説明

医療情報システムおよびその制御プログラム

【課題】好適に性能劣化を判定する。
【解決手段】医療データを保存して管理するデータベースを有する医療情報システムにおいて、データモデルの特性値を記憶するデータモデル記憶手段13aと、データモデルに対応する医療データの特性値をデータ分布として算出するデータ分布算出手段13bと、データモデルの特性値と、データ分布算出手段13bにより算出された医療データの特性値の差異を算出するデータ分布差異算出手段13cと、データ分布差異算出手段13cにより算出された差異に基づいて、性能を判定する性能判定手段13dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報システムおよびその制御プログラムに関し、特に、好適に性能劣化を判定する医療情報システムおよびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるような医用診断装置が提案されている。この医用診断装置は、医用診断装置の各機能の調整日時や所定操作(キャリブレーションなど)の使用日時を記録し、所定時間が経過した場合、未調整である旨のメッセージを表示させるというものである。
【0003】
また特許文献2に開示されるような画像管理システムが提案されている。この画像管理システムは、医用画像機器の稼動状況を継続的に蓄積したデータベース、および故障原因解析データベースにより、画質の劣化を早期に認識して、画質劣化の原因究明の対応を短時間に指示するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−220396号公報
【特許文献2】特開2005−205193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医用診断装置などの医療情報システムにおいては、長期間使用することにより、当初設計されたデータモデルと現実データのズレが生じ、適正な性能が維持できなくなる、いわゆる経年劣化が発生する課題があった。
【0006】
そこで、経年劣化を発見するためには、テスト患者のデータ条件を実データと同じにして異常(性能劣化)があるか否かの試験を行うが、時間的な制約から全数試験を実施することができない。
【0007】
また、好適な条件でのみ試験を実施すれば時間的な制約はなくなるが、実データは事前設計データモデルと異なることが多いため、事前に設計された好適な条件は、試験実施時には必ずしも好適ではない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、好適に性能劣化を判定することが可能な医療情報システムおよびその制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明の特徴は、医療データを保存して管理するデータベースを有する医療情報システムにおいて、データモデルの特性値を記憶するデータモデル記憶手段と、データモデルに対応する医療データの特性値をデータ分布として算出するデータ分布算出手段と、データモデルの特性値と、データ分布算出手段により算出された医療データの特性値の差異を算出するデータ分布差異算出手段と、データ分布差異算出手段により算出された差異に基づいて、性能を判定する性能判定手段とを備える。
【0010】
請求項5記載の本発明の特徴は、医療データを保存して管理するデータベースと、データモデルの特性値を記憶するデータモデル記憶手段とを有する医療情報システムが備えるコンピュータに、データモデルに対応する医療データの特性値をデータ分布として算出するデータ分布算出ステップと、データモデルの特性値と、データ分布算出ステップで算出された医療データの特性値の差異を算出するデータ分布差異算出ステップと、データ分布差異算出ステップで算出された差異に基づいて、性能を判定する性能判定ステップと、を実行させることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データモデルと実データとの差異を算出することにより、好適に性能劣化を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した医療情報システムの構成例を示す図である。
【図2】HISの機能構成例を示すブロック図である。
【図3】DBMSで管理するデータベースの構成例を示す。
【図4】データモデル記憶部に記憶されるデータモデルの特性値の情報例を示す図である。
【図5】データ分布算出部で算出されるデータ分布の情報例を示す図である。
【図6】データ分布差異算出部で算出されるデータ分布差異の情報例を示す図である。
