説明

医療情報提供システム

【課題】多くの医療情報の中から利用者にとって必要な情報を選択して提供すること。
【解決手段】医療、健康、介護の少なくとも1つにかかる個人情報が保存されている複数のデータベース5と複数の端末12とに電気的通信回線2を介して接続された情報提供システム1は、端末から送信された個人識別情報と医療情報を使用する使用者の役割と使用者が個人情報を使用する使用場面と、医学的症状とを受信する手段と、個人識別情報と使用者の役割と使用場面と症状とに基づいて個人情報を前記複数のデータベースから収集するデータ収集部22と、使用者の役割と使用場面と症状とに基づいて個人に対する処置に関する複数の候補を推定する行動プラン構築部25と、端末から複数の候補の中から所望とする処置の選択に関する情報を受信したとき、処置が実行されたと仮定した場合の将来的な個人の状態を予測する状態予測部30と、収集した個人情報、推定した複数の候補の情報、および予測された将来的な個人の状態の情報を端末に送信する手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデータベースに記憶されている医療情報を提供する医療情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる医療機関で行われた診療、治療、投薬等の医療情報を一元的に収集する医療情報システムが特開2002−73807号公報に記載されている。異なる医療機関の医療情報を相互に利用できる医療支援システムが特開平11−45304号公報に記載されている。
【0003】
複数の機関のデータベースから医療情報を収集した場合、多くの量の情報を収集することができる。しかし、その中には必要ではない情報も多く含まれており、多くの量の情報の中から必要とする情報を探し出すという手間や時間が必要とされる。それだけでなく場合によっては、必要不可欠な情報を見落としてしまう事態も起こり得る。
【特許文献1】特開2002−73807号公報
【特許文献2】特開平11−45304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、医療情報提供システムにおいて、多くの医療情報の中から利用者にとって必要な情報を選択して提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある局面は、医療、健康、介護の少なくとも1つにかかる個人情報が保存されている複数のデータベースと複数の端末とに電気的通信回線を介して接続された情報提供システムにおいて、前記端末から送信された個人識別情報と医療情報を使用する使用者の役割と前記使用者が個人情報を使用する使用場面と、医学的症状とを受信する手段と、前記個人識別情報と、前記使用者の役割と、前記使用場面と、前記症状とに基づいて個人情報を前記複数のデータベースから収集する手段と、前記使用者の役割と前記使用場面と前記症状とに基づいて前記個人に対する処置に関する複数の候補を推定する処置候補推定手段と、前記端末から前記複数の候補の中から所望とする処置の選択に関する情報を受信したとき、前記処置が実行されたと仮定した場合の将来的な前記個人の状態を予測する手段と、前記収集した個人情報、前記推定した複数の候補の情報、および前記予測された将来的な個人の状態の情報を前記端末に送信する手段とを具備することを特徴とする情報提供システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、医療情報提供システムにおいて、多くの医療情報の中から利用者にとって必要な情報を選択して提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステム及び医療情報提供システムは、基本的に、医療、健康、介護にかかる個人情報が保存されている複数のデータベースに電気的通信回線を介して接続されており、これら複数のデータベースから、患者を特定する個人識別情報だけでなく、個人情報を使用する使用者(ユーザ)の役割(医者、看護士、救急救命士、介護士等)と、使用者が個人情報を使用する使用場面(診断、治療、看護、介護等)と、患者の症状を使って、それらに対応する医療情報を収集することにより、使用者が有用な又は有用とされる可能性の高い情報を使用者に提供することを可能にするように構築されたシステムである。そのために本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステム及び医療情報提供システムに必要とされる機能としては以下の通りである。
