分(B)並びに成分(C)の造核剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂中に、成分(B)が0.025〜0.15重量%、好ましくは0.035〜0.075重量%である。また、成分(C)が0.025〜0.15重量%、好ましくは0.035〜0.075重量%である。成分(D)の中和剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂中に、0.01〜0.10重量%、好ましくは0.02〜0.05重量%である。さらに、この各添加量は式(1)を満たしていることが必要である。
b≦0.046−0.083a (1)
(ただし、aは樹脂組成物中の(B)及び(C)の濃度の和(重量%)であり、bは樹脂組成物中の(D)の濃度(重量%)である。)
【0033】
造核剤(B)成分の添加量が0.025重量%未満では、透明性や耐熱性の向上効果が十分でなく、また、0.15重量%を超えると添加量に見合った透明性向上効果が期待できなくなると共に、逆に局方試験項目中の強熱残分や紫外線吸収スペクトルの安全性能の低下をきたす。(C)成分の添加量が範囲外であると、(B)成分の場合と同様に、透明性や耐熱性の改善が不十分であったり安全性の低下をきたしたりする。(B)成分と(C)成分の比率は、上記範囲内であると、特に制限を受けないが、(B)成分の添加量が(C)成分の添加量の当量である場合に本発明の効果が著しい。
【0034】
また、中和剤が0.01重量%未満ではポリプロピレン系樹脂中の触媒残さ成分の中和が不十分となりポリプロピレン系樹脂の経時安定性や透明性が低下し、また0.10重量%を超えるとそれ自身が透明性低下の原因となったり、また局方試験項目中の強熱残分で満足すべき結果が得られないことになる。さらに、各添加剤量の関係が、式(1)を外れた場合には、薬剤、薬液容器として必要な透明性、耐熱性、ガスバリヤー性とこれらの保存容器に必須な強熱残分や紫外線吸収スペクトル等の安全性能の最適化が困難となる。
【0035】
5.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリプロピレン系医療用樹脂組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を用いて、本発明で用いる添加剤の他に一般的に用いられるトリス(2,4−ジ−tブチルフェニル)ホスファイトのようなプロセス安定剤やヒンダードアミン系紫外線吸収剤等を配合し、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で160〜250℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において樹脂原料及び添加剤としては以下のものを使用した。
(A)結晶性ポリプロピレン
ホモポリプロピレン(HPP):MFR15g/10分
ランダムポリプロピレン(RPP):エチレン濃度0.4重量%、
MFR15g/10分
(B)造核剤
NA−21:有機アルカリ金属塩と環状リン酸エステル塩基性多価金属塩の
等量混合系核剤(旭電化工業(株)製)
ゲルオールMD:ソルビトール系核剤(新日本理化(株)製)
(C)中和剤
ミズカラック:リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(水澤化学工業(株)製)
DHT−4A:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・
ハイドレート(協和化学工業(株)製)
Ca−St:カルシウムステアレート(日東化学(株)製)
【0037】
また、物性測定は以下の方法で行った。
(1)エチレン濃度:13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(2)Ti含量:ポリプロピレン中の灰分を塩酸(塩酸1容+水1容)に溶解後、10%アスコルピン酸を加えジアンチピリルメタン溶液で発色させ、385nmの吸光度を用いてチタン含有を算出した。
(3)MFR:JIS K6758、230℃ 2.16Kg荷重に準拠。
【0038】
(4)蒸気滅菌:1ミリシート成形品をオートクレーブ滅菌器を用いて121℃で1時間の条件で滅菌し、風乾後、透明性(ヘイズ)測定に供した。
(5)ヘイズ値:厚さ1ミリのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
(6)デュポン衝撃強度:厚さ2ミリのシート片を用いて、JIS K7211に準拠して23℃で測定した。
【0039】
(7)成形性:1ミリシート成形品表面の平滑性(フローマーク等)を目視にて観察し成形性を判定した。
○:ゲート付近からのフローマークが殆ど観察されない。
×:ゲート付近から成形品末端までフローマークが観察される。
【0040】
(8)第13改正 日本薬局方一般試験:45.プラスチック製薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器)の1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、外観、水蒸気透過性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、溶出物、細胞毒性を測定した。但し、試料調製は、0.5ミリ厚で表面積600cmに相当する重量のペレットを秤量し、210℃でプレスしてシート片として、長さ約5センチ、幅約0.5センチの大きさに細断し、水で洗った後、室温で乾燥した。これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に水につき、同様の方法で空試験液を調製した。
【0041】
実施例1
