説明

医療機器用キャリーバッグ

【課題】ハードケース内への携帯型医療機器の収納作業を容易にすること。
【解決手段】医療機器用キャリーバッグは、ファスナにより開閉可能なつなぎ目1Cを有するハードケースを本体1として有し、つなぎ目1Cを開いて医療機器を出し入れする。医療機器用キャリーバッグは、つなぎ目1Cの少なくとも一部を覆うように本体1に設けられたつなぎ目カバー41を有し、つなぎ目カバー41に、医療機器とその使用者とを接続するチューブ又はケーブルを挿抜可能な貫通孔45が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮器等の医療機器用のキャリーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮器は主として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)に使用されるものであり、一般には、外部から空気を取り込み内部で高濃度酸素を生成して患者に供給する。
【0003】
酸素濃縮器は通常、宅内での酸素吸入のために宅内に設置して用いられるが(据置型)、患者が外出する際には、患者は、据置型に比べて小型の酸素濃縮器、あるいは酸素ガスを内部に収容した軽量の酸素ボンベを携帯して、酸素吸入を行う。このとき、酸素濃縮器や酸素ボンベといった酸素供給装置を専用のキャリーバッグに収納して持ち運ぶ場合がある。
【0004】
従来の酸素供給装置用キャリーバッグとしては、キャリーカートに取り付けたり、肩にかけたり背負ったりして持ち運び可能な、ナイロン等の生地でリュックサック形や円筒形等の袋状に形成された酸素ボンベ用キャリーバッグがある(例えば特許文献1、2参照)。このキャリーバッグ本体には、カニューラの挿抜が可能な開口部が形成されており、内部に酸素ボンベを収納する場合は通常、酸素ボンベを内部に入れた後、カニューラを、開口部に挿通してから酸素ボンベの酸素出口に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−105384号公報
【特許文献2】特開2002−210013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、酸素濃縮器には一般に、原料空気を取り込む吸気口や排気を放出する排気口が設けられており、使用中にこれらが塞がれると酸素流量低下等の異常が発生する場合がある。よって、酸素濃縮器をキャリーバッグに収納して持ち運ぶ場合には、吸気口・排気口が塞がれないようにする必要がある。これに対し、上記従来の酸素ボンベ用キャリーバッグのようにナイロン等の生地からなる袋状のキャリーバッグ本体は、柔軟性が高く、変形容易である。したがって、特に酸素濃縮器を収納することを踏まえると、キャリーバッグ本体が変形して吸気口・排気口を塞ぐことのないよう本体の剛性を高めることが、考えられる。
【0007】
しかしながら、酸素供給装置用キャリーバッグ本体の剛性を高めると、カニューラを本体の開口部に挿通して酸素供給装置に接続する一連の使用準備作業において、作業をしやすいように適宜、本体の開口部付近を曲げたりめくったりしにくくなる。そのため、酸素供給装置の収納作業が難しくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ハードケース内への携帯型医療機器の収納作業を容易にすることができる医療機器用キャリーバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る医療機器用キャリーバッグは、ファスナにより開閉可能な開閉部を有するハードケースを本体として有し、前記開閉部を開いて医療機器を出し入れする医療機器用キャリーバッグであって、前記開閉部の少なくとも一部を覆うように前記ハードケースに設けられたソフトカバーを有し、前記ソフトカバーに、医療機器とその使用者とを接続するチューブ又はケーブルを挿抜可能な貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハードケース内への携帯型医療機器の収納作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグの斜視図
【図2】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグの前面図
【図3】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグの左側面図