【0008】
・個人が生まれてから、死ぬまでの全ての健康、医療、福祉に関する個人情報の保管場所を特定することができる
・EBM(Evidence Based Medical)などの診断、治療ガイドラインや最新の研究成果の情報を収集できる
・ある処理を患者に施すことを仮定した場合においてその処置により当該患者が将来的に如何なる状態に至るかを予測するシミュレーション機能を持つ
・インターネットや電話回線、さらには無線通信網等の様々な種類の電子的通信回線を経由して繋がっている複数の個人情報データベースから使用者が有用な又は有用とされる可能性の高い情報を検索する検索機能を持つ
・情報の表示機能を持つ
・様々な種類のネットワークに対してアクセス可能である
・情報使用者を認識できる
・使用者がどのような環境で、どのような情報を必要としているかを特定できる
・必要な情報のみを、使用者が理解しやすい形式で表示する
・他人に開示してよい情報と開示したくない情報を区別できる
・セキュリティー機能を持つ
・プライバシー保護機能を持つ
・バーチャルペーシェントボディ(Virtual Patient Body)を表示することができる
・個人情報を複合的に使用することにより、それぞれ単独で使用する以上の情報を引き出すことを可能にする
・個人情報の使用者、例えば医師、技師、看護婦、本人、保険者などそれぞれの役割に応じた情報を選別して見やすい形式で表示する
・使用者、例えば医師、技師、看護婦、本人、保険者などが個人情報を使用する状況(使用場面(シーン))、例えば、医師がその患者が急患で運ばれてきた場面で使うのか、それとも健康診断場面で使うのか等に応じて個人情報を選別して見やすい形式で表示する
・必要な情報を特定する
・情報をどのように(位置、順番、2次元、3次元など)見せるべきか決定できる
・必要な情報が存在するかを認識できる
・必要なのに保管されていない情報を特定できる
・必要なのに保管されていない情報を入手して保管することを促すことができる
・いつでも、どこでもこの情報を閲覧、使用することができる環境にする
・不足している情報を利用者に知らせ、その情報を追加入力できる
・リアルタイムに患者の個人情報を収集し、保管することができる(体温、脈拍、血圧、尿検査結果、便検査結果、心電図、脳波)
ここで、本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステム及び情報提供システムに必要とされる機能を使用者の役割で分類すると次の通りである。
(使用者が医師の場合)
・患者診療情報から、要注意部位と診断結果情報、EBM情報や最新の研究成果を表示できる
・推論した病名等の診断結果を基に、そのときのベストな治療プランを提示する
・最適な診断・治療パス(クリティカルパス)を提示できる。複数提示して、利点、欠点を表示し、使用者に判断の材料を与えることもできる ・患者症状を入力し、疾病の可能性を数値表示することができる
・医療画像を任意に重ね合わせることができ、単独で観察する以上の価値を引きだすことができる ・薬学情報を表示できる ・患者が健康であると仮定した場合には、こうであるはずであるという標準データを持ち合わせ、これと実際の患者の医療情報を比較することで、疾病を見つけることができる。比較する標準データは、年齢や性別、体重、身長などの特徴に喫煙飲酒の有無などの情報をもとに作成される。このデータは標準データであることは必須ではなく、患者がこうなりたいという願望のデータであっても良い ・過去・現在の健康状態トレンドから将来への健康状態を予想することができる(使用人が看護婦・保健婦の場合)
・バーチャルペーシェントに接続することで、昔からの知り合いのように患者さんを理解し、お世話ができる
・患者の嗜好がわかる(巨人が好き等)
・患者の家族構成、生い立ち、苦労話
・患者本人の状態(肌のつやがよい、目つきがしっかりしている、何となくだるそう等)が分かる
・患者本人の希望する看護方針(打つも話しかけて欲しい、ほっといて欲しい、外出したい等)
・過去・現在の健康状態トレンドから将来への健康状態を予想し、疾病にならないような予防方法を指導できる(使用人が放射線技師、放射線科の医師の場合) ・既往歴、アレルギー情報が分かる ・過去に収集した画像、レポート、読影医が分かる
(使用人が本人の場合)
・現在の健康状態が把握できる
・自分が何時、死ぬかが予想できる
・現在の疾病の病名が分かる
・原因を知ることができる
・治療方法を複数知ることができる
・それぞれの治療方法にかかる、費用、期間、病院施設、医師名、リスク(死亡率、副作用など)、メリットが分かる
