説明

医療検査用カセット

【課題】薬液処理の際に隙間が生じ検体が流出するのを防止し、カセットの薬液浸漬時の浮力を軽減し、更に、薬液透過性及び薬液処理の均一性に優れた医療検査用カセットを提供する。
【解決手段】耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋とを具備してなり、カセット本体2は多数の透孔5を備えるとともに上向きに開口する検体収容部2aを少なくとも1個有し、蓋は多数の透孔5を備えるとともに下向きに開口する膨出部3aを少なくとも1個有し、検体収容部2a側の開口部と膨出部3a側の開口部のいずれか一方側に内嵌側壁4eが周設されるとともに、他方側に外嵌側壁4fが周設され、内嵌側壁4e及び外嵌側壁4fは双方ともカセット本体の底面部4a及び蓋の頂面部4cに対して略垂直であり、閉蓋時には内嵌側壁4e及び外嵌側壁4fの嵌合部と、蓋の膨出部3aと、カセット本体の検体収容部2aとからなる、独立した空間部4が形成されることを特徴とする医療検査用カセットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療検査用顕微鏡標本の作製に使用する医療検査用カセットに関し、更に詳しくは、薬液処理時に隙間から検体が流出することがなく、薬液の透過性に優れるとともに、検体を均一に薬液処理できる医療検査用カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のカセットは、図9および図10に示すように、耐薬品性合成樹脂からなるカセット本体C1と蓋C2とを具備してなる。カセット本体C1は、上面を開放した方形の容器で、底面部に多数の透孔C4を有し、短辺側の一側壁の外側に底面部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部C1bを設けている。蓋C2は、着脱可能な板状体で、板面に多数の透孔C4を有している。
【0003】
上記カセットCを使用して顕微鏡標本を作製するには、まず、図10に示すように、採取した検体Sをカセット本体C1内に収容して蓋C2を取り付け、記録部C1bに被検者の氏名等を記録しておく。
【0004】
続いて、透孔C4を通じて、検体Sを水洗し、アルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンPとの親和性を付与する。
【0005】
次に、図8に示すようなステンレス製の包埋トレイT内に液状パラフィンPを入れ、検体Sをカセット本体C1から取り出して液状パラフィンP中に置いて検体Sに液状パラフィンを浸透させる。続いて、トレイTの段部にカセット本体C1を載せ、カセット本体C1の底面部が液状パラフィンPに浸るまで、液状パラフィンPを検体S上に注ぎ足す(図11参照)。
【0006】
液状パラフィンPが固化した後トレイTを取り去ることにより、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底面部に付着してなるカセットブロックを得る。
【0007】
次に、図示しないが、ミクロトーム上にカセットブロックを裏返して載せて固定する。続いて、パラフィンPの検体Sを包埋した部分をスライスし、得られた薄片に染色、その他の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0008】
しかし乍ら、上記形状のカセットCにおいて、透孔C4はカセット本体C1の底面部及び蓋C2のみに設けられ、側壁には設けられていないため、薬液の透過性が必ずしも十分でなく、その結果、薬液処理の効率が不十分で、またカセットを薬液中に浸漬させて処理する場合には、カセット中の空気が逃げ難いため、浮力が大きく、容易に浸漬できず、その結果、薬剤処理の効率が悪いという問題がある。
【0009】
また、上記カセットは検体収容部が1個の場合を示したが、カセット本体C1の内部が壁により区画され複数個の検体収容部を有する場合においては、検体収容部の数が増加すればする程、透孔を設けていない壁の面積が増加するため上記現象は一層深刻なものとなる。
【0010】
このような欠点を解消するため、図12に示したような、カセット本体C1に設けた検体収容部C1aと蓋C2に設けた膨出部C2aを対接させて独立した空間部が形成されるカセットであって、検体収容部C1aは底面部から開口部に向けて広がる弧状もしくはテーパ状の側壁部を有し、膨出部C2aは上部から開口部に向けて広がる弧状もしくはテーパ状の側壁部を有し、底面、側壁部、上部はそれぞれ多数の透孔を備えている医療検査用カセットが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0011】