【図7】経年劣化判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した医療情報システムの構成例を示す図である。この医療情報システムにおいては、HIS(Hospital Information System)1、RIS(Radiology Information System)2、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)サーバ3、医用画像撮影装置4、および医用画像観察装置5が、ネットワーク6を介してそれぞれ接続されている。
【0015】
なお、本実施の形態でいう医療情報システムとは、図1に示すような、HIS1、RIS2、DICOMサーバ3、医用画像撮影装置4、および医用画像観察装置5など、医療機関で使用されるコンピュータを用いた装置を指すが、ここでは、特に、内部にデータベース管理システム(DBMS:Database Management System)を搭載した装置を意味するものとする。
【0016】
HIS1は、病院内の事務的な情報を統括的に管理する病院情報管理システムである。例えば、HIS1は、患者の受診情報、カルテ情報、検査結果情報、および会計情報などを、DBMSを用いて管理している。
【0017】
RIS2は、放射線部門内における医療情報を統括的に管理する放射線部門情報管理システムである。例えば、RIS2は、HIS1と連携し、放射線検査オーダ内容、スケジュール、および検査実施記録などを、DBMSを用いて管理している。
【0018】
DICOMサーバ3は、内部にDBMSを搭載しており、DICOM規格に従って画像データを保管する。
【0019】
医用画像撮影装置4は、X線装置、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、および超音波装置などで構成される。医用画像撮影装置4は、内部にDBMSを搭載しており、撮影された画像データを保管する。なお、医用画像撮影装置4で保管される画像データは、一時的なものであり、長期的な保管には、医用画像撮影装置4の外部にあるDICOMサーバ3などが利用される。
【0020】
医用画像観察装置5は、内部にDBMSを搭載しておらず、DICOMサーバ3または医用画像撮影装置4から受信した画像データの表示を行う。
【0021】
HIS1乃至医用画像観察装置5は、プログラムとこのプログラム処理に必要となるデータを記憶する主記憶装置(例えば、HDD(Hard Disc Drive))、プログラムおよびデータに基づいて演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memoryなどから構成されるコンピュータである。
【0022】
ネットワーク6は、公衆回線網、ローカルエリアネットワーク、またはインターネットなどのネットワーク、デジタル衛星放送といった、有線または無線のいずれのものでもよい。
【0023】
図2は、HIS1の機能構成例を示すブロック図である。図2に示す機能部のうちの少なくとも一部は、プログラム制御部11により経年劣化検出アプリケーションが実行されることによって、DBMS12、経年劣化検出部13、およびGUI(Graphical User Interface)制御部14が実現される。
【0024】
プログラム制御部11は、経年劣化検出部13の各機能部を起動するための命令を発行する。またプログラム制御部11は、GUI制御部14のGUI機能を制御する。
【0025】
DBMS12は、リレーショナルモデルまたはオブジェクトモデルに従って、患者情報、保険情報、受診情報、カルテ情報、カルテ項目情報、検体オーダ情報、リハビリオーダ情報、処方オーダ情報、オーダ項目マスタ、およびカルテ項目マスタなどの医療データを、データベースに保存して管理する。
【0026】
図3は、DBMS12で管理するデータベースの構成例を示す。
【0027】
「患者情報」のデータテーブル12aには、患者ID、氏名、生年月日、電話番号、および住所のフィールドが設定されている。患者IDには、主キーが定義されている。主キーとは、格納されたレコードを一意に識別するためのものである。
【0028】
「保険情報」のデータテーブル12bには、患者ID、保険順序番号、保険種別、被保険者番号、保険者番号、および満了日のフィールドが設定されている。患者IDおよび保険順序番号には、主キーが定義されている。このデータテーブル12bのように、単一フィールドでの一意性が保証できない場合、2つ以上のフィールドを主キーとして割り当てることができる。患者IDは、外部キー(FK)でもあり、参照先のテーブルの主キーが定義される。つまり、患者IDが参照する先は、「患者情報」のデータテーブル12aとされる。
【0029】
「受診情報」のデータテーブル12cには、患者ID、受診番号、受診日、および受診科のフィールドが設定されている。患者IDおよび受診番号には、主キーが定義されている。患者IDには、外部キー(FK)も定義されており、「患者情報」のデータテーブル12aが参照される。
【0030】