・自分が将来、なると予想される疾病と時期を知ることができる
・予防方法を知ることができる
・急に体調を崩したら、リアルタイムで患者の医療情報(身長、体重、体温、脈拍、血圧、尿検査結果、便検査結果、心電図、脳波)を収集し、最適な医師に自動的に連絡を行い、本人が対応可能な場合には患者に指示を与える。もし、本人が対応ができない場合には、重傷度と本人の理想的と考えている対応方法に応じた最適な対応が自動で行われる
・理想の自分の体を認識し、手に入れる方法を知ることができる。
【0009】
・心のケア-をしてくれる、してくれる人を紹介できる、相談相手になってくれる
・患者として病院を受診する権利を売買できる
・自分の疾病の状態を公開して、各病院に公開し、オークションを開くことができる(価格、期間、入院施設の充実度、快適性など)
・使用者が保険者の場合
・過去・現在の健康状態トレンドから将来への健康状態を予想し、保険料を算出できる
・それぞれの治療方法にかかる、費用、期間、病院施設、医師名、リスクを提示できる
・患者として病院を受診する権利を売買できる
図1には以上の機能を考慮した本システムの概要を示している。本実施形態に係るシステムのバーチャルペーシェントエージェントエンジンには、一人の患者に関する全診療情報を時空間的な制約を受けずにスムーズに取り出すことができる、医慮情報を使用するシーン(使用場面)や医療情報の使用者にマッチした必要な情報だけに絞って提供できる、患者診療情報から要注意部位と診断結果情報、EBM情報を提供できる、推論した診断結果を基にそのときベストと想定できる複数の治療プランの候補を提供できる、バーチャルペーシェントとして不足している情報を使用者に知らせてその情報を追加入力できる、といった仕様が求められている。
【0010】
また、図2に示すように、本実施形態に係るシステムのバーチャルペーシェントエージェントエンジンの基本的な機能としては、膨大な情報の中から使用者の役割に応じて情報を選別して提供するものであり、例えば医者や放射線科医であれば、診断の支援となり得る情報、診断結果の確からしさを確認できる情報、画像診断の支援となり得る情報を提供し、また看護婦には、次の看護処置、治療プランの支援情報を提供し、技師には、画像作成プラン情報、撮影手順(プロシージャ)の支援情報を提供し、患者に対しては、インフォームドコンセント(承諾内容)、病気等の予防知識に関する情報を提供し、さらに病院の院長が使用者であれば、病院経営にとって有益と考えられる患者の死亡率、転院率、収益、経費に関する情報を提供し、保険会社には医療費や医療コストさらには死亡率に関する情報を提供し、製薬会社には投薬効果や副作用に関する情報を提供する。
【0011】
本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムは、病院の放射線部門システム、電子カルテシステム及び病棟部門システム、診療所、家庭に設置されているコンピュータシステムに繋がっており、これらコンピュータシステムの記憶装置やデータベースシステムに分散して保管されている医療情報を上述した使用者の役割当に応じて選別して収集して、その情報を要求している端末にサーブする。
【0012】
ここで、図3に示すように、使用者が医者である場合、本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムでは、バーチャルボディ(仮想患者の全身像)を画面に表示する。複数のバーチャルボディが、性別、年令、体型等に応じて事前に用意されている。複数のバーチャルボディは、患者の性別、年令、体型等に従って選択される。バーチャルボディ上である部位がポインタで指示されたとき、その指示された部位を認知し、当該患者であって指示された部位に関連する医療情報を、電子的通信回線を介して繋がっている複数のデータベースから収集する。収集した情報に基づいて患者の病名等を推論し、その推論結果を収集情報と共にバーチャルボディの対応する位置に表示する。推論処理に際して不足する情報があれば、その不足情報の入力を促すためのメッセージを画面上に表示する。このような情報提供によると使用者である医者は、患者に関する様々な医療情報をバーチャルボディを介して効率的に入手し、またその推論された病名等を認識することができる。
【0013】
