説明

医療機器のチャンネル割り当てシステムおよび方法

【課題】複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が減少しても、高いリアルタイム性が要求される生体情報を無線通信により伝送することができる医療機器のチャンネル割り当てシステムを提供する。
【解決手段】それぞれ生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器の動作が監視されて各医療機器から動作状態が収集され(S1)、収集した動作状態に基づき、これらの医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位が決定され(S2)、優先順位の高い医療機器から順次順次通信チャンネルが割り当てられる(S3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療機器のチャンネル割り当てシステムおよび方法に係り、特に、それぞれ生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器に対して通信チャンネルの割り当てを行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、超音波装置本体に接続された超音波プローブから被検体内に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を電気的に処理することにより超音波装置本体で被検体の生体情報として断層画像が生成される。
超音波診断装置における断層画像以外にも、X線による被検体の透視画像を生成するX線撮影装置、体内の観察画像を生成する内視鏡システム等、生体情報としての診断画像を取得する各種の医療機器が使用されている。
【0003】
このような複数の医療機器を備える医療施設では、患者の負担を軽減し、且つ種々の臨床担当者の作業効率を上げるために、例えば特許文献1に開示されるように、複数の医療機器にネットワークを介してサーバを接続した医療システムが構築されることがある。
特許文献1の医療システムでは、サーバにより複数の医療機器の状態が監視され、それぞれの臨床担当者が各医療機器の状態をチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、超音波プローブと超音波装置本体との間を接続する通信ケーブルの煩わしさを解消して操作性を向上させるために、超音波プローブと超音波装置本体とを無線通信により接続する超音波診断装置が考案されている。同様に、X線撮影装置においても、操作性向上のために、X線電子カセッテがX線コンソールに無線接続されたものが考案され、内視鏡システムにおいても、内視鏡スコープが内視鏡プロセッサに無線接続されたものが考案されている。
【0006】
これらの医療機器においては、取得された生体情報を含む患者の情報が無線通信により伝送されることとなるが、例えば、超音波診断装置を用いた術中撮影画像のように、通信の高いリアルタイム性が要求されるものから、健康診断時のX線撮影のように、通信のリアルタイム性は要求されず、撮影後に時間をおいてから伝送してもよいものまで、各種の患者情報が存在する。同一の医療機器であっても、使用目的等に応じて通信のリアルタイム性に対する要求は多様である。
【0007】
このように無線通信機構を有する複数の医療機器が具備された医療施設では、通常、十分なチャンネル数が確保されているが、医療機器以外の無線機器が医療施設内に持ち込まれたり、外部から医療施設に電波が漏洩することにより、周波数帯域を占有されることがあり、この場合、通信の高いリアルタイム性が要求されているにも関わらず、生体情報を伝送することができなくなるおそれがある。
特許文献1の医療システムでは、このような周波数帯域の占有による不具合は考慮されていない。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が減少しても、高いリアルタイム性が要求される生体情報を無線通信により伝送することができる医療機器のチャンネル割り当てシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムは、それぞれ患者の生体情報を取得すると共に前記生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器と、複数の医療機器の動作を監視するアービターとを備え、アービターは、各医療機器の動作状況に基づき複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行うものである。
【0010】
アービターは、医療機器の種類、使用目的、検査スケジュールおよび検査の緊急度に基づいてリアルタイム性の優先順位を決定することが好ましい。
アービターは、所定時間毎に複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定することもでき、あるいは、いずれかの医療機器で通信のリアルタイム性の要求度が高いイベントを開始する際に複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定してもよい。
【0011】
また、アービターは、スペクトルセンシング技術により空きチャンネルの情報を得た後に、通信チャンネルの割り当てを行うこともできる。この場合、アービターは、空きチャンネルが所定数以下に減少したときに警告を発することが好ましい。
アービターは、アービターと複数の医療機器とを接続する通信回線のアクセスポイント、あるいは、複数の医療機器のいずれかに内蔵することができる。
また、複数の医療機器は、周波数ホッピング方式または直接拡散方式によるスペクトラム拡散を適用した無線通信により患者の情報を伝送してもよい。
なお、複数の医療機器は、超音波診断装置、X線撮影装置あるいは内視鏡システムを含むように構成することができる。
【0012】