Ti含量が1ppm未満のホモポリプロピレン(HPP)100重量部に対して、造核剤としてNA−21及び中和剤としてミズカラックを表1に示す割合で配合し、さらにホスファイト系酸化防止剤としてMARK2112(旭電化工業(株)製)0.1重量部及びヒンダードアミン系紫外線安定剤としてTINUVIN622LD(日本チバガイギー(株)製)0.05重量部を配合し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、50ミリ径の単軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度210℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力900kg/cm及び金型温度60℃で射出成形し、シートを作成した。得られたシートから、試験片を採り、物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例2〜5
表1に示すポリプロピレン系樹脂、造核剤、中和剤を用いて、実施例と同様にして試験片を得、その物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
比較例1〜8
表2に示すポリプロピレン系樹脂、造核剤、中和剤を用いて、実施例と同様にして試験片を得、その物性を測定した。その結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1及び表2より明らかなように、本発明の組成物である、核剤NA−21とリチウムアルミニウム複合水酸化物塩(ミズカラック)を式(1)を満足するように用いた系(実施例1)、同核剤とハイドロタルサイト(DHT−4A)を式(1)を満足するように用いた系(実施例2)、実施例2でMFRを変えた系(実施例3)、実施例2で核剤量および中和剤量を変えた系(実施例4)、およびランダムPP(RPP)を用いた系(実施例5)は局方試験に合格する組成物である。一方、ソルビトール系核剤を用いた組成物系では溶出物試験のUV吸収や過マンガン酸消費量等で局方試験に不合格(比較例1)、中和剤としてカルシウムステアレートを用いた系では薬液の透明性が不合格(比較例2)、エチレン濃度が請求範囲を超えたRPPを用いた系では滅菌時に変形と透明性が悪化し(比較例3)、NA−21の添加量が低濃度側に請求範囲を外れた系では透明性改善が不十分となり(比較例4)、中和剤が低濃度側に請求範囲を外れた系では中和不足のため樹脂劣化による安全性が低下し、UV吸収や過マンガン酸消費量等で局方試験に不合格となり(比較例5)、ポリプロピレン中の金属チタン濃度が高濃度の系では強熱残分が不合格(比較例6)、MFRが低流動側に外れた系では成形性が悪化し(比較例7)、MFRが高流動側に外れた系では衝撃性(デュポンインパクト)が低下し(比較例8)、それぞれ好ましくない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属チタン含有量が1ppm以下であり、かつ、メルトフローレートが0.5〜70g/10分であるポリプロピレン単独重合体またはエチレン含有量が3重量%以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体に、(B)アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩0.025〜0.15重量%、(C)一般式(I):
【化1】

(ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、XはMが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)により表される環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩の少なくとも一種0.025〜0.15重量%、および(D)一般式(II)および/または一般式(III):
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (II)
(ただし、xは0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。)、
〔AlLi(OH)X・mHO (III)
(ただし、Xは無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下の数である。)で表される複合水酸化物塩化合物、0.01〜0.10重量%を下記式(1)の関係を満たすように配合してなる医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物。
b≦0.046−0.083a (1)
(ただし、aは樹脂組成物中の(B)の有機アルカリ金属塩と(C)の環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩(I)の濃度の和(重量%)であり、bは樹脂組成物中の(II)および/または(III)の濃度(重量%)である。)
【請求項2】
前記有機アルカリ金属塩が、アルカリ金属カルボン酸塩である請求項1に記載の医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩が、アルミニウム塩である請求項1ないし請求項2に記載の医療容器用ポリプロピレン系樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−152310(P2006−152310A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26521(P2006−26521)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【分割の表示】特願平9−317619の分割
【原出願日】平成9年11月4日(1997.11.4)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】