図4、図5には、実際の表示画面の一例を示している。患者氏名、患者IDとともに、使用者(ユーザルール)、使用場面(シーン)に関する入力情報が表示される。図4の例では、使用者として患者本人、使用場面には病院でのインフォームドコンセントとして患者に治療プランの説明とその承諾という場面が仮定されている。図5の例では、使用者として救急救命士、使用場面には救急車内での遠隔診断という場面が仮定されている。
【0014】
バーチャルボディ(仮想患者の全身像)上で胸部が指示されたとき、複数のデータベースから収集された胸部に関わる医療情報又はそのリストが「現在の状態/診断結果(Current Condition/Diagnosis)」の欄に表示される。リスト名がクリックされたとき、その詳細な医療情報が別ウインドウが開いて表示される。
【0015】
「現在の状態/診断結果」の欄の横には、「行動プラン(Action Judgment)」として図4の例では複数の治療プランが表示され、図5の例では複数の搬送プランが表示される。図4において、各治療プランの詳細ボタン(Detail)をクリックすると、その治療プランの詳細情報が別ウインドウが開いて表示される。図5の例では、搬送プランとして、搬送先病院と担当医師氏名が表示される。
【0016】
さらに、「行動プラン」の欄の横には、それぞれの行動プラン(ここでは治療プラン)が実行されたと仮定した場合に予測される「治療効果の将来的な見込み(Futre Expectation)」として、生活品質QOL(Quality Of Life)、EBM(Evidence Based Medicine)、死亡率(Mortality)が表示される。
【0017】
図6には、図4や図5の表示を実現するための本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの処理手順の概要が示されている。ここでは入力部から使用者、場所、時刻が入力されると、それに基づいて使用者の役割、場面を判断する(S1、S2)。判断した使用者の役割、場面に応じた当該患者に関する医療情報を複数のデータベース(DB)から収集し(S3)、収集した医療情報に基づいて患者の状態、つまり病名を推論する(S4)。推論した患者の状態に応じた対処プランを構築する(S5)。プラン構築にあたっては、プランでの対象となる診断や治療にに関連する医療情報を複数のデータベース(DB)から収集し(S6)、プラン構築にフィードバックされる。他の系統では、医師等が想定している医療行為が入力される(S7)。この医療行為に従って、当該医療行為を実際に患者に対して実施したと仮定した場合に将来的な患者の状態を予測する(S8)。S4で推論した病名、S5で構築したプラン、S8で予想した将来の患者の状態を、利用者の役割及び場面に応じて選別し、ディスプレイの画面に表示する(S9)。
【0018】
図7、図8には、本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの処理手順について、入力部、データベース、出力部(表示部)との関係において示している。まず、バーチャルペーシェントシステムの入力部からバーチャルペーシェントエンジンに情報提供要求が出されると、バーチャルペーシェントエンジンは入力部に対して使用者を特定する情報としてここではユーザIDの入力を要求する。この要求に呼応して入力部からバーチャルペーシェントエンジンに供給されたユーザIDに基づいて認証確認するとともに、使用者及びその役割を特定する。続いて、バーチャルペーシェントエンジンは入力部に対して対象患者を特定する情報としてここでは患者IDの入力を要求する。この要求に呼応して入力部からバーチャルペーシェントエンジンに患者IDが供給される。次に、バーチャルペーシェントエンジンは入力部に対して利用場所(場面)に関する情報の入力を要求する。この要求に呼応して入力部からバーチャルペーシェントエンジンに場面情報が供給される。この場面情報は使用者が手動で入力してもよいし、入力部が設置されている場所に置かれたセンサからの出力に応じて入力されるようにしても良い。バーチャルペーシェントエンジンは、特定された使用者、その役割、場面に対応する表示画面のテンプレートを選択する。
【0019】
続いて、バーチャルペーシェントエンジンは、使用者の役割、場面に対応する情報の種別を特定し、当該患者に関するものであって、特定した情報種別に対応する医療情報を収集するために、複数のデータベースに対して情報収集要求を送信する。データベースは、当該患者のID及び情報種別をキーとして検索し、その結果として炉地出した当該患者に関するものであって、特定した情報種別に対応する医療情報を、バーチャルペーシェントエンジンに送信する。
【0020】