この発明に係る医療機器のチャンネル割り当て方法は、それぞれ患者の生体情報を取得すると共に前記生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器の動作を監視し、各医療機器の動作状況に基づき複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行う方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器の動作を監視し、各医療機器の動作状況に基づき複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定して優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行うので、複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が減少しても、高いリアルタイム性が要求される生体情報を無線通信により伝送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1で用いられた医療機器を示し、(A)は超音波診断装置、(B)はX線撮影装置、(C)は内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【図4】通信チャンネルの周波数帯域の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1における複数の医療機器の動作状況とチャンネル割り当ての関係を示すタイミング図である。
【図6】実施の形態2に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態3に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムにおける医療機器の周波数遷移の様子を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムの構成を示す。手術室R1に第1の超音波診断装置1が配置され、X線撮影室R2にX線撮影装置2が配置され、内視鏡検査室R3に内視鏡システム3が配置され、超音波検査室R4に第2の超音波診断装置4が配置されている。そして、第1の超音波診断装置1、X線撮影装置2、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4に有線による回線Lを介してアービター5が接続されている。
【0016】
第1の超音波診断装置1、X線撮影装置2、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4は、それぞれ生体情報として超音波断層画像、X線透視画像および内視鏡観察画像を取得し、これら生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する医療機器である。
第1の超音波診断装置1は、図2(A)に示されるように、超音波装置本体1aと、超音波装置本体1aに無線接続された超音波プローブ1bを有しており、超音波装置本体1aがアービター5に接続されている。超音波プローブ1bは、被検体内に向けて超音波ビームを送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力するもので、超音波プローブ1bで得られた受信信号が無線通信により超音波装置本体1aへ伝送され、超音波装置本体1aで被検体の断層画像が生成される。
【0017】
X線撮影装置2は、図2(B)に示されるように、X線コンソール2aと、X線コンソール2aに無線接続されたX線電子カセッテ2bを有しており、X線コンソール2aがアービター5に接続されている。X線電子カセッテ2bは、X線コンソール2aを用いてX線撮影された画像を電子的に記録し、画像のデータを無線通信によりX線コンソール2aに伝送する。
内視鏡システム3は、図2(C)に示されるように、内視鏡プロセッサ3aと、内視鏡プロセッサ3aに無線接続された内視鏡スコープ3bを有しており、内視鏡プロセッサ3aがアービター5に接続されている。内視鏡スコープ3bは、被検体内に挿入されて被検体内を撮像するもので、内視鏡スコープ3bにより得られた撮像信号が無線通信により内視鏡プロセッサ3aに伝送され、内視鏡プロセッサ3aで処理されて被検体内の観察像が表示される。
【0018】
なお、第2の超音波診断装置4は、第1の超音波診断装置1と同様の構成を有している。
アービター5は、第1の超音波診断装置1、X線撮影装置2、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4からなる複数の医療機器の動作を監視し、複数の医療機器への通信チャンネル割り当ての調停を行う。
【0019】
次に、実施の形態1の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1で、アービター5は、第1の超音波診断装置1、X線撮影装置2、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4の動作を監視し、これらの医療機器からそれぞれ動作状態を収集する。
【0020】
このようにして各医療機器から収集した動作状態に基づき、ステップS2で、アービター5は、これらの医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定する。このとき、各医療機器の種類、使用目的、検査スケジュールおよび検査の緊急度等に基づいて通信のリアルタイム性の優先順位が決定される。