しかしながら、このようなカセットでは、自動包埋装置等により薬液に圧力をかけて検体Sを処理する場合に、検体Sが検体収容部から流出してしまうという不都合が生じる場合がある。即ち、図13に示すように、空間部を形成するためのカセット本体C1の検体収容部C1aと蓋C2の膨出部C2aとがそれぞれ開口側に向けて広がるテーパー状の凹部C1tと同じくテーパー状の凸部C2tとが対接嵌合する構造からなるため、圧力をかけて透孔から空間部内に薬液を流入させ空間部C3内の圧力が高くなった際には、蓋C2がカセット本体C1から浮き上がり、この結果、検体収容部C1aと膨出部C2aの間に隙間Oが出来てしまい、ここから検体Sが流出し、甚だしき場合はカセットCの外に漏出して貴重な検体Sを紛失したり、台無しにしてしまう場合がある。このような事故は、薬液処理の液圧を下げたり、手動で処理をすれば防ぐことが出来るが、この場合には処理効率が低下して一度に大量の検体を効率的に処理することが出来なくなる。
【0012】
また、上記カセットでは、検体収容部と検体収容部との間の中央部に透孔が設けられているため透孔が検体収容部に近接し、その結果、ピンセットで検体を検体収容部に収容する際に誤って該透孔から落下させる虞れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−285745号公報
【特許文献2】特開2001−289755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の如き問題を解消し、薬液処理時に検体が隙間から流出したり、カセットから落下したりすることがなく、薬液中への浸漬が容易で、更に、薬液の透過性及び薬液処理の均一性に優れた医療検査用カセットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の請求項1は、耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋とを具備してなり、カセット本体は上向きに開口する検体収容部を少なくとも1個有し、該検体収容部は多数の透孔を備えた底面部及び側壁下部からなり、側壁下部は前記底面部から開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、蓋は下向きに開口する膨出部を少なくとも1個有し、該膨出部は多数の透孔を備えた頂面部及び側壁上部からなり、該側壁上部は頂面部から開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、検体収容部側の開口部と膨出部側の開口部のいずれか一方側に内嵌側壁が周設されるとともに、他方側に外嵌側壁が周設され、内嵌側壁及び外嵌側壁は双方ともカセット本体の底面部及び蓋の頂面部に対して略垂直であり、閉蓋時には内嵌側壁及び外嵌側壁の嵌合側壁部と、蓋の膨出部と、カセット本体の検体収容部とからなる、独立した空間部が形成されることを特徴とする医療検査用カセットを内容とする。
【0016】
本発明の請求項2は、閉蓋時における内嵌側壁と外嵌側壁の重複部分の長さは、空間部の高さの1/4乃至1/2であることを特徴とする請求項1に記載の医療検査用カセットを内容とする。
【0017】
本発明の請求項3は、カセット本体の外枠と検体収容部の間、及び蓋の外枠と膨出部の間にそれぞれ支持板部が設けられており、当該支持板部にはそれぞれ貫通孔が穿設されているとともに、カセット本体に蓋を取り付けた際にはカセット本体の貫通孔及び蓋の貫通孔が対接して連通状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療検査用カセットを内容とする。
【0018】
本発明の請求項4は、蓋の外枠上面に間隔保持用の突起が突設されるとともに、膨出部上面に複数個の突条が直交方向に延設されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療検査用カセットを内容とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の医療検査用カセットは、蓋の膨出部の頂面部と側壁上部、及びカセット本体の検体収容部の底面部と側壁下部に透孔を設けたので、薬液の透過性が良好で、薬液処理を効果的に行うことができる。また、嵌合側壁部において内嵌側壁と外嵌側壁の両方がカセット本体の底面部及び蓋の頂面部に対して略垂直であるから、自動包埋装置等により圧力をかけて透孔から空間部内に薬液を流入させる際、蓋が少々浮き上がったとしても検体が流れ出るような隙間が生じないので、貴重な検体を紛失したり台無しにするようなことがない。
【0020】
閉蓋時における内嵌側壁と外嵌側壁の重複部分の長さを空間部の高さの1/4以上とすれば、自動包埋装置等で用いられる通常の圧力では検体が流出するような隙間を生じることがない。また、重複部分の長さを空間部の高さの1/2以下とすれば、側壁上部及び側壁下部を十分大きくすることができ、その分透孔も多く設けることができるので空間部内への薬液透過性が十分確保される。
【0021】