バーチャルペーシェントエンジンは、受信した医療情報とともに、患者の症状当に基づいて、患者状態、つまり病名等を推論する。この推論は、例えばニューロコンピュータを利用して行われる。バーチャルペーシェントエンジンは、推論した患者の状態に対して、診断プランや治療プランに関する複数の候補を構築するとともに、それら複数のプラン候補に関連する医療情報を複数のデータベースから収集する。バーチャルペーシェントエンジンは、複数のプラン候補を、データベースから収集したプラン関連情報に応じて予測した「治療効果の将来的な見込み(Futre Expectation)」とともに、テンプレートに適合させて入力部に送信する。入力部は、図4や図5に示した画面を表示する。入力部において任意のプラン候補の「詳細」ボタンがクリックされたとき、バーチャルペーシェントエンジンは、その詳細情報として、収集したプラン関連の医療情報等を入力部に送信する。入力部では、その詳細情報が表示される。
【0021】
入力部において、仮想的な医療行為が入力されたとき、その医療行為に適合する複数のプラン候補を構築するとともに、それら複数のプラン候補に関連する医療情報を複数のデータベースから収集する。バーチャルペーシェントエンジンは、複数のプラン候補を、データベースから収集したプラン関連情報に応じて予測した「治療効果の将来的な見込み(Futre Expectation)」とともに、テンプレートに適合させて入力部に送信する。入力部は、図4や図5に示した画面を表示する。入力部において任意のプラン候補の「詳細」ボタンがクリックされたとき、バーチャルペーシェントエンジンは、その詳細情報として、収集したプラン関連の医療情報等を入力部に送信する。入力部では、その詳細情報が表示される。
【0022】
以上のように本実施形態に係るシステムは、使用者の役割や場面等に応じて予め使用者が必要とするであろう情報種別を絞り込み、その種別に応じた医療情報を複数のデータベースから集めてくることを基本的な特徴としており、それとともに、その情報からプラン候補を構築し、また各プラン候補の「治療効果の将来的な見込み」を予測し、図4、図5のように表示することを特徴としている。
【0023】
図9には、本実施形態の医療情報提供システムを含む全体像を示している。医療情報提供システム1は、インターネット回線、公衆電話回線等の有線又は無線等による複数種類の電子的通信回線2,3,4に接続可能なように複数種類の通信機器を装備している。複数種類の電子的通信回線2,3,4を経由して、医療情報提供システム1は、様々なデータベース5,6,7,13,14,15、さらに病院内情報システム8内の心電計9、超音波診断装置10、X線診断装置11等の患者の現在状態に関する様々な医療情報を取得可能な各種の検査装置に接続されており、データベース5,6,7,13,14,15に保管されている医療情報や検査装置9、10、11の検査により取得された現在の患者状態等に関する医療情報を広く収集することができる環境にある。また、医療情報提供システム1は、上述した入力部としての診察室等に固定された端末12,16、さらに救急車等の移動車両に装備されている又はポータブル式の移動端末17に接続されている。
【0024】
図10には、医療情報提供システム1の主要部の構成を示している。なお、ベーチャルペーシェントシステムは、医療情報提供システム1を構成する構成要素の一部、つまり通信部20、入力部21、データ収集部22、将来症状の予測部30、表示情報選別部28、画面構築部29から構成される。
【0025】
通信部20は、複数種類の電子的通信回線2,3,4にそれぞれ対応する複数種類の通信機器を備えている。入力部21は、端末12、16、17から電子的通信回線2、3、4及び通信部20を経由して患者氏名等の患者識別情報、患者の症状、使用者の役割、情報の使用場面、認証コード等の初期情報、さらにプラン候補の選択、診断や治療の医療行為に関する情報を入力し、必要な情報の入力を促す処理情報の選別や認証処理を実行するために構成されている。
【0026】
データ収集部22は、患者の症状、使用者の役割、使用場面に従って使用者がその場面で必要としているであろう情報の種別を特定するとともに、その特定した情報の種別と患者識別情報に対応する医療情報を複数のデータベース5、14、15から収集するために構成されている。患者の症状、使用者の役割、使用場面から、その使用者がその患者に対してその場面で必要としているであろう情報の種別を特定するために、例えば、患者の症状、使用者の役割、使用場面を入力として、情報の種別を出力とするよう構成されたテーブル(ROM又は不揮発性メモリ)23がデータ収集部22に接続されている。