例えば、手術中に撮影される超音波画像は、その画像を見ながら手術が進められるため、このような超音波画像を撮影する術中断層撮影の処理は、高いリアルタイム性が要求される。一方、健康診断におけるX線撮影画像は、撮影後に時間をおいてからデータ伝送しても支障がなく、X線撮影による健康診断処理に要求されるリアルタイム性は低い。また、X線撮影においても、緊急搬送された重症患者の撮影は、極めて高いリアルタイム性が要求され、患部をX線透視撮影しながら移動させ、最適なポジショニングを行ってから静止画像を撮影する場合には、重症患者の撮影に要求されるリアルタイム性ほどではないものの、高いリアルタイム性が要求される。さらに、患者履歴の通信等、生体情報を直接扱わない処理は、リアルタイム性がさらに低くても構わないものとして判断することができる。
【0021】
ステップS2で通信のリアルタイム性の優先順位が決定されると、続くステップS3で、アービター5は、優先順位の高い医療機器から順次順次通信チャンネルの割り当てを実行する。
このチャンネル割り当ての一例を図4に示す。2.4GHz帯において、中心周波数2412MHzからチャンネル幅22MHz、間隔5MHzで各チャンネルを割り当てることができる。ただし、中心周波数、チャンネル幅、チャンネル間の間隔のそれぞれの値は、これに限るものではない。
【0022】
チャンネル割り当ての結果、通信可能であるか否かが、アービター5から各医療機器に通知される。例えば、複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が医療機器の数より少ない場合には、すべての医療機器が通信を必要とする動作状態にあっても、通信チャンネル数が不足して、すべての医療機器に通信チャンネルを割り当てることができなくなる。この場合、通信のリアルタイム性の優先順位が高い医療機器から優先的に通信チャンネルが割り当てられ、優先順位の低い医療機器は、空きチャンネルが発生するまで通信チャンネルを利用したデータ伝送を行うことができない。
そして、アービター5から通信可能である旨の通知を受けた医療機器においては、割り当てられた通信チャンネルを利用して、生体情報を含む患者の情報が無線通信により伝送される。
一方、アービター5から通信不可である旨の通知を受けた医療機器は、患者の情報の伝送を行わずに、待機状態となる。
【0023】
このようにして、ステップS3で、通信チャンネルの割り当てが完了すると、再び、ステップS1に戻り、医療機器の動作の監視が繰り返される。
そして、空きチャンネルが発生すると、アービター5により、空きチャンネルの発生を待っていた医療機器に通信チャンネルが割り当てられる。
【0024】
ここで、図5のタイミング図を参照して、第1の超音波診断装置1、X線撮影装置2、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4の4つの医療機器が3つの通信チャンネルCH1〜CH3を利用してそれぞれ患者の情報を伝送する場合の具体例について説明する。
各医療機器における処理に要求される通信のリアルタイム性が、最も高いランクAから最も低いランクIまでランク付けされるものとする。
【0025】
図5に示されるように、時刻T0においては、第1の超音波診断装置1は術中断層撮影の処理を実行し、内視鏡システム3と第2の超音波診断装置4はそれぞれ患者履歴の通信処理を行い、X線撮影装置2は停止中である。第1の超音波診断装置1における術中断層撮影は、施術に伴う撮影であり、通信のリアルタイム性が、最も高いランクAにランク付けされ、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4における患者履歴の通信は、生体情報を直接扱わないことからランクGにランク付けされる。
【0026】
このため、時刻T0における通信のリアルタイム性の優先順位は、第1の超音波診断装置1が最も高く、内視鏡システム3と第2の超音波診断装置4がそれに次いでおり、第1の超音波診断装置1から優先的に通信チャンネルの割り当てが行われる。ただし、X線撮影装置2が停止中であるので、稼働中の医療機器は3台となり、3つの通信チャンネルCH1〜CH3が第1の超音波診断装置1、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4にそれぞれ割り当てられる。
【0027】
時刻T1では、第1の超音波診断装置1は術中断層撮影の処理を続行しており、X線撮影装置2は健康診断の処理を実行し、内視鏡システム3は消化器官検査の処理を行い、第2の超音波診断装置4は下腹部検査の処理を行う。X線撮影装置2における健康診断は、撮影後に時間をおいてから画像データの伝送を行っても支障がなく、ランクFにランク付けされ、内視鏡システム3における消化器官検査は、患者の体内に内視鏡スコープ3bを挿入するために患者の負担が大きく、ランクBにランク付けされている。さらに、第2の超音波診断装置4における下腹部検査は、内視鏡システム3における消化器官検査よりは通信のリアルタイム性の要求度が低いランクCにランク付けされている。
【0028】
このため、時刻T1における通信のリアルタイム性の優先順位は、第1の超音波診断装置1が最も高く、以下、内視鏡システム3、第2の超音波診断装置4およびX線撮影装置2の順番となる。従って、3つの通信チャンネルCH1〜CH3は、通信のリアルタイム性の優先順位が高いものから、第1の超音波診断装置1、内視鏡システム3および第2の超音波診断装置4にそれぞれ割り当てられ、4つの医療機器の中で最も通信のリアルタイム性のランクが低いX線撮影装置2には、通信チャンネルが割り当てられない。その結果、X線撮影装置2は、健康診断により得られたX線画像データの伝送を行うことができず、待機状態となる。
【0029】
さらに、時刻T2では、第1の超音波診断装置1は施術が終了して、術中断層撮影における撮影ログを保存する処理を行い、内視鏡システム3は消化器官検査の処理を続行しており、X線撮影装置2と第2の超音波診断装置4は停止中である。第1の超音波診断装置1における撮影ログ保存は、生体情報を直接扱うものではなく、ランクHにランク付けされる。
【0030】