【図4】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグの上面図
【図5】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグの通気口の配置を説明するための図
【図6】本発明の一実施の形態に係るキャリーバッグにカニューラを接続した状態を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1〜図5を用いて、本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器用キャリーバッグ(以下、単に「キャリーバッグ」という)の構成について説明する。図1、図2、図3及び図4はそれぞれ、本実施の形態のキャリーバッグの斜視図、前面図、左側面図及び上面図である。図5は、キャリーバッグの前面に設けられた通気口の配置を説明するために前面上のシートベルトカバーを省略した図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態のキャリーバッグは、内部に携帯型の酸素濃縮器を収納可能なキャリーバッグ本体(以下、単に「本体」という)1を有する。本体1は、酸素濃縮器を収容する収容部1A、収容部1Aの蓋としての蓋部1B、及びファスナにより開閉可能な、収容部1Aと蓋部1Bとのつなぎ目(開閉部)1Cを有する。
【0015】
ファスナによりつなぎ目1Cを開いたときには、蓋部1Bの一部が収容部1Aから分離するため、本体1内部に酸素濃縮器を入れたり本体1内部から酸素濃縮器を出したりすることができる。収容部1Aに酸素濃縮器を入れた後、ファスナによりつなぎ目1Cを閉めて蓋部1Bを収容部1Aに結合させることで、本体1内部に酸素濃縮器を収納することができる。なお、ファスナに関して、本実施の形態では、一対のスライダを互いに突き当てるようにしてつなぎ目1Cを閉める頭合わせタイプの線ファスナを用いる場合を例にとって説明するが、使用可能なファスナのタイプはこれに限定されない。
【0016】
本体1はハードケースである、すなわち、収容部1A及び蓋部1Bはいずれも、例えばABS樹脂等の、防水性・剛性を有する材料から形成されている。本体1がハードケースであることにより、本体1が外部からの圧力によって容易に変形して内部の酸素濃縮器の吸気口・排気口が塞がれる可能性を低減させることができる。また、内部の酸素濃縮器を、外部からの衝撃から保護することができる。
【0017】
本体1は、直方体状の箱体であり、図2等に示すように脚部11aが設けられている下面11を底面として起立状態で置くことができる。右側面12及び左側面13の上面14側にはそれぞれ、肩掛けベルト2(一部図示せず)が取り付けられているため、使用者は、肩掛けベルト2を肩に掛けて、内部に酸素濃縮器が収納された本体1を持ち運ぶことができる。背面15は、蓋部1Bを開いて収容部1Aに酸素濃縮器を入れるときには、底面となる。下面11、右側面12、左側面13、上面14及び背面15は、収容部1Aを構成する。
【0018】
背面15に対向する前面16は、蓋部1Bを構成する。前面16には、左側面13側の端部から右側面12側の端部に向かって帯状に延伸する帯状凹部21が形成されている。そして、帯状凹部21を跨いで帯状凹部21の少なくとも一部の領域を覆うよう両端部(図2及び図3に示す上端部22U及び下端部22L)を前面16に接続可能なシートベルトカバー22が、前面16上に配置されている。
【0019】
シートベルトカバー22は、例えばエラストマー等の防水性・可撓性を有する材料から形成された平面状部材である。図2に示すように、シートベルトカバー22の上端部22Uは、帯状凹部21に対して上面14側で、例えば前面16のカシメ孔36にカシメ部材23を嵌入するカシメ固定により、前面16に固着されている。一方、シートベルトカバー22の下端部22Lは、帯状凹部21に対して下面11側で、例えば互いに着脱可能な前面16上の面ファスナ37とシートベルトカバー22上の面ファスナ24とにより、前面16に装脱可能となっている。また、シートベルトカバー22は、可撓性を有するため、下端部22Lを前面16から剥がして容易に捲ることができる。
【0020】
すなわち、本実施の形態では、シートベルトカバー22を捲って前面16上にシートベルトを掛け、シートベルト上にシートベルトカバー22を被せて下端部22Lを前面16に装着することで、シートベルトの保持が可能となる。このようにしてシートベルトを利用することで、車室内にキャリーバッグを容易に固定することができる。