「カルテ情報」のデータテーブル12dには、カルテ番号、患者ID、受診番号、および確定ステータスのフィールドが設定されている。カルテ番号には、主キーが定義されている。患者IDおよび受診番号には、外部キーが定義されており、「受診情報」のデータテーブル12cが参照される。
【0031】
「カルテ項目マスタ」のデータテーブル12eには、カルテ項目ID、カルテ項目名、カルテ項目種別、および項目データ型のフィールドが設定されている。カルテ項目IDには、主キーが定義されている。
【0032】
「カルテ項目情報」のデータテーブル12fには、カルテ番号、項目番号、カルテ項目ID、および項目データのフィールドが定義されている。カルテ番号および項目番号には、主キーが定義されている。カルテ番号には、外部キーが定義されており、「カルテ情報」のデータテーブル12dが参照される。またカルテ項目IDにも、外部キーが定義されており、「カルテ項目マスタ」のデータテーブル12eが参照される。
【0033】
「オーダ項目マスタ」のデータテーブル12gには、オーダ項目ID、オーダ項目名、オーダ項目種別、および項目データ型のフィールドが設定されている。オーダ項目IDには、主キーが定義されている。
【0034】
「検体オーダ情報」のデータテーブル12hには、カルテ番号、オーダ項目番号、オーダ項目ID、数量、依頼形式、オーダステータス、依頼日、および実施日のフィールドが設定されている。カルテ番号およびオーダ項目番号には、主キーが定義されている。カルテ番号には、外部キーが定義されており、「カルテ情報」のデータテーブル12dが参照される。またオーダ項目IDにも、外部キーが定義されており、「オーダ項目マスタ」のデータテーブル12gが参照される。
【0035】
「リハビリオーダ情報」のデータテーブル12iには、カルテ番号、オーダ項目番号、オーダ項目ID、実施期間開始、実施期間終了、実施回数、オーダステータス、依頼日、および実施日のフィールドが設定されている。カルテ番号およびオーダ項目番号には、主キーが定義されている。カルテ番号には、外部キーが定義されており、「カルテ情報」のデータテーブル12dが参照される。またオーダ項目IDにも、外部キーが定義されており、「オーダ項目マスタ」のデータテーブル12gが参照される。
【0036】
「処方オーダ情報」のデータテーブル12jには、カルテ番号、オーダ項目番号、オーダ項目ID、数量、オーダステータス、依頼日、および実施日のフィールドが設定されている。カルテ番号およびオーダ項目番号には、主キーが定義されている。カルテ番号には、外部キーが定義されており、「カルテ情報」のデータテーブル12dが参照される。またオーダ項目IDにも、外部キーが定義されており、「オーダ項目マスタ」のデータテーブル12gが参照される。
【0037】
以上のように、DBMS12では、さまざまなデータテーブルが管理されている。なお、図3では、リレーショナルモデルを用いたデータベースの構成例を示したが、オブジェクトモデルに従ったデータベースを用いるようにしてもよい。
【0038】
またDBMS12で管理されるデータベースへのアクセスは、アプリケーションプログラムを介して行われる。アプリケーションプログラムは、関係データベース言語であるSQLなどのデータ取得命令によりDBMS12にアクセスし、データの取得を行う。なお、SQLに限らず、各DBMSで提供されるデータアクセス手法によってデータ取得を行うようにしてもよい。
【0039】
図2の説明に戻る。DBMS12は、アプリケーションプログラムからデータ取得命令を受けると、その命令を分析し、最適なデータ取得アルゴリズムを動的に決定し実行する。データの取得方法としては、例えば、対象テーブルの結合順序、結合アルゴリズム、使用索引使用の有無、および索引の種別などに基づいて決定される。これらの決定方法としては、例えば、予め決められたルールに従ってSQLの記述方法を元に決定する方法や、検索対象テーブルのデータ分布特性を考慮して決定する方法がある。一般には、検索対象テーブルのデータ分布特性を考慮して決定する手法がより高速にデータを取得できるとされている。
【0040】
経年劣化検出部13は、データモデル記憶部13a、データ分布算出部13b、データ分布差異算出部13c、および性能判定部13dによって構成されており、プログラム制御部11からの命令により起動する。この起動命令は、データ分布差異算出部13cで受ける。
【0041】
なお、HIS1内に複数のDBMSが搭載されている場合には、特定のDBMSを指定するための識別情報を起動命令に含めることにより、特定のDBMSのみを検出対象にすることができる。また、1つ以上の対象テーブル名を指定することで、指定されたテーブルのみを検出対象にすることができる。これにより、経年劣化の判定に必要となる処理時間やCPU負荷を低減することが可能となる。
【0042】
データモデル記憶部13aは、DBMS12で管理されるデータテーブルのうち、データアクセス速度に影響を与えるデータテーブルの特性値をデータモデルとして記憶する。データアクセスには、データ検索、データ登録、およびデータ更新などが含まれる。