このため、時刻T2における通信のリアルタイム性の優先順位は、内視鏡システム3が最も高く、第1の超音波診断装置1がそれに次いでいる。従って、内視鏡システム3および第1の超音波診断装置1の順で通信チャンネルが割り当てられる。このとき、3つの通信チャンネルCH1〜CH3のうち2つの通信チャンネル、例えばチャンネルCH2およびCH1が内視鏡システム3と第1の超音波診断装置1にそれぞれ割り当てられ、残る通信チャンネルCH3は空きチャンネルとなる。
そこで、時刻T1で通信チャンネルが割り当てられずに待機状態となっていたX線撮影装置2に、この通信チャンネルCH3が割り当てられ、X線撮影装置2は、健康診断により得られたX線画像データを通信チャンネルCH3により伝送することが可能となる。
【0031】
このように、複数の医療機器の動作が監視され、各医療機器の動作状況に基づいて複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位が決定され、優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てが行われる。このため、複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が減少しても、高いリアルタイム性が要求される生体情報を無線通信により伝送することが可能となる。
【0032】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、アービター5が、有線による回線Lを介して各医療機器に接続されていたが、無線回線を介して医療機器に接続されていてもよい。この場合、例えば、図6に示されるように、無線通信のアクセスポイントにアービター5を内蔵することもできる。図6では、病院内の院内情報システムのアクセスポイントにアービター5が内蔵されている。無線回線としては、無線LAN、赤外線通信、超音波通信、レーザ通信等を利用することができる。
また、アービター5を、少なくとも1つの医療機器に内蔵することもできる。さらに、複数の医療機器にそれぞれアービターを内蔵してもよく、この場合、リアルタイム通信している医療機器内のアービターがマスタとして機能するように構成することが好ましい。
この他、無線通信機構を有する各医療機器に非接触給電を行う非接触給電器にアービター5を内蔵させてもよく、また、診察台にアービター5を組み込むこともできる。
【0033】
なお、上記の実施の形態1および2において、複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位の決定は、予め設定された所定時間毎または予め設定されたタイムスケジュールに従って各医療機器から収集された動作状態に基づいて行う、いわゆるタイムドリブン方式により実行することができる。あるいは、各医療機器による生体情報の取得をトリガとする等、高いリアルタイム性が要求されるイベントの開始をトリガとする、いわゆるイベントドリブン方式で行ってもよい。この場合、生体情報の取得をトリガとする代わりに、赤外線センサ、超音波センサ等の物理センサを用いて、医療機器の設置、移動等の準備動作を検出し、これをトリガとすることもできる。
【0034】
また、アービター5は、公知のスペクトルセンシング技術により空きチャンネルの情報を得た後に、通信チャンネルの割り当てを行うこともできる。特に、この発明に係る医療機器のチャンネル割り当てシステムに対応していない無線機器が医療施設内に設置されている場合には、その無線機器により周波数帯域を占有されるおそれがあるため、予め空きチャンネルの情報を得てから、通信チャンネルの割り当てを行うことが望ましい。
【0035】
この場合、空きチャンネルが所定数以下に減少したことを認知したアービター5が、警告を発することが好ましい。警告は、視覚的に表示するものでもよく、あるいは、警告音等の音、または、振動により通知するものでもよい。この警告により、各医療機器を操作する臨床担当者が無線通信によるデータ伝送不可のおそれがあることを認識し、医療機器使用のタイムスケジュールを変更する等の措置を採ることが可能となる。
さらに、各医療機器の使用履歴に基づいて、無線通信から有線通信に切り替えることが可能な処理と不可能な処理とを予め選別しておけば、空きチャンネルが所定数以下に減少して警告を受けたときに、医療機器における処理に応じて即座に有線通信に切り替えることもできる。
【0036】
各医療機器における処理に要求される通信のリアルタイム性のランク付けは、予め設定されたランクであってもよく、あるいは、各医療機器を操作する臨床担当者等により設定可能としてもよい。また、施術を行う場合に、施術の段階をモニタリングし、施術の段階に応じてランクを調整することもできる。
さらに、通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行うだけでなく、通信の時系列をずらす時間ダイバーシティを適用する、データの変調方式を可変にする等により、優先順位の高い通信への干渉を回避する方法を組み合わせれば、高いリアルタイム性が要求される生体情報をより精度よく伝送することが可能となる。
【0037】
実施の形態3
上述した実施の形態1および2において、電波障害耐性および通信秘匿性を向上する技術として知られているスペクトラム拡散(SS:Spread Spectrum)技術を適用することもできる。
周波数ホッピング(FH:Frequency Hopping)方式によりスペクトラム拡散を行う場合には、各医療機器において無線通信を行う送信部と受信部との間で互いに同期を取りながら微小時間間隔で使用周波数を遷移させる。すなわち、送信部における送信周波数と受信部における受信周波数を共に遷移させながら、患者の情報が無線通信により伝送される。例えば、図7に示されるように、医療機器Aにおいては、微小時間毎に周波数F1→F4→F2→F7→F3→F5→F1→F6と使用周波数を遷移しつつ無線通信が行われ、医療機器Bにおいては、微小時間毎に周波数F5→F6→F4→F1→F6→F3→F7→F4と使用周波数を遷移しつつ無線通信が行われる。
【0038】