カセット本体及び蓋に互いに連通する貫通孔を設けることにより、カセット本体の下方に滞留する空気がこの貫通孔を介して排出されるので浮力が軽減され、カセットを薬液中に浸漬しやすくなり、薬液処理の作業が効率的に行われる。
また、この貫通孔をカセット本体の外枠と検体収容部の間、及び蓋の外枠と膨出部の間の支持板部に穿設することにより、貫通孔はカセット本体中心部の検体収容部から離れているので、検体を検体収容部に収容する際に誤って貫通孔から落下するような事故を防ぐことができる。
【0022】
蓋の外枠上面に間隔保持用の突起を突設することにより、積み重ねたカセットの隙間から薬液を流入させることができ、また、蓋の膨出部上面に直交方向に延設された複数個の突条を設けることにより、カセットの隙間に流入した薬液を効率よく空間部内に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明のカセットの実施例1を示す平面図である。
【図2】図2は図1のA−A断面図である。
【図3】図3は図1のB−B断面図である。
【図4】図4は図2における一つの空間部を拡大した部分拡大断面図である。
【図5】図5は蓋が浮いた状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】図6は本発明のカセットの実施例2を示し、(a)は平面図、(b)はC−C断面図である。
【図7】図7(a)は実施例2における一つの膨出部を拡大した部分拡大平面図であり、図7(b)は(a)における突条の別の配置例を示す。
【図8】図8は包埋トレイの斜視図である。
【図9】図9は従来のカセットを示す斜視図である。
【図10】図10は従来のカセットに検体を入れた状態を示す断面図である。
【図11】図11はカセットブロックの作成方法を示す断面図である。
【図12】図12は従来の別のカセットを示す断面図である。
【図13】図13は図12のカセットの蓋が浮いた状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋とを具備してなる医療検査用カセットであって、図1乃至図4に示すとおり、カセット本体2は上向きに開口する検体収容部2aを少なくとも1個有し、該検体収容部2aは多数の透孔5を備えた底面部4a及び側壁下部4bからなり、側壁下部4bは前記底面部4aから開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、
蓋は下向きに開口する膨出部3aを少なくとも1個有し、該膨出部3aは多数の透孔5を備えた頂面部4c及び側壁上部4dからなり、該側壁上部4dは頂面部4cから開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、
検体収容部2a側の開口部と膨出部3a側の開口部のいずれか一方側に内嵌側壁4eが周設されるとともに、他方側に外嵌側壁4fが周設され、内嵌側壁4e及び外嵌側壁4fは双方ともカセット本体2の底面部4a及び蓋3の頂面部4cに対して略垂直であり、
閉蓋時には内嵌側壁4e及び外嵌側壁4fの嵌合側壁部と、蓋の膨出部3aと、カセット本体の検体収容部2aとからなる、独立した空間部4が形成されることを特徴とする。
【0025】
本発明の医療検査用カセットにおいて、カセット本体2及び蓋3は、いずれも耐薬品性の合成樹脂からなる。本発明で使用できる合成樹脂の例としては、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明において、カセット本体2は上向きに開口する検体収容部2aを少なくとも1個(図示した例では6個)有する。具体的な個数は特に限定されないが、9個よりも多くなると、検体収容部のサイズが小さくなり過ぎ、収容する検体のサイズが限定されるとともに、ピンセットでの作業性等が低下するので、2〜9個程度が好ましい。
【0027】
本発明において検体収容部2aは、多数の透孔5を備えた底面部4a、側壁下部4b及び外嵌側壁4fからなり、側壁下部4bは前記底面部4aから開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状とされている。透孔5の大きさや形状については特に限定されないが、透孔5から検体Sが流出しない範囲で大きいほうが、薬液の透過性が高まるので好ましい。透孔の数も特に限定されないが、側壁下部4b及び底面部4aの強度が弱くなりすぎない範囲で多いほうが好ましい。
【0028】
側壁下部4bの形状については、前記底面部4aから開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状(図示した例ではテーパ状)とされているので、例え処理すべき検体が小さくても、ピンセット等で容易につまみ出すことができる。なお、本発明において側壁下部4bと底面部4aは明確に区別される必要はなく、例えば、底面部4aと側壁下部4bを合わせて、断面視で円弧状、楕円弧状、半球状、皿状等とされていてもよい。