【0043】
データモデル記憶部13aは、設計時点で想定されたデータモデルを少なくとも1つ記憶すればよいが、複数のデータモデルを記憶することにより、後述の性能判定部13dにおける判定処理をより高精度に行うことが可能となるため、複数のデータモデルを記憶することが好ましい。
【0044】
例えば、複数のデータモデルとして、1受診当たり10件の検体オーダ項目を想定したデータモデル、および1受診当たり100件の検体オーダを想定したデータモデルなどが考えられる。データモデルとしては、データ件数、データのカーディナリティをデータモデル特性値として持つのが良いがそれに限定されるわけでない。
【0045】
図4は、データモデル記憶部13aに記憶されるデータモデルの特性値の情報例を示す。
【0046】
「カルテ情報」のデータテーブルにおける「標準型小規模」のデータモデルには、特性値として「10,000」が記憶され、「リハビリ型小規模」のデータモデルには、特性値として「10,000」が記憶されている。
【0047】
「リハビリオーダ情報」のデータテーブルにおける「標準型小規模」のデータモデルには、特性値として「1,000」が記憶され、「リハビリ型小規模」のデータモデルには、特性値として「300,000」が記憶されている。
【0048】
「処方オーダ情報」のデータテーブルにおける「標準型小規模」のデータモデルには、特性値として「30,000」が記憶され、「リハビリ型小規模」のデータモデルには、特性値として「1,000」が記憶されている。
【0049】
「検体オーダ情報」のデータテーブルにおける「標準型小規模」のデータモデルには、特性値として「500」が記憶され、「リハビリ型小規模」のデータモデルには、特性値として「500」が記憶されている。
【0050】
データモデル記憶部13aは、データ分布差異算出部13cからの要求によって、記憶しているデータモデルの情報を戻す。データ分布差異算出部13cからの要求には、データモデルを識別する番号、データモデルの特性値、およびデータモデルの特性値の範囲のうち、少なくともいずれか1つを含む。
【0051】
データ分布算出部13bは、データ分布差異算出部13cから、データモデルで定義されたデータテーブルを評価項目として取得する。データ分布算出部13bは、データ分布差異算出部13cからの要求によって、取得した評価項目に対応する実データをDBMS12のデータベースから検索し、その特性値をデータ分布として算出する。この算出処理は、予め所定時間毎(例えば、1か月毎)に実行してDBMS12のデータベースに保存し、それを読み込むようにしてもよい。
【0052】
図5は、データ分布算出部13bで算出されるデータ分布の情報例を示す。
【0053】
図5に示す例では、「カルテ情報」の評価項目に対応する実データの特性値として「1,000」が算出され、「リハビリオーダ情報」の評価項目に対応する実データの特性値として「100」が算出され、「処方オーダ情報」の評価項目に対応する実データの特性値として「3,000」が算出され、「検体オーダ情報」の評価項目に対応する実データの特性値として「50」が算出されている。
【0054】
データ分布差異算出部13cは、データモデル記憶部13aに記憶されているデータモデルの情報を戻すように要求する。またデータ分布差異算出部13cは、データ分布算出部13bに対して、データモデルで定義された評価項目(データテーブル)に対応する実データの特性値をデータ分布として算出するように要求する。
【0055】
データ分布差異算出部13cは、データモデル記憶部13aから戻されたデータモデルの情報に含まれる特性値と、データ分布算出部13bで算出された実データの特性値の間の差異を算出する。
【0056】
例えば、データ分布差異算出部13cは、全ての評価項目に対して差異の算出を準備するが、データモデル記憶部13aに記憶されているデータモデルの当該評価項目の値と、データ分布算出部13bから取得した特性値の差が、予め設定された値よりも大きくなったときに、即座にデータ分布に差異があると判断し、それ以降の評価項目については差異の算出を行わないようにする。
【0057】
なお、上述の差異算出方法の場合、処理時間を短縮することができるが、判定対象全体の特性を評価しているとは言えないため、後述する性能判定部13dによる性能判定の正確性が低下する可能性がある。従って、他の差異算出方法として、予め評価項目に重み付けをし、全ての評価項目に対してデータ分布差異を算出し、差異の合算値で判断するようにしてもよい。
【0058】
図6は、データ分布差異算出部13cで算出されるデータ分布差異の情報例を示す。
【0059】