このとき、医療機器AおよびBは、各時点において、それぞれ周波数F1〜F7のうちのいずれかの通信周波数を占有して通信を行うため、医療機器Aにおける周波数遷移F1→F4→F2→F7→F3→F5→F1→F6を1本の通信チャンネルと見なすことができ、同様に、医療機器Bにおける周波数遷移F5→F6→F4→F1→F6→F3→F7→F4を他の1本の通信チャンネルと見なすことができる。
そこで、図3に示したフローチャートのように、各医療機器の動作状況に基づいて複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、優先順位の高い医療機器から順次、微小時間間隔での周波数遷移を伴う通信チャンネルの割り当てを行うことができる。
【0039】
このようにして、複数の医療機器で使用し得る通信チャンネル数が減少しても、電波衝突の発生確率を低減しつつ、高いリアルタイム性が要求される生体情報を無線通信により伝送することが可能となる。
なお、一般に、周波数ホッピング方式では、ホッピング速度が速い程、電波衝突頻度の低減効果は高くなるが、この実施の形態3においては、通信のリアルタイム性の優先順位が高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行うので、ホッピング速度が低速の場合であっても電波衝突頻度を低減することができる。
また、周波数ホッピング方式の代わりに直接拡散(DS:Direct Sequence)方式によるスペクトラム拡散を行うこともでき、この場合、広げた帯域を1つのチャンネルと見なすことで、同様にして通信チャンネルを割り当てることが可能となる。
【0040】
また、実施の形態1〜3において、障害物、外部機器等の存在により安定した通信状態を持続することができない医療機器は、その状況を臨床担当者等に通知することが好ましい。障害物、外部機器を移動する等の改善措置を採ることで、通信の健全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,4 超音波診断装置、2 X線撮影装置、3 内視鏡システム、5 アービター、1a 超音波装置本体、1b 超音波プローブ、2a X線コンソール、2b X線電子カセッテ、3a 内視鏡プロセッサ、3b 内視鏡スコープ、L 回線、R1 手術室、R2 X線撮影室、R3 内視鏡検査室、R4 超音波検査室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ患者の生体情報を取得すると共に前記生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器と、
前記複数の医療機器の動作を監視するアービターと
を備え、
前記アービターは、各医療機器の動作状況に基づき前記複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行うことを特徴とする医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項2】
前記アービターは、前記医療機器の種類、使用目的、検査スケジュールおよび検査の緊急度に基づいてリアルタイム性の優先順位を決定する請求項1に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項3】
前記アービターは、所定時間毎に前記複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定する請求項1または2に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項4】
前記アービターは、いずれかの医療機器で通信のリアルタイム性の要求度が高いイベントを開始する際に前記複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定する請求項1または2に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項5】
前記アービターは、スペクトルセンシング技術により空きチャンネルの情報を得た後に、通信チャンネルの割り当てを行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項6】
前記アービターは、空きチャンネルが所定数以下に減少したときに警告を発する請求項5に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項7】
前記アービターは、前記アービターと前記複数の医療機器とを接続する通信回線のアクセスポイント、あるいは、前記複数の医療機器のいずれかに内蔵される請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項8】
前記複数の医療機器は、周波数ホッピング方式または直接拡散方式によるスペクトラム拡散を適用した前記無線通信により前記患者の情報を伝送する請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項9】
前記複数の医療機器は、超音波診断装置、X線撮影装置あるいは内視鏡システムを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療機器のチャンネル割り当てシステム。
【請求項10】
それぞれ患者の生体情報を取得すると共に前記生体情報を含む患者の情報を無線通信により伝送する複数の医療機器の動作を監視し、
各医療機器の動作状況に基づき前記複数の医療機器における通信のリアルタイム性の優先順位を決定し、
優先順位の高い医療機器から順次通信チャンネルの割り当てを行う
ことを特徴とする医療機器のチャンネル割り当て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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