【0029】
検体収容部2aの開口部の形状は特に限定されず、円形、楕円形、矩形等のいずれでもよいが、多くの検体収容部2aを配列でき、検体収容部2aの内容積を大きくでき、且つ検体Sが小さくても扱いやすくなる形状として、角部をアール処理した矩形が望ましい(図示した例ではこの形状が採用されている)。
【0030】
本発明において、蓋は下向きに開口する膨出部3aを少なくとも1個有する。なお後述の通り、該膨出部3aは前記検体収容部2aと合わせて空間部4を形成させるためのものであるので、膨出部3aの数、形状、大きさ等は検体収容部2aの数、形状、大きさ等に応じて定める。
【0031】
膨出部3aは、多数の透孔5を備えた頂面部4c及び側壁上部4dからなり、該側壁上部4dは頂面部4cから開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパー状とされる。即ち、前記検体収容部2aの形状を上下逆にしたものと同様であるが、蓋の膨出部3aは、後述するように、空間部4の上面側の表面積を大きくして透孔5の数を増やし、薬液の透過性を改善することが目的であるから、検体を収容する検体収容部2aに比べて浅い形状のものでよい。
【0032】
本発明においては、図4に示したように、検体収容部2a側の開口部と膨出部3a側の開口部のいずれか一方側(図示した例では膨出部3a側)に内嵌側壁4eが周設されるとともに、他方側(図示した例では検体収容部2a側)に外嵌側壁4fが周設される。検体を薬液処理する際には、前記内嵌側壁4eと外嵌側壁4fを嵌合させて、当該嵌合側壁部と膨出部3aと検体収容部2aとからなる独立した空間部4を形成するように構成されている。
【0033】
この空間部4において、内嵌側壁4e及び外嵌側壁4fは双方ともカセット本体2の底面部4a及び蓋3の頂面部4cに対して略垂直とされているので、自動包埋装置等を用いて圧力をかけて薬液処理を施し、蓋3がカセット本体2から少々浮き上がった場合であっても、図5に示したように、蓋3とカセット本体2の間に隙間ができないので、検体の流出を確実に防ぐことができる。
【0034】
嵌合側壁部の嵌合部、即ち閉蓋時における内嵌側壁4eと外嵌側壁4fの重複部分の長さは、側壁上部4d及び側壁下部4bを十分大きくすることができ、且つ蓋が少々浮き上がった場合でも隙間が生じない程度であればよく、具体的には空間部の高さの1/4乃至1/2程度が好ましい。なお、閉蓋時における内嵌側壁4eと外嵌側壁4fの重複部分の長さを空間部4の高さの1/4以上とすれば、自動包埋装置等で用いられる通常の圧力では検体が流出する隙間ができるほど大きく蓋が浮き上がることがない。また、重複部分の長さを空間部の高さの1/2以下とすれば、側壁上部4d及び側壁下部4bを十分大きくでき、また透孔5の数を十分多くすることができるので、空間部4内への薬液透過性が十分確保される。
【0035】
本発明においては、必要に応じ、カセット本体2及び蓋3に貫通孔7を設けることができる。即ち、本発明の医療検査用カセット1の場合、カセット本体2の下方には空気が滞留し易く、その空気の浮力によりカセット1を薬液中に浸漬しにくくなるという欠点があるが、カセット本体2及び蓋3に貫通孔7を設ければ、この空気が排出されてカセットを薬液中に容易に浸漬できるようになる。ただし、この貫通孔7を機能させるためには、カセット本体2に蓋3を取り付けた際にカセット本体の貫通孔7及び蓋の貫通孔7が対接して連通状態となるように貫通孔7、7を配置する必要がある。
なお、ピンセットで検体Sを検体収容部2aに収容する際、誤ってこの貫通孔7から検体Sを落下させる危険を防止するため、貫通孔を検体収容部2aから十分距離を置いて貫通孔7を設けるほうが好ましい。
【0036】
本発明においては、カセット本体の外枠2bと検体収容部2aの間に、検体収容部2aを支持するための支持板部6を設け(図3)、蓋の外枠3bと膨出部3aの間に膨出部3aを支持するための支持板部6を設けることができる(図1、図3)。支持板部6により、検体収容部2aと外枠2bの間に十分なスペースを形成させることができ、前記貫通孔7を支持板部6に設けることにより、貫通孔7と検体収容部2aとの距離が遠くなるので、貫通孔7を検体より大きくしてもこの貫通孔7から検体Sを落下する危険は小さくなる。この危険性は検体収容部2aと貫通孔7の距離が大きいほど小さくなるので、貫通孔7を外枠2b寄りに設けることにより、検体収容部2aと貫通孔7の距離を大きくするのが好ましい。
また、支持板部6には、必要に応じ、検体Sや検体収容部2aを識別するための文字、記号等を刻印したり、記載することができる。
【0037】