図6に示す例では、「カルテ情報」の評価項目における「標準型小規模」のデータモデルの特性値と実データの特性値の差異として「9,000」が算出され、「リハビリオーダ情報」の評価項目における「標準型小規模」のデータモデルの特性値と実データの特性値の差異として「900」が算出され、「処方オーダ情報」の評価項目における「標準型小規模」のデータモデルの特性値と実データの特性値の差異として「27,000」が算出され、「検体オーダ情報」の評価項目における「標準型小規模」のデータモデルの特性値と実データの特性値の差異として「650」が算出されている。
【0060】
データ分布差異算出部13cは、データモデルの特性値と実データの特性値の間の差異算出結果を性能判定部13dに供給する。算出結果には、例えば、次のような情報が含まれており、(1)乃至(5)のいずれかの情報が性能判定部13dに供給される。
【0061】
(1)データモデル特性値と実データ特性値との差、および適用されているデータモデルの識別情報
(2)データモデル特性値と実データ特性値との差をデータモデル特性値の種別に応じて重み付けした値、および適用されているデータモデルの識別情報
(3)データモデル特性値と実データ特性値の差を予め定義された閾値に従って分類して値付けしたもの、および適用されているデータモデルの識別情報
(4)データ分布算出部13bで算出された実データの特性値、および適用されているデータモデルの識別情報
(5)データ分布算出部13bで算出された実データの特性値、および適用されているデータモデルのデータモデル特性値
性能判定部13dは、データ分布差異算出部13cから供給された算出結果に基づいて、データモデル記憶部13aに記憶されているデータモデルが適切であるか否かを判定し、判定結果をGUI制御部14に供給する。
【0062】
例えば、性能判定部13dは、上述した(1)のデータモデル特性値と実データ特性値との差異である図6に示したような情報を算出結果として取得した場合、適用されているデータモデルよりもデータ件数が少なく、かつ、データ分布比率(カルテ情報:リハビリオーダ情報:処方オーダ情報:検体オーダ情報)も適用データモデルと同等であることから、適用データモデルが適切であると判定する。
【0063】
データ分布比率については、予め定めたルールにより、同等か否かの判断を行うようにすれば良い。
【0064】
例えば、カルテ情報の件数で各データ件数を割り、元の比率との差が±30%以内であれば、データ分布比率が適用データモデルと同等であると判断する。
【0065】
また例えば、カルテ情報の件数で各データ件数を割り、各データモデルとの比率の距離をそれぞれ算出し、距離が最小となるデータモデルと適合していれば、データ分布比率が適用データモデルと同等であると判断する。この場合には、適切なデータモデルが何であるかについての情報を含めた判定結果をGUI制御部14に供給することができるため、より利便性が向上する。
【0066】
GUI制御部14は、性能判定部13dから供給された性能判定結果に基づいて、適用されているデータモデルが、適切である旨、または不適切である旨のメッセージを図示せぬ表示装置に表示させる。またGUI制御部14は、適用データモデルが不適切である旨のメッセージとともに、適用データモデルを更新するための操作方法を提供するGUIも表示させる。
【0067】
なお、図2に示した機能構成例では、経年劣化検出部13が、HIS1の内部に設けられているが、これに限らず、HIS1の外部に設けるようにしても勿論良い。
【0068】
また、データモデル特性値として、データテーブルに登録されているデータの件数を例に挙げ説明したが、これに限らず、データのカーディナリティ、各カラムのデータサイズの平均値、および、DBMS12で管理されるデータベースのディスク記憶領域情報などを特性値に含めるようにしてもよい。
【0069】
次に、図7のフローチャートを参照して、HIS1が実行する経年劣化判定処理について説明する。
【0070】
ステップS1において、データ分布差異算出部13cは、データモデル記憶部13aからデータモデルの特性値を取得する。これにより、例えば、図4に示したようなデータモデル特性値が取得される。
【0071】
またデータ分布差異算出部13cは、データ分布算出部13bに対して、データモデルで定義された評価項目に対応する実データの特性値をデータ分布として算出するように要求する。
【0072】
ステップS2において、データ分布算出部13bは、データ分布差異算出部13cから、データモデルで定義されたデータテーブルを評価項目として取得する。これにより、例えば、「カルテ情報」、「リハビリオーダ情報」、「処方オーダ情報」、および「検体オーダ情報」の評価項目が取得される。
【0073】
ステップS3において、データ分布算出部13bは、ステップS2の処理で取得した評価項目に対応する実データをDBMS12のデータベースから検索し、その特性値をデータ分布として算出する。これにより、例えば、図5に示したようなデータ分布が算出される。
【0074】