【0027】
患者の病名推論部24は、患者の症状、複数のデータベース5、14、15から収集された医療情報に基づいて患者の病名を推論する。推論エンジンには、例えば、入力された又はデータベースから収集された医療情報の中の患者の症状、性別、年令、体格、生活習慣、患者の既往歴、現在の通院記録、血液等の検査結果を入力として、患者の病名を出力とするニューロコンピュータが採用される。
【0028】
行動プラン構築部25は、推論された病名に基づいて、使用者が次に実施すべき診断、治療、救急時の初期治療、介護等に関する複数種類の行動プランの候補を構築するために構成されている。病名に対する1又は複数の行動プランの候補は、使用者の役割及び場面に応じてほぼ決まる。例えば、患者の病名、使用者の役割、使用場面を入力として、複数の行動プランの候補を出力とするよう構成されたテーブル(ROM又は不揮発性メモリ)32が行動プラン構築部25に接続されている。
【0029】
対処プラン関連の医療情報収集部26は、構築された複数の行動プランの候補に対して、それに関連する医療情報を特定のデータベース、例えば薬剤情報データベース7や研究機関の最新医療情報データベース13から収集するために構成されている。行動プラン候補には少なくとも1つの処置が含まれており、この処置を入力として、少なくとも1つの情報種別を出力とするよう構成されたテーブル(ROM又は不揮発性メモリ)27が対処プラン関連の医療情報収集部26に接続されている。
【0030】
将来の症状の予測部30は、当該患者に対して各行動プランには含まれる少なくとも1つの処置を施したと仮定した場合における将来的な当該患者の症状(状態変化)を予測するために構成されている。予測エンジンには、例えば、入力された又はデータベースから収集された医療情報の中の患者の症状、性別、年令、体格、生活習慣、患者の既往歴、現在の通院記録、血液等の検査結果、処置内容、投与する薬剤の種類、投与する薬剤の量、最新医療情報等を入力として、将来的な当該患者の症状として、ここでは生活品質QOL(Quality Of Life)、EBM(Evidence Based Medicine)、死亡率(Mortality)を出力とするニューロコンピュータが採用される。
【0031】
表示情報選別部28は、データ収集部22で収集された医療情報、推論部24で推論された病名、構築部25で構築された複数の行動プランの候補、対処プラン関連の医療情報収集部26で収集された対処プラン関連の医療情報、さらに予測部30で予測された将来の症状を、情報を使用する使用者の役割、情報を使用する場面、及び使用者に許可されているアクセス権限に従って選別するために構成されている。画面構築部29は、表示情報選別部28で選別された医療情報を、テンプレートに適合することにより表示画面を構築するために構成されている。この表示画面のデータは通信部20、端末12、16、17に対応する通信回線(ネットワーク)2、3、4を経由して使用者側の端末12、16、17のいずれかに送信される。
【0032】
図11、図12、図13には、本実施形態における主要な動作を示している。使用者、例えば医師により自分の診察室内の端末12を介してユーザIDを入力し、ログイン要求を医療情報提供システム1に送信すると、医療情報提供システム1ではユーザIDに従って認証確認し、ログインを許可する。ログイン許可後、医療情報提供システム1の入力部21は、端末12に対して患者情報の入力を要求する。入力部21は、端末12から患者ID、患者氏名、性別、年齢、症状等の患者情報を受信確認後、今度は、端末12に対して使用情報の入力を要求する。入力部21は、端末12から使用者の役割、使用場面に関する情報を受信確認後、データ収集部22に対して、患者の症状、使用者の役割、使用場面のデータと共に、データ収集トリガを出力する。データ収集部22では、患者の症状、使用者の役割、使用場面に従って使用者がその場面で必要としているであろう情報の種別を特定する。またデータ収集部22は、当該患者に関する情報であって、特定した情報の種別に係る医療情報の提供を、複数種類の回線2,3,4を経由して繋がっている全て又は一部の複数のデータベース5、14等に対してそれぞれの通信プロトコルに従って要求する。そのリクエストに呼応して、複数のデータベース5、14等では、患者ID、情報の種別に従って検索をし、ヒットした情報が存在する時には、その医療情報を取り出して、医療情報提供システム1のデータ収集部22に送信する。また、データ収集部22は、特定した情報種別の中に、当該患者に関する現在の検査情報に関する種別が含まれている場合、患者が現在存在する病院等の施設や救急車両等に設置又は装備されている検査装置9,10又は11に対して、検査の実行及び検査結果の返信を要求し、または遠隔操作を行う。それに呼応して検査が実行され、その検査結果がデータ収集部22に返信される。