本発明においては、図6に示したように、蓋3の外枠2b上面に間隔保持用の突起3cを突設してもよい。このような突起3cを設けることにより、上下に積み重ねられたカセット間、又は、水平に並べられたカセット間に隙間が形成されるため、検体処理用の薬液は、上下又は左右のカセット1を通して流入するだけでなく、カセット1同士の間の隙間からも流入するので、検体Sの処理効率が上昇するとともに、薬液の透過が均一となるので検体が均一に処理される。
この場合、積み重ねたカセット1の隙間から流入した薬液は、そのままでは上下のカセット1の間を真っ直ぐ流れて透孔5の表面を素通りしやすく、別の隙間から流出してしまう場合があるので、膨出部3aの上面に突条3dを設けて薬液の流れを変え、空間部4内に薬液が流入しやすくするとともに、薬液の流れを層流から乱流に変え薬液処理効果を高めるのが好ましい。また、薬液がどの方向から流入しても流れを変え、乱流となるように、直交方向に複数の突条3dを設けるほうが好ましい。
なお、図6に示した例では直交方向に設けられた2個の突条3dを組み合わせて十文字状とした例が示されている(図7(a)に膨出部3aを拡大した図を示す。突条3dの部分を判別しやすくするためハッチングを施した)が、勿論、これに限られず、図7(b)に示したように、2個の突条を別々に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
叙上のとおり、本発明の医療検査用カセットは、薬液処理時においても検体収容部に隙間が生じず、従って隙間から検体が流出することがなく、また、カセットの薬液浸漬時に浮力を軽減するための貫通孔を検体収容部から離隔して設けたので、検体を検体収容部に収容する際に誤って貫通孔から落下させるといったトラブルも防止される。
更に、蓋の外枠上面や膨出部に間隔保持用の突起を設けることにより、薬液の透過性に優れるとともに均一な薬液処理が行われ、更にまた、突起を直交するように設けることにより、薬液の透過性及び薬液処理の均一性を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 医療検査用カセット
2 カセット本体
2a 検体収容部
2b カセット本体の外枠
3 蓋
3a 膨出部
3b 蓋の外枠
3c 間隔保持用の突起
3d 突条
4 空間部
4a 底面部
4b 側壁下部
4c 頂面部
4d 側壁上部
4e 内嵌側壁
4f 外嵌側壁
5 透孔
6 支持板部
7 貫通孔
S 検体
C 従来の医療検査用カセット
C1 カセット本体
C1a 検体収容部
C1b 記録部
C1t テーパー状凹部
C2 蓋
C2a 膨出部
C2t テーパー状凸部
C3 空間部
C4 透孔
T 包埋トレイ
P パラフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐薬品性材料からなるカセット本体と蓋とを具備してなり、
カセット本体は上向きに開口する検体収容部を少なくとも1個有し、該検体収容部は多数の透孔を備えた底面部及び側壁下部からなり、側壁下部は前記底面部から開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、
蓋は下向きに開口する膨出部を少なくとも1個有し、該膨出部は多数の透孔を備えた頂面部及び側壁上部からなり、該側壁上部は頂面部から開口側に向けて広がる弧状もしくはテーパ状であり、
検体収容部側の開口部と膨出部側の開口部のいずれか一方側に内嵌側壁が周設されるとともに、他方側に外嵌側壁が周設され、内嵌側壁及び外嵌側壁は双方ともカセット本体の底面部及び蓋の頂面部に対して略垂直であり、
閉蓋時には内嵌側壁及び外嵌側壁の嵌合側壁部と、蓋の膨出部と、カセット本体の検体収容部とからなる、独立した空間部が形成されることを特徴とする医療検査用カセット。
【請求項2】
閉蓋時における内嵌側壁と外嵌側壁の重複部分の長さは、空間部の高さの1/4乃至1/2であることを特徴とする請求項1に記載の医療検査用カセット。
【請求項3】
カセット本体の外枠と検体収容部の間、及び蓋の外枠と膨出部の間にそれぞれ支持板部が設けられており、当該支持板部にはそれぞれ貫通孔が穿設されているとともに、カセット本体に蓋を取り付けた際にはカセット本体の貫通孔及び蓋の貫通孔が対接して連通状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療検査用カセット。
【請求項4】
蓋の外枠上面に間隔保持用の突起が突設されるとともに、膨出部上面に複数個の突条が直交方向に延設されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の医療検査用カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−185898(P2011−185898A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54313(P2010−54313)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】