ステップS4において、データ分布差異算出部13cは、ステップS1の処理で取得したデータモデル特性値と、ステップS3の処理でデータ分布算出部13bにより算出された実データの特性値の間の差異を算出する。これにより、例えば、図6に示したような差異が算出される。
【0075】
ステップS5において、性能判定部13dは、ステップS4の処理による算出結果である、データモデル特性値と実データの特性値の差異から、適用モデルが適切か否かを判定する。
【0076】
図6に示した例では、適用されているデータモデルよりもデータ件数が少なく、かつ、データ分布比率も適用データモデルと同等であるため、適用モデルが適切であると判定される。
【0077】
これに対して、適用されているデータモデルよりも実データのデータ件数が多かった場合や、データ分布比率と適用データモデルの比率との差が所定値を超えていた場合などは、適用データモデルが適切ではないと判定される。
【0078】
ステップS6において、性能判定部13dは、ステップS5の処理による判定結果に基づいて、適切または不適切である旨のメッセージを表示装置に表示させる。また適用データモデルが不適切であると判定された場合には、適用データモデルが不適切である旨のメッセージとともに適用データモデルを更新するための操作方法を提供するGUIを表示装置に表示させる。
【0079】
以上のように、性能劣化を判定するために、データアクセス速度に影響を与えるデータテーブルを評価項目として抽出し、その評価項目のデータモデル特性値と実データ特性値との差異を算出するようにしたので、時間的な制約もなく、より好適に性能劣化を判定することが可能となる。
【0080】
従って、実際のデータ分布が設計時に想定していたデータモデルと異なると判定された場合には、性能が劣化している、つまり、DBMS12において、想定外のデータ取得アルゴリズムが適用されてデータ取得性能が低下していると判断される。このような場合には、表示装置に表示されたGUIに従い、新たなデータモデルを適用するように更新を行えばよい。
【0081】
なお、以上においては、HIS1を例に挙げ説明したが、勿論、RIS2、DICOMサーバ3、および医用画像撮影装置4などにも適用することが可能である。
【0082】
この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 HIS
2 RIS
3 DICOMサーバ
4 医用画像撮影装置
12 DBMS
13 経年劣化検出部
13a データモデル記憶部
13b データ分布算出部
13c データ分布差異算出部
13d 性能判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療データを保存して管理するデータベースを有する医療情報システムにおいて、
データモデルの特性値を記憶するデータモデル記憶手段と、
前記データモデルに対応する前記医療データの特性値をデータ分布として算出するデータ分布算出手段と、
前記データモデルの特性値と、前記データ分布算出手段により算出された前記医療データの特性値の差異を算出するデータ分布差異算出手段と、
前記データ分布差異算出手段により算出された差異に基づいて、性能を判定する性能判定手段と、
を備えることを特徴とする医療情報システム。
【請求項2】
前記データモデル記憶手段は、データアクセス速度に影響を与える項目の特性値を記憶することを特徴とする請求項1に記載の医療情報システム。
【請求項3】
前記性能判定手段は、前記データモデル記憶手段に記憶されている前記データモデルが適切であるか否かを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療情報システム。
【請求項4】
前記データモデルの特性値は、データ件数、データのカーディナリティ、各カラムのデータサイズの平均値、および、前記データベースのディスク記憶領域情報のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医療情報システム。
【請求項5】
医療データを保存して管理するデータベースと、
データモデルの特性値を記憶するデータモデル記憶手段と
を有する医療情報システムが備えるコンピュータに、
前記データモデルに対応する前記医療データの特性値をデータ分布として算出するデータ分布算出ステップと、
前記データモデルの特性値と、前記データ分布算出ステップで算出された前記医療データの特性値の差異を算出するデータ分布差異算出ステップと、
前記データ分布差異算出ステップで算出された差異に基づいて、性能を判定する性能判定ステップと、
を実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−39936(P2011−39936A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188613(P2009−188613)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】