【0021】
ここで、図5を参照すると、シートベルトカバー22に覆われていない帯状凹部21が示されている。帯状凹部21は、シートベルトカバー22を収容するよう前面16に形成された矩形状凹部35よりも深く形成されている。これにより、前面16に掛けたシートベルトを帯状凹部21に係合させることができるため、前面16に掛けたシートベルトのずれを防止して、シートベルトの保持を強固にすることができる。
【0022】
次いで、図1及び図2を参照すると、前面16には、通気口31が形成されており、右側面12には、通気口32が形成されている。よって、通気口31、32を本体1内部への給気口として、あるいは本体1内部からの排気口として、用いることができる。このように通気口31、32が形成されている本実施の形態のキャリーバッグは、給排気が必要な医療機器である酸素濃縮器の収納に適している。
【0023】
通気口31、32は、収納する酸素濃縮器における吸気口・排気口の位置に対応するように適宜配置して良いが、帯状凹部21の形成面である前面16に対向する面(つまり背面15)以外の面に配置することが好ましい。シートベルトを用いてキャリーバッグを固定する場合、シートベルトを掛ける面(つまり前面16)に対向する面(つまり背面15)は必ず、座席の座面に覆われるためである。
【0024】
通気口31は、帯状凹部21よりもさらに深い矩形状凹部を形成し、その凹部底面に孔31H(図5参照)を形成した構成である。図5に示すように、通気口31の矩形領域の上端部31Uは、シートベルトカバー22に覆われる領域(矩形状凹部35の領域)内に位置している一方、通気口31の矩形領域の下端部31Lは、矩形状凹部35の領域よりも下面11側に位置している。よって、図2に示すように、シートベルトカバー22の下端部22Lを前面16に装着したときに、シートベルトカバー22は、下端部31L側を除いて通気口31の部分領域を覆う。したがって、シートベルトカバー22によって通気口31が塞がれるのを防ぐことができる。
【0025】
また、通気口31の矩形領域の下端部31Lは、シートベルトを係合させる帯状凹部21の領域よりも下面11側に位置している。よって、シートベルトを前面16に掛けたときに、シートベルトによって通気口31が塞がれるのを防ぐこともできる。
【0026】
さらに、防水性材料からなるシートベルトカバー22で通気口31の部分領域を覆うため、通気口31から本体1内部に水を侵入させにくくすることができる。なお、通気口31の矩形状凹部に入った水を排水させやすくするために、矩形状凹部から下面11まで延伸する溝等を形成しても良い。
【0027】
次いで、図2〜図4を参照すると、つなぎ目1Cを跨いでつなぎ目1Cの少なくとも一部の領域を覆うよう両端部(前端部41F及び後端部41R)を前面16及び上面14に接続可能なつなぎ目カバー41が、上面14から前面16にかけて配置されている。
【0028】
つなぎ目カバー41は、例えばエラストマー等の防水性・可撓性を有する材料からなる部材(ソフトカバー)である。図4に示すように、つなぎ目カバー41の後端部41Rは、例えば上面14に固定されている上面カバー42に連結されることにより、上面14に固着されている。一方、つなぎ目カバー41の前端部41Fは、例えば互いに着脱可能なつなぎ目カバー41上のマグネット43と前面16上のマグネットキャッチ(図示せず)とにより、前面16に装脱可能となっている。また、つなぎ目カバー41は、可撓性を有するため、前端部41Fを前面16から分離させて容易に捲ることができる。
【0029】
また、つなぎ目カバー41には、つなぎ目1Cの真上に対応する位置に、カニューラを挿抜可能な貫通孔45が形成されている。なお、本実施の形態では、貫通孔45は、カニューラを挿抜可能なものとして形成されているが、これ以外であっても、携帯型の医療機器とその使用者とを接続するチューブ又はケーブルであれば挿抜可能である。
【0030】
よって、キャリーバッグに酸素濃縮器を収納しつつ使用準備をする場合、作業手順は次のようになる。
【0031】