【0033】
データ収集部22では収集した検査結果、医療情報を保持する。システム1の患者の病名推論部24は、入力された患者の症状、収集された医療情報、検査結果等に基づいて患者の病名を推論し、その推論した病名に基づいて行動プラン構築部25では、使用者が次に実施すべき診断、治療、救急時の初期治療、介護等に関する複数種類の行動プランの候補を構築する。続いて、対処プラン関連の医療情報収集部26では、構築された複数の行動プランの候補に対して、それに関連する医療情報の提供を、複数種類の回線2,3,4を経由して繋がっている特定のデータベース、ここでは薬剤情報データベース7や研究機関の最新医療情報データベース13等に対してそれぞれの通信プロトコルに従って要求する。そのリクエストに呼応して、薬剤情報データベース7や研究機関の最新医療情報データベース13等では、処置の内容、投与する薬剤の種類等で情報検索し、ヒットした情報が存在する時には、その薬剤や処置事例等に関する医療情報を取り出して、医療情報提供システム1の対処プラン関連の医療情報収集部26に送信する。
【0034】
収集した薬剤や最新医療情報、さらに入力された又はデータベース5、14等から収集された医療情報の中の患者の症状、性別、年令、体格、生活習慣、患者の既往歴、現在の通院記録、血液等の検査結果、処置内容、投与する薬剤の種類、投与する薬剤の量、最新医療情報等から、将来的な当該患者の症状として、例えば生活品質QOL(Quality Of Life)、EBM(Evidence Based Medicine)、死亡率(Mortality)を予測する。
【0035】
データ収集部22で収集された医療情報、推論部24で推論された病名、構築部25で構築された複数の行動プランの候補、対処プラン関連の医療情報収集部26で収集された対処プラン関連の医療情報、さらに予測部30で予測された将来の症状は、情報を使用する使用者の役割、情報を使用する場面、及び使用者に許可されているアクセス権限に従って表示情報選別部28で選別される。選別された情報は、画面構築部29において、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)のテンプレートに適合される。それにより図4や図5に示したようなGUI画面が構築される。このGUI画面のデータは通信部20、通信回線2を経由して使用者側の端末12に送信される。使用者側の端末12の画面には、図4、図5に示したような画面が表示される。
【0036】
画面上で、任意のプラン候補の「詳細」ボタンがクリックされたとき、画面構築部29はその詳細情報から詳細情報画面を構築し、その詳細情報画面のデータを端末12に返信する。端末12の画面には、詳細情報が表示される。端末12から仮想的な医療行為(例えば処置)が入力されたとき、医療情報収集部26により当該医療行為に関連する医療情報が複数のデータベース7,13から収集される。
【0037】
予測部30において、医療情報収集部26で収集した薬剤や最新医療情報、さらに入力された又はデータベース5、14等から収集された医療情報の中の患者の症状、性別、年令、体格、生活習慣、患者の既往歴、現在の通院記録、血液等の検査結果、処置内容、投与する薬剤の種類、投与する薬剤の量等から、将来的な当該患者の症状として、例えば生活品質QOL(Quality Of Life)、EBM(Evidence Based Medicine)、死亡率(Mortality)を予測する。
【0038】
予測部30で予測された将来の症状は画面構築部29でGUI画面に適合され、この将来の症状を表すGUI画面のデータは通信部20、通信回線2を経由して使用者側の端末12に送信される。使用者側の端末12の画面には、将来的な症状が表示される。
【0039】
以上のように本実施形態によると、いつでも、どこでも、健康、医療、福祉情報を必要なものだけ手に入れることが可能になる。また、単独で存在している情報を他の情報と融合させえることにより、情報の価値を増大させることが可能になる。つまり、多くの医療情報の中から利用者にとってその役割、およびその場面で必要な情報が選択されて提供され、また行動プラン、その詳細情報、さらにはそれに関連する最新医療情報、そして将来の症状の予測に至るまで幅広く提供され得る。それにより使用者は、患者に対して的確な行動を迅速に行い得る。
【0040】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステム及び医療情報提供システムの概要を示す図。
【図2】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの基本的な機能を示す図。
【図3】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの基本的な処理を示す図。
【図4】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムで提供される使用者として患者本人、使用場面として病院でのインフォームドコンセントに対応する表示画面の例を示す図。
【図5】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムで提供される使用者として救急救命士、使用場面として救急社内での遠隔診断に対応する表示画面の例を示す図。
【図6】図4及び図5の表示に対応する本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの処理手順の概要を示す図。
【図7】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの処理手順について、入力部、データベース、出力部(表示部)との関係において示す図。
【図8】本実施形態に係るバーチャルペーシェントシステムの処理手順について、入力部、データベース、出力部(表示部)との関係において示す図。
【図9】本実施形態に係る医療情報提供システムを含む全体構成を示す図。
【図10】本実施形態に係る医療情報提供システムの主要部の構成図。
【図11】本実施形態に係る医療情報提供システムの主要な動作の手順を示す図。
【図12】本実施形態に係る医療情報提供システムの主要な動作の手順を示す図。
【図13】本実施形態に係る医療情報提供システムの主要な動作の手順を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1…医療情報提供システム、2,3,4…電子的通信回線、5,6,7,13,14,15…医療情報データベース、8…病院内情報システム、9…心電計、10…超音波診断装置、11…X線診断装置、12,16,17…使用者端末、20…通信部、21…入力部、22…データ収集部、23,27,32…テーブル(ROM又は不揮発性メモリ)、24…患者の病名推論部、25…行動プラン構築部、26…対処プラン関連の医療情報収集部、28…表示情報選別部、29…画面構築部、30…将来症状の予測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療、健康、介護の少なくとも1つにかかる個人情報が保存されている複数のデータベースと複数の端末とに電気的通信回線を介して接続された情報提供システムにおいて、
前記端末から送信された個人識別情報と医療情報を使用する使用者の役割と前記使用者が個人情報を使用する使用場面と、医学的症状とを受信する手段と、
前記個人識別情報と、前記使用者の役割と、前記使用場面と、前記症状とに基づいて個人情報を前記複数のデータベースから収集する手段と、
前記使用者の役割と前記使用場面と前記症状とに基づいて前記個人に対する処置に関する複数の候補を推定する処置候補推定手段と、
前記端末から前記複数の候補の中から所望とする処置の選択に関する情報を受信したとき、前記処置が実行されたと仮定した場合の将来的な前記個人の状態を予測する手段と、
前記収集した個人情報、前記推定した複数の候補の情報、および前記予測された将来的な個人の状態の情報を前記端末に送信する手段とを具備することを特徴とする情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−76102(P2009−76102A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325309(P2008−325309)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【分割の表示】特願2003−49055(P2003−49055)の分割
【原出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】