先ず、つなぎ目カバー41を捲ってファスナによるつなぎ目1Cの開閉操作を可能とする。次いで、ファスナによりつなぎ目1Cを開き、さらに蓋部1Bを収容部1Aから開けて、酸素濃縮器を収容部1Aに入れる。収容部1Aに酸素濃縮器を入れた後は、収容部1Aに対して蓋部1Bを閉じる前に、貫通孔45にカニューラを挿通し、そのカニューラを、収容部1Aに収容した酸素濃縮器の酸素出口に接続する。そして、収容部1Aに対して蓋部1Bを閉じて、ファスナの一対のスライダでカニューラが挟まれる位置まで各スライダを移動させてつなぎ目1Cを閉める。最後に、つなぎ目カバー41をつなぎ目1Cに被せ、前端部41Fを前面16に装着させると、酸素濃縮器の使用準備が完了し、キャリーバッグを持ち運びながら酸素濃縮器を使用可能な状態となる。
【0032】
このように、本実施の形態では、本体1をハードケースとした場合であっても、酸素濃縮器を出し入れするつなぎ目1Cを覆う可撓性のつなぎ目カバー41に、カニューラを挿抜可能な貫通孔45を形成したため、使用準備作業の容易さを維持することができる。
【0033】
また、つなぎ目カバー41の後端部41Rが収容部1Aに固着され、つなぎ目カバー41の前端部41Fが蓋部1Bに装脱可能となっているため、収容部1Aに収容された酸素濃縮器から近い位置でカニューラの挿通作業を行うことができる。したがって、酸素濃縮器へのカニューラ接続作業が容易である。
【0034】
また、図4に示すように、貫通孔45の内部には、例えばシリコン系ゴム等の防水性・弾性を有する材料から形成されたゴムブッシュ46が設けられている。これにより、図6に示すように、貫通孔45にカニューラNCを挿通したときに、つなぎ目カバー41とカニューラNCとの間をゴムブッシュ46で封止することができる。よって、水滴がカニューラNCを伝って本体1内部まで侵入するのを抑制することができ、キャリーバッグの防水性を向上させることができる。また、カニューラNCに密着するゴムブッシュ46により、カニューラNCが引き抜かれる方向の力に抵抗する力が生じるため、使用中のカニューラ外れの発生を抑制することができる。
【0035】
なお、収納された酸素濃縮器の操作は、上面14に設けられた操作パネルカバー51を開けることにより、キャリーバッグの外部から行うことができる。また、操作パネルカバー51は、例えばポリカーボネート等の透明材料で形成されているため、操作パネルカバー51を閉じたまま、酸素濃縮器の動作状態を確認することができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。よって、上記実施の形態は、種々変更して実施可能である。例えば、本実施の形態では、酸素濃縮器用キャリーバッグを例にとって説明したが、本発明の医療機器用キャリーバッグに収納可能な医療機器は、携帯型の酸素濃縮器あるいは酸素供給装置に限られない。本発明の医療機器用キャリーバッグは、患者と接続されたまま移動する携帯型の医療機器(例えば、体外式の治療装置)であれば収納可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 キャリーバッグ本体
1A 収容部
1B 蓋部
1C つなぎ目
11 下面
12 右側面
13 左側面
14 上面
15 背面
16 前面
21 帯状凹部
22 シートベルトカバー
31 通気口
41 つなぎ目カバー
45 貫通孔
46 ゴムブッシュ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナにより開閉可能な開閉部を有するハードケースを本体として有し、前記開閉部を開いて医療機器を出し入れする医療機器用キャリーバッグであって、
前記開閉部の少なくとも一部を覆うように前記ハードケースに設けられたソフトカバーを有し、
前記ソフトカバーに、医療機器とその使用者とを接続するチューブ又はケーブルを挿抜可能な貫通孔が形成されている、
医療機器用キャリーバッグ。
【請求項2】
前記ハードケースは、医療機器を収容する収容部と、前記開閉部を開いたときに少なくとも一部が前記収容部から分離可能となる蓋部と、を有し、
前記ソフトカバーの一端部は、前記収容部に固着されており、
前記ソフトカバーの他端部は、前記蓋部に装脱可能である、
請求項1記載の医療機器用キャリーバッグ。
【請求項3】
前記ソフトカバーは、防水性材料からなり、
前記貫通孔の内部に、ゴムブッシュが設けられている、
請求項1記載の医療機器用キャリーバッグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−187193(P2012−187193A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51642(P2011−